(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30の構成を示す図である。
図1で示すように、第一の実施形態による磁気検出装置10は、磁気センサヘッド1と、信号増幅回路2と、A/D変換回路3と、補償信号生成部4と、環境磁気補正部5とを備える。
また、真偽判定装置30は、磁気検出装置10と、磁気検査判定処理部6と、判定基準レベルメモリ7とを備える。
【0010】
ここで、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1は、
図2に示すように、複数個の感磁部11(11a、11b、11c、・・・)を並べた磁気センサヘッドである。そして、磁気センサヘッド1において、紙葉類100に対向し、紙葉類100が移動する方向に対して直交する方向の紙葉類100の一端から他端までの通過領域の内側に存在する感磁部11は、紙葉類100の磁気的特性を検出する機能部である。また、磁気センサヘッド1において、前述の紙葉類100の通過領域外に存在する感磁部11は、周辺環境に依存した磁気ノイズを検出する機能部である。そして、磁気センサヘッド1は、それらの感磁部11が検出した磁気的特性に応じたアナログ信号を出力する機能部である。なお、個々の感磁部11a、11b、11c、・・・の感磁面は同一面上、かつ一直線上に形成されており、感磁部11はそれらの総称である。
【0011】
また、信号増幅回路2は、磁気センサヘッド1の各感磁部11が出力したアナログ信号を増幅する機能部である。
また、A/D変換回路3は、信号増幅回路2が増幅したアナログ信号をデジタル信号に変換する機能部である。
また、補償信号生成部4は、A/D変換回路3が変換したデジタル信号に対して時間軸方向に対する急激な変化を取り除く処理を行う機能部である。また、補償信号生成部4は、光学的に紙葉類の通過位置を検出する処理部からの紙葉類の通過位置情報等に基づき、紙葉類100の通過領域の外側に位置する感磁部11が出力したアナログ信号に対応するデジタル信号を特定し、環境磁気補正部5へ出力する機能部である。
また、環境磁気補正部5は、光学的に紙葉類の通過位置を検出する処理部からの紙葉類の通過位置情報等に基づき、紙葉類100の通過領域の内側に配置された感磁部11が出力したアナログ信号に対応するデジタル信号を特定する機能部である。また、環境磁気補正部5は、補償信号生成部4から入力したデジタル信号に基づいて、環境磁気補正部5の特定したデジタル信号を補正する機能部である。
【0012】
また、磁気検査判定処理部6は、環境磁気補正部5が出力した補正後のデジタル信号と、判定基準レベルメモリ7が記憶する判定パラメータとに基づいて、紙葉類100の真偽を判定する機能部である。
また、判定基準レベルメモリ7は、例えば予め設定した紙葉類100についての真偽判定のパラメータなど、磁気検出装置10における装置の動作に必要な種々のデータを記憶する記憶部である。
【0013】
図2は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の例を示す図である。
この図に示すように、磁気センサヘッド1は複数個の感磁部11を並べた磁気センサヘッドである。例えば、この図における磁気センサヘッド1は、感磁部11a〜11nの14個の感磁部を備えている。
またこの図に示す磁気センサヘッド1において、紙葉類100の通過領域は、紙葉類100が対向し、紙葉類100が移動する方向に対して直交する方向の一端から他端までの領域である。すなわち、紙葉類100の通過領域の内側に存在する磁気センサヘッド1の感磁部11は11c〜11kである。そして、この紙葉類100の通過領域の内側に存在する磁気センサヘッド1の感磁部11を第一の磁気検出部である第一の感磁部111と以下で記述する。また、第一の感磁部111が検出する磁気検出結果を第一の磁気検出結果という。また紙葉類100の通過領域の外側に位置する感磁部11a、11b、11l、11m、11nを第二の磁気検出部である第二の感磁部112と以下で記述する。また、第二の感磁部112が検出する磁気検出結果を第二の磁気検出結果という。
ただし、磁気センサヘッド1においてどの感磁部11が第一の感磁部111となり第二の感磁部112となるかは、紙葉類100の大きさ、紙葉類100の通過領域、感磁部11の数や配置によって異なり、例えば、光学的に紙葉類の通過位置を検出する処理部からの紙葉類の通過位置情報等に基づき決定される。
【0014】
図3は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の備える感磁部11の例を示す図である。
