(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷では、インキがインキ壷から複数のローラーを経由して版面に供給され、版面からブランケットを介して用紙に転移し、画像が再現される。オフセット印刷の中でもヒートセット印刷の場合、ドライヤーを通過する際に150〜230℃程度の熱風を受けて溶剤が蒸発する事により乾燥し、ガイドローラー、ターンバー、三角板などを経て、折り機にて折られ、結束されるのが一般的である。
【0003】
以前からヒートセット印刷においては、印刷の生産性を犠牲にすることなく、省エネルギーやCO
2削減のためドライヤーの温度を低くしたいという要望がある。また、ドライヤーの温度を下げて印刷物の紙面温度が下がることによって、乾燥により発生する皺である火皺、ブリスターとよばれる印刷部分の膨れ、折り機で折られるときに印刷部分にひびが入るワレといった印刷物の品質を低下させる現象の低減にもつながることが期待されている。
【0004】
しかしながら、ドライヤーの温度を下げると、乾燥が不十分となり、ブロッキング、擦れ、汚れ、裏移りなどの問題が起きる。また、乾燥性を早めるために溶剤離脱性を向上させるインキ処方とすると、機上での安定性が低下し、ブランパイリング(ブランケット上のインキ堆積)、着肉不良などの問題が起き印刷品質、生産性の低下を招くため、これまで、低温で乾燥可能で実用的なヒートセット印刷インキは開発されていない。
【0005】
従来、耐摩擦性を付与するために、ワックスを処方することが行なわれているが、添加量が多いほど、光沢が低下する傾向があり、トレードオフの関係にある。
【0006】
特許文献1には、乾燥時の紙面温度を低下させることによって火皺を低減させることのできるヒートセット印刷用インキ組成物が開示されている。そこでは、確かに、実施例の評価によると火皺およびインキ余りは比較例に比べ改善されているが、インキとしての他の評価が十分なされておらず実用レベルではない。
【0007】
従来、オフセット印刷用インキのバインダーとしては、印刷インキのさまざまな印刷適性を付与させる目的で、ロジン変性フェノール樹脂が用いられる。しかし、上述したような乾燥時の紙面温度を下げる目的では、その乾燥性、耐摩擦性について満足するものがないのが実情である。
【0008】
特許文献2には、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量が3%以下であるロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物が開示されている。そこでは、当該樹脂中の重量平均分子量が300以下の低分子成分を3%以下とすることで、光沢を損なうことなく、ミスチングは低減できると記載されている。
【0009】
特許文献3には、スラッシュ松に由来するロジン類を含有するロジン変性フェノール樹脂が開示されている。そこでは、前記特許文献2と同様に、ミスチングを低減させつつ、さらに流動性が良好で、光沢、乾燥性、耐乳化性も優れる印刷インキを製造可能であると記載されている。
【0010】
しかし、特許文献2および3のいずれのロジン変性フェノール樹脂を含有したインキにおいて、光沢とトレードオフの関係にある耐摩擦性については実用できるレベルのものではない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0021】
本発明のオフセット印刷インキは、オフセット印刷インキ用ゲルワニス(以下、単に「ゲルワニス」ともいう)、植物油類、溶剤、顔料などを混練含有させて製造される。
【0022】
本発明のオフセット印刷用ゲルワニスは、ロジン類、ダイマー酸、炭素数が4〜9のアルキル基を有するアルキルフェノール、ホルムアルデヒドおよびポリオールとを、反応させてなるロジン変性フェノール樹脂とを含有することが好ましい。
【0023】
本発明で使用するロジン類としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、重合ロジンなどの各種ロジンが挙げられる。
【0024】
本発明で使用するダイマー酸としては、植物由来脂肪酸を二量化したものが好ましく、前記植物由来脂肪酸としては、例えば、ヨウ素価120〜145のトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、綿実油脂肪酸及び米糠油脂肪酸などが好ましく、トール油脂肪酸、米糠油脂肪酸がより好ましい。市販品としては、ハリダイマーシリーズ(ハリマ化成(株)製)として入手できる。
【0025】
本発明で使用する炭素数が4〜9のアルキル基を有するアルキルフェノールとしては、例えば、パラターシャリーブチルフェノール、パラセカンダリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラノニルフェノールなどで、またこれらの混合物が挙げられる。なかでも、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノールおよびその混合物がより好ましい。
【0026】
本発明で使用するポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。なかでも、グリセリン、ペンタエリスリトールがより好ましい。なお、ホルムアルデヒドは、ホルマリン、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0027】
本発明のロジン変性フェノール樹脂は、公知の製造方法によって得られる。すなわち、前記ロジン類と、前記ダイマー酸をディールスアルダー反応させて得られる反応生成物と、前記炭素数が4〜9のアルキル基を有するアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドをアルカリ触媒を用いて縮合反応させて得られる反応生成物(以下、「レゾール樹脂」という)と、前記ポリオールとを反応させて得られる樹脂である。
