特許第6226734号(P6226734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226734
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20171030BHJP
   B60B 9/26 20060101ALI20171030BHJP
   B60C 7/18 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B60B9/26
   B60C7/18
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-260090(P2013-260090)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-116870(P2015-116870A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚史
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−335258(JP,A)
【文献】 特開2009−292289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00
7/18
B60B 9/00
9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、
タイヤ周方向に隣り合う連結部間の空間のうち前記連結部と前記外側環状部とで構成される隅部のみに、緩衝材が配置されていることを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記緩衝材のタイヤ径方向の最大高さは、前記連結部のタイヤ径方向の高さの1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記隅部を構成する前記外側環状部の内周面には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
タイヤ幅方向から見た前記凹部は、円弧状をしていることを特徴とする請求項3に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を有する非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、中実ゴム構造のソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能はない。そのため、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、乗り心地性能が重視される乗用車用には採用されていなかった。
【0005】
下記特許文献1には、上記課題を解決する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、前記環状バンドとホイール又はハブとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークとを有する非空気圧タイヤが記載されている。しかし、このようなウェブスポークは、荷重により大きく変形して座屈を起こし、環状バンドと接触又は衝突して破損するおそれがある。
【0006】
また、下記特許文献2には、環状の外周部材と内周部材との間を径方向に連結するスポークを周方向に間隔をあけて間欠的に配列したスポーク構造体を備え、タイヤ周方向に隣接するスポーク間に形成された複数の空間のうち少なくとも一部を空気が封じ込められた構成にした非空気圧タイヤが記載されている。さらに、下記特許文献3には、タイヤ周方向に隣接するスポーク間の空間に、弾性材料からなる中空封止体を挿入し、この中空封止体に気体を圧入した非空気圧タイヤが記載されている。これらの非空気圧タイヤは、スポーク間の空間に空気又は気体を封止する構成のため、空気又は気体が漏れ出すおそれがある。
【0007】
また、下記特許文献4には、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の連結部とを備え、内側環状部と外側環状部と連結部とにより区分けされた各空隙部に発泡ポリウレタン部材がそれぞれ配設された非空気圧タイヤが記載されている。発泡ポリウレタン部材の一部は、少なくとも外側環状部の内周面であって隣り合う連結部間の中央部に近接しており、外側環状部の過剰な変形を抑え、連結部の座屈を抑制している。しかし、特許文献4の非空気圧タイヤは、発泡ポリウレタン部材が各空隙部の略全体に充填されているため、タイヤ重量が大きくなり、燃費の悪化に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【特許文献2】特開2009−196603号公報
【特許文献3】特開2010−137648号公報
【特許文献4】特開2011−246049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、タイヤ重量を抑制しつつ、耐久性を向上させることができる非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、
タイヤ周方向に隣り合う連結部間の空間のうち前記連結部と前記外側環状部とで構成される隅部に、緩衝材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結しタイヤ周方向に各々が独立する複数の連結部とを備える支持構造体を有している。連結部と外側環状部とで構成される隅部に緩衝材を配置することで、連結部のタイヤ周方向への動きを抑制して外側環状部への接触を防ぐことができるとともに、仮に連結部が大きく変形した場合にも、外側連結部ではなく緩衝材に接触することで破損を防ぐことができるため、耐久性を向上させることができる。また、緩衝材は、タイヤ周方向に隣り合う連結部間の空間のうち連結部と外側環状部とで構成される隅部のみに配置されるため、タイヤ重量を抑制できる。
【0012】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記緩衝材のタイヤ径方向の最大高さは、前記連結部のタイヤ径方向の高さの1/2以下であることが好ましい。この構成によれば、タイヤ重量を抑制しつつ、耐久性を効果的に向上させることができる。
【0013】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記隅部を構成する前記外側環状部の内周面には、凹部が形成されていることが好ましい。隅部を構成する外側環状部の内周面に凹部を形成することで、連結部が外側環状部に結合する部分での応力集中を抑制できるため、耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、タイヤ幅方向から見た前記凹部は、円弧状をしていることが好ましい。凹部を断面円弧状とすることで、応力集中をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2図1の非空気圧タイヤの部分拡大図
図3図1の非空気圧タイヤのI−I断面図