第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の備える感磁部11は、例えば半導体磁気抵抗素子(SMRE)を備える。この感磁部11は、この図で示すように、インジウムアンチモン単結晶(InSb)半導体等の磁気抵抗素子R1とR2の2つを並べ、その磁気抵抗素子R1とR2の近傍背面に永久磁石を配置するものである。この感磁部11において、永久磁石のバイアス磁界を掛けて磁性体が磁気抵抗素子に対して平行な位置を移動すると、永久磁石の磁力線が変化して磁気抵抗素子の抵抗値が変化する。つまり、感磁部11では、2つの磁気抵抗素子の抵抗値の差分を電気信号として取り出している。
【0015】
また、感磁部11は、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜を紙葉類とで挟む位置に永久磁石を配置するものであってもよい。そして、その永久磁石により薄膜にバイアス磁界を掛けた状態において、磁性体が平行な位置を移動することによるバイアス磁力線の変化である2つの磁気抵抗素子の抵抗値の差分を電気信号として取り出してもよい。
【0016】
図4は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1における感磁部11の配列例を示す図である。
図5は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1における感磁部11の他の配列例を示す図である。
図6は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1における感磁部11の更に他の配列例を示す図である。
図7は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1における感磁部11の更に他の配列例を示す図である。
【0017】
磁気センサヘッド1は、
図4〜
図7に示すように、磁気的特性を検出する様々な数の感磁部11を備えている可能性がある。それらの感磁部11は、紙葉類100が移動する方向に対して直交する方向に一列に配置される。一列に配置される感磁部11の感磁面は、紙葉類100の全領域の磁気的特性を検出できるように配置される。また、一列に配置される感磁部11の感磁面は、紙葉類100の通過領域の外側の磁気的特性を検出できるように配置される。
【0018】
このように、磁気センサヘッド1は、個別に感磁領域を持つ感磁部11を一列に並べ、紙葉類100の通過領域の内側と通過領域の外側に同様の感磁部11を並べる構造とする。つまり、磁気センサヘッド1において、紙葉類100が磁気センサヘッド1を通過した際の磁気的特性を検出する感磁部11と、紙葉類100が磁気センサヘッド1を通過した際の周辺環境に依存する磁気ノイズを検出する感磁部11を一列に配置する。
理想的には紙葉類100が通過する領域の第一の感磁部111の外側に少なくとも1つ以上の周辺環境に依存する磁気ノイズを検出するための第二の感磁部112を配置するのがよい。
【0019】
例えば、
図4は、紙葉類100が磁気センサヘッド1の12個の感磁部11のうち8個の感磁部11a〜11hの領域を通過する場合を示している。この場合、第一の感磁部111は、感磁部11a〜11hとなる。そして、磁気ノイズを検出する第二の感磁部112は、感磁部11i〜11lとなる。
【0020】
また、
図5は、紙葉類100が磁気センサヘッド1の12個の感磁部のうち8個の感磁部11c〜11jの領域を通過する場合を示している。この場合、第一の感磁部111は、感磁部11c〜11jとなる。そして、磁気ノイズを検出する第二の感磁部112は、感磁部11a、11b、11k、11lとなる。
【0021】
同様に、
図6は、紙葉類100が磁気センサヘッド1の12個の感磁部のうち10個の感磁部11a〜11jの領域を通過する場合を示している。この場合、第一の感磁部111は、感磁部11a〜11jとなる。そして、磁気ノイズを検出する第二の感磁部112は、感磁部11k、11lとなる。
【0022】
また同様に、
図7は、紙葉類100が磁気センサヘッド1の14個の感磁部のうち10個の感磁部11c〜11lの領域を通過する場合を示している。この場合、第一の感磁部111は、感磁部11c〜11lとなる。そして、磁気ノイズを検出する第二の感磁部112は、感磁部11a、11b、11m、11nとなる。
【0023】
紙葉類100が一種類である場合や通過位置を制御できる場合には、その紙葉類100の通過領域はほぼ固定されるため、その通過領域の外側に磁気ノイズ検出専用の感磁部11を配置してもよい。また、数種類の紙葉類100が混在する場合や、紙葉類100が一種類であっても磁気センサヘッド1上の通過領域がばらつく場合には、図示していない他の検出手段やセンサを用いて紙葉類の通過位置を検出し、第一の感磁部111と第二の感磁部112とを判定すればよい。例えば、光学的に紙葉類の通過位置を検出する処理部からの紙葉類の通過位置情報を取得し、その情報に基づいて、磁気センサヘッド1における紙葉類100の通過領域の内側と通過領域の外側とを判定してもよい。また、磁気センサヘッド1の直前に紙葉類100の有無を検出する近接センサを備える。そして、その近接センサが検出した紙葉類100の有無に基づいて、磁気センサヘッド1における紙葉類100の通過領域の内側と通過領域の外側とを判定してもよい。
