(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2反射器の最上反射層の厚さは、前記第2反射領域では1/4波長の奇数倍であり、前記第1反射領域ではゼロ又は1/4波長の偶数倍であることを特徴とする請求項3又は4記載のレーザ発振装置。
前記閉じ込め層は、前記第1反射器及び前記第2反射器の間に配置されており、前記電流閉じ込め開口を取り囲む半導体酸化層又はイオン注入領域を有することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項記載のレーザ発振装置。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振装置、特に高速通信システムで広く使用される面発光レーザは、共振回路を形成するように2枚の高反射鏡すなわち高反射器の間に挟まれたキャビティを有する。鏡は、交互に配置された高屈折率及び低屈折率の半導体層を有し、p−n接合又はp−i−n接合をそれぞれ形成するようにp型及びn型のドーパントすなわち不純物でドープされる。半導体レーザにおいて、レーザ発振を発生するゲイン機構は、正孔及び電子の再結合からの光発生によって与えられる。正孔及び電子の再結合は、ダイオード接合のp側及びn側からそれぞれ注入される。電気通信の用途において、キャリアの再結合は、電気的ポンピングにより、すなわち、ダイオード接合を順方向にバイアスすることにより生ずる。一般的には、レーザ発振装置の電流は、開口の周りの材料の電気抵抗が増大するように、レーザ発振装置の開口以外の場所でレーザ発振装置構造にイオンを注入することにより、レーザの開口に限定される。或いは、レーザ発振装置の開口の周りの電流は、レーザ発振装置の開口の周りの材料を酸化することにより抑制される。
【0003】
半導体レーザは、電子デバイスで使用される光相互接続を構築するために電気通信用途で使用される。このような光相互接続は、従来のケーブル相互接続よりかなり高いハンド幅を支持する能力があるため、近年、電子デバイスで広く使用されるようになった。これに関連して、光信号を電気信号に変換するため及びその逆のための光モジュールの開発は、光相互接続を使用する中間基板用途等の幅広い用途で重要な役割を果たす。
【0004】
面発光レーザ等の半導体レーザは、2つのスキームに従って情報を伝達するのが代表的である。第1のスキームでは、レーザは一定の発光状態で維持され、出力強度は、外部から印加した電圧で駆動された外部変調器により変調される。この第1のスキームは高コストの外部装置を要し、面発光レーザを含む光相互接続はほぼ直接的に変調される。直接変調はレーザの入力電流の変化を伴い、換言すると、光強度における時間依存の出力を生成するように、バイアス電流の周りの電流の変調を伴う。通常、電流は、2値の間で切り換えられ、両値ともデバイスの閾値電流より大きい。
【0005】
図7は、従来技術のレーザ発振装置4000を示す。レーザ発振装置は、半導体材料製の基板4030、第1鏡4300及び第2鏡4100を有する。第1及び第2の鏡4300,4100はそれぞれ、交互に積層された半導体鏡層4310,4320を有する。層4310は高屈折率を有するのに対し、層4320は低屈折率を有する。第1鏡4300はn型ドーパントでドープされるのに対し、第2鏡4100はp型ドーパントでドープされる。レーザ発振装置4000は、第1及び第2の鏡4300,4100の間にキャビティスペーサ4200をさらに有する。キャビティスペーサ4200は、第1クラッド層4230、第2クラッド層4210及び活性層4220を有する。最後に、レーザ発振装置4000は、電流閉じ込め開口4021を区画する電流閉じ込め領域4020を有する。電流閉じ込め領域は、第2鏡4100の直ぐ下の第2クラッド層4210に形成される。
【0006】
図8は、
図7のレーザ発振装置4000の作動原理を示す概略図である。特に、
図8は、レーザ発振装置4000の活性層におけるキャリア密度の直接変調の効果を示す。電流は、2値の間で切り換えられ、両値ともデバイスの閾値電流より大きい。レーザ発振装置4000において、キャリア密度は完全にクランプされてはいないが、光場の強度を有するゲイン飽和による注入電流、及び内部加熱によるゲイン減少と共に揺れる。
【0007】
図8は、活性層4220に沿った光場の強度の分布を示す。一点鎖線のグラフから分かるように、光場の強度は、電流閉じ込め開口4021に対応する活性層の領域で最大である。光場強度は、一般的に周辺で低く、活性領域の中心で高い。さらに、光損失も、活性層の中心よりも活性層の周辺領域で高い。これは、活性層の周辺での誘導再結合率を低くする。大電流レベルから小電流レベルに切り換える際に、活性層4220でのキャリア密度も高レベルから低レベルに切り換わる。
図8から分かるように、閾値を超える高い特定のバイアス電流で、活性層4220におけるキャリア密度分布は、破線曲線(3)で示される。活性層4220の領域Aは、光ゲインが閾値に達する領域を示す。領域Aの外側で、キャリア密度は、生成されたゲインが閾値に達するには十分ではない。さらに、領域Aの内側で、キャリア密度は一定ではないが、局在温度や局在光子密度が高い場所では大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8は、開口の中心に向かってキャリア密度が増加する特定の場合を示す。
【0009】
大バイアス電流では、活性層4220の温度及び光密度の双方が増加する。この結果、領域Aにおけるキャリア密度もまた、閾値でのゲインを維持するために増加する。大バイアス電流では、領域Aを取り囲む領域のキャリア密度もまた増加し、領域Aを取り囲む領域Bの閾値に到達するゲインを生成するほど高くなる。この振舞いは、破線曲線(1)で示される。この結果、キャリア及び光子が誘導再結合によって強く結合するレーザの活性領域は、小バイアス電流での領域Aから大バイアス電流での領域A及び領域Bに拡大する。
【0010】
大バイアス電流から小バイアス電流に切り換わる際に、活性層の領域Aのキャリア密度は、領域内で高い光場強度でより強く誘導再結合することにより、活性層4220の領域Bにおける密度よりかなりの高速で減少する。このため、キャリア密度は、実線曲線(2)で示されるように活性層4220の周辺で2個のピークを有する。活性層4220の領域Bにおけるこれらの過剰キャリアは、貯留部として作用する。この貯留部からは、活性層4220の中心に向かって周辺からキャリアが流れる。これにより、レーザの活性層と平行に連結されたキャパシタンスとして作用する。これは、レーザ発振装置400の下降時間を延長し、変調信号への応答に悪影響を与える。この結果、共通のレーザ発振装置の設計は、レーザ発振装置を使用する光相互接続の変調バンド幅及び高速性能を制限してしまう。
【0011】
より正確には、高レベルから低レベルに変化するので、レーザ4000は低キャリア密度及び小さな誘導再結合率に向かって発展し、レーザ
