【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の渋滞走行の問題点は以下の如くである。
・加速走行・定速走行、あるいは減速時・停車時の(例えばガソリンエンジンへのガソリン等)過剰な駆動体駆動エネルギー供給による浪費、
・減速走行時の車両の有する運動エネルギーの、制動(低効率回生制動を含む)による浪費。
上記問題を解決するためには、以下の対応が必要である。
・渋滞平均速度に対応した最小限の加速走行と、前記加速走行の結果車両に蓄積された運動エネルギーの車両減速走行への効率的な利用、即ち惰性走行の最大限の活用
、
・減速走行時あるいは停車時の(例えばガソリンエンジンへのガソリン等)駆動体への駆動体駆動エネルギーの供給停止あるいは供給削減
、
【0006】
上記問題解決策実行のための方策を、
図1を用いて説明する。
図1において、縦軸を自車速度、横軸を時間あるいは走行距離とする。
またvj は渋滞平均速度(渋滞中の車両の平均速度)である。
速度0から速度(2・vj)までの間加速度αa で加速走行した場合の走行距離をLa 、走行時間をta、
また、速度(2・vj)から速度0までの間減速度αd で減速走行した場合の走行距離をLd 、走行時間をtd、
とするとLa、Ld、ta、td はそれぞれ(数1)、(数2)、(数3)、(数4)であらわされる。
(数1)
La =(2・vj )
2/(2・αa)
(数2)
Ld =(2・vj )
2/(2・αd)
(数3)
ta =(2・vj)/αa
(数4)
td =(2・vj)/αd
ここで、減速度αd は、
(数5)
αd =αi +αb
但し
αi:惰性走行減速度
、
αb:減速度αd とするための、惰性走行減速度αiに付加する制動減速度
、
である。
【0007】
ここで、加速走行距離La および減速走行距離Ld の和である加減速走行距離(La+Ld)の間を、加速走行時間ta と減速走行時間td の和である加減速走行時間(ta+td)で走行する場合の速度vad は、(数6)で示される。
(数6)
vad =(La+Ld )/(ta +td )=vj
即ち、上記の如き加速走行距離Laと減速走行距離Ldの和である加減速走行距離(La +Ld)を加速時間taと減速時間td での和時間(ta +td)で走行した場合の平均速度は渋滞平均速度
vjとすることができる。
【0008】
従って、発進・停止を頻繁に繰り返す渋滞平均速度vj の渋滞中において、停車中の自車両が、前方車両との車間距離Lが(数7)を満足した時(但しΔL:安全車間距離)、上記加速走行を開始し、速度が(2・vj)に達した後減速度αdの減速走行に移行して速度0となるまで走行した場合の走行距離は(La +Ld)となり、この結果、前記加減速走行の間の自車両と前方車両間の車間距離は、前方車両の走行状態如何(但し逆走は無しとする)にかかわらず(数8)を満足することができる。即ち、(数9)で示される設定車間距離Lsを確保しての安全な加減速走行が可能となる。
(数7)
L≧Ls+ΔL
(数8)
L≧ΔL
(数9)
Ls =La +Ld
【0009】
ここで、上記加速走行距離La 、減速走行距離Ld の最適化、即ち加速度αa 、減速度αd の最適化、を考える。
先ず減速走行距離Ldを考える。
減速走行の最もエネルギー効率の良い走行方法は、前記のとおり惰性走行、即ち減速度αdを惰性走行減速度αi としての走行である。
【0010】
しかし前記渋滞中の減速走行を惰性走行減速度αiの惰性走行のみで行おうとすると、例えば渋滞平均速度vj=5km/hの渋滞走行において、(一般的な車両においては、)惰性走行減速度αiによる速度(2・vj)=10km/hから速度0までの惰性走行距離Liは10m以上、したがって加速走行距離Laを5mとすると一周期の加減速走行距離は15m以上となってしまい、車間距離が過大になるという問題が発生する。
【0011】
一方、減速走行を減速度αd (=αi+αb、即ち惰性走行減速度αiに制動減速度αbを付加した減速走行)で行おうとすると、減速走行時の制動減速度αbの制御が必要となることに加えて、速度0から速度(2・vj)までの加速走行によって車両が獲得した運動エネルギー
{m・(2・vj)2}/2(但しm:自車両質量)中の{αi / (αi +αb)}分しか減速走行に利用されず、残りの{αb / (αi +αb)}分は制動減速度αbによる
制動摩擦熱として放散されてしまい、走行の運動エネルギー損失となる。
(但し、上記減速度αbによる制動を摩擦制動ではなく高効率の回生性能を有する回生制動で行う方法もあり、この場合は制動を単なる摩擦制動で行う場合に比べて回生制動の効率分だけ運動エネルギー利用効率を向上させることができる。)
【0012】
従って、渋滞走行速度vjに対応する最適な自車両−前方車両間設定車間距離Lsのための加速走行距離La設定に際しては、加速度αaを許容可能な(乗員に違和感を与えず制御が容易かつ安全な)範囲で最大値に設定して後(数1)より前記
最大化(極大化)した加速度αaに対応した極小化した加速走行距離Laを算出・設定する。
次いで、前記Ls 、La より(数9)を用いてLd (=Ls −La)を算出(但しここで算出されたLd は、惰性走行距離Liに対してLd <Li とする)、前記Ldより(数2)を用いてαdを、(数5)を用いてαb を算出し、最終的には減速走行時αb を制御しての極小化した、即ち極力惰性走行減速度αiに近い、減速度αd での極大化した減速走行距離 Ldでの減速走行を行う。
【0013】
一方、減速走行中あるいは停車中のエンジンあるいはモータの駆動による駆動体駆動エネルギー損失は、駆動を停止するあるいは駆動での消費量を低減させることで可能である。
従ってトータル的な渋滞走行の最適化は、渋滞平均速度vjに対応した設定車間距離Lsに対応する加速度αa、減速度αdの最適化(即ち、加速走行距離La 、減速走行距離Ldの最適化)とその結果としての運動エネルギー利用効率向上と、減速走行時および停車時の駆動体駆動エネルギーの損失低減、を合わせて総合的に最適化することになる。