特許第6226593号(P6226593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226593
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20171030BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H01L31/04
   G08B21/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-143440(P2013-143440)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-19445(P2015-19445A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 泰宏
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−186263(JP,A)
【文献】 特開2011−134862(JP,A)
【文献】 特許第2874156(JP,B2)
【文献】 特開2012−205078(JP,A)
【文献】 特開2002−152976(JP,A)
【文献】 特開2002−289883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 19/00−21/24
H01L 31/02
31/0216−31/0224
31/0236
31/0248−31/0256
31/0352−31/036
31/0392−31/078
31/18
51/42−51/48
H02J 3/00−5/00
H02S 10/00−10/40
30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池モジュールと、前記複数の太陽電池モジュールの中から異常のある太陽電池モジュールを検出する異常検出装置とを備えた太陽光発電システムであって、
前記各太陽電池モジュールの発電出力電圧をそれぞれ対応する定格出力電圧で除算して各太陽電池モジュールの発電割合を求める発電割合算出処理部と、
前記各発電割合のうち最も小さい割合の最小発電割合、及び前記最小発電割合の値を除いた残りの発電割合の平均値の差が所定の閾値以上となるときに前記最小発電割合に対応する太陽電池モジュールを異常太陽電池モジュールと断定する異常判断処理部と、
を備え、
前記残りの発電割合の平均値の差は、前記最小発電割合に対応する太陽電池モジュールから、その他の太陽電池モジュールまでの距離に無関係に算出され、
前記太陽光発電システムに含まれると共に比較の対象である各前記太陽電池モジュールによって発電された出力電圧は、同一のDC−AC変換器に供給され
前記所定の閾値が、25%であることを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電システムにおいて、
前記異常判断処理部は、
前記最小発電割合と前記平均値との差が所定の時間継続して前記閾値以上となっているときに前記異常太陽電池モジュールの断定を行うことを特徴とする太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの異常検出装置に係り、特に、複数の太陽電池モジュールの中で異常太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムでは、複数の太陽電池モジュールが接続されて構成されている。太陽電池モジュールは、経年劣化や物理的損傷等により、急激に発電出力が低下することがある。このように異常となった太陽電池モジュールは、発電に寄与しないため、早期に発見されて交換されることが望まれる。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、太陽電池モジュール毎の発電出力を比較することにより異常モジュールを検出する構成が開示されている。ここでは、各太陽電池モジュールの発電出力の平均値を算出し、例えば、平均値より20%低下した太陽電池モジュールを異常とみなすことが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2874156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成によれば、全ての太陽電池モジュールの発電出力の平均値を算出する。このため、異常な太陽電池モジュールの発電出力が平均値に大きく影響する。