(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、前記演算された合成静電容量と、予め求められた前記合成静電容量と前記プロセス条件との関係と、から前記プラズマ処理におけるプロセス条件を演算する請求項1記載のプラズマ処理装置。
載置部に被処理物を載置して、大気圧よりも減圧された雰囲気においてプラズマを発生させ、前記プラズマに向けて供給されたプロセスガスを励起させてプラズマ生成物を生成し、前記プラズマ生成物を用いて前記載置部に載置された被処理物に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、
前記載置部は凸部を有し、前記載置部が前記被処理物を載置する工程において、前記被処理物の載置側に設けられた凹部に前記凸部が入るように前記被処理物を載置し、
前記載置部の寸法に関する情報、および前記被処理物の寸法に関する情報の少なくともいずれかから、前記載置部に前記被処理物を載置した状態の、前記被処理領域における前記被処理物の静電容量を含む合成静電容量を求め、前記求められた合成静電容量に基づいて、前記プラズマ処理におけるプロセス条件を求める工程と、
前記求められたプロセス条件に基づいて、前記プラズマ処理を行う工程と、
を備えたプラズマ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
まず、被処理物の載置側の形状寸法によるプラズマ処理への影響について例示をする。
図1は、被処理物の載置側の形状寸法によるプラズマ処理への影響について例示をするための模式断面図である。
【0010】
図1に示すように、載置部101には被処理物100の周縁部分を支持する凸部101aが設けられ、凸部101aの上面に被処理物100が載置されるようになっている。そして、凸部101aの上面に被処理物100が載置されることで、凸部101aに支持された部分において被処理物100の載置側と載置部101の表面101bとの間に凸部101aの高さ寸法L1だけ隙間が形成されるようになっている。
また、被処理物100の載置側の中央部分には凹部100aが設けられている。そのため、凸部101aの上面に被処理物100が載置されることで、凹部100aが位置する部分において被処理物100の載置側と載置部101の表面101bとの間に凹部100aの高さ寸法だけ長くなる寸法L2の隙間が形成されることになる。
【0011】
ここで、プラズマ処理において被処理物100の加熱あるいは冷却が行われる場合がある。この様な加熱や冷却は載置部101に設けられた図示しない加熱装置や冷却装置により行われる。ところが、載置台101と被処理物100との間に隙間が設けられていることやプラズマ処理が減圧環境下で行われることにより、熱伝導は主に輻射によるものとなる。そのため、輻射が行われる載置部101の表面101bと被処理物100の載置側との間の寸法が長くなればその分熱伝導が悪くなることになる。
【0012】
図2は、被処理物100の周縁部分の温度上昇と、被処理物100の凹部100aが設けられた部分の温度上昇とを例示するための模式グラフ図である。
なお、
図2中のAは被処理物100の周縁部分の温度上昇を表し、Bは被処理物100の凹部100aが設けられた部分の温度上昇を表している。
図2中のAから分かるように、表面101bとの間の寸法が短い周縁部分においては温度が上昇するまでの時間が短く、到達温度も高くなる。
一方、
図2中のBから分かるように、表面101bとの間の寸法が長い凹部100aが設けられた部分においては温度が上昇するまでの時間が長く、到達温度も低くなる。
このことは、被処理物100の周縁部分と、被処理物100の凹部100aが設けられた部分とで温度が異なり被処理物100の温度の面内分布が不均一となることを意味する。
以上は、被処理物100の載置側の形状が被処理物100の温度の面内分布に与える影響である。
【0013】
被処理物100の載置側と載置部101の表面101bとの間の寸法が変化すれば、被処理物100と、載置部101と被処理物100との間の空間との合成静電容量が変化する。
図3(a)、(b)は、被処理物の載置側の形状が合成静電容量の面内分布に与える影響を例示をするための模式グラフ図である。
なお、
図3(a)は減圧環境下における隙間寸法と合成静電容量との関係を例示するための模式グラフ図、
図3(b)は凹部100aが設けられた被処理物100における合成静電容量の面内分布を例示するための模式グラフ図である。