【0024】
図8は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1周辺の搬送構造の例を示す図である。
図8において、(a)は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の周辺を上面から見た場合の搬送構造の例を示す図である。
また、
図8において、(b)は、第一の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の周辺を正面から見た場合の搬送構造の例を示す図である。
【0025】
この図で示すように、第一の実施形態による磁気検出装置10は、磁気センサヘッド1の周辺に、搬送ローラ16と、搬送ベルト17と、搬送補助ローラ18と、を備えている。
第一の実施形態による磁気検出装置10は、搬送の上流から下流へと搬送ベルト17に挟持され移動する紙幣等の紙葉類100を放出し、磁気センサヘッド1により紙葉類100の磁気印刷情報を読み取り、再び搬送ベルト17に挟持し、紙葉類100を移動させる構造をしている。
図8では、磁気センサヘッド1における感磁部11の感磁面を紙葉類が通過する際の、搬送補助の目的で搬送補助ローラ18を配置し、搬送ベルト17から放たれた紙葉類100を停滞させず、反対側の搬送ベルト17に挟持させる役割を果たしている。同時に、搬送補助ローラ18は、磁気センサヘッド1における感磁部11の感磁面上部での紙葉類100の通過位置を抑制する働きを果たす。この搬送補助ローラ18は、紙葉類100を停滞させず、かつ、磁気センサヘッド1と紙葉類100との距離すなわち検出ギャップを一定以内に制限しながら搬送させる機能を果たしている。
搬送補助ローラ18は、非磁性材料で実現され、搬送ベルト17によるベルト搬送速度と同等の外周速度で回転することで紙葉類100を移動させる補助動力を生み出す。
【0026】
ここで、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30が行う処理の例を説明する。
なお、ここでは、上流に配置された検査装置が光学的に紙葉類の通過位置を検出し、第一の感磁部111と第二の感磁部112は、その検査装置から受信した紙葉類の通過位置情報に基づき決定される場合を例に説明する。
【0027】
まず、ユーザが紙葉類100を所定の箇所にセットする。すると、磁気検出装置10の上流に配置された検査装置が、後述する第三の実施形態で示すような検査や処理を紙葉類100に対して行う。そして、磁気検出装置10の上流に配置された検査装置は、その紙葉類100を磁気検出装置10に搬出する。
【0028】
磁気検出装置10が磁気検出装置10の上流に配置された検査装置から紙葉類100を搬入すると、磁気検出装置10の搬送ベルト17は、紙葉類100を挟持する。そして、例えば
図8について説明したように、搬送ベルト17は、挟持した紙葉類100を放出し、搬送補助ローラ18を介して紙葉類100を停滞させずに反対側の搬送ベルト17へと紙葉類100を搬送する。
【0029】
磁気センサヘッド1の備える感磁部11は、この搬送途中に紙葉類100が磁気センサヘッド1を通過した際の磁気的特性を検出する。そして、磁気センサヘッド1は、磁気センサヘッド1におけるそれぞれの感磁部11が検出した磁気的特性のアナログ信号を信号増幅回路2に出力する。
【0030】
信号増幅回路2は、磁気センサヘッド1からアナログ信号を入力すると、後段のA/D変換回路3の処理で必要となる信号振幅となるように、信号増幅回路2の各増幅器で入力したそれぞれのアナログ信号を増幅する。そして、信号増幅回路2は、増幅したそれぞれのアナログ信号をA/D変換回路3に出力する。
【0031】
A/D変換回路3は、信号増幅回路2から、増幅したアナログ信号を入力すると、入力したそれぞれのアナログ信号を所定のタイミングでサンプリングする。そして、A/D変換回路3は、例えばサンプリングした信号とリファレンス信号とを比較して、サンプリングした信号をデジタル信号に変換する。そして、A/D変換回路3は、変換されたそれぞれのデジタル信号を補償信号生成部4と環境磁気補正部5に出力する。なお、ここでのA/D変換回路3は、アナログ信号からデジタル信号へ必要な精度で変換できる回路であればよく、回路方式は限定しない。
【0032】
補償信号生成部4は、A/D変換回路3からそれぞれの磁気的特性のデジタル信号を入力する。すると、補償信号生成部4は、入力したそれぞれの磁気的特性のデジタル信号に対して時間軸方向に複数サンプルで平均化する「移動平均」処理や「スムージング」処理を行うことで信号の時間に対する急激な変動を緩やかにするローパスフィルタと同等の処理を行う。また、補償信号生成部4は、さらにローパスフィルタと同等の処理を行ったデジタル信号の「平均値」を算出し、記憶部に記録する。
