特許第6226601号(P6226601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226601
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】微生物油の調製
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/64 20060101AFI20171030BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C12P7/64
   C11C3/00
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-150628(P2013-150628)
(22)【出願日】2013年7月19日
(62)【分割の表示】特願2010-177129(P2010-177129)の分割
【原出願日】2003年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-39540(P2014-39540A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年8月16日
【審判番号】不服-436(P-436/J1)
【審判請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】02254262.5
(32)【優先日】2002年6月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】02258713.3
(32)【優先日】2002年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】03251169.3
(32)【優先日】2003年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】ストリークストラ フーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ブロッケン ペトラス ヨセフ マリア
【合議体】
【審判長】 大宅 郁治
【審判官】 福井 悟
【審判官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−512444(JP,A)
【文献】 特開平2−142486(JP,A)
【文献】 特開平2−013388(JP,A)
【文献】 特表2000−508888(JP,A)
【文献】 特開2000−069987(JP,A)
【文献】 特開平1−215245(JP,A)
【文献】 特開昭64−038007(JP,A)
【文献】 Appl.Microbiol.Biotechnol.,1993年,Vol.39,pp.450−455
【文献】 JAOCS,1998年,Vol.75,pp.1815−1819
【文献】 Appl.Microbiol.Biotechnol.,1989年,Vol.31,pp.11−16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P7/00
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE(STN)
Thomson Innovation
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物油の質量を基準として少なくとも40%のアラキドン酸(ARA)を含み、少なくとも90%のトリグリセリドの含有量を有する微生物油の製造方法であって、
発酵容器内部の培地中で微生物モルティエレーラ・アルピーナ(Mortierella alpina)を培養する工程を含み、それによって発酵の間に炭素源が添加され、発酵終了の15時間から2時間前に開始される、発酵の終了直前の段階で、炭素源が、1時間当たり0.01〜0.30M炭素/kg培地の速度で添加され、炭素源の濃度が、0.01〜10g炭素源/kg培地であり、
前記製造方法は、非極性溶媒を用いて前記微生物から前記油を抽出する工程を更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記炭素源が、グルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵を、≧22℃及び≦30℃で実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器が、10リットル以上の容量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、非遺伝的に修飾されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
初期段階の間、炭素源が過剰である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒がヘキサンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
発酵が終了した後、前記微生物の細胞が低温殺菌される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記油は、前記油の質量を基準として少なくとも50%のARAを含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
微生物油の質量を基準として少なくとも40%のアラキドン酸(ARA)を含み、少なくとも90%のトリグリセリドの含有量を有する微生物油の製造方法であって、
