【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定のビオチン化合物が、特定のアミノ酸配列を認識するトランスグルタミナーゼと共に用いることによって、タンパク質又はペプチドをビオチン化することを見出した。また、ビオチン化されたタンパク質又はペプチドは、効率よく集合体とすることができ、斯かる集合体はそのタンパク質又はペプチドが発揮する機能と比べて飛躍的に向上した機能を発揮することを見出した。
【0011】
本発明は係る知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す態様の発明を広く包含するものである。
【0012】
項1
下記式(1)
【化1】
(式中、
nは、1又は2であり、
Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
R
1は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のR
1のアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく
R
2は、nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のR
2のアミノ酸残基は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有し、且つ該アミノ残基とR
1のカルボン酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、
R
3は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
R
1又はR
3のアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)
で表わされるビオチン化合物。
【0013】
項2
前記R
1又はR
3のアミノ酸残基が、グリシン残基及びロイシン残基からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項1に記載のビオチン化合物。
【0014】
項3
前記R
2のアミノ酸残基が、リジン残基である項1又は2に記載のビオチン化合物。
【0015】
項4
前記R
1のアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はR
3のアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項1〜3の何れか1項に記載のビオチン化合物。
【0016】
項5
下記式(2)
【化2】
(式中、
nは、1又は2であり、
Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
R
1は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のR
1のアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく
R
2は、前記nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のR
2のアミノ酸残基は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有し、且つ該アミノ残基とR
1のカルボン酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、
R
4は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
R
1又はR
4のアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)で表わされる項1〜4の何れか1項に記載のビオチン化合物。
【0017】
項6
前記R
1又はR
4のアミノ酸残基が、グリシン残基を少なくとも1つ含む、項5に記載のビオチン化合物。
【0018】
項7
前記R
2のアミノ酸残基が、リジン残基である項5又は6に記載のビオチン化合物。
【0019】
項8
前記R
1のアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はR
4のアミノ酸残基が、5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項5〜7の何れか1項に記載のビオチン化合物。
【0020】
項9
下記式(3)
【化3】
(式中、
Xは同一又は異なってO又はNHであり、
R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ、同一又は異なって直接結合又はアミノ酸残基であり、
R
5、R
6、及びR
7のアミノ酸残基は、それぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。)
で表わされる項1〜8の何れか1項に記載のビオチン化合物。
【0021】
項10
前記R
5、R
6、又はR
7のアミノ酸残基がグリシン残基を少なくとも1つ含む、項9に記載のビオチン化合物。
【0022】
項11
前記R
5のアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、R
6のアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はR
7のアミノ酸残基が、5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項9又は10に記載のビオチン化合物。
【0023】
項12
下記式(4)
【化4】
で表わされる、項1に記載のビオチン化合物。
【0024】
項13
下記式(5)
【化5】
で表わされる項5に記載のビオチン化合物。
【0025】
項14
下記式(6)
【化6】
で表わされる項9に記載のビオチン化合物。
【0026】
項15
項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤。
【0027】
項16
前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列を1つ以上含む、項15に記載のビオチン標識化剤。
【0028】
項17
項15又は16に記載のビオチン標識化剤と、トランスグルタミナーゼを含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化キット。
