(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1に開示されている細管式粘度計、特許文献2に開示されている回転粘度計、特許文献3に開示されている粘度計測方法、または、特許文献4に開示されている振動型粘度計のように、液体物の粘度を計測する方法として、液体を撹拌する時の抵抗の大きさを測定する方法、細管を通過する時間を計測する方法等が知られている。
【0003】
これら液体を撹拌する時の抵抗の大きさを測定する方法や細管を通過する時間を計測する方法では、計測の際、計測対象である液体物に直接接触する必要があり、再計測を行う場合の器具洗浄の必要性等に起因して、繰り返し測定が困難となり、経時的な粘性変化の測定に支障を生ずる場合があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、液体物の粘性測定を簡便かつ連続的に行うことが可能な技術の提供を目的に、あるいは、液体物の粘性測定を小型な装置で実現し、かつ広い測定レンジで測定できる技術の提供を目的に、特許文献5で開示する液体物測定装置を発明した。当該液体物測定装置は、液体物の粘性に関連した値を測定する液体物測定装置であって、液体物が流入する流入口および液体物が流出する流出口、または、液体物が流入し流出する流入出口を有する容器と、容器内の液体物の表面に振動を付加する加振機構と、容器に隣接して配置され、電気容量の変化に応じた信号を出力する容量センサと、容量センサからの信号に基づく測定値を生成する測定値生成部と、を有する。
【0005】
なお、特許文献6は、より適正なオイル劣化判断を行い得るオイル劣化検出装置を開示する。特許文献6において、オイル劣化検出装置は、オイル流路に2枚の極板を互いに並行して設置して、2枚の極板間に交流電圧を印加したときに流れる電流を電流計で計測し、信号処理部により、該極板間の電圧を電圧計で計測し、電流計および電圧計による計測結果に基づいてオイルの導電率および誘電率を求め、導電率および誘電率に基づきオイルの劣化を判断するとされている。
【0006】
また、特許文献7は、比較的簡易な構成でオイルの劣化度およびオイル中の燃料希釈率を正確に検知可能とする光学式オイル診断装置を開示する。特許文献7において、光学式オイル診断装置は、機関オイルへの透過光波長が660nm〜680nmの範囲の第1送受光部と、880nm〜900nmの範囲の第2送受光部と、2370nm〜2430nmあるいは2500nm〜2540nmの範囲の第3送受光部とを有し、第1、第2送受光部の各出力に基づいて機関オイルの劣化度を検知するとともに、第3送受光部の出力に基づいて機関オイル中の燃料希釈率を検知するとされている。
【0007】
また、非特許文献1は、容器内の液体が外部からの振動によって生起する波動の周波数が、数1で与えられることを開示している。
【数1】
ここで、ωは固有角周波数、gは重力加速度、nは自然数(n=1,2,…)であり、aは容器横断面における内壁間距離、hは容器底面から液体物表面までの距離である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5に記載の液体物測定装置によれば、容器内の液体物に触れることなく粘性測定が可能なので、計測ごとの装置洗浄が不要であり、簡便かつ連続的な粘性測定が可能になる。しかし、当該液体物測定装置は、容器内の液体物表面を振動させ、当該振動による液体物表面の波動の様子を容器外側に配置した誘電率センサによって検知し、粘性を推定するものであり、より正確な粘性測定を行うためには、誘電率センサからの出力をより大きく、つまり振動により発生する液体物表面の波動の振幅をより大きくする必要がある。
【0011】
また、液体物の粘性には、液体物の温度が影響することから、正確な粘性の特定のためには、液体物の温度管理、あるいは、液体物の温度変化に伴う測定値の補正等を行うことが好ましい。さらに、オイルのような液体物の劣化を評価する場合には、粘性に関係する測定値に加え、他の物性に関係する測定値も加味して劣化の度合いを評価することが好ましい。
【0012】
本発明の目的は、簡便かつ連続的な測定が可能な、粘度等の液体物測定において、より高い精度での測定を可能とする技術を提供することにある。また、本発明の目的は、当該液体物測定において、液体物の温度または温度変化の影響を排除した測定を可能とする技術を提供することにある。さらに、本発明の目的は、オイル等液体物の劣化度合いを、簡便、連続的かつ正確に判定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、液体物を収容する容器と、前記容器内の前記液体物に振動を加える加振機構と、前記容器に隣接して配置され、電気容量の変化に応じた信号を出力する容量センサと、前記容量センサが出力した前記信号の交流成分に基づき前記液体物の粘性に関連した粘性測定値を生成する測定値生成部と、を有し、前記加振機構が、前記容器の内壁寸法および前記液体物の収容量から計算される固有振動数で前記液体物の表面を振動させる液体物測定装置を提供する。