【0014】
図3(a)に示すように、被処理物100の載置側と載置部101の表面101bとの間に設けられた隙間の寸法が長くなれば、合成静電容量が小さくなる。そのため、
図3(b)に示すように、表面101bとの間の隙間寸法が短い周縁部分においては合成静電容量が大きくなる。一方、表面101bとの間の隙間寸法が長い凹部100aが設けられた部分においては合成静電容量が小さくなる。
このことは、被処理物100の周縁部分と、被処理物100の凹部100aが設けられた部分とで合成静電容量が異なり、合成静電容量の面内分布が不均一となることを意味する。
【0015】
ここで、被処理物100が載置された領域における合成静電容量の面内分布が不均一となると、後述するプラズマPを発生させる領域において均一なプラズマを発生させることが困難となる場合がある。特に、容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理においては大きな影響を受け、均一なプラズマを発生させることが困難となる場合がある。その結果、エッチングレートに面内分布が生じるなどして、エッチング処理の均一性が損なわれるおそれがある。
【0016】
図4(a)は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置に設けられる載置部を例示するための模式断面図である。
図4(b)は、
図4(a)におけるA−A線矢視図である。
図4(a)、(b)に示すように、載置部1は、本体部1a、凸部1bおよび凸部1cを有する。
本体部1aの一方の端面1a1には、凸部1bが設けられている。凸部1bは、端面1a1の周縁側に設けられている。凸部1bの上面には、被処理物100が載置される。凸部1bは、載置された被処理物100の周縁部分を支持する。凸部1bは、本体部1aと一体に形成されていてもよいし、本体部1aと別個に形成されていてもよい。また、凸部1bは、
図4(b)においては、枠状に形成されているが、複数の突起でもよい。すなわち、被処理物100を支持できるように形成されていればよい。
また、
図4(b)においては、被処理物100と凹部100aの平面形状が矩形の場合を例示しているが、被処理物100と凹部100aの平面形状は矩形に限定されるわけではない。例えば、被処理物100と凹部100aの平面形状のどちらも、あるいはいずれか一方が円形であってもよい。この場合、被処理物100と凹部100aの平面形状に対応するように、載置部1、凸部1b、および凸部1cを形成すればよい。
凸部1bの上面に被処理物100が載置されることで、凸部1bに支持された部分において、被処理物100の載置側と端面1a1との間に凸部1bの高さ寸法L1だけ隙間が形成される。
【0017】
また、本体部1aは、後述するプラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられ、被処理物100の加熱や冷却を行うための図示しない加熱装置や冷却装置を有するものとすることができる。
なお、載置部1は、板状を呈し、プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた台座や電極の上に載置されるようにしてもよい。すなわち、載置部1は、被処理物100の搬送の際にも用いることのできるトレーとしたり、プラズマ処理用の治具としたりすることができる。またその場合、加熱装置や冷却装置は、本体部1aに設けずに台座や電極の内部に設けることができる。
【0018】
また、載置部1の端面1a1には凸部1cが設けられている。
凸部1cは、被処理物100を載置した際に被処理物100の凹部100aが位置する領域に設けられている。そして、被処理物100を載置した際には、被処理物100の凹部100aの内部に凸部1cが入り込むようになっている。
【0019】
ここで、プラズマ処理が行われる被処理物100の温度の面内分布が均一となるようにするためには、本体部1aの熱伝導に関する条件と、凸部1cの熱伝導に関する条件とが同程度となるようにすることが好ましい。
例えば、本体部1aの熱伝導率と同じ熱伝導率を有する材料から凸部1cを形成するようにすることができる。この場合、本体部1aと同じ材料から凸部1cを形成するようにすることができる。
【0020】