4000は新たな小電流レベルに適応する際に減速する。これにより、下降時間が延長する際の活性層周辺での過剰キャリア密度の効果が強くなる。電流波形が印加された後、光場強度がその公称値に戻る場合であっても、キャリア密度は戻らない。これにより、過去から将来に生ずる動的結合、例えば、シンボル間の干渉となる。
【0012】
さらに、絶縁酸化物層4020を使用することにより電流閉じ込めが得られるデバイスにおいて、電流閉じ込め開口を区画する絶縁酸化物に関連した有効寄生キャパシタンスは、酸化層の下のダイオード接合のキャパシタンスに直列の酸化層4020にわたるキャパシタンスにより決定される。ダイオードがバイアスされない場合、有効キャパシタンスは、ダイオードの空乏キャパシタンスと直列の酸化層キャパシタンスにより与えられ、最新のものはこの2個のうちの低い方である。順方向バイアス下では、ダイオードのキャパシタンスが増加するのに対し、その直列抵抗は減少し、構造物の有効キャパシタンスを全体として増加することになる。最大キャパシタンスは、比較的大きな酸化キャパシタンスのみで制限される。
【0013】
酸化層4020に形成された開口から広がる横キャリアは重要になり得るので、定常状態では、漏れ電流を生じさせる。広がる横キャリアはまた、絶縁酸化物4020下のダイオード構造の外側領域に対してある程度の順方向バイアスを与える。これにより、バイアスでデバイスの有効寄生キャパシタンスが増加する。
【0014】
上述の効果は、レーザ発振装置の変調速度、延いては変調バンド幅をさらに制限する。
【0015】
共通のレーザ発振装置の直接変調に関連する問題を克服するために、活性層の周辺に向かって広がるキャリアの効果を減少させる多くの解決策が提案されてきた。特に、活性領域内部でキャリア密度をクランプすることは、少ないゲイン飽和及び内部加熱により改善されるかもしれない。或いは、活性層の周辺のキャリア密度を減少させるようキャリアを追加で閉じ込めるために、光子注入法又はパターン化トンネル接合法が使用できる。
【0016】
しかし、公知の技法は、キャリア閉じ込め構造の横形状が光場の横分布と合致した場合にのみ追加の閉じ込めが有効であるという不利がある。上述の設計を有するデバイスを開発することは、大規模の設計を要し、実現化が非常に複雑で高コストである。
【0017】
従って、本発明が対処する課題は、直接変調型高速光ファイバ通信システムで使用されるレーザ発振装置を提供することである。このレーザ発振装置は、高変調速度で駆動でき、有効寄生キャパシタンスが小さく、特に簡単且つ低コストで製造できると同時に、より高速でより高信頼性の光ファイバ通信システムを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題は、主レーザの活性層の周辺に、防護レーザの機能を有する補助レーザを有するレーザ構造を提供することにより解決する。防護レーザは、主レーザの活性領域の周辺に重なる活性領域内のキャリア密度をクランプし、主レーザの活性領域の周辺での追加の誘導再結合をさらに減少させる。
【0019】
追加の誘導再結合は、入力電流が切り換わる際に、活性領域の周辺の過剰キャリア密度が減少する割合で増加する。さらに、防護レーザは、ダイオード構造の外側領域でキャリア注入の減少を生じさせ、これにより酸化物層に関連する有効寄生キャパシタンスの増加を制限する。最後に、本発明で提案された解決策は、イオン注入又はパターン化トンネル接合等の精巧且つコスト高の技法を使用する必要がない。
【0020】
好適な一実施形態によれば、本発明は、光相互接続に使用されるレーザ発振装置を提供する。レーザ発振装置は、第1及び第2の反射器と、電流閉じ込め開口内に電流を閉じ込めるよう構成された閉じ込め層と、第1及び第2の反射器間の活性層とを具備する。活性層は、電流閉じ込め開口に整列した主活性領域と、主活性領域を取り囲
み且つ該主活性領域から漏れるキャリアを有する補助活性領域とを具備する。第2反射器は、電流閉じ込め開口に配置された第1反射領域と、第1反射領域を取り囲む第2反射領域とを具備する。第2反射領域及び第1反射器は、補助活性領域で誘導再結合を誘導するよう構成される。
【0021】
このようにして、活性層の周辺が閉じ込め層を介して電気的に絶縁され、且つキャリア密度は活性層にわたってクランプされていないが、主活性領域の周辺に蓄積された過剰キャリアは、第2反射領域により誘導された誘導再結合によって消費することができる。主活性領域の周辺の過剰キャリアが追加の誘導再結合により消費されるので、主活性領域の周辺から中心にキャリアが流れることによる容量性効果は抑制される。
【0022】
さらに有利な発展形によれば、第2反射領域の反射率は、第1反射領域の反射率より高い。第2反射領域の高い反射率により、主活性領域の周辺での光場の強度が増大し、この結果、キャリアの再結合率が増大する。さらに、第2反射領域の高い反射率により、補助活性領域のレーザ発振閾値が減少する。高い再結合率が過剰キャリアを消費することにより、主活性領域の周辺でのキャリアの貯留部の形成を防止する。
【0023】
別の発展形によれば、第1反射領域は電流閉じ込め開口と整列し、第1反射領域の面積は電流閉じ込め開口の面積よりも大きい。特に、電流閉じ込め開口が円形を有する場合、第1反射領域も円形となるよう選択され、第1反射領域の直径D
1は電流閉じ込め開口の直径D
0より大きい。この場合、第2反射領域は、第1反射領域の直径D
1と等しいか大きい内径D
2を有するリング状となるよう選択される。
【0024】
さらに別の発展形において、第1反射領域の面積と電流閉じ込め開口の面積との比S
1/S
0は、1.0〜3.3の範囲内にある。電流閉じ込め開口及び第1反射領域の寸法間の関係により、主レーザ及び防護レーザ間の結合を制御することができ、この結果、主レーザの周辺での過剰キャリアの容量性効果の低減に対する防護レーザの有効性を制御できる。
【0025】
本発明の利点のある実施形態に従ったレーザ発振装置において、第1反射器及び第2反射器は、高屈折率を有する少なくとも1層と、低屈折率を有する1層とをそれぞれ具備する。これらの層は標準的技法で容易に成長でき、このように得られた反射器は99.5%を超える最適反射率を有する。
【0026】
第2反射器の1層は、第1鏡領域でよりも第2反射領域において厚くなるよう製造される。第2反射器の最上反射層の厚さは、第2反射領域では1/4波長の奇数倍となり、第1反射領域ではゼロ又は1/4波長の偶数倍となるよう選択される。このようにして、第1反射領域及び第2反射領域は、従来技術のレーザ発振装置の製造方法において単に追加の一工程を実行することにより容易に画定できる。
【0027】
本発明の別の有利な実施形態において、第2反射器は、第2反射領域に配置されると共に第2反射領域の反射率を増大するよう構成された反射器要素を有する。従って、第2反射器の反射率は、いかなるエッチング及びマスキング工程を含むことなく、第2反射器の上面に追加層を成長又は実装することによって第1及び第2の反射領域を形成するように、選択的に調節することができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、第1反射領域、主活性領域及び第1反射器は主レーザを画定し、第2反射領域、補助活性領域及び第1反射器は補助レーザを画定する。
