特許第6226723号(P6226723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226723大気圧プラズマ発生装置、医療器具および大気圧プラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226723
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】大気圧プラズマ発生装置、医療器具および大気圧プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20171030BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20171030BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H05H1/24
   B01J19/08 E
   A61B17/39
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-250123(P2013-250123)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-109145(P2015-109145A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直樹
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−529352(JP,A)
【文献】 特開2004−052045(JP,A)
【文献】 特開2011−067779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
B01J 19/08
A61B 13/00−18/18
A61F 2/01
A61N 7/00−7/02
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中空の絶縁体と、
前記絶縁体の内壁面で取り囲まれた空間内に配置された単電極と、
前記単電極に交流電圧を印加するための電源とを備えた、大気圧プラズマ発生装置であって、
前記絶縁体および前記単電極が可撓性を有する、大気圧プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記絶縁体の前記内壁面と前記単電極の外表面とが接している、請求項1に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記単電極は、スパイラル状、棒状、中空状、短冊状または網目状からなる、請求項1または請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置を含む、医療器具。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理方法であって、
前記絶縁体の内壁面で取り囲まれた空間内にヘリウムを主成分とするガスを導入する工程と、
前記単電極に交流電圧を印加することによって前記ガスのプラズマを大気圧近傍の圧力下で発生させる工程と、
前記プラズマを処理対象物に接触させることによって前記処理対象物を処理する工程と、を含む、大気圧プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマ発生装置、医療器具および大気圧プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体や樹脂フィルム等の、熱ダメージに弱い被処理対象物の表面を改質する方法として、絶縁体管の内部でグロー放電により生成したプラズマをジェット状に噴出させる、あるいは、プラズマにより生成した活性種を噴出させる方法が用いられてきた(たとえば特許文献1〜4参照)。
【0003】
図8に、従来のプラズマ発生装置の一例の構成を図解する模式的な側面図を示す。図8に示す装置は、絶縁体管101の外表面の一部を取り巻くようにして単電極102が設置された構成を有している。
【0004】
図8に示す装置においては、絶縁体管101の内部にガス103を導入して、高周波電圧印加装置104から電極102に高周波電圧を印加することによってプラズマ105を発生させ、これを絶縁体管101の先端からジェット状に噴出させている。
【0005】
図9に、従来のプラズマ発生装置の一例の構成を図解する模式的な側面図を示す。図9に示す装置は、絶縁体管101の外表面の一部を取り巻くようにして第1の電極102aと第2の電極102bとが互いに間隔を空けて設置された構成を有している。
【0006】
図9に示す装置においては、絶縁体管101の内部にガス103を導入して、高周波電圧印加装置104から第1の電極102aに高周波電圧を印加することによってプラズマ105を発生させ、これを絶縁体管101の先端からジェット状に噴出させている。
【0007】
図10に、従来のプラズマ発生装置のさらに他の一例の構成を図解する模式的な平面透視図を示す。図10に示す装置は、絶縁体管101の内部に棒状の第1の電極102aが挿入されており、絶縁体管101の外表面の一部を取り巻くようにして第2の電極102bが設置された構成を有している。
【0008】
図10に示す装置においては、絶縁体管101の内部にガス103を導入して、高周波電圧印加装置104から第1の電極102aに高周波電圧を印加することによってプラズマ105を発生させ、これを絶縁体管101の先端からジェット状に噴出させている。
【0009】
図11に、従来のプラズマ発生装置のさらに他の一例の構成を図解する模式的な平面図を示す。図11に示す例においては、絶縁体管101の外表面に互いに間隔を空けて第1の電極102aと第2の電極102bとが螺旋状に巻き付けられた構成を有している。
【0010】
図11に示す装置においては、絶縁体管101の内部にガス103を導入して、高周波電圧印加装置104から第1の電極102aに高周波電圧を印加することによって絶縁体管101の内部にプラズマ105を発生させ、絶縁体管101の先端から活性種を噴出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/072390号
【特許文献2】特開2000−282243号公報
【特許文献3】特開2001−6897号公報