【0028】
より詳しくは、例えば、前記反応生成物、前記レゾール樹脂および前記ポリオールを所定量ずつ反応装置に仕込み、必要に応じて各種公知の酸性または塩基性触媒の存在下、100〜300℃程度の温度範囲にて、1〜20時間程度反応させればよい。前記触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの酢酸塩が挙げられる。また、前記反応生成物と前記レゾール樹脂とを反応させた後に、前記ポリオールを加えて反応させる方法、前記反応生成物と前記ポリオールとを反応させた後に、前記レゾール樹脂を加えて反応させる方法でも製造することができる。
【0029】
それぞれの使用量は、特に限定されないが、インキ性能のバランスを考慮すると、全成分を100重量%とした場合、ロジン類とダイマー酸を反応させた反応生成物は41〜88重量%程度、レゾール樹脂(固形分換算)は9〜50重量%程度、ポリオールは3〜9重量%程度である。
【0030】
さらに、前記ロジン類に対して、ダイマー酸を1〜10重量%の割合で反応させることが好ましい。ダイマー酸の割合が1重量%未満では、重量平均分子量が小さく、架橋密度が不十分となるため、蒸発乾燥後のインキ皮膜が弱く、印刷機中のターンバーやガイドローラー、三角板など高いずり応力のかかる部分で擦れやすくなる。また、架橋密度が不十分であると、温度依存性が劣る傾向がある。10重量%を超えると、インキの弾性が高くなり、温度依存性は優れ、ゲル化剤量が減量できるなどのメリットはあるものの、ヘプタントレランスが上がり、乾燥性が劣る傾向がある。一方で、弾性が強すぎるため、ゲルワニスの製造時において、撹拌翼の軸への巻き上がり(ワイゼンベルグ効果)により、物性のコントロールが困難となる。また、インキが高弾性になり過ぎると、印刷網点が細る傾向があり、網点再現性、ひいては印刷品質にも影響する。
また、前記ロジン類に対して、前記炭素数が4〜9のアルキル基を有するアルキルフェノールは、60/40〜70/30の割合で使用することが好ましい。
また、前記ロジン類に対して、前記ポリオールは、90/10〜95/5の割合で使用することが好ましい。
【0031】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、重量平均分子量が40,000〜150,000の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは、重量平均分子量が50,000〜100,000の範囲内である。重量平均分子量が150,000を超えると溶解性が低下するため、溶剤離脱性が早くなることにより、機上安定性が劣り、紙剥けが発生しやすくなる。また高い弾性を有するため、顔料分散性の低下、紙面への着肉低下や、レベリング性、流動性低下による光沢低下が起こりやすくなる。
ここで、重量平均分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0032】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスは、ゲル化剤を含有してもよく、前記ロジン変性フェノール樹脂と、ゲルワニス中に該ゲル化剤を0.5重量%未満含有することが好ましく、0.3重量%以下含有することがより好ましい。また、ゲル化剤を含有しなくても好適に使用できる。さらに、前記ゲルワニス中に植物油類、溶剤を含有してもよい。ゲルワニス中に、ゲル化剤が0.5重量%を超えると、ゲルワニスの粘度が高く、凝集力が大きくなるため、インキのミスチング、ドットゲインなどが抑制できるというメリットはあるものの、一方で、印刷機のインキ壷内でその凝集が崩れにくくなるため、インキ壷からのインキ供給やインキローラー間の転移性が低下してしまう。
【0033】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスは、前記ロジン変性フェノール樹脂に植物油類、溶剤、キレート剤(ゲル化剤) などを混合加熱して製造されるが、25℃、1Hzにおける直径25mmでコーン角1°のコーンプレートを使用して測定した動的粘弾性tanδが、3.0以下が好ましい。3.0を超えると、ワニスの凝集力が不十分となり、特に機械周辺温度、版面およびブランケットの温度が高くなる場合、汚れなどが発生しやすくなる傾向を示す。
【0034】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスは、ヘプタントレランスが、50〜150%が好ましい。50%未満では、相溶性が低下し乾燥性は向上するが、経時安定性が低下し、インキ着肉が低下する。150%を超えると、紙面温度設定が低い場合、紙面に付着したインキの乾燥性が悪くなる。
【0035】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスは、25℃、1Hzにおける直径25mmでコーン角1°のコーンプレートを使用して測定した動的粘弾性tanδと、ヘプタントレランスが、前記範囲内であることが好ましい。前記範囲内であれば、ゲル化剤を使用しなくてもよい。
【0036】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスは、水酸基価が、50〜100mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g未満では、親水性が低すぎてインキの乳化限度率が低くなり、水を取り込み難くなるため、ローラー剥げなどの印刷トラブルが発生しやすい。100mgKOH/g超では、乳化限度率が高過ぎて、過剰乳化により乳化したインキの凝集力が高くなり過ぎるためインキ転移を阻害し、ローラー上にインキが余り易く、汚れなどが発生しやすくなる。