また、凸部1cの上面と被処理物100の凹部100aが設けられた部分との間の寸法L3が、寸法L1と同じとなるようにすることが好ましい。また、凸部1cの周端面と被処理物100の凹部100aが設けられた部分との間の寸法L4が、寸法L1と同じとなるようにすることが好ましい。すなわち、隙間寸法が均一となるようにすることが好ましい。この場合、すべての隙間寸法が小さくなるようにすることが好ましい。例えば、すべての隙間寸法が0.5mm以下となるようにすることが好ましい。
【0021】
一方、均一なプラズマを発生させるためには、被処理物100が載置された領域における合成静電容量の面内分布が均一となるようにすることが好ましい。
そのため、凹部100aの内部に凸部1cを入れることで、被処理物100の見かけ上の静電容量の面内分布が均一となるようにしている。すなわち、凹部100aの内部に凸部1cを入れることで、被処理物100を含む領域(
図4においては、平面視において被処理物100の周端より内側であって、且つ、載置部1の端面1a1と被処理物100の載置側とは反対側の面100bとの間の領域)の合成静電容量の面内分布が均一となるようにしている。
【0022】
この場合、被処理物100の静電容量に関する条件と、凸部1cの静電容量に関する条件とが同程度となるようにすることが好ましい。
例えば、被処理物100の誘電率と同じ誘電率を有する材料から凸部1cを形成するようにすることができる。この場合、被処理物100と同じ材料から凸部1cを形成するようにすることができる。
また、前述した寸法L3と、寸法L4とがなるべく小さくなるようにすることが好ましい。すなわち、凸部1cにより凹部100aが埋められるようにすることが好ましい。
【0023】
この様に、凸部1cは、被処理物100の載置側に設けられた凹部100aの内部に入ることで被処理物100の温度の面内分布および被処理物100が載置された領域における合成静電容量の面内分布の少なくともいずれかを制御する。
この場合、凸部1cは、温度の面内分布および合成静電容量の面内分布の少なくともいずれかの均一化を図るように制御するものとすることができる。
【0024】
また、凸部1cは、載置部1の熱伝導率と同じ熱伝導率、および被処理物100の誘電率と同じ誘電率の少なくともいずれかを有するものとすることができる。
また、被処理物100と凸部1cとの間の寸法L3は、凸部1bに支持されることで形成された被処理物100と載置部1との間の寸法L1と同じとなるようにすることができる。
【0025】
図5(a)、(b)は、凸部1cを設けた場合の効果を例示するための模式グラフ図である。
なお、
図5(a)は被処理物100の周縁部分の温度上昇と、被処理物100の凹部100aが設けられた部分の温度上昇とを例示するための模式グラフ図である。
また、
図5(a)中のA1は被処理物100の周縁部分の温度上昇を表し、B1は被処理物100の凹部100aが設けられた部分の温度上昇を表している。
図5(b)は凹部100aが設けられた被処理物100における合成静電容量の面内分布を例示するための模式グラフ図である。
【0026】
凸部1cを設けるようにすれば、被処理物100の周縁部分と、被処理物100の凹部100aが設けられた部分とにおいて輻射による熱伝導を同程度とすることができる。そのため、
図5(a)に示すように、温度が上昇するまでの時間と到達温度とを同程度とすることができる。この際、本体部1aの熱伝導に関する条件と、凸部1cの熱伝導に関する条件とが同程度となるようにすれば、温度が上昇するまでの時間の差と、到達温度の差とをさらに小さくすることができる。
また、熱伝導が主に輻射により行われることを考慮すれば隙間の寸法がなるべく小さくなるようにすることが好ましい。例えば、隙間の寸法が0.5mm以下となるようにすれば、温度が上昇するまでの時間の差と、到達温度の差とをさらに小さくすることができる。
【0027】
また、凸部1cを設けるようにすれば、
図5(b)に示すように、プラズマ処理が行われる被処理物100の見かけ上の静電容量の面内分布が均一となるようにすることができる。そのため、後述するプラズマPを発生させる領域において均一なプラズマを発生させることができるので、均一な処理を行うことができる。
この際、被処理物100の静電容量に関する条件と、凸部1cの静電容量に関する条件とが同程度となるようにすれば(例えば、被処理物100と同程度の誘電率を有する材料から凸部1cを形成したり、被処理物100と同じ材料から凸部1cを形成したりすれば)、見かけ上の静電容量の面内分布がより均一となるので、均一なプラズマを発生させることがさらに容易となる。そのため、さらに均一な処理を行うことができる。
