特許第6226540号(P6226540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226540
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】電力線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20171030BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H04B3/54
   H04Q9/00 311S
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-54272(P2013-54272)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179945(P2014-179945A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】311002034
【氏名又は名称】富士電機メーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(73)【特許権者】
【識別番号】517027310
【氏名又は名称】アクララ テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 安徳
(72)【発明者】
【氏名】美齊津 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】中城 陽
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雅生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸二
(72)【発明者】
【氏名】井出崎 功
(72)【発明者】
【氏名】中野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳邦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智希
(72)【発明者】
【氏名】清水 康司
(72)【発明者】
【氏名】金山 高志
(72)【発明者】
【氏名】久保 啓
(72)【発明者】
【氏名】松本 龍二
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、ロバート、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルメラー、ジョシュア、ケイ
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−053638(JP,A)
【文献】 特開2009−201050(JP,A)
【文献】 特開2004−236138(JP,A)
【文献】 特開2011−217470(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013716(WO,A1)
【文献】 特開平2−162925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54−3/58
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の需要家側に設置され、変電所側受信装置に対してデータを送信する電力線通信装置であって、
送信用のデータを入力するデータ入力部と、
MOSFETのソース端子およびドレイン端子は、配電系統の電力線の線間に接続され、MOSFETにゲート信号を入力することにより、前記電力線の線間に流れる電流を制御するスイッチング部と、
電力線の線間の電圧信号の零クロス点を検出し、前記スイッチング部へのゲート信号の出力タイミングを生成する出力タイミング生成部と、
前記出力タイミング生成部で生成された出力タイミングに基づいて、所定の波形パターンのゲート信号を生成して前記スイッチング部へ出力する波形パターン生成部と、
複数種類の波形パターンを保存する波形パターン保存部と、
を備え
前記波形パターン生成部は、前記波形パターン保存部に保存されている複数種類の波形パターンのうち、選択された波形パターンで前記ゲート信号を生成することを特徴とする電力線通信装置。
【請求項2】
配電系統の需要家側に設置され、変電所側受信装置に対してデータを送信する電力線通信装置であって、
送信用のデータを入力するデータ入力部と、
MOSFETのソース端子およびドレイン端子は、受動素子を介して配電系統の電力線の線間に接続され、MOSFETにゲート信号を入力することにより、前記電力線の線間に流れる電流を制御するスイッチング部と、
電力線の線間の電圧信号の零クロス点を検出し、前記スイッチング部へのゲート信号の出力タイミングを生成する出力タイミング生成部と、
前記出力タイミング生成部で生成された出力タイミングに基づいて、所定の波形パターンのゲート信号を生成して前記スイッチング部へ出力する波形パターン生成部と、
複数種類の波形パターンを保存する波形パターン保存部と、
を備え
前記波形パターン生成部は、前記波形パターン保存部に保存されている複数種類の波形パターンのうち、選択された波形パターンで前記ゲート信号を生成することを特徴とする電力線通信装置。
【請求項3】