なお、水酸基価は、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数である。無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、生成した酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することによって求められる。
【0037】
オフセット印刷インキ用ゲルワニスの動的粘弾性tanδ、ヘプタントレランスおよび水酸基価は、殆ど用いるロジン変性フェノール樹脂の物性に依存する。
すなわち、ゲルワニスの動的粘弾性tanδは、ゲルワニスの組成からゲル化剤を除いた配合の動的粘弾性tanδを通常(10〜20)より低めの4〜10未満になるようにロジン変性フェノール樹脂の動的粘弾性tanδを調整し、その配合にゲル化剤を適宜添加するかまたはゲル化剤の添加なしで、容易に3.0以下にコントロールできる。なお、ゲルワニスの組成からゲル化剤を除いた配合の動的粘弾性tanδが4〜10未満の範囲を外れると、ゲル化剤によって動的粘弾性tanδを3.0以下にすることができたとしても、得られたゲルワニスの安定性に問題があるなど、使用できるようなものとはならない。
【0038】
本発明のオフセット印刷インキ用ゲルワニスのヘプタントレランスは、それに用いるロジン変性フェノール樹脂の非極性溶媒との親和性の指標である5ソルトレランスから推測できる。
すなわち、当該ゲルワニスに用いるロジン変性フェノール樹脂の5ソルトレランス(複数のロジン変性フェノール樹脂を混合して用いる場合はその加重平均値)を5〜15程度とすることにより、当該ゲルワニスのヘプタントレランスを50〜150%に調整できる。
また、水酸基価は、用いるロジン変性フェノール樹脂の水酸基価とほぼ同等の数値となる。
【0039】
前記ロジン変性フェノール樹脂の5ソルトレランスは、10g/g以下であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは8g/g以下である。10g/gより大きいと樹脂と溶剤との相溶性が高くなるため、溶剤が離脱し難くなり、乾燥が悪くなる。前述したように、複数のロジン変性フェノール樹脂を混合して用いる場合は、その加重平均値がゲルワニスのヘプタントレランスと相関があるので、場合によっては5ソルトレランス10g/gを超えるものも使うことができる。
なお、5ソルトレランスはロジン変性フェノール樹脂とインキ溶剤との相溶性の目安であり、試料1gと混じり合うインキ溶剤5号ソルベントのg数で示される。ロジン変性フェノール樹脂の種類によっては5ソルトレランスが測定できないものもあるが、本明細書において、このような樹脂は、5ソルトレランスが2より小さいものとした。
【0040】
前記ロジン変性フェノール樹脂の酸価は、0〜30mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは19mgKOH/g以下である。樹脂によっては酸価を測定できないものもあるが、本明細書において、このような樹脂は、酸価が0mgKOH/gであるとみなすものとする。30mgKOH/gを超えると乾燥性が低下し、擦れ汚れの原因となったり、乳化しやすくなる。
なお、酸価はJIS K5601による測定値である。
【0041】
本発明で用いられるキレート剤はゲル化剤として働くものであるが、金属キレート、特に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート化合物が好ましく用いられる。
【0042】
前記ロジン変性フェノール樹脂の含有量は、オフセット印刷インキ全量中に2〜30重量%の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは、5〜10重量%の範囲内である。2重量%未満では樹脂固形分が少なく、顔料の分散が困難になり、得られるインキを所定の粘度に合わせようとすると降伏価が高く、流動性が低下するため、ローラー転移性が損なわれ、光沢や着肉性低下、乳化適性不良などの印刷適性を損なう、30重量%を超えるとインキのタックが高くなり、流動性も過剰となってしまうため、ミスチングの発生や低級紙への印刷や高速印刷においては、紙剥けしやすくなるため好ましくない。
【0043】
本発明のオフセット印刷インキは、前記オフセット印刷インキ用ゲルワニスを含有することが好ましい。ゲルワニスが、インキ中に5〜75重量%の範囲内であることが好ましい。なかでも、8〜50重量%の範囲内であることがより好ましく、10〜30重量%であることが特に好ましい。5重量%未満であると、インキへの弾性付与が不十分となるため、温度依存性が劣り、夏場など高温雰囲気下でインキダレが起こりやすくなり、それによるインキ余り、からみ汚れ、ミスチングが発生し易くなる。75重量%を超えると、インキのタックが高くなり、流動性も過剰となってしまうため、ミスチングの発生や低級紙への印刷や高速印刷においては、紙剥けしやすくなるため好ましくない。
【0044】
さらに、本発明のオフセット印刷インキは、前記ゲルワニスの他にオフセット印刷インキ用ワニス(以下、単に「ワニス」ともいう)を含有することが好ましい。
【0045】
前記オフセット印刷インキ用ワニスは、本発明のロジン変性フェノール樹脂以外のロジン変性フェノール樹脂、植物油類、キレート剤(ゲル化剤)などを混合加熱して製造され、そのヘプタントレランスが30〜150%で、アルコールナンバーが25〜32mlが好ましい。なお、従来の低温乾燥タイプではないヒートセット印刷インキ用ワニスは、一般的にヘプタントレランスが200%以上、アルコールナンバー22〜25mlとなっている。ヘプタントレランスとアルコールナンバーが前記範囲内であることによって、高温雰囲気耐性を付与することができる。
