(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226612
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】埋め込み検出システムを有する複合構造物
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20171030BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20171030BHJP
G01M 11/00 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01D5/353 C
G01D5/353 A
!G01M11/00 U
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-158527(P2013-158527)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-52368(P2014-52368A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】13/562,832
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ハント, ジェフリー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ベルク, ジョン エイチ.
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−321223(JP,A)
【文献】
特表2011−500162(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/033649(WO,A1)
【文献】
特開昭63−040827(JP,A)
【文献】
特開2005−098921(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0188652(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0085086(US,A1)
【文献】
特開昭58−062797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 − 13/04
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造物を監視するシステムであって、該システムは
光ファイバーであって、対向する第1端と第2端との間に広がり、少なくとも前記光ファイバーの一部が前記複合構造物の中にあり、複数の量子ドットを含む光ファイバーと、
前記光ファイバーの前記第1端に隣接して配置され、前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する光信号を供給するように前記光ファイバーに結合された信号源であって、第1及び第2の明確に区別される入力周波数v1及びv2を有する光信号を供給するように構成され、少なくともそれらの和v1+v2または差v1−v2のうちの一つが前記光ファイバーの材料励起と共鳴する、信号源と、
前記光ファイバーと光通信して、前記光ファイバーを通って前記第1端に向かって前記光信号を反射するように位置付けされた反射鏡と、
前記光ファイバーを通る前記信号の反射に続いて前記光ファイバーの前記第1端から前記光ファイバーを抜け出る光信号を検出するように前記光ファイバーに結合された検出器とを含み、
前記複数の量子ドットは前記光ファイバーを抜け出る前記光信号の解析に際して検出可能である、前記複合構造物の異常に応じた、非線形の特性を発生する、システム。
【請求項2】
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該コアは前記複数の量子ドットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該クラッドは前記複数の量子ドットを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記光ファイバーは、ブラッグ格子あるいは一又は複数の部分反射鏡を有するファブリペローエタロンのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記反射鏡は前記光ファイバーの前記第2端から前記第1端に向かって前記信号を反射するように前記光ファイバーの前記第2端に配置された、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
複合構造物を監視する方法であって、該方法は、
光ファイバーを埋め込むことであって、該光ファイバーは対向する第1端及び第2端の間に広がり、少なくとも前記光ファイバーの一部が前記複合構造物内部にあり、複数の量子ドットを含む、光ファイバーを埋め込むことと、
前記光ファイバーの前記第1端にその長さ方向の伝播のために光信号を供給することであって、光信号を供給することは、第1及び第2の明確に区別される入力周波数v1及びv2を有する光信号を供給することを含み、少なくともそれらの和v1+v2または差v1−v2のうちの一つが前記光ファイバーの材料励起と共鳴する、光信号を供給することと、
前記光ファイバーを通って前記第1端に向かって前記光ファイバーと光通信するように位置した反射鏡で光信号を反射することと、
前記光ファイバーを通過する前記信号の反射の後で、前記光ファイバーの前記第1端から前記光ファイバーを抜け出る光信号を検出することとを含み、
前記光信号を検出することは、前記光ファイバーから抜け出る前記光信号を分析して、前記複合構造物中の異常に対応して前記複数の量子ドットによって生成された非線形特性を検出することを含む、方法。
【請求項8】
内部に光ファイバーが埋め込まれた複合構造物を監視する方法であって、該光ファイバーは対向する第1端及び第2端の間に広がり、複数の量子ドットを含み、該方法は、
前記光ファイバーの前記第1端にその長さ方向の伝播のために光信号を供給することであって、光信号を提供することは、第1及び第2の明確に区別される2つの入力周波数v1及びv2を有する光信号を供給することを含み、少なくともそれらの和v1+v2または差v1−v2のうちの一つが前記光ファイバーの材料励起と共鳴する、光信号を提供することと、
前記光ファイバーを通って前記第1端に向かって前記光ファイバーと光通信するように位置した反射鏡で光信号を反射することと、