この結果、各太陽電池モジュールの発電出力と平均値との差の関係が大幅に変化して、例えば、異常を正常と判断する等の誤判断につながる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、より精度良く異常の太陽電池モジュールを検出することができる太陽電池モジュールの異常検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールと、前記複数の太陽電池モジュールの中から異常のある太陽電池モジュールを検出する異常検出装置とを備えた太陽光発電システムであって、前記各太陽電池モジュールの発電出力電圧をそれぞれ対応する定格出力電圧で除算して各太陽電池モジュールの発電割合を求める発電割合算出処理部と、前記各発電割合のうち最も小さい割合の最小発電割合、及び前記最小発電割合の値を除いた残りの発電割合の平均値の差が所定の閾値以上となるときに前記最小発電割合に対応する太陽電池モジュールを異常太陽電池モジュールと断定する異常判断処理部と、を備え、前記残りの発電割合の平均値の差は、前記最小発電割合に対応する太陽電池モジュールから、その他の太陽電池モジュールまでの距離に無関係に決定され、前記太陽光発電システムに含まれると共に比較の対象である各前記太陽電池モジュールによって発電された出力電圧は、同一のDC−AC変換器に供給され、前記所定の閾値が、25%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る太陽光発電システムにおいて、前記異常判断処理部は、前記最小発電割合と前記平均値との差が所定の時間継続して前記閾値以上となっているときに前記異常太陽電池モジュールの断定を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各太陽電池モジュールの発電割合のうち、最も小さい割合の最小発電割合の値を除いた残りの発電割合の平均値を用いて異常の検出を行っている。これにより、平均値は最小発電割合の値に影響されることがない。したがって、より精度良く異常の太陽電池モジュールを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施の形態における太陽光発電システムの構成図である。
図2】本発明に係る実施の形態において、太陽電池モジュールの異常を検出する手順を示すフローチャートである。
図3】従来技術の異常検出装置と本発明に係る実施の形態の異常検出装置との比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、異常検出装置10を備える太陽光発電システム12の構成図である。太陽光発電システム12は、複数の太陽電池モジュール14a〜14cを備えている。太陽電池モジュール14a〜14cによって発電された出力電圧は、DC−AC変換器16に供給される。DC−AC変換器16は、太陽電池モジュール14a〜14cからの直流電圧を交流電圧に変換し、その出力交流電圧を負荷18に供給する。なお、以下では、複数の太陽電池モジュール14の数は、3個であるとして説明するが、3個以外であってもよい。
【0013】
太陽電池モジュール14a〜14cは、太陽光発電システム12が設置される施設の屋上等に並べて取り付けられ、好適な発電出力電圧Vpが出力されるように、太陽光の入射角度等の動作環境の条件を考慮して配置される。太陽電池モジュール14a〜14cは、天候が良い等の最適な動作環境の条件下で発電された出力電圧を定格出力電圧Vsとして予め算出されている。
【0014】
太陽電池モジュール14a〜14cの出力端子には、それぞれ電圧計19が接続されている。各電圧計19によって計測された電圧値は、異常検出装置10の発電割合算出処理部20に伝送される。
【0015】
発電割合算出処理部20は、電圧計19によって計測された太陽電池モジュール14a〜14cの発電出力電圧Vpをそれぞれ対応する定格出力電圧Vsで除算して各太陽電池モジュールの発電割合Rを求める。ここで、太陽電池モジュール14a〜14cが最適な動作条件下で発電した場合には、定格出力電圧Vsと同じ電圧が出力されるため、発電割合Rが100%となる。また、各太陽電池モジュール14a〜14cが故障している場合には、発電出力が低下し、最悪の場合、全く発電されていないことがある。この場合の発電出力電圧Vpは0Vとなるため、発電割合Rが0%となる。
【0016】
異常検出装置10の異常判断処理部22は、各発電割合Rのうち最も小さい割合の最小発電割合Rminと、最小発電割合Rminの値を除いた残りの発電割合Rの平均値Raveとの差が所定の時間継続して閾値Rth以上となるときに最小発電割合Rminに対応する太陽電池モジュール14a〜14cを異常太陽電池モジュールと断定する機能を有する。
【0017】
続いて、上記構成の太陽電池モジュール14a〜14cの異常検出装置10の動作について説明する。図2は、異常検出装置10が太陽電池モジュール14a〜14cの異常を検出する手順を示すフローチャートである。
【0018】
最初に、太陽電池モジュール14a〜14cの発電割合Rを算出する(S2)。この工程は、発電割合算出処理部20の機能によって実行される。
【0019】
次に、S2の工程によって求められた各発電割合Rのうち、最も小さい割合の最小発電割合Rminを除いた残りの発電割合で平均値Raveを求める(S4)。この工程は、異常判断処理部22の機能によって実行される。
【0020】