【0028】
ところが、被処理物100の寸法や、載置部1の寸法には誤差がある。そのため、前述した寸法L1、寸法L3、および寸法L4が所望の一定の寸法にはならないことになる。
また、複数の被処理物100を、それぞれ複数の載置部1に載置して処理を行う場合は、被処理物100と載置部1との組み合わせにより寸法の誤差の大きさが変わり、寸法L1、寸法L3、および寸法L4がばらつくことになる。
そして、これらの寸法がばらつくと、前述した温度と合成静電容量がばらつき、ひいては複数の被処理物100間におけるそれぞれのエッチングレートがばらつくことになる。 この場合、寸法誤差の影響は、複数の被処理物100間におけるそれぞれの合成静電容量のばらつきに大きな影響を与える。そして、合成静電容量のばらつきは、複数の被処理物100間におけるそれぞれのエッチングレートのばらつきに大きな影響を与える。
【0029】
図6は、合成静電容量とエッチングレートとの関係を例示するためのグラフ図である。
なお、
図6に例示をするエッチングレートは、石英をエッチングする際のエッチングレートである。
図6に示すように、合成静電容量の僅かな変化は、エッチングレートの比較的大きな変化となる。
すなわち、被処理物100の寸法や、載置部1の寸法に誤差があると、誤差の大きさに応じてエッチングレートが変化することになる。
【0030】
図7は、被処理物100および載置部1の寸法と、合成静電容量との関係を例示するための模式図である。
図7に示すように、被処理物100の厚み寸法をT1、被処理物100の凹部100aが設けられた部分における被処理物100の厚み寸法をT2、凸部1bの上面と凸部1cの上面との間の寸法をT3とする。
また、被処理物100の凹部100aが設けられた部分における静電容量をC1、被処理物100の凹部100aと凸部1cとの間の隙間の静電容量をC2、被処理物100の凹部100aが設けられた領域における合成静電容量をCとする。
また、真空の誘電率をε
0、被処理物100の材料の比誘電率をε
1、被処理物100の凹部100aが設けられた部分における被処理領域(エッチング処理を行う対象領域)の面積をSとする。
【0031】
すると、静電容量C1は以下の(1)式により表すことができる。
C1=(ε
0×ε
1×S)/T2 ・・・(1)
また、静電容量C2は以下の(2)式により表すことができる。
C2=(ε
0×S)/(T1−T2−T3) ・・・(2)
また、合成静電容量Cと、静電容量C1および静電容量C2との関係は以下の(3)式で表すことができる。
1/C=1/C1+1/C2 ・・・(3)
ここで、寸法T1〜T3および面積Sは、誤差も含めて予め測定することができる。
また、比誘電率ε
1は、被処理物100の材料により知ることができる。
そのため、(1)式〜(3)式を用いて被処理領域(エッチング処理を行う対象領域)における合成静電容量Cを求めることができる。
そして、
図6に例示をしたような合成静電容量とエッチングレートとの関係を予め求めておけば、求められた合成静電容量に基づいてエッチングレートを知ることができる。
すなわち、被処理物100の寸法や、載置部1の寸法に誤差があるとしても、実際にエッチング処理を施す被処理物100のエッチングレートを知ることができる。
なお、載置部1が誘電体から形成されている場合には、載置部1の静電容量を考慮して合成静電容量を算出することができる。
この場合、(「載置部1の材料の比誘電率」×「真空の誘電率」×「S」)/「凸部1cと本体部1aの厚み寸法の合計」によって算出された静電容量を、Cαとし、合成静電容量Cを以下の(4)式で算出することができる。
1/C=1/C1+1/C2+1/Cα ・・・(4)
【0032】
実際にエッチング処理を施す被処理物100のエッチングレートが分かれば、プラズマ処理におけるプロセス条件を制御することで、被処理物100毎に適切なエッチング処理を施すことができる。
例えば、エッチング時間やバイアスパワーを制御することで、被処理物100毎に適切なエッチング処理を施すことができる。
【0033】
図8は、エッチング時間と合成静電容量との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、
図8は、石英を60nmエッチングする際のエッチング時間と合成静電容量との関係を例示するためのグラフ図である。
前述したように、求められた合成静電容量に基づいて、実際にエッチング処理を施す被処理物100のエッチングレートが分かる。そのため、エッチングレートとエッチング寸法とからエッチング時間を求めることができる。