発酵容器内部の培地中で微生物モルティエレーラ・アルピーナ(Mortierella alpina)を培養する工程を含み、それによって発酵の間に炭素源が添加され、発酵終了の15時間から2時間前に開始される、発酵の終了直前の段階で、前記微生物が、前記微生物がアラキドン酸(ARA)に優先して、前記微生物の細胞内の1種以上の脂肪又は脂質を代謝又は消費し、炭素源が、1時間当たり0.01〜0.30M炭素/kg培地の速度で添加され、炭素源の濃度が、0.01〜10g炭素源/kg培地である、条件におかれ、
前記製造方法は、非極性溶媒を用いて微生物から前記油を抽出する工程を更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記炭素源が、グルコースである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
発酵を、≧22℃及び≦30℃で実施する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
初期段階の間、炭素源が過剰である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がヘキサンである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
発酵が終了した後、前記微生物の細胞が低温殺菌される、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物油は、微生物油の質量を基準として少なくとも50%のARAを含有する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、任意に微生物油中のPUFAの製造方法に関し、微生物を2段階の方法で培養する工程、及び続いて、微生物から微生物油を回収する工程を含む。本発明は、さらにそのような方法から得られる新規な(例えば、微生物)油に関する。上記油中では、50%以上の脂質(又はPUFA、例えば上記油中)は、アラキドン酸(ARA)である。上記油が、2.5又は2.0より低い低過酸化物価(POV)及び/又は1.0以下の低アニシジン値(AnV)を有してもよい。本発明は、さらに本発明の微生物油を含む食物及び飼料サプリメント又はそれから生じる使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(序)
ポリ不飽和脂肪酸、即ち、PUFAは、天然に見出される。多彩な異なるPUFAが、異なる単細胞生物(藻類、菌類など)によって産生される。一つの特に重要なPUFAは、アラキドン酸(ARA)であり、多くの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)の一つである。化学的にアラキドン酸は、シス−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(20:4)であり、LC−PUFAの(n−6)ファミリーに属する。
【0003】
アラキドン酸は、エイコサノイド、すなわち、プロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエンを含む群として集団的に既知な多彩な生物活性化合物の主な前駆体である。アラキドン酸は、ヒト母乳の脂質フラクションの成分の一つであり、また幼児の最適な神経発達に必要不可欠と考えられる。アラキドン酸は、特殊調製粉乳、食物及び動物の飼料における使用を含む多彩な異なる用途を有する。
【0004】
アラキドン酸は、微生物及び特に繊維状菌類クサレケカビ(Mortierella)を使用して産生され得る。しかし、産生された微生物油中のアラキドン酸の百分率は、通常低すぎる。クサレケカビからアラキドン酸の収量を増加させるために多くの試みがなされたが、成功の度合いは様々である。アラキドン酸レベルを増加させる多くの試みは、工業環境では容易に使用できない工程を含む。
【0005】
例えば、Eroshin et al,Process Biochemistry:(35)2000,pp1171−1175は、発酵の終了後、約1週間の期間、培地をそのままにしておく。引用されるARAの量は、この文献が、どんな油の抽出も記載しないので、バイオマス(それから抽出された油ではなく)に基づく。Totaniet al,Industrial Applications of single cell oils,American Oil Chemists’ Society Campaign,1992,Chapter 4,pp52−60 and Lipids,vol.22 No.12(1987)pages1060−1062は、発酵が相当に遅らせられることを意味する、異常に低い発酵温度の使用を提言する。ここでARA含有量は、クロロホルム/メタノール溶媒混合物での抽出に基づく。ARA産生分野における別の文献は、WO96/21037である。
【0006】
EP−A−1035211(サントリー)は、M.アルピーナ(alpine)からARA及びDHGLA脂質を産生するための方法を開示する。しかし、ARA含有量の計算は、バイオマス(それから抽出された油でなく)に基づくか、又はポリ不飽和脂肪酸が最初にエステル化され、その後溶媒を使用して抽出される解析方法(最初に抽出して、油を製造し、ついでARA含有量をこの油に基づき決定するのではなく)から得られる。
【0007】