【0029】
項18
前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、項17に記載のビオチン標識化キット。
【0030】
項19
以下の工程1〜3を含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法;
(1)項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物と前記タンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程1、
(2)工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
(3)工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程3。
【0031】
項20
前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに1つに示されるアミノ酸配列を1つ以上含むことを特徴とする、項19に記載の方法。
【0032】
項21
前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、項19又は20に記載の方法。
【0033】
項22
配列番号1〜4の何れか1つに示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入又は置換されたタンパク質又はペプチド変異体。
【0034】
項23
配列番号8〜13の何れかに示されるアミノ酸配列を含む項22に記載のタンパク質又はペプチド変異体。
【0035】
項24
以下の、工程1〜3を含む、タンパク質又はペプチド集合体の製造方法;
(1)項22又は23に示すタンパク質又はペプチド変異体、項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する工程1、
(2)工程1の混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
(3)工程2の後、前記混合物からタンパク質又はペプチド集合体を回収する工程3。
【0036】
項25
前記トランスグルタミナーゼが、微生物由来トランスグルタミナーゼである、項24に記載の方法。
【0037】
項26
項24又は25に記載の方法によって得られるタンパク質又はペプチド集合体。
【0038】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell,“Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,(2001);Ausubel,F.M.et al.“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley&Sons,New York,.NY等の文献を参照すればよい。
【0039】
ビオチン化合物
本発明のビオチン化合物は、式(1)にて表される。
【化7】
【0040】
式(1)において、nは1又は2である。
【0041】
式(1)において、XはO又はNHであり。また、nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
式(1)において、R
1は直接結合またはアミノ酸残基である。また、nが2である場合、R
1のアミノ酸残基は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
式(1)において、R
3は、直接結合又はアミノ酸残基である。
【0044】
式(1)において、R
1又はR
3のアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
【0045】
式(1)において、アミノ酸残基とは、アミノ酸のアミド基から1つの水素原子が取り除かれ(本明細書において、このような基をアミノ残基と称する。)、カルボキシル基から1つのOHが取り除かれたものである(本明細書において、このような基をカルボキシ残基と称する。)。ここで、アミノ酸とは、生体内に存在するアミノ酸に限定はされず、アミド基及びカルボキシル基を有する化合物である。
【0046】
なお、上述のアミノ酸には、プロリンも含まれる。すなわち、アミノ酸残基がプロリン残基である場合は、上述したアミノ基から1つの水素原子が取り除かれたアミノ残基を有するのではなく、ピロリジン環構造中のイミノ基から1つの水素原子が取り除かれたものを有する。
【0047】
また、2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、上述のアミノ酸残基がペプチド結合しているタンパク質又はペプチドの主鎖のN末端のアミド基から1つの水素原子が取り除かれ、C末端のカルボキシル基から1つのOHが取り除かれたものである。これらの基も、本明細書においてそれぞれアミノ残基及びカルボキシ残基と称する。
【0048】
式(1)において、R
1がアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、R
1に隣接する(C=O)基とがペプチド結合している。
【0049】
式(1)において、nが1の場合において、R
2は直接結合である。このとき、R
1がアミノ酸残基である場合で、且つ、R
3がアミノ酸残基である場合は、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基と、R
3のアミノ残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。また、R
3が直接結合である場合は、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基と、R
3に隣接している(NH)基がペプチド結合している。
【0050】
式(1)において、nが1の場合であって、R
1が直接結合であり、且つR
3がアミノ酸残基である場合は、R
1に隣接する(C=O)基と、R
3のアミノ残基のアミノ残基がペプチド結合している。
【0051】
式(1)において、nが2の場合のR
2は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有するアミノ酸残基である。
【0052】
ここで、R
