(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の運搬形態では、西瓜が損傷しやすいといった問題が生じている。すなわち、積み上げられた西瓜の内、荷台の床に近い西瓜(以下、「下積み西瓜」と言う。)程これよりも上に積まれた西瓜の荷重を受ける。この場合に、運搬中(トラックの走行中)に、大きな振動が加わると、下積み西瓜にさらに荷重が加わって、変形したり、最悪の場合、割れてしまったりして、商品価値が大きく損なわれてしまう。
【0006】
この問題に対処するため、1回に運搬する西瓜の個数を減らして、下積み西瓜にかかる荷重を減らすことが考えられるが、そうすると、運搬効率が低下してしまう。
【0007】
さらに、上記従来では、トラックの荷台に積載された西瓜を、1個ずつ手作業で荷受コンベヤ等の荷受台へ降ろすため作業効率が悪いといった問題も有している。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、運搬効率を可能な限り低下させることなく、上記従来よりも、トラックなどによる運搬中における西瓜の損傷を防止することができると共に、選果機における荷受台等に降ろす際の作業効率を向上することができる西瓜運搬用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る西瓜運搬用具は、複数個の西瓜を一時に運搬する際に用いられる西瓜運搬用具であって、主面に前記西瓜が載置されるクッションマットと、前記クッションマットの前記主面の縁部に沿って当該主面を囲繞し、載置された西瓜が前記主面から転落するのを防止する囲い部材と、を備え、前記囲い部材は、可撓性を有すると共に、前記縁部の周方向における一部に、前記西瓜が前記主面から転がり出されるのを許容する第1の状態と、前記主面の囲繞を維持する第2の状態とに開閉自在に構成された開閉部を有していることを特徴とする。
【0010】
また、前記囲い部材は、軟質の合成樹脂からなる帯材が、その幅方向における一端側を下方にし、前記縁部に沿って立設されたものであり、前記開閉部は、前記帯材の前記周方向における一部が、前記主面外方へ傾倒可能に構成された部分であり、当該開閉部を前記主面外方へ傾倒させることにより前記第1の状態となり、前記開閉部を立設させることにより前記第2の状態となることを特徴とする。
【0011】
あるいは、前記囲い部材の一部である前記開閉部は、前記囲い部材を構成する他の部分に対して着脱自在に構成されており、当該開閉部を前記他の部分から脱着することにより前記第1の状態となり、前記他の部分に装着することにより前記第2の状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成からなる西瓜運搬用具によれば、載置された西瓜がクッションマットの主面から転落するのを防止する囲い部材が設けられているため、複数個の西瓜がクッションマットの主面に載置された西瓜運搬用具に、同じく複数個の西瓜がクッションマットの主面に載置された他の西瓜運搬用具を複数段に積み上げて、例えば、トラックの荷台に積載して運搬することができる。この場合に、下段の西瓜運搬用具に載置された西瓜と上段の西瓜運搬用具に載置された西瓜との間にはクッションマットが介在する関係上、トラック走行中に受ける振動が効果的に吸収されるため、下段に載置された西瓜の損傷を可能な限り防止することができる。
【0013】
また、複数段に積載して西瓜を運搬することができるため、運搬効率の低下を可能な限り抑制することができる。
【0014】
さらに、選果機における荷受台等に西瓜を降ろす際には、囲い部材の開閉部を開いて、西瓜がクッションマットの主面から転がり出されるのを許容する状態にした上で、当該クッションマットを前記開閉部が開かれた方向に向けて傾斜させることにより、主面に載置された複数個の西瓜を一時に転がし出して前記荷受台に降ろすことができるため、従来、1個ずつ降ろしている場合と比較して作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る西瓜運搬用具の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