【0014】
前記容器の横断面の形状が方形である場合、固有振動数(f=ω/2π)が、数1を用いて計算されてもよい。
【数1】
但し、ωは固有角周波数、gは重力加速度、nは自然数(n=1,2,…)であり、aは容器横断面における内壁間距離、hは容器底面から液体物表面までの距離である。
【0015】
前記加振機構が、前記容器に振動を加える容器振動機構であり、前記容器振動機構が前記容器に加える振動は、前記固有振動数の正弦波振動、または、前記固有振動数の振動に同期したパルス振動であってもよい。前記容器が、前記液体物の流入口および流出口、または、流入出口を有する場合、前記加振機構が、前記流入口から前記液体物を前記表面に滴下し、前記滴下を前記固有振動数の振動に同期したタイミングで行う第1構成、前記液体物の流入または流出における流量を、前記固有振動数の振動に同期して変化させる第2構成、または、前記液体物の流入または流出において、前記固有振動数の振動に同期したタイミングの脈流を発生させる第3構成、の何れかの構成であってもよい。
【0016】
前記容器に収容される前記液体物の収容量を計測する容量計測手段をさらに有し、前記固有振動数の計算において前記容量計測手段により計測された収容量を用いてもよい。前記液体物の温度を調整する温度調整機構をさらに有し、前記温度調整機構により温度調整された前記液体物を前記容器に収容してもよい。前記容器が、前記液体物を収容した状態で前記液体物に接触する一対の電極を有し、前記一対の電極を用いて前記液体物の導電率を測定し、測定した導電率に基づき前記粘性測定値を補正する測定値補正部をさらに有してもよい。前記粘性測定値の経時データを取得および記録する経時データ取得記録部と、前記経時データ取得記録部に記録された複数の前記経時データから熱平衡状態における粘性測定値の予測値を推定するデータ推定部と、をさらに有し、前記液体物の粘性値として前記予測値を出力してもよい。前記測定値生成部が、前記容量センサが出力した前記信号の平均値に基づき前記液体物の誘電率に関連した誘電測定値をさらに生成し、前記粘性測定値および前記誘電測定値に基づき、前記液体物の性能を判例する判定部をさらに有してもよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、液体物測定装置100の概要を示す概念図である。液体物測定装置100は、容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有する。筐体160は、液体物測定装置100の土台であり、筐体160の内部には、容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130および測定値生成部140が収納されている。
【0021】
容器ホルダ110は、容器112を保持し、加振機構120からの振動を容器112に伝える。容器ホルダ110は、容器112に振動を伝える必要性から、筐体160に対し、少なくとも上下方向に運動の自由度を有する必要があり、左右や前後についても自由度を有することが好ましい。また、容量センサ130を容器ホルダ110の外側に配置する場合、容器ホルダ110を透して静電容量が測定できるよう、容器ホルダ110を誘電体で構成する必要がある。容器ホルダ110が容量測定に影響を与るものではない場合、容器ホルダ110の材質は特に制限されない。なお、容器112に直接振動を与えるような場合、あるいは、容器112に振動を与える以外の方法で液体物114の表面に振動を与える場合は、容器ホルダ110は必須ではない。
【0022】
容器112は、測定対象物である液体物114を収容する。容器112は、液体物114を保持できる程度の化学的安定性および機械的強度を有するものである必要がある。また、容器112を透して静電容量を測定する必要があることから、容器112は、誘電体である必要がある。なお、
図1において、容器112内の液体物114の表面は、実線または破線で示しており、実線は振動を受けて波打っている状態を、破線は静止時の状態を示している。静止時における容器112の底面から液体物114の表面までの距離をhとする。
【0023】
図2は、容器112の一例を示した正面図、上面図および側面図であり、(a)は容器横断面が正方形の場合、(b)は容器横断面が長方形の場合である。容器横断面が正方形である場合、容器横断面における内壁間距離は正方形の一辺の長さaであり、容器横断面が長方形である場合、容器横断面における内壁間距離は長方形の短辺の長さaまたは長辺の長さbである。