前記光ファイバーを通過する前記信号の反射の後で、前記光ファイバーの前記第1端から前記光ファイバーを抜け出る光信号を検出することとを含み、
前記光信号を検出することは、前記光ファイバーから抜け出る前記光信号を分析して、前記複合構造物中の異常に対応して前記複数の量子ドットによって生成された非線形特性を検出することを含む、方法。
【請求項9】
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、前記コアは前記複数の量子ドットを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該クラッドは前記複数の量子ドットを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年8月23日に出願された同時係属中の米国特許出願第13/215,969号の一部継続出願であり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は概して、複合構造物に関し、より詳しくは、複合構造物の健全性を監視するための埋め込み検出システムを有する複合構造物に関する。
【0003】
複合構造物は、2つ以上のコンポーネントを多くの場合、付与された順に構成した構造物で、多種多様なアプリケーションで利用される。例えば、航空機、宇宙船などの飛行体は、複合構造物によって提供される高い強度重量比によって得られる利点を活かすために、複合構造物を利用することがある。複合構造物を含みうるその他のアプリケーションには、自動車、船舶、自転車などのその他の形式の輸送手段に加えて、ビルディング、橋などの多種多様なその他の構造物が含まれる。複合構造物はまた、使用する材料、構造物自体、又は構造物を製造するために用いられるプロセスを適切に修正することで、熱的、電気的、音響学的、又は機械的な特性の変更を含む付加的な機能によって、製造及び使用することができる。
【0004】
複合構造物は、樹脂又はポリマー、ガラス、又はセメント等のその他の概ね連続的な媒体の中に分布している複数の要素に対して所定の順序を付与するように設計された、種々の方法で製造することができる。典型的には、複合構造物は、樹脂マトリクスに埋め込まれた、ガラス繊維又は炭素繊維、金属化炭素繊維、金属シート又はポリマーシート、炭素ベール又はポリマーベール、含浸済み複合シート、繊維織布シート、不規則繊維マット又は規則繊維マット、金属メッシュ又はポリマーメッシュなどの複数の構造繊維を含む。樹脂マトリクスは、多数の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーの組合せ、接着剤又は他の結合剤、又はセメントのうちの任意の一つであってもよい。複数の複合プライを交互に配置すること、又は複数の複合トウを隣り合うように配置することによって、所望の形状を有するように、あるいは所定の2次元(2D)又は3次元(3D)構造に織り込まれるような方法で、複合構造物が構築されると、一又は複数の処理ステップで、複合構造物は硬化、溶解、又は結合することができる。
【0005】
複合構造物が多くの利点を提供する一方で、複合構造物は、複合プライ間の剥離、複合プライ間の波打ち、又は複合材料内に渦を発生させるように、複合トウが上部で少なくとも部分的に反り返るマーセリング、などの様々な異常を有することがある。このような異常の一部は複合材料の目視検査で検出可能である一方で、複合材料の目視検査では検出されないような多数の異常が複合材料の内部に存在することがある。そのため、複合材料の内部を検査するため、例えば、X線、超音波信号などを利用する様々な検査技術が開発されてきた。これらの検査技術は層間剥離などの多数の異常を検出できるが、複合構造物の樹脂内の構造繊維の配向不整又は誤配置によって生じる他の異常は、検出の観点からはより難しい課題になることがある。
【0006】
これに関連して、複合材料内の複数の構造繊維又は他の要素は概して、少なくとも部分的には、構造繊維又は他の要素の方向性に応じて、複合構造物の物理特性によって所定の方向へ延びる。しかしながら、一部の例では、複合材料内の構造繊維又は他の要素は、複合材料の物理特性が変化する原因ともなる、種々の意図していない方向又は配置を呈することがある。例えば、樹脂が豊富な領域の近傍まで延びる構造繊維又は他の含まれる要素は、樹脂が豊富な領域に向かって又はその中へ、移行又は移動することがある。構造繊維の意図していない配向又は配置は、重力、静水圧、化学作用、煮沸、又は機械的作用の結果として生ずることがある。構造繊維又は他の要素の配向又は配置の偏りは複合構造物の物理特性に影響を及ぼすため、必要であれば、適切な修復を行える確実な方法で、構造繊維の他の欠陥を検出することに加えて、構造繊維又は他の要素の配向又は配置におけるこのような偏りも検出することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態にしたがって、埋め込み検出システムを有する複合構造物が提供されている。その際、埋め込み検出システムは、光ファイバーの非線形光学特性を高める、複数の量子ドットを有する光ファイバーを含みうる。そのため、複合構造物内の欠陥あるいはその他の現在又は過去の変化あるいは状態(以下、「欠陥」と総称する)によって、量子ドットは容易に認識可能になり、それによって複合構造物内の欠陥に対して確実な指標を提供する非線形効果を発揮することができる。複合構造物の健全性を監視するためのシステム及び方法はまた、本発明の実施形態によって提供される。これ関連して、複合構造物の健全性は、硬化度などの化学的状態、歪み場などの機械的状態、温度又は水分含量などの環境、接着剥離、層間剥離などの傷又は空隙の存在、熱又は電気特性、又はイオン密度、構造物の目的を果たす能力に影響を及ぼしうる任意の状態を含む。
【0008】
一つの実施形態では、光ファイバーの非線形光学特性を高めるための複数の量子ドットを含む光ファイバーを複合材料内に配置した、樹脂及び樹脂内に埋め込まれた複数の構造要素を有する複合材料を含む、複合構造物の健全性を監視するシステムが提供される。光ファイバーがコア及びコアを取り囲む
クラッドを含む実施形態では、コアを経由して伝播する信号を増幅し、及び/又は光ファイバーの感度を高めるように、コアは複数の量子ドットを含みうる。追加的に、又は代替的に、光ファイバーの