図4】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図5】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図6】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図7】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図8】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、図1の非空気圧タイヤの一部を拡大して示す部分拡大図である。図3は、図1に非空気圧タイヤのI−I断面図である。ここで、Oはタイヤ軸を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0017】
本発明の非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを有するものである。本発明の非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。本実施形態では、図1に示すように、支持構造体SSの外側に、支持構造体SSを補強する補強層4が設けられている例を示す。また、本実施形態では、図1に示すように、補強層4の更に外側にトレッドゴム5が設けられている例を示す。補強層4、トレッドゴム5としては、従来の空気入りタイヤのベルト層、トレッドゴムと同様のものを設けることが可能である。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0018】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する複数の連結部3とを備えている。
【0019】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0020】
内側環状部1の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0021】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0022】
内側環状部1のタイヤ軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0023】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0024】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0025】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5〜100MPaであり、より好ましくは7〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0026】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0027】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0028】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0029】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0030】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0031】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0032】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0033】
外側環状部2の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、円筒形状であることが好ましい。外側環状部2全体のタイヤ径方向の厚みは、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0034】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0035】
外側環状部2のタイヤ軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0036】
外側環状部2の引張モジュラスは、図1に示すように外側環状部2の外周に補強層4が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層4を設けない場合には、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0037】
外側環状部2の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。外側環状部2を補強繊維により補強することで、外側環状部2と補強層などとの接着も十分となる。
【0038】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を置いて、タイヤ周方向CDに各々が独立するように複数設けられる。
【0039】
連結部3は、内側環状部1から外側環状部2までタイヤ径方向に延びる板状をしている。また、連結部3は、タイヤ幅方向WDに延びている。本実施形態の連結部3は、タイヤ幅方向WDの一方のタイヤ端から他方のタイヤ端まで連続して形成されている。
【0040】
タイヤ全体の連結部3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0041】
連結部3のタイヤ周方向CDの厚みは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましい。また、連結部3のタイヤ周方向CDの厚みは、耐久性を確保するため、2mm以上が好ましい。
【0042】
連結部3のタイヤ軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0043】
連結部3の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0044】
タイヤ周方向CDに隣り合う連結部3間の空間のうち、連結部3と外側環状部2とで構成される隅部32には、緩衝材6が配置されている。緩衝材6は、連結部3の側面3aと外側環状部2の内周面2aに接している。隅部32に緩衝材6を配置することで、連結部3のタイヤ周方向CDへの動きを抑制して外側環状部2への接触を防ぐことができる。また、仮に連結部3が大きく変形して座屈した場合にも、外側連結部2ではなく緩衝材6に接触することで、連結部3と外側環状部2の破損を防ぐことができる。これにより、非空気圧タイヤTの耐久性を向上させることができる。また、本発明の緩衝材6は、タイヤ周方向CDに隣り合う連結部3間の空間のうち、連結部3と外側環状部2とで構成される隅部32のみに配置されるため、タイヤ重量を抑制できる。
【0045】
緩衝材6の材質としては、発泡ポリウレタン、スポンジ、ゴム等が例示されるが、発泡ポリウレタンが好ましい。発泡ポリウレタンは、比重が0.4〜0.6g/cmであることが好ましい。比重が0.4g/cmよりも小さいと、緩衝材6の剛性が不足するため、連結部3のタイヤ周方向CDの動きを十分に抑制できない。一方、比重が0.6g/cmよりも大きいと、緩衝材6の重量が増加するため、非空気圧タイヤTの転がり抵抗が悪化する傾向となる。