【0033】
また、環境磁気補正部5は、A/D変換回路3からそれぞれの磁気的特性のデジタル信号を入力する。すると、環境磁気補正部5は、入力したそれぞれの磁気的特性のデジタル信号を記憶部に記録する。
【0034】
磁気検出装置10の上流に配置された検査装置は、光学的に紙葉類100の通過位置を検出した結果である通過位置情報を所定のタイミングで補償信号生成部4と環境磁気補正部5に送信する。
【0035】
補償信号生成部4は、検査装置から通過位置情報を受信すると、その通過位置情報に基づいて、各紙葉類100が磁気センサヘッド1のどの領域を通過したかを特定する。そして、補償信号生成部4は、特定した紙葉類100の通過領域の外側に位置する第二の感磁部112を特定する。
【0036】
補償信号生成部4は、第二の感磁部112を特定すると、記憶部に記録したローパスフィルタと同等の処理を行ったデジタル信号のうち、その特定した第二の感磁部112が出力したデータ(第二の出力信号)を記憶部から読み出す。ここで、補償信号生成部4が読み出したデータは、紙葉類100の通過領域の外側に位置する感磁部11が検出した磁気的特性であり、周辺環境に依存する磁気ノイズを示す。そして、補償信号生成部4は、記憶部から読み出した周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデータを環境磁気補正部5に出力する。
【0037】
また、環境磁気補正部5は、検査装置から紙葉類100についての通過位置情報を受信すると、その通過位置情報に基づいて、紙葉類100が磁気センサヘッド1のどの領域を通過したかを特定する。そして、補償信号生成部4は、特定した紙葉類100の通過領域の内側に位置する第一の感磁部111を特定する。
【0038】
環境磁気補正部5は、第一の感磁部111を特定すると、記憶部に記録したデジタル信号のうち、特定した第一の感磁部111が出力したデータ(第一の出力信号)を記憶部から読み出す。ここで、環境磁気補正部5が読み出したデータは、紙葉類100の通過領域の内側に位置する感磁部11が検出した磁気的特性であり、周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性を示す。そして、環境磁気補正部5は、記憶部から読み出した紙葉類100の磁気的特性を示すデータから、補償信号生成部4から入力したあるいは入力する周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデータを減算する。この環境磁気補正部5が行う減算により、第一の感磁部111が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性から第二の感磁部112が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを取り除くことができる。そのため、紙葉類100の磁気的特性が特定できる。
そして、環境磁気補正部5は、その減算した結果を磁気検査判定処理部6に出力する。
【0039】
なお、補償信号生成部4は、紙葉類100が移動する方向に対して直交する方向の一端と他端のそれぞれに対応する第一の感磁部111に隣接する第二の感磁部112を特定する。そして、補償信号生成部4は、その特定したそれぞれの第二の感磁部112が検出した磁気的特性に対応するデジタル信号に対して、それぞれ移動平均の処理や平均値を求める処理を行ってもよい。こうすることで、補償信号生成部4は、磁気センサヘッド1における感磁部11の配列方向に沿っての磁気ノイズの勾配を含めた補償信号を生成することができる。そして、環境磁気補正部5は、補償信号生成部4が生成した磁気センサヘッド1における感磁部11の配列方向に沿っての磁気ノイズの勾配を含めた補償信号を用いて減算する処理を行ってもよい。すなわち、例えば、環境磁気補正部5は、補償信号生成部4が生成した補償信号を磁気センサヘッド1方向の距離に応じて直線近似する。そして、環境磁気補正部5は、各感磁部11はその距離に応じた補償信号を用いて減算処理を行えばよい。
【0040】
図9は、補償信号生成部4と環境磁気補正部5の処理におけるデジタル信号の一例を示す図である。
図9において、(a)は、環境磁気補正部5が特定した第一の感磁部111が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性を示すデジタル信号である。
また、
図9において、(b)は、補償信号生成部4が特定した第二の感磁部112が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデジタル信号である。
また、