【特許文献4】特開平5−202481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、大気圧プラズマを癌細胞に直接照射することにより、癌細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することが発見され、これまで困難であった癌細胞の播種の治療に有効な新しい癌治療法として注目されている。
【0013】
上記の新しい癌治療法における大気圧プラズマの照射方法についての要望を満たすためには、実用の観点からは、微弱なプラズマから強力なプラズマまで広範囲なプラズマを安定して発生させること、つまり安定放電領域を広く有していることが必要である。
【0014】
しかしながら、図8図11に示す従来の装置においては、極めて高い電圧を印加しなければ放電を開始しない(図8)、安定放電領域が狭く、結果的に高いプラズマ処理効果が得られない(図9および図10)、および安定放電領域は広いが、プラズマ処理効果が所望とされる効果よりも未だ低い(図11)などの上記の要望を満たすにはほど遠いのが現状であった。
【0015】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、処理効果が高く、安定放電領域が広い大気圧プラズマ処理装置、医療器具および大気圧プラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の実施態様によれば、軸方向に延びる中空の絶縁体と、絶縁体の内壁面で取り囲まれた空間内に配置された単電極と、単電極に交流電圧を印加するための電源とを備えた大気圧プラズマ発生装置であって、絶縁体および単電極が可撓性を有する、大気圧プラズマ発生装置を提供することができる。
【0017】
本発明の第2の実施態様によれば、本発明の第1の実施態様の大気圧プラズマ発生装置を含む医療器具を提供することができる。
【0018】
本発明の第3の実施態様によれば、上記のいずれかの大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理方法であって、絶縁体管の内壁面で取り囲まれた空間内にヘリウムを主成分とするガスを導入する工程と、単電極に交流電圧を印加することによってガスのプラズマを大気圧近傍の圧力下で発生させる工程と、プラズマを処理対象物に接触させることによって処理対象物を処理する工程とを含む大気圧プラズマ処理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、処理効果が高く、安定放電領域が広い大気圧プラズマ処理装置、医療器具および大気圧プラズマ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置の模式的断面図である。
図2】実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管の先端側から見たときの模式的な平面図である。
図3図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図である。
図4】実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置の模式的な断面図である。
図5】実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管の先端側から見たときの模式的な平面図である。
図6】実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置の模式的な断面図である。
図7】実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管の先端側から見たときの模式的な平面図である。
図8】従来のプラズマ発生装置の一例の構成を図解する模式的な側面図である。
図9】従来のプラズマ発生装置の一例の構成を図解する模式的な側面図である。
図10】従来のプラズマ発生装置のさらに他の一例の構成を図解する模式的な平面透視図である。
図11】従来のプラズマ発生装置のさらに他の一例の構成を図解する模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施の形態について説明する。なお、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0022】
<実施の形態1>
[大気圧プラズマ発生装置の構成]
図1に、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置の模式的な断面図を示す。実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置は、軸方向に延びる中空の絶縁体としての絶縁体管1と、高周波電圧印加用の単電極2とを備えている。
【0023】
単電極2は、導電線がスパイラル状に巻かれることによって構成されており、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に設けられて、絶縁体管1の軸方向に延びるようにして設置されている。また、単電極2には高周波電圧印加装置4が接続されており、高周波電圧印加装置4から高電圧を印加できる構成となっている。なお、本実施の形態においては、絶縁体管1に対してアース電極は、特別、設置されていない。
【0024】
図2に、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管1の先端側から見たときの模式的な平面図を示す。また、図3図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図を示す。図2に示すように、絶縁体管1の先端は円形であるため、絶縁体管1は全体として円筒形状を有している。また、図2および図3に示すように、単電極2の外表面2aは、絶縁体管1の内壁面1aと接している。なお、本実施の形態においては、軸方向に延びる中空の絶縁体として絶縁体管1が円筒形状である場合について説明するが、軸方向に延びる中空の絶縁体は、軸方向に垂直な断面の形状が円形または楕円形である場合に限定されず、たとえば、軸方向に垂直な断面の形状が多角形等の形状であってもよい。
【0025】
[絶縁体管]
絶縁体管1としては、絶縁性の材料であれば特に限定なく用いることができ、たとえば石英のほかアルミナなどのセラミック、またはポリイミド樹脂、フッ素系樹脂若しくはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0026】
