特許第6226656号(P6226656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6226656単式蒸留アルコール含有液を含むアルコール飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226656
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】単式蒸留アルコール含有液を含むアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   C12G3/04
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-190411(P2013-190411)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-53920(P2015-53920A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年3月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大場 恵介
(72)【発明者】
【氏名】中村 繁幸
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/153118(WO,A1)
【文献】 特開2007−075059(JP,A)
【文献】 特開昭63−267244(JP,A)
【文献】 特開2010−136658(JP,A)
【文献】 食品と科学,2013年3月,第55巻,第4号,第72-81頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/00−3/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦を原料として用いるアルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留して得られた焼酎である単式蒸留アルコール含有液と、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた焼酎である連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを含む、非炭酸アルコール飲料であって、当該柑橘類果汁が、レモン果汁及びユズ果汁からなる群から選択される一種以上であり、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%であり、当該飲料の酸度が0.040〜0.400w/w%であり、当該飲料のアルコール度数が8〜30v/v%である、前記飲料。
【請求項2】
麦を原料として用いるアルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留して得られた焼酎である単式蒸留アルコール含有液と、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた焼酎である連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを含む、非炭酸アルコール飲料であって、当該柑橘類果汁が、レモン果汁及びユズ果汁からなる群から選択される一種以上であり、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%であり、当該飲料中の当該柑橘類果汁の含有量が、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%であり、当該飲料のアルコール度数が8〜30v/v%である、前記飲料。
【請求項3】
更にフルクトースを含み、当該フルクトースの、当該飲料中の糖類の総含有量に対する割合が、50w/w%以下である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
更にオリゴ糖を含み、当該飲料中の当該オリゴ糖の含有量が0.1〜30w/v%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
麦を原料として用いるアルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留して得られた焼酎である単式蒸留アルコール含有液を含む非炭酸アルコール飲料の風味を改善する方法であって、当該飲料に、当該単式蒸留アルコール含有液と、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた焼酎である連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを配合する工程、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%となるように、それらアルコール含有液の量を調整する工程、及び当該飲料の酸度を0.040〜0.400w/w%に調整する工程を含み、当該飲料のアルコール度数が8〜30v/v%であり、当該柑橘類果汁が、レモン果汁及びユズ果汁からなる群から選択される一種以上である、前記方法。
【請求項6】
