(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリベンゾイミダゾールに加えて、前記ポリベンゾイミダゾールと架橋可能な熱硬化性樹脂又はエポキシ基を有する化合物を、前記ポリベンゾイミダゾールの質量を100とした時に、前記熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物の質量が6〜100となるように含む、ポリベンゾイミダゾールを主体とする紡糸溶液を調製する工程、前記紡糸溶液を紡糸して平均繊維径が2μm以下の極細繊維を形成し、直接集積して繊維ウエブを形成する工程、及び前記繊維ウエブを熱処理することにより、ポリベンゾイミダゾールを主体とすると共に、前記ポリベンゾイミダゾールと架橋している熱硬化性樹脂又はエポキシ基を有する化合物からなる、平均繊維径が2μm以下の極細繊維100mass%から構成されている不織布を形成する工程、を有する不織布の製造方法であり、前記紡糸溶液は、前記ポリベンゾイミダゾールに加えて、前記熱硬化性樹脂又は前記エポキシ化合物を溶解させることのできる溶媒を用意し、その溶媒に溶解させることによって調製した紡糸溶液であり、前記不織布の、温度80℃のN−メチル−2−ピロリドン溶液中に、30分間浸漬した後における質量が、浸漬前の質量の85%以上である、不織布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の不織布は、ポリベンゾイミダゾールを主体とする、平均繊維径が2μm以下の極細繊維を含んでいるため、耐熱性に優れ、また、機械的特性や電気的特性も優れている。
【0013】
本発明の極細繊維を構成するポリベンゾイミダゾール(以下、「PBI」と表記することがある)は特に限定するものではないが、例えば、下記式(I)または(II)で表される繰り返し単位を有するものであることができる。
【0015】
【化2】
式(II)において、YはO及びSから選択される置換元素、又は炭素間結合(例えば、−O−、−CO−、−SO
2−などの二価の基)である。
【0016】
また、Zは二価C
1−C
10アルカンジイル、二価C
2−C
10アルケンジイル、二価C
6−C
15アリール、二価C
5−C
15ヘテロアリール、二価C
5−C
15ヘテロシクリル、二価C
6−C
19アリールスルホン、及び二価C
6−C
19アリールエーテルからなる群より選択され、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基が好ましい。例えば、次のような基を持つ官能基が好ましい。
【0018】
本発明の極細繊維は前述のようなポリベンゾイミダゾール(PBI)を主体(50mass%以上)とするものであるが、加えて、熱硬化性樹脂又はエポキシ基を有する化合物を含んでいるのが好ましい。このように熱硬化性樹脂を含んでいると、熱硬化性樹脂がポリベンゾイミダゾールと反応してポリマー鎖を架橋し、耐薬品性に優れているためである。また、エポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と表記することがある)を含んでいると、エポキシ化合物がポリベンゾイミダゾールと反応してポリマー鎖を架橋し、耐薬品性に優れているためである。
【0019】
前者の熱硬化性樹脂は特に限定するものではないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂を例示することができる。
【0020】
後者のエポキシ化合物としては特に限定するものではないが、エポキシシラン、グリシジルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、1,4−ビス(グリシジル)オキシベンゼン、プロピレングリコールジグリシジルエーテルを例示できるが、有効に硬化剤として作用できるように、紡糸時の紡糸溶液を構成する溶媒よりも高い沸点(好ましくは10℃以上高い沸点、より好ましくは20℃以上高い沸点、更に好ましくは30℃以上高い沸点)を有するエポキシ化合物であるのが好ましい。エポキシ化合物の沸点が紡糸溶液を構成する溶媒の沸点以下であると、例えば、エポキシ化合物を含む紡糸液を紡糸して繊維化する際に溶媒と一緒に揮発してしまい、有効に硬化剤として作用せず、結果として耐薬品性に劣る傾向があるためである。例えば、紡糸溶液の溶媒として、ジメチルアセトアミド(DMAc)を使用した場合、DMAcの沸点は165℃であるため、165℃よりも高い沸点(好ましくは175℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは195℃以上)を有するエポキシ化合物(例えば、エポキシシラン、グリシジルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)であるのが好ましい。
【0021】
本発明の極細繊維は前述のようなポリベンゾイミダゾール(PBI)を主体とし、好ましくは熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を含んでいる(特には、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物からなる)ため、PBIによる耐熱性、機械的特性、電気的特性に加えて、耐薬品性にも優れている。このように、熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を含んでいる場合、前記性能のバランスに優れているように、極細繊維中、PBIの質量を100とした時の、熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物の質量は、6〜100であるのが好ましく、7〜50であるのがより好ましい。