クラッドは、ファイバーのエバネッセント波を介して周囲の樹脂との相互作用を強化するため、複数の量子ドットを含みうる。しかもさらに、複数の量子ドットは、局所歪み場、材料及びエバネッセント波との相互作用を強化するため、光ファイバーの表面に沈着させることもできる。この実施形態のシステムはまた、光ファイバーに対してその長さ方向に沿って伝播する信号を供給するように構成された信号源を含む。複数の量子ドットは、複合材料内の欠陥に応じて、二次効果などの非線形効果、例えば、第二高調波を発生させる。この実施形態のシステムはまた、光ファイバーを経由する伝播を伴う非線形効果を含む信号を検出するように構成された検出器を含む。非線形効果は容易に特定可能であるため、この実施形態のシステムは、検査又は修復をさらに促進するように、複合材料内の欠陥を確実に検出することができる。例えば、ファイバートウ又は複合層の経路内での偏りなどの欠陥は、幾つかの実施形態では、このような欠陥の位置と共に検出可能である。
【0009】
一実施形態の検出器は、信号の反射を伴う信号を検出するように構成されている。例えば、光ファイバーは、ブラッグ格子又は信号の少なくとも一部の反射を引き起こす一又は複数の部分反射鏡を含みうる。光ファイバーの第1端の近傍に信号源が配置された状態で、光ファイバーが第1端と第2端との間に延びる別の実施形態では、システムは第2端から第1端に向かって光ファイバー内を通る信号を反射するように、光ファイバーの第2端に配置された反射鏡を含んでいてもよい。この実施形態では、検出器は、内部を通る信号の反射を伴う光ファイバーの第1端によって放出される信号に反応する。
【0010】
別の実施形態では、埋め込み検出システムを有する複合構造物が提供される。その際、複合構造物は、樹脂及び樹脂に埋め込まれた複数の構造要素を有する複合材料を含む。複合構造物はまた、複合材料内に配置された光ファイバーを含む。光ファイバーは、光ファイバーの非線形光学特性を高める複数の量子ドットを含む。光ファイバーがコア及びコアを取り囲む
クラッドを含む実施形態では、コアを経由して伝播する信号を増幅し、及び/又は光ファイバーの感度を高めるように、コアは複数の量子ドットを含みうる。追加的に、又は代替的に、光ファイバーの
クラッドは、ファイバーのエバネッセント波を介して周囲の樹脂との相互作用を強化するため、複数の量子ドットを含みうる。しかもさらに、複数の量子ドットは、局所歪み場、材料及びエバネッセント波との相互作用を強化するため、光ファイバーの表面に沈着させることもできる。この実施形態の光ファイバーは、その長さ方向に沿った信号の伝播を支援し、複合材料内の欠陥を検出するように構成されている。その際、複数の量子ドットは、複合材料内の欠陥に応じて、二次効果などの非線形効果、例えば、第二高調波の発生を引き起こす。その際、光ファイバーは、ブラッグ格子又は光信号の少なくとも一部の反射を引き起こす部分反射鏡を含みうる。
【0011】
さらなる実施形態では、複合構造物の健全性を監視する方法が提供される。この方法は、光ファイバーの非線形光学特性を高めるための複数の量子ドットを光ファイバーが有する状態で、複合材料内に配置した光ファイバーに加えて、樹脂及び樹脂内に埋め込まれた複数の構造要素を有する複合材料を含む複合構造物を提供するステップを含む。光ファイバーがコア及びコアを取り囲む
クラッドを含む実施形態では、コアを経由して伝播する信号を増幅し、及び/又は光ファイバーの感度を高めるように、コアは複数の量子ドットを含みうる。追加的に、又は代替的に、光ファイバーの
クラッドは、ファイバーのエバネッセント波を介して周囲の樹脂との相互作用を強化するため、複数の量子ドットを含みうる。しかもさらに、複数の量子ドットは、局所歪み場、材料及びエバネッセント波との相互作用を強化するため、光ファイバーの表面に沈着させることもできる。この方法はまた、光ファイバーの第1端から反対側の第2端までのように、光ファイバーに対してその長さ方向に沿って伝播する信号を供給するステップを含む。一実施形態の方法は、複合材料内の欠陥に応じて複数の量子ドットにより、二次効果などの非線形効果、例えば、第二高調波の発生を引き起こす。この実施形態の方法はまた、信号を検出し、光ファイバーを経由する伝播を伴う非線形効果を含む信号を検出するように構成された検出器を含む。非線形効果は容易に特定可能であるため、この実施形態の方法は、検査又は修復をさらに促進するように、複合材料内の欠陥を確実に検出することができる。
【0012】
信号源が光ファイバーの第1端の近傍に配置されている一実施形態では、この方法はまた、光ファイバーを通る信号を第2端から反射させて、最初に信号が発射された第1端に向けることを含みうる。この実施形態では、信号の検出は、内部を通る信号の反射を伴う光ファイバーの第1端によって放出される信号を検出することを含みうる。
【0013】
代替的な実施形態は以下のように主張される。
A. 内部に埋め込まれた光ファイバーを有する複合構造物を監視する方法であって、該光ファイバーは複数の量子ドットを含み、該方法は、
前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する信号を供給することと、
前記光ファイバーから抜け出る信号を検出することと
を含む、方法。
B. 前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲む
クラッドを含み、前記コアは複数の量子ドットを含む、Aに記載の方法。
C. 前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲む
クラッドを含み、前記
クラッドは複数の量子ドットを含む、Aに記載の方法。
D. 前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、Aに記載の方法。
E. 前記複合材料の異常に応じて前記複数の量子ドットによって非線形効果を引き起こすことをさらに含む、Aに記載の方法。
F. 非線形効果を引き起こすことは、前記複合材料の前記異常に応じて二次効果を引き起こすことを含む、Eに記載の方法。
AA. 複合構造物の製造時に複合構造物を監視する方法であって、該方法は、
硬化していない状態にある前記複合構造物内に光ファイバーを埋め込むことであって、該光ファイバーは複数の量子ドットを含むことと、
前記複合構造物が硬化状態になるまで、前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する信号を供給することと、
前記複合構造物が前記硬化状態になるまで、前記光ファイバーから抜け出る信号を検出することと
を含む、方法。
BB. 前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲む
クラッドを含み、前記コアは複数の量子ドットを含む、AAに記載の方法。
CC. 前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲む
クラッドを含み、前記
クラッドは複数の量子ドットを含む、AAに記載の方法。