【0029】
本発明に係るレーザ発振装置は、第1クラッド層及び第2クラッド層をさらに具備してもよい。第1及び第2のクラッド層は、それらの間に活性層を挟んでキャビティスペーサを形成する。キャビティスペーサの長さは、発光波長で半波長の整数倍に対応するように選択される。キャビティスペーサの厚さは、共振及び発光波長を画定する。
【0030】
本発明のさらなる発展形によれば、活性層は、そのいずれかの側面に、複数の量子井戸及び障壁の交互の積層と、垂直閉じ込め層とを有する。
【0031】
横閉じ込め層は、第1反射器及び第2反射器の間に配置されており、電流閉じ込め開口を取り囲む半導体酸化層又はイオン注入領域を有する。
【0032】
本発明のさらなる有利な発展形によれば、第1反射領域は円盤状であり、第2反射領域はリング状である。
【0033】
本発明の一実施形態は、上述したレーザ発振装置を有する光モジュールに関する。上述したレーザ発振装置は、活性層の周辺でキャリア密度が減少し、高から低に駆動電流が切り換わる際に、主活性領域の中心に向かって周辺からキャリアが流れ込むことがない。この結果、光モジュールは、速い変調速度で駆動することができる。従って、上記レーザ発振装置を実装する光相互接続は、変調バンド幅が大きい高速光ファイバ通信システムで使用することができる。
【0034】
本発明の別の一実施形態は、光相互接続で使用するためのレーザ発振装置を形成する方法を提供する。この方法は、半導体基板及び閉じ込め層の上に第1反射器積層を形成する工程を具備する。閉じ込め層は、電流閉じ込め開口内で電流を閉じ込めるよう構成される。活性層は、第1反射器積層上に形成され、電流閉じ込め開口に整列する主活性領域と、主活性領域を取り囲む補助活性領域とを具備する。第2反射器積層は活性層上に形成され、第2反射器積層において、第1反射領域は電流閉じ込め開口上に配置される。第1反射領域を取り囲む第2反射領域がさらに形成され、第2反射領域及び第1反射器は、補助活性領域で誘導再結合を誘導するよう構成される。
【0035】
添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部を形成する。詳細な説明と共にこれらの図面は、本発明の原理を説明するよう作用する。これらの図面は、本発明がどのように形成され使用されるかについて好適な例を説明する目的のためのみであり、図示して説明された実施形態に本発明を限定するものと解釈してはならない。さらに、特徴及び利点は、添付図面で説明された本発明の様々な実施形態の以下のより特定した説明から明白であろう。同様の部材には同様の参照符号が付される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明において、説明目的のため、完全に理解するために具体的な詳細が述べられる。しかし、本発明は、これらの具体的な詳細を伴うことなく、実施することができることは明らかである。さらに、周知の構造及びデバイスは、説明を容易にするために、より一般的な形態で説明されるだけである。
【0038】
以下の説明において、「鏡」及び「反射器」の語句は、半導体の積層又はレーザの共振キャビティを区画する誘電体層を示すために使用される。同様に、「第1鏡領域」及び「第1反射領域」の語句は、以下では同じ意味で使用される。「第2鏡領域」及び「第2反射領域」の語句は、以下では同じ意味で使用される。「ゲイン領域」及び「キャビティスペーサ」の語句は、レーザ発振装置の反射器の間に挟まれた半導体層を指す。
【0039】
本発明が対処する課題は、直接変調型レーザ発振装置における駆動電流を切る際に、活性層の周辺よりも中心でキャリア密度がより高速で減少するという観測に基づく。これは、大きな光場強度を有する領域、すなわち活性層の中心では、誘導再結合がより強いという結果によ
る。従って、過剰キャリアは、キャリア貯留部として作用する活性層の周辺に蓄積し、活性層の周辺から中心に向かうキャリアの横際分布が生ずる。高から低への変化の間、レーザは、低光子密度及び小さな誘導再結合率に向かって発展する。これは、活性層の周辺における過剰キャリア密度の効果を強化する。これにより、レーザ発振装置の下降時間が延びる。さらに、レーザ発振装置内に電流を閉じ込めるための酸化半導体層を用いるレーザ発振装置は、キャリアの横広がりが生じ、電流漏れや、バイアスによってレーザ発振装置の有効寄生キャパシタンスが増大する結果となる。
【0040】
本発明によれば、活性層の周辺でのキャリア分布の変調は、主レーザの周辺で補助レーザ又は防護レーザを実行することにより減少する。防護レーザは、その活性層内でキャリア密度をクランプし、誘導再結合を通じて主レーザの活性層の周辺で、過剰キャリアを消費する。さらに、防護レーザは、レーザ発振装置を形成するダイオード構造の外側領域でキャリア注入を減少させる。これにより、酸化層に関連する有効寄生キャパシタンスの増大が制限される。
【0041】
図1は、本発明の原理に従って設計されたレーザ発振装置の断面図である。レーザ発振装置1000は、頂上に第1反射器すなわち第1鏡1300が形成された、半導体材料製の基板1030を具備する。第1反射器1300は、高反射率を有する任意の半導体材料であってもよい。キャビティスペーサ1200は、第1鏡1300の上にさらに設けられる。キャビティスペーサ1200は、互いに逆の型の導電性でドープされた第1クラッド層1230及び第2クラッド層1210を具備する。活性層1220は、第1クラッド層1230及び第2クラッド層1210の間に挟まれる。活性層1220は真性半導体で形成されており、電気ポンピング又は光ポンピングによりレーザが駆動される際にキャリアの再結合が生ずる層である。ゲイン領域のより詳細な説明については、
図4を参照して与えられる。
【0042】
レーザ発振装置1000は、電流閉じ込め開口1021を区画する閉じ込め層1020をさらに具備する。閉じ込め層1020は、1層の酸化半導体材料すなわち酸化層である。酸化層1020は、レーザ発振装置1000内でアルミニウム高含量半導体層を成長させ、さらにその層を酸化させることにより一般的に得られる。酸化した部分は、非導電性及び低屈折率を有し、活性層1220に生じた光場をある程度閉じ込める。電流閉じ込め開口1021は、酸化層1020のうちの非酸化部である。レーザ発振装置1000を順方向にバイアスすることにより発生する電流場及び光場は、電流閉じ込め開口1021内に殆ど閉じ込められる。
【0043】
第2反射器1100は、電流閉じ込め層1020の上に形成される。第1及び第2の鏡すなわち反射器1300,1100は、互いに逆の型の導電性を有してダイオード接合を形成するように、不純物でドープされる。第2鏡1100及び第2クラッド層1210はp型であるのに対し、第1鏡1300及び第1クラッド層1230はn型である。活性層1220は、1層以上の真性半導体を有する。
【0044】