図9において、(c)は、補償信号生成部4が特定した第二の感磁部112が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデジタル信号に対してローパスフィルタと同等の処理を行った後のデジタル信号である。
また、
図9において、(d)は、(a)で示した第一の感磁部111が検出した周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性を示すデジタル信号から、(c)で示した周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデジタル信号に対してローパスフィルタと同等の処理を行った後のデジタル信号を減じた信号である。このデジタル信号は、紙葉類100のみの磁気的特性を示している。
【0041】
ここまでが磁気検出装置10が行う処理である。磁気検出装置10がこのような信号処理を行うことで、周辺環境に依存する磁気ノイズを含む第一の感磁部111の検出した信号から第二の感磁部112が検出した磁気ノイズを取り除いた、紙葉類100のみの磁気的特性を特定することができる。
【0042】
次に、磁気検査判定処理部6は、環境磁気補正部5から第一のデジタル信号から磁気ノイズを示すデジタル信号を減算したデジタル信号を入力する。すると、磁気検査判定処理部6は、判定基準レベルメモリ7から予め記録した真偽判定のパラメータを読み出す。そして、磁気検査判定処理部6は、読み出した真偽判定のパラメータと環境磁気補正部5から入力したデジタル信号とを比較し、例えば二乗平均値を求め、その値が所定の範囲に入っている場合に紙葉類100が本物であると判定する。また、磁気検査判定処理部6は、読み出した真偽判定のパラメータと環境磁気補正部5から入力したデジタル信号とを比較し、二乗平均値を求め、その値が所定の範囲に入っていない場合に紙葉類100が偽物であると判定する。
以上が第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30が行う処理である。
なお、磁気検査判定処理部6は、補償信号生成部4が生成した磁気センサヘッド1における感磁部11の配列方向に沿っての磁気ノイズの勾配を含めた補償信号を用いて補正したデータを用いて判定してもよい。
【0043】
なお、第一の実施形態による磁気検出装置10において、第二の感磁部112を既知の技術で用いられている温度補正のためのセンサとして使用してもよい。
【0044】
以上のように、第一の実施形態による磁気検出装置10は、紙葉類100が通過領域に位置する磁気センサヘッド1における第一の感磁部111が検出した磁気検出結果(第一の出力信号)と、紙葉類100が通過領域の外側に位置する磁気センサヘッド1における第二の感磁部112が検出した磁気検出結果(第二の出力信号)とに基づいて、周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性を示すデジタル信号から周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデジタル信号を減算する。
こうすることで、第一の実施形態による磁気検出装置10は、紙葉類100のみの磁気的特性を特定でき、より高精度に検出することができる。
また、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30は、磁気検出装置10により高精度で検出した紙葉類100の磁気的特性に基づいて、より高精度な磁気的特性と比較することができ、真偽の判定精度を高めることができる。
【0045】
<第二の実施形態>
第二の実施形態による磁気検出装置10の構成は、第一の実施形態と同様の構成である。
また、第二の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30は、第一の実施形態と同様の構成である。
ただし、第二の実施形態による磁気検出装置10において、磁気センサヘッド1は磁気シールドされている。
【0046】
図10は、第二の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1周辺の搬送構造の例を示す図である。
図10において、(a)は、第二の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の周辺を上面から見た場合の搬送構造の例を示す図である。
また、
図10において、(b)は、第二の実施形態による磁気検出装置10の磁気センサヘッド1の周辺を側面から見た場合の搬送構造の例を示す図である。
【0047】
この図で示すように、第二の実施形態による磁気検出装置10は、第一の実施形態による磁気検出装置10の構成に加え、強磁性体材料を用いた磁気シールド構造体であるシールドカバー19を備えている。
【0048】