1がアミノ酸残基である場合、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基と、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。このようなペプチド結合の他に、R
1のアミノ酸残基におけるカルボン酸残基と、R
2が有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基とペプチド結合している。
【0053】
なお、R
1が直接結合である場合には、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基も、R
2が有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基も、R
1に隣接する(C=O)基と結合している。
【0054】
すなわち、上記式(1)において、nが2である場合、R
2は、R
1と2箇所でペプチド結合している。
【0055】
式(1)において、nが2である場合、R
2のカルボン酸残基は、R
3のアミノ酸残基のアミノ残基とペプチド結合している。R
3が直接結合である場合は、R
2のカルボン酸残基と、R
3に隣接する(NH)基がペプチド結合している。
【0056】
式(1)において、上記nが2である場合の上記R
2としては、特に限定はされないが、好ましくはリジン残基である。
【0057】
式(1)において、R
1又はR
3のアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、グリシン残基又はロイシン残基からなる群より選択される少なくとも1つを含むアミノ酸残基が挙げられる。
【0058】
R
1が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
【0059】
R
3が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
【0060】
式(1)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物の1つとして、式(4)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(4)にて表されるビオチン化合物は、式(1)において、nが1であり、且つR
1及びR
3が直接結合であるビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(4)にて表されるビオチン化合物を、biotin−QGと称することがある。
【0061】
【化8】
【0062】
式(1)にて表されるビオチン化合物の別の態様として、式(2)にて示すビオチン化合物が挙げられる。
【化9】
【0063】
式(2)は、式(1)において、R
3が2以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であって、該アミノ酸残基のカルボキシ末端側にロイシン残基を含むビオチン化合物である。
【0064】
式(2)において、nは1又は2である。
【0065】
式(2)において、XはO又はNHであり。また、nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
式(2)において、R
1は直接結合またはアミノ酸残基である。また、nが2である場合、R
1のアミノ酸残基は同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
式(2)において、R
4は、直接結合又はアミノ酸残基である。
【0068】
式(2)において、R
1又はR
4のアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
【0069】
式(2)におけるアミノ酸残基及び2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、式(1)と同様に説明されるものである。
【0070】
式(2)において、R
1がアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、R
1に隣接する(C=O)基とがペプチド結合している。
【0071】
式(2)において、nが1の場合において、R
2は直接結合である。このとき、R
1がアミノ酸残基である場合で、且つ、R
4がアミノ酸残基である場合は、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基と、R
4のアミノ残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。また、R
4が直接結合である場合は、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基と、R
4に隣接している(NH)基がペプチド結合している。
【0072】
式(2)において、nが1の場合であって、R
1が直接結合であり、且つR
4がアミノ酸残基である場合は、R
1に隣接する(C=O)基と、R
4のアミノ残基のアミノ残基がペプチド結合している。
【0073】
式(2)において、nが2の場合のR
2は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有するアミノ酸残基である。
【0074】
ここで、R
1がアミノ酸残基である場合、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基と、R
1のアミノ酸残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。このようなペプチド結合の他に、R
1のアミノ酸残基におけるカルボン酸残基と、R
2が有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基とペプチド結合している。
【0075】
なお、R
1が直接結合である場合には、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基も、R
2が有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基も、R
1に隣接する(C=O)基と結合している。
【0076】
すなわち、上記式(2)において、nが2である場合、R
2は、R
1と2箇所でペプチド結合している。
【0077】
式(2)において、nが2である場合、R
2のカルボン酸残基は、R
4のアミノ酸残基のアミノ残基とペプチド結合している。R
4が直接結合である場合は、上記R