図1の構造によれば、レーザ発振装置1000はp−i−nダイオード接合である。しかし、上述した構成とは異なる他の構成も、レーザ発振装置1000の特定用途に従って使用可能である。さらに、別の一実施形態において、第1及び第2の鏡1300,1100は真性半導体又は誘電体であってもよく、p型及びn型半導体層は、活性層1220への電気接続部を提供するために第1及び第2の鏡1300,1100の間に埋設されてもよい。
【0045】
第2鏡1100は、第1鏡領域1140と、第1鏡領域1140を取り囲む第2鏡領域1130とを具備する。第2鏡領域1130の反射率R
2は、第1鏡領域1140の反射率R
1より大きくなるよう選択される。第1鏡領域1140は、電流閉じ込め開口1021の上の第2反射器1100内に形成される。第1鏡領域1140の面積は、電流閉じ込め開口1021の面積よりも大きく、また、電流閉じ込め開口1021を直に取り囲む酸化層1020の一部と部分的に重なる。しかし、本発明の好適な別の実施形態において、第1鏡領域1140は、電流閉じ込め開口1021と同寸法か、又は小さい寸法を有するように選択されてもよい。
【0046】
第1及び第2の反射領域1140,1130は、第2鏡1100の上面に上反射器1110を追加することにより得られる。上反射器1110は、高低の屈折率を交互に有する誘電体層で形成された分布ブラッグ反射器、金属反射器、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0047】
レーザ発振装置1000を順方向にバイアスすると、正孔及び電子は、pドープ層1210及びnドープ層1230から活性層1220にそれぞれ移動する。p−i−n接合のp側及びn側から活性層1200に注入された正孔及び電子の再結合により、発光する。活性層1220が挟まれた第1及び第2の鏡1300,1100は、キャビティスペーサ1200と共に共振キャビティを形成する。光は、レーザ発振装置1000から発射する前に共振キャビティ内で反射される。
【0048】
第1鏡領域1140、第1鏡領域1140の面積に対応すると共にその下に配置されたキャビティスペーサ1200の部分、及び第1誘電体鏡1300は、レーザ発振装置1000の製造に使用される半導体材料のエネルギーギャップに依存すると共にキャビティスペーサの厚さに依存する波長で発光する主レーザ1400を画定する。同様に、第1鏡領域1140を取り囲む第2鏡領域1130、その下のキャビティスペーサ1200の部分、及び第1誘電体鏡1300は、補助レーザすなわち防護レーザ1500を画定する。防護レーザ1500は、主レーザ1400を画定するレーザ発振装置1000の部分を取り囲む。電流閉じ込め開口1021を取り囲むと共に第2鏡領域1130の下に配置された活性層1220の部分は、酸化層1020により隔離されている。従って、正孔は、p型鏡から活性層の前記部分に直接注入することができない。その代わり、補助レーザ1500の活性領域に対応する活性領域1220の周辺に主レーザ1400の活性領域に対応する活性領域1220の中心から、キャリアが漏れる。換言すると、補助レーザ1500の再結合キャリアは、活性層1220の中心から注入される。活性層の詳細及び活性層の異なる領域については、
図5を参照して与えられる。
【0049】
第1鏡領域1140に対応する活性層1220の中心における、閾値での及び閾値を超えるキャリア密度は、活性層における閾値ゲインに一般的に依存するので、誘電体鏡1100,1300の反射率に依存する。一般的に、閾値でのキャリア密度は、レーザ発振装置の誘電体鏡1100,1300の反射率に逆比例する。本発明に係るレーザ発振装置において、第2鏡領域1130の反射率R
2は、第1
鏡領域1140の反射率R
1より大きい。この構成により、補助レーザ1500のより低い閾値キャリア密度が与えられる。主レーザ1400及び補助レーザ1500及び対応する活性層の設計のより詳細な説明については、
図5を参照して与えられる。
【0050】
レーザを発射する垂直キャビティ面において、第1鏡1300の反射率は、約99.5〜99.9%の範囲内である。この値は、エッジ発射レーザの場合では低くなり得る。
【0051】
レーザ発振装置1000の作動原理についての詳細は、
図2ないし
図5で説明される本発明の別の実施形態に適用される。
【0052】
図1のレーザ発振装置1000は、第
2鏡1100の上面に配置された第1端子コンタクト1010と、基板の下面に配置された第2端子コンタクト(図示せず)とをさらに具備する。
【0053】
図2は、本発明に係る別の実施形態のレーザ発振装置2000を示す。レーザ発振装置2000は、基板2030、第1鏡2300、互いに逆のタイプの導電性を有する第1クラッド層2230及び第2クラッド層2210を有するキャビティスペーサ2200、第2鏡2100、並びに第2クラッド層2210及び第2鏡2100の間に挟まれた電流閉じ込め層2020を具備する。第1鏡2300及び第2鏡2100は、互いに逆のタイプの導電性を達成するようドープされる。特に、第1反射器2300及び第1クラッド層2230はn型ドーパントでドープされるのに対し、第2反射器2100及び第2クラッド層2210はp型ドーパントでドープされる。電流閉じ込め層2020は電流閉じ込め開口2021を有する。
【0054】
第2鏡2100は、電流閉じ込め開口2021に対応する第1鏡領域2140を有する。第1鏡領域2140の面積は、電流閉じ込め開口2021の面積よりも大きく、電流閉じ込め開口2021を直に取り囲む電流閉じ込め領域2020の一部上に部分的に延びていてもよい。
【0055】
有利な一例において、第1鏡領域2140の面積S
1及び電流閉じ込め開口2021の面積S
0の比は約1.4である。この値は普遍的ではなく、レーザ発振装置の特定設計によっては変更してもよい。より正確には、最適比S
1/S
0は、特定実施形態の詳細、例えば量子井戸の数、量子井戸及びバリア層の合成、並びに第1及び第2の反射器の実際の反射率に基いて、選択されてもよい。最適比は実験により見つけてもよい。一例として、面積S
1が異なる第1鏡領域を有するいくつかのデバイスは、半導体ウエハ等の一基板上に処理されてもよい。最適設計は、電流閾値、微分効率、変調バンド幅や、変調後の電流がデバイスに印加される際に発生する光信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間等のパラメータの直接計測で見つけてもよい。電気通信用途で広く使用される多くの実践的構成では、比S
1/S
0は、1.0〜3.3の範囲内で選択するのが有利である。
【0056】
一特定構成において、電流閉じ込め開口2021及び第1鏡領域2140は、円形を有する。この場合、電流閉じ込め開口及び第1鏡領域の直径D
0,D
1は、パラメータとして使用してもよい。従って、第1鏡領域2140の直径D
1及び電流閉じ込め開口2021の直径D
0の比は、1.2である。また、この場合、最適比D
1/D
0は、特定実施形態の詳細、例えば量子井戸の数、量子井戸及びバリア層の合成、並びに第1及び第2の反射器の実際の反射率に依存する。最適比は実験により見つけてもよい。一例として、いくつかの異なるD