【0022】
本発明の不織布を構成する繊維は、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、柔軟性、軽薄短小化への貢献など、様々な性能に優れているように、平均繊維径が2μm以下である。例えば、本発明の不織布を膜の支持体として使用すれば、強度を有する薄膜の作製に寄与することができ、電気化学素子用のセパレータとして使用すれば、電気絶縁性能及び電解液の保持性能に優れており、また、フィルタ用の濾過材として使用すれば、濾過精度の優れるフィルタとすることができる。
【0023】
この平均繊維径が小さければ小さい程、前記性能に優れるため、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのがより好ましく、600nm以下であるのが更に好ましく、400nm以下であるのが更に好ましい。一方で、平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、強度的に優れるように、1nm以上であるのが好ましい。また、本発明における「繊維径」は、不織布表面の電子顕微鏡写真から測定して得られる繊維の直径を意味し、「平均繊維径」は50箇所の繊維径の算術平均値をいう。
【0024】
本発明の極細繊維の繊維長は特に限定するものではないが、極細繊維が不織布から脱落しにくいように、0.1mm以上であるのが好ましい。特に、極細繊維が連続繊維であると、脱落防止性に優れていることに加えて、繊維端部がほとんどなく、繊維端部によって他材料を損傷する危険が極めて低いため、好適である。
【0025】
本発明の不織布は前述のような極細繊維を含有するものであるが、極細繊維が多い程、耐熱性、機械的特性、電気的特性及び耐薬品性に優れているため、極細繊維は不織布中、50mass%以上含まれているのが好ましく、70mass%以上含まれているのがより好ましく、90mass%以上含まれているのが更に好ましく、100mass%極細繊維から構成されているのが最も好ましい。
【0026】
なお、不織布を構成する極細繊維以外の繊維は、PBIを主体としない(50mass%未満)繊維、PBIを主体とする、平均繊維径が2μmを超える繊維であることができる。前者のPBIを主体としない繊維を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂など)などの合成樹脂を挙げることができる。
【0027】
本発明の不織布は前述のような極細繊維を含有するものであるが、温度80℃のN−メチル−2−ピロリドン溶液(以下、「NMP溶液」と表記することがある)中に、不織布を30分間浸漬した後における不織布の質量が、浸漬前の質量の85%以上という、優れた耐薬品性を有する。つまり、NMP溶液はポリベンゾイミダゾールの溶剤としても使用される溶液であるにもかかわらず、本発明のPBIを主体とする極細繊維を含む不織布は、PBIがNMP溶液によって溶解しやすい、温度80℃で30分間という環境に曝したとしても、15mass%以下しか溶解しない、つまり、85mass%以上は溶解せず、質量を維持できるという、優れた耐薬品性を有する。浸漬後の不織布の質量が多ければ多い程、耐薬品性に優れていることを意味しているため、浸漬後の不織布質量は浸漬前の不織布質量の90mass%以上であるのが好ましく、92mass%以上であるのがより好ましく、94mass%以上であるのが更に好ましい。
【0028】
なお、不織布のNMP溶液への浸漬前後における質量変化の測定は、NMP溶液の温度を80℃に維持して行う。また、不織布全体がNMP溶液中に浸漬できれば、不織布量及びNMP溶液量はどれだけであっても良く、特に限定しない。更に、30分間浸漬後には、不織布を純水で洗浄し、温度130℃に設定したオーブンで乾燥した後に、質量を測定する。
【0029】
本発明の不織布は優れた耐薬品性を示すものであるが、N−メチル−2−ピロリドン以外に対しても、優れた耐薬品性を示す。例えば、PBIの溶剤として使用できる、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエンに対しても、優れた耐薬品性を示す。つまり、NMPに替えて、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又はトルエンを使用して耐薬品性を評価した場合、いずれの溶媒に浸漬した場合であっても、浸漬後の不織布の質量は浸漬前の不織布の質量の85%以上であることができる。
【0030】
本発明の不織布の目付(JIS L1085に準じて10cm×10cmとして測定した値)は特に限定するものではないが、0.1〜20g/m
2であるのが好ましく、0.5〜18g/m
2であるのがより好ましく、1〜15g/m
2であるのが更に好ましい。また、不織布の厚さは、5N荷重時の外側マイクロメーターを用いて測定した値(μm)で、2〜100μmであるのが好ましく、3〜80μmであるのがより好ましい。
【0031】
このような本発明の耐熱性、機械的特性、電気的特性及び耐薬品性に優れる不織布は、例えば、ポリベンゾイミダゾールに加えて、熱硬化性樹脂又はエポキシ基を有する化合物を含む、ポリベンゾイミダゾールを主体とする紡糸溶液を調製する工程、前記紡糸溶液を紡糸して平均繊維径が2μm以下の極細繊維を形成し、直接集積して繊維ウエブを形成する工程、及び前記繊維ウエブを熱処理することにより不織布を形成する工程により製造することができる。
【0032】
