特許第6226500号(P6226500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226500
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20171030BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20171030BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20171030BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J50/40
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-8837(P2014-8837)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-139263(P2015-139263A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591206887
【氏名又は名称】株式会社テクノバ
(74)【代理人】
【識別番号】100100918
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 公治
(72)【発明者】
【氏名】保田 富夫
(72)【発明者】
【氏名】岸 洋之
(72)【発明者】
【氏名】乗越 勇美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】砂金 富保
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−501665(JP,A)
【文献】 特開2010−172084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
B60L 11/18
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止中の移動体に地上側から非接触で給電を行う非接触給電システムであって、
地上側に、磁極の長手方向を前記移動体の前後方向に一致させて前記方向に整列する複数の送電用の両側巻コイルが、相互間に前記磁極の長手方向の長さ以下の間隔を空けて設置され、
前記複数の送電用の両側巻コイルが電気的に直列接続又は並列接続され、
前記複数の送電用の両側巻コイルに通電された状態で停止中の前記移動体に搭載された受電用コイルへの非接触給電が行われることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、前記受電用コイルとして、両側巻コイルが、磁極の長手方向を前記移動体の前後方向に一致させて該移動体に搭載されていることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項3】
請求項に記載の非接触給電システムであって、前記送電用の両側巻コイル及び受電用の両側巻コイルが、H型コア構造の両側巻コイルから成ることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の非接触給電システムであって、前記送電用の両側巻コイルにおける巻線領域及び磁極の幅が、前記受電用の両側巻コイルにおける巻線領域及び磁極の幅より広く設定されていることを特徴とする非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停車中の移動体に非接触で給電を行う給電システムに関し、受電コイルの搭載位置が異なる各種の車種に対応できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載されたバッテリーの充電には、電気ケーブルとコネクタを用いる方式が採用されているが、近年、利便性や安全性の向上を図るために、ケーブル接続が不要な非接触給電方式による充電の研究が各国で盛んに行われている。
この方式では、図11に示すように、車両の床裏面に搭載された非接触給電トランスの二次側コイル(受電コイル)102と、地上側に設置された一次側コイル(送電コイル)202とを対向させて、地上側から停車中の車両に非接触で給電が行われる。
この充電システムでは、車両の停車位置が正規の位置からずれて一次側コイルと二次側コイルとの間に位置ずれが生じたときの給電効率の低下や、漏洩磁束による周囲への影響を改善することが課題とされている。