2のカルボン酸残基と、R
4に隣接する(NH)基がペプチド結合している。
【0078】
式(2)において、nが2である場合の上記R
2としては、特に限定はされないが、好ましくはリジン残基である。
【0079】
式(2)において、R
1又はR
4のアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、少なくとも1つのグリシン残基を含むアミノ酸残基が挙げられる。
【0080】
R
1が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
【0081】
R
4が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
【0082】
式(2)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物の1つとして、式(5)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(5)にて表されるビオチン化合物は、式(2)において、nが1であり、且つ、R
4が6個のグリシン残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、ビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(5)にて表されるビオチン化合物を、biotin−GGG−GGLQGと称することがある。
【化10】
【0083】
式(1)にて表されるビオチン化合物の別の態様として、式(3)にて示すビオチン化合物が挙げられる。
【化11】
【0084】
式(3)は、式(1)において、nが2であり、R
1が、それぞれR
5及びR
6に対応し、R
2がリジン残基であり、且つ、R
3が2以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であって、該アミノ酸残基のカルボキシ末端側にロイシン残基を含むビオチン化合物である。
【0085】
また、リジン残基の側鎖のε位末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基が、式(3)にてR
5に対応する、式(1)のR
1のカルボン酸残基とペプチド結合しており、且つリジン残基のアミノ残基と式(3)にてR
6に対応する、R
1のカルボン酸残基とペプチド結合している。
【0086】
なお、R
5又はR
6が直接結合である場合は、それぞれ式(1)のR
1に隣接する、(C=O)基とペプチド結合している。
【0087】
式(3)において、XはO又はNHであり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
式(3)において、R
5、R
6、又はR
7は、直接結合又はアミノ酸残基である。
【0089】
式(3)において、R
5、R
6、又はR
7のアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
【0090】
式(3)におけるアミノ酸残基及び2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、上記式(1)或いは上記式(2)と同様に説明されるものである。
【0091】
式(3)において、R
5がアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、R
5に隣接する(C=O)基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、上記リジン残基の側鎖のε末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基とペプチド結合している。
【0092】
式(3)において、R
5が直接結合である場合、R
5に隣接する(C=O)基と、上記リジン残基の側鎖のε末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基がペプチド結合している。
【0093】
式(3)において、上記R
6がアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、R
6に隣接する(C=O)基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、上記リジン残基アミノ残基とペプチド結合している。
【0094】
式(3)において、R
6が直接結合である場合、R
6に隣接する(C=O)基と、上記リジン残基のアミノ残基がペプチド結合している。
【0095】
式(3)において、上記R
7がアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、上記リジン残基のカルボン酸残基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、R
7に隣接する(NH)基とペプチド結合している。
【0096】
上記R
7が直接結合である場合、上記リジン残基のアミノ残基と、R
7に隣接する(C=O)基と、がペプチド結合している。
【0097】
R
5、R
6、及びR
7におけるアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、少なくとも1つのグリシン残基を含むアミノ酸残基が挙げられる。
【0098】
R
5又はR
6が、2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
【0099】
R
7が、2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは4個以下、更に好ましくは3個以下である。
【0100】
式(3)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物として、式(6)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(6)にて表されるビオチン化合物は、式(3)において、R
5及びR
6が3個のグリシン残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、且つ、R
7が1個のグリシン残基である、ビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(6)にて表されるビオチン化合物を、bis−(biotin−GGG)−KGLQGと称することがある。