DD. 前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、AAに記載の方法。
EE. 前記複合材料の異常に応じて前記複数の量子ドットによって非線形効果を引き起こすことをさらに含む、AAに記載の方法。
FF. 非線形効果を引き起こすことが、前記複合材料の前記異常に応じて二次効果を引き起こすことを含む、EEに記載の方法。
【0014】
本発明の実施形態に従って、さらなる検査又は修復が情報に基づく効率的な方法で実施されるように、複合材料中の欠陥を確実に特定するため、システム、方法及び複合構造物が提供される。しかしながら、上述の特徴、機能、及び利点は、単独で達成することができ、本発明の種々の実施形態は、他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態の詳細は、詳細な説明及び図面を参照して見ることができる。
【0015】
上述では本発明の例示的実施形態を一般的な用語で説明したが、後述では添付図面を参照する。これらの図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態による複合構造物の断面図で、複合材料及び複合材料内に配置される複数の量子ドットを有する光ファイバーを含む埋め込み検出システムを図解している。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態による光ファイバーの断片的な斜視図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態による複合構造物の健全性監視システムを概略的に表わした図である。
【
図4】
図4は本発明の一実施形態による方法のフロー図である。
【
図5】
図5は本発明の一実施形態による方法のフロー図である。
【
図6】
図6は本発明の一実施形態による方法のフロー図である。
【
図7】
図7は本発明の一実施形態による複合構造物の健全性監視の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
後述では、添付図面を参照して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。添付図面にはすべての実施形態が示されているわけではない。実際、これらの実施形態は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に示された実施形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示内容が、適用される法的要件を満足させるように提供されている。全体を通して、同様の参照番号は類似の要素を示している。
【0018】
ここで
図1を参照すると、本発明の一実施形態による埋め込み検出システムを有する複合構造物10が図解されている。複合構造物10は、航空機、宇宙船などの飛行体、自動車、トラック、トレーラー、自転車などの陸上輸送手段、海上船舶、ビルディング及び他の構造物を含む多様なアプリケーションで利用することができる。
図1に示すように、複合構造物10は、樹脂14のマトリクス内に埋め込まれた複数の構造要素12を有する複合材料を含む。複合材料は、ガラス繊維、炭素繊維などの構造繊維、グラフェンシート、カーボンベール、織布プリプレグ、ソリッドシートなどのその他の要素及び金属又はポリマーメッシュを含みうる。さらに、複合材料は、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などを含む多数の種類の樹脂14を含みうる。
【0019】
例示的な実施形態では、複合材料は複数の複合プライを含み、各複合材料層は樹脂14のマトリクスに埋め込まれた複数の構造要素12を有する。複合プライは、
図1に示すように交互に配置してもよい。しかしながら、複合材料は、例えば、交互に配置された複数の複合トウを含むその他の方法によって、又はシート、ベール、含浸済み布、金属又はポリマーメッシュなどを含めることで製造することもできる。複合材料製造時に、所望の形状になるように、所望の形状を有するマンドレル又はツール上に複合プライ又は複合トウ又は他の要素を積み上げることなどによって、複合材料を積層又は形成される。複数の複合プライ、複合トウなどの積層又は配置中、及び複合材料の硬化前などの複合材料製造時に、複数の量子ドット18を含む一又は複数の光ファイバー16は、
図1に示したように複合材料内に埋め込むことなどによって、複合材料内に配置される。その際、光ファイバー16は、複合材料の対向する両端などの端部を延長することによって、光ファイバーの少なくとも一端、及びより典型的には対向する両端にアクセスできるような方法で複合材料内に配置される。
図1には単一の光ファイバー16を示したが、複合構造物10は、一実施形態では複合材料を通って互いに平行に延びる複数の光ファイバーを含んでいてもよい。
【0020】
光ファイバー16は、複合プライ、複合トウなどの間に配置することができる。複合材料内に光ファイバー16が配置されると、複合材料樹脂が複合プライ又は複合トウが積層された形状を保持するように、複合材料は硬化されるか樹脂14を凝固するように処理されることがある。このような複合材料の硬化又は他の凝固処理はまた、光ファイバーが複合材料内を通過して延伸するように、複合材料内に光ファイバー16を固定するように働く。
【0021】
複合材料内に配置される光ファイバー16は複数の量子ドット18を含む。
図1の光ファイバー16内に複数の量子ドットが表示されているが、これらの量子ドットは例示ではなく図解を目的としたもので、一般的なものよりも大きくなるように図解されている。一実施形態の光ファイバー16は、光ファイバー内に分光学的強化機能を埋め込むことによって、又は光ファイバー内にを誘導することによって、量子ドット18を含むように形成され、これによって光ファイバーの超分極率が高められる。以下に説明するように、量子ドットを含まない同等の光ファイバーと比較して、複数の量子ドット18は光ファイバー16の非線形光学特性を高める。
【0022】
分光学的強化機能の埋め込み又は光ファイバー内の顕微鏡的構造変化の誘導に関しては、非線形光学の場合の分光学的強化は従来の線形光学の場合からは幾分異なることに留意すべきである。線形分光法では、光周波数が材料の励起に関連する値と一致する場合に、光はより容易に材料に吸収されるようになる。一旦光が吸収されると、光は他の材料パラメータに応じて、再放出されること又は材料内で熱に変化することがある。
【0023】