【0003】
これまで、コイル間の位置ずれによる給電効率の低下を改善するため、図12に示すように、板状の角型フェライトコア10の周りに巻線11を巻回した“両側巻コイル”が開発されている。この両側巻コイルでは、巻線が巻回されていない角型コアの両端部がそれぞれ磁極となる(従って、図12のx方向が磁極の長手方向となる)。
両側巻コイルは、円形コアの片側にコイルを配置した従来の片側巻コイルに比べて、位置ずれの許容範囲が大きい。特に、磁極の長手方向における位置ずれの許容範囲が大きく、一次側コイルと二次側コイルとが磁極の長手方向に位置ずれしても、給電効率の低下は僅かである。
【0004】
また、下記特許文献1には、両側巻コイルの小型軽量化を図るため、図13に示すように、H字型のフェライトコアを用いた両側巻コイルが開示されている。このH型コア構造の両側巻コイルでは、H型コアの横棒に相当する部分に巻線11が巻回され、H型コアの両側の平行する部分12が磁極部となる(従って、図13のx方向が磁極の長手方向となる)。
H型コア構造の両側巻コイルにおける位置ずれの許容範囲は、角型コアを用いた両側巻コイルと略同じであり、角型コアの場合と同様、磁極の長手方向における位置ずれの許容範囲が特に大きい。
【0005】
そのため、両側巻コイルを用いる非接触給電システムでは、図14に示すように、二次側コイルが、磁極の長手方向と車幅方向とを一致させて車両に搭載され、地上側の一次側コイルが二次側コイルと同じ向きに設置され、さらに、車両前後方向の停止位置を規定するための車止め300が地上側に設置される。
こうすることで、車両前後方向の停止位置が車止めで規定され、また、車幅方向の停止位置が正規の位置からずれても、その方向での両側巻コイルの位置ずれ許容範囲が大きいため、非接触給電の給電効率の低下が避けられる。
【0006】
また、両側巻コイルを用いる非接触給電システムでは、相手コイルとの対向面の反対側に生じる漏洩磁束を遮断するために、アルミシールド板301が設置される。
送電コイルや受電コイルの側方での漏洩磁束は、ICNIRP2010のガイドラインをクリアできるレベルであり、周囲の人に漏洩磁束による影響が及ばないことは確認されている。
【0007】
しかしながら、車両の非接触給電方式による充電が普及した場合、二次側コイルを様々な位置に搭載した車種が出現すると予想される。二次側コイルを車両の前方、中央あるいは後方に搭載した場合、車両が停止する車止めの位置から二次側コイルまでの距離は、それぞれ、大きく異なる。各種の車両が利用する駐車場等では、非接触給電システムの導入に際して、こうした点を考慮する必要がある。
【0008】
この問題を先取りした移動車両給電システムが下記特許文献2に開示されている。
このシステムでは、各種の車両が利用する給電エリア内の異なる位置に複数の一次側コイルを配置し、この給電エリアに車両が停車した場合に、車両側と交信して二次側コイルの搭載位置を検出する。そして、検出結果に基づいて、二次側コイルに対応する位置の一次側コイルを一つ選択し、選択した一次側コイルと二次側コイルとの間で非接触給電を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−175793号公報
【特許文献2】特開2013−066291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2のシステムは、二次側コイルの搭載位置を検出する手段が必要であり、構成が複雑である。また、選択した一次側コイルと二次側コイルとの間で位置ずれが生じている場合、効率的な給電が実施できない、と言う問題点がある。
【0011】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、二次側コイルの搭載位置が異なる各種の移動体に対して効率的に給電を行うことができる非接触給電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、停止中の移動体に地上側から非接触で給電を行う非接触給電システムであって、地上側に、磁極の長手方向を移動体の前後方向に一致させて前記方向に整列する複数の送電用の両側巻コイルが、相互間に前記磁極の長手方向の長さ以下の間隔を空けて設置され、複数の送電用の両側巻コイルに通電された状態で停止中の移動体に搭載された受電用コイルへの非接触給電が行われることを特徴とする。
このシステムでは、地上側の複数の両側巻コイルが、移動体の前後方向の向きに、位置ずれの許容範囲が大きくなるように並べられているため、受電コイルの位置が移動体の種類により違っていても、高い効率で給電を行うことができる。