ARAのより高い収量の一つの報告は、M.アルピーナの1S−4菌株を使用して約70%の収穫された菌糸の濃度を主張する(ShimizuS.,Oils−Fats−Lipids 1995,Proc.World Congr.Int.Soc.Fat Res.,215t(1996),Meeting Date1995,Volume 1,pages103−109 and Biochemical and Biophysical Research communications,Vol.150(1),1988,pages335−441)。しかし、この百分率は、上記細胞に基づくものであり微生物油中のARA割合と同一でない。実際、上記の製造された油は、39.0%の含有量のARAを提供する(表27.2、頁105)(この技術は、必ずしも、ARA含有量を測定する種々の異なる方法を使用し、本明細書の後で引用される図と同じ単位であるか又は分析プロトコルに基づくものではない。)。さらに、これは、M.アルピーナ細胞が発酵後さらに6日間室温で、放置されると得られ、明らかに工業生産方法に実施可能な選択でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、微生物油中アラキドン酸の割合(及び収量)を増加させる方法、特に工業規模で使用でき得る方法を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(本発明の概要)
本発明は、増加した比率のアラキドン酸を有する(微生物)油を製造する新規な方法を提供する。これは、アラキドン酸が、減少したコスト及び増加した速度で製造されることを意味する。さらに、本発明は、アラキドン酸の産生を高めるために関連する微生物の遺伝子修飾を依存しないので、本発明は、天然の、非遺伝子修飾食品原料に対する増加した需要に合致する助けになり得る。さらに、この油は、低い酸化電位を有し、毒性が特に重要であるヒト食品、例えば特殊調製粉乳(infantformula)への配合に好適である。
【0010】
従って、本発明の第一の態様は、微生物油又はポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の製造方法に関する。本方法は、発酵容器内で、好ましくは培地で、発酵の終了の前(又はそれに先行する段階で)微生物を発酵(又は培養)する工程を含み、
a)上記炭素源が、前記培地に添加されるより早い速度で、微生物によって消費され、
b)上記炭素源を、1時間当たり≦0.30M炭素/kg培地の速度で添加し、
c)上記炭素源を、微生物の成長に対し速度制限的であるか、又は前記微生物が(それ自身の)脂肪及び/又は脂質を代謝するように制限され、
d)上記炭素源の添加速度が前記微生物による上記炭素源の消費速度まで減少されるか、又はそれ以下であり、
e)発酵の終了に又は発酵の終了の前に、上記炭素源を全て使用するか、又は培地中の濃度が、約0となり、
f)上記炭素源の添加が停止されるが、発酵を継続させ、及び/又は
g)上記微生物が、それらが、アラキドン酸(ARA)に優先して、ARA以外の脂肪(例えば、細胞内部、PUFA等)を代謝する条件におかれる、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第二の態様は、微生物油に関し、
その微生物油が、少なくとも50%(又は少なくとも50.5、51又は52%)のアラキドン酸(ARA)を含む。それは、55、57又は60%までのARAを有してよい。
この油は、
a)少なくとも90%のトリグリセリドの含有量を有し、
b)2.5未満のPOVを有し、
c)1.0未満のAnVを有し、及び/又は
d)5%以下(below)のリン脂質含有量を有する
を有し得る。
【0012】
この油は、第一の態様の方法によって調製できる。それは、ヘキサンで抽出できる。
いったん炭素源の濃度が、減少又は制限されると、細胞は、細胞内の脂肪又は脂質を代謝し始めると考えられる。しかし、細胞は、最初にARAではなく脂肪を消費する。このように、細胞内の脂肪又は脂質中のARA比率は増加する。従って、このように、最初の態様の方法は、第二の態様のより高いARA含有量の油を導く。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の詳細な発明)
微生物
使用される微生物は、細菌、酵母、藻類又は菌類でよい。好ましくは、菌類が使用され、また特に糸状菌が使用される。好ましくは、菌類は、ケカビ目(Mucorales)である。菌類は、クサレケカビ属(モルティエレーラ、Mortierella)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、エントモプアトラ(Entomophthora)、フハイカビ(Pythium)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、コウガイケカビ(Blakeslea)、クモノスカビ(Rhizomucor)又はアスペルギルス属(Aspergillus)でよい。好適な菌類は、クサレケカビ・アルピーナ(モルティエレーラ・アルピーナ、Mortierellaalpina)種である。好適な酵母は、ピチア(Pichia)属又はサッカロミセス属(Saccharomyces)例えば、ピチア・シフェリ(Pichia ciferrii)である。細菌は、プロピオニバクテリウム属でよい。好適な藻類は、渦鞭毛藻類(dinoflagellate)であり及び/又はクリプテコジニウム(Crypthecodinium)属、チノリモ(Porphyridium)又はニッチア(Nitschia)に属し、例えばクリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodiniumcohnii)種である。
【0014】