1値を有するデバイスが、一基板上に処理されてもよい。最適設計は、電流閾値、微分効率、変調バンド幅や、変調後の電流がデバイスに印加される際に発生する光信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間等のパラメータの直接計測で見つけてもよい。多くの実践的構成では、比D
1/D
0は、1.0〜1.8の範囲内で探るのが有利である。
【0057】
電流閉じ込め領域2020は、
図1を参照して説明したものでは酸化層であるか、又はクラッド層2210に陽子等のイオン注入により得られてもよい。一例として、電流閉じ込め領域が注入で得られる場合、水素イオン等のイオンは、例えばクラッド層2210等のレーザ発振装置の構造物内の、電流閉じ込め開口2021を除くどこにでも注入される。イオン注入が開口の周囲の格子構造を破壊することにより、この領域を電流が通ることを抑制する。
【0058】
別の実施形態において、電流閉じ込めは、パターン化されたトンネル接合により得られる。最後に、第1端子コンタクト2010が鏡2100の上面に配置され、第2端子コンタクト(図示せず)が基板2030の下面に配置される。
【0059】
レーザ発振装置2000の作動原理は、レーザ発振装置1000の作動原理と同じであるので、再度説明しない。
【0060】
第1鏡2300及び第2鏡2100は、分布ブラッグ反射器(DBR)構造である。第1鏡2300は、高低の屈折率を交互に有する第1層2320及び第2層2310の積層を有する。第1層2320及び第2層2310の各々は、材料のレーザ波長の1/4の厚さを有する。上述の設計に従った第1鏡2300の層の組成により、99〜99.9%の範囲の強度反射率が得られる。同様に、第2鏡2100も、高低の屈折率を交互に有する第1層2320及び第2層2310の積層を有する。本発明の好適な実施形態において、第1鏡2300及び第2鏡2100は、それぞれ30対及び21対の層2310,2320を有する。しかし、
この構成に限定するものではなく、第1鏡2300及び第2鏡2100は、DBR2100については22層でDBR2300については34層等の任意の数の層を有してもよい。
【0061】
図2の特定実施形態においては、鏡は分布ブラッグ反射器製であるが、レーザ発振装置2000の第1鏡及び第2鏡も、ドープされた半導体層に配置された金属薄膜等を使用する等の他の手段により得てもよい。
【0062】
第2反射器2100は、第1鏡領域2140及び第2鏡領域2130を有する。第2鏡領域2130は、第1鏡領域2140よりも高い反射率を有する。これは、第2鏡2100の上面に上反射器2110を追加することにより得られる。反射器2110は、高低の屈折率を交互に有する半導体又は誘電体の層、金属反射器、又はこれらの組み合わせで形成された追加の分布ブラッグ反射器であってもよい。
【0063】
或いは、第2鏡領域2130は、構造物の一部のみを成長させ、その構造物をパターンにし、より多くの層を成長させるか又は誘電体層を追加することにより、第2鏡2100を形成する1以上の第2層2310を変更して得られる。
【0064】
さらに、別の実施形態において、第2鏡領域2130は、酸化開口に対するやり方と同様に半導体層を変換することにより、第2鏡2100を形成する1以上の第2層2310を変更して得られる。
【0065】
追加の反射器2110の形状は、第1鏡領域2140の形状に依存すると共に、電流閉じ込め開口2021の設計形状に依存する。より正確には、追加の反射器2110は、第1鏡領域2140を取り囲むように設計される。
図2の実施形態において、電流閉じ込め開口2021は円形であり、この場合、第2鏡2130及び追加の反射器2110はリング状部を有する。しかし、提案された解決策及びその説明は、任意の形状を有する電流閉じ込め開口、第1鏡領域及び第2鏡領域を有するデバイスに適用される。
【0066】
第1鏡領域2140、ゲイン領域すなわち第1鏡領域2140の面積に対応すると共にその下に配置されたキャビティスペーサ2200の一部、及び第1鏡2300は、レーザ発振装置2000を製造するために使用される半導体材料のエネルギーギャップに依存すると共にキャビティスペーサ2200の厚さに依存する1以上の波長を有する光を発射する主レーザ2400を画定する。同様に、第1鏡領域2140を取り囲む第2鏡領域2130、第2鏡領域2130の下のキャビティスペーサ2200の一部、及び第1鏡2300は、補助レーザすなわち防護レーザ2500を画定する。防護レーザ2500は、主レーザ2400を画定するレーザ発振装置2000の一部を取り囲む。
【0067】
図2において、レーザ発振装置2000における主レーザ及び補助レーザの配置は、縦の破線で示される。特に、2本の破線の間の領域は主レーザ2400であるのに対し、レーザ発振装置の破線の外側の領域は補助レーザ2500である。
図1及び
図3の実施形態においても同様である。
【0068】
図3は、本発明の別の一実施形態に係るレーザ発振装置3000の断面図である。
図3のレーザ発振装置3000は、
図2を参照して既に説明した全ての部品を具備する。具体的には、レーザ発振装置は、第1鏡3300、第2鏡3100、第1クラッド層3230、第2クラッド層3210、電流閉じ込め層3020及び活性層3220を具備する。第1鏡領域3140、第1鏡領域3140の面積に対応すると共にその下に配置されたキャビティスペーサ3200の部分、及び第1鏡3300は、レーザ発振装置3000を製造するために使用される半導体材料のエネルギーギャップに依存すると共にキャビティスペーサ3200の厚さに依存する1以上の波長を有する光を発射する主レーザ3400を画定する。同様に、第1鏡領域3140を取り囲む第2鏡領域3130、第2鏡領域3130の下のキャビティスペーサ3200の一部、及び第1鏡3300は、補助レーザすなわち防護レーザ3500を画定する。防護レーザ3500は、主レーザ3400を画定するレーザ発振装置3000の一部を取り囲む。
【0069】
図2の実施形態の代替として、鏡3100の上層3110は、第1鏡領域3140に対応する領域で変更された厚さを有する。より正確には、第2鏡3100は、高屈折率3110及び低屈折率3120の交互の層の積層からなるDBR反射器である。これらの層の厚さは、DBR積層には最高の反射率を与える、半導体材料の1/4レーザ波長の奇数倍である。DBR3100は、高屈折層3110で終端する。この最上誘電体層3110の厚さは、半導体材料の1/4レーザ波長の偶数倍となるように変更される。1/4波長の偶数倍がDBR反射器の反位相状態を生じさせることにより、積層の反射率を最小にする。従って、この実施形態において、第1鏡領域3140は、主レーザ3500に対応する領域に沿って第2DBR反射器の最上層3110の厚さを小さくすることにより、実現する。
【0070】
本発明に係るレーザ発振装置1000,2000,3000は、ガリウムアルミニウム砒素及びガリウム砒素(GaAlAs/GaAs)で形成された積層を基礎にして設計され、約650〜1300nmの範囲の波長の光を発射する。特に、本明細書に説明された実施形態は、約850nmの波長の光を発射する。しかし、これらのデバイスは、980nm又は1060nm等の他の波長の光を発射するよう設計されてもよい。