麦を原料として用いるアルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留して得られた焼酎である単式蒸留アルコール含有液を含む非炭酸アルコール飲料の風味を改善する方法であって、当該飲料に、当該単式蒸留アルコール含有液と、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた焼酎である連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを配合する工程、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%となるように、それらアルコール含有液の量を調整する工程、及び当該飲料中の当該柑橘類果汁の含有量を、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%に調整する工程を含み、当該飲料のアルコール度数が8〜30v/v%であり、当該柑橘類果汁が、レモン果汁及びユズ果汁からなる群から選択される一種以上である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単式蒸留アルコール含有液を含み、優れた風味を有するアルコール飲料に関する。具体的には、本発明は、単式蒸留アルコール含有液に起因する独特の臭み及びクセを改善し、優れた風味を有するアルコール飲料を提供することを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留すると、単式蒸留アルコール含有液が得られる。この液の例としては、本格焼酎とも称される乙類焼酎などを挙げることができる。乙類焼酎に代表される単式蒸留アルコール含有液には、独特の臭みやクセがあることが知られている(特許文献1及び2)。このため、他の酒類と比較すると、必ずしも気軽に飲用できるものではなかった。特に、若者が進んで飲用するものであるとは言い難かった。
【0003】
実際、チューハイなどのRTDと呼ばれる酒類の多くにおいて用いられるアルコールの多くは、甲類焼酎のように、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた連続式蒸留アルコール含有液である。
【0004】
単式蒸留アルコール含有液と異なり、甲類焼酎のような連続式蒸留アルコール含有液には、独特の臭みやクセがあまりないことが知られている。一方で、連続式蒸留アルコール含有液は、蒸留が複数回行われて製造されるため、原料本来の風味が失われやすく、その味覚の個性も薄い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−257471号公報
【特許文献2】特開2004−105053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、単式蒸留アルコール含有液を利用して、優れた風味を有するアルコール飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に鑑みて鋭意研究をした。その結果、本発明者らは、連続式蒸留アルコール含有液と単式蒸留アルコール含有液とを特定比率で組み合わせてアルコール飲料に配合することが重要であることを見出した。さらに、そのことに加えて、アルコール飲料に柑橘類果汁を配合し、そしてその果汁含有量を特定範囲とするか、又は、アルコール飲料の酸度を特定範囲とすることが重要であることを見出した。
【0008】
本発明は、以下のものに関するが、これらのものに限定されない。
1.アルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留して得られた単式蒸留アルコール含有液(以下、単に「単式蒸留アルコール含有液」とも記載する)と、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を連続式蒸留して得られた連続式蒸留アルコール含有液(以下、単に「連続式蒸留アルコール含有液」とも記載する)と、柑橘類果汁とを含む、非炭酸アルコール飲料であって、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%であり、当該飲料の酸度が0.040〜0.400w/w%である、飲料。
2.単式蒸留アルコール含有液と、連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを含む、非炭酸アルコール飲料であって、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%であり、当該飲料中の当該柑橘類果汁の含有量が、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%である、飲料。
2A.さらに、当該飲料の酸度が0.040〜0.400w/w%である、2に記載の飲料。
3.更にフルクトースを含み、当該フルクトースの、当該飲料中の糖類の総含有量に対する割合が、50w/w%以下である、1〜2Aのいずれか1項に記載の飲料。
4.当該柑橘類果汁が、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、ミカン果汁、ハッサク果汁、イヨカン果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、カボス果汁、スダチ果汁、レモン果汁、及びユズ果汁からなる群から選択される少なくとも1種である、1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