磁気シールド19は、磁気センサヘッド1の感磁部11が磁気的特性を検出する際に周辺磁界環境の影響を抑制するために、感磁部11の感磁面方向の1面を除く側面および背面を含む5面を鉄等の透磁率の高い材料で囲む構造である。なお、感磁部11の感磁面は、検査対象の紙幣等の紙葉類100が通過する面を解放にして、紙葉類100の通過搬送路方向に設置する。
【0049】
また、磁気シールド構造19は、搬送補助ローラ18を含め囲い込む構造である。そのため、磁気センサヘッド1の背面などから伝達されるベアリングなどの回転駆動に起因する磁気ノイズによる磁気的特性の検出への影響を抑制することができる。
【0050】
また、磁気シールド構造19は、近傍の磁界発生源の狭域磁界(狭域の磁力線)をシールド材内部に引き込み、磁気シールド構造19の内部の磁気センサヘッド1における感磁部11の感磁面やバイアス磁界領域に侵入する狭域の磁力線の影響を低減する。また、磁気シールド構造19は、磁気センサヘッド1の感磁部11で集中している磁力線分布を均一化する効果もあり、感磁部11毎に影響差が出るような周辺磁界環境の場合でも、各感磁部11に均等に磁界影響が及ぶように緩和させる働きを有している。
【0051】
また、磁気シールド構造19は、近傍狭域磁界による感磁部11の磁気的特性の検出への影響を低減すると共に、均一化することができる。同様に、磁気シールド構造19は、装置内の磁界源であるモータやトランス等の強磁界による感磁部11の磁気的特性の検出への影響も減衰すると共に、均一化させることができる。
【0052】
従って、第一の実施形態と同様の磁気検出装置10の機能部に加え、更にシールドカバー19を備える第二の実施形態による磁気検出装置10では、磁気センサヘッド1の周囲をシールドカバー19でシールドすることで、磁気センサヘッド1周辺での狭域の磁界による感磁部11の磁気的特性の検出への影響を減衰緩和する。また、磁気センサヘッド1の周囲をシールドカバー19でシールドすることで、磁気センサヘッド1の遠方にある広域で強度の磁界による感磁部11の磁気的特性の検出への影響を減衰緩和し、環境磁界による各感磁部11への影響を均等にすることができる。
こうすることで、第一の実施形態による磁気検出装置10は、磁気センサヘッド1の感磁部11の検出精度が向上し、取得信号品質である信号S/N比を向上させることが可能となるため、紙葉類100のみの磁気的特性を特定でき、より高精度に検出することができる。
また、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30は、磁気検出装置10により高精度で検出した紙葉類100の磁気的特性に基づいて、より高精度な磁気的特性と比較することができ、真偽の判定精度を高めることができる。
【0053】
<第三の実施形態>
図11は、第三の実施形態による紙葉類処理装置20の構成を示す図である。
第三の実施形態において、紙葉類100として紙幣を例に説明する。
第三の実施形態による紙葉類処理装置20は、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30(磁気センサヘッド1、信号増幅回路2、A/D変換回路3、補償信号生成部4、環境磁気補正部5、磁気検査判定処理部6、判定基準レベルメモリ7)と、検査装置21〜24と、検査装置総合判定処理部25と、区分制御部26と、紙幣処理機制御メイン27と、を備える。
【0054】
ここで、第三の実施形態による紙葉類処理装置20の備える検査装置21〜24は、紙葉類100の状態に応じて真偽/廃棄/再流通/排除を区分するための検査を実施する装置である。例えば、検査装置21〜24は、紙葉類100の切れを検出する切れ検出装置、紙葉類100の厚みを検出する厚み検査装置、紙葉類100の形状や透かしを検出する形状・透かし装置、紙葉類100の光学パターンを判定する光学パターン判定装置などである。
また、検査装置総合判定処理部25は、検査装置21〜24および磁気検出装置10の検査結果に基づいて、紙葉類100の真偽や劣化の程度を特定する処理部である。また、検査装置総合判定処理部25は、検査装置21〜24や磁気検出装置10における紙葉類100の搬送を制御する処理部である。この検査装置総合判定処理部25が行う制御により、磁気検出装置10は、紙葉類100が磁気センサヘッド1のどの位置を通過するかがわかる。そして、検査装置総合判定処理部25による制御が高精度の場合には、磁気検出装置10は、第一の感磁部111と第二の感磁部112とを事前に特定できる。
また、区分制御部26は、検査装置総合判定処理部25が特定した真偽や劣化の程度に基づいて、廃棄/再流通/排除の何れかに区分する処理部である。
また、紙幣処理機制御メイン27は、区分制御部26が区分した廃棄、再流通、排除の処理を実行する処理部である。
【0055】
ここで、第三の実施形態による紙葉類処理装置20の処理の例を説明する。