まず、ポリベンゾイミダゾール、熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を用意し、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ基を有する化合物を含む、PBIを主体とする紡糸溶液を調製する。前述の通り、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂を使用することができ、エポキシ化合物は、紡糸時に揮発することなく、有効に硬化剤として作用できるように、紡糸溶液の溶媒よりも高い沸点(好ましくは10℃以上高い沸点、より好ましくは20℃以上高い沸点、更に好ましくは30℃以上高い沸点)を有するエポキシ化合物を使用するのが好ましい。例えば、紡糸溶液の溶媒がDMAcである場合、DMAcの沸点が165℃であるため、165℃よりも高い沸点(好ましくは175℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは195℃以上)を有するエポキシ化合物(例えば、エポキシシラン、グリシジルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)を使用するのが好ましい。
【0033】
なお、紡糸溶液は、PBIに加えて、熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を溶解させることのできる溶媒を用意し、その溶媒に溶解させることによって調製できる。この溶媒は熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物によっても異なるため、特に限定するものではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、トルエンを挙げることができる。なお、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒を利用しても良い。
【0034】
また、紡糸溶液は、熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物の他に、塩を含んでいるのが好ましい。塩を含み、紡糸溶液の導電性が高くなることによって、極細繊維の繊維径が小さくなりやすく、しかも繊維径のばらつきを小さくすることができるためである。
【0035】
このような塩の種類としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムなどの塩化物塩;リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩;亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩;硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩;酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなどの酢酸塩;炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;を挙げることができる。
【0036】
また、紡糸溶液は、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を同じ溶媒に溶解させて調製できるし、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を別の溶媒に溶解させて溶解液をそれぞれ調製した後に混合して調製できる。なお、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物を含む紡糸溶液を調製する場合、得られる極細繊維おけるPBIが主体(50mass%以上)となるように、PBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物との混合比率を調整する。
【0037】
更に、紡糸溶液の濃度はPBIと熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物とが溶解できる濃度であれば良く、特に限定するものではないが、5〜40mass%であることができる。なお、平均繊維径がより細い極細繊維を製造するためには、10〜30mass%であるのが好ましい。
【0038】
次いで、紡糸溶液を紡糸して平均繊維径が2μm以下の極細繊維を形成し、直接集積して繊維ウエブを形成する。このように、平均繊維径が2μm以下の極細繊維を形成し、直接集積して繊維ウエブを形成する方法は、特に限定するものではないが、例えば、静電紡糸法、特開2009−287138号公報に開示されているような、ガスの剪断作用により紡糸する方法、或いは特開2011−32593号公報に開示されているような、電界の作用に加えてガスの剪断力を作用させて紡糸する方法によって紡糸し、紡糸した繊維を、直接、ドラムやネットなどの捕集体上に集積して、繊維ウエブを形成できる。これらの中でも静電紡糸法によれば、平均繊維径が2μm以下の極細繊維を紡糸しやすく、繊維径が揃っており、しかも連続した極細繊維を紡糸しやすいため好適である。
【0039】
次いで、前記繊維ウエブを熱処理することにより、温度80℃のN−メチル−2−ピロリドン溶液中に、30分間浸漬した後における質量が、浸漬前の質量の85%以上の不織布を製造する。この熱処理は、極細繊維中に熱硬化性樹脂が含まれている場合には、熱硬化性樹脂が熱硬化する熱処理であり、極細繊維中にエポキシ化合物が含まれている場合には、エポキシ化合物が硬化剤として作用する熱処理である。このように、前記熱処理は熱硬化性樹脂又はエポキシ化合物の種類によって異なるため、特に限定するものではないが、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、温度180℃で30分間の熱処理を実施して本発明の不織布を製造することができる。