前記波形パターン生成部から出力されたゲート信号の電圧値を調整するゲート電圧調整部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電力線通信装置。
【請求項4】
配電系統の電源周波数の半周期内に送信する信号数を調整する信号数調整部を備えたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力線通信装置。
【請求項5】
前記所定の波形パターンは二乗余弦波であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統の電力線を利用して通信を行なう電力線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2ウェイ自動通信システム(Two-Way Automatic Communication System:TWACS(登録商標:以下同じ))電力線通信装置は、需要家端のメーターから変電所の受信装置へ送信する上り信号(Inbound信号)を電圧の零クロス付近に与えている。
【0003】
図9に従来のTWACS電力線通信装置および同装置が設置されている配電系統の全体構成を示す。この図において、配電系統は、配電用変電所変圧器51の二次側のブス52からフィーダー53が引き出されている。このフィーダー53は、柱上変圧器54を介して需要家へ電力を供給している。柱上変圧器54の二次側、すなわち需要家側には、電力線通信装置90が設けられている。
【0004】
変電所ブス52には、電流検出用変流器55を介して、電力線通信装置90から送られてくる信号を検出する上り信号受信装置(以下、「受信装置」という。)56が設けられている。
【0005】
電力線通信装置90は、電力線からインピーダンス92を介してスイッチング素子であるサイリスタ91a,91bが逆並列に接続され、制御装置94から出力されたゲート信号によって、いずれかのサイリスタが瞬時ONになり、パルス信号を発生させる。このパルス信号(電流変化)は、柱上変圧器54の一次側からフィーダー53を伝わって変電所に届く。受信装置56は、電流検出用変流器55を介してこの電流の変化(パルス信号)を検知することによって、信号を受信する。
【0006】
図10は、柱上変圧器54の二次側の信号変化と変電所ブスの電流変化の説明図である。電力線通信装置90の制御装置94が商用電源の零クロスを位相検出回路(図示せず)で検出し、その零クロス点から一定時間経過後、図10(a)に示すゲート信号を出力して、サイリスタをONさせる。これにより電力線の線間にパルス信号が出力される(図10(b))。変電所ブスでは図10(c)に示すように負荷電流が変化することになり、受信装置56は、この負荷電流の変化を検知することによってパルス信号を受信する。
【0007】
上記のごとく、従来の電力線通信装置の回路構成は、2個のサイリスタを逆並列に接続し、接続されている線間電圧の零クロス付近を短絡させている。サイリスタの場合ONさせることしかできず、流れる電流が0になったとき自動的にターンオフするため、信号は零クロスの少し前のタイミングで発生させる必要があり、波形の数は、商用電源周波数の半周期に一つとなる。信号の送り方は、商用電源の半周期ごとに1か0の信号を送出し、所定数の信号の変化によって情報の1ビットを送るという技術が用いられている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
このように、従来の方式では、上り信号を最大で半周期に1回(電圧の零クロス付近に1回)しか発生させることができないため、伝送可能な情報量に制約があった。
【0009】
さらに、サイリスタは、信号のON,OFF時における電流の変化が急峻になるため、たとえば、50Hzの系統の場合、上り信号の周波数帯(主成分)は、約0.6kHz〜1.2kHz(サイリスタの投入位相15度〜30度)であるが、不必要な高周波成分が配電系統に重畳する場合もあった。
【0010】
一方、配電系統には配電自動化システムなど高周波信号を配電系統に重畳させる配電線搬送技術を使用した通信装置が既に導入されている場合があり、既存配電線搬送通信の通信成功率に影響を及ぼす可能性がある。高周波成分を抑制するためには、たとえば、図9のインピーダンス92を大きくするという方法が考えられるが、その分パルス信号が小さくなり、受信装置56が電流変化を検知できなくなるという新たな問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0054349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、上り信号の送信時にスイッチング素子のON,OFFによって発生する不必要な高周波成分を低減すると共に、従来よりも高い伝送容量を有する電力線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力線通信装置は、配電系統の需要家側に設置され、変電所側受信装置に対してデータを送信する電力線通信装置であって、送信用のデータを入力するデータ入力部と、MOSFETのソース端子およびドレイン端子を、抵抗等の受動素子を介して配電系統の電力線の線間に接続し、MOSFETにゲート信号を入力することにより、前記電力線の線間に流れる電流を制御するスイッチング部と、電力線の線間の電圧信号の零クロス点を検出し、前記スイッチング部へのゲート信号の出力タイミングを生成する出力タイミング生成部と、前記出力タイミング生成部で生成された出力タイミングに基づいて、所定の波形パターンのゲート信号を生成して前記スイッチング部へ出力する波形パターン生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、受動素子とは、抵抗やインピーダンスなどの他、トランジスタで抵抗回路を構成すなど、能動素子をいわゆる受動素子的に使用する場合も含む趣旨である。なお、MOSFETを飽和領域で使用する場合は、受動素子を介さずにMOSFETのソース端子およびドレイン端子を配電系統の電力線の線間に接続しても良い。
