【文献】
化粧品用シリコーンゲル”KSG”シリーズ,シリコーンニューズ(Silicone Review 54),日本,信越化学,2010年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
HLB14以上である、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の高内水相油中水型乳化化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の高内水相油中水型乳化化粧料は、シリコーンエラストマー、メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーンを含む油相及び60質量%以上の水を含有する水相の系において、HLB14以上である非イオン性界面活性剤0.03〜0.6質量%を含有し、水相に有機顔料をはじめとする、顔料0.05〜8質量%を配合するものであって、25℃におけるずり速度3.83sec
−1における、粘度が1〜100Pa・secであることを特徴とし、油相、水相ともに、それぞれ相対する、相との界面の安定化をはかるために、油相側にはポリエーテル変性シリコーンオイルである界面活性剤が、水相側にはHLB14以上の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルから選択され、配合される。特に
水相側のHLB14以上の非イオン性界面活性剤は、有機顔料をはじめとする顔料を水相中に安定に分散させる役割も担うものである。
【0011】
ここで、本発明での高内水相油中水型乳化化粧料とは、水の含有量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、連続相の油中に水を分散した油中水型(W/O型)の乳化化粧料である。
【0012】
また、HLBとは親水性―親油性バランスの指標であり、0〜20までの値をとり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど、親水性が高くなる値であり、種々の計算法が知られている他、製造元から提供されるカタログなどにその値が記載されているものである。本発明では、カタログから引用した値である。
【0013】
有機顔料は、色材として用いるものであり、特に限定されるものではなく、通常、化粧品の各部位に用いることができるものであればよい。たとえば、クリームチークでは、赤やオレンジ系が好まれるため、有機顔料としては赤202号、赤226号、赤228号、赤220号などが一般的に用いられる。場合によっては、色調を整えるため、青404号、青1号Alレーキ、黄4号Alレーキなどが用いられる場合がある。
【0014】
その他、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黒酸化鉄、黄酸化鉄、紺青、群青といった無機顔料も水相側に配合する顔料として併せて用いることが可能であり、適宜、本発明の効果を損なわない程度の量を配合することができる。
【0015】
これら上記、有機顔料をはじめとする顔料の含有量は、発色性、水相内での安定性などの点から、化粧料全量に対して0.05〜8質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量%が望ましい(以下、質量%を単に%と記載する)。この有機顔料の含有量が0.05%未満であると、良好な発色が得られず、一方、8%を超えると、水相中における分散性が悪くなり、油水界面のバランスが悪くなり、好ましくない。
【0016】
また、上記水相に配合する、有機顔料をはじめとする顔料だけでなく、油相側にも配合が容易、あるいはそのような処理がなされているものを用いることが可能であり、入手可能な顔料の特性に応じて、またはそれぞれを配合する相を変えることで、皮膚表面に塗布した後で、多層化するといった効果を得ることを目的として、配合することができる。例えば、雲母チタン、色素被覆雲母チタン、金属被覆ガラス末、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムパウダー、酸化鉄被覆アルミニウム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・銀・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末などの疎水化処理物が挙げられる。
これら、油相側に配合する顔料の含有量は、水相に比べて割合が小さいため、化粧料全量に対して0.05〜5%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3%が望ましい。
【0017】
水相側に用いられる非イオン性界面活性剤は、上記水相側に配合するこれら顔料を分散し、安定性が得られることが必要である。また、高内水相油中水型乳化化粧料として、割合の小さい油相中に割合の大きな水を内包し、かつ安定に相分離させないように、安定化させることが求められる。また、水相中には、乳化安定性を得るために塩が配合されており、イオン性の界面活性剤では安定性が崩れてしまうため、非イオン性が望ましい。さらに、HLBが低いと、油相−水相界面に配向し、界面のバランスを阻害し、安定性が低下してしまうことや、塩の影響を受け易くなるため、HLBは14以上、好ましくは15以上が望ましい。
