(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を用いて本発明について説明する。
なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施の形態について、図面に基づいて、以下に説明する。
図1は、超音波医療装置の全体構成示す断面図、
図2は振動子ユニットの全体の概略構成を示す図、
図3は振動子ユニットの構成を示す斜視図、
図4は絶縁板、矩形圧電体および電極板からなる積層体の構成を示す分解斜視図、
図5は振動子ユニットの構成を示す分解斜視図、
図6は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図7は超音波振動子のバックマス側から見た平面図、
図8は超音波振動子の
図7のVIII−VIII線断面図、
図9は超音波振動子の積層体と支柱の配置を説明するためのバックマス側から見た平面図、
図10は第1の変形例の超音波振動子の積層体と支柱の配置を説明するためのバックマス側から見た平面図、
図11は第2の変形例の超音波振動子の積層体と支柱の配置を説明するためのバックマス側から見た平面図である。
【0015】
(超音波医療装置)
図1に示す、超音波医療装置1は、主に超音波振動を発生させる超音波デバイスとしての超音波振動子2を有する振動子ユニット3と、その超音波振動を用いて患部の治療を行うハンドルユニット4とが設けられている。
【0016】
ハンドルユニット4は、操作部5と、長尺な外套管7からなる挿入シース部8と、先端処置部30とを備える。挿入シース部8の基端部は、操作部5に軸回り方向に回転可能に取り付けられている。先端処置部30は、挿入シース部8の先端に設けられている。ハンドルユニット4の操作部5は、操作部本体9と、固定ハンドル10と、可動ハンドル11と、回転ノブ12とを有する。操作部本体9は、固定ハンドル10と一体に形成されている。
【0017】
操作部本体9と固定ハンドル10との連結部には、背面側に可動ハンドル11を挿通するスリット13が形成されている。可動ハンドル11の上部は、スリット13を通して操作部本体9の内部に延出されている。スリット13の下側の端部には、ハンドルストッパ14が固定されている。可動ハンドル11は、ハンドル支軸15を介して操作部本体9に回動可能に取り付けられている。そして、ハンドル支軸15を中心として可動ハンドル11が回動する動作に伴い、可動ハンドル11が固定ハンドル10に対して開閉操作されるようになっている。
【0018】
可動ハンドル11の上端部には、略U字状の連結アーム16が設けられている。また、挿入シース部8は、外套管7と、この外套管7内に軸方向に移動可能に挿通された操作パイプ17とを有する。外套管7の基端部には、先端側部分よりも大径な大径部18が形成されている。この大径部18の周囲に回転ノブ12が装着されるようになっている。
【0019】
操作パイプ19の外周面には、リング状のスライダ20が軸方向に沿って移動可能に設けられている。スライダ20の後方には、コイルばね(弾性部材)21を介して固定リング22が配設されている。
【0020】
さらに、操作パイプ19の先端部には、把持部23の基端部が作用ピンを介して回動可能に連結されている。この把持部23は、プローブ6の先端部31と共に超音波医療装置1の処置部を構成している。そして、操作パイプ19が軸方向に移動する動作時に、把持部23は、作用ピンを介して前後方向に押し引き操作される。このとき、操作パイプ19が手元側に移動操作される動作時には作用ピンを介して把持部23が支点ピンを中心に回動される。これにより、把持部23がプローブ6の先端部31に接近する方向(閉方向)に回動する。このとき、片開き型の把持部23と、プローブ6の先端部31との間で生体組織を把持することができる。
【0021】
このように生体組織を把持した状態で、超音波電源から電力を超音波振動子2に供給し、超音波振動子2を振動させる。この超音波振動は、プローブ6の先端部31まで伝達される。そして、この超音波振動を用いて把持部23とプローブ6の先端部31との間で把持されている生体組織の治療を行う。
【0022】
(振動子ユニット)
ここで、振動子ユニット3について説明する。
振動子ユニット3は、
図2に示すように、超音波振動子2と、この超音波振動子2で発生した超音波振動を伝達する棒状の振動伝達部材であるプローブ6とを一体的に組み付けたものである。
【0023】
超音波振動子2は、振幅を増幅するホーン32が連設されている。ホーン32は、ジュラルミン、あるいは例えば64Tiなどのチタン合金によって形成されている。ホーン32は、先端側に向かうに従って外径が細くなる円錐形状に形成されており、中途外周部に操作部本体9(
図1参照)へ固定するための外向フランジ33が形成されており、この外向フランジ33の後方に基端円柱部38を有している。
【0024】