【0015】
本発明では、サイリスタの代わりにMOSFETを使用し、波形パターン生成部で立ち上がり立下りの滑らかな波形のゲート信号を発生させてMOSFETのゲートに入力することにより、配電系統への出力信号のON,OFF時に発生する高周波成分を低減し、配電自動化システムの信号への影響や配電機器への影響を改善することができる。なお、所定の波形パターンとして、二乗余弦波を用いると、受信装置の受信感度に影響を与えず、効果的に高周波成分を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る電力線通信装置は、複数種類の波形パターンを保存する波形パターン保存部を有し、前記波形パターン生成部は、前記波形パターン保存部に保存されている複数種類の波形パターンのうち、選択された波形パターンで前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0017】
本発明では、ゲート信号の波形パターンを選択可にするので、不必要な高周波信号量の最も少ない波形パターンを選択して送信することができる。
【0018】
また本発明に係る電力線通信装置は、前記波形パターン生成部から出力されたゲート信号の電圧値を調整するゲート電圧調整部を備えるようにすると良い。これにより受信装置で受信可能なレベルに電力線通信装置の出力を自動調整できる。
【0019】
好ましくは本発明に係る電力線通信装置は、配電系統の電源周波数の半周期内に送信する信号数を調整する信号数調整部を備えるようにすると良い。零クロスの前後1波ずつ(すなわち商用電源周波数の半周期ごと)に2つ以上の信号が出力でき、信号伝送量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、スイッチング素子にMOSFETを使用し、ゲート信号を調整することによって、送信の際のスイッチング部のON,OFF時に発生する不必要な高周波成分を低減することができる。また、ゲート信号の電圧と商用周波数の半周期内に送信するビット数を可変にして、従来よりも高い伝送容量を有する電力線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態による電力線通信装置の構成図である。
図2図1に示す波形パターン保存部に保存される波形パターンの図示例である。
図3】本発明の第1の実施の形態による商用電源の零クロス付近に信号を重畳させるときの、柱上変圧器の二次側の信号変化と変電所ブスの電流変化の説明図であり、図3(a)は、出力タイミング生成部から出力される基準パルス、図3(b)は柱上変圧器二次側の商用電源の電圧信号と電力線通信装置から出力されるパルス信号のタイミングを示す図、図3(c)は変電所ブスの負荷電流の変化を示す図である。
図4図1の他の実施例による電力線通信装置の構成図である。
図5】本発明の第2の実施の形態による電力線通信装置の構成図である。
図6図5の信号数調整部の回路構成例である。
図7図5の信号数調整部の動作の説明図であり、3分周,半周期のパルス数2の場合のタイミングチャートである。
図8】本発明の第2の実施の形態による商用電源半周期内に2つの信号を重畳させるときの、柱上変圧器の二次側の信号変化と変電所ブスの電流変化の説明図であり、図8(a)は、信号数調整部の出力信号、図8(b)は柱上変圧器二次側の商用電源の電圧信号と電力線通信装置から出力されるパルス信号のタイミングを示す図、図8(c)は変電所ブスの負荷電流の変化を示す図である。
図8A図5に示す本発明の第2の実施の形態による電力線通信装置の変形例を示す図である。
図9】従来の電力線通信装置および同装置が設置されている配電系統の全体構成図である。
図10図9の柱上変圧器の二次側の信号変化と変電所ブスの電流変化の説明図であり、図10(a)は、制御装置から出力される基準信号、図10(b)は柱上変圧器二次側の商用電源の電圧信号と電力線通信装置から出力されるパルス信号のタイミングを示す図、図10(c)は変電所ブスの負荷電流の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による電力線通信装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の電力線通信装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態による電力線通信装置1の構成図である。
図1において、電力線通信装置1は、送信用のデータを入力するデータ入力部11、配電系統の電力線の線間の電流量を制御するスイッチング部15、電力線の線間の電圧信号の零クロス点を検出してスイッチング部15へのゲート信号の出力タイミングを生成する出力タイミング生成部12、複数種類の波形パターンを保存する波形パターン保存部16、波形パターン保存部16に保存されている波形パターンのうち選択された波形パターンのゲート信号を生成して、出力タイミング生成部12で生成されたタイミングでスイッチング部15へ出力する波形パターン生成部13、波形パターン生成部13から出力される信号の高周波成分をカットしてスイッチング部15へのゲート端子へ出力するローパスフィルタ(LPF)14、および整流素子18a〜18dを有している。電力線通信装置1の端子19a,19bには、需要家へ供給される配電線の二線が接続される。