【0040】
このように、本発明の不織布の製造方法によれば、紡糸した繊維を直接集積した繊維ウエブを、単に熱処理するだけで、耐熱性、機械的特性、電気的特性及び耐薬品性に優れる不織布を製造できるため、簡素な不織布の製造方法である。また、比較的低い温度での熱処理によって製造できるため、エネルギー又はコスト的にも有利である。
【0041】
以上のような方法により、本発明の不織布を製造することができるが、不織布が各種用途に適合するように、必要であれば、各種後処理を実施することができる。例えば、カレンダー処理、親水化処理、撥水化処理、界面活性剤付与処理、純水洗浄処理などを実施することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点:165℃)に、 ポリベンゾイミダゾール(PBI、佐藤ライト工業株式会社製、PBI DOPE S26)を加えて、濃度19mass%の溶解溶液を調製した。その後、前記溶解溶液のPBIの固形質量(100)に対して、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDE、沸点:266℃)を、それぞれ10(実施例1)、7(実施例2)、20(実施例3)、100(実施例4)、3(比較例1)、5(比較例2)又は400(比較例3)溶解させ、紡糸溶液を調製した。
【0044】
次いで、前記紡糸溶液を次の条件で静電紡糸して繊維化し、捕集体であるドラム上に、直接集積して繊維ウエブを形成した。
【0045】
<静電紡糸条件>
(1)1本のノズルあたりの吐出量:1g/時間
(2)ノズル先端と捕集体(ドラム)表面との距離:8cm
(3)印加電圧:20kV
(4)紡糸空間の雰囲気:温度25℃/相対湿度30%RH
【0046】
そして、前記繊維ウエブを温度180℃に設定したオーブンにより30分間熱処理を実施して、表1に示す平均繊維径を有する極細連続繊維のみからなる不織布(目付:5g/m
2、厚さ:25μm)をそれぞれ製造した。
【0047】
これら不織布を、温度80℃のN−メチル−2−ピロリドン溶液中に、30分間浸漬した後における、不織布の質量の浸漬前の質量に対する百分率も表1に示す通りであった。なお、実施例1〜4の不織布をNMP溶液に浸漬した後に、電子顕微鏡により表面状態を観察したが、不織布の収縮による皺が観察されないものであったのに対して、比較例1、2の不織布をNMP溶液に浸漬した後に、電子顕微鏡により表面状態を観察すると、不織布の収縮に起因する皺が観察された。また、比較例3において、不織布を作製しようとしたが、極細連続繊維を形成できなかったり、極細連続繊維形成後に一部が溶解していたため、平均繊維径の測定及び耐薬品性の評価は行わなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、本発明の不織布は浸漬後の質量が浸漬前の質量の85%以上の、耐薬品性に優れるものであった。
【0050】
(実施例5〜7、比較例4〜5)
ジメチルアセトアミド(DMAc)に、ポリベンゾイミダゾール(PBI、佐藤ライト工業株式会社製、PBI DOPE S26)濃度19mass%の溶解溶液を調製した。その後、前記溶解溶液のPBIの固形質量(100)に対して、フェノール樹脂[旭有機工業株式会社製、HP3000A(実施例5)]、エポキシ基含有シランカップリング剤[東レ製、SH6040、沸点:290℃(実施例6)]、エポキシ樹脂[DIC製、EPICLON N−660(実施例7)]、ブチルグリシジルエーテル(沸点:165℃、比較例4)、アリルグリシジルエーテル(沸点:153.9℃、比較例5)をそれぞれ20、溶解させたこと以外は、実施例1と同様に、繊維ウエブの形成、及び熱処理を実施して、極細連続繊維からなる不織布(目付:6g/m
2、厚さ:28μm)をそれぞれ製造した。これら不織布を構成する極細連続繊維の平均繊維径、及び温度80℃のNMP溶液中に30分間浸漬した後における、不織布の質量の浸漬前の質量に対する百分率は表2に示す通りであった。なお、実施例5〜7の不織布をNMP溶液に浸漬した後に、電子顕微鏡により表面状態を観察したが、不織布の収縮による皺が観察されないものであった。また、比較例4又は比較例5の不織布をNMP溶液に浸漬したところ、完全に溶解してしまった。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から、熱硬化性樹脂又はジメチルアセトアミドよりも沸点の高いエポキシ化合物を含む不織布は、浸漬後の質量が浸漬前の質量の85%以上の、耐薬品性に優れるものであることがわかった。
【0053】
(比較例6)
ジメチルアセトアミド(DMAc)に、 ポリベンゾイミダゾール(PBI、佐藤ライト工業株式会社製、PBI DOPE S26)を溶解させ、濃度19mass%の紡糸溶液を調製した。
【0054】
次いで、前記紡糸溶液を実施例1と同じ条件で静電紡糸して繊維ウエブを形成した後、形成した繊維ウエブを温度300℃に設定した電気炉により60分間熱処理を実施して、平均繊維径300nmの極細連続繊維のみからなる不織布(目付:6g/m
2、厚さ:28μm)を製造した。この不織布を温度80℃のNMP溶液中に30分間浸漬した後における、不織布の質量の浸漬前の質量に対する百分率は50%で、耐薬品性の劣るものであった。また、不織布をNMP溶液に浸漬した後に、電子顕微鏡により表面状態を観察すると、不織布の収縮に起因する皺が観察された。
【0055】
(比較例7)
比較例6と同様にして形成した繊維ウエブを、室温下で、硫酸溶液(濃度:5mass%)に1時間浸漬した後、温度350℃に設定した電気炉で乾燥したところ、繊維が溶解してしまい、シートとして取り扱うことができなかった。