【0018】
非イオン性界面活性剤としては、例えば炭素数1から3までのメチレン、エチレン、プロピレン基から1つまたは2つ以上が選ばれる、アルキレン基と炭素数10から22までの直鎖または分枝の長鎖アルキル基を含むポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10から22までの長鎖アルキル基を含むポリグリセリン脂肪酸エステル、炭素数1から3までのアルキレン基と炭素数10から22までの長鎖アルキル基を含むポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、炭素数1から3までのアルキレン基と炭素数10から22までの長鎖アルキル基を含むポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルなどが挙げられ、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして具体的には、ラウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリルが挙げられ、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルとして具体的には、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリルが挙げられ、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとして具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコールを挙げることができ、これらより1種または2種以上を使用することができる。市販品では、BL−9EX、BL−21、BL−25、BC-15、BC−2
0、BC−23、BC−25、BC−30、BC−40、BS−20、BO−10V、BO−15V、BO−20V、BO−50V、BB−20、BB−30、BD−10、BT−12、PBC−34(以上、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、Hexaglyn 1−L、Decaglyn 1−L、Decaglyn1−M、Decaglyn
1−50SV(以上、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、TMGO−15(ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル)、MYS−25V、MYS−40V、MYS−40MV、MYS−45V、MYS−45MV、MYS−55V、MYS−55MV、CDS−6000P(ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル)、(以上、日光ケミカルズ株式会社製)、エマルゲン 120、エマルゲン 123P、エマルゲン 130K、エマルゲン 147、エマルゲン 150、エマルゲン 220、エマルゲン 350、エマルゲン 430、エマルゲン 1118S−70、エマルゲン 1135S−70、エマルゲン1150S−60、エマルゲン 4085、エマルゲン 2020G−HA、エマルゲン 2025G(以上、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王株式会社製)を挙げることができる。
【0019】
これら、水相側に配合する非イオン性界面活性剤の含有量は、割合の小さい油相や顔料に対しての安定性を得るために用いることから、顔料に対して、1〜60%、化粧料全量に対して0.03〜0.6%が好ましく、さらに好ましくは、0.05〜0.5%が望ましい。この非イオン性界面活性剤の含有量が0.03%未満であると、油水界面のバランスや顔料の分散性が悪くなり、一方、0.6%を超えると、塗布感が悪くなり好ましくない。
【0020】
油相側に配合する界面活性剤である、ポリエーテル変性シリコーンは、連続相である油相中に分散させる水相の、粒径を小さくすることで、塗布した時の感触を変えて、使用感を良くするとともに、割合が大きい水相部を小さな粒径で分散させることにより、これら水相同士の凝集を抑制し、乳化物としての経時安定性を高めるための、乳化助剤として用いることができる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリエチレングリコール・ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等があげられる。これら、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体としては市販品としてシリコーンKF6011、KF6015、KF6017(信越化学工業株式会社製)が挙げられ、ポリエチレングリコール・ポリジメチルシロキシエチルジメチコンとしては、例えばシリコーンKF6028(信越化学工業株式会社製)等が挙げられ
る。
これら、ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、化粧料全量に対して0.5〜5%が好ましく、さらに好ましくは1〜3%が望ましい。