プローブ6は、例えば64Tiなどのチタン合金によって形成されたプローブ本体34を有する。このプローブ本体34の基端部側には、上述のホーン32に連設された超音波振動子2が配設されている。このようにして、プローブ6と超音波振動子2とを一体化した振動子ユニット3が形成されている。
【0025】
そして、超音波振動子2で発生した超音波振動は、ホーン32で増幅されたのち、プローブ6の先端部31側に伝達するようになっている。プローブ6の先端部31には、生体組織を処置する後述の処置部が形成されている。
【0026】
また、プローブ本体34の外周面には、軸方向の途中にある振動の節位置の数箇所に間隔をあけて弾性部材でリング状に形成された2つのゴムライニング35が取り付けられている。そして、これらのゴムライニング35によって、プローブ本体34の外周面と後述する操作パイプ19との接触を防止するようになっている。
【0027】
つまり、挿入シース部8の組み立て時に、振動子一体型プローブとしてのプローブ6は、操作パイプ19の内部に挿入される。このとき、ゴムライニング35によってプローブ本体34の外周面と操作パイプ19との接触を防止している。
【0028】
なお、超音波振動子2は、超音波振動を発生させるための電流を供給する図示しない電源装置本体に電気ケーブル36を介して電気的に接続される。この電気ケーブル36内の配線を通じて外部機器の電源装置本体から電力を超音波振動子2に供給することによって、超音波振動子2が駆動される。
【0029】
(超音波振動子)
ここで、本発明の積層型超音波振動デバイスとしての超音波振動子2について以下に説明する。
振動子ユニット3の超音波振動子2は、
図3に示すように、ホーン32後方の基端円柱部38に連設された金属円柱のマス材であるフロントマス51と、ここでは矩形状(四角柱形状)に積層された積層振動子41と、後方に配設された金属円柱のマス材であるバックマス52と、フロントマス51およびバックマス52によって積層振動子41を挟み込んで締結するための、複数、ここでは4つ(
図3においては2つのみ図示)の金属性の締結部材としての支柱53と、有している。
【0030】
積層振動子41は、
図4に示すように、多角形、ここでは矩形状に形成された矩形圧電体61が積層されている。この積層振動子41は、両端側にセラミックスなどから多角形、ここでは矩形状に形成された絶縁板42,43が配設されており、2つの絶縁板42,43によって前後(紙面での上下方向)が挟まれている。
【0031】
ところで、本実施の形態の矩形圧電体61には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT,Pb(Zrx,Ti
1−x)O3)、圧電単結晶のニオブ酸リチウム単結晶(LiNbO3)などの圧電材料が使用される。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、加工性がよく、高い生産性および高い電気機械変換効率を有し、圧電材料として優れた特性を持っているという利点がある。圧電単結晶のニオブ酸リチウム単結晶(LiNbO3)は、高出力用途超音波振動子に適した高い機械的Q値を有する非鉛圧電材料の1つであって、鉛を使用していないため、環境性に適している。
【0032】
積層振動子41は、絶縁板42、8つの矩形圧電体61および絶縁板43の間に銅などの金属から多角形、ここでは矩形状に形成された正電極層となる正電側電極板62および負電極層となる負電側電極板63が交互に介装されている。
【0033】
積層振動子41は、絶縁板42,43、8つの矩形圧電体61および各電極板62,63の4つの角部と4辺が一致するように積層されて、
図5に示すように、全体が略四角柱形状にされる。即ち、各絶縁板42,43、各矩形圧電体61および各電極板62,63は、それら表裏面の形状が略同一の矩形状となっている。
【0034】
なお、絶縁板42,43、各矩形圧電体61および各電極板62,63は、表面形状が矩形状に限定されることなく、多角形として、全体が多角柱形状となって積層する構成としてもよいし、円板状として、全体が円柱形状となって積層する構成としてもよい。
【0035】
また、正電側電極板62および負電側電極板63は、それぞれの一側辺の端部から、他の一辺に沿って延設された電極としての導出部62a,63aがそれぞれ延設されている。これら導出部62a,63aは、正電側と負電側が離反した異なる方向に延設されるように積層され、
図1および
図2に示した、電気ケーブル36内の正電側または負電側の配線と電気的に接続される。
【0036】
なお、正電側電極板62および負電側電極板63は、ここでは導出部62a,63aが離反した一辺側における対角方向の異なる端部から延設されて、これら導出部62a,63aが金属性の支柱53と接触しないように積層される。なお、正電側電極板62および負電側電極板63は、支柱53および互いが接触しないような構成であれば、同一方向に延設した構成であってもよい。
【0037】
