特許第6226719号(P6226719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226719
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20171030BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20171030BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20171030BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20171030BHJP
   C07C 211/63 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   C02F1/58 N
   C02F1/28 D
   C02F1/28 E
   C02F1/28 K
   B01J20/12 A
   B01J20/20 B
   !C07C211/63
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-244536(P2013-244536)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-100767(P2015-100767A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄住金環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100098213
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直久
(72)【発明者】
【氏名】長屋 孝司
(72)【発明者】
【氏名】盛一 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】市川 康平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇摩
(72)【発明者】
【氏名】國元 彰宏
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163144(JP,A)
【文献】 特開昭48−040257(JP,A)
【文献】 特開2005−081170(JP,A)
【文献】 特開昭56−158826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52−64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン含有廃水に第一鉄塩と含窒素化合物と第一銅塩とを添加して、シアン含有廃水中のシアン成分を不溶化して除去するシアン含有廃水の処理方法であって、
上記含窒素化合物が有機含窒素化合物であり、
前記有機含窒素化合物が、下記一般式(1)で表されるテトラアルキルアンモニウム化合物または下記一般式(2)で表されるピリジニウム塩から選ばれるいずれかの化合物であり、
沈殿槽にシアン含有廃水を導入する前の段階で或いは導入すると同時に第一鉄塩を添加して、その後に有機含窒素化合物と第一銅塩とを添加して、処理対象とするシアン含有廃水中にさらにこれらの成分を共存させて廃水中のシアン成分を不溶化する工程を有することを特徴とするシアン含有廃水の処理方法。
〔式(1)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基またはベンジル基を表す。〕
〔式(2)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す。〕
【請求項2】
前記含窒素化合物の添加量を、廃水中における含窒素化合物の濃度が0.5〜200mg/Lとなるようにする請求項1に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項3】
前記廃水中のシアン成分を不溶化する工程後に、不溶化したシアン化合物を固液分離する工程を設ける請求項1又は2に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項4】