図1(a)に示すように、実施形態1に係る西瓜運搬用具10は、扁平な直方体形状をしたクッションマット12を有している。クッションマット12は、ウレタンなどの合成樹脂からなるスポンジで形成されている。
【0017】
また、西瓜運搬用具10は、主面12Aの4辺の縁部から立ち上がって、主面12Aを囲繞する囲い部材14を有している。
【0018】
囲い部材14は、軟質の合成樹脂製の帯材が、主面12Aの一方の長辺と両短辺に合わせて「コ」字状に屈曲されてなる第1側壁部16と、主面12Aの他方の長辺に対応する長さを有する、同じく軟質の合成樹脂製の帯材からなる第2側壁部18とを有する。
【0019】
第1側壁部16と第2側壁部18とは、下端面(前記帯材の幅方向における一端面)が、クッションマット12の主面12Aに、接着剤(不図示)などによって固着されて立設されている。前記帯材の材質や各部寸法は、可撓性を有するものの、
図1(a)の状態で、第1側壁部16と第2側壁部18とが自立できる程度の腰が生じるものとなっている。
【0020】
また、第1側壁部16の長さ方向における両端部の各々と、第2側壁部18の対応する端部とは、不図示のスライドファスナー(線ファスナー)で連結されている。両スライドファスナーにおける不図示のスライダを下げることにより連結を解除して、
図1(b)に示すように、第2側壁部18を主面12Aに対し外方へ傾倒し、囲いの一部を開放することができる。また、スライダを上げて元に戻すことにより、第2側壁部18は、
図1(a)に示す立設した状態、つまり、囲い部材14として主面12Aの囲繞を維持する状態とすることができる。すなわち、囲い部材14において、主面12Aの縁部の周方向における一部である第2側壁部18は、囲いの一部を開放する第1の状態と、主面12Aの囲繞を維持する第2の状態とに開閉自在な開閉部として機能する。
【0021】
なお、第1側壁部16の長さ方向における両端部の各々と、第2側壁部18の対応する端部との連結には、スライドファスナー(線ファスナー)に限らず、点ファスナーであるスナップボタンを用いても構わないし、あるいは、フック面材とループ面材とで構成される面ファスナーを用いても構わない。
【0022】
西瓜運搬用具10におけるクッションマット12の主面12Aには複数個の西瓜(
図1において不図示)が重ねられることなく載置される。
【0023】
西瓜の運搬には、西瓜搬送用具10が複数台用いられる。
【0024】
西瓜が載置された西瓜運搬用具10は、トラックの荷台に複数段(例えば、3〜4段)に積み上げられる。
【0025】
図2に示すのは、例えば、積載量が2トンのトラック100の荷台に、西瓜Sが載置された西瓜運搬用具10が複数台(本例では、9台)積載された例を示している。なお、
図2は、トラック100の荷台における手前側の側アオリおよび後述するベニヤ板を取り除いた状態を示している。
【0026】
図2では、パレット102上に3段に積み上げられた西瓜運搬用具10が、トラック100の前後方向に3列積載された例を示している。なお、図示例では、クッションマット12の長手方向がトラック100の左右方向となる姿勢で、西瓜運搬用具10の各々が積載されている。
【0027】
また、トラック100の走行中における荷崩れを防ぐため、9台の西瓜運搬用具10を取り囲むように、トラック100の荷台には、4枚のベニヤ板(図では、3枚のベニヤ板104,106,108のみを描いている。)が立設されている。
【0028】
図3は、西瓜Sが載置され3段に積まれた西瓜運搬用具10をクッションマット12の長手方向に切断した図の一部である。なお、
図3において、囲い部材14(
図1)の図示は省略している。
【0029】
西瓜Sが載置されたクッションマット12は、西瓜Sの自重により凹んでいる。換言すると、クッションマット12は、西瓜Sの自重により凹む程度の柔軟性を有した材質のものが用いられる。凹む程度は、平坦面にクッションマット12を設置した状態において、直径200mm〜300mmの西瓜が自重で、その径の1/4〜1/2程度クッションマット12上面から沈み込む程度である。