【0046】
ヘプタントレランスは、ワニス中の樹脂に対する溶剤の親和性の指標で、150%より大きいと印刷機上での安定性は良好となるが、印刷したとき溶剤の抜けが悪くなりセットが遅く(乾燥しにくく)なる。一方、30%より小さいと印刷機上でのインキ状態は不安定となり、流動性が低下し、ローラー間転移性、紙面への着肉が低下するため、品質の良い印刷物を安定して生産できなくなる。なお、ヘプタントレランスは前記オフセット印刷インキ用ゲルワニスと同様にコントロールできる。
【0047】
アルコールナンバーは、ワニス中の水酸基の割合を間接的に表す指標で、32mlより大きいと水を取り込みやすくなるため、過乳化しやすくなり、調量ローラーのインキ絡みや汚れが発生しやすくなる。また、25mlより小さいと水を取り込みにくくなるため、乳化しにくくなり、ローラー剥げしやすく、インキ転移性を阻害する。また、ワニスのアルコールナンバーは、用いるロジン変性フェノール樹脂の酸価を14〜17程度とし、水酸基価を60〜78程度とすることにより25〜32mlに調整可能である。この場合も複数のロジン変性フェノール樹脂を用いる場合は夫々の加重平均値を用いる。
【0048】
前記ワニスに使用されるロジン変性フェノール樹脂は、重量平均分子量が40,000〜300,000の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは、重量平均分子量が90,000〜170,000の範囲内である。重量平均分子量が300,000を超えると溶解性が低下するため、溶剤離脱性が早くなることにより、機上安定性が劣り、紙剥けが発生しやすくなる。また高い弾性を有するため、顔料分散性の低下、紙面への着肉低下や、レベリング性、流動性低下による光沢低下が起こりやすくなる。
【0049】
前記ワニスに使用されるロジン変性フェノール樹脂の酸価は、0〜30mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは19mgKOH/g以下である。樹脂によっては酸価を測定できないものもあるが、本明細書において、このような樹脂は、酸価が0mgKOH/gであるとみなすものとする。30mgKOH/gを超えると乾燥性が低下し、擦れ汚れの原因となったり、乳化しやすくなる。
なお、酸価はJIS K5601による測定値である。
【0050】
前記ワニスに使用されるロジン変性フェノール樹脂の水酸基価は、20〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは45〜100mgKOH/gの範囲内である。20mgKOH/gより小さいと印刷機上において適正なエマルションを形成し難く且つ乳化し難くなるため、ローラー剥げなどが発生し、転移不良などの印刷適性や画像品質に影響を及ぼす。150mgKOH/gを超えると過剰に水を取り込み易くなり、ローラー上にインキが余りやすく、調量ローラーのインキ絡みが発生しやすくなる。
【0051】
前記ワニスに使用されるロジン変性フェノール樹脂の5ソルトレランスは、10g/g以下であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは8g/g以下である。10g/gより大きいと樹脂と溶剤との相溶性が高くなるため、溶剤が離脱し難くなり、乾燥が悪くなる。後述するように、複数のロジン変性フェノール樹脂を混合して用いる場合は、その加重平均値がワニスのヘプタントレランスと相関があるので、場合によっては5ソルトレランス10g/gを超えるものも使うことができる。
【0052】
前記ゲルワニスと前記ワニスは、インキ製造の最初に混合してもよいが、先にワニスと植物油類、溶剤、顔料などを混練した後にゲルワニスを添加するなど、添加順はインキ製造設備に応じて選択できる。
【0053】
本発明のゲルワニスのロジン変性フェノール樹脂と前記ワニスのロジン変性フェノール樹脂以外のバインダー樹脂を使用することもできる。例えば、重合ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂および石油樹脂などが挙げられ、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0054】
バインダー樹脂全体の含有量は、オフセット印刷インキ全量中に20〜35重量%の範囲内であることが好ましい。20重量%未満では固形分が少ないため、低粘度となって流動性が過剰となり所望のインキを得ることが困難となり、35重量%を超えると光沢が低下しやすくなるため好ましくない。
【0055】
本発明のオフセット印刷インキは、前記ゲルワニスを含有し、温度範囲25〜60℃、ひずみ40%、角周波数10sec
−1で、パラレルプレート25mmの治具を用いて測定した温度依存性動的粘弾性tanδの最大値と最小値の差が1.5以下である。
【0056】
測定温度を25〜60℃と変化させたとき、温度依存性動的粘弾性tanδの最大値と最小値の差を1.5以下と小さくすることによって、夏場など高温雰囲気下でも優れた印刷物を与えることのできる(高温雰囲気耐性)オフセット印刷インキとなる。高温時にはインキの粘性は下がり、そのため高温時ではインキダレが起きやすくなり印刷物の汚れやドットゲインによる網点再現性の低下に繋がるが、温度変化に対する動的粘弾性変化を小さくすることによって粘性低下をカバーできると考えられる。すなわち、インキに弾性を付与すれば、ドットゲイン抑制、粘度低下によるインキダレといった悪影響を相殺できると考えられる。
【0057】