一対のマスであるフロントマス51およびバックマス52は、ジュラルミン、あるいは例えば64Tiなどのチタン合金によって形成されている。
【0038】
フロントマス51は、
図5に示すように、外周近傍に両端を貫通するように略等間隔の4つのネジ孔51aが形成されており、一端中央部にホーン32の基端円柱部38から延設される雄ネジ38aが螺着される雌ネジ穴51bが形成されている。なお、4つのネジ孔51aは、フロントマス51の中心に対して回転対称の外周縁辺部近傍の位置に形成されている。
【0039】
バックマス52は、外周近傍に両端を貫通するように略等間隔の4つの貫通孔52aが形成されている。これら4つの貫通孔52aは、フロントマス51の4つのネジ孔51aと一致する位置に形成されており、支柱53の外径よりも若干大きな、例えば、10%〜20%程度大きい孔径を有している。なお、4つの貫通孔52aも、バックマス52の中心に対して回転対称の外周縁辺部近傍の位置に形成されている。
【0040】
支柱53は、一端にフロントマス51のネジ孔51aに螺合するネジ溝53aが形成され、他端に六角レンチ用のレンチ穴54a(
図7および
図8参照)が形成された頭部54を有しており、バックマス52の貫通孔52aに挿抜自在な締結部材としての金属棒体である。なお、頭部54は、スパナ、レンチなど用の六角ヘッドでもよい。
【0041】
また、支柱53は、バックマス52の貫通孔52aに挿入されて、フロントマス51およびバックマス52の間で積層振動子41を挟み込んだ状態で、一端のネジ溝53aがフロントマス51のネジ孔51aに螺合して締結できる所定の長さが設定されている。
【0042】
以上に説明したように超音波振動子2は、
図6から
図8に示すように、フロントマス51およびバックマス52の中心に対して回転対称位置に設けられる4つの支柱53の締め付けによってフロントマス51およびバックマス52が近接する方向に締結して、これらフロントマス51およびバックマス52の間において、両端が絶縁板42,43を介装させた状態の積層振動子41を挟むように所定の圧縮力を有して固定した構成となっている。
【0043】
(超音波振動子の組立方法)
ここで、超音波振動子2の組立方法について以下に説明する。
先ず、フロントマス51、絶縁板42、正電側電極板62と矩形圧電体61と負電側電極板63を順に複数積層した積層振動子41、絶縁板43およびバックマス52の順に重畳させる。このとき、それぞれの長手方向の軸を図示しない治具などを用いて位置合わせを行うと共に、フロントマス51の4つのネジ孔51aとバックマス52の4つの貫通孔52aが対向するように重畳させる。
【0044】
続いて、バックマス52からフロントマス51に向けて、ネジ溝53a側から4つの貫通孔52aのそれぞれに支柱53を挿入し、六角レンチによって、各ネジ溝53aをフロントマス51のネジ孔51aに螺合させて締結する。このとき、各支柱53の頭部54の底面とバックマス52の表面が接触して、且つ両端が絶縁板42,43に挟まれた積層振動子41に所望の圧縮応力が加えられた状態となったときに支柱53の締め付けを終了する。なお、所望の圧縮応力は、支柱53を締め付けつける所定の締め付けトルクにより管理する。
【0045】
即ち、超音波振動子2は、圧電素子としての矩形圧電体61、正電側電極板62および負電側電極板63を交互に積層した積層振動子41と、この積層振動子41の両端に絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体を設けて、一対の金属マス材であるフロントマス51およびバックマス52により積層体を挟み込み、4つの支柱53の締め付けによって積層体に圧縮力を加えた状態でフロントマス51およびバックマス52を固定した構成となっている。
【0046】
このようにして組立てられた本実施の形態の超音波振動子2は、従来構成に比して、絶縁板42,43および積層振動子41に捩り方向の回転トルクが加わらないため、特に、各矩形圧電体61、各正電側電極板62および各負電側電極板63にせん断力による損傷を与えないようにすることができる。したがって、超音波振動子2は、設計に基づいた安定した共振特性を有する構成となる。
【0047】
即ち、超音波振動子2は、組み立て時に積層振動子41の両端に配設される絶縁板42,43と接するフロントマス51およびバックマス52自体が回転しないため、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体が捩じれてずれる方向に回転トルクが加えられない。
【0048】
従って、超音波振動子2は、絶縁板42,43および積層振動子41がずれることなく設計通りに配置可能となるばかりか、絶縁板42,43および積層振動子41に損傷を与えることなく組立が可能となり、特に、積層振動子41を構成する矩形圧電体61、正電側電極板62および負電側電極板63の位置ずれ、傷が入ることなどによる損失を無くすことができる。そのため、超音波振動子2は、設計本来の振動特性を得ることができる。