本発明で使用される微生物菌株は、天然に由来するものでよく又は一般に使用される工業的菌株である。上記菌株は、遺伝子変換されてなくてもよく、例えば、ベクターで変換されなくてもよく、また異種の遺伝子を含まなくてもよい。遺伝子工学的に加工された成分を含まない食物に対する、四分のいくつかには、最近の嗜好が提供されれば、使用される微生物は、修飾されていない菌株でよい。
【0015】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)
PUFAは、単一PUFAでもよく、又は2以上異なるPUFAでもよい。
そのPUFA又は各PUFAは、n−3又はn−6ファミリーとなり得る。好ましくは、それは、C18、C20又はC22PUFAである。それは、少なくとも18個の炭素原子及び/又は3又は4個の二重結合を有するPUFAでよい。PUFAは、遊離脂肪酸、塩の形態で脂肪酸エステル(例えばメチル又はエチルエステル)として、リン脂質として及び/又はモノ−、ジ−又はトリグリセリドの形態で、単離され得る。
【0016】
好適な(n−3及びn−6)PUFAは、
藻類又は菌類例えば、(渦鞭毛藻類)クリプテコジニウム(Crypthecodinium)又は(菌類)ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)から好適なドコサヘキサエン酸(DHA,22:6Ω3);
γ−リノレン酸(GLA,18:3Ω6);
α−リノレン酸(ALA,18:3Ω3);
共役リノレン酸(オクタデカン二酸,CLA);
ジホモ(dihomo)−γ−リノレン酸(DGLA,20:3Ω6);
アラキドン酸(ARA,20:4Ω6);及び
エイコサペンタエン酸(EPA,20:5Ω3).を
含む。
【0017】
好適なPUFAは、アラキドン酸(ARA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はγ−リノレン酸(GLA)を含む。特に、ARAが好適である。
【0018】
発酵
発酵/培養は、(液体、通常水性)培地を含む好適な発酵槽(又は発酵容器)内に典型的に、実施される。主な発酵容器は、小さい飼料発酵槽から無菌でイノキュレートされる。典型的に、水浸された及び/又は好気性の発酵方法が使用される。これは深いタンク発酵槽で生じ得る。発酵槽は、pH及び温度を監視(モニター)し及び/又は変化させる装置が備え付けられ得る。上記容器は、さらにエアレーション及び/又は細胞及び液体の混合、例えば溶液の攪拌の実行又は実施に適用されるようになっている。これは、攪拌でよく、例えば機械的手段を使用して達成される。
【0019】
上記発酵槽の容積は、好適には少なくとも10、20、40又はさらに60mである。100又はさらに150mほど大きい容積が使用され得る。
【0020】
上記発酵は、典型的に10日以下、好ましくは9日以下、より好ましくは8日以下持続するだろう。それは少なくとも4、5、6又は7日間でもよい。
【0021】
任意に、上記発酵は、150〜200時間、例えば160〜190時間程度、例えば、170〜180時間でよい。発酵の終了は、通常攪拌及び/又はエアレーションが停止する時点である。これは、発酵槽、及び/又は補助的な装置が(効果的に)スウィッチが切れたときなり得る。その後、微生物は、発酵槽から取り出され得る。
上記発酵槽は、20〜40℃の温度でよい。
【0022】
炭素及び窒素源
いかなる好適な培地も発酵槽で使用され、例えば使用される微生物に適当な培地が使用され得る。炭素源は、(複合源、例えば)マルトデキストリン、オート麦、糖蜜、植物(例えば大豆)油、麦芽エキス、デンプン、エタノール又は大豆油を含み得る。好適な(非複合の)炭素源は、炭水化物又は糖、例えばフルクトース、マルトース、スクロース、キシロース、マンニトール、グルコース又はラクトース又はグリセリン(例えば植物源から)、シトレート、アセテート、グリセロール、エタノール又は(例えばナトリウム)アスコルベートを含む。本発明の好適な態様において、炭素源は、グルコースでも、グルコースを含んでもよく、特にグルコースシロップである。
【0023】
好適な窒素源は、酵母抽出物、尿素及びペプトンを含む。上記培地は、寒天を除き得る。
好適な窒素及び/又は炭素源は、水性又は水混和性である。
【0024】
上記培地の個々の成分(例えば窒素源及び/又は炭素源)は、発酵の開始時に(すべて)存在し、発酵の間継続的に添加されるか、又は段階的に又はバッチで添加されてもよい。特に、培地に存在する炭素源の量は、典型的に以下に記載のように、好適には炭素源の添加速度を制御することにより制御され得る。
【0025】
窒素源及び/又は炭素源は、別々に供給され(又は添加され)、又は同時に供給され、又は組み合わせた調製物として供給され得る。従って、それらは、好適には液体である同一組成物中(必要と思えば)に存在させてもよい。炭素源及び/又は窒素源は、(発酵容器に)真菌細胞が添加される前、いわゆるイノキュレーション前に又は発酵の最中に(上記容器に)添加されてよく、上記とは別に発酵の前及び最中の両方に添加されてよい。
【0026】
培地
培地は、好適には水性液体である。これは、発酵を補助する他の物質、例えばキレート剤(例えばクエン酸)、抗発泡剤(例えば大豆油)、ビタミン(例えばチアミン及び/又はリボフラビン)、すべての必要な触媒金属(例えばアルカリ土類金属、マグネシウム又はカルシウム、又は亜鉛又は鉄など及び/又は他の金属、コバルト及び銅など)、リン(例えばホスフェート)及び/又は硫黄(例えばサルフェート)を追加的に含んでよい。上記培地は、必要であれば、添加油、例えばオリーブ油又は大豆油を含んでもよいが、好適には上記培地は、そのような油を含まない。