本発明のオフセット印刷インキは、前記ゲルワニス、前記ワニス、植物油類、溶剤、添加剤、顔料などを混練含有させて製造される。
【0058】
本発明で用いられる植物油類としては、主に大豆油または大豆油由来の脂肪酸エステルが用いられる。その他の植物油としては、例えばアマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、桐油などおよびこれらを再生処理したものが挙げられる。また、その他の植物油由来の脂肪酸エステルとしては、例えば綿実油、アマニ油、サフラワー油、向日葵油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、菜種油、胡麻油などの乾性油または半乾性油を由来とした脂肪酸モノアルキルエステルが例示できる。脂肪酸モノアルキルエステルを構成するアルコール由来のアルキル基の炭素数は5〜12のものが好ましく、具体例としてペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、3−メチル−1−ブチル、2,4−ジメチル−3−ペンチル、2−エチル−1−ヘキシル、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル、4−デシル、2−イソプロピル−5−メチル−1−ヘキシル、2−ブチル−1−オクチルなどである。なかでも特に好ましいのは2−エチル−1−ヘキシル、オクチルなどである。上記植物油類は、樹脂に対する溶解性が上がり、印刷物の光沢向上に効果がある。
【0059】
本発明のオフセット印刷インキの全量に対し植物油類は、7〜30重量%の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは10〜25重量%の範囲内である。7重量%未満では光沢が低下する。30重量%を超える量を添加しても光沢の向上効果は得られず、溶解性が高くなり、タックの経時での上昇が大きくなるため、ブランケット上に堆積したインキの粘着性が高まり、アフタータックが残り、紙剥けしやすくなる。
【0060】
大豆油と大豆油由来の脂肪酸エステルの比率は、重量比で100/0〜30/70の範囲内であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは90/10〜50/50の範囲内である。大豆油と大豆油由来の脂肪酸エステルの比率において、大豆油由来の脂肪酸エステルが、重量比で70重量%を超えるとタックが高くなり、紙剥けしやすくなる。
【0061】
本発明で用いられる顔料としては、有機顔料または無機顔料であり、例えばジスアゾイエロー、カーミン6B、フタロシアニンブルーなどに代表される有機顔料、およびカーボンブラック、炭酸カルシウムなどに代表される無機顔料などであり、特に限定されない。
【0062】
本発明で用いられる溶剤としては、流動性付与などの目的で、AF溶剤、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、マシン油、シリンダー油などに代表される石油系溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0063】
本発明では、他に印刷インキとしての機能向上を目的として、適宜、顔料分散剤、乳化剤、乾燥防止剤、乾燥促進剤、整面剤、滑剤などの添加剤を用いることができる。例えば、耐摩擦性、ブロッキング防止剤、滑り剤としては、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物などの合成ワックスを例示することができる。
【0064】
本発明のオフセット印刷インキは、従来公知の方法により製造できる。例えば、ロジン変性フェノール樹脂、植物油類、アルミキレート剤およびその他の添加物を混合過熱溶解してゲルワニスまたはワニスを得、このゲルワニスまたはワニスを添加し、次いで顔料を3本ロール、ビーズミルなどで分散させた混合物に、植物油類、添加剤、溶剤などを添加して製造される。
【0065】
本発明の印刷物は、基材となる紙に、通常のヒートセット印刷により製作出来るが、従来より乾燥機の設定温度を低くでき、低い紙面温度でも乾燥することが可能である。
【0066】
本発明の印刷物に用いる基材としては、通常のヒートセット印刷が可能な用紙であれば使用できるが、特に、平版印刷に適する更紙(非塗工紙)、微塗工紙、コート紙、アート紙などが好ましく用いられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0068】
[レゾール樹脂の調製]
製造例1
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、p−t−ブチルフェノール500部、オクチルフェノール500部、92%パラホルムアルデヒド434部、キシレン529部および水500部をしこみ、撹拌しながら50℃まで昇温した。次に、同反応容器中に45%水酸化ナトリウム水溶液89部をしこみ、90℃まで昇温後、2時間保温し、更に硫酸を滴下して中和させた。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を抽出し、レゾール樹脂A(キシレン70%溶液)を得た。
【0069】
製造例2
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、p−t−ブチルフェノール500部、オクチルフェノール500部、92%パラホルムアルデヒド434部、キシレン529部および水500部をしこみ、撹拌しながら50℃まで昇温した。次に、同反応容器中に45%水酸化ナトリウム水溶液89部をしこみ、90℃まで昇温後、2時間保温し、更に硫酸を滴下して中和させた。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を抽出し、レゾール樹脂B(キシレン70%溶液)を得た。