【0021】
油相側に配合するシリコーンエラストマーは、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルに合わせて適宜選択して用いることができ、架橋型ポリオルガノシロキサンを一種または二種以上を使用することができる。油剤としてシリコーンオイルを用いて、安定なゲルを生成することが可能になるようなものを用いることができ、主鎖及び側鎖の両方がシリコーン鎖であるものや、主鎖にシリコーン、側鎖にはポリエーテルを組み合わせたものなどを用いることができる。さらにこれらを併用して用いることで、内相水比率の高い油中水型乳化組成物とすることができる。市販品としてシリコーンKSG10シリーズ、KSG21シリーズ(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
これら、シリコーンエラストマーの含有量は、化粧料全量に対して0.1〜6%が好ましく、さらに好ましくは0.3〜5%が望ましい。
【0022】
油相側に配合するメチルポリシロキサンは、高内水相油中水型乳化化粧料において、上記シリコーンエラストマーや、ポリエーテル変性シリコーンからなる、ゲル成分が分散する連続相側である、油相の基剤となる油剤である。粘度が高いと、塗布感が劣るので、25℃において1〜20mm
2/secが好ましく、さらに好ましくは1.5〜10mm
2/secが望ましい。
このメチルポリシロキサンは、基剤として上記油相のゲル成分が分散可能な程度に必要最少量用いることができ、化粧料全量に対して5〜30%が好ましく、さらに好ましくは8〜20%が望ましい。
【0023】
本発明の高内水相油中水型乳化化粧料においては上述した必須成分のほかに、さらに通常乳化化粧料に配合される水性成分は勿論含有することができる。例えば、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、香料、保香剤、増粘剤などがあり、それらを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができ、残部は精製水、イオン交換水などの水で調製される。
【0024】
本発明では顔料の沈降制御や塗布性能の点からEHD型粘度計、25℃、標準コーンローター1rpm、ずり速度3.83sec
−1の時の粘度範囲として1〜100Pa・secとなる高内水相油中水型乳化化粧料とするものであり、好ましくは10〜50Pa・secとすることが望ましい。
この粘度が1Pa・sec未満では、水相と油相の分離が起こりやすくなるため、経時安定性が劣ることとなり好ましくなく、一方100Pa・secを超えると、粘性が高くなり塗布性能が劣ることとなり好ましくない。
【0025】
以上述べてきたように、本発明のHLB14以上である、非イオン性界面活性剤により分散した、有機顔料をはじめとする顔料を、水相に配合した高内水相油中水型乳化化粧料は、高い内水相比であるため、塗布した際に、瞬時に乳化粒子が壊れ、内相の水があふれ出し、余剰水分が速やかに蒸散することにより、また吸収されることで、潤いを与え、べたつきがなく、使用感に優れていることが特徴として挙げられる。この高い内水相に有機顔料が配合されているため、塗布によって速やかに顔料が均一に分散、転着し、一方で連続相である油相で保護された被膜が皮膚表面上に形成されることとなる。その結果、耐水性を有し、かつ、みずみずしく軽い感触を持つことに加え、更には経時安定性に優れる鮮やかな発色を可能にした。
また、以上述べてきたように、有機顔料をはじめとする顔料を、配合時に安定化させるための表面処理を必要としないので、表面処理の装置・設備のコンタミ防止の為の洗浄や、別途装置を必要とするといった、コスト高の要因となる生産上の問題も解消されるとと
もに、使用できる顔料の制限が小さくなったことで、高内水相油中水型化粧料を鮮やかな発色を必要とする、より広範な化粧品種へ適用できる。
【0026】
本発明の高内水相油中水型乳化化粧料(以下、「乳化化粧料」という)は、塗布部を備えた液体化粧料塗布具を用いて使用に供することができる。
用いことができる液体化粧料塗布具は、特に限定されず、塗布手段として、弾性材料から構成される塗布手段となる塗布部を具備し、上記化粧料を充填する容器を有する塗布具が挙げられる。
【0027】
具体的には、
図1〜
図4に示す、回転式繰出タイプとなる使用性、簡便性、塗布性に優れる液体化粧料塗布具の使用が望ましい。
このタイプの液体化粧料塗布具Aは、
図1〜
図4に示すように、軸本体10内部に配設した収容部11内に化粧料等の塗布液12を収容し、使用者の肌等の対象部位に接して塗布液12を塗布する塗布部20を軸本体10の先端部10aに固定し、軸本体10の後部に設けた押し出し機構30によって軸本体10の収容部11内に収容した化粧料等の塗布液12を塗布部20の吐出口23から吐出する形態となっている。
【0028】
この液体化粧料塗布具Aの軸本体10は、概略中空筒状を呈し、その先端部10aが先細に形成され、その先端部10aの外径寸法が塗布部20の後端部21の内径寸法とほぼ同一に形成されている。その先端部10aに塗布部20の後端部21が嵌合により固着されている。この固着は先端部10a及び後端部21の互いの対向部分には、リブ状の凹凸部が形成され、それら同士によって凹凸嵌合するようにして、先端部10aに対して塗布部20の後端部21が固着される構造となっている。