すなわち、
図6に例示をした合成静電容量とエッチングレートとの関係と、エッチング寸法とから、
図8に例示をしたエッチング時間と合成静電容量との関係を求めることができる。
【0034】
この様にプラズマ処理におけるプロセス条件と、合成静電容量との関係を予め求めることができる。
そのため、実際にエッチング処理を施す被処理物100の寸法や載置部1の寸法を測定し、測定された寸法と被処理物100の材料の誘電率とから合成静電容量を求め、求められた合成静電容量に基づいて適切なプロセス条件を知ることができる。
なお、プラズマ処理におけるプロセス条件は、例えば、エッチング時間や、バイアスパワーなどとすることができる。
【0035】
図9は、他の実施形態に係る載置部11を例示するための模式断面図である。
図4(a)、(b)に例示をした被処理物100は載置側に凹部100aが設けられた場合であるが、
図9に例示をする被処理物110は載置側に凹部110aが設けられるとともに載置側の反対側に凸部110bが設けられている。
この様に凹部110aの他に凸部110bが設けられていても被処理物110の熱伝導に関する条件は余り変わらないので、到達温度に対する影響は小さい。そのため、凸部110bが設けられていても温度の面内分布に対する影響は小さい。
【0036】
しかしながら、凸部110bが設けられていると合成静電容量の面内分布に対する影響が大きくなるおそれがある。
そのため、本実施の形態に係る載置部11は、凸部110bに対応する位置に凹部11aを有している。この様にすれば、被処理物110が載置された領域における合成静電容量の面内分布の均一化を図ることができる。すなわち、凸部110bが設けられることで部分的に増加した静電容量を減少させるために凹部11aを設けている。この場合、載置部11は、載置部1に凹部11aを設けたものとすることができる。
【0037】
本実施の形態に係る載置部11の場合も前述した載置部1の場合と同様にして、寸法誤差に起因する複数の被処理物110間におけるそれぞれのエッチングレートのばらつきを抑制することができる。
例えば、実際にエッチング処理を施す被処理物110の領域における厚み寸法や、被処理物110と載置部11のとの間の厚み方向の寸法を測定し、測定されたこれらの寸法と被処理物110の材料の誘電率とから合成静電容量を求め、求められた合成静電容量に基づいて適切なプロセス条件を求める。そして、求められたプロセス条件を用いて、被処理物110にエッチング処理を施すことで、複数の被処理物110間におけるそれぞれのエッチングレートのばらつきを抑制することができる。
【0038】
図10は、他の実施形態に係る載置部21を例示するための模式断面図である。
図10に示すように、被処理物120が平板状の場合には、載置部21に凸部1cを設ける必要はない。すなわち、載置部21に凸部1cを設けて、温度の面内分布や合成静電容量の面内分布に関する条件を制御する必要はない。
そのため、
図10に示すように、載置部21は、被処理物120を支持する凸部1bが設けられたものとすればよい。
【0039】
しかしながら、この様な場合であっても寸法誤差(例えば、凸部1bの高さ寸法の誤差)に起因するエッチングレートのばらつきが発生する。
本実施の形態に係る載置部21の場合も前述した載置部1の場合と同様にして、寸法誤差に起因するエッチングレートのばらつきを抑制することができる。
例えば、実際にエッチング処理を施す被処理物120の寸法や載置部21の寸法を測定し、測定された寸法と被処理物120の材料の誘電率とから被処理領域(エッチング処理を行う対象領域)における合成静電容量を求め、求められた合成静電容量に基づいて適切なプロセス条件を求める。そして、求められたプロセス条件を用いて、被処理物120にエッチング処理を施すことで、複数の被処理物120間におけるそれぞれのエッチングレートのばらつきを抑制することができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理装置について例示をする。
図11は、プラズマ処理装置30を例示するための模式図である。
図11に例示をするプラズマ処理装置30は、一般に「SWP(Surface Wave Plasma:表面波プラズマ)装置」と呼ばれるマイクロ波励起型のプラズマ処理装置である。すなわち、マイクロ波により励起、発生させたプラズマを用いてプロセスガスからプラズマ生成物を生成し、被処理物の処理を行うプラズマ処理装置の一例である。