【0049】
ところで、フロントマス51およびバックマス52を締結して固定する複数、ここでは4つの支柱53の配置位置と、絶縁板42,43および積層振動子41からなる表面矩形状(四角柱状)の積層体の配置位置の関係について以下に説明する。
【0050】
超音波振動子2を組立てる過程において、フロントマス51およびバックマス52を支柱53の締結によって近接させることで絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体に加える圧縮力を均等にして、圧縮力の応力分布をなくすようにする、即ち、一定に応力が加えられることが好ましい。
【0051】
そのため、本実施の形態の超音波振動子2では、
図9に示すように、フロントマス51およびバックマス52の中心Oに絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体の中心を一致させると共に、その中心Oと各支柱53の中心Oa,Ob,Oc,Odとを結ぶ仮想線が積層体の各辺の中心OA,OB,OC,ODを通るように、4つの支柱53の配置位置と、絶縁板42,43および積層振動子41からなる表面矩形状(四角柱状)の積層体の配置位置が設定される。
【0052】
換言すると、フロントマス51の4つのネジ孔51aとバックマス52の4つの貫通孔52aは、それぞれの中心が各支柱53の中心Oa,Ob,Oc,Odと一致するため、各中心(Oa,Ob,Oc,Od)がフロントマス51およびバックマス52の中心Oと積層体の各辺の中心OA,OB,OC,ODを通る仮想線上に位置するように形成される。
【0053】
このような構成とすることで、支柱53によってフロントマス51およびバックマス52が近接する方向に締め付けることで、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体に加えられる圧縮力が均等となり、圧縮力の応力分布がなくなり、即ち、一定に応力が加えられる。
【0054】
(第1の変形例)
なお、
図10に示すように、例えば、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体が表面三角形状(三角柱状)であった場合、支柱53が積層体の3辺に合わせて3つ設けられ、フロントマス51およびバックマス52の中心Oに表面三角形状の積層体の中心を一致させると共に、その中心Oと各支柱53の中心Oa,Ob,Ocとを結ぶ仮想線が積層体の各辺の中心OA,OB,OCを通るように、3つの支柱53の配置位置と、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体の配置位置が設定される。
【0055】
この場合においても、換言すると、フロントマス51の3つのネジ孔51aとバックマス52の3つの貫通孔52aは、それぞれの中心が各支柱53の中心Oa,Ob,Ocと一致するため、各中心(Oa,Ob,Oc)がフロントマス51およびバックマス52の中心Oと積層体の各辺の中心OA,OB,OCを通る仮想線上に位置するように形成される。
【0056】
(第2の変形例)
さらに、
図11に示すように、例えば、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体が表面五角形状(五角形柱状)であった場合、支柱53が積層体の5辺に合わせて5つ設けられ、フロントマス51およびバックマス52の中心Oに表面五角形状の積層体の中心を一致させると共に、その中心Oと各支柱53の中心Oa,Ob,Oc,Od,Oeとを結ぶ仮想線が積層体の各辺の中心OA,OB,OC,OD,OEを通るように、5つの支柱53の配置位置と、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体の配置位置が設定される。
【0057】
この場合においても、換言すると、フロントマス51の5つのネジ孔51aとバックマス52の5つの貫通孔52aは、それぞれの中心が各支柱53の中心Oa,Ob,Ocと一致するため、各中心(Oa,Ob,Oc,Od,Oe)がフロントマス51およびバックマス52の中心Oと積層体の各辺の中心OA,OB,OC,OD,OEを通る仮想線上に位置するように形成される。
【0058】
(第3の変形例)
上述の各支柱53は、絶縁性材料を用いて外表面をコーティングしてもよい。このように各支柱53を絶縁コーティングすることで、積層振動子41が各支柱53に接触してもよくなるため、組み立て時にフロントマス51およびバックマス52に対する絶縁板42,43、各矩形圧電体61および各電極板62,63を位置決めする際に、各支柱53を位置決め部材として利用することが可能となる。
【0059】