次いで、平均値Raveと最小発電割合Rminとの差が閾値Rth以上となるか否かを判断する(S6)。この工程は、異常判断処理部22の機能によって実行される。S6の工程で、平均値Raveと最小発電割合Rminとの差が閾値Rth以上でないと判断された場合には、再び、S2の工程へと戻る。
【0021】
S6の工程で、平均値Raveと最小発電割合Rminとの差が閾値Rth以上であると判断されれば、閾値Rth以上との判断が所定の時間継続したか否かを判断する(S8)。この工程は、異常判断処理部22の機能によって実行される。S8の工程において、所定の時間経過していないと判断された場合には、再びS6の工程へと戻る。
【0022】
S8の工程において、閾値Rth以上との判断が所定の時間継続したと判断したときは、最小発電割合Rminに対応する太陽電池モジュール14a〜14cを異常太陽電池モジュールとして断定し、図示しない監視センタに通報する(S10)。この工程は、異常判断処理部22の機能によって実行される。これにより、太陽電池モジュール14a〜14cの異常が発見されるため、保守作業員は、迅速に取り換え対応等を行うことができるという利点がある。
【0023】
次に、従来技術の異常検出装置と本発明の実施形態の異常検出装置10の両方で太陽電池モジュール14a〜14cの異常を検出した場合について比較検討する。従来技術の異常検出装置は、全ての太陽電池モジュール14の発電割合Rの平均値Raveを求め、各発電割合Rと平均値Raveの差が所定の閾値Rth以上となる太陽電池モジュール14a〜14cを異常と断定する。以下では、従来技術の異常検出装置及び本発明の実施形態の異常検出装置10の閾値Rthは、25%として説明する。
【0024】
最初に、従来技術の異常検出装置について述べる。図3(a)に示されるように、太陽電池モジュール14a〜14cにおいて、正常な太陽電池モジュール14a,14bの発電割合Rが75%であり、異常な太陽電池モジュール14cの発電割合Rが45%である場合について検討する。このとき、従来技術の異常検出装置では、平均値Raveの値が65%となり、各太陽電池モジュール14a〜14cの発電割合Rと平均値Raveとの差を求めると、図3(a)に示されるように、10%、10%、20%となる。この結果、太陽電池モジュール14cにおいても閾値Rthが25%以上とならないため、太陽電池モジュール14cを正常と誤判断される可能性がある。したがって、異常な太陽電池モジュール14cを検出するためには、例えば、所定の閾値Rthを15%に設定する必要がある。
【0025】
また、図3(b)に示されるように、太陽電池モジュール14a〜14cにおいて、正常な太陽電池モジュール14a,14bの発電割合Rが75%であり、異常な太陽電池モジュールの発電割合Rが0%である場合について検討する。このとき、従来技術の異常検出装置では、平均値Raveの値が50%となり、太陽電池モジュール14a〜14cの発電割合Rとの差を求めると、図3(b)に示されるように、25%、25%、50%となる。この場合、上述したように、仮に所定の閾値Rthを25%から15%に変更すると、今度は、全ての太陽電池モジュール14a〜14cが閾値Rth以上となって全てが異常と誤判断される可能性がある。すなわち、従来技術では、平均値Raveが最小発電割合Rminの値に大きく影響されて、各発電割合Rと平均値Raveとの差が正常と異常との間で狭くなり、閾値Rthの設定が困難である。このため、精度良く異常の検出を行うことが難しい。
【0026】
続いて、本発明の実施形態の異常検出装置10において、上記と同様の事例について検討する。図3(a)の例では、平均値Raveの値が75%となり、各太陽電池モジュール14の発電割合Rとの差を求めると、図3(a)に示されるように、0%、0%、30%となる。したがって、閾値Rth(25%)を超えている太陽電池モジュール14cが異常であると断定できる。
【0027】
図3(b)の例でも、平均値Raveの値に変化はなく、各太陽電池モジュール14の発電割合Rとの差を求めると、図3(a)に示されるように、0%、0%、75%となる。したがって、閾値Rth(25%)を超えている太陽電池モジュール14cが異常であると断定できる。
【0028】
上記のように、異常検出装置10では、各発電割合Rのうち、最小発電割合Rminの値を除いた残りの発電割合の平均値Raveを用いて異常の検出を行っている。このため、平均値Raveは最小発電割合Rminの値に影響されることがない。これにより、従来技術に比べると、発電割合Rと平均値Raveとの差が正常と異常との間で広くなり、閾値Rthの設定が容易である。したがって、より精度良く異常の太陽電池モジュールを検出することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 異常検出装置、12 太陽光発電システム、14a,14b,14c 太陽電池モジュール、16 AC−DC変換器、18 負荷、19 電圧計、20 発電割合算出処理部、22 異常判断処理部。
図1
図2
図3