5.更にオリゴ糖を含み、当該飲料中の当該オリゴ糖の含有量が0.1〜30w/v%である、1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
6.アルコール度数が8〜30v/v%である、1〜5のいずれか1項に記載の飲料。
7.単式蒸留アルコール含有液を含む非炭酸アルコール飲料の風味を改善する方法であって、当該飲料に、単式蒸留アルコール含有液と、連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを配合する工程、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%となるように、それらアルコール含有液の量を調整する工程、及び当該飲料の酸度を0.040〜0.400w/w%に調整する工程を含む、方法。
8.単式蒸留アルコール含有液を含む非炭酸アルコール飲料の風味を改善する方法であって、当該飲料に、単式蒸留アルコール含有液と、連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを配合する工程、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%となるように、それらアルコール含有液の量を調整する工程、及び当該飲料中の当該柑橘類果汁の含有量を、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%に調整する工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、単式蒸留アルコール含有液を含有し、従来にない優れた風味を有するアルコール飲料を提供することができる。具体的には、単式蒸留アルコール含有液に特有の臭みやクセを低減しつつ、お酒の豊かな味わいと、柑橘類の豊かな風味を有し、食事によく合う飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアルコール飲料は、単式蒸留アルコール含有液と、連続式蒸留アルコール含有液とを特定比率で含有し、さらに柑橘類果汁を含む、非炭酸アルコール飲料であり、そして特定の酸度を有するか、又は特定量の柑橘類果汁を含有する。
【0011】
(単式蒸留アルコール含有液および連続式蒸留アルコール含有液)
本明細書における「単式蒸留アルコール含有液」及び「連続式蒸留アルコール含有液」は、それぞれ、アルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留及び連続式蒸留して得られる液をいう。
【0012】
アルコール発酵の原料は特に限定されないが、米、麦、サツマイモ、そば、ジャガイモ、とうもろこし、あわ、ひえ、きびおよびこうりゃんからなる群から選択される穀類;ナツメヤシ、ブドウ、デーツおよびアガベからなる群から選択される果実;砂糖、糖蜜、蜂蜜およびフルクトースからなる群から選択される含糖質物などを使用することができる。単式蒸留アルコール含有液で使用する、好ましい原料は、米、麦、サツマイモである。本発明においてアルコール含有液を製造するためには、これらの原料の内の一種類を単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
発酵原料には、必要に応じて麹を加えて糖化を行い、その後に酵母を加えてアルコール発酵を行う。用いる麹や酵母の種類、アルコール発酵方法、熟成方法については、多様なものが知られているが、本発明では、それらは特に限定されない。蒸留方法も、単式蒸留法又は連続式蒸留法を採用すること以外は、特に限定されない。
【0014】
上記のアルコール含有液は、典型的には、焼酎、ウィスキー、ブランデー、スピリッツである。本明細書における「焼酎」には、2006年5月1日改正の酒税法上で定義される焼酎(これは、エキス分の量とアルコール度数が定められている)に加えて、アルコール度数が高いことを除いて酒税法上の焼酎と同じである原料用アルコール、スピリッツや、エキス分の高いことを除いて酒税法上の焼酎と同じである他のものも含まれることとする。
【0015】
本発明において用いられる単式蒸留アルコール含有液、及び連続式蒸留アルコール含有液のアルコール度数は、特に限定されない。本願発明においては、アルコール度数が45度を超える酒税法上の原料用アルコールや、アルコール度数が36度以上45以下であるスピリッツも、アルコール含有液として用いることができる。しかしながら、好ましくは、単式蒸留アルコール含有液のアルコール度数は45度(v/v%、以下、度数は「v/v%」を意味する)以下であり、連続式蒸留アルコール含有液のアルコール度数は36度未満である。
【0016】
本明細書においては、アルコール度数(アルコール分の含有量)は、振動式密度計によって測定するものとする。具体的には、アルコール含有液やアルコール飲料から濾過又は超音波によって、微量含まれている(含まれていない場合もある)炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求める。
【0017】
本発明においては、上記の二種類のアルコール含有液を特定の比率で用いることが重要である。具体的には、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%であることが重要である。当該割合は、好ましくは5〜60v/v%、より好ましくは10〜50v/v%である。
【0018】