【0046】
また、発泡ポリウレタンの圧縮弾性率は、支持構造体SSを構成する弾性材料の圧縮弾性率の10〜50%とすることが好ましい。10%よりも小さいと、緩衝材6の剛性が不足するため、連結部3のタイヤ周方向CDの動きを十分に抑制できない。一方、50%よりも大きいと、緩衝材6の剛性が高くなり過ぎるため、連結部3が緩衝材6に接触した際に連結部3が破損するおそれがある。
【0047】
本実施形態において、連結部3及び外側環状部2に接していない緩衝材6の露出面6aは、平面状をしている。露出面6aは、連結部3の側面3aと交差部63で交差し、外側環状部2の内周面2aと交差部62で交差している。外側環状部2の内周面2aから交差部63までのタイヤ径方向の距離が、緩衝材6のタイヤ径方向の最大高さ6hとなる。緩衝材6の最大高さ6hは、連結部3のタイヤ径方向の高さ3hの1/2以下であることが好ましい。緩衝材6の最大高さ6hが連結部3の高さ3hの1/2よりも高いと、タイヤ重量が増加して転がり抵抗が悪化するおそれがある。なお、連結部3の高さ3hは、(外側環状部2の内径−内側環状部1の外径)/2で求められる。
【0048】
また、連結部3の側面3aから交差部62までの距離が、緩衝材6の最大幅6wとなる。緩衝材6の最大幅6wは、連結部3のタイヤ径方向の高さ3hの1/2以下であることが好ましい。緩衝材6の最大幅6wが連結部3の高さ3hの1/2よりも大きいと、タイヤ重量が増加して転がり抵抗が悪化するおそれがある。
【0049】
本実施形態では、隅部32を構成する外側環状部2の内周面2aに凹部20が形成されている。凹部20は、連結部3が外側環状部2に結合する結合部3bに隣接している。また、凹部20は、連結部3のタイヤ周方向CDの両側にそれぞれ形成される。タイヤ幅方向WDから見た凹部20は、円弧状をしている。このような凹部20を形成することで、結合部3bでの応力集中を抑制できるため、耐久性を向上させることができる。なお、凹部20は、緩衝材6で完全に満たされている。
【0050】
外側環状部2は、凹部20を形成した場合にも、タイヤ径方向の厚みが少なくとも2mm以上となるようにする。外側環状部2の厚みが2mmよりも小さいと、外側環状部2が破損するおそれがある。また、凹部20の深さは、外側環状部2の厚みの1/2以下であることが好ましい。凹部20の深さが外側環状部2の厚みの1/2よりも深いと、外側環状部2が破損するおそれがある。
【0051】
図3は、図1の非空気圧タイヤのI−I断面図である。外側環状部2の外周面2bは、タイヤ幅方向WDの中央から両側端へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有している。この曲率半径としては、40〜1000mmが例示される。
【0052】
外側環状部2の外周面2bが曲率を有している場合、凹部20は、タイヤ幅方向WDの両側端から中央へ向かって徐々に深くなるように形成されるのが好ましい。外側環状部2の外周面2bが曲率を有している場合、連結部3のタイヤ幅方向中央部が撓みやすいため、凹部20もタイヤ幅方向中央部で深くする。
【0053】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、隅部32を構成する外側環状部2の内周面2aに凹部20を形成しているが、凹部20は必ずしも必要ではない。図4に示すように、凹部20を形成することなく、隅部32に緩衝材6を配置してもよい。
【0054】
(2)前述の実施形態では、タイヤ幅方向WDから見た凹部20の形状を円弧としているが、これに限定されない。例えば、タイヤ幅方向WDから見た凹部20の形状は、図5に示すように、角を丸くした四角形としてもよい。
【0055】
(3)また、外側環状部2の内周面2aに凹部20を形成する場合、図6に示すように、緩衝材6の最大幅6wは、少なくとも凹部20を覆う幅とすればよい。
【0056】
(4)前述の実施形態では、緩衝材6の露出面6aは平面状となっているが、これに限定されない。例えば、図7(a)のように、露出面6aは凸曲面としてもよい。この緩衝材6によれば、連結部3の動きを抑制する効果が高まる。また、図7(b)のように、露出面6aは凹曲面としてもよい。この緩衝材6によれば、タイヤ重量を抑えることができる。
【0057】
(5)本発明の他の実施形態として、図8に示すように、内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた中間環状部7と、その中間環状部7の外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と中間環状部7とを連結しタイヤ周方向CDに各々が独立する複数の内側連結部8と、中間環状部7と外側環状部2とを連結しタイヤ周方向CDに各々が独立する複数の外側連結部9とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、タイヤ周方向CDに隣り合う外側連結部9間の空間のうち外側連結部9と外側環状部2とで構成される隅部92に、緩衝材6が配置されているものでもよい。中間環状部7を設けることで、連結部が短くなり、連結部が大きく撓むのを防ぐことができるため、緩衝材6の量を少なくすることができる。さらに、タイヤ周方向CDに隣り合う内側連結部8間の空間のうち内側連結部8と中間環状部7とで構成される隅部87にも、緩衝材6を配置するようにしてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0059】
耐久性能
直径1.7mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、試験速度を80km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させた。故障が生じるまでの走行距離を測定し、比較例1を100としたときの指数で示し、この値が大きいほど耐久性能が優れる。
【0060】
実施例1
図1に示すような内側環状部と外側環状部と連結部とを備える支持構造体、その外周に設けられた補強層、並びにトレッドゴムを備える非空気圧タイヤを作製し、耐久性能を評価した。連結部と外側環状部とで構成される隅部には、図4に示すような緩衝材を配置した。評価結果を表1に併せて示す。
【0061】
実施例2
隅部を構成する外側環状部の内周面に、図2に示すような凹部を形成し、凹部内にも緩衝材を配置したこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0062】
比較例1
連結部と外側環状部とで構成される隅部に緩衝材を配置しなかったこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0063】
比較例2
連結部と外側環状部とで構成される隅部に緩衝材を配置しなかったこと以外は、実施例2と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1及び2の非空気圧タイヤは、比較例1又は2と比較して、耐久性能を向上させることができた。
【符号の説明】
【0066】
1 内側環状部
2 外側環状部
2a 外側環状部の内周面
3 連結部
6 緩衝材
20 凹部
32 隅部
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8