前記シアン含有廃水中に、石炭、コークス、活性炭又は粘土鉱物のいずれかが含まれるように構成する請求項1〜のいずれか1項に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水の処理方法に関し、より詳しくは、化学工場で生ずるシアン含有廃液を含む廃水中のシアン成分を、より効率よく経済的に、かつ、安全な状態に除去できる廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場からの廃水には、シアン含有化合物(シアン成分)が含まれる場合がある。従来、シアン含有廃水中のシアン化物イオン(CN-)の処理方法としては、アルカリ塩素法が古くから行われてきているが、この方法に使用される薬剤の次亜塩素酸塩は、その輸送に不便があるといった課題がある。このような問題のない処理方法として、シアン含有廃水を、ホルムアルデヒドを含む処理剤で処理することによって、毒性の少ないシアノヒドリンの1種であるホルムアルデヒドシアノヒドリンを生成させて、シアンを無毒化する方法が知られている(特許文献1参照)。さらに、上記方法におけるシアン化合物の低減効果を高め、安全性を高めるために、ホルムアルデヒドを添加しての第1反応後に過酸化水素を特定量添加し、pH7.0以上で第2反応を行うことについての提案もある(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、ホルムアルデヒドシアノヒドリンは、毒性が弱まっているとは言え、その毒性は比較的高く、また、場合によってはホルムアルデヒドとシアン化物に解離するおそれもある。さらに、本発明者らの検討によれば、上記した薬剤で十分に行うには、シアン化物イオンの濃度にもよるが、大量の薬剤を必要とし、経済的に優れた方法であるとは言い難く、改善すべき課題が多い。
【0004】
シアン含有廃水中のシアン成分の除去処理に用いられている従来の方法では、処理水に残留した場合に特に問題となる毒性のある遊離シアン(CN-)の処理に重点が置かれており、例えば、下記のように処理することが一般的に行われている。すなわち、まず、先に述べたような方法で処理剤を用いて遊離シアンを除去することを行い、その後に、上記方法では処理されない、例えば、フェロシアン化物イオンやフェリシアン化物イオンといったシアン成分を含む錯イオンがある場合には、これを不溶化し、固液分離することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭45−36号公報
【特許文献2】特開平2−35991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術における現状に対し、本発明者らは、下記に挙げる課題を認識するに至った。シアン含有廃水からシアン成分を除去する従来の方法は処理効率のよいものでなく、シアン含有廃水中のシアン成分(すなわち、シアノ錯体に含有されるシアンおよび遊離シアンの和)を不溶化でき、これを簡易な固液分離によって除去することができる、簡便で、しかも十分な除去処理を確実に行える効率のよい技術の開発が必要である。また、シアン含有廃水中の遊離シアンを、ホルムアルデヒドシアノヒドリンを生成させることで除去する従来の方法は、生成したホルムアルデヒドシアノヒドリンの毒性が比較的高く、シアン化物に解離するおそれもあり、これらの課題を早急に改善する必要がある。さらに、新たな技術を開発するとしても、シアン成分の除去処理に用いる薬剤は、シアン含有廃水中のシアン成分との反応の結果、シアン化水素が発生することが懸念されるため、このようなことがない、より高い安全性が担保される技術の開発が必要である。上記したことに加えて、従来の処理方法に比べ、処理剤にかかるコストを低減でき、しかも処理水中のシアン成分をより低減できる、より経済的な技術の開発が必要である。
【0007】
従って、本発明の目的は、シアン成分を含むシアン含有廃水の処理を、安全性に優れ、より効率的に行うことができる新たな薬剤を見出し、しかも、該薬剤をより効果的に使用する方法を開発することで、従来の方法に比べて、より簡便に、より効率的に、その後にシアン化水素が発生することがない状態に処理することができ、処理水中のシアン成分をより確実に低減することができる、工業的に利用可能な、経済性に優れたシアン含有廃水の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、シアン含有廃水に第一鉄塩と含窒素化合物と第一銅塩とを添加して、シアン含有廃水中のシアン成分を不溶化して除去するシアン含有廃水の処理方法であって、上記含窒素化合物が有機含窒素化合物であり、沈殿槽にシアン含有廃水を導入する前の段階で或いは導入すると同時に第一鉄塩を添加して、その後に有機含窒素化合物と第一銅塩とを添加して、処理対象とするシアン含有廃水中にさらにこれらの成分を共存させて廃水中のシアン成分を不溶化する工程を有することを特徴とするシアン含有廃水の処理方法を提供する。