【0041】
図11に示すように、プラズマ処理装置30は、プラズマ発生部31、処理容器32、マイクロ波発生部33、ガス供給部37、減圧部38、制御部50、格納部51、演算部52などを備えている。
プラズマ発生部31は、プラズマPを発生させる領域にマイクロ波(電磁エネルギー)を供給することでプラズマPを発生させる。
プラズマ発生部31には、透過窓34、導入導波管35が設けられている。透過窓34は平板状を呈し、マイクロ波Mに対する透過率が高くエッチングされにくい材料からなる。透過窓34は、処理容器32の上端に気密となるようにして設けられている。
【0042】
処理容器32の外側であって、透過窓34の上面には導入導波管35が設けられている。導入導波管35は、マイクロ波発生部33から放射されたマイクロ波Mを伝播させて、プラズマPを発生させる領域にマイクロ波Mを導入する。
導入導波管35と透過窓34との接続部分には、スロット36が設けられている。スロット36は、導入導波管35の内部を導波されてきたマイクロ波Mを透過窓34に向けて放射するためのものである。
【0043】
導入導波管35の一端には、マイクロ波発生部33が設けられている。マイクロ波発生部33は、所定周波数(例えば2.45GHz)のマイクロ波Mを発生させ、導入導波管35に向けて放射することができるようになっている。
処理容器32の側壁上部には、流量制御部(Mass Flow Controller:MFC)37aを介してガス供給部37が接続されている。そして、ガス供給部37から流量制御部37aを介して処理容器32内のプラズマPを発生させる領域にプロセスガスGを供給することができるようになっている。
【0044】
処理容器32は、有底の略円筒形状を呈し、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能とされている。また、その内部には、例えば、前述した載置部1が設けられている。なお載置部1は、処理容器内に搬入されて処理容器32内に設置されるものであってもよい。また、載置部1は、図示しない台座の上に固定または着脱自在に設けられていてもよい。 処理容器32の底面には、圧力制御部(Auto Pressure Controller:APC)38aを介してターボ分子ポンプ(turbomolecular pump:TMP)などの減圧部38が接続されている。減圧部38は、処理容器32の内部を所定の圧力まで減圧する。圧力制御部38aは、処理容器32の内圧を検出する図示しない真空計の出力に基づいて、処理容器32の内圧が所定の圧力となるように制御する。
【0045】
制御部50は、プラズマ処理装置30に設けられた各要素の動作を制御する。
例えば、制御部50は、マイクロ波発生部33を制御して、プラズマPの発生と停止を制御する。
この際、制御部50は、マイクロ波発生部33を制御して、エッチング時間を制御することができる。
【0046】
格納部51は、載置部1の寸法に関する情報と、被処理物100の寸法と材料に関する情報を格納する。また、格納部51は、予め求められたプラズマ処理におけるプロセス条件と、合成静電容量との関係に関する情報を格納する。
なお、プラズマ処理におけるプロセス条件と、合成静電容量との関係は、予め実験やシミュレーションなどを行うことで求めることができる。
格納部51に格納される情報は、通信手段、記憶媒体、キーボードなどの入力手段などを介して入力される。
また、載置部1の寸法に関する情報と、被処理物100の寸法と材料に関する情報を外部のデータベースなどから抽出するために、載置部1や被処理物100の識別コードを認識する図示しない認識部(例えば、バーコードリーダなど)などを設けることもできる。
【0047】
演算部52は、格納部51に格納されている載置部1の寸法に関する情報と、被処理物100の寸法と材料に関する情報とから、合成静電容量を演算する。
そして、演算部52は、演算された合成静電容量と、格納部51に格納されているプラズマ処理におけるプロセス条件と、合成静電容量との関係に関する情報とから適切なプロセス条件を演算する。
例えば、演算部52は、演算された合成静電容量に基づいて、適切なエッチング時間を演算する。
【0048】
なお、載置部1または被処理物100の寸法誤差が少なかったり、被処理物100の材料が限られたものであったりする場合もある。