なかでも、絶縁体管1としては、ポリイミド樹脂のような樹脂などの可撓性を有する材料を用いることが好ましい。この場合には、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置自体に可撓性を持たせることができる。また、この場合には、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を内視鏡またはカテーテルと組み合わせた医療器具として用いることによって、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を人間の体内の湾曲した消化器官の内部に挿入して、胃や腸などの患部まで到達させることができる。そして、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置から大気圧プラズマを発生させて人間の体内の患部に照射することによって、当該患部の治療が可能となる。さらに、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置をたとえばカテーテルなどの医療器具の一部として用いることもできる。この場合にも、人間の体内に挿入して、人間の体内の患部まで実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を到達させ、大気圧プラズマを発生させて人間の体内の患部に照射することによって、当該患部の治療が可能となる。
【0027】
[単電極]
単電極2は、導電性の材料であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、ステンレス、銅、タングステン、アルミニウム、モリブデン、チタンおよび鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含む金属、酸化インジウム・スズ、酸化亜鉛などの電気導電性酸化物、窒化チタン等の電気導電性窒化物、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))などの電気導電性高分子またはカーボン系電気導電性材料などを用いることができる。
【0028】
単電極2において、スパイラル状に巻かれる導電線の太さは特に限定されないが、単電極2に可撓性を持たせる観点からは、導電線の太さは0.5mm以下であることが好ましく、0.04mm以下であることがより好ましい。
【0029】
[高周波電圧印加装置]
高周波電圧印加装置4としては、たとえば、従来から公知の高周波電源などを用いることができる。なお、本実施の形態においては、単電極2に交流電圧を印加するための電源として高周波電圧印加装置4を用いる場合について説明したが、これに限定されず、単電極2に低周波電圧を印加する低周波電源を用いてもよい。なお、高周波は10kHz以上の周波数を意味しており、低周波は10kHz未満の周波数を意味している。
【0030】
[大気圧プラズマ発生装置の製造方法]
実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、円筒状の絶縁体管1および導電線がスパイラル状に巻かれてなる単電極2を準備する。次に、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5の内側に、導電線がスパイラル状に巻かれてなる単電極2を挿入する。その後、たとえば絶縁体管1の後述するガスが流れる方向の上流側において、高周波電圧印加装置4を単電極2に接続する。これにより、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を製造することができる。
【0031】
[大気圧プラズマ処理方法]
以下、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理方法の一例について説明する。まず、図1図3に示す実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を準備する。次に、図1に示すように、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置の絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内にガス3を導入する。
【0032】
ここで、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に導入されるガス3は、大気圧プラズマ処理に応じて適宜設定することができるが、異常放電の発生を抑制する観点からは、ヘリウムを主成分(ガス3全体の体積流量の60%以上を占める)とするガスを用いることが好ましい。ヘリウムを主成分とするガスとしては、ヘリウムのみからなるガスを用いてもよく、ヘリウムを主成分とし、ヘリウム以外のガス(たとえば、アルゴン、酸素および窒素からなる群から選択された少なくとも1種を含むガス)を副成分とするガスを用いてもよい。
【0033】
次に、高周波電圧印加装置4から単電極2に高周波電圧を印加することによって、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に導入されたガス3のプラズマを大気圧近傍の圧力下で発生させる。
【0034】
絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内で発生するプラズマは、大気圧近傍の圧力下で発生させられる大気圧プラズマである。なお、本明細書において、「大気圧近傍の圧力」は、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内の圧力が60000Pa以上210000Pa以下の範囲の圧力であることを意味する。
【0035】
また、単電極2に高電圧を印加する場合の印加電圧は、大気圧プラズマ処理効果を高める観点からは、6.8kV以上であることが好ましく、7.5kV以上であることがより好ましく、9.8kV以上であることがさらに好ましい。また、異常放電の発生を抑える観点からは、単電極2に高電圧を印加する場合の印加電圧は、11.5kV以下であることが好ましい。
【0036】
また、単電極2に高周波電圧が印加される場合の高周波電圧の周波数は、たとえば1kHz以上30MHz以下とすることができる。
【0037】
次に、上述のようにして発生させた大気圧プラズマは、ガス3の下流側の絶縁体管1の先端から放出される。そして、絶縁体管1の先端から放出されたプラズマを処理対象物に照射して接触させることによって、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理が行なわれる。なお、処理対象物は、特に限定されず、たとえばポリエステル(PET)フィルムなどの樹脂フィルムのような工業用部材であってもよく、がん細胞などの生体の患部であってもよい。