非線形の場合には、光の入力周波数のすべて又は任意の部分が、本件の効果を分光学的に強化する材料の励起と必ずしも一致していなくてもよい。ある事例では例えば、2つの入力があり、そのうちの一方は材料パラメータと共鳴しているが、他方は共鳴していない。2つの入力の和周波数では、物質内で本質的に吸収がない場合でも、和周波数生成の効率が高められる。別の事例では、2つの入力のいずれも材料の励起と一致しないが、周波数の差分が材料の励起と一致する場合には、差周波数で光生成の効率が高められる。或いは、第二高調波生成の場合は共鳴しない入力信号を有することがあるが、第二高調波の周波数が材料の励起と一致する場合には、第二高調波生成のプロセスが強化される。
【0024】
任意の光ファイバー又は量子ドット材料に関連する自然発生的な材料励起がある。同様に、光ファイバーに対する入力周波数は、非線形プロセスが一又は複数の材料励起と共鳴するように選択することができる。例えば、明確に区別される2つの周波数v1及びv2がある場合には、v1、又はv2、又はv1−v2、又はv1+v2は一又は複数の材料パラメータと共鳴することができる。加えて、これらの組合せの幾つかが同時に共鳴することもありうる。第二高調波の場合には、v1が共鳴している状態又は2v1(v1+v1)が共鳴している状態で、v1での単一周波数入力がある。或いは、量子ドットを有する光ファイバーには、材料共鳴を引き起こす材料をドープすることができる。光ファイバーにドープすることができる材料は、限定しないが、既知のスペクトル特性を有する原子種又は分子種であってもよい。
【0025】
或いは、材料励起を含まない顕微鏡的構造変化は、非線形信号強化をもたらすことができる。その際、物理的に歪んだファイバーは、局所分子結合の歪みを有する。その際、歪みを生ずる分子結合が超分極率の増大によって非線形応答を増加させることが確認されている。さらに、物理的に歪んだ材料は、超分極率の正味の累積的効果も高める、分子レベルで導入された正味の配向を有する。純粋な分光学的効果が利用できない場合でも、これら2つの効果の組合せにより、より大きな非線形光応答が導かれる。
【0026】
光ファイバー16は、光ファイバーの一又は複数の領域に量子ドット18を含みうる。
図2に示したように、例えば、一実施形態の光ファイバー16は、コア内でコアを通って伝播する信号の大部分を閉じ込めるように、コアとは異なる屈折率を有する
クラッド16bによって囲まれたコア16aを含みうる。例示的な実施形態では、量子ドット18は光ファイバー16のコア16a内に含まれている。この実施形態では、光ファイバー16のコア16a内の量子ドット18は光ファイバーのコアを通って伝播する信号を増幅し、複合材料内の欠陥に対して光ファイバーの感度を高めるように働きうる。代替的な実施形態では、光ファイバー16はコア16aと
クラッド16bとの境界に量子ドットを含みうる。さらに別の実施形態では、光ファイバー16は
クラッド16b内に量子ドット18を含み、それによってファイバーエバネッセント波を介して周囲に複合材料を有する光ファイバーを通って伝播する信号の相互作用を強化しうる。さらなる実施形態では、光ファイバー16は、
クラッドの外表面など、光ファイバーの外表面16c上に複数の量子ドットを含みうる。この実施形態では、光ファイバー16の外表面上に配置された複数の量子ドットは、エバネッセント波を介して複合材料の局所歪み場とより強く相互作用しうる。光ファイバー16はこれらの領域の唯1つに、すなわち、光ファイバーのコア16a、
クラッド16b又は外表面16cのうちの唯1つに、複数の量子ドット18を含みうる。代替的に、光ファイバー16は、これらの領域の任意の2つに、例えば光ファイバーのコア16a、
クラッド16b又は外表面16cのうちの任意の2つに複数の量子ドット18を含みうる。あるいは、幾つかの実施形態では、これら3つの領域のすべてに、すなわち、光ファイバーのコア、
クラッド、及び外表面のそれぞれに複数の量子ドットを含みうる。
【0027】
別の実施形態では、光ファイバー16は、量子ドットを含む光ファイバーのコアに対する本明細書での参照が、勾配屈折率ファイバーが量子ドットを含む実施形態を網羅することも意図するように、量子ドット18を含む勾配屈折率ファイバーであってもよい。さらに別の実施形態では、赤外線(IR)又は他の信号の長さ方向への伝播に対応するため、光ファイバーは中空コアを有する光導体であってもよい。この実施形態では、光ファイバー16は複数の量子ドット18も含みうる。例えば、複数の量子ドットは、中空コアに面し、これを定義する光導体の内表面上に配置されうる。幾つかの光ファイバーの形式については既に述べているが、前述の実施例は、楕円コア光ファイバー、マルチホール光ファイバー、マルチコア光ファイバー、光ファイバー内部又は光ファイバー上に配置された近傍の量子ドットの環境に影響を及ぼす可能性のある他の無数の内部構造又は表面構造を有する光ファイバーなど、採用されうる他の形式の光ファイバーをすべて包括することを意図しているわけではない。
【0028】
光ファイバー16の形式及び/又は量子ドット18を含む光ファイバーの領域にかかわらず、光ファイバーはその長さ方向に沿って比較的一様な方法で量子ドットを含みうる、又は光ファイバーの長さ方向に沿って一又は複数の離散的なセグメント内に量子ドットのみを含みうる。その際、光ファイバー16は、量子ドットを含まない光ファイバーのセグメントと比較して、量子ドット18を含む光ファイバーのセグメントに隣接する複合材料の欠陥に対してより感度が高くなりうる。
【0029】
上述のように、及び
図3にさらなる詳細を示したように、光ファイバー16の少なくとも一端、及びより典型的には、光ファイバーの対向する第1端及び第2端の両方は、複合材料の端部を超えて又は少なくとも端部まで延長することによって、アクセス可能である。
図3に示したように、本発明の一実施形態によるシステムは、複合材料及び埋め込み光ファイバー16を含む複合構造物10を含むだけでなく、光ファイバーの長さ方向に沿って伝播する信号を提供するため、光源などの信号源20も含む。その際、信号源20は、光ファイバー16の第1端から光ファイバーの第2端に向かって、光ファイバーの長さ方向に沿って伝播する信号を導入するように構成しうる。光ファイバーに沿って伝播する種々の形式の信号を導入するため、システムは種々の形式の信号源20を含みうるが、一実施形態の信号源は、光ファイバー内を通って伝播するレーザー信号を光ファイバー16に対して供給するため、パルスレーザーなどのレーザーとなる。光ファイバー16が光導体となっている別の実施形態では、信号源20は光ファイバーの第1端にIR信号を供給するためのIR信号源であってもよい。
【0030】
信号源20は、光ファイバーの第1端など、光ファイバー16に直接信号を供給しうる。しかしながら、