【0029】
前記塗布部20には、円柱体先端部を斜めに切り落とした形状(傾斜形状)となる、塗布面22と、該塗布面22の先端に吐出口23を有する吐出口面24とを有し、塗布部20内部にはその吐出口23に連通する小径の連通路25が形成されている。本実施形態では、塗布液12が押し出し機構30によって加圧された際に、連通路25を介して吐出口23から吐出され、吐出口面24に滞留するようになっている。
前記吐出された塗布液を塗布する塗布面22と、吐出口23を有する吐出口面24とは異なる角度を持つ2つの略平面(僅かな曲面)となるものである。好ましくは、前記塗布面22は、軸線に対して0°以上90°以下の傾きであり、吐出口面24は、塗布面22に対して10°以上45°以下の傾きであることが好ましく、更に、塗布面22と吐出口面24が交差する箇所は凸部となることが望ましい。本実施形態では、塗布面22は軸線に対して25°の傾きであり、吐出口面24は、塗布面に対して25°の傾き(軸線に対して50°)の傾きを持っている。これにより塗布面22と吐出口面24が交差する箇所は凸部となり、塗布時に吐出口の液が邪魔にならない構造となっており、しかも、塗布面22は、皮膚面に塗布する際に平坦な塗布面となるものであるので対象部位への接触面積が大きくなり塗布性が向上するものとなる。
なお、吐出口23、連通路25の大きさ、開口形状等は、上記粘度、配合成分、塗布態様を勘案して好適な大きさ等に設定することができ、吐出口23、連通路25の開口形状、孔形状としては、円形状、楕円形状等とすることができ、吐出口23の開口面積としては、1〜6mm
2することが望ましい。本実施形態では、吐出口23は楕円形状で、面積3.5mm
2であり、連通路25は、φ2mm、長さ30mmである。
【0030】
このタイプの液体化粧料塗布具Aにおいて、塗布部20は、好適な塗布性能、塗布液貯留性が得られるように、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂材料、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー
、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー等のエラストマー、NBR、シリコンゴム、EPDM、フロロシリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等のゴム、またはこれらの複合物から構成される材料で一体成形されている。好ましくは、塗布部20は、塗布動作での力が均等に掛かり負荷圧力にムラが起こらずに、きれいに塗布する点から、JIS K 6253−2006に規定のタイプA硬度が60以上、更に好ましくは、70以上であることが望ましい。このタイプA硬度を60以上とすることにより、力が直接的に塗布面に伝わりうまく圧力分散するため更に均一に塗布することができるものとなる。本実施形態では、塗布部20は、タイプA硬度が90となるPP製により一体成形されている。
この塗布部20における塗布面22は、更に、高粘性の化粧料などを好適に皮膚面に良好に塗布することができるように、皮膚面の摩擦を低減し、また、塗布表面を平滑化あるいは凹凸の小さい表面状態とするために、表面粗さRaが3〜300μm、好ましくは、20〜80μmとなるように形成されている。
本実施形態では、塗布対象となる皮膚面への抵抗を緩和する点等から、塗布面22の周縁部の角を取る縁取り処理を施している。また、塗布面22の面積は、上記化粧料種、粘度、配合成分、塗布態様を勘案して好適な面積に設定することができ、好ましくは、100〜400mm
2とすることが望ましい。更に、吐出口面24の面積は、吐出口面24に塗布液が良好に滞留することができ、かつ、塗布時に吐出口の液が邪魔にならないように設定されるものであり、好ましくは、30〜90mm
2とすることが望ましい。本実施形態では、塗布面22の面積は210mm
2であり、吐出口(面積3.5mm
2)を含む吐出口面24の面積は60mm
2であった。
【0031】
塗布面22における表面粗さは、JIS B0601:2001に従って測定された算術平均粗さRaである。本発明(後述する実施例を含む)において、表面粗さ(算術平均粗さRa)の測定は、レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK−8500)を用いて、平滑化条件設定(フィルタサイズ3×3、フィルタタイプ単純平均、実行回数1回)、レンズ倍率10倍、カラー超深度モード、その他の設定は標準仕様に準ずるによる表面粗さ測定により行った。
【0032】
このような表面粗さを塗布面22に実現する方法としては、例えば、射出成形等に使用する金型において、この塗布面22を形成する面に、算術平均粗さ(Ra)が3μm〜300μmとなるような凹凸を形成すること、また、成形品に対して2次加工(サンドブラスト#60)を施すことなどが挙げられる。このような凹凸の形成方法としては、上記金型の場合は金型面に対してエッチング加工、放電加工、又はブラスト加工等を採用することができ、また、金型の素材自体を発泡金属等により構成し表面に細かい凹凸を持つ金型とする方法を採用することができる。