【0038】
[作用効果]
実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置においては、理由は不明であるが、高周波電圧印加装置4から単電極2に高電圧を印加した場合においても、従来と比べて異常放電の発生を抑えることができ、広い放電領域で安定放電を維持することができる。そのため、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置によれば、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、高電圧を印加することによってプラズマによる処理対象物への処理効果を高くすることができ、安定放電領域を広く有するものとすることができる。
【0039】
また、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置は、絶縁体管1の外径を約1mm程度にまで細くすることが可能である。そのため、絶縁体管1の最小許容曲げ半径(使用可能な最小の曲げ半径で、絶縁体管1の中心軸までの距離)を5mm程度にすることができ、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置に非常に高い可撓性を持たせることが可能である。
【0040】
さらに、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置においては、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に導電線がスパイラル状に巻かれてなる単電極2が配置されているため、絶縁体管1の形状を保持しつつ、絶縁体管1に可撓性を持たせることができる。
【0041】
<実施の形態2>
図4に、実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置の模式的な断面図を示す。また、図5に、実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管1の先端側から見たときの模式的な平面図を示す。実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置は、単電極2として中空の導電管を用い、単電極2の外表面2aの全面が絶縁体管1の内壁面1aの全面と接している点に特徴がある。
【0042】
中空の導電管からなる単電極2としては、実施の形態1の大気圧プラズマ発生装置と同様の導電性材料を用いることができる。しかしながら、実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置においては、中空の導電管からなる単電極2として、電気導電性酸化物や電気導電性窒化物等の薄膜を絶縁体管1の内壁面1aの全面に形成したものを用いることによって単電極2に可撓性を持たせることができるため、この場合でも実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置に可撓性を持たせることができるという利点を有する。
【0043】
実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置においても、理由は不明であるが、高周波電圧印加装置4から単電極2に高電圧を印加した場合においても、従来と比べて異常放電の発生を抑えることができ、広い放電領域で安定放電を維持することができる。そのため、実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置においても、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、高電圧を印加することによってプラズマによる処理対象物への処理効果を高くすることができ、安定放電領域を広く有するものとすることができる。なお、実施の形態2においては、単電極2を網目状とした場合にも同様の効果を得ることができる。
【0044】
実施の形態2における上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、その説明についてはここでは省略する。
【0045】
<実施の形態3>
図6に、実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置の模式的な断面図を示す。また、図7に、実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置を絶縁体管1の先端側から見たときの模式的な平面図を示す。実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置は、単電極2として短冊状の導電シートを用い、単電極2が絶縁体管1の上部の内壁面1aのみに取り付けられている点に特徴がある。
【0046】
短冊状の導電シートからなる単電極2としては、実施の形態1および2の大気圧プラズマ発生装置と同様の導電性材料を用いることができる。また、実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置においても、実施の形態2の大気圧プラズマ発生装置と同様に、短冊状の導電シートからなる単電極2として、電気導電性酸化物や電気導電性窒化物等の薄膜を絶縁体管1の内壁面1aの一部に形成したものを用いることによって単電極2に可撓性を持たせることができるため、この場合でも実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置に可撓性を持たせることができるという利点を有する。
【0047】
実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置においても、理由は不明であるが、高周波電圧印加装置4から単電極2に高電圧を印加した場合においても、従来と比べて異常放電の発生を抑えることができ、広い放電領域で安定放電を維持することができる。そのため、実施の形態3の大気圧プラズマ発生装置においても、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、高電圧を印加することによってプラズマによる処理対象物への処理効果を高くすることができ、安定放電領域を広く有するものとすることができる。なお、実施の形態3においては、短冊状の導電シートからなる単電極2を棒状とした場合または短冊状の導電シートを網目状にした単電極2を用いた場合にも同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態3における上記以外の説明は実施の形態1および2と同様であるため、その説明についてはここでは省略する。