図2において、破線は液体物114の静止時表面を示しており、底面から液体物表面までの距離hを併記している。
【0024】
加振機構120は、容器112の内部にある液体物114に振動を加える。液体物114に振動が加えられた結果、液体物114の表面に波動を生じ、当該波動の大きさ容量センサ130で測定して粘性等の液体物114に係る物性を測定できる。
【0025】
本実施の形態1の加振機構120は、
図1に示すように、偏心カム122およびモーター制御部124を有する振動機構であり、容器112の振動を通じて液体物114の表面に波動を生じるタイプの容器加振機構である。偏心カム122はモーターにより駆動され、モーター制御部124によって回転速度、すなわち振動周期が制御される。なお、加振機構120は、偏心カム122を用いた機構のほか、公知の振動発生機構を用いることができる。
【0026】
容量センサ130は、容器112に隣接して配置され、電気容量の変化に応じた信号を出力する。容量センサ130は、検出電極132および接地電極134からなるコンデンサ電極対と、検出電極132の容量値を電圧に変換するC/Vコンバータ136とを有する。容器112内の液体物114の表面が振動によって波打つと、表面波の状態、たとえば波高に応じて検出電極132の容量値が変化する。この容量値の変化をC/Vコンバータ136が電圧変化として出力する。つまり、容量センサ130から出力される信号は、液体物114の表面の波動(波高)を反映したものとなる。液体表面の振動は、粘性、表面張力、密度をパラメータとして二階線形微分方程式でモデル化することが可能であり、表面張力および密度が変化しない条件においては、液体表面の振動は粘性に依存することになる。よって、静電容量の変化によって液体物114の表面の振動を測定すれば、粘性を推定することが可能になる。なお、接地電極134により検出電極132の浮遊容量を安定化し、容量センサ130からの出力信号に含まれる浮遊容量の影響を小さくすることができる。
【0027】
C/Vコンバータ136は、たとえば、容量の変化を周波数の変化として出力する容量‐周波数変換回路、および周波数を電圧に変換する周波数−電圧変換回路によって構成できる。容量‐周波数変換回路は、たとえば一般的なLC共振回路とNOT論理回路を適切に組み合わせて構成することができる。
【0028】
測定値生成部140は、容量センサ130からの出力信号の交流成分に基づき液体物114の粘性に関連した粘性測定値を生成する。本実施の形態では、測定値生成部140として、バンドパスフィルタ142、整流回路144および積分回路146からなる回路を例示する。当該測定値生成部140は、あくまで例示であり、これに限られるものではない。
【0029】
容量センサ130の出力信号は、測定値生成部140のバンドパスフィルタ142を通して直流成分が除去され、整流回路144で整流された後、積分回路146によって、交流成分を所定周期について積分した値が出力される。バンドパスフィルタ142により、浮遊容量等の影響が除去され、液体物表面の振動に起因する信号を抽出することができる。積分回路146により微小信号が効率よく抽出され、あるいは複数の周波数を含んだ信号が適正に抽出される。積分回路146の出力は、表示部150に表示することができる。
【0030】
なお、上記例では、測定値生成部140としてバンドパスフィルタ142、整流回路144および積分回路146を例示しているが、容量センサ130からの出力信号をデジタル処理し、交流成分だけを抽出するような信号処理を行ってもよい。たとえば、容量センサ130の出力信号を、適切なサンプリング間隔ΔTで、サンプリング期間Tの間繰り返しサンプリングし、各サンプリング値をx
i、x
iの平均をx
avとすると、出力信号の交流成分として、数2に示すような平均偏差絶対値和RAWが定義できる。測定値生成部140の交流成分に基づく粘性測定値として、RAWを出力するようなデジタル回路を構成してもよい。
【数2】
ここでT
startはサンプリング開始時刻、T
endはサンプリング終了時刻であり、適切なサンプリング間隔ΔTとして信号周期の1/2より短い時間、たとえば信号周期の1/10程度の時間が例示できる。サンプリング期間T=T
end−T
startは信号周期以上であることが好ましく、たとえば信号周期の数倍程度が例示できる。
【0031】