【0030】
この程度に沈み込むと、西瓜Sは、クッションマット12上を転がりにくくなる。また、転がったとしても囲い部材14(
図1)によって、クッションマット12の主面12Aから転落するのを防止できる。
【0031】
ここで、囲い部材14(第1側壁部16、第2側壁部18)のクッションマット12主面12Aからの高さは、載置される西瓜の直径が200mm〜300mmであることおよび上記の沈み込みを考慮して、100mm程度とすることが好ましい。当該高さが低すぎると、西瓜の転落を防止する効果が低下する一方、高すぎると、西瓜運搬用具10を複数台積載した場合に下段の囲い部材14が直ぐ上段の西瓜運搬用具10のクッションマット12(の下面)と干渉してしまうからである。
【0032】
また、下から2段目よりも上の西瓜運搬用具10(以下、「上段の西瓜運搬用具10」と言う。)に積まれる西瓜Sは、平面視で、その一段下の西瓜運搬用具10(以下、「直下の西瓜運搬用具10」と言う。)に積まれた西瓜Sの間に収まり易い。このため、上段の西瓜運搬用具10の西瓜Sに押されて凹んだクッションマット12部分が、直下の西瓜運搬用具10における西瓜Sの間に膨出する。当該膨出部分が直下の西瓜運搬用具10に積まれた西瓜Sの動きを規制するため、これによっても直下の西瓜運搬用具10のクッションマット12からの転落を抑制することができる。
【0033】
さらに、トラック100(
図2)による搬送中に、大きな振動が加わったとしても、クッションマット12が当該振動の吸収材として機能するため、下方に積まれた西瓜Sの損傷を可能な限り防止することができる。
【0034】
トラック100(
図2)によって、圃場から選果場へと搬送された西瓜Sは、パレット102毎(すなわち、本例では、西瓜運搬用具10の3段分ずつ)、トラック100から降ろされる。
【0035】
そして、上から順に、西瓜運搬用具10が取り出されて、選果機(不図示)の例えば、荷受コンベヤ(不図示)の荷受台(不図示)に載置される。
【0036】
ここで、上述したようにして、
図1(b)に示すように、囲い部材14が第2側壁部18で開放され、主面12Aが第2側壁部18に向かって下り斜面となるように、クッションマット12を傾斜させることにより、クッションマット12に積まれた西瓜は、主面12Aから転がり出されて、前記荷受台へと放出される。
【0037】
このように、実施形態1に係る西瓜運搬用具10によれば、第2側壁部18を開放し、クッションマット12を第2側壁部18に向けて傾けるといった簡単な作業で、クッションマット12に載せられた複数個の西瓜を一時に前記荷受台に降ろすことができるため、従来の1個ずつ降ろす場合と比較して、作業効率が向上する。
<実施形態2>
実施形態2に係る西瓜運搬用具20は、主として囲い部材が異なる以外は、実施形態1の西瓜運搬用具10と同様の構成を有している。よって、以下、この異なる部分を中心に説明する。
【0038】
実施形態2に係る西瓜運搬用具20は、
図4に示すように、実施形態1と同様なクッションマット22を有している。
【0039】
西瓜運搬用具20における囲い部材24は、クッションマット22の主面22Aの4つの角部各々に立設された、角柱26,28,30,32と角柱26,28,30,32間に張られたネット34,36,38,40とからなる。
【0040】
角柱26,28,30,32は全て同じものであり、例えば、軟質の合成ゴムからなり、可撓性を有する。
【0041】
クッションマット22の前記角部の各々には、角穴(不図示)が厚み方向に開設されており、当該角穴の各々に角柱26,28,30,32の下端部側が挿入され、不図示の接着剤によって固着されている。
【0042】
ネット34とネット38、ネット36とネット40は、それぞれ同じものであり、ネット34,38とネット36,40とは、長さが異なるだけである。よって、
図4の左下に、単独で示したネット38を代表に説明することとする。
【0043】