【0024】
端子19aは、整流素子18aのアノードと整流素子18bのカソードに接続され、端子19bは、整流素子18cのアノードと整流素子18dのカソードに接続されている。整流素子18a,18cのカソードは、スイッチング部15のMOSFET33のドレイン端子と出力タイミング生成部12に繋がり、MOSFET33のソース端子は、抵抗Rsを介して、電力線通信装置1の基準電位点に接続される一方、整流素子18b,18dのアノードに接続されている。また、MOSFET33のソース端子は、オペアンプ31の入力側に繋がっている。
次に、上記の構成を有する電力線通信装置の動作を説明する。
【0025】
(出力タイミング生成処理)
出力タイミング生成部12は従来技術によるが、電圧信号を入力して、電圧信号の零クロス点を検出する。そして、この零クロス点を基準に零クロス点の前40度以内の時点で信号を出力する。この信号が、データ送信の基準パルスとなる。なお、基準パルスの出力タイミングは、調整可能にしておくのが望ましい。
【0026】
(波形パターン生成処理)
波形パターン生成部13は、波形パターン保存部16に予め登録された複数の波形パターンのうち、選択された波形パターンの出力信号を生成する。波形パターン例を図2に示す。所定のパターンから信号波形の生成は従来技術による。たとえば、三角波の場合は、基準パルスの受信タイミングからコンピュータ処理によって一定時間ゲインを増加、その後、ゲインを減少させるという方法で実現することができる。その他の波形についてもコンピュータの演算処理によって生成することができる。波形パターン生成部13から出力された信号は、LPF14を経由してスイッチング部15に入力される。
【0027】
(スイッチング部15の動作)
LPF14から出力された信号は、スイッチング部15のオペアンプ31、抵抗32を介してMOSFET33のゲート端子に入力される。これによって、LPF14からの出力信号(Vin)の大きさに応じてMOSFET33のドレイン、ソース間に電流Idが流れる。たとえば、抵抗Rsを0.2Ω、Vinを2Vとすると、Id=Vin/Rs=10Aの電流が流れることになる。
【0028】
このMOSFET33の出力信号の波形は、ゲート信号によって変わるため、二乗余弦波など入力信号を急峻な変化点のない波形にすることにより、高周波を抑制することができる。
【0029】
上記の動作によって、電力線には、商用電源にスイッチング部15の出力信号を重畳させることになる。この信号(電流変化)は、柱上変圧器54、フィーダー53を介して変電所に届く。受信装置56は、電流検出用変流器55を介してこの電流の変化を検知する。以上の動作により、電力線通信装置1から、受信装置56へデータが送信される。
【0030】
図3は、上記の動作によって電力線の電流が変化する状態を表した図である。電力線通信装置1の出力タイミング生成部12から零クロス点検出時点と零クロス点から一定時間経過後に基準パルスが出力されると(図3(a))、このタイミングで、図3(b)に示すように柱上変圧器二次側の商用電源には電力線通信装置から出力されたパルス状の上り信号(Inbound信号)が重畳される。これにより、変電所ブスの負荷電流は、図3(c)のように変化する。
【0031】
以上、本実施の形態によれば、MOSFETを用い、高調波成分を抑えた波形パターンをゲート信号に入力することによって、電力線に重畳される信号に含まれる高周波成分を低減することができる。また、スイッチング素子としてMOSFETを用いることによりONとOFFの制御が可能になるので、商用電源の一周期内に複数のデータを送ることができる。
【0032】
なお、たとえ、MOSFETを用いたとしても、ゲート信号に矩形波を入力していたのでは、高周波成分の抑制効果は得られない。発明者らは、複数パターンについて、それぞれ実験を行い、二乗余弦波が受信装置の受信感度に影響を与えず、高周波成分の抑制効果も高いことを確認した。したがって、常にこの最適な波形パターンを用いるとすれば、波形パターン保存部16は不要になる。
【0033】
(他の実施例1)
図4に他の実施例による電力線通信装置1の構成図を示す。図1との主な違いは、抵抗Rsを省いて、MOSFET33のソース端子を整流素子18b,18dのアノードに直接接続していることである。なお、オペアンプはボルテージフォロワとしている。その他の構成は図1と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。図4の構成によれば、MOSFET33を飽和領域で使用することになり、MOSFET33のドレイン、ソース間にゲート、ソース間電圧の変化に応じたドレイン電流Isが流れる。
【0034】
(他の実施例2)