【0013】
また、本発明の非接触給電システムでは、複数の送電用の両側巻コイルを直列接続することが望ましいが、並列接続でも良い。
直列接続された複数の両側巻コイルには、同一量の電流が流れて同一強さの磁束が発生するため、受電コイルが送電コイル間の中間に位置したときでも、送電コイルに正対しているときと略変わらない磁束を受けて、送電コイルに正対しているときと略変わらない給電が可能になる。
【0014】
また、本発明の非接触給電システムでは、受電用コイルとして、両側巻コイルを、磁極の長手方向を移動体の前後方向に一致させて移動体に搭載することが望ましい。
こうすることで、受電用両側巻コイルの位置ずれの許容範囲が、移動体の前後方向で大きくなる。
【0015】
また、本発明の非接触給電システムでは、送電用の両側巻コイル及び受電用の両側巻コイルを、H型コア構造の両側巻コイルで構成することが望ましい。
H型コア構造の両側巻コイルは、小型・軽量であるため、設置スペースが制約される箇所への設置に適している。
【0016】
また、本発明の非接触給電システムでは、送電用の両側巻コイルにおける巻線領域及び磁極の幅を、受電用の両側巻コイルにおける巻線領域及び磁極の幅より広く設定することが望ましい。
このように、送電コイルの巻線領域の幅及び磁極の幅を拡げることにより、磁極方向に直交する方向(即ち、車幅方向)の位置ずれによる給電効率の低下を改善できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非接触給電システムでは、移動体の受電コイルの搭載位置が車種等により違っていても、高い給電効率で非接触給電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る非接触給電システムを示す図
図2】本発明の実施形態に係る非接触給電システムの回路構成を示す図
図3】実験に用いた送電用コイルと、受電用コイルの位置ずれ方向を示す図
図4】車両前後方向の位置ずれと総合給電効率との関係を示す図、
図5】漏洩磁束の測定点を示す図
図6】受電用コイルが2つの送電用コイルの一方と重なるときの漏洩磁束を示す図
図7】受電用コイルが2つの送電用コイルの他方と重なるときの漏洩磁束を示す図
図8】受電用コイルが2つの送電用コイルの中間に位置するときの漏洩磁束を示す図
図9】車幅方向の位置ずれと総合給電効率との関係を示す図
図10】本発明の実施形態に係る非接触給電システムの変形例を示す図
図11】プラグインハイブリッド車の給電システムを示す図
図12】板状角型コアに巻線を施した両側巻コイルを示す図
図13】H型コア構造の両側巻コイルを示す図
図14】両側巻コイルを用いた従来の非接触給電システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る非接触給電システムを模式的に示している。図1では、地上側に3つのH型コア構造の両側巻コイル21、22、23が設置され、車両の床裏面に1つのH型コア構造の両側巻コイル31が搭載された場合を示している。
これらの両側巻コイル21、22、23、31は同一仕様であり、地上側の両側巻コイル21、22、23は、磁極の長手方向が車両の前後方向と一致するように間隔を空けて一列に設置され、車両側の両側巻コイル31は、磁極の長手方向が車両の前後方向と一致するように車両に搭載されている。
また、車両側の両側巻コイル31と車両の床裏面との間にはアルミシールド板32が配置され、地上側の両側巻コイル21、22、23の下側には、これらのコイルが載る一枚のアルミシールド板24が配置されている。
【0020】
図2は、この非接触給電システムの等価回路を示している。ここでは、地上側の両側巻コイルが2つ(21、22)であり、それらが直列接続されている場合を示している。
地上側は、商用電源41と、商用電源41の交流を直流に変換するAC/DCコンバータ42と、AC/DCコンバータ42の出力を平滑化する平滑コンデンサ43と、直流を高周波交流に変換して両側巻コイル21、22に供給するインバータ44と、インバータ44と両側巻コイル21との間に直列接続された一次側直列コンデンサ45とを備えている。
一方、車両側は、両側巻コイル31で受電された交流を整流する整流回路52と、両側巻コイル31と整流回路52との間に直列接続された二次側直列コンデンサ51と、整流回路52の出力を平滑化する平滑コンデンサ53と、整流された電流で充電される負荷54とを備えており、非接触トランスを構成する両側巻コイル21、22及び両側巻コイル31を介して、地上側から車両側に給電が行われる。