図3に示したように、信号源で生成された信号は、光ファイバー16に送達される前に調整することができる。例えば、システムは、光ファイバー16に信号を送る際に、一又は複数の所定の周波数のみ又は所定の周波数範囲を有する信号が確実に波長選択デバイス内を通過するように、信号源20によって生成された信号をフィルタ処理する波長フィルタなど、波長選択デバイス22を含みうる。また、システムは、偏光デバイスを超えて一又は複数の偏光を有するデバイスまで伝播する信号を制限するため、クォーツなどの薄膜デバイス又は旋光性物質を含む波長板と組み合わせて、グランテーラープリズム、グラントンプソンプリズム、ウォラストンプリズム、薄膜偏光子などの偏光デバイス24も含みうる。さらに、過剰な高エネルギーレベルを有する信号によって光ファイバーが損傷されないよう、光ファイバー16に対して供給される信号によって運ばれるエネルギーを制限するため、システムは、減光フィルタ、カラーフィルタなどの強度フィルタ26、ウェッジペア又は組プリズムなどの可変減衰デバイス、又は他の固定又は可変光減衰デバイスを含みうる。この実施形態で示されているシステムは、波長選択デバイス22、偏光感受性デバイス24、及び強度フィルタ26をそれぞれ含むが、このシステムは他の実施形態ではこれらの要素の一又は任意個の組合せを含みうる。
図3に示したように、このシステムは、信号を光ファイバーの開口数に合わせることなどによって、光ファイバー16の第1端に信号の焦点を結ぶため、レンズなどの光学デバイス28も含みうる。
【0031】
また、
図3に示したように、システムは、複合構造物が硬化されたままの状態にあるか、複合構造物の製造時に工程内監視を行うように、複合構造物10の製造後など、光ファイバー16を通って伝播した後、信号からもたらされる非線形効果を含む信号を受信するように構成された検出器30を含む。一実施形態では、検出器30は、信号源20の信号が光ファイバーへ導入される第1端に対向する、光ファイバー16の第2端から出る信号を受信するように配置することができる。しかしながら、例示的な実施形態では、システムは信号が光ファイバー16の第1端で反射して戻るように構成されている。同様に、光ファイバー16の第1端から抜け出たとき信号によって非線形効果がもたらされるだけでなく、この実施形態の検出器はこの信号を受信するように配置されうる。検出器30が光ファイバー16の第1端で反射した信号を受信するようにシステムを構築することによって、このシステムの大多数のコンポーネントは同一の場所に配置することが可能で、これによってコンポーネントの設計及び設置を潜在的に簡素化しうる。
【0032】
図3に示したように、ビームスプリッタ34は、反射信号を受信し、光ファイバー16の第1端から抜け出る反射信号の向きを検出器30の方向へ変えるように配置してもよい。ビームスプリッタ34を含めることによって、検出器が補正されている、又は光ファイバーとの直線配列から外れている場合であっても、検出器30は光ファイバー16の第1端から抜け出る信号を受信することができ、これによって検出器によって遮断されることなく、信号源20から光ファイバーの第1端への信号の導入を容易にすることができる。このシステムは、フォトダイオードなどの固体検出器を含む種々の形式の検出器を含むことができる。例えば、半導体フォトダイオードは概して、半導体材料によって吸収されうる所定の波長範囲を有する信号を検出するため、検出器は検出される信号の波長に基づいて選択される材料で構成してもよい。1つの実施例では、帰還信号及び関連する非線形効果を検出するため、シリコンフォトダイオードを利用することができる。反射信号よりも小さくなりうる非線形効果の検出を容易にするなど、感度を上げるため、検出器はアバランシェフォトダイオード(APD)を含んでいてもよい。
【0033】
光ファイバー16に沿って伝播する信号は、様々な方法で反射させることができる。例えば、システムは、光ファイバー16の第2端に到達する信号を受け取り、信号及び関連する非線形効果が光ファイバーに戻されて、第2端から第1端に伝播して検出器30で受信及び検出されるようにその信号を反射する鏡など、反射器32を含んでいてもよい。追加的に、又は代替的に、光ファイバー16はブラッグ格子36、又は部分反射鏡などの他の形式の反射器、例えば、米国特許第5,682,237号に記載されているように、光ファイバーに沿って伝播する信号及び関連する非線形効果の少なくとも一部を反射するため、一又は複数の部分反射鏡を有し、光ファイバー内に形成されるファブリペローエタロンを含んでいてもよい。光ファイバー16が部分反射鏡を含む事例の場合、量子ドット18は一実施形態で鏡上又は鏡内部に配置されうる。
【0034】
本発明の一実施形態では、複合材料内の欠陥は、信号強度及び/又は位相を変えることなどによって、光ファイバー16に沿って伝播する信号に影響を及ぼすことがある。例えば、複合材料内の構造要素の変位、プライの波打ち、マーセリングなどによって、光ファイバー16に曲がりを引き起こす、あるいは光ファイバーに応力又はひずみを及ぼす複合材料内の欠陥は、光ファイバーに沿って伝播する信号を変化させることがある。光ファイバー16を通って伝播した後の信号の検出及び信号内の任意の変化の特定によって、複合材料内の欠陥は特定されうる。例えば、ファイバートウの経路又は複合プライの位置の偏りを含む欠陥は、本発明の一実施形態では光ファイバー16から戻る信号に基づいて特定されうる。
【0035】
複合材料内の幾つかの欠陥は、光ファイバー16に沿って伝播する光信号の特性を変えるだけでなく、信号又は少なくとも信号の一部を反射させることがある。したがって、この実施形態の検出器30は、光ファイバー16の第1端に戻る信号を単に検出するだけでなく、反射信号が光ファイバーの第1端に戻る時刻も決定しうる。光ファイバー16の第1端へ向けて信号が発射された時刻と反射信号が光ファイバーの第1端から抜け出た時刻との間の時間差、並びに信号が光ファイバー内を伝播する速度を決定することにより、検出器30及び/又は関連する時間領域反射率計(TDR)は、光ファイバーの長さに方向に沿って存在する欠陥の相対位置を決定することができ、これによって複合材料のさらなる検査及び/又は問題となっている箇所での複合材料の修復を指示することができる。
【0036】