【0071】
図2及び
図3のレーザ発振装置は面発光レーザ(VCSEL)であってもよい。これらの面発光レーザの設計は、Ga
(1-x)Al
xAs層で形成された積層を基礎にする。第1鏡2300,3300及び第2鏡2100,3100は、所望の反射率を提供する別の組成を有する層の対を使用する分布ブラッグ反射器(DBR)である。キャビティスペーサ2200,3200もまたGa
(1-x)Al
xAsである。なお、所望の電気搬送及び閉じ込め特性を得るために、xは変更されている。活性層2220,3220は、Ga
(1-x)Al
xAs障壁(図示せず)を有する多数のGaAs量子井戸(図示せず)を有する。キャビティスペーサ2200,3200のより詳細な説明は、
図4を参照して行なわれる。別の一実施形態において、活性層2220,3220は、Ga
(1-x)Al
xAs障壁(図示せず)を有する歪みGa
(1-x)In
xAs量子井戸を有してもよい。この解決策は、Ga
(1-x)In
xAs半導体材料が良好な性能及び高い信頼性を保証するので、高性能面発光レーザに特に有利である。
【0072】
具体的な一例として、第2DBR2100,3100はpドープされ、第1DBR2300,3300はnドープされる。基板2030,3030はnドープされたGaAsである。キャビティスペーサ2200,3200は分離した閉じ込め構造として設計されており、段階的なxを有するGa
(1-x)Al
xAs層であってもよい。一例として、xは0.3〜0.9の範囲内である。活性層2220,3220は、3個のGa
(1-x)In
xAs量子井戸からなる。ここで、xは5〜10%の範囲内であり、Ga
(1-x)Al
xAs障壁については、xは約30〜40%の範囲内である。第2DBR鏡2100,3100及びキャビティスペーサ2200,3200間のレーザ発振装置2000,3000のp側には、酸化層2020,3020が設けられる。酸化層2020,3020は、0.96〜0.98の範囲内の高いxを有する薄いGa
(1-x)Al
xAsであり、、電流閉じ込め開口2021,3021を形成するために、外周から内方へ部分的に酸化されている。酸化層2020,3020の酸化部は非導電性であり、光場をある程度閉じ込める低屈折率を有する。
【0073】
別の一実施形態において、酸化層2020,3020は、第2DBR反射器2100,3100内に、又は活性層2220,3220の上のキャビティスペーサ2200,3200内に配置されてもよい。さらに別の一実施形態において、酸化層2020,3020に加えて、第1DBR鏡2300,3300及びキャビティスペーサ2200,3200の間に、又は第1DBR鏡2300,3300内に、又は活性層2220,3220の下のキャビティスペーサ2200,3200内に、第2酸化層(図示せず)を設けてもよい。
【0074】
一般的には、酸化層2020,3020及び結果的に生ずる電流閉じ込め開口2021,3021は、レーザ発振装置1000,2000,3000のpドープされた側に配置される。この構成は一般的に、n側にちょうど1個の開口を配置することに比べて、よりよい電流閉じ込めを与える。特に、層は、p−DBR2100,3100及びキャビティスペーサ2200,3200の間、又はキャビティスペーサ2200,3200に最も近いp−DBR2100,3100の第1対のうちの1個にある。しかし、p側に、又はp側及びn側の双方に複数の開口を有する等の他の多くの構成も使用できる。様々な構成は、電流閉じ込めの改善、寄生キャパシタンスの減少、及び光場の横閉じ込めの最適化を目的とする。
【0075】
図1ないし
図3に示されたレーザ発振装置1000,2000,3000において、電流閉じ込め開口1021,2021,3021の面積は、主レーザ1400,2400,3400を画定する第1鏡領域1140,2140,3140の面積より小さいので、第2鏡領域1130,2130,3130を画定するリングの内径より小さい。電流閉じ込め開口1021,2021,3021の直径及び防護リング1130,2130,3130の内径の関係は、主レーザ1400,2400,3400及び防護リングレーザすなわち補助レーザ1500,2500,3500間の結合相互作用を示す。所望の効果を達成するために、主レーザ1400,2400,3400及び補助レーザ1500,2500,3500に対応する活性相互接続1220,2220,3220の部分と、主レーザ1400,2400,3400及び補助レーザ1500,2500,3500の光場は、ある程度重なる。
【0076】
さらに、上述の構成において、防護リングレーザ1500,2500,3500は、主レーザの活性領域から漏れるキャリアを活用するよう作動する。
【0077】
防護リング1130,2130,3130の内径が大きく形成される場合、結合が減少すると共に、主レーザの周辺でのキャリア密度が印加変調でより大きく揺動するのに対し、防護レーザ1500,2500,3500の活性領域内で相対的にクランプされたままである。この結果、防護は効果的でなくなる。また、リングの内径が大きく形成されると、防護レーザの活性相互接続1220,2220,3220の部分のキャリア密度は、効果的に低くなる。キャリア密度が閾値より小さい場合、防護レーザはレーザ発振せず、防護効果は失われる。
【0078】
他方、内径が小さく形成される場合、防護リングは、デバイス内で注入されたキャリアのうちかなりの割合を消費する。これは、主レーザの効率を低下させる効果的な損失機構であり、一般には性能劣化となる。極端な場合、例えばデバイスに注入されたキャリアのかなりの割合を消費することにより、防護レーザが支配的になって主レーザを停止させる。第1反射領域の直径及び電流閉じ込め開口の直径の最適比は、本明細書で説明したように、本発明の特定実施形態に依存する。また、上述したように、この最適比は実験で見つけてもよい。第1鏡領域3140の外径D
1及び電流閉じ込め開口3021の直径D
0の最適比は、多くの実施形態では1.0〜1.8の範囲内である。
【0079】
電流閉じ込め開口、第1反射領域及び第2反射領域の寸法の関係は、主レーザ及び防護レーザ間の結合を制御し、これにより、防護レーザの有効性が主レーザの周辺の過剰キャリアの容量効果を低減する。特に、円形の電流閉じ込め開口の場合、主レーザ及び防護レーザ間の結合は、径D
0,D
1,D
2間の関係により制御される。好適な一構成において、第2反射領域の内径D
2は、第1反射領域の径D
1に等しい。この特定構成において、主レーザ及び防護レーザ間の結合は、D
1及びD
0の比によって制御される。
【0080】
特定径D
0を有する電流閉じ込め開口に関し、第1反射領域の径D
1を小さくすることは、補助レーザ及び主レーザ間をより強く結合し、過剰キャリアの容量効果をより効果的に減少させる。同時に、D