【化12】
【0101】
本発明のビオチン化合物は、ビオチン、各種構成アミノ酸残基に基づくアミノ酸を原料にし、例えば固相合成法のような一般的なFmocペプチド合成方法を採用すれば製造すればよい。具体的なペプチド合成方法として、以下の手順による方法が挙げられる。
【0102】
1)PD−10カラムを組み立て、その中に0.1mmol分のFmoc−Gly−Alkoresinを添加する。
【0103】
2)3mLのDMFで一晩震盪し、樹脂の膨潤を行う。
【0104】
3)3mLのDMFで3回洗浄し、安定剤の除去を行う。
【0105】
4)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
【0106】
5)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
【0107】
6)3mLのDMFで3回洗浄する。
【0108】
7)0.5mmolのFmoc−各種アミノ酸及び0.45MのHBTU,2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
【0109】
8)3mLのDMFで3回洗浄する。なお、ここでKaiserテストによって未反応樹脂の確認を行ってもよい。テスト結果が陽性の場合、上記の7)に戻りアミノ酸を再伸長させてもよい。テスト結果が陰性の場合、以下の操作を先に進めればよい。
【0110】
9)3mLのDCMで3回洗浄する。
【0111】
10)3mLのDMFで3回洗浄する。
【0112】
11)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
【0113】
12)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
【0114】
13)3mLのDMFで3回洗浄する。
【0115】
14)上記7)から13)までを繰り返し、目的のビオチン化合物となるようにそれを構成するアミノ酸を伸長させる。例えば、Fmoc−Lys(Fmoc)−OH、Fmoc−Gly等の化合物を、適宜採用して伸長させる。
【0116】
15)アミノ酸を伸長させた樹脂に、ビオチン又はイミノビオチン、及び0.45MのHBTU、2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
【0117】
16)3mLのDCMで5回、3mLのDCMで5回、3mLのメタノールで5回洗浄後、一晩真空乾燥する。
【0118】
17)TFA、TIS、及び脱イオン水をそれぞれ95:2.5:2.5で混合した2.5mLのカクテルを添加して1時間攪拌し、樹脂からの切り出しを行う。
【0119】
18)全ての伸長操作の後切り出した溶液に対して、40mLのジエチルエーテルを添加して析出させ、凍結乾燥により粗ペプチドが得られる。
【0120】
19)得られた粗ペプチドを下記の条件でペプチド由来の230nmの吸収を追跡する事でHPLCによって精製し、生成物に相当するフラクションを回収し、凍結乾燥させる。HPLCの条件について、表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
上記式(4)、(5)、及び(6)にて示すビオチン化合物のMSスペクトルによる解析結果の一例を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
ビオチン標識化剤
本発明のビオチン化合物は、他の試薬又はそのままで、アミノ酸又はタンパク質をビオチン化する際に特に有用である。従って、本発明では、上述のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤が提供される。
【0125】
また、本発明のビオチン化合物の他に、N−BIOTINYL−3, 6, 9−TRIOXAUNDECANE−1, 11−DIAMINE、biotin cadaverine等のビオチン化合物も本発明のビオチン標識化剤として有用である。これらは、Molecular Biosciences社等より入手することが可能である。
【0126】
本発明のビオチン標識化剤は、上述の本発明のビオチン化合物の他に、アミノ酸又はタンパク質へのビオチン化を妨げない範囲において、通常、試薬に含有させる公知の物質を含んでいてもよい。このようなビオチン化標識剤において、上述のビオチン化合物は、0.001重量部〜99.9重量部含まれていればよい。
【0127】
本発明のビオチン標識化剤の対象とするタンパク質又はペプチドは、特に限定はされないが、例えば
配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列の何れか1つ以上を含むものであることが好ましい。これらのアミノ酸配列の中でも、プロリン残基及びリジン残基の存在及びその位置については重要であり、より好ましくは、配列番号5〜7に示されるアミノ酸配列の何れか1つ以上である。
【0128】
このようなアミノ酸配列は、タンパク質又はペプチドのN末端又はC末端に含まれていても、それ以外の部位に含まれていてもよい。また、タンパク質又はペプチドの立体構造において、その内部ではなく外側に近い位置の部位に、アミノ酸配列が、含まれていることが好ましい。
【0129】
例えば、タンパク質がアルカリホスファターゼである場合、91番目のリジン残基と93番目のスレオニン残基の間の部位に代えて挿入されて含まれる場合、219番目のリジン残基と221番目のグルタミン残基の間の部位に代えて挿入されて含まれる場合などが挙げられる。
【0130】
また、タンパク質がEGFPである場合にはC末端に挿入されて含まれる場合等が挙げられる。
【0131】
本発明のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤は、転移酵素の一種であるトランスグルタミナーゼと共に用いることが好ましい。トランスグルタミナーゼは、グルタミンと、リジン又は一級アミン基を有する化合物との間でのアシル転移反応を触媒する酵素であれば特に限定はされないが、例えば微生物由来のトランスグルタミナーゼが好ましい。より具体的には、Streptomyces mobaraensis由来のトランスグルタミナーゼであり、NCBI Accession No.Q8KRJ2P81453に示されるアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼである。
【0132】