本明細書において、「含有アルコール量換算」とは、アルコール含有液中に含まれるアルコールの容量に基づいて計算することを意味する。例えば、アルコール度数が1度の単式蒸留アルコール含有液を1mlと、アルコール度数が3度の単式蒸留アルコール含有液を1mlと混合した場合に、Aに含まれるアルコール容量は、1ml×1/100=0.01mlであり、Bに含まれるアルコール容量は、1ml×3/100=0.03mlである。これらから、含有アルコール容量に換算したA/(A+B)×100は、0.01/(0.01+0.03)×100=25%となる。
【0019】
(柑橘類果汁)
本発明のアルコール飲料に用いる柑橘類果汁は、特に限定されないが、例えば、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、ミカン果汁(ウンシュウミカン及びナツミカンを含む)、ハッサク果汁、イヨカン果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、カボス果汁、スダチ果汁、レモン果汁、及びユズ果汁等を挙げることができる。これらの柑橘類果汁の内の1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
飲料に用いる果汁の形態は限定されず、例えば、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、あるいは濃縮した濃縮果汁の形態であってもよい。
【0021】
本発明のアルコール飲料における柑橘類果汁の含有量は、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%であることが重要である。当該含有量は、好ましくは0.7〜8.0w/v%であり、より好ましくは3.0〜6.0w/v%である。
【0022】
本発明では、アルコール飲料中のストレート果汁換算での果汁含有量を計算するに当たり、アルコール飲料中のアルコール濃度に影響されないように、100mLのアルコール飲料中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0023】
ストレート果汁換算の果汁含有量(w/v%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL×100
アルコール飲料中の果汁含有量の計算方法を、以下に例を挙げてさらに具体的に示す。
【0024】
まず、アルコール飲料中に含有させる果汁の濃縮倍率を求める。ここでいう「濃縮倍率」とは、果実を搾汁して得られるそのままの果汁(以下「ストレート果汁」という)を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率のことをいう。ストレート果汁の糖用屈折計示度あるいは酸度の値は、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)によって、各果実に固有の基準値が定められている(糖用屈折計示度の基準(Bx)を表1に、酸度の基準(%)を表2に示す)。従って、試料果汁の糖用屈折計示度あるいは酸度を測定し、その果実に固有の糖用屈折計示度あるいは酸度の基準値で割れば、果汁の濃縮倍率を求めることができる。
【0025】
例えば、JAS規格によればオレンジの基準Bxは11度であるから、Bx55度のオレンジ果汁は、5倍濃縮のオレンジ果汁となる。
【0026】
このような5倍濃縮オレンジ果汁を、アルコール飲料100mL中に2g配合した場合、このアルコール飲料における果汁含有量は、2g×5倍濃縮/100mLアルコール飲料×100=10w/v%となる。
【0027】
同様にして、例えば、酸度31.5%のレモン果汁の場合は、表2のレモンの基準酸度4.5%から、7倍濃縮のレモン果汁であることが分かる。このような7倍濃縮レモン果汁を、アルコール飲料100mL中に1g配合した場合、このアルコール飲料における果汁含有量は、1g×7倍濃縮/100mLアルコール飲料×100=7w/v%となる。
【0028】
尚、ユズ果汁の濃縮度を求めるためには、酸度5.1を基準値として用い、スダチ果汁の濃縮度を求めるためには、酸度3.5を基準値として用いる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
(酸度)
本発明においては、アルコール飲料の酸度を0.040〜0.400w/w%とすることが重要である。当該酸度は、好ましくは、0.044〜0.363w/w%、より好ましくは0.133〜0.269w/w%である。
【0032】
ここで、酸度とはクエン酸相当酸度、すなわち含まれる全ての酸をクエン酸と仮定した場合のクエン酸の重量パーセント濃度のことをいい、例えば、エキス10gを0.1規定の水酸化ナトリウムを用いてpH=8となるまで滴定し、その滴定量から算出することができる。
【0033】
酸度の調整は、例えば、飲料中に含まれる柑橘類果汁の含有量を調節することにより行うことができる。或いは、クエン酸等の酸を少量添加してもよい。
【0034】
(糖類等の糖質)
本発明の飲料は、糖類を含んでもよい。本明細書において用いる「糖類」とは、単糖及び二糖を意味する。本明細書における「単糖類」とは、当該技術分野で用いられる通常の意味を有する。本発明に用いられる単糖類には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の飲料には、これらの単糖類のいずれか一つだけが単独で含まれていてもよいし、二以上の単糖類が含まれていてもよい。本明細書における「二糖類」とは、2分子及の単糖がグリコシド結合した糖類を意味する。本発明に用いられる二糖類には、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオースなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明の飲料には、これらの二糖類のいずれか一つだけが単独で含まれていてもよいし、二以上の二糖類が含まれていてもよい。