【0021】
一次側直列コンデンサ45及び二次側直列コンデンサ51は、非接触トランスの漏れリアクタンスを補償して給電効率を高めるために接続されている。一次側及び二次側に直列コンデンサを挿入する方式は“SS方式”と呼ばれているが、その他に、一次側に直列コンデンサを接続し、二次側に並列コンデンサを接続する“SP方式”等も知られている。
接続するコンデンサの値については、特開2007−181162号公報やWO2007/029438に詳述されている。
【0022】
このシステムでは、直列接続された両側巻コイル21及び両側巻コイル22に同じ大きさの電流が流れるため、両側巻コイル21及び両側巻コイル22から同じ強さの磁束が発生する。この両側巻コイル21及び両側巻コイル22は、車両の前後方向の向きに位置ずれの許容範囲が大きくなるように並べられており、車両側の両側巻コイル31も同じ向きであるため、地上側の両側巻コイル21、22に対して、車両の前後方向に両側巻コイル31の位置が変化した場合でも、高い給電効率で非接触給電を行うことができる。
特に、車両側の両側巻コイル31が地上側の両側巻コイル21と両側巻コイル22との中間に位置する場合は、両側巻コイル31に対して両側巻コイル21及び両側巻コイル22のそれぞれから発生する磁束が作用するため、地上側の両側巻コイル21と両側巻コイル22との間隔を広く空けても、高い給電効率での非接触給電が可能である。
【0023】
次に、本発明の非接触給電システムの特性を確認した実験結果について説明する。
この実験では、図3に示すように、送電用の両側巻コイルとして、2つの両側巻コイルを、磁極の長手方向を揃えて、離間距離dだけ離して一列に配置した。
受電用の1つの両側巻コイルは、磁極の長手方向を送電用両側巻コイルと一致させるとともに、送電用両側巻コイルの上方に所定量のギャップ間隔を維持して配置し、この受電用両側巻コイルを図3のx方向に順次移動させて特性を測定した。
送電用両側巻コイル及び受電用両側巻コイルには、H型コア構造の両側巻コイルを用いた。
【0024】
各送電用両側巻コイルのサイズは、磁極長Wが300mm、磁極の長手方向に直交する方向の寸法が240mm、厚さが25mmである。巻線として20ターンの巻線を並列に2つ巻回している。
受電用両側巻コイルのサイズは、磁極長Wが300mm、磁極の長手方向に直交する方向の寸法が240mm、厚さが20mmである。巻線として14ターンの巻線を並列に2つ巻回している。
上から見て、送電用両側巻コイルの一方と受電用両側巻コイルとが重なる位置が=0の位置である。
送電用コイルと受電用コイルとのギャップは70mmに設定した。
図2のP0位置での出力を3kWに設定した。コンデンサはSS方式で接続した。
インバータ44の出力周波数は85kHzとした。
また、隣接する送電用両側巻コイルの離間距離dを、32mm、150mm(磁極長Wの1/2に相当)及び300mm(磁極長Wに相当)に設定して測定を実施した。
【0025】
図4は、送電用両側巻コイルの離間距離dを変えて、図3のx方向の距離と総合給電効率ηとの関係について測定した結果を示している。ここで、総合給電効率ηは、図2のP1位置でのインバータ入力電力P1と、P0位置での整流器の出力電力P0との比を表している(総合給電効率η=P1/P0)。
図中、離間距離d=32mmの特性を曲線(1)で表し、d=150mmの特性を曲線(2)で表し、d=300mmの特性を曲線(3)で表している。
図4から明らかなように、d=32mmの場合、約450mmまでηが80%以上であり、d=150mmの場合、約600mmまでηが80%以上であり、d=300mmの場合、約800mmまでηが80%以上であることが分かる。
【0026】
この総合給電効率ηは、送電用両側巻コイルの数や、各送電用両側巻コイルのサイズ、巻線の本数や並列数を増やすことでさらに改善できる。送電用コイルが設置される地上側は、設置スペースの制約が少ないため、こうした改善を図ることが容易である。
しかし、離間距離dが00mm(磁極長Wに相当する長さ)を超えると、送電用両側巻コイル間での総合給電効率ηの落ち込みが大きくなり、高い総合給電効率ηを一様に維持することが難しくなる。そのため、離間距離dは、磁極長W以下の長さとすることが望ましい。
【0027】
次に、漏洩磁束の測定結果について説明する。
このシステムでは、非接触給電時に、受電用コイルと対向しない状態で通電される送電用コイルが存在し得るため、漏洩磁束の増大が懸念される。そこで、図5に示すように、多くの測定ポイント(黒丸)で漏洩磁束を測定した。