ここで、上記算術平均粗さ(Ra)の数値が3μm未満となる場合には、表面粗さが足りず、塗布液がわだちを作る・塗りムラが生じることとなる。一方、上記数値が300μmを超えて上回る場合には、引っかき跡の残りが生ずることとなる。本実施形態では、塗布面22の算術平均粗さ(Ra)は30μmであった。
【0033】
押し出し機構30は、回転式繰り出しタイプとなるものであり、前記軸本体10内部の収容部11に向けて前進・後退して収容空間内の容積を減少・増大させるピストン体31と、該ピストン体31の後部に螺子棒となる軸状部材32の前部32aを係合して、この軸状部材32を使用者の回転操作によって前後動させて前記ピストン体31を前進・後退動作させる駆動機構(回転操作部材33、軸状部材32、固定筒状体34、内筒材35等からなる)とを有している。
【0034】
この押し出し機構30のピストン体(ガスケット)31は、軸本体10の後端開口から挿入して、本体中央部の内壁に密着して摺動可能に設けられている。これにより、軸本体
10内と、塗布部20の後端部21とピストン体31とに囲まれる空間部分は、塗布液12の収容部11として形成されている。
また、押し出し機構30は、使用者の回転操作によってその構成要素のピストン体31を軸本体10中央部の内壁に密着して液密に摺動し、これによって、前記収容部11の容積を減少・増大して塗布液12を加圧・減圧する。押し出し機構30は、主要部材として回転操作部材33、軸状部材32、この軸状部材32を出没させる固定筒状体34(これらは駆動機構に相当する)、及び上述のピストン体31を有してなる。
回転操作部材33は、互いに回転不能に接合させた内筒材35と外筒キャップ36とからなり、回転操作部材33全体は軸本体10に回転可能に設けられる。この回転操作部材33に軸状部材32は軸方向摺動可能でかつ回転方向に固定されている。この回転操作部材33は、互いに通常は相対回転不能で一定以上の回転力によって相対回転するように接合させた外筒キャップ36と内筒材(「繰り出し体」とも称する)35とからなり、回転操作部材33全体は軸本体10の後部に回転可能に設けられる。
【0035】
前記軸状部材32を出没させる固定筒状体34は、環状部材からなり、軸本体10に回転及び進退動不能に取り付けられている。固定筒状体34の内周部に雌ネジが形成されていて、軸状部材32の外周の雄ネジが螺合するようになっている。回転操作部材33を回転させることによって、軸状部材32が回転し、固定筒状体34の雌ネジに螺合する軸状部材32の雄ネジによって軸状部材32が繰出されるのでピストン体31が前進・後退する構造となっている。
また、固定筒状体34及び回転操作部材33(内筒材35先方外周面)同士の噛み合わせ部37はラチェットが形成されている。回転操作部材33は、固定筒状体34(それの固定された軸本体10)に対して両方向に回転可能になっており、高粘性液体化粧料となる塗布液を吐出する一方向へ回転させたときには、ラチェットによる手指にクリック感を生じさせつつ吐出させ、他方向へ回転させたときには、設定された回転力以上の入力をしたときに回転するように回転規制されている。すなわち、その他方向に一定以上の回転力が加わった時に、その規制を解除して回転可能にするトルクリミッタ機能を付与できる構造となっている。
【0036】
また、上記の回転操作部材33の他方向への回転等によって押し出し機構30がピストン体31を後退させて軸本体10の収容部11内部の塗布液12を減圧する機能を有しており、これによって、押し出し機構30が塗布液12に対する加圧を停止した以後に、塗布液12を前記押し出し機構30によって減圧でき、塗布部20に設けた連通路25に液体化粧料を戻すことができる。その他、押し出し機構30において、上記回転操作部材33の噛み合わせ部37が他方向への回転規制を回転停止させるものにして、液体化粧料の戻しをしないようにすることもできる。
【0037】
このように構成される本発明の乳化化粧料を収容した液体化粧料塗布具Aでは、本発明の高粘性の液体チーク等の高内水相油中水型乳化化粧料を用いた場合にも、吐出口23から吐出させた乳化化粧料を塗布面22により、皮膚上に広げ叩くことによって、熟練を要しなくても簡単に薄く塗り広げることができる液体塗布具が得られるものとなる。本実施形態では、更に、塗布面22は軸線に対して0°以上90°以下の傾きであり、吐出口面24は、塗布面に対して10°以上45°以下の傾きを持ち、しかも、塗布面22と吐出口面24との交差箇所は凸部となることにより、吐出口面24に塗布液が良好に滞留することができ、かつ、塗布時に吐出口の液が邪魔にならように設定されており、しかも、塗布面22を含む塗布部20はJIS K 6253−2006に規定のタイプA硬度が60以上であるため、塗布面22は、皮膚面に塗布する際に平坦な適度な硬度と、表面荒さを持つ塗布面となるものであり、対象部位への接触面積が大きく良好な接触状態となっており、この特性の塗布面22により、皮膚上に広げ叩くことによって、熟練を要しなくても簡単に薄く塗り広げることができる高粘性化粧料塗布具などに好適な使用性、塗布性能
に優れたものとなる。なお、上記で好ましい液体化粧料塗布具の形態を詳述したが、上記形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能なものであり、例えば、上記形態において、回転繰出し容器としたが、チューブ容器、スクイズ容器、ノック式繰出容器、エアゾールなどしても良いものである。