本発明では、上述のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤と上述のトランスグルタミナーゼを含むビオチン標識化キットも提供する。
【0133】
本発明のビオチン標識化キットには、更に公知の構成物品、試薬等が含まれていてもよい。
【0134】
本発明のタンパク質又はペプチド変異体
本発明の変異体は、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入又は置換されたタンパク質又はペプチド変異体である。
【0135】
挿入とは、タンパク質又はペプチドのN末端、C末端、或いはそれ以外の部位に挿入されていてもよい。
【0136】
置換とは、タンパク質又はペプチドのN末端、C末端、或いはそれ以外の部位のアミノ酸配列と置換されていてもよい
【0137】
例えば、タンパク質又はペプチドがアルカリホスファターゼであれば、91番目のリジン残基と93番目のスレオニン残基の間の部位に代えて挿入又は置換される場合、219番目のリジン残基と221番目のグルタミン残基の間の部位に代えて挿入又は置換される場合等が挙げられる。
【0138】
また、タンパク質又はペプチドがEGFPであれば、C末端の5アミノ酸の部位に代えて挿入又は置換される場合などが挙げられる
【0139】
本発明のタンパク質又はペプチド変異体として、例えば、
配列番号8〜13に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質変異体又はペプチドが挙げられる。
【0140】
本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造方法は、特に限定はされず、公知の生化学的手法を用いればよい。例えば、本発明のタンパク質変異体又はペプチドをコードする核酸を製造し、これを用いて適当な宿主を形質転換し、斯かる宿主を培養することで生合成させて、最後に得られた培養後の宿主からタンパク質変異体又はペプチドを、回収、必要に応じて精製すればよい。
【0141】
このようなタンパク質又はペプチド変異体には、それらが有する機能を損なわない範囲において、さらに変異が導入されていてもよい。このような変異体と、本発明の変異体との相同性は、85%程度、より好ましくは90%程度、更に好ましくは、95%程度、最も好ましくは99%程度である。相同性とは同一性ともよばれる。
【0142】
アミノ酸配列の同一性とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列又は塩基配列の、お互いに対する同一のアミノ酸配列又は塩基配列の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列又は塩基配列の同一性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。アミノ酸配列又は塩基配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメーターを用いて決定される。
【0143】
若しくは、アミノ酸配列を解析する場合はBLASTXを用いればよく、パラメーターとしては、例えば、score= 50、wordlength= 3とすればよい。
【0144】
BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いればよい。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)
を参照すればよい。
【0145】
また、本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体には、後述する本発明の効果を損なわない範囲において、公知のタグ配列を有していてもよい。タグ配列は、例えば、タンパク質又はペプチド変異体のアミノ酸配列の内部、N末端、又はC末端のいずれに有していてもよい。
【0146】
本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、アミノ酸配列を基にそれをコードする塩基配列を含む核酸を作製し、斯かる核酸を大腸菌、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等といったタンパク質合成に適した宿主細胞へ導入して製造することができる。具体的な方法は、特に限定されず、公知の方法を用いればよい。
【0147】
本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、適宜、精製工程を経て製造してもよい。具体的な製造方法は特に限定はされないが、例えばカラムクロマトグラフィー、アセトン沈殿法、硫酸アンモニウム沈殿法等の公知の手段を用いて精製すればよい。
【0148】
具体的なカラムクロマトグラフィーとしては、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、疎水性カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて採用すればよい。
【0149】
本発明のビオチン標識化方法
本発明のビオチン標識化方法は、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法、すなわちタンパク質又はペプチドに対するビオチン化する方法であり、以下の工程1〜3を含むものである。
【0150】
<工程1>
上述の本発明のビオチン化合物とタンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程1。
【0151】
<工程2>
工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2。
【0152】
<工程3>
工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程3。
【0153】
工程1について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程1は、上述の本発明のビオチン化合物と、タンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程である。
【0154】
工程1は適当な溶媒中にて混合すればよく、その種類は特に限定はされないが、例えば生化学実験にて多用される周知の緩衝液を用いればよく、例えば20mMのTris−HCl(pH8.0)等が挙げられる。
【0155】