そのため、演算部52は、載置部1の寸法に関する情報、および被処理物100の寸法に関する情報の少なくともいずれかとから合成静電容量を演算し、演算された合成静電容量に基づいて、プラズマ処理におけるプロセス条件を演算するようにすることができる。
【0049】
プラズマ処理を行う際には、処理容器32内が減圧部38により所定圧力まで減圧され、ガス供給部37から所定量のプロセスガスG(例えば、CF
4など)が処理容器32内のプラズマPを発生させる領域に供給される。一方、マイクロ波発生部33から所定のパワーのマイクロ波Mが導入導波管35内に放射され、スロット36を介して透過窓34に向けて放射される。透過窓34に向けて放射されたマイクロ波Mは、透過窓34の表面を伝搬して、処理容器32内に放射される。このようにして処理容器32内に放射されたマイクロ波MのエネルギーによりプラズマPが発生し、発生したプラズマP中において、プロセスガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオンなどのプラズマ生成物が生成される。そして、この生成されたプラズマ生成物により被処理物100の表面がエッチング処理される。
この際、演算部52により演算されたプロセス条件に基づいて、エッチング処理が行われる。
例えば、演算部52により演算されたエッチング時間に基づいて、エッチング処理が行われる。
【0050】
本実施の形態によれば、凸部1cを有する載置部1を設けているので、凹部100aを有する被処理物100をプラズマ処理する場合であっても、被処理物100の温度および合成静電容量が均一となるようにすることができる。
そのため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0051】
またさらに、載置部1の寸法の関する情報と、被処理物100の寸法と材料に関する情報とから適切なプロセス条件を求めることができる。
そのため、載置部1の寸法や被処理物100の寸法に誤差があったとしても、複数の被処理物100間におけるそれぞれのプラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0052】
図12は、他の実施形態に係るプラズマ処理装置40を例示するための模式断面図である。
図12に例示をするプラズマ処理装置40は、一般に「平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)装置」と呼ばれる容量結合型プラズマ(Capacitively Coupled Plasma:CCP)処理装置である。すなわち、平行平板電極に高周波電力を印加することで発生させたプラズマを用いてプロセスガスGからプラズマ生成物を生成し、被処理物の処理を行うプラズマ処理装置の一例である。
【0053】
図12に示すように、プラズマ処理装置40は、ガス供給部37、減圧部38、処理容器42、プラズマ発生部43、電源部44、制御部50、格納部51、演算部52などを備えている。
【0054】
処理容器42は、両端が閉塞された略円筒形状を呈し、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能となっている。
処理容器42の内部にはプラズマPを発生させるプラズマ発生部43が設けられている。
プラズマ発生部43は、プラズマPを発生させる領域に電磁エネルギーを供給することでプラズマPを発生させる。
プラズマ発生部43には、下部電極48、上部電極49が設けられている。
下部電極48は、例えば、前述した載置部1とすることができる。
なお、下部電極48を載置部1とせずに、下部電極48の上にさらに載置部1を固定または着脱自在に設けてもよい。その場合、載置部1は、処理容器内に搬入されて下部電極48上に設置されるものであってもよい。
上部電極49は、下部電極48に対向させるようにして設けられている。
下部電極48にはブロッキングコンデンサ46を介して電源45が接続され、上部電極49は接地されている。そのため、プラズマ発生部43は、プラズマPを発生させる領域に電磁エネルギーを供給することでプラズマPを発生させることができる。
【0055】
電源部44には、電源45、ブロッキングコンデンサ46が設けられている。
電源45は、100KHz〜100MHz程度の高周波電力を下部電極48に印加する。ブロッキングコンデンサ46は、プラズマPの中で発生し下部電極48に到達した電子の移動を阻止するために設けられている。
【0056】