【実施例】
【0038】
次に実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1〜4及び比較例1〜5〕
下記表1及び表2に示す配合処方で油相部、水相部をそれぞれ調製し(配合単位:質量%、全量100質量%)、さらに油相部を強く撹拌しながら、水相部を徐添し、高内水相油中水型乳化化粧料を得た。下記測定方法により、得られた高内水相油中水型乳化化粧料の粘度値を測定すると共に、下記各評価方法により経時安定性、塗布感について評価した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0040】
(粘度の測定方法)
調製した各高内水相油中水型乳化化粧料について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(EHD型粘度計、それぞれ標準コーンプレート、東機産業社製)を用いてずり速度3.83sec
−1における粘度を測定した。
【0041】
(経時安定性の評価方法)
調製した各高内水相油中水型乳化化粧料を40℃の恒温槽に1カ月保管し、その外観を目視することにより、経時安定性を下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
○:油相、水相は分離しておらず、試験前と比べて変化が見られない。
△:やや、水相の分離がみられる。
×:油相、水相が分離してしまっている。
【0042】
(塗布感の評価方法)
調製した各高内水相油中水型乳化化粧料を、化粧経験3年以上の女性パネラー10人が実際に使用して、塗布時の使用感(べたつき感等)を下記基準にて官能評価した。
評価基準:
○:パネラー10人中、8人以上が使用感に優れると回答したもの。
△:パネラー10人中、4人以上7人以下が使用感に優れると回答したもの。
×:パネラー10人中、3人以下しか使用感に優れると回答しなかったもの。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
上記、表1及び表2中の*1〜*16は以下に示す通りである。
*1:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー/シクロペンタシロキサン、信越化学工業株式会社製。
*2:(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー/ジメチコン、信越化学工業株式会社製。
*3:PEG−10ジメチコン、信越化学工業株式会社製。
*4:PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製。
*5:ジメチコン、粘度6mm
2/s(25℃)、信越化学工業株式会社製。
*6:シクロペンタシロキサン、信越化学工業株式会社製。
*7:リンゴ酸ジイソステアリル、日清オイリオグループ株式会社製。
*8:シリコーン処理パール顔料、大東化成工業社製。
*9:ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、HLB=18、日光ケミカルズ株式会社製。
*10:ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB=17、日光ケミカルズ株式会社製。
*11:ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB=15.5、日光ケミカルズ株式会社製。
*12:ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB=13.5、日光ケミカルズ株式会社製。
*13:共通成分:フェノキシエタノール0.5%、メチルパラベン0.2%、エチルパラベン0.1%(以上、防腐剤として)、クエン酸ナトリウム(酸化防止剤)0.2%、塩化ナトリウム0.5%、エタノール5%。
*14:アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸エステル共重合体、アクゾノーベル株式会社製。
*15:アクリル酸t−ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体、BASF社製。
*16:油相調製時に、油相側に配合。
【0046】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜4の高内水相油中水型乳化化粧料は本発明の範囲外となる比較例1〜5に比べて、経時安定性、塗布性能に優れていることが判明した。
比較例を個別的にみると、比較例1は非イオン性界面活性剤ではあるがHLBの下限値に満たないものを用いた例であり、経時安定性で劣ることがわかった。比較例2及び3は、HLB14以上の非イオン性界面活性剤ではなく、アクリル樹脂と、乳化安定剤であるアミノメチルプロパノールを用いたものであり、種類や量を調整しても、経時安定性、塗布感ともに劣ることがわかった。また比較例4は、油相含有量を増加した例であるが、べたつきが増し、塗布感が劣ることがわかった。比較例5は、顔料を油相に配合した例であり、油相含有量は顔料を除き実施例1〜4と同様に調製しているが、塗布感がやや劣ることがわかった。