まず、ユーザが紙葉類100を所定の箇所にセットする。その後、装置を稼働すると、紙葉類100を1枚ずつ取出し搬送し、検査装置21、検査装置22、検査装置23、磁気検出装置10、検査装置24の順番で紙葉類100が通過し、それぞれの検査処理を実施する。
【0056】
検査装置21では、紙葉類100の切れを検査する。
検査装置21は、例えば、紙葉類100が搬送される搬送路上にローラ等の機構を備え、この機構により紙葉類100の端部に存在する切れ目を開かせる。そして、検査装置21は、開かれた切れ目を通過する光によって切れ目の有無を検査する。この切れ目検査は、再流通に適さない紙葉類100を検出するためのものである。ここで、紙葉類100に切れ目が検出された場合、検査装置総合判定処理部25に報知する。
【0057】
検査装置22では、紙葉類100の厚さを検査する。
検査装置22は、例えば、紙葉類100が搬送される搬送路上に厚み検知センサなどで紙葉類100の厚さを検出する機構を備える。そして、検査装置22は、検出した厚さから所定の厚さの範囲内にあるか否かを判定する。
この検査は、紙葉類100の厚さが所定以上である場合は2枚以上の紙葉類が重なっていると判断し、その結果を検査装置総合判定処理部25に報知する。
【0058】
検査装置23では、紙葉類100の形状や透かしを検査する。
検査装置23は、例えば、紙葉類100が搬送される搬送路上において紙葉類100の透過光画像の特徴を検出する機構を備える。そして、検査装置23は、検出した特徴と本物の特徴とを比較してその結果を検査装置総合判定処理部25に報知する。
検査装置24では光学パターンを検査する。
検査装置24は、例えば、紙葉類100が搬送される搬送路上において紙葉類100の反射光画像の特徴を検出する機構を備える。そして、検査装置24は、検出した特徴と本物の特徴とを比較してその結果を検査装置総合判定処理部25に報知する。
【0059】
磁気検出装置10では、紙葉類100の磁気的特性の検出により真偽を検査する。
ここで磁気検出装置10を備える真偽判定装置30が行う真偽の判定は、例えば、第一の実施形態で示した処理による真偽の判定である。そのため、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、磁気検出装置10を備える真偽判定装置30が判定した結果は、検査装置総合判定処理部25に報知する。
検査装置総合判定処理部25は、検査装置21〜24及び真偽判定装置30から報知された結果に基づいて、搬送される紙葉類100が真券であるか/廃棄すべきか/再流通すべきか/排除すべきかを総合的に判定する。検査装置総合判定処理部25は、この判定結果を区分制御部26に報知する。
区分制御部26は、その報知情報に基づいて、紙葉類100の区分先を決定する。
【0060】
以上のように、第三の実施形態による紙葉類処理装置20は、紙葉類100に対する廃棄/再流通/排除のための検査の1つとして、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30による検査を実施する。
こうすることで、第三の実施形態による紙葉類処理装置20の磁気検出装置10は、紙葉類100の磁気を高精度に検出することができる。
そのため、第三の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30を備える紙葉類処理装置20は、高精度で検出した紙葉類100の磁気的特性に基づいて、高精度な磁気的特性と比較することができ、真偽の判定精度を高めることができる。
なお、紙葉類処理装置20としては、このような紙葉類100に対する廃棄/再流通/排除するものに限定されず、少なくとも紙葉類100の磁気情報に基づいて真偽を判定して区分できるものであればよい。
【0061】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の磁気検出装置10によれば、紙葉類100が通過領域に位置する磁気センサヘッド1における第一の感磁部111が検出した磁気検出結果(第一の出力信号)と、紙葉類100が通過領域の外側に位置する磁気センサヘッド1における第二の感磁部112が検出した磁気検出結果(第二の出力信号)とに基づいて、周辺環境に依存する磁気ノイズを含んだ紙葉類100の磁気的特性を示すデジタル信号から周辺環境に依存する磁気ノイズを示すデジタル信号を減算する。
こうすることで、第一の実施形態による磁気検出装置10は、紙葉類100のみの磁気的特性を特定でき、より高精度に検出することができる。
また、第一の実施形態による磁気検出装置10を備える真偽判定装置30は、磁気検出装置10により高精度で検出した紙葉類100の磁気的特性に基づいて、より高精度な磁気的特性と比較することができ、真偽の判定精度を高めることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。