ネット38は、軟質の合成樹脂板からなる2枚のパッド部38A,38Bとパッド部38A,38Bに両端の各々が固着された帯状の網部38Cとを有する。
【0044】
パッド38A,38Bの片面には、面ファスナーを構成するフック面材38D,38Eが貼着されている。
【0045】
一方、角柱30,32の側面には、図には現れていないが、面ファスナーを構成するループ面材が貼着されている。
【0046】
そして、ネット38のパッド部38A,38Bに設けられたフック面材38D,38E各々を角柱30,32の側面に設けられたループ面材それぞれに押圧することにより、ネット38が、角柱30,32間に装着される。これにより、クッションマット22の主面22Aの縁部から立ち上がって、主面22Aを囲繞する囲い部材24の一部が構成される。
【0047】
また、角柱30,32に設けられたループ面材から、ネット38に設けられたフック面材38D,38Eを引き剥がすことにより、ネット38を角柱30,32から脱着することができる。
【0048】
角柱26,28,30,32各々の、ネット34,36,40のパッド部34A,34B,36A,36B,40A,40Bに対応する側面にも、ループ面材が貼着されていて、これにより、ネット34,36,40も、ネット38と同様、対応する角柱に対して、着脱自在となっている。
【0049】
上記の構成からなる西瓜運搬用具20を用い、トラックによって西瓜を搬送する際の態様、および搬送中における西瓜の損傷が防止できることは、実施形態1の西瓜搬送用具10と同様なので、その説明については省略する。
【0050】
西瓜運搬用具20で運ばれた西瓜を、選果機の荷受コンベヤの荷受台(いずれも不図示)に降ろす場合には、西瓜運搬用具20が前記荷受台に載置された状態で、ネット34,36,38,40のいずれか一つを脱着して、囲い部材24の一部を開放する。そして、クッションマット22の主面22Aが、開放された部分に向かって下り斜面となるように、クッションマット22を傾斜させることにより、クッションマット22に積まれた西瓜は、主面22Aから転がり出されて、前記荷受台へと降ろされることとなる。
【0051】
実施形態2の西瓜運搬用具20では、囲い部材24の、クッションマット22主面22Aの縁部の周方向における一部であるネット34,36,38,40のいずれもが、西瓜が主面22Aから転がり出されるのを許容する第1の状態と、主面22Aの囲繞を維持する第2の状態とに開閉自在な開閉部として機能する。このため、西瓜運搬用具を荷受台に載せる向きの自由度が高くなる。
【0052】
以上、本発明に係る西瓜運搬用具を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることもできる。
【0053】
(1)上記実施形態では、クッションマットは、合成樹脂製のスポンジで形成したが、これに限らず、柔軟性を有するシート状発泡体で形成しても構わない。要は、西瓜がその自重によって、当該西瓜の直径の1/4〜1/2程沈み込む(凹む)程度の柔軟性を備えた材質および厚みを有するものであれば良いのである。
【0054】
(2)上記実施形態1では、合成樹脂製の帯材をクッションマット12の主面12Aに立設させて囲い部材14を構成したが、これに限らず、クッションマット12の側面に貼着することにより帯材を立設させて、囲い部材を構成することとしても構わない。すなわち、例えば、実施形態1の帯材の幅をクッションマット12の厚み分だけ拡げ、当該拡げた幅部分をクッションマット12の側面に貼着するのである。
【0055】
(3)上記実施形態2では、ネット34,36,38,40の各々をクッションマット22に対し着脱自在としたがこれに限らず、ネット38(
図4)を例に説明すると、網部38Cの下縁をクッションマット22に縫合し、クッションマット22に一体的に取着することとしても構わない。この場合は、両パッド部38A,38Bに設けたフック面材38D,38Eを角柱30,32に設けたループ面材(不図示)から剥がして、ネット38を主面22Aの外方へ傾倒させ、囲い部材24の一部を開放することとする。