【実施例】
【0049】
[実験例1]
<実施例1>
図1図3に示すように、外径8mmで、内径が5mmの円筒形の石英管からなる絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に、線径が0.5mmのステンレス線をスパイラル状に巻くことによって形成した外径5mmのスプリングからなる単電極2を、単電極2の外表面が絶縁体管1の内壁面1aに接するようにして配置した。そして、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に配置された単電極2に高周波電圧印加装置4を接続することによって、実施例1の大気圧プラズマ発生装置を作製した。
【0050】
実施例1の大気圧プラズマ発生装置の絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内にヘリウムのみからなるガス3を2L(リットル)/min(分)の流量で導入した。そして、高周波電圧印加装置4から単電極2に6.8kVpp(kVpp:peak to peak電圧(振幅の2倍の電圧値))の大きさの交流電圧を周波数35kHzで印加した。これにより、絶縁体管1の内部のガス3の流れる方向の下流側の先端付近に、大気圧近傍の圧力下で、ヘリウムガスからなるガス3の大気圧プラズマを発生させた。
【0051】
次に、絶縁体管1の先端から噴出した大気圧プラズマを短冊状に切り取ったPETフィルムの表面に20秒間接触させることによって、PETフィルムの表面(未処理時の水接触角63.3°)の大気圧プラズマ処理を行なった。ここで、絶縁体管1の先端とPETフィルムの表面との間の距離は5mmとした。
【0052】
そして、大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面(未処理時の水接触角61.3°)の水接触角は50.6°であった。
【0053】
なお、実施例1の大気圧プラズマ発生装置においては、高周波電圧印加装置4から単電極2への電圧の大きさを大きくした場合にも異常放電を発生させずに安定的な放電が可能であった。なお、高周波電圧印加装置4から単電極2に印加される電圧を、7.5kV、9.8kVおよび11.5kVとしたときの大気圧プラズマ処理を行なった後のPETフィルムの表面の水接触角は、それぞれ、表1に示すように、48.3°、46.8°および45.2°であった。
【0054】
<実施例2>
外径0.97mmで、内径が0.55mmの円筒形のポリイミド樹脂からなる絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に、線径が0.04mmのタングステン線をスパイラル状に巻くことによって形成した外径0.55mmのスプリングからなる単電極2を、単電極2の外表面が絶縁体管1の内壁面1aに接するようにして配置したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の大気圧プラズマ発生装置を作製した。
【0055】
実施例2の大気圧プラズマ発生装置の絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内にヘリウムのみからなるガス3を1L/minの流量で導入した。そして、高周波電圧印加装置4から単電極2に9kVppの大きさの交流電圧を周波数10kHzで印加した。これにより、絶縁体管1の内部のガス3の流れる方向の下流側の先端付近に、大気圧近傍の圧力下で、ヘリウムガスからなるガス3の大気圧プラズマを発生させた。
【0056】
次に、絶縁体管1の先端から噴出した大気圧プラズマを短冊状に切り取ったPETフィルムの表面に20秒間接触させることによって、PETフィルムの表面(未処理時の水接触角61.3°)の大気圧プラズマ処理を行なった。ここで、絶縁体管1の先端とPETフィルムの表面との間の距離は5mmとした。
【0057】
そして、実施例1と同一の方法および同一の条件で、大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例2の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角は53°であった。
【0058】
<実施例3>
図4および図5に示すように、外径8mmで、内径が5mmの円筒形の石英管からなる絶縁体管1の内壁面1aの全面にアルミニウム箔からなる単電極2を貼り付けることによって、絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内に単電極2を配置したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の大気圧プラズマ発生装置を作製した。
【0059】
その後は、実施例1と同一の方法および同一の条件で、PETフィルムの表面処理を行ない、大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例3の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角は52°であった。
【0060】
また、実施例3の大気圧プラズマ発生装置においても、実施例1と同様に、高周波電圧印加装置4から単電極2に印加される電圧を大きくしていったところ、7.5kVpp、9.8kVppおよび11.5kVppとしたときの大気圧プラズマ処理を行なった後のPETフィルムの表面(未処理時の水接触角61.3°)の水接触角は、それぞれ、表1に示すように、50.7°、50.5°および48°であった。
【0061】
<比較例1>
図10に示すように、外径8mmで内径が5mmの円筒形の石英管からなる絶縁体管1の外表面に、線径が0.5mmのステンレス線をスパイラル状に巻き付けてなる第1の電極102aおよび第2の電極102bを互いに間隔を空けて設置したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の大気圧プラズマ発生装置を作製した。
【0062】