筐体160は、容器112の変位や動きに対し固定され、接地電位を与える存在として機能する。このため、筐体160は、振動によって動かない程度の質量を有し、導電体であることが好ましい。また、容量センサ130による静電容量の測定では外乱電界の影響を最小限に抑えることが好ましい。この観点から、筐体160の全体を導電体で構成し、液体物測定装置100の全体を囲む構成とすることが好ましい。導電体からなる筐体160によって電気的シールドを構成し、容量センサ130による静電容量の測定精度を向上することができる。
【0032】
本実施形態の液体物測定装置100では、加振機構120が、容器112の内壁寸法および液体物114の収容量から計算される固有振動数で液体物114の表面を振動させる。液体物114の表面を固有振動数で振動させることで、液体物表面に生じる波の振幅(波高)が大きくなり、容量センサ130の出力を大きくすることができる。
【0033】
なお、固有振動数は基本波振動数に加え、高調波振動数を含むものとする。また、本発明における固有振動数の概念は、計算により導出された基本波振動数または高調波振動数と厳密に一致する値に限定されるわけではなく、当該計算により得られた値から若干外れた値であっても液体物表面で十分に高い波高が得られる限り、そのような外れた値を含むある程度の幅を有したものとする。
【0034】
容器112の横断面の形状が、
図2に示すような正方形または長方形である場合、固有振動数(f=ω/2π)は、数1を用いて計算される値とすることができる。
【数1】
但し、ωは固有角周波数、gは重力加速度、nは自然数(n=1,2,…)であり、aは容器112の横断面における内壁間距離、hは容器112底面から液体物114表面までの距離である。
【0035】
数1においてn=1の場合は基本波の固有振動数であり、数3のようになる。容器112に加える振動は、固有振動数の正弦波振動、または、固有振動数の振動に同期したパルス振動とすることができる。
【数3】
【0036】
図3は、容量センサ130の出力信号波形であり、加振機構120による振動の周波数を2.5Hz、3.1Hz、4.3Hz、5.4Hzおよび7.3Hzと変化させた場合をそれぞれ示す。5.4Hzにおいてセンサー出力波形の振幅が最も大きくなっていることがわかる。
図4は、
図3に示す出力信号の平均差絶対値和(RAW)を計算し、振動周波数の関数として示したグラフである。5Hz近傍のRAWのピークがあることがわかる。なお、
図3および
図4に示すデータは、容器112の横断面における内壁間距離aを0.03m、容器112の底面から液体物114表面までの距離hを0.02mとした場合のデータであり、当該aおよびhの値を用いた基本振動数(周波数)を数3を用いて計算したところ、f=5.02Hzであり、RAWのピーク周波数と基本固有振動数とは、ほぼ同じであることが確認できる。
【0037】
以上、説明の通り、加振機構120による液体物114表面への振動を、容器112の内壁寸法および液体物114の収容量から計算される固有振動数とほぼ同じとすることで、液体物表面に生じる波の振幅(波高)を大きくすることができ、容量センサ130の出力を大きくすることができる。この結果、簡便かつ連続的な測定が可能な、粘度等の液体物測定において、より高い精度での測定を可能とすることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図5は、液体物測定装置200の概要を示す概念図である。液体物測定装置200は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有する。液体物測定装置100と同様の構成については説明を省略する。
【0039】
液体物測定装置200における容器112は、液体物114が流入する流入口202および液体物114が流出する流出口204を有する。容器112内の液体物114の全部または一部が、流入口202および流出口204を介して、または、流入出口を介して入れ替えられつつ、測定値生成部140により測定値が生成される。よって、容器112を洗浄等することなく、液体物114の粘性を連続的に測定することができる。
【0040】
本実施の形態2では、流入口202および流出口204を別々に有する例を示すが、流入口202および流出口204は、液体物114を流入し流出する一つの流入出口に代えてもよい。なお、容器112には、容器内部の圧力を調整する圧力調整口を設けてもよい。たとえば、容器外の圧力と容器内の圧力を同じにする開口を圧力調整口として備えてもよい。この場合、開口には塵等の混入を防止するフィルタを備えることができる。また、圧力調整用の開口と、液体物114の流出入口とを兼ねることもできる。
【0041】