【0070】
製造例3
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、p−t−ブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド543部、キシレン661部および水500部をしこみ、撹拌しながら50℃まで昇温した。次に、同反応容器中に45%水酸化ナトリウム水溶液89部をしこみ、90℃まで昇温後、2時間保温し、更に硫酸を滴下して中和させた。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を抽出し、レゾール樹脂C(キシレン70%溶液)を得た。
【0071】
[ロジン変性フェノール樹脂の調製]
製造例4
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、ガムロジン1,000部をしこみ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、200℃に昇温し、加熱溶融させ、ダイマー酸(ハリダイマー200、ハリマ化成(株)製)40部を添加し、製造例1で得たレゾール樹脂A942部(固形分660部)を5時間かけて滴下した。滴下後、グリセリン93部およびパラトルエンスルホン酸1部を添加し、230〜280℃で酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させ、ロジン変性フェノール樹脂Aを得た。物性は、表1に示した。
【0072】
製造例5
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、ガムロジン1,000部をしこみ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、200℃に昇温し、加熱溶融させ、ダイマー酸(ハリダイマー200、ハリマ化成(株)製)100部を添加し、製造例2で得たレゾール樹脂B614部(固形分430部)を5時間かけて滴下した。滴下後、グリセリン93部およびパラトルエンスルホン酸1部を添加し、230〜280℃で酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させ、ロジン変性フェノール樹脂Bを得た。物性は、表1に示した。
【0073】
製造例6
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器中に、ガムロジン1,000部をしこみ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、200℃に昇温し、加熱溶融させ、無水マレイン酸40部を添加し、製造例3で得たレゾール樹脂C786部(固形分550部)を5時間かけて滴下した。滴下後、グリセリン74部およびパラトルエンスルホン酸1部を添加し、230〜280℃で酸価が30mgKOH/g以下となるまで反応させ、ロジン変性フェノール樹脂Cを得た。物性は、表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
[オフセット印刷インキ用ワニスの調整]
製造例7
ロジン変性フェノール樹脂R1(重量平均分子量174,000、5ソルトレランス10.7、酸価13mgKOH/g、水酸基価63mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)12部、ロジン変性フェノール樹脂R2(重量平均分子量114,000、5ソルトレランス5.5、酸価16.7mgKOH/g、水酸基価47mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)14部、ロジン変性フェノール樹脂R3(重量平均分子量88,000、33%0ソルトレランス1.3>、酸価26.7mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)16部、大豆油23部、AFソルベント7(新日本石油社製)22部、エクソールD110(エクソンモービルケミカル社製)12.4部、およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.6部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV1を得た。このワニスのヘプタントレランスは148%、アルコールナンバーは25.9mlであった。
【0076】
製造例8
ロジン変性フェノール樹脂R4(重量平均分子量213,000、33%0ソルトレランス1.3、酸価14.6mgKOH/g、水酸基価63mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)26部、ロジン変性フェノール樹脂R5(重量平均分子量115,000、0ソルトレランス2.4、酸価19.4mgKOH/g、水酸基価78mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)18部、大豆油11部、AFソルベント7(新日本石油社製)44.3部、およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.7部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV2を得た。このワニスのヘプタントレランスは400%、アルコールナンバーは24.5mlであった。
【0077】
[ゲルワニスの調製]
実施例1