【0035】
本発明の飲料は、フルクトースを含んでもよい。当該フルクトースの、当該飲料中の糖類の総含有量に対する割合は、好ましくは、50w/w%以下であり、より好ましくは1〜50w/w%、より好ましくは1〜40w/w%である。このような条件は、本発明のアルコール飲料の香味によい効果をもたらし得る。
【0036】
また、本発明の飲料は、単糖が3個以上結合した糖類を含んでもよい。特に、単糖が3個以上結合し、分子量が300〜3000程度の多糖である「オリゴ糖」を含んでも良い。オリゴ糖は、好ましくは、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖である。本発明におけるオリゴ糖の含有量は、好ましくは、0.1〜30w/v%である。
【0037】
これらの糖質の量の測定方法としては、HPLC等の公知のいずれかの方法を採用すればよい。
【0038】
(pH)
本発明のアルコール飲料のpHの上限及び下限は特に限定されないが、その下限値は、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.2以上であり、その上限値は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下である。pHが高すぎると微生物の繁殖を抑制することが難しくなり、pHが低すぎると香味の劣化が進むことがある。
【0039】
(非炭酸アルコール飲料)
本発明におけるアルコール飲料とは、アルコール、主にエチルアルコールを含有する飲料である。本発明においてはアルコール含有量に特に制限はないが、アルコール度数は典型的には8〜30v/v%である。
【0040】
本発明の飲料は、非炭酸アルコール飲料である。当該非炭酸アルコール飲料は、実質的に炭酸ガスを含まない。しかしながら、本発明の飲料の範囲には、ガス圧の上昇を検知できない程度のごく微量の炭酸ガスを含有する飲料は含まれる。
【0041】
(その他の成分)
本発明におけるアルコール飲料においては、本発明の性質を損なわない限り、他の成分を用いることができる。例えば、アルコール飲料に通常配合する、香料、糖類、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0042】
(容器詰飲料)
本発明のアルコール飲料は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。
【0043】
(アルコール飲料の製造及び風味の改善)
本発明は、別の側面では、単式蒸留アルコール含有液を含む非炭酸アルコール飲料の風味を改善する方法である。このような方法は、アルコール飲料に関して上記した原料や方法を利用して実施することができる。
【0044】
当該方法は、当該飲料に、単式蒸留アルコール含有液と、連続式蒸留アルコール含有液と、柑橘類果汁とを配合する工程、当該単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、Aと当該連続式蒸留アルコール含有液の量(B)との合計に対する割合(A/(A+B)×100)が、含有アルコール量換算で4〜62v/v%となるように、それらアルコール含有液の量を調整する工程、及び当該飲料の酸度を0.040〜0.400w/w%に調整する工程を含む。当該方法は、上記の酸度調整工程に代えて、又は追加的に、当該飲料中の当該柑橘類果汁の含有量を、ストレート果汁換算で0.8〜9.0w/v%に調整する工程を含む。
【0045】
上記二種類のアルコール含有液の割合、酸度、果汁含有量の好ましい範囲、及びその調整方法等は、アルコール飲料に関して上記した通りである。
【0046】
上記の工程の順序は限定されず、また、それらの工程の2以上を同時に行ってもよい。最終的に目的となる数値範囲が達成されればよい。
【0047】
上記の方法は、そのまま、アルコール飲料の製造にも利用できる。従って、別の側面において、本発明は、上記の工程を含む、アルコール飲料の製造方法である。
【0048】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値〜上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1〜2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例において用いられる「単式蒸留アルコール含有液の割合」との記載は、別途断らない限り、単式蒸留アルコール含有液の量(A)の、単式蒸留アルコール含有液と連続式蒸留アルコール含有液の量の合計(A+B)に対する、含有アルコール量換算での割合(A/(A+B)×100)を意味する。
【0051】
実施例1 単式蒸留アルコール含有液の割合の影響
柑橘類果汁としてレモン果汁を一定量用い、果汁含有量と酸度を一定に維持して、単式蒸留アルコール含有液の割合を含有アルコール量換算で0〜100v/v%の間で変化させ、アルコール飲料の風味を評価した。
【0052】
以下の手順で、表3の上段に示した配合でアルコール飲料を得た。