【0027】
(最適)成長(又は発酵)温度は、使用される微生物により変動し得る。しかし、20℃〜40℃が好適であり、さらに、22〜30℃又は32℃が好適である。特に、発酵が実行される温度は、≧22℃又は≦25℃、例えば22〜30℃、23〜28℃程度であろう。発酵中の水溶液のpHは、4〜10、例えば5〜10、好ましくは6〜7である。
上記培地は、典型的に発酵中に攪拌されて、エアレーションの促進を助けるだろう。上記水性液体及び細胞は、好適に混合され又は攪拌される。これは、エアレーションが提供されると、例えば空気などの気体を水性液体にバブリングすることによって達成され得る。これは、酸素を真菌細胞に提供する追加の目的を果たし、従って発酵は好ましくは好気性発酵である。攪拌又は混合の他の方法は、例えばインペラを使用する攪拌を含む。これは、ハイドロフォイル軸流デザイン又は水性培地がインペラ(例えばタービン)から半径方向に外に迅速に向けられるように設計され得る。たとえ攪拌しないとしても、微生物細胞は、発酵中酸素が提供されることが好適であり、またエアレーション(例えば、空気、酸素又は他の酸素含有気体をバブリングすることによる)が有利である。エアレーションは、0.1〜2.0、例えば0.5〜1.0vvmでよい。
【0028】
発酵槽の容積は、好ましくは少なくとも2又は5リットル、好ましくは少なくとも10リットルである。しかし、工業的に又は工業規模で使用される発酵槽では、容器容積は、好ましくは少なくとも50、100、500又は1000リットルである。
【0029】
発酵の最終(又は第二)段階
発酵方法は、少なくとも2つの段階に分けられ得る。発酵の終了の直前の段階である第二の、即ち、最後の段階は、微生物が利用できる炭素源の量を減少させること、又は第一の態様で示される(a)〜(g)の特徴のいずれかで特徴づけられる。典型的に、この段階は、発酵の終了前15〜2時間、好ましくは発酵の終了から10時間以下、より好ましくは発酵の終了から3〜5時間前に開始し得る。好ましくは、この段階は、発酵の開始後、典型的に10日未満、好ましくはこの段階は、9日未満後に、さらに好ましくは8日未満後に開始する。
【0030】
発酵の第一又は初期段階の間、炭素源は過剰でよい。従って利用できる炭素源の量は、微生物の成長を制限しないかも知れない。炭素源の添加速度は、微生物によって炭素源が消費される速度を上回るかも知れない。発酵の第二又は最後の段階において、添加される炭素源の量は、減少され又は全体的に停止され得る。これは、微生物に利用可能な炭素源の量は、発酵の第二又は最終段階で減少させることを意味する。典型的には、第二の、最終又は最後の段階で又は発酵の終了に向けて、炭素源は、
・培地に添加されるよりも早い速度で、微生物によって消費され(例えば、添加速度は、消費速度より遅い。)、
・1時間あたり≦0.30M炭素/kg培地の速度で、例えば≦0.25又は≦0.20、しかし少なくとも0.01、0.02又は0.05M炭素/kg培地/hr(ここでの単位は、炭素源自身の質量又はモルではなく、炭素源中の炭素のモル又はモル質量を意味する。)で添加し、
・微生物の成長及び/又は(PUFA)生成について速度制限的となり得る。
【0031】
典型的には、第二段階での炭素源の濃度は、≦10g炭素源/kg培地、好ましくは0.01又は0.1〜8又は10g/kg、より好ましくは0.5〜5g/kg、さらに好ましくは1又は2〜4又は5g/kgである。これは、発酵の最終段階の平均で、≦0.30M炭素源/kg培地、好ましくはkgあたり0.003M〜0.3M炭素であることを意味する。有利とするには、これは、0.015M〜0.17M炭素/kg、より好ましくは0.03M〜0.17M炭素/kgである。
【0032】
炭素源がグルコースを含む場合、典型的にはグルコース(最終段階)の濃度は、平均≦10g/kg培地、好ましくは0.01又は0.1〜8又は10g/kgであろう。有利とするには、0.5〜5g/kg、さらに好ましくは1又は2〜4又は5g/kg培地である。この意味で、培地は、細胞及び水性培地をすなわち、「ブロス」(細胞及び周囲液体)含む。
【0033】
最終段階の炭素源の添加速度は、好適には0.03M以下の炭素/kg、好ましくは0.025又は0.02M炭素/kg(培地)である。好ましくは、添加速度は、約0.015M炭素/kgである。炭素源がグルコースの場合、好適には、グルコースの添加速度は、1.0未満、例えば0.8未満、例えば0.5gグルコース/kg培地/時間である。
【0034】
好ましくは、最終段階の炭素源の添加速度は、微生物による炭素源の消費速度の約半分である。しかし、添加速度:減少速度の比率は、1:1〜3、例えば1:1.5〜2.5、好ましくは1:1.8〜2.2と変化し得る。上記とは別に、添加速度は、消費速度の30〜70%、例えば40〜60%、好ましくは45〜55%である。
【0035】
発酵の第二段階での適当な炭素源の濃度は、炭素源の添加速度を注意深く制御することにより達成され得る。典型的に、これは、最終段階の間で又は適切に減少又は最終段階の開始を早めるようにされる。定期的に培地のサンプリングし、かつ分析することにより、炭素源の濃度を決定し、炭素源の添加速度を必要に応じて調整することができる。これは、コンピュータシステムを使用して自動的になされ得る。
【0036】
低温殺菌(pasteurization)の方法
発酵が終了した後、低温殺菌を通常行う。好適な態様において、低温殺菌は、低温殺菌中、熱が細胞を殺すので、発酵を終了させる。従って低温殺菌は、発酵ブロス(又は液体(水性)培地中の細胞)で実施するが、ブロスから得られる微生物バイオマスに対して実施してもよい。前者の場合、微生物細胞をそのまま発酵槽内部に置きながら、低温殺菌が生じさせ得る。低温殺菌が、微生物細胞のさらなるプロセシング、例えば顆粒化(例えば押出による)細片、又は混練の前に好ましくは生じる。