ロジン変性フェノール樹脂A41部、AFソルベント7(新日本石油社製)38.7部、大豆白絞油20部およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.3部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ゲルワニスGV1を得た。このゲルワニスの物性は、表2に示した。
【0078】
実施例2
ロジン変性フェノール樹脂B46.5部、AFソルベント7(新日本石油社製)37.5部および大豆白絞油16部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ゲルワニスGV2を得た。このゲルワニスの物性は、表2に示した。
【0079】
比較例1
ロジン変性フェノール樹脂C36部、AFソルベント7(新日本石油社製)33.5部、大豆白絞油30部およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.5部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ゲルワニスGV3を得た。このゲルワニスの物性は、表2に示した。
【0080】
比較例2
ロジン変性フェノール樹脂R1(重量平均分子量174,000、5ソルトレランス10.7、酸価13mgKOH/g、水酸基価63mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)10部、ロジン変性フェノール樹脂R3(重量平均分子量88,000、33%0ソルトレランス1.3>、酸価26.7mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)30部、大豆油15部、エクソールD110(エクソンモービルケミカル社製)44.4部、およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.6部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ゲルワニスGV4を得た。このゲルワニスの物性は、表2に示した。
【0081】
【表2】
【0082】
[オフセット印刷インキの調製]
実施例3〜7および比較例3〜5
表3の配合でワニス、ゲルワニス、紅顔料(Brilliant Carmine6B、大同化成工業(株)製)、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)およびAFソルベント7(JX日鉱日石エネルギー(株)製)を配合し、3本ロールミルで練肉して、インキベースを得、ワックス(S−395、シャムロック社製)およびAFソルベント7(JX日鉱日石エネルギー(株)製)を添加、混合し粘度20〜25Pa・sの実施例3〜7および比較例3〜5のオフセット印刷インキを得た。なお、比較例5は従来型のオフセット印刷インキである。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例8〜10および比較例6〜8
表4の配合でワニス、ゲルワニス、藍顔料(Fastgen Blue GBK−19SD、DIC(株)製)、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)およびAFソルベント7(JX日鉱日石エネルギー(株)製)を配合し、3本ロールミルで練肉して、インキベースを得、ワックス(S−395、シャムロック社製)およびAFソルベント7(JX日鉱日石エネルギー(株)製)を添加、混合し粘度20〜25Pa・sの実施例8〜10および比較例6〜8のオフセット印刷インキを得た。なお、比較例8は従来型のオフセット印刷インキである。
【0085】
【表4】
【0086】
実施例11〜13および比較例9〜11
表5の配合でワニス、ゲルワニス、黄顔料(Lionol Yellow 1245P、東洋インキ製造(株)製)、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)およびエクソールD110(エクソンモービルケミカル社製)を配合し、3本ロールミルで練肉して、インキベースを得、ワックス(S−395、シャムロック社製)およびエクソールD110(エクソンモービルケミカル社製)を添加、混合し粘度20〜25Pa・sの実施例11〜13および比較例9〜11のオフセット印刷インキを得た。なお、比較例11は従来型のオフセット印刷インキである。
【0087】
【表5】
【0088】
表3〜5のオフセット印刷インキについて、下記のテーブルテストを行った。その結果を表6〜8に示した。
【0089】
[耐摩擦性]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキをRIテスター((株)明製作所製)でコート紙に展色し、すぐに温度調整可能なオーブンを用いて、120℃、10秒間、試料片を加熱し、乾燥させた。加熱後、試料片を1分間放冷し、放冷した試料片のインキ面を学振型耐摩擦性試験機にて白紙で擦り、色落ちの程度を目視にて評価した。色落ちが少ないものほど、耐摩擦性が優れる。色落ちの程度について、◎:非常に少ないもの、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の4段階で評価した。
【0090】
[光沢]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキをRIテスター((株)明製作所製)でコート紙に展色し、光沢度計PG−1(日本電色工業(株)社製、60°)による測定値を評価した。光沢値が高いほど優れる。また、色ごとに数値範囲が異なる。
紅の光沢値について、◎:75.0以上、○:70.0以上、75.0未満、△:65.0以上、70.0未満(実用上問題ない)、×:65.0未満(光沢が低く、実用できない)、の4段階で評価した。