【0009】
本発明のシアン含有廃液の処理方法においては、さらに、下記のように構成することが好ましい。前記有機含窒素化合物が、炭素数が5以上であり、かつ、廃水中でカチオンを生じる有機含窒素化合物であることが挙げられる。より具体的には、該有機含窒素化合物が、下記一般式(1)で表されるテトラアルキルアンモニウム化合物または下記一般式(2)で表されるピリジニウム塩から選ばれるいずれかの化合物であることが挙げられる。
〔式(1)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基またはベンジル基を表す。〕
〔式(2)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す。〕
また、前記含窒素化合物の添加量を、廃水中における含窒素化合物の濃度が0.5〜200mg/Lとなるようにすることが挙げられる。さらに、前記廃水中のシアン成分を不溶化する工程後に、不溶化したシアン化合物を固液分離する工程を設けることや、シアン含有廃水中に、石炭、コークス、活性炭又は粘土鉱物のいずれかが含まれるように構成することが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シアン成分を含むシアン含有廃水の処理を、安全性に優れ、より効率的に行うことができる新たな薬剤を見出し、さらに、当該薬剤を効果的に用いる手段を見出したことで、シアン成分を含むシアン含有廃水の処理を、従来の方法に比べて、より簡便に、より効率的に、その後にシアン化水素が発生することがない状態に処理することができ、処理水中のシアン成分をより低減できる、工業的に利用可能な、経済性に優れたシアン含有廃水の処理方法の提供が可能になる。より具体的には、本発明の処理方法によれば、より少ない薬剤量で、効率よくシアン含有廃水中の全シアン成分を、安全な状態に確実に除去処理することができるようになるので、工業上、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明者らは、上記した従来技術におけるシアン含有廃水の処理方法における課題を解決することを目的とし、シアン含有廃水中のシアン成分である、シアノ錯体に含有されるシアンと遊離シアンとを一緒に簡単な方法で除去処理することを可能にできる薬剤を見出すべく鋭意検討した結果、その目的に合致する有効な薬剤を見出した。さらに、本発明者らは、この薬剤をより効果的に利用し、より効率よくシアン含有廃水中のシアン成分を除去する方法について鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
【0012】
本発明者らは、種々の薬剤の利用について検討した結果、シアン含有廃水中に添加し、この状態を一定時間保持するという極めて簡便な操作だけで、シアン含有廃水中のシアン成分の殆どを不溶化させることができ、さらに、該不溶化されたシアン含有化合物は、廃水中の、例えば、石炭、コークス、活性炭又は粘土鉱物といった懸濁性物質に吸着し易く、懸濁物質とともに容易に固液分離することが可能にできる特定の有機含窒素化合物を見出した。本発明者らのさらなる検討によれば、この特定の含窒素化合物をシアン含有廃水に添加することに加え、Fe2+及びCu+のイオンが含まれている状態とし、さらに、これらのイオンを共存させるタイミングを特定のものとすることで、より効果的にシアン成分を除去できることがわかった。
まず、以下に、本発明の処理方法で使用する薬剤について説明する。
【0013】
〔有機含窒素化合物〕
本発明者らは、本発明の目的を達成できる薬剤について鋭意検討の結果、シアン含有廃水に、有機含窒素化合物、好ましくは、炭素数が5以上であり、かつ、廃水中でカチオンを生じる有機含窒素化合物を添加して、シアン含有廃水中のシアン成分と共存させた場合に、廃水中のシアン成分を不溶化させることができ、さらに、不溶化したシアン化合物は、廃水中の懸濁性物質とともに容易に固液分離されることがわかった。このため、このような有機含窒素化合物を、廃水中のSS分を除去するために一般的に用いられている沈殿槽内に添加すれば、シアン含有廃水中のシアン成分を除去することが可能になる。
【0014】