【0037】
好ましくは、低温殺菌のプロトコルは、PUFA又は微生物油に悪影響を生じさせ、又はこれを低下させる1種以上の酵素、例えばリパーゼを抑制させ、又は不活性化させるのに十分である。
【0038】
一旦発酵が終了すると、発酵ブロスが、濾過され、又は別に水又は水性液体を除去するように処理してもよい。水を除去した後、バイオマス「ケーク」を得るだろう。低温殺菌が生じないと、脱水された細胞(又はバイオマスケーク)を、低温殺菌に付してもよい。
【0039】
油抽出
所望であれば、例えば発酵が終了した後、微生物が殺菌し又は低温殺菌され得る。これは、すべての望ましくない酵素、例えば上記油を分解し又はPUFAの収量を減少させる酵素を不活性化させ得る。
培養又は発酵が完了又は終了した後、発酵ブロス(細胞及び水性液体)は、発酵容器から取り出され得、また必要であれば液体(通常水)をそこから取り出す。すべての好適な固液分離技術を使用し得る。これ(脱水)は、遠心沈殿法及び/又は濾過による。細胞は例えば水溶液(水など)を使用して洗浄され、例えば細胞外水性化合物又は水分散性化合物を分離する。次いで、油が溶媒抽出、好ましくはヘキサンで抽出されるように、油を微生物から、例えば溶媒を使用して回収し得る。
上記油は、GLA及び/又はDGLAを有さない(又は実質的にない)かもしれない。
【0040】
PUFA抽出方法
PUFA(又は通常PUFAを含む微生物油)は、(例えば、乾燥)顆粒(例えば押出物)含有細胞から抽出され得る。抽出は、溶媒を使用して行われ得る。好ましくは、非極性溶媒が使用され、例えばC1−8、例えばC2−6アルカン、例えばヘキサンが使用される。(液体形態で、例えば超臨界状態での)二酸化炭素を使用してもよい。
【0041】
従って、細胞は、例えば有機溶媒、好ましくは窒素流の下で抽出に付される。他の使用可能な有機溶媒は、エーテル、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン及び/又は石油エーテルを含む。メタノール及び石油エーテルでの抽出及び/又はクロロホルム、メタノール、及び水からなる1層溶媒系での抽出も使用され得る。減圧下での抽出物からの有機溶媒の揮発によって、高濃度のアラキドン酸を含む微生物油が得られる。
好ましくは、溶媒は、乾燥顆粒上を浸透する。好適な微生物顆粒化及び抽出技術及び続く微生物PUFA含有油の抽出は、WO−A−97/37032に開示される。
【0042】
上記溶媒は、粗PUFA含有油を得られるようにする。この油は、さらに処理せずにその状態で使用されるか、又は1以上の精製工程に付され得る。好適な精製プロトコルは、国際特許出願番号PCT/EP01/08902に開示されている(この文献の内容及びここで開示された他のすべては、ここに参考として取り込まれる)。例えば、上記油は、酸処理又はデガミング(degumming)、アルカリ処理又は遊離脂肪酸除去、漂白又は顔料除去、濾過、ウィンテリゼーション(winterization)(又は冷却、例えば飽和トリグリセリドの除去)、臭気除去(又は遊離脂肪酸の除去)及び/又はポリッシング(又は油不溶性物質の除去)に施され得る。
【0043】
得られた油は、特に栄養上の目的において好適であり、(ヒト)食品又は(動物)食糧に添加され得る。例として、ミルク、特殊調製粉乳、ドリンク剤、パン及び動物飼料が挙げられる。
【0044】
精製/仕上げ
微生物油は、仕上げ及び精製され得る。これは、リン脂質、微量金属、顔料、炭水化物、タンパク質、遊離脂肪酸(FFA)、油不溶性物質、水不溶性物質、石けん又はケン化物質、酸化生成物、硫黄、モノ又はジグリセリド、顔料分解生成物、溶媒及び/又はステロール、の1種以上の除去を含む。精製は、「オフ−フレーバー(off−flavours)」を低減又は除去し及び/又は油の安定性を改良するかも知れない。
【0045】
これを達成するために、上記方法(例えば精製)は、デガミング(又は酸処理)、中和(又はアルカリ処理)、水洗、漂白、濾過、臭気除去、ポリッシング及び又は冷却(又はウィンテリゼーション)を含む。好ましくは、精製は、酸処理及び/又はアルカリ処理(デガミング及び中和)を含む。これとは別に、精製方法は、漂白及び/又は臭気除去を含み得る。好ましくは、精製は、漂白及び/又は臭気除去にまた、好ましくは、さらに酸及び/又はアルカリ処理に関連する。
【0046】

本発明の第二の態様は、ARAのような少なくとも1種のPUFAを35又は40%含む微生物油を提供することである。この油は、ARAのような、このPUFAを少なくとも50、55又は60%以上含む。それは90%以上のトリグリセリド含有量を有し得る。好ましくは、上記微生物油は、50、55又は60〜90%のアラキドン酸、より好ましくは60〜80%及びさらに好ましくは60〜70%のアラキドン酸を含む。
【0047】
好ましくは、微生物油が90〜100%の、例えば少なくとも90又は96%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最良としては、99.5%以上のトリグリセリド含有量を有する。典型的に、微生物油は、エイコサペンタエン酸(EPA)含有量を、5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下を有する。この油は、5%未満、2%未満、1%未満の各C20、C20:3、C22:0及び/又はC24:0のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を有する。遊離脂肪酸(FEA)含有量は、≦0.4、0.2又は0.1%でもよい。