1を小さくすることは、デバイスに注入されたキャリアのかなりの割合が防護レーザによって消費されることになり、これにより、主レーザからのキャリア損失が増大し、主レーザの閾値電流を大きくすると共に効率を低下させる。一般的に理解されるように、防護レーザによる過剰キャリアの効果の低減と、主レーザからのキャリア損失とは二律背反である。第1反射領域及び電流閉じ込め開口の径の最適比は、特定の材料及びデバイスの全体設計に依存する。一般的な状況では、最適比D
1/D
0は1.0〜1.8の範囲内である。
【0081】
しかし、本発明が広く多様な材料の組み合わせで且つ比較的広い範囲でカバーする他の具体的な設計パラメータで実現化されるデバイスに適用できるので、最適比は、特定実施形態ではこの範囲外になる可能性がある。例えば、電流閉じ込め開口及び第1鏡領域は、円形とは異なる形状を有してもよい。この場合、第1鏡領域3140の面積S
1及び電流閉じ込め開口3021の面積S
0は、パラメータとして選択される。比S
1/S
0の値は、
図2を参照して既に説明したように、1.0〜3.3の範囲内で選択される。有利な比S
1/S
0の値は1.4である。
【0082】
図4は、レーザ発振装置1000,2000,3000に使用されるキャビティスペーサ200の一部を概略的に示す。キャビティスペーサ200は、第1クラッド層230及び第2クラッド層210を具備する。これらのクラッド層230,210は、半導体材料で形成されると共に、逆のタイプの導電性を達成するようにドープされる。
図4の特定実施形態において、第1クラッド層230はドナー(n型)でドープされるのに対し、第2クラッド層210はアクセプタ(p型)でドープされる。キャビティスペーサ200は、第1及び第2のクラッド層230,310間に挟まれた活性相互接続220をさらに具備する。
【0083】
活性相互接続220は、複数の真性半導体材料層を具備する。より正確には、活性層220は、交互に配置された量子井戸221及び障壁222の積層を具備する。上述したように、量子井戸221はGa
(1-x)In
xAs層からなり、xは5〜10%の範囲内であるのに対し、障壁222はGa
(1-x)Al
xAs層を有し、xは約30〜40%の範囲内である。
【0084】
図4は、3個の量子井戸221及び2個の量子井戸障壁222を有する活性層を示すが、この構成は限定するものと考えるべきではない。より正確には、活性層200は、レーザ発振装置1000,2000,3000の特定用途に依存して、任意の数の量子井戸221及び量子井戸障壁222を有してもよい。
【0085】
活性層200は、量子井戸221及び障壁222の積層を挟む2層の真性閉じ込め層223をさらに有する。これらの閉じ込め層223は、量子井戸221及びクラッド層210,230の間に配置されており、段階的であってもよい。
【0086】
図5は、本発明に係るレーザ発振装置の作動原理を示す概略図である。
図5を
図3の実施形態を参照しているが、
図5を参照して説明された原理は
図1及び
図2で説明した実施形態にも当てはまる。
【0087】
図5は、レーザ発振装置3000に印加された順方向バイアスに依存する活性層3220のキャリア密度を特に示す。曲線(1)は、レーザ発振装置3000の高状態に対応する高電流レベルでのキャリア密度を示す。曲線(3)は低電流レベルでのキャリア密度を示すのに対し、曲線(2)は電流が高レベルから低レベルに切り換わった直後のキャリア密度を示す。
【0088】
閾値を超えるバイアスでの理想的レーザにおいて、活性層のキャリア密度は、閾値キャリア密度でクランプされる。キャリア密度をクランプすることは、キャリアの誘導再結合及び光子の誘導放出による活性層における光場(光子密度)及びキャリア密度の結合の直接的効果である。キャリア密度は、共振回路の総光損失を補償するために光場を十分に増幅する。閾値を超えるキャリア密度の増加は、総損失を超えるゲインという結果となり、光子密度及び誘導再結合率の迅速な増加を招く。この方法は、過剰キャリアを消費することにより、閾値レベルを元の状態に戻す。
【0089】
図5のレーザ発振装置3000において、電流が閾値を超えて増加すると、活性層3220におけるキャリア密度は、完全にはクランプされないが、内部加熱のため温度が上昇するとゲイン減少を補償するために増加し続ける。キャリア密度の増加を招く別の要素は、光子密度、又はレーザ発振装置3000で発生する光場の強度の増加である。光損失を超えるゲインという結果となる過剰キャリア密度は、主に誘導再結合により効果的に消費される。
【0090】
図5は、活性層3220が有する異なる区域を示す。より正確には、レーザ発振装置3000が順方向にバイアスされる際に、正孔は、p型クラッド層3210から区域3221へ電流閉じ込め開口3021を通って注入される。区域3221は、主レーザ3400の活性領域すなわち主活性領域である。光場強度は、区域3221の中心に最大値を有する。主活性領域3221におけるキャリア密度は、高い光場強度により生ずる強い誘導再結合のため、バイアス電流の変化により反応する。
【0091】
区域3222は、区域3221を取り囲むと共に、電流閉じ込め層3020によりシールドされる。区域3222は補助活性領域である。層3020により、クラッド層3210から補助活性領域3222へのキャリアの直接的注入が抑制される。従って、補助活性領域3222は、主活性領域3221から漏れるキャリアを主に有する。第2鏡3100の第2鏡領域3130が主レーザ3400を区画する第1鏡領域3140より高い反射率を有するので、補助活性領域3222における誘導再結合率は、従来の設計のデバイスと比べて増大している。これは、補助活性領域におけるキャリア密度の増加を制限する効果を有し、補助レーザ3500の活性領域に対応する。
【0092】
このようにして、高電圧値から低電圧値に切り換わる際に、主レーザ3400の活性領域の周辺に過剰キャリアがない。これにより、活性層3220の周辺から中心へのキャリアの横再分布を抑制し、レーザの容量効果を生じさせる。
【0093】
防護レーザすなわち補助レーザ1500,2500,3500の発射波長は、レーザ発振装置1000,2000,3000の半導体材料、活性層1220,2220,3220における半導体のエネルギーギャップ、及びキャビティスペーサ1200,2200,3200に依存する。防護レーザ1500,2500,3500は、主レーザ1400,2400,3400の波長に極めて近い波長で発光する。主レーザ及び補助レーザに同じ半導体材料が利用できるので、本解決策は実施が容易でより低コストである。しかし、防護レーザは主レーザと同じ波長で発光する必要はなく、本発明の原理及びアイデアは、防護レーザが主レーザとは異なる波長で発光するレーザ発振装置にも適用される。
【0094】
さらに、主レーザ1400,2400,3400及び防護レーザ1500,2500,3500の双方は、いくつかの近接する波長を含むマルチモード発光を有してもよい。異なる共振回路形状及び2レーザのキャリア及び光子の密度分布は、異なるモード分布となるので、若干異なる発光波長の組となる。
【0095】