本発明の方法で好適に用いられる炭素数が5以上であり、かつ、廃水中でカチオンを生じる有機含窒素化合物のより具体的なものとしては、下記に挙げるような、一般式(1)で表されるテトラアルキルアンモニウム化合物や、一般式(2)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
【0015】
<一般式(1)で表されるテトラアルキルアンモニウム化合物>
〔式(1)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基またはベンジル基を表す。〕
より具体的なものとしては、R1が、C49、C817、C1021、C1225などであり、かつ、R2、R3およびR4が、それぞれ独立に、CH3、C49、C1021、C817、ベンジル基などである構造のものが挙げられる。
【0016】
<一般式(2)で表されるピリジニウム塩>
〔式(2)中、R1は、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す。〕
より具体的なものとしては、R1がC1225などである構造のものが挙げられる。
【0017】
本発明者らの検討によれば、上記したような有機含窒素化合物の添加量としては、好ましくは、処理時におけるシアン含有廃水中に0.5mg/L以上の濃度となるように添加させるとよい。より具体的には、廃水中における含窒素化合物の濃度が0.5〜200mg/Lとなるようにすればよく、廃水中のシアン成分の量にもよるが、例えば、廃水中における含窒素化合物の濃度が0.5〜50mg/Lと少なくても、良好な処理が可能である。
【0018】
〔有機含窒素化合物と共存させる金属イオン〕
本発明者らは、上記した有機含窒素化合物(以下、単に「有機含窒素化合物」とも呼ぶ)を用い、実際にシアン含有廃水に適用して処理を行った結果、当該化合物をより効率的に利用できる方法を見出して本発明を達成した。
【0019】
まず、シアン含有廃水の性状を特定の状態とすることで、有機含窒素化合物をより少ない添加量で高い効果が得られるようにすることができることがわかった。具体的には、シアン含有廃水中に、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Cu+、Cu2+、Mn2+およびAl3+からなる群から選ばれる少なくともいずれかのイオンが共存している場合に、上記した効果が得られるが、より詳細な検討の結果、これらの中でも、第一鉄イオン(Fe2+)と第一銅イオン(Cu+)とを共存させた場合に、より顕著な効果を得ることができることを確認した。さらに、本発明者らは、上記検討を重ねていく過程で、シアン含有廃水に、新たに見出した有機含窒素化合物と、第一鉄イオンを供給するための第一鉄塩と、第一銅イオンを供給するための第一銅塩を添加する際に、それぞれを添加するタイミングを変えただけで、それぞれの処理後に得られる処理水中のシアン濃度に影響があるとの知見を得た。そして、かかる観点から、本発明者らがさらに検討した結果、本発明に至ったものである。
【0020】
シアン含有廃水に限らず、廃水を処理する場合には、処理の効率化を図る目的で、まず、廃水を沈殿槽へと導入し、該沈殿槽で廃水中の懸濁物質(SS)を除去し、その後に各種の廃水処理を行うことが一般的である。この沈殿槽内のシアン含有廃水に、上記したような有機含窒素化合物と、第一鉄イオンを供給するための第一鉄塩と、第一銅イオンを供給するための第一銅塩とを同時に添加して処理すれば、シアン成分を除去することが可能であるが、本発明者らは、上記した知見に基づき、該沈殿槽における処理時点を基準として、より効果的にシアン成分を除去処理することができる各薬剤の添加のタイミングの検討を行った。その結果、まず、シアン含有廃水に第一鉄塩を加えてからシアン含有廃水を沈殿槽に導入して、一度、沈殿槽内においてシアン含有廃水と第一鉄塩とが共存する状態とし、その後に、有機含窒素化合物と第一銅塩とを添加してシアン含有廃水中のシアン成分を不溶化するように構成にすれば、添加時期を変えただけであるにもかかわらず、シアン含有廃水の処理において極めて顕著な効果が得られ、処理水中のシアン濃度をより低減できることを見出した。本発明では、より具体的な薬剤の添加のタイミングとして、沈殿槽にシアン含有廃水を導入する前の段階で、或いは沈殿槽内にシアン含有廃水を導入すると同時に(並列して)第一鉄塩を添加することを規定し、これにより、沈殿槽内において、一度、シアン含有廃水と第一鉄塩とが共存する状態になるようにする。本発明者らは、その理由を以下のように考えている。
【0021】