図1の抵抗Rsに代えて、他の受動素子を用いることもできる。例えば、コイルとコンデンサを直列に接続したインピーダンス素子であっても良いし、特開2000−269782号公報に記載されているようなMOSトランジスタ等の能動素子を用いた抵抗回路であっても良い。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図5は、第2の実施の形態による電力線通信装置1の構成図である。本実施の形態は、波形パターン生成部13から出力される半周期ごとのゲート信号のパルス数(以下、「信号数」という。)を調整する信号数調整部21、波形パターン生成部13から出力される信号の電圧(波高値)を調整するゲート電圧調整部22を追加したことにある。その他は、第1の実施の形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
以下、本実施の形態による電力線通信装置1の動作を説明する。
【0036】
(信号数調整処理)
信号数調整部21は、出力タイミング生成部12から出力される商用電源の半周期ごとの基準パルスをもとに、半周期ごとに出力すべき信号数を調整する。
図6は、信号数調整部21の回路構成例である。図6において、信号数調整部21は、基準パルスの入力によって起動され、設定された分周比でシステムクロックを分周する分周回路71、分周回路71の出力から信号パルスを生成するパルス発生回路72、および、設定された数のパルスを検出すると分周回路71の動作を停止させ、自らはリセットするカウンタ73で構成されている。なお、分周回路71の分周比やカウンタ73のパルス数は設定可能にしておくと良い。
【0037】
図7に3分周,半周期のパルス数2の場合のタイミングチャートを示す。なお、半周期内の最後のパルスが出力されたときに、零クロスより前に終わるように分周比とパルス数は設定されるものとする。
【0038】
図7のような、タイミングチャートのときに、商用電源には、図8のように半周期内に4つの信号を重畳させることができる。
【0039】
なお、信号数調整部21のパルス発生回路72が発生する信号パルス波形は、所定の手段を用いて任意に設定可能なように構成してもよい。また、分周回路71の分周比は、上述した3分周以外にも所定の手段にて任意の分周比を設定できるように構成しても勿論かまわない。
【0040】
(ゲート電圧調整部の動作)
ゲート電圧調整部22は電圧信号を増幅させるアンプで実現され、予め所定の手段によって設定された値に基づいて波形パターン生成部13の出力信号を増幅する。これによって、波形のパルス幅には影響を与えず、波形の出力時間を一定にしたまま、波高値のみを増減させることができる。
【0041】
以上、本実施の形態によれば、第1の実施の形態に加え、さらにゲート電圧調整部と、信号数調整部を設け、これらの手段によって、他の機器に影響を与えず、変電所側の受信装置でデータを受信できるようにしたので、実用性の高い電力線通信装置を簡便に実現することができる。
【0042】
なお、上述した図1または図3に記載のスイッチング部15を図8に示すように構成してもよい。この図に示すようにスイッチング部15は、PチャネルMOSFET40のドレイン端子に整流素子41aのアノードを接続し、MOSFET40のソース端子に抵抗Rs1の一端を接続した第一直列回路を構成する。MOSFET40のゲート端子には、オペアンプ42の出力端子が接続される。このオペアンプ42の負極入力端子は、MOSFET40のソース端子に接続される。また、オペアンプ42の正極入力端子は、抵抗R2および抵抗R1の直列回路を介してLPF14の出力端子と接続される。この抵抗R2と抵抗R1の接続点には、オペアンプ45の負極入力端子が接続される。また、このオペアンプ45の出力端子は、オペアンプ42の正極入力端子に接続され、オペアンプ45の正極入力端子は、接地される。ちなみに抵抗R1,R2は、同一の抵抗値であって、増幅度1の反転増幅器を構成する。このように構成することでオペアンプ42の正極入力端子には、オペアンプ45、抵抗R1,R2とで構成した反転増幅器によって、LPF14の出力端子の信号Voutを反転した信号が与えられる。
また第一直列回路には、NチャネルMOSFETの43のドレイン端子に整流素子41bのアノードを接続し、MOSFET43のソース端子に抵抗Rs2の一端を接続した第二直列回路が並列に接続される。MOSFET43のゲート端子には、オペアンプ44の出力端子が接続される。このオペアンプ44の負極入力端子は、MOSFET43のソース端子に接続される。また、オペアンプ44の正極入力端子は、LPF14の出力端子に接続される。なお。上述した抵抗Rs1および抵抗Rs2は、同一の抵抗値であって、その値は上述した実施例と同様に設定すればよい。
なお、上記他の実施例1と同様に、図5の構成に対して、抵抗Rsを省くこともできる。また、上記他の実施例2と同様に、抵抗Rsに代えて他の受動素子を用いることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 電力線通信装置
11 データ入力部
12 出力タイミング生成部
13 波形パターン生成部
14 ローパスフィルタ(LPF)
15 スイッチング部
16 波形パターン保存部
18a-18d 整流素子
19a,19b 端子
21 信号数調整部
22 ゲート電圧調整部
31 オペアンプ
32d 抵抗
33 MOSFET
51 配電用変電所変圧器
52 変電所ブス
53 フィーダー
54 柱上変圧器
55 電流検出用変流器
56 受信装置
71 分周回路
72 パルス発生回路
73 カウンタ
90 従来の電力線通信装置
91a,91b サイリスタ
92 インピーダンス
94 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図9
図10