これにより、超音波振動子2は、絶縁板42,43、各矩形圧電体61および各電極板62,63を設計通りに配置可能となり、特に、積層振動子41を構成する矩形圧電体61、正電側電極板62および負電側電極板63の位置ずれなどによる損失を無くすことができる。そのため、超音波振動子2は、設計本来の振動特性を得ることができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、第1の実施の形態にて記載した各構成要素に関し、同一構成のものについては同じ符号を用いて、それらの詳細な説明を省略する。
図12は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図13は組立工具の構成を示す斜視図、
図14は組立工具が用いられた状態の超音波振動子を示す斜視図、
図15は組立工具が用いられた状態の超音波振動子のバックマス側から見た平面図である。
【0061】
本実施の形態では、第1の実施の形態に記載の超音波振動子2を組立てる過程において、支柱53によって締め付けることで、フロントマス51およびバックマス52を近接させて、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体に加えられる圧縮力を均等にするための構成である。
【0062】
図12に示すように、4つの支柱53の頭部54は、側周面に歯が回転軸に平行に刻設された歯車構造となっている。このような歯車構造の頭部54を備えた4つの支柱53は、
図13に示す、組立工具100を用いて一度に回転される。
【0063】
この組立工具100は、棒体101の端部に平歯車状となるように複数の歯が設けられた歯車部102が設けられている。歯車部102は、支柱53の頭部54に刻設された歯と同一のピッチで形成されている。
【0064】
また、歯車部102の端面中央には、円柱状の突起部103が設けられている。なお、超音波振動子2のバックマス52には、組立工具100の突起部103が係入される位置合わせ用の穴部52bが表面中央に形成されている(
図12参照)。なお、歯車部102の外径は、バックマス52の穴部52bに突起部103が係入した状態において、バックマス52に挿入された4つの支柱53の頭部54のそれぞれに噛合する大きさに設定されている。
【0065】
以上のように構成された本実施の形態の超音波振動子2は、組立工具100を用いて4つの支柱53を同時に回転させて、フロントマス51およびバックマス52を支柱53によって締結して組立てられる。
【0066】
具体的には、第1の実施の形態と同様に、先ず、フロントマス51、絶縁板42、正電側電極板62と矩形圧電体61と負電側電極板63を順に複数積層した積層振動子41、絶縁板43およびバックマス52の順に重畳させる。
【0067】
このとき、それぞれの長手方向の軸の位置合わせを行うと共に、フロントマス51の4つのネジ孔51aとバックマス52の4つの貫通孔52aが対向するように重畳させる。続いて、バックマス52からフロントマス51に向けて、ネジ溝53a側から4つの貫通孔52aのそれぞれに支柱53を挿入する。
【0068】
次に、
図14に示すように、バックマス52に設けられた穴部52bに組立工具100の突起部103を係入する。このとき、
図15に示すように、組立工具100の歯車部102の歯と4つの支柱53のそれぞれの頭部54の歯車の歯が同一ピッチに設定されており、歯車部102の歯と4つの頭部54のそれぞれの歯が噛合した状態となる。
【0069】
そして、組立工具100を回転させると、歯車部102に噛合する4つの頭部54が回転して、4つの支柱53の各ネジ溝53aがフロントマス51のネジ孔51aに螺着してフロントマス51およびバックマス52が近接する方向に締結される。
【0070】
この場合においても、第1の実施の形態と同様に、各支柱53の頭部54の底面とバックマス52の表面が接触して、且つ両端が絶縁板42,43に挟まれた積層振動子41に所望の圧縮応力が加えられた状態となったときに、組立工具100の回転を停止して4つの支柱53の締め付けを終了する。最後に、組立工具100を取り外し、本実施の形態の超音波振動子2が組み立てられる。
【0071】
以上、説明したように構成された本実施の形態の超音波振動子2は、第1の実施の形態に記載の効果に加え、組立工具100によって、全ての支柱53が同時、且つ同一の締め込み量でフロントマス51およびバックマス52に締結されるため、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体にかかる圧縮応力は分布を持たない、即ち、一定の圧縮応力を積層体に加えることができる。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、ここでも第1および第2の実施の形態にて記載した各構成要素に関し、同一構成のものについては同じ符号を用いて、それらの詳細な説明を省略する。
図16は、超音波振動子の構成を示す分解斜視図、
図17は超音波振動子を示す斜視図、