処理対象のシアン含有廃水を沈殿槽に導入する前の段階で、或いは沈殿槽内にシアン含有廃水を導入すると同時に、廃水中に第一鉄塩を添加すると、廃水が導入された沈殿槽内で第一鉄イオン(Fe2+)が生じ、この状態で沈殿槽における処理が行われることになる。このため、沈殿槽内における処理の間に、廃水中のシアン化物イオン(CN-)が、該第一鉄イオンと反応して、シアノ錯体に含有されるシアンの形態(上記の場合は、フェロシアン化物イオン)となることが十分に進むと考えられる。さらに、沈殿槽から流出したこのような状態のシアン含有廃水中に上記有機含窒素化合物を添加すると、該有機含窒素化合物とより反応しやすくなり、このことが、本発明において、より少ない薬剤の添加量で、より高い除去処理を達成できた一因であると考えている。さらに、本発明では、上記有機含窒素化合物を添加する段階で、当該化合物と共に、廃水中に添加されることでCu+イオンを生じさせる第一銅塩を共存させているが、その結果、シアン含有廃水からのシアン成分の除去を、より効率よく、かつ、より高いレベルでより確実に行うことが可能になる。本発明者らはその理由を、上記したように、第一鉄イオン(Fe2+)と、廃水中のシアン化物イオンとから生成したフェロシアン化物イオンは、有機含窒素化合物と反応して不溶化するが、廃水中にCu+イオンが共存していると不溶化がより促進されて、難溶性の金属錯塩として析出させることができたためと考えている。このようにして析出した難溶性の金属錯塩は、簡便な方法で固液分離することができるので、より確実なシアン成分の除去処理効率をさらに高めることができたものと考えられる。
【0022】
上記した理由が奏合されて、本発明の処理方法でシアン含有廃水の処理を行った場合、薬剤の添加量が少なくて済み、しかも、後述するが、シアン含有廃水に上記した3種類の薬剤を同時に加え、これらが共存した状態で処理した場合と比較して、処理水中のシアン濃度を格段に低減することができるという顕著な効果が実現されたものと考えられる。また、本発明の処理方法は、シアン成分の不溶化処理が極めて効率よく行われるので、不溶化処理工程の後に行う最終処理を簡単な固液分離でまとめてできるので、設備的にも極めて有利である。以下に、本発明で使用できる具体的な第一鉄塩と第一銅塩について説明する。
【0023】
<第一鉄塩>
本発明で使用する廃水中の第一鉄イオン(Fe2+)を生じさせるための第一鉄塩としては、例えば、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)などが挙げられる。これらは単一で加えてもよいし、混合して加えてもよい。先にも述べたように、これらの第一鉄塩を沈殿槽に廃水を導入前の段階で、或いは沈殿槽内にシアン含有廃水を導入すると同時に添加することで、沈殿槽内で第一鉄イオンを生じ、沈殿処理が行われる間に、生じた第一鉄イオンFe2+は、廃水中のシアン化物イオンと反応して、そのほとんどが、確実に錯イオン(フェロシアン化物イオン)となったものと考えられる。
【0024】
<第一銅塩>
先述したように、上記したような第一鉄塩と、廃水中のシアン化物イオンとから生成したフェロシアン化物イオンは、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物などの有機含窒素化合物と反応して不溶化するが、廃水中に、第一銅イオンCu+が共存していると不溶化が促進されて、難溶性の金属錯塩として析出させることができるようになる。この際に使用する第一銅イオンCu+を生じさせることができる第一銅塩としては、例えば、塩化銅、硫酸銅などが挙げられる。これらは1つを用いてもよいし、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0025】
さらに、本発明者らの検討によれば、処理するシアン含有廃水中に、石炭、コークス、活性炭又は粘土鉱物のいずれかが含まれているか、または、これらのいずれかを添加して含有させた場合に、その処理効率をより向上させることができる。その理由は、これらの物質が、上記のようにして効率的に不溶化したシアン化合物をより速やかに吸着できたためと考えている。また、廃水中からのシアン化水素の発生を抑制するために、処理時における廃水のpHを6以上、さらにはpHを7.0〜10.0の範囲に維持させることが好ましい。
【0026】
〔固液分離〕