上述のように、光ファイバー16は複数の量子ドット18を含む。複数の量子ドット18は、複合材料の欠陥に応じて非線形効果をもたらす。例えば、量子ドットは、第二高調波の発生などの二次効果を含む種々の非線形効果をもたらすことがある。その際、一実施形態の複数の量子ドット18によってもたらされる第二高調波の発生などの二次効果は、複合要素14の配列及び位置の変更によって引き起こされる欠陥など、複合材料内の欠陥の存在によって生ずる中心対称性の欠如によって強く影響されうる。追加的に、又は代替的に、量子ドットは第三高調波の発生などの三次効果を引き起こすことがある。量子ドットは本質的に非線形となる非線形光応答を有する。物理的な寸法が小さいため、又光学屈折率が周囲の媒体とは異なるため、近傍を伝播する任意の光信号の局所場増強がある。非線形効果は光の強度に依存するため、量子ドットによって引き起こされる局所場増強は非線形応答のサイズを増大させる。第三高調波の発生に加えて、その他の増強効果にはパラメトリック増幅、ラマン散乱及び四波混合が含まれることがある。一般的に、二次非線形効果は中心対称性のある媒体では許容されない。但し、量子ドットの存在と結び付けられた複合構造の歪み負荷は、材料の対称性を破壊し、第二高調波の発生、和周波数及び差周波数の発生などの二次効果を引き起こす。したがって、光ファイバー16内部に複数の量子ドットを含めることによって、光ファイバーに予期しない曲がりを引き起こす欠陥など、複合材料の欠陥に応じてもたらされる非線形効果は、欠陥に対する確実かつ識別可能な指標として機能しうる。これらの非線形効果は光ファイバー16を通って伝播し、検出器30によって検出可能である。実際に、複数の量子ドットによってもたらされた非線形効果は、検出器30によって容易に検出できるほど十分に大きくなることがあり、これによって複合材料内の欠陥に対する確実な指標として機能しうる。さらに、特に信号雑音比(SNR)が比較的低い事例では一次信号の検出及び評価を損なう可能性のある雑音によって、非線形効果が悪影響をうける可能性が少ないため、検出器30は非線形効果を容易に特定することが可能である。
【0037】
本発明の例示的な実施形態により、種々の方法が提供されうる。
図4のブロック40に示したように、複数の量子ドット18を含む光ファイバー16は複合構造物10内に埋め込むことができる。光ファイバー16が複合構造物10内に埋め込まれると、光ファイバーに対してその長さ方向へ伝搬する信号を提供することができる。ブロック42を参照。光ファイバー16を抜ける信号は次に検出することができる。ブロック44を参照。同様に、
図5は長さ方向への伝播用の複合構成物10内に埋め込まれる光ファイバー16に対して信号が提供される方法を示している。ブロック50を参照。光ファイバー16は複数の量子ドット18を含む。次に光ファイバー16を抜ける信号を検出することができる。ブロック52を参照。硬化された複合材料に関連する方法の採用に加えて又は代えて、この方法の実施形態は、非硬化状態にある複合構造物10に関連して採用されうる。
図6のブロック60に示したように、複数の量子ドット18を含む光ファイバー16は、非硬化状態にある複合構造物10内に埋め込むことができる。光ファイバー16が複合構造物10内に埋め込まれると、複合構造物の硬化状態が達成されるまで、光ファイバーに対してその長さ方向に沿って伝搬する信号を提供することができる。ブロック62を参照。光ファイバー16を抜け出る信号は、複合構造物10が硬化された状態になるまで検出可能である。ブロック64を参照。
【0038】
さらなる説明として、例えば
図7のフロー図に示したように、複合構造物10の健全性を監視するために方法を提供することができる。製造後、例えば硬化されたままの状態で、複合構造物10の健全性が監視されている間、本発明の実施形態のシステム及び方法は、樹脂の硬化又はその他の凝固処理の前の製造段階で複合構造物の健全性を監視することができ、これによって、製造過程の監視を提供することができる。実際に、一実施形態のシステム及び方法は、プライ又はファイバートウの向きを監視するため、硬化又は凝固しなかった複合構造物を監視することができた。その際、
図7の作業70に示したように、複合材料及び複合材料内に配置された一又は複数の光ファイバー16を含む複合構造物10が提供されうる。光ファイバー16は、光ファイバーの非線形光学特性を高める複数の量子ドット18を含む。作業72に示したように、例えば、信号が導入される第1端から対向する第2端へ向かうように、光ファイバー16に対してその長さ方向に沿って伝播する信号を提供することができる。予期しなかった形態で光ファイバーに曲げを引き起こす欠陥、あるいは光ファイバー上に予期せぬ量の応力又は歪みを加える結果となる欠陥など、複合材料内の欠陥に応じて、作業74に示したように複数の量子ドット18によって、非線形効果を引き起こすことができる。二次高調波の発生などの二次効果の発生、三次高調波の発生などの三次効果の発生、又は複合材料中の欠陥に応じた同等の効果の発生などの種々の非線形効果が発生しうる。この方法は、作業76に示したように光ファイバー16を通る伝播後の非線形効果を含む信号も検出することができる。検出器30又はこの検出器に関連して応答するコンピュータを用いるなど、非線形効果を含む信号を解析することによって、複合材料が光ファイバー16を通って伝播する信号を変化させ、非線形効果を引き起こす欠陥を有する事例が特定されうる。作業78を参照。検出されうる欠陥に関して、ファイバートウの経路内での偏り及び複合プライの位置又は経路の偏りは、本発明の一実施形態によって検出可能である。さらに、幾つかの実施形態では、TDRに基づくなどして、欠陥の位置も決定しうる。複合材料内の潜在的な欠陥の検出に基づいて、一実施形態の方法は潜在的欠陥のさらなる試験と解析、及び/又はその欠陥を修復するための複合材料に対する適切な修復を提供することができる。
【0039】
その際、検出される信号及び関連する非線形効果は、検出器30又は関連するコンピュータなどによって、欠陥を含んでいない複合材料の事例で、光ファイバー16内の信号の伝播後に検出されることが予測される、信号及び関連する非線形効果と比較することができる。少なくとも所定の量又は割合だけ、信号及び/又は非線形効果が偏る事例では、この方法は、複合材料のより詳細な解析及び/又は修復が可能になるよう、又は目標を変更する必要があることをユーザーに通知するよう、複合材料内部の欠陥の可能性を特定することができる。
【0040】
複数の量子ドット18を含めて光ファイバー16の非線形特性を増幅することによって、信号が光ファイバーを通って伝播する複合材料内の欠陥の影響もそれに応じて増幅される。その際、複合材料内の欠陥に応じて、複数の量子ドット18によってもたらされる非線形効果は十分に再現性があり、検出器30によって確実に特定できるだけの強度がある。したがって、一実施形態のシステム及び方法は、複合材料をさらに解析又は検査できるよう、及び/又は時宜を得た方法での複合材料の修復により集中できるよう、あるいは新しい知識に対応できるよう、複合材料内の欠陥の検出を容易にしうる。実際に、複合材料内の欠陥に応じて、複数の量子ドット18によってもたらされる非線形効果を解析することによって、関連する非線形効果を考慮することなく、単純に光ファイバー16内部の反射信号に基づく解析を損なう可能性がある、比較的低い信号雑音比の場合でも制限を受けることのない確実な方法で欠陥を特定することができる。