図18は組立工具が用いられた状態の超音波振動子のバックマス側から見た平面図である。
【0073】
本実施の形態の超音波振動子2は、
図16に示すように、フロントマス51の一面から延設するように4つの支柱53を一体的に形成した構成となっている。ここでの4つの支柱53は、それぞれの延出端にネジ溝53aが設けられている。
【0074】
各支柱53がバックマス52の貫通孔52aに挿通され、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体をフロントマス51およびバックマス52で挟んだ状態において、4つのネジ溝53aは、バックマス52の一面から突出するようになっている。換言すると、4つの支柱53は、積層体をフロントマス51およびバックマス52で挟んだ状態において、各ネジ溝53aがバックマス52の一面から突出する長さに設定されている。
【0075】
これら4つのネジ溝53aには、
図17に示すように、絶縁板42,43および積層振動子41からなる積層体が介装されたフロントマス51およびバックマス52を所望の圧縮力で締結するための歯車ナット55が螺着される。
【0076】
即ち、本実施の形態の超音波振動子2は、第1の実施の形態のように各支柱53をフロントマス51へねじ込むことによってフロントマス51およびバックマス52を締結して組み立てるのではなく、4つの支柱53がフロントマス51と一体形成されて、4つの歯車ナット55を各ネジ溝53aに締め付けて、フロントマス51側にバックマス52を移動させることで、積層体に所望の圧縮力を付加して組立をおこなう構成となっている。
【0077】
なお、
図18に示すように、4つの歯車ナット55の歯は、第2の実施の形態と同様に、組立工具100の歯車部102の歯と同一ピッチに設定されている。組立工具100の回転によって、歯車部102に噛合する4つの歯車ナット55が回転して、4つの支柱53の各ネジ溝53aへ螺着される構成となっている。
【0078】
そして、各歯車ナット55の底面とバックマス52の表面が接触して、且つ、第1および第2の実施の形態と同様に、両端が絶縁板42,43に挟まれた積層振動子41に所望の圧縮応力が加えられた状態となったときに、組立工具100の回転を停止して4つの歯車ナット55の締め付けを終了する。最後に、組立工具100を取り外し、本実施の形態の超音波振動子2が組み立てられる。
【0079】
以上、説明したように構成された本実施の形態の超音波振動子2は、第1および第2の実施の形態に記載の効果に加え、支柱53をフロントマス51に一体形成しているため、支柱53のマス材であるフロントマス51およびバックマス52に対する垂直度が出しやすく、より安定した超音波特性を得ることができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、各支柱53のネジ溝53aに螺着する歯車ナット55の構成を例示したが、これに限定されることなく、レンチなどで個々に締め付ける六角ナットとしてもよい。
【0081】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、ここでも第1の実施の形態にて記載した各構成要素に関し、同一構成のものについては同じ符号を用いて、それらの詳細な説明を省略する。
図19は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図20は超音波振動子のバックマス側から見た平面図である。
【0082】
本実施の形態の超音波振動子2は、
図19および
図20に示すように、積層振動子41の体積を大きくするため、フロントマス51およびバックマス52を締結する支柱53を2つのみ用いた構成となっている。なお、2つの支柱53は、配設される積層振動子41において離反した2辺に合わせて配置される。即ち、フロントマス51のネジ孔51aおよびバックマス52の貫通孔52aは、配設される積層振動子41の離反した2辺の中心近傍の外径方向に形成される。
【0083】
これにより、積層振動子41は、支柱53が設けられる方向の長さL1よりも、支柱53が設けられる方向に直交する長さL2を長く(L1<L2)取れる。これにより、フロントマス51およびバックマス52の間に介装される積層振動子41の体積を最大にとることができる。
【0084】
このように、本実施の形態の超音波振動子2は、上述した第1から第3の実施の形態のように積層振動子41の全ての4辺の外方に支柱53を設けた構成ではなく、最低限にフロントマス51およびバックマス52を締結できる2本の支柱53とした構成により、積層振動子41の体積を大きくすることができる。その結果、超音波振動子2の出力を向上させることができる。
【0085】
上述の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0086】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。