図6は、本発明に係る光モジュール6000の断面図である。光モジュール6000は、光トランシーバであってもよいし、印刷回路基板(PCB)、接続ソケット等の回路キャリアに接続され、次に中間基板用途用、内部基板又は基板間モジュール用の光ファイバ相互接続で使用されてもよい。光モジュール6000は、1個以上の集積回路(図示せず)又は任意の種類の表面実装部品が固定された透光性キャリア6100を具備する。透光性キャリア6100は、1個以上のレーザ発振装置1000,2000,3000をさらに具備してもよい。
【0096】
透光性キャリア6100は、定義された波長を透過するパイレックス(登録商標)ガラス製であり、中間基板用途で使用される標準通信波長は850nmである。しかし、透光性キャリアは、光モジュールの特定用途に従って他の波長を透過するように選択されてもよい。さらに、パイレックス(登録商標)ガラスの代替として、他の光特性を有する他のタイプの透光性材料を使用してもよい。
【0097】
透光性キャリア6100は、その第1面6120に金属配線及び第1電気接続パッド6030をさらに具備する。第1面6120は、以下では透光性キャリア6100の上面である。レーザ発振装置1000,2000,3000は、第1面6120上に実装され、透光性キャリア6100に電気接続される。レーザ発振装置1000,2000,3000は、任意の種類の公知の導電手段、例えば半田バンプ6010により、透光性キャリア6100に取り付けられる。透光性キャリア6100が有する金属トレースは、半田バンプを介してレーザ発振装置1000,2000,3000を電気接続パッドすなわち電気接続端子6030に接続する。電気接続端子6030は、透光性キャリア6100の周辺に配置される。透光性キャリア6100は、キャリア基板6400に機械的且つ電気的に接続される。
【0098】
レーザ発振装置1000,2000,3000は、上述の特定実施形態において透光性キャリア6100の第1面6120上に実装されていたが、透光性キャリア6100の別の面に実装されてもよい。
【0099】
光モジュール6000の作動の際、キャリア基板及び透光性キャリアを介して電気信号が送られるレーザ発振装置1000,2000,3000は、透光性キャリア6100を通ってキャリア基板6400の下面の方へ発光する。次に、発射された光は、光結合部材(図示せず)に受信され、導波路等の導光部材に結合される。
【0100】
キャリア基板6400は、光モジュール6000が高ビットレート光ファイバ用途に使用できるように、高周波信号伝送を取り扱うことができる。さらに、透光性キャリア6100及びキャリア基板6400は、フリップチップ設計に従って接続される。
【0101】
本発明の別の一実施形態は、光相互接続で使用するためのレーザ発振装置(1000,2000,3000)を形成する方法を手供する。この方法は、
図1ないし
図3のレーザ発振装置を参照し、半導体基板上に第1反射積層(1300,2300,3300)を形成する工程を具備する。続いて、第1反射積層(1300,2300,3300)上にキャビティスペーサ(1200,2200,3200)が形成される。キャビティスペーサは、第1及び第2のクラッド層と、それらの層の間に挟まれた活性層(1220,2220,3220)とを具備する。さらに、第2クラッド層上に、電流閉じ込め開口(1021,2021,3021)内に電流を閉じ込める閉じ込め層(1020,2020,3020)が形成される。活性層上には第2反射積層(1100,2100,3100)が形成される。
【0102】
第2反射積層(1100,2100,3100)は、電流閉じ込め開口上に配置された第1反射領域(1140,2140,3140)と、第1鏡領域(1130,2130,3130)を取り囲む第2鏡領域(1130,2130,3130)とを画定するために変更される。特に、第1及び第2の鏡領域は、第2反射器(1100,2100,3100)の最上層をマスキングし、その後第2反射器(1100,2100,3100)に浅い表面レリーフをエッチングすることにより、実現される。第1鏡領域(1130,2130,3130)は電流閉じ込め開口と同じ形状を有するが、その面積は、電流閉じ込め開口の面積よりも大きくなるよう選択される。
【0103】
活性層(1220,2220,3220)において、電流閉じ込め開口に整列する主活性領域(3221)、及び主活性領域を取り囲む補助活性領域(3222)が画定される。主活性領域は、電流閉じ込め開口よりも大きく、電流閉じ込め開口の下に活性層の区域を具備する。活性層の区域には、pドープされた側及びnドープされた側からキャリアが直接注入される。活性層の領域は、この区域を直に取り囲む。
【0104】
本発明の特定一実施形態において、電流閉じ込め開口は、8μmの直径を有する。第1反射領域の直径は11μmである。別の実施形態において、電流閉じ込め開口の直径は10μmであり、第1反射領域の直径は13μmである。上述の構成は、特定例であって決して制限するものと考えるべきではない。実際に、電流閉じ込め開口及び第1反射領域の直径は、上述の値とは異なるよう選択されてもよい。電流閉じ込め開口及び第1反射領域の寸法及び形状は、レーザ発振装置の設計及び特定用途に依存する。より正確には、これらの値は、キャビティスペーサ、特にクラッド層に使用されるエピタキシャル材料の有効背景ドーピング等の、使用される材料の特性及び設計の他のパラメータに依存する。これらの特性は、特定設備及び異なる層を製造するのに使用される成長の秘訣に極めて特有である。従って、電流閉じ込め開口及び第1反射領域の寸法は、所与の値から外れてもよい。
【0105】
上述の方法は、第2反射器(1100,2100,3100)を変更するためのエッチング技法を説明する。しかし、本発明の別の実施形態に従って、代替の方法を使用してもよい。より正確には、第2鏡領域(1130,2130,3130)は、所望形状のレリーフを画定するように第2反射器(1100,2100,3100)の一部上に、第1反射領域に対応する別の反射器積層を成長させることにより形成されてもよい。或いは、第2反射器(1100,2100,3100)上に金属層等の高反射材料層を実装してもよい。
【0106】
上述したように形成された第2反射領域及び第1反射器は、補助活性領域に誘導再結合を誘導する。
【0107】
本発明は、高ビットレート直接変調光相互接続に使用されるバイアス電圧の高低変化に対する反応が改善されたレーザ発振装置を提供する。
【0108】
本発明によれば、補助レーザすなわち防護レーザは、主レーザを取り囲み、主レーザの活性領域を取り囲む過剰キャリアをなくすので、主レーザの活性領域における過剰キャリアの容量効果を低減する。これは、主レーザの反射器より高い反射率を有する反射器を具備する主レーザを取り囲む共振キャビティを設けることにより得られる。このようにして、主レーザを取り囲む活性層の面積における光場の強度は、主レーザの周辺で誘導再結合率を増大させるので、過剰キャリアをなくす。
図1ないし
図6を参照して上述した解決策により、25Gbps以上のビットレートの用途で高変調バンド幅を支持できるレーザ発振装置及び光モジュールを低コストで且つ容易な設計で製造することができる。