【0048】
トリグリセリドの内、好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも50%、及びより好ましくは少なくとも60%の存在するPUFAは、1又は3位とも知られるグリセロール(トリグリセリドバックボーンに存在する)のα位に存在する。少なくとも20%、例えば少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%のPUFAは、β(2)位である。
【0049】
この油のリン脂質含有量は、好適には最大で5%、3%又は2%及び/又は最小で0.1、0.5又は1.0%でよい。
【0050】
典型的に、微生物油は、第一の態様の発明の方法によって入手できるものだろう。好ましくは、この油は、菌類から単離され、より好ましくはこの油は、モルティエーラ及び特にM.アルピーナから単離される。上記油は、好適にヘキサン抽出される。
【0051】
ARA含有量
単に明瞭さのために、特に文献が、時として異なる基準でARA含有量を計算できるので、ARA含有量の割合の計算を説明する。ARAの百分率は、バイオマス自体ではなく、油(バイオマスから抽出される)に基づく。それは質量/質量に基づく。それは、ヘキサンによって抽出された油に基づき、従って、ヘキサン抽出可能な脂質(HEL)に基づく。それは、油の全量に基づくが、脂肪酸の全量(時々、より高い値の誤解を招き得る)に基づかない。ARA含有量は、周知のFAME解析プロトコル(脂肪酸メチルエステルを使用する)によって決定され、AOCSCel b89に詳述される。異なる溶媒は異なる脂質を抽出する。この場合において、油は最初ヘキサンで抽出され、次いで、油のARA含有量はFAME解析によって決定される。これは、初めに、アラキドン酸(例えば細胞中の)をエステル化し、次いでさらなる解析のための得られたメチルエステルを抽出することによって異なる結果が得られる。
【0052】
過酸化物価(POV)
好ましくは、微生物油のPOVは、3.0、2.5又は2.0以下である。しかし、より小さいPOV値は、本発明の方法を使用して得られ、これらの値は、1.5未満又は1.0未満である。0.8未満及び0.4未満の値が、得られる。
【0053】
アニシジン値(AnV)
微生物油のアニシジン値は、好ましくは1.0以下、例えば0.6、0.3以下又は0.1以下である。
【0054】
用途及び生成物
本発明の第三の態様は、第二の態様の油を含む組成物及び適当な場合には、1種以上の(追加の)物質に関する。この組成物は、動物又はヒト用の食品及び/又は食品サプリメントでもよい。ヒトの消費に対する本発明の態様において、油は、典型的には微生物から得られる油の仕上げ又は精製によって、ヒトの消費に対して好適にされ得る。
【0055】
上記組成物は、特殊調製粉乳又は(ヒト)食品でもよい。ここで、上記調乳の組成物は、通常の母乳と類似の脂質又はPUFAを有するように調節され得る。これは、妥当な組成物を獲得するために、本発明の微生物油と他の油とのブレンドに関する。
【0056】
上記組成物は、動物又は海洋飼料組成物又はサプリメントでもよい。そのような飼料及びサプリメントは、いかなる家畜、特に羊、牛及び家禽類に与えられる。さらに、飼料又はサプリメントは、養殖海洋生物、例えば魚及び貝類に与えられる。上記組成物は、そのような動物に対する1種以上の飼料物質又は構成成分を含み得る。
【0057】
本発明の油は、油として直接販売され、また適切な包装、典型的にエポキシフェノールラッカーで内部を被覆され、窒素でフラッシュされたワンピースアルミニウム瓶に含まれ得る。この油は、1種以上の抗酸化剤(例えばトコフェノール、ビタミンE、パルミテート)をそれぞれ例えば50〜800ppm、例えば100〜700ppmの濃度で含み得る。
【0058】
好適な組成物は、例えば経口で投与される医薬組成物又は獣医組成物又は化粧品組成物を含み得る。この油は、そのまま投与されるか、又は例えばシェルに封入してもよく、又はカプセルの形態でもよい。シェル又はカプセルは、ゼラチン又はグリセロールを含み得る。上記組成物は、他の成分、例えば香味(例えばレモン又はライム香料)又は医薬的又は獣医学的担体又は賦形剤を含み得る。
【0059】
本発明の一つの態様の好ましい特徴及び性状は、必要な変更を加えて、別の態様に等しく適用される。
【0060】
以下の例は、本発明を単に説明するために提供され、また制限されると解釈されない。
【実施例1】
【0061】
(比較例1及び2及び実施例3及び4)
(アラキドン酸(ARA)の製造)
モルティエレーラ・アルピーナ(Mortierella alpina)菌株CBS168.95(オランダ国、2600 MADelftのDSM N.V.は、この寄託された生物材料に言及することを許可し、寄託番号DS 30340として、1995年2月20日、オランダ国、CentraalBureau voor Schimmelcultures(CBS)(P.O.Box 85167,3508 AD Utrecht)に寄託した。)を−80℃で、無菌で保存された。内容物を使用して、以下の成分を100mlの培地を有する500mlフラスコに接種した。
・グルコース,20(g/l)、
・酵母抽出物(Gistex(登録商標)ペースト(固形分80%、タンパク質(Nx6.25)46%,NaCl16%、pH(2%溶液)5.6、灰分22%、全プレートカウント10/g、エンテロバクテリアセア(Enterobacteriaceae)科<10/g、E.coli<l/g、酵母及びかび<100/g、DSMN.V.