まず、2つの送電用両側巻コイルの離間距離dを150mmに設定し、受電両側巻コイルが一方の送電用両側巻コイルの真上に在る場合、及び、受電両側巻コイルが2つの送電用両側巻コイルの中間に在る場合の漏洩磁束を測定した。
測定個所は、図5に示すように、各送電用両側巻コイルの中心線上、及び、2つの送電用両側巻コイルの中間線上であって、送電用両側巻コイルのケース面を基準面(H=0mm)として、H=0mm、500mm、1000mmの高さの線上の複数の点で測定を実施した。
【0028】
図6及び図7は、受電両側巻コイルが一方の送電用両側巻コイルの真上に在る場合の測定結果であり、コイル中心からのy方向距離(横軸)と漏洩磁束密度(縦軸)との関係を示している。
図8は、受電両側巻コイルが2つの送電用両側巻コイルの中間に在る場合の測定結果であり、この場合のコイル中心からのy方向距離(横軸)と漏洩磁束密度(縦軸)との関係を示している。
図6図7及び図8のいずれにおいても、コイル面と同一高さ(H=0mm)付近の漏洩磁束密度が最も大きい。受電両側巻コイルが一方の送電用両側巻コイルの真上に在る場合(図6図7)は、受電両側巻コイルに対向していない送電用両側巻コイルのH=0mmの漏洩磁束密度が最も大きい。受電両側巻コイルが2つの送電用両側巻コイルの中間に在る場合(図8)は、送電用両側巻コイル及び受電両側巻コイルのH=0mmの漏洩磁束密度が同程度大きい。
【0029】
しかし、いずれの場合も、コイル中心から500〜550mmの距離(即ち、給電中の車両に邪魔されて人が近付けない距離)での漏洩磁束密度は、ICNIRP2010ガイドラインである27μT以下になることが確認できた。
なお、この関係は、送電用両側巻コイルの離間距離dを32mm及び300mmに設定した場合も同様であった。
【0030】
図9は、送電用両側巻コイルと受電両側巻コイルとが車幅方向(y方向)に位置ずれしたときの総合給電効率ηと位置ずれ距離との関係を示している。車幅方向に約70mm位置ずれすると、総合給電効率ηは80%以下に低下する。
しかしながら、送電用両側巻コイルの巻線領域の幅及び磁極の幅を、受電用両側巻コイルの巻線領域の幅及び磁極の幅より拡げることで、車幅方向(y方向)の位置ずれによる給電効率の低下が改善できることを確認している。送電用両側巻コイルを設置する地上側は、設置スペースの制約が少ないため、こうした改善を図ることが容易である。そのため、この点は大きな問題にならないと考えられる。
【0031】
このように、本発明の非接触給電システムでは、高い給電効率での非接触給電が可能な範囲が、車両の前後方向に長く存在するため、車両側の受電コイルが車両の前方、中央あるいは後方に搭載されていても、高い給電効率で非接触給電を行うことができる。
また、このシステムでは、漏洩磁束がICNIRP2010ガイドラインをクリアできるレベルであることが確認されている。
【0032】
なお、本発明は、この実施形態で示した構成に限るものでは無く、種々の変形が可能である。ここでは、両側巻コイルとしてH型コア構造の両側巻コイルを用いる場合について説明したが、板状角型コアに巻線を施した両側巻コイルを用いても良い。
また、図10に模式的に示すように、送電用両側巻コイル60の数は、2以上であっても良く、また、複数の送電用両側巻コイル60を並列接続しても良い。また、コンデンサはSP方式で接続しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の非接触給電システムは、受電側コイルの搭載位置が異なる種々の移動体に効率的に給電を行うことが可能であり、電気自動車やプラグインハイブリッド車、無人搬送車等、各種移動体の非接触給電に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 角型フェライトコア
11 巻線
12 磁極部
21 送電用両側巻コイル
22 送電用両側巻コイル
23 送電用両側巻コイル
31 受電用両側巻コイル
41 商用電源
42 AC/DCコンバータ
43 平滑コンデンサ
44 インバータ
45 一次側直列コンデンサ
51 二次側直列コンデンサ
52 整流回路
53 平滑コンデンサ
54 負荷
60 送電用両側巻コイル
102 二次側コイル(受電コイル)
202 一次側コイル(送電コイル)
300 車止め
301 アルミシールド板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14