上記したように、本発明の処理方法では、廃液中の全シアン成分を、容易に且つ確実に不溶化させることができ、不溶化したシアン化合物は廃水中の懸濁物質に容易に吸着するので、その後に、これらの懸濁物質や不溶化したシアン成分を固液分離することで、効率よく、しかも確実に安全な状態で廃液中の全シアン成分を除去することが可能なる。上記した懸濁物質および不溶化したシアン化合物を固液分離する方法としては、一般に使用されている、例えば、重力沈降を利用した沈殿や、加圧浮上、ろ過、遠心分離などの方法をいずれも用いることができる。また、固液分離の前に、一般に使用されている、例えば、ポリ塩化アルミ(PAC)などの無機凝集剤や、ポリアクリルアミドなどの有機高分子凝集剤を使用してもよい。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
<有機含窒素化合物と併用する金属イオンについての検討>
(模擬廃水)
シアンを含有しない工場廃水を用い、該廃水に、12.5mg/L(5mg−CN/L)のシアン化カリウムおよび35.4mg/L(15mg−CN/L)のフェロシアン化カリウムをそれぞれ添加し、廃水中の全シアン濃度が略20mg/Lになるように調整した。そして、これを模擬廃水とした。
【0028】
(処理試験手順)
まず、300mLの各ビーカーに、上記で用意した模擬廃水を200mLずつ入れた。次に、それぞれのビーカーに、前記一般式(1)中のR1〜R4が表1に示したそれぞれである薬剤、或いは前記一般式(2)中のR1が表1に示した薬剤と、これと共に廃水中でFe2+又はCu+を生じる塩化第一鉄又は塩化第一銅を加えて、下記のようにして処理を行った。すなわち、模擬廃水に、表1に示した薬剤をそれぞれの濃度になるように添加し、60分間、室温で撹拌しながら処理を行った。その後、5Cのろ紙で濾過した。このようにして得られたろ液を検水として、JIS K0102に規定される方法で、全シアンの濃度を測定し、薬剤の効果についての評価を行った。なお、各処理の開始時におけるpHは、6以上になるように調整した。
【0029】
【0030】
表1に示したように、試験例6〜15では、廃水中に、有機含窒素化合物に加えて、Fe2+或いはCu+イオンが添加された状態で処理を行った。試験例2〜4の処理と試験例6〜8の処理との比較から、Fe2+或いはCu+が共存することによって、それぞれ、処理後の処理水中のシアン濃度がより低くなることを確認した。
【0031】
[実施例1〜4および比較例1]
(模擬廃水)
シアンを含有しない工場排水を用い、該廃水に、70.6mg/L(25mg−CN/L)のシアン化カリウムおよび59mg/L(25mg−CN/L)のフェロシアン化カリウムをそれぞれ添加し、廃水中の全シアン濃度が50mg/Lになるように調整した。そして、これを模擬廃水とした。
【0032】
(処理試験手順)
まず、上記で用意した模擬廃水を20L用意した。次に、10Lの模擬沈殿槽に、上記模擬廃水を100ml/分で通水し、沈殿槽の前段または後段に表2に示した薬剤を所定の濃度になるように添加して、その処理水を固液分離する処理を行った。すなわち、実施例では、沈殿槽に導入する前の段階で模擬廃水に塩化第一鉄を添加し、その後に沈殿槽に送水して沈殿槽で処理した後、先の試験例1で使用したと同様の有機含窒素化合物と塩化第一銅とを表1に示した濃度で添加して処理を行った。沈殿槽での処理は、60分間、室温で撹拌しながら処理を行った。有機含窒素化合物と塩化第一銅の添加を、実施例1と2では、沈殿槽から流出した廃水に添加し、その後に流出廃水について固液分離を行って5Aのろ紙でろ過した。また、実施例3と4では、沈殿槽での処理を60分間とし、有機含窒素化合物と塩化第一銅の添加を、沈殿槽での処理の開始から30分後に行い、その後に固液分離を行った。比較例では、沈殿槽に模擬廃水を導入した後の段階で模擬廃水に、塩化第一鉄と有機含窒素化合物と塩化第一銅とを一緒に添加し、その後に沈殿槽に送水して、沈殿槽で、60分間、室温で撹拌しながら処理を行い、その後に固液分離を行った。
【0033】
上記のようにして得られたろ液を検水として、JIS K0102に規定される方法で、全シアンの濃度を測定し、その測定値で各方法を評価した。なお、各処理の開始時におけるpHは、6以上になるように調整した。処理条件と測定結果を表2に示したが、表2に示した通り、比較例と実施例との比較において、シアン含有廃水に塩化第一鉄の添加を行い、その後に有機含窒素化合物及び塩化第一銅との添加を行った実施例の優位性が確認された。さらに、沈殿槽に模擬廃水を導入するのと並行して塩化第一鉄を添加し、沈澱槽でこれらを撹拌処理すること以外は実施例1〜4と同様に処理したところ、この場合も実施例1〜4と同様に、良好なシアン成分の除去ができることを確認した。
【0034】