その後は、実施例1と同一の方法および同一の条件で、PETフィルムの表面処理を行ない、大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面(未処理時の水接触角61.3°)の水接触角は51.7°であった。
【0063】
なお、比較例1の大気圧プラズマ発生装置においても、実施例1の大気圧プラズマ発生装置と同一の方法および同一の条件で、高周波電圧印加装置4から単電極2への電圧の大きさを大きくしていったところ、単電極2に7.5kVppの電圧を印加した時点で異常放電が発生してしまい、実施例1の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理効果であるPETフィルムの表面の水接触角45.2°を達成することはできなかった。
【0064】
<比較例2>
図11に示すように、外径8mmで内径が5mmの円筒形の石英管からなる絶縁体管101の外表面に、線径が0.5mmのステンレス線をスパイラル状に巻き付けることによって、第1の電極102aおよび第2の電極102bを互いに間隔を空けて設置したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の大気圧プラズマ発生装置を作製した。なお、比較例2の大気圧プラズマ発生装置は、絶縁体管101の外表面に、2枚のアルミニウム箔を互いに間隔を空けるようにして貼り付けて作製されたものである。
【0065】
その後は、実施例1と同一の方法および同一の条件で、PETフィルムの表面処理を行ない、大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例2の大気圧プラズマ発生装置を用いた大気圧プラズマ処理後のPETフィルムの表面(未処理時の水接触角61.3°)の水接触角は54.3°であった。
【0066】
<評価>
表1に示すように、実施例1の大気圧プラズマ発生装置においては、比較例1の大気圧プラズマ発生装置と比べて、高電圧印加時の異常放電の発生を抑えることができるとともに、PETフィルムの表面処理効果を高くすることができ、安定放電領域を広くすることができることが確認された。
【0067】
また、表1に示すように、実施例1〜3の大気圧プラズマ発生装置においては、比較例2の大気圧プラズマ発生装置と比べて、PETフィルムの表面処理効果を高くすることができることが確認された。
【0068】
【表1】
【0069】
[実験例2]
図6および図7に示すように、石英管からなる絶縁体管1の内壁面1aの上面の一部のみにアルミニウム箔からなる単電極2を貼り付けたこと以外は実施例3と同一の構造を有する実施例4の大気圧プラズマ発生装置を作製した。
【0070】
そして、実施例1、3および4の大気圧プラズマ発生装置の絶縁体管1の内壁面1aで取り囲まれた空間5内にヘリウムのみからなるガス3を2L/minの流量で導入した後に、高周波電圧印加装置4から単電極2への印加電圧の値をそれぞれ表2の印加電圧の値として、大気圧近傍の圧力下で、ヘリウムガスからなるガス3の大気圧プラズマを発生させた。
【0071】
その後、絶縁体管1の先端から噴出した大気圧プラズマを、PETフィルムの表面の3つの異なるポイントにそれぞれ20秒間ずつ照射した。なお、実施例1、3および4の大気圧プラズマ発生装置の絶縁体管1の先端とPETフィルムの表面との間の距離は5mmとした。そして、上記処理後のPETフィルムの表面の水接触角を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2に示すPETフィルムの表面の水接触角は、PETフィルムの表面の上記の3つのポイントの水接触角の平均値が示されている。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示すように、実施例1、3および4の大気圧プラズマ発生装置においては、高周波電圧印加装置4から単電極2に高電圧を印加することができ、印加電圧が高くなればなるほど、PETフィルム31の表面の水接触角が低減して、大気圧プラズマ処理効果が向上することが確認された。
【0074】
また、表2に示すように、実施例1と近似する印加電圧毎に、PETフィルムの表面の処理効果を確認したところ、実施例1の大気圧プラズマ発生装置による大気圧プラズマ処理効果が、実施例3および4の大気圧プラズマ発生装置による大気圧プラズマ処理効果よりも高くなることが確認された。
【0075】
[実験例3]
比較例2の大気圧プラズマ発生装置の第1の電極102aと第2の電極102bとの間に印加される高周波電圧値を上昇させていき、比較例2の大気圧プラズマ発生装置における放電状態を確認した。その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3に示すように、比較例2の大気圧プラズマ発生装置においては、オシロ値(第1の電極102aと第2の電極102bとの間に印加される高周波電圧値)が2.25(kVpp)の時点で放電が開始され、6.0(kVpp)付近で安定した放電が確認され、7.8(kVpp)付近で異常放電を確認し、異常放電領域と判断して中断した。
【0078】
したがって、比較例2の大気圧プラズマ発生装置においては、オシロ値が7.8(kVpp)以上の電圧を印加した場合には異常放電が発生するため、それ以上の電圧は印加することができず、実施例1、3および4の大気圧プラズマ発生装置のように、高電圧の印加による優れたプラズマ処理効果は得られないことが確認された。
【0079】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0080】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、大気圧プラズマ発生装置および大気圧プラズマ処理方法に利用することができ、特に大気圧プラズマ発生装置が可撓性を有している場合には、内視鏡またはカテーテルと組み合わせることによってプラズマ照射によるがん細胞のアポトーシスを誘因する誘起させる医療器具などに利用することができる可能性がある。さらに、本発明の大気圧プラズマ発生装置をたとえばカテーテルなどの医療器具の一部として用いることもできる。
【符号の説明】
【0082】
1 絶縁体管、1a 内壁面、2 単電極、2a 外表面、3 ガス、4 高周波電圧印加装置、5 空間、101 絶縁体管、102 単電極、102a 第1の電極、102b 第2の電極、103 ガス、104 高周波電圧印加装置、105 プラズマ(活性種)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11