本実施の形態2における加振機構は、偏心カム122およびモーター制御部124による加振機構120の外、流入口202から液体物114を表面に滴下し、滴下を固有振動数の振動に同期したタイミングで行う機構が例示できる。この場合、容器112自体を振動させる必要はなく、容器112はもとより、装置全体を小型化することが可能になる。また、加振機構120として、液体物114の流入または流出における流量を、固有振動数の振動に同期して変化させる機構を例示することができる。この場合も液体物114を滴下する機構と同様、装置を小型化することができる。また、加振機構120として、液体物114の流入または流出において、固有振動数の振動に同期したタイミングの脈流を発生させる機構を例示することができる。同様に装置を小型化することができる。
【0042】
以上、説明の通り、容器112に流入口202および流出口204を設けることで、容器112を洗浄等することなく、液体物114の粘性を連続的に測定することができる。この結果、簡便かつ連続的な測定が可能な、粘度等の液体物測定において、より高い精度での測定を可能とすることができる。
【0043】
(実施の形態3)
図6は、液体物測定装置300の概要を示す概念図である。液体物測定装置300は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有し、容量計測手段310をさらに有する。
【0044】
容量計測手段310は、容器112に収容される液体物114の収容量を計測する。また、固有振動数の計算において容量計測手段310により計測された収容量を用いる。容量計測手段310は、重量センサ312および重量計314により構成し、計測した重量から収容量を計算することができる。容量計測手段310により収容量を計測し、これを用いて固有振動数を計算することで、より正確な固有振動数を計算することができ、容量センサ130の出力信号を大きくすることができる。
【0045】
なお、容量計測手段の他の例として、
図7に示すような液体供給量計測手段410を例示することができる。
図7は、液体物測定装置400の概要を示す概念図であり、液体供給量計測手段410は、液体物供給装置412と供給路414とからなる。液体物供給装置412は液体物の供給量を計測することができ、供給積算量から液体物114の収容量を算出することができる。
【0046】
(実施の形態4)
図8は、液体物測定装置500の概要を示す概念図である。液体物測定装置500は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有し、温度調整機構510をさらに有する。温度調整機構510は、液体物供給装置512と冷加温器514と供給路516とを有する。冷加温器514は、液体物供給装置512から供給される液体物114を供給路516の途中で冷却または加熱する。温度調整機構510により冷却または加熱された液体物114は容器112に収容される。
【0047】
上記した液体物測定装置500によれば、液体物114の温度が室温より高い場合であっても、測定の際には温度調整機構510により冷却されており、温度降下の影響を受けることが少ない。この結果、液体物測定において、液体物114の温度の影響を排除または小さくすることができる。また、液体物114が室温で固化するようなものであっても、測定の際には温度調整機構510により加熱され、液体状態を維持することで測定を可能にすることができる。
【0048】
(実施の形態5)
図9は、液体物測定装置600の概要を示す概念図である。液体物測定装置600は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有し、導電率測定機構610および測定値補正部620をさらに有する。
【0049】
導電率測定機構610は、一対の電極612と導電率測定部614を有する。一対の電極612は、容器112が液体物114を収容した状態で液体物114に接触する位置に配置されたものであり、導電率測定部614は、一対の電極612を用いて液体物114の導電率を測定する。測定された導電率は測定値補正部620に送られ、測定値補正部620は、受信した導電率に基づき、粘性測定値を補正する。
【0050】
上記した液体物測定装置600によれば、導電率測定機構610により液体物114の導電率を測定し、測定された導電率をもちいて粘性測定値を補正することから、より正確な粘性を測定することができる。たとえば液体物114の温度が想定する温度より高い場合や低い場合に、導電率を用いて温度による変化を補正でき、液体物測定において、液体物114の温度の影響を排除または小さくすることができる。
【0051】
(実施の形態6)
図10は、液体物測定装置700の概要を示す概念図である。液体物測定装置700は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、測定値生成部140、表示部150および筐体160を有し、経時データ取得記録部710およびデータ推定部720をさらに有する。