藍の光沢値について、◎:55.0以上、○:50.0以上、55.0未満、△:45.0以上、50.0未満(実用上問題ない)、×:45.0未満(光沢が低く、実用できない)、の4段階で評価した。
黄の光沢値について、◎:55.0以上、○:50.0以上、55.0未満、△:45.0以上、50.0未満(実用上問題ない)、×:45.0未満(光沢が低く、実用できない)、の4段階で評価した。
【0091】
[タック]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキをインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量1.31cc、室温25℃、ローラー温度30℃、回転数400rpmの条件下で1分後の数値(タック値)を測定した。タック値が低いほど、紙剥けしにくくなる。
【0092】
[機上安定性]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキをインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量1.31cc、室温25℃、ローラー温度30℃、回転数1200rpmの条件下で0分のタック値と10分後のタック値の差(タック変化)を測定し、評価した。タック変化がより少ないものほど、機上安定性が優れる。
タック変化について、○:4.0未満(機上安定性最良)、△:4.0以上7.0未満(機上安定性良好、実用上問題ない)、×:7.0以上(機上安定性が劣り、実用できない)、の3段階で評価した。
【0093】
[乳化試験]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキについてリソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を使用し、インキ25gを40℃において回転数1200rpmで、インキ25gに対して、2ml/分の速度で水を添加していき、インキが飽和した時点の水分量を測定し、インキ25gに対する重量%とし、評価した。
乳化率(%)=100×(飽和時点の水分量g)/(インキ量g)
乳化率は、印刷機による印刷試験において、概ね30〜50%の範囲であることが好ましい効果が得られることが確認されている。
【0094】
[動的粘弾性tanδ]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキについて、Physica MCR301粘弾性測定装置(Anton Paar社製)にて、直径25mm、コーン角1°のコーンプレートを使用して、25℃、1Hzの時の動的粘弾性tanδ値を測定した。
【0095】
[温度依存性動的粘弾性tanδ]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキについて、Physica MCR301粘弾性測定装置にて、直径25mmのパラレルプレートを用いて、ひずみ40%、角周波数10sec
−1の条件下にて、測定温度25、40および60℃の動的粘弾性tanδ値を測定した。
【0096】
[実機印刷試験:擦れ汚れ]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキを、4色オフセット輪転機を使用して印刷試験を行ない、擦れ汚れが発生しない紙面温度を調べた。なお、擦れ汚れが発生しない紙面温度とは、ある紙面温度において、印刷機折機から排出された印刷直後の印刷物を適当部数抜き取り、すぐにベタ画像部を指で擦り、その擦れ具合を目視にて判定し、擦れ汚れが発生しなかった場合、乾燥機の設定温度を下げ、同様の作業を擦れ汚れが発生するまで繰り返し行い、擦れ汚れが発生しなかったときの最低の紙面温度とした。
印刷機:(株)小森コーポレーション製 4色オフセット輪転機
印刷回転数:600rpm
印刷版:CTP版
用紙:上質紙
紙面温度は、放射温度計IT−540(堀場製作所(株)製)を使用し、乾燥機出口を通過直後の紙面上の温度を測定した。また、同時にその時の乾燥機の設定温度も記録した。
【0097】
[実機印刷試験:着肉性]
実施例3〜13および比較例3〜11の各オフセット印刷インキについて、標準的な濃度の印刷物を与えることのできるインキの送り量を測定した。実施例3〜7および比較例3〜4の場合は比較例5を基準として、実施例8〜10および比較例6〜7の場合は比較例8を基準として、実施例11〜13および比較例9〜10の場合は比較例11を基準として、その増減を%で表示した。この数値が小さいほど、少量のインキ量で基準と同等の濃度となり、着肉性が優れる。
【0098】
[実機印刷試験:ドットゲイン]
上記着肉性試験で得られた印刷物を倍率100倍顕微鏡で網点の再現性を観察し、実施例3〜7および比較例3〜4の場合は比較例5を基準として、実施例8〜10および比較例6〜7の場合は比較例8を基準として、実施例11〜13および比較例9〜10の場合は比較例11を基準として、基準より細いものを○、基準と同等のものを△、基準より太っているものを×、として評価した。
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
表6〜8より、実施例3〜13は比較例3〜11と比較し、乾燥機の設定温度を低くでき、低い紙面温度でも乾燥でき、耐摩擦性、光沢のバランスに優れ、従来型のオフセット印刷インキと同程度の性能を十分有しているとともに、着肉性も良好で、ドットゲインも同等以上となっている。すなわち、実施例3〜13のオフセット印刷インキはどれも乾燥性に優れ、少量のインキ量でも濃度の高い印刷物を与えることができ、さらに高温環境下でもインキダレがなく、ドットゲインによる網点再現性の低下が抑えられるため、鮮明な印刷物を与えることができる。