【0053】
先ず、連続式蒸留アルコール含有液(焼酎甲類)と単式蒸留アルコール(焼酎乙類)とを混合した。次いで、この混合物に、水と共に、香料、酸味料、糖類、オリゴ糖を加えて混合した。さらに、果汁と水を混合し、アルコール飲料を製造した。得られたアルコール飲料は、それぞれ瓶詰めした。
【0054】
使用したレモン果汁の酸度は32.0であり、アルコール飲料中の当該果汁の含有量をストレート果汁換算すると、3.47w/v%であった。アルコール飲料の酸度は、0.156w/w%であった。
【0055】
用いられた連続式蒸留アルコール含有液は焼酎甲類(糖蜜)(アルコール度数35%)であり、用いられた単式蒸留アルコール含有液は焼酎乙類(麦)(アルコール度数44%)であった。単式蒸留アルコール含有液の割合は、表3の上段に含有アルコール量換算で「乙類比率」として示されている。
【0056】
飲料中の、フルクトースの糖類に対する比率は10〜40w/w%であり、オリゴ糖の含有量は0.1〜10w/v%であり、アルコール度数は12.3v/v%であった。
【0057】
得られたアルコール飲料に対して、3名のパネラーによる官能評価を行った。採点方法と得点(及び平均値)は表3下段に示されている通りである。それらの平均値に基づいて、飲料の風味の評価を、×、○、◎を用いて、表3の下段に示した。
【0058】
【表3】
【0059】
単式蒸留アルコール含有液の割合が含有アルコール量換算で5〜60v/v%、特に10〜50v/v%である場合において優れた風味を有する飲料が得られた。
【0060】
実施例2 酸度及び果汁含有量の影響
単式蒸留アルコール含有液の割合を、実施例1において優れた効果が得られた含有アルコール量換算で10〜30v/v%の間の特定の値に固定し、柑橘類(レモン)果汁の含有量を0〜10w/v%(ストレート果汁換算)で、飲料の酸度を0〜0.452w/w%の間で変動させ、アルコール飲料の風味を評価した。飲料の製造は、実施例1に記載の方法に準じて行った。
【0061】
配合を表4の上段に示す。飲料中の、フルクトースの糖類に対する比率は10〜40w/w%であり、オリゴ糖の含有量は0〜30w/v%であり、アルコール度数は12.3v/v%であった。
【0062】
得られたアルコール飲料に対する官能評価を、実施例1と同様に行った。採点方法と得点(及び平均値)等の評価結果は表4下段に示されている通りである。
【0063】
【表4】
【0064】
柑橘類果汁の含有量(ストレート果汁換算)が1〜8w/v%、特に3〜6w/v%である場合に、優れた風味を有する飲料が得られた。また、飲料の酸度が0.044〜0.360w/w%である場合に、特に、0.133〜0.269w/w%である場合に優れた風味を有する飲料が得られた。
【0065】
実施例3 種々の条件におけるアルコール飲料の風味
【0066】
レモン果汁を用いて以下の条件でアルコール飲料を製造した。飲料製造は、実施例1に準じて行った。
【0067】
単式蒸留アルコール含有液の割合(含有アルコール量換算):5v/v%、50v/v%、60v/v%
果汁含有量(ストレート果汁換算):1w/v%、8w/v%
酸度:0.044w/w%、0.360w/w%
配合を表5上段に示す。飲料中の、フルクトースの糖類に対する比率は10〜40w/w%であり、オリゴ糖の含有量は0.1〜25w/v%であり、アルコール度数は12.3v/v%であった。表5中、単式蒸留アルコール含有液の割合は含有アルコール量換算で「乙類・・・%」と記載されている。
【0068】
得られたアルコール飲料に対する官能評価を、実施例1と同様に行った。採点方法と得点(及び平均値)等の評価結果は表5下段に示されている通りである。
【0069】
【表5】
【0070】
単式蒸留アルコール含有液の割合が含有アルコール量換算で5〜60v/v%であり、柑橘類果汁の含有量(ストレート果汁換算)が1〜8w/v%である場合の全範囲で、優れた風味を有する飲料が得られた。また、単式蒸留アルコール含有液の割合が含有アルコール量換算で5〜60v/v%であり、飲料の酸度が0.044〜0.360w/w%である場合の全範囲で、優れた風味を有する飲料が得られた。
【0071】
実施例4 ユズ果汁入りアルコール飲料
ユズ果汁を用いて、以下の条件でアルコール飲料を製造した。飲料製造は、実施例1に準じて行った。尚、ユズ果汁の基準酸度は5.1とした。
【0072】
単式蒸留アルコール含有液の割合(含有アルコール量換算):5v/v%、60v/v%
果汁含有量(ストレート果汁換算):0.7w/v%、6w/v%
酸度:0.044w/w%、0.363w/w%
配合を表6上段に示す。飲料中の、フルクトースの糖類に対する比率は10〜40w/w%であり、オリゴ糖の含有量は0.1〜25w/v%であり、アルコール度数は12.3v/v%であった。
【0073】
得られたアルコール飲料に対する官能評価を、実施例1と同様に行った。採点方法と得点(及び平均値)等の評価結果は表6下段に示されている通りである。
【0074】
【表6】
【0075】
ユズ果汁を用いた場合にも、レモン果汁を用いた場合と類似の結果が得られた。具体的には、単式蒸留アルコール含有液の割合が含有アルコール量換算で5〜60v/v%であり、柑橘類果汁の含有量(ストレート果汁換算)が0.9〜7w/v%である場合の全範囲で、優れた風味を有する飲料が得られた。また、単式蒸留アルコール含有液の割合が含有アルコール量換算で5〜60v/v%であり、飲料の酸度が0.044〜0.363w/w%である場合の全範囲で、優れた風味を有する飲料が得られた。