(Savory Ingredients PO Box 1,2600 MA Delft)から入手可能、12.5(g/l)、
・消泡剤(Basildon Chemical Company(Kimber Road,Abingdon,Oxford,EnglandOX14 IRZ)製造者指示書に従って使用されたBasildon86/013K ケイ素/非シリコーン消泡剤化合物)、0.2(g/l)。
この培地のpHは、オートクレーブ処理前に7.0に調整した。
【0062】
上記培地を、250rpmで振盪しながら、25℃、48時間で成長させ、500mlの培地を伴う4つの2000ml−フラスコのイノキュレーション用に使用した。グルコース、20(g/l)、酵母抽出物(Gistex(登録商標))25(g/l);消泡剤(Basildon86/013K)0.2(g/l)を含む。
滅菌前のpHは、7.0であった。
【0063】
これらの培地を、25℃、24時間で成長させ、5mのイノキュレーション発酵槽をシーディングのために使用し、上記発酵槽は、2000ml−フラスコと同一の組成物の2400リットルの培地を含んでいた(滅菌前のpHは、6.0であった。)。
【0064】
発酵温度は、25℃に設定し、150rpmの攪拌、500Pa(0.5バール)の容器圧及び0.5VVMのエアレーション速度に設定した。
【0065】
生物種菌の発酵槽からの培地を、約36時間後(酸素取り込み速度は>3mmol/kg/hである)主発酵槽へ移した。
【0066】
上記主発酵槽は、
・グルコース35(g/l)、
・酵母抽出物(Expresa 2200(登録商標)粉末、低ナトリウム発酵酵母(low sodium brewer’s yeast)、ペプトン(抽出物)、固形分>96%、全N>10%、アミノN 6−7%、NaCl<1%、pH(2%溶液5.3−6.3)、灰分<12.5%、DSMN.V.(Savory Ingredients)社製の均質的な粉末)、5.0(g/l);
・NaHP0・2H0、1.0(g/l)、
・KHP0、2.0(g/l)、
・MgS0・7H0、0.5(g/l)、
・Basildon86/013K、0.3;クエン酸・1HO、0.6(g/l);
・ZnCl、0.010(g/l)、
・Fe(SO20%H0、0.025(g/l)、
・MnS0・1H0、0.010(g/l);(滅菌前のpHは5.0)
を含んでいた(g/l)。
このグルコースは、別々に滅菌し、滅菌後主発酵槽に添加した。
【0067】
発酵は175時間続いた。上記培地のpHは、0.5VVMのエアレーション(気流)、800Pa(0.8バール)の気圧及び70rpmの攪拌の下で、約pH6(+/−0.1)で持続した。酸素レベルは、100rpmまで連続して増加する攪拌速度及び0.9VVMまでの気流によって、D.O.>30%で維持した。
【0068】
約50%(w/w)の滅菌されたグルコース溶液を発酵槽に入れ、グルコース濃度を10g/l以上で約30〜78時間維持し、625kgの25%酵母抽出溶液をアンモニア濃度が<30mg/lとなるように制御された供給速度で、発酵槽に供給した。
【0069】
実験を4回実施し(実施例1〜4)、培地のグルコース濃度を経時的にモニターした。発酵への時間数に対する、グルコース濃度(g/kg)を図1に示した。これは、実施例4の最後の値が172時間で2.2kgであったことを示す。これは、発酵終了(EoF)前3時間であった。グルコースレベルは、EoF前約1時間で0であった。
【0070】
比較例1及び2において、炭素源(グルコース)の濃度は、発酵の最後で5g/kgよりかなり上であった。実際、EoFの10時間前、グルコース濃度は、約20g/kgであった。従って実施例1及び2において、グルコース濃度は、微生物の群又はARAの生成に制限的でないようなものであった。
【0071】
実施例3及び4において、EoFの直前の、発酵の最終段階におけるグルコース濃度は、EoF前約10時間、グルコースの濃度が約5g/kgであるように制御した。この最後の段階で、10時間に渡って、グルコースは0.5g/kg/hrの添加速度で添加した。上記グルコース濃度は、EoFで、ほとんど0であった。この期間、グルコースの消費速度は、添加速度の約2倍、すなわち約1g/kg/hrであった。
【0072】
発酵の間、経時的な培地のグルコース濃度(g/kg)を表1〜4に示した(これは実施例1〜4に対応する)。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
発酵の最後において、微生物及び周りの水性液体(発酵ブロス)を発酵槽から取り出した。上記ブロスは、固液分離して、いくらかの水を除去した。残った細胞を押出し、ヘキサンを用いた溶媒抽出に付した。ARAを含有する微生物油(ヘキサン抽出可能な脂質)を細胞から得、4種の異なる発酵プロトコルにそれぞれ付した。
【0078】
上記油のARA含有量百分率(質量基準に対する質量)は、周知のFAME分析プロトコルを使用して決定した(AOCS Ce1b89に詳述)。実施例3において、微生物油中のARA濃度は、508g/kg(50.8%)であった。実施例4に対する等価な数値は、545g/kg(54.5%ARA)であった。対照的に、比較例1及び2における細胞から抽出された微生物油は、はるかに低く、それぞれ36.8%及び36.7%であった。