プラズマ処理を行う際には、処理容器42内が圧力制御部38aを介して減圧部38により所定圧力まで減圧され、ガス供給部37から流量制御部37aを介して所定量のプロセスガスG(例えば、CF
4など)が処理容器42内のプラズマPを発生させる領域に供給される。一方、電源部44より100KHz〜100MHz程度の高周波電力が下部電極48に印加される。すると、下部電極48と上部電極49とが平行平板電極を構成するため、電極間に放電が起こりプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりプロセスガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。この生成されたプラズマ生成物により被処理物100の表面がエッチング処理される。
この際、演算部52により演算されたプロセス条件に基づいて、エッチング処理が行われる。
例えば、演算部52により演算されたエッチング時間やバイアスパワーに基づいて、エッチング処理が行われる。
【0057】
本実施の形態によれば、凸部1cを有する載置部1を設けているので、凹部100aを有する被処理物100をプラズマ処理する場合であっても、被処理物100の温度および合成静電容量が均一となるようにすることができる。
そのため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0058】
またさらに、載置部1の寸法の関する情報と、被処理物100の寸法と材料に関する情報とから適切なプロセス条件を求めることができる。
そのため、載置部1の寸法や被処理物100の寸法に誤差があったとしても、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0059】
なお、マイクロ波励起型プラズマ処理装置、容量結合型プラズマ処理装置を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、誘導結合型プラズマ処理装置、二周波プラズマ処理装置などの各種のプラズマ処理装置に広く適用させることができる。
また、載置側に凹部100aが設けられた被処理物としては、周縁部にリブが設けられた半導体ウェーハ、フォトマスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野や光学分野における部品などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなくプラズマ処理が行われるものであればよい。
【0060】
以上に説明したように、本実施の形態に係るプラズマ処理方法は、以下の工程を備えている。
載置部の寸法に関する情報、および被処理物の寸法に関する情報の少なくともいずれかとから合成静電容量を求め、求められた合成静電容量に基づいて、プラズマ処理におけるプロセス条件を求める工程。
求められたプロセス条件に基づいて、プラズマ処理を行う工程。
この場合、プロセス条件を求める工程において、求められた合成静電容量と、予め求められた合成静電容量とプロセス条件との関係と、からプラズマ処理におけるプロセス条件を求めるようにすることができる。
また、プロセス条件は、エッチング時間およびバイアスパワーの少なくともいずれかとすることができる。
そして、プラズマ処理を行う工程において、求められたプロセス条件に基づいて、プラズマを制御するようにすることができる。
【0061】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
例えば、被処理物100の載置側の中央部分に凹部100aが設けられる場合を例示したが、凹部の形状、大きさ、配置は適宜変更することができる。
図13は、他の実施形態に係る凹部の配置を例示するための模式断面図である。
図13に示すように、被処理物200の載置側の周縁部分に凹部200aが設けられるようにしてもよい。この様な場合にも、前述した場合と同様にして凸部1cを設けることで前述した効果を享受することができる。
すなわち、凸部1cは、被処理物200を載置した際に凹部200aが位置する領域に対応して設けられ、被処理物200を載置した際に凹部200aの内部に入り込むことができるようになっている。
この様に被処理物の載置側に設けられた凹部の形状、大きさ、配置などに応じて凸部1cの形状、大きさ、配置などを適宜変更するようにすればよい。
【0062】
また、前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。