【0041】
既に示したように、複合材料内に量子ドット18を含む光ファイバーのアレイなどのように、複数の光ファイバー16を埋め込むことによって、複合材料の健全性は監視しうる。光ファイバーのアレイを通って信号が伝播した後、検出器30によって検出される信号及び関連する非線形効果は、例えば、ファイバートウ又は複合プライの位置での偏り及び、光学的時間領域反射率計を利用する幾つかの実施形態では、このような偏りの位置を示すことによって、複合材料の健全性の指標となる2次元(2D)又は3次元(3D)データなどの多次元データを提供することができる。一実施形態では、検出器30はこの多次元データの視覚表現を表示するように構成されうる。例えば、製造される複合構造物10のモデル上に多次元データの視覚表現を重ね合わせることによって、この方法は本発明の実施形態によるシステムで収集した多次元データに対する基準を提供することができる。
【0042】
本明細書において説明した多数の修正例及び他の実施形態は、上述の説明及び添付図面に提示された教示の恩恵を有する、これらの実施形態が関連する分野の当業者であれば想起するであろう。したがって、実施形態は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正例及び他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。さらに、上述の説明及び添付図面は、要素及び/又は機能の特定の例示的組み合わせの点から例示的実施形態を説明しているが、特許請求の範囲から逸脱せずに、別の実施形態によって要素及び/又は機能の異なる組み合わせを提供することができる。これに関して、例えば、要素及び/又は機能の、上述に明記したものとは異なる組み合わせも、特許請求の範囲の一部に提示されるように考慮される。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは、一般的及び説明的な意味でのみ使用されているのであって、限定を目的として使用されているのではない。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
複合構造物を監視するシステムであって、該システムは
前記複合構造物内の光ファイバーであって、複数の量子ドットを含む光ファイバーと、
前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する信号を供給するように前記光ファイバーに結合された信号源と、
前記光ファイバーから抜け出る信号を検出するように前記光ファイバーに結合された検出器と
を含む、システム。
(態様2)
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該コアは前記複数の量子ドットを含む、態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該クラッドは前記複数の量子ドットを含む、態様1または2に記載の方法。
(態様4)
前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、態様1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
(態様5)
前記複数の量子ドットは前記複合材料の異常に応じて二次効果を引き起こす、態様1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
(態様6)
前記光ファイバーは、ブラッグ格子あるいは一又は複数の部分反射鏡を有するファブリペローエタロンのうちの少なくとも1つをさらに含む、態様1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
(態様7)
前記信号源が前記光ファイバーの第1端に隣接するように配置された状態で、前記光ファイバーが対向する第1端と第2端との間に延伸し、前記システムは、前記信号を前記光ファイバーを通って第2端から第1端に向かって反射するように前記光ファイバーの第2端に配置された反射鏡をさらに含み、前記検出器は、前記光ファイバーを通る前記信号の反射後に前記光ファイバーの第1端によって放出される信号に応答する、態様1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
(態様8)
複合構造物を監視する方法であって、該方法は、
前記複合構造物内に光ファイバーを埋め込むことであって、該光ファイバーが複数の量子ドットを含むことと
前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する信号を供給することと、
前記光ファイバーから抜け出る信号を検出することと
を含む、方法。
(態様9)
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、前記コアは前記複数の量子ドットを含む、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、該クラッドは前記複数の量子ドットを含む、態様8または9に記載の方法。
(態様11)
前記複数の量子ドットは前記光ファイバーの表面上に配置されている、態様8〜10のいずれか一項に記載の方法。
(態様12)
前記複合材料の異常に応じて前記複数の量子ドットによって非線形効果を引き起こすことをさらに含む、態様8〜11のいずれか一項に記載の方法。
(態様13)
非線形効果を引き起こすことは、前記複合材料の前記異常に応じて二次効果を引き起こすことを含む、態様12に記載の方法。
(態様14)
内部に埋め込まれた光ファイバーを有する複合構造物を監視する方法であって、該光ファイバーは複数の量子ドットを含み、該方法は、
前記光ファイバーに対してその長さ方向に伝播する信号を供給することと、
前記光ファイバーから抜け出る信号を検出することと
を含む、方法。
(態様15)
前記光ファイバーはコア及び該コアを取り囲むクラッドを含み、前記コアは前記複数の量子ドットを含む、態様14に記載の方法。
【符号の説明】
【0043】
10 複合構造物
12 構造要素
14 樹脂
16 光ファイバー
16a コア
16b
クラッド
16c 外表面
18 量子ドット
20 信号源
22 波長選択デバイス
24 偏光デバイス
26 強度フィルタ
30 検出器
32 反射器
34 ビームスプリッタ
36 ブラッグ格子