【0052】
経時データ取得記録部710は、粘性測定値の経時データを取得するデータ取得部712と、取得したデータを記録するデータ記録部714と、データ取得部712のデータ取得タイミングを制御するタイマ716とを有する。データ推定部720は、データ記録部714に記録された複数の経時データから熱平衡状態における粘性測定値の予測値を推定する。データ推定部720で推定された予測値は、液体物114の粘性値として表示部150に出力する。
【0053】
図11は、室温より高い温度の液体物114を測定した場合の平均差絶対値和(RAW)の時間変化を示すグラフであり、
図12は、
図11における平均偏差絶対値和(RAW)の値を傾きに対してプロットしたグラフである。
図11から、時間の経過つまり温度の低下とともに、RAWが低下していることがわかる。つまり、十分な時間を経過していない(温度が下がり切っていない)液体物114のRAWは、熱平衡時のRAWより高く観測され、熱平衡時の液体物114として校正されている場合には、低い粘度値として表示されることになる。よって正確な粘度計測のためには液体物114が十分に冷却されるまで測定を待つ必要がある。
【0054】
しかし、冷却過程にある複数の測定値がある場合、
図12のプロットを利用して、傾き0(熱平衡)となるRAW値を推定することが可能になる。本実施の形態6の経時データ取得記録部710は上記プロット作成のためのデータを取得し、データ推定部720は上記スロットから熱平衡時のRAW値を推定する。これにより、熱平衡に達するのを待つことなく、早い段階で正確な粘性値を得ることができる。その結果、液体物114の温度変化の影響を排除または小さくすることができる。
【0055】
(実施の形態7)
図13は、液体物測定装置800の概要を示す概念図である。液体物測定装置800は、液体物測定装置100と同様の容器ホルダ110、加振機構120、容量センサ130、表示部150および筐体160を有する。しかし、測定値生成部140とは異なる測定値生成部810を有し、判定部820をさらに有する。
【0056】
液体物測定装置800の測定値生成部810は、粘性測定値に加え、容量センサ130が出力した信号の平均値に基づき液体物114の誘電率に関連した誘電測定値をさらに生成する。判定部820は、粘性測定値および誘電測定値に基づき、液体物114の性能を判例する。液体物114の性能として、オイルの劣化度を例示することができる。
【0057】
測定値生成部810は、バンドパスフィルタ142、整流回路144および積分回路146の他、ローパスフィルタ812および平滑回路814を有する。バンドパスフィルタ142、整流回路144および積分回路146により粘性測定値を生成するとともに、ローパスフィルタ812および平滑回路814により、容量センサ130の出力信号の平均値を抽出し、液体物114の誘電率に関連した誘電測定値をさらに生成する。
【0058】
なお、測定値生成部810は、あくまで例示であり、これに限られるものではない。たとえば、容量センサ130からの出力信号をデジタル処理し、平均値を抽出するような信号処理を行ってもよい。たとえば、既述のサンプリング値x
i、x
iから平均x
avを算出し、これを誘電測定値とすることができる。
【0059】
上記した液体物測定装置800によれば、誘電率に関連する誘電測定値と粘性測定値の両測定値から液体物114の特性を評価することができるので、たとえばオイル等液体物の劣化度合いを、簡便、連続的かつ正確に判定することができる。
【0060】
以上、実施の形態では、本願発明を液体物測定装置として説明したが、本発明の液体物測定装置は、液体物測定方法、そのような装置もしくは方法または機能を実現するプログラムとして把握することも可能である。
【0061】
また、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。たとえば、測定値生成部140は、信号の振幅を測定値として生成することも可能である。また、上記した実施の形態1〜7の各実施の形態は、発明の構成上無理が無い限り、その構成要素を任意に組み合わせて実施することができる。
【解決手段】液体物を収容する容器と、前記容器内の前記液体物に振動を加える加振機構と、前記容器に隣接して配置され、電気容量の変化に応じた信号を出力する容量センサと、前記容量センサが出力した前記信号の交流成分に基づき前記液体物の粘性に関連した粘性測定値を生成する測定値生成部と、を有し、前記加振機構が、前記容器の内壁寸法および前記液体物の収容量から計算される固有振動数で前記液体物の表面を振動させる液体物測定装置を提供する。