タンパク質又はペプチドは、上述した本発明のビオチン標識化剤の対象とするアミノ酸又はタンパク質と同様とすればよい。このようなタンパク質又はペプチドは、上述した本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造方法等によって得られる。
【0156】
トランスグルタミナーゼは、特に限定されることは無いが、例えば上述した本発明のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤と共に用いられるトランスグルタミナーゼを採用すればよい。
【0157】
トランスグルタミナーゼの使用量は、混合物中の最終濃度が、通常0.01〜1U/ml程度となる量とすればよい。
【0158】
また、ビオチン化合物とタンパク質又はペプチドは、モル比で通常1:1〜1:20程度となる量で混合すればよい。
【0159】
工程2について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程2は、工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程である。
【0160】
上述のように工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、アシル転移反応を触媒する酵素であるため、工程2における条件とは、斯かる反応が首尾よく進行する条件とすることである。
【0161】
具体的には、4〜50℃程度の温度及び5〜9程度のpHとすればよい。反応時間は、特に限定はされないが5分〜24時間程度とすればよい。この反応時間が、工程2での「至適活性条件下におく」時間となる。
【0162】
工程3について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程3は、工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程である。この工程において、必要に応じてビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを精製する工程が含まれていてもよい。
【0163】
具体的な製造方法は、特に限定はされず、工程2にて得られた混合物中から、本発明のビオチン化合物、及び未修飾のタンパク質或いはペプチドを除去するための手段であればよい。例えば、上述の本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造において採用する精製方法か、これを適宜改変した方法が挙げられる。
【0164】
タンパク質又はペプチド集合体
本発明に係るタンパク質又はペプチド集合体は、以下に示す工程1〜工程3を含む方法によって製造する。
【0165】
≪工程1≫
タンパク質又はペプチド変異体、ビオチン化合物、アビジン化合物及びトランスグルタミナーゼを混合する工程1、
【0166】
≪工程2≫
上記工程1の混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2。
【0167】
≪工程3≫
上記工程3の後、アルカリホスファターゼ集合体を回収する工程3。
【0168】
工程1について
本発明のタンパク質又はペプチド集合体の製造方法における工程1は、タンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する工程である。
【0169】
工程1にて用いるタンパク質又はペプチドは、上記の本発明のビオチン標識化方法の工程1にて用いるものと同様にすればよい。
【0170】
工程1にて使用するビオチン化合物は、上述の本発明のビオチン標識化方法と同様のものを採用すればよい。
【0171】
工程1にて用いるアビジン化合物は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンなどが挙げられ、特に限定はされないが、対象タンパク質との相互作用、等電点の違いによる静電的相互作用等の観点からストレプトアビジンを用いることが好ましい。
【0172】
工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、上記の本発明のビオチン標識化方法の工程1にて用いるものと同様にすればよい。
【0173】
具体的な精製方法は、特に限定はされないが混合物中から、ビオチン化合物、トランスグルタミナーゼ、ビオチン化合物、並びに未修飾のタンパク質又はペプチドを除去するための手段であれば、特に限定されることは無く、上述した本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体の製造方法と同様にすればよい。
【0174】
また、予めタンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する場合には、混合後にトランスグルタミナーゼの至適活性条件下に置くことが好ましい。具体的な条件については、工程2に記載の条件と同様にすればよい。
【0175】
工程1におけるタンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、及びアビジン化合物の混合量は、通常モル比でタンパク質又はペプチド:ビオチン化合物=1:1〜1:20程度とすればよい。
【0176】
また、工程1が複合体の形成までを含むと仮定したときにはビオチン化合物:アビジン化合物=1:0.1〜1:1程度とすればよい。
【0177】
さらに、ビオチン化合物が、2つのビオチニル基を有する場合、ビオチン化合物:アビジン化合物=1:0.1〜1:2程度とすればよい。
【0178】
工程1におけるトランスグルタミナーゼの混合量は、特に限定はされないが、混合物中の最終濃度が0.01〜1U/ml程度となるようにすればよい。
【0179】
工程1において、タンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼは、適当な溶媒中にて混合すればよい。具体的な溶媒は特に限定されないが、生化学的実験にて用いられる周知の緩衝液を用いればよい。
【0180】
工程2について
工程2では、工程1にて示される混合物を、上記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程である。上述のように工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、アシル転移反応を触媒する酵素であるため、工程2における条件とは、斯かる反応が首尾よく進行する条件とすることである。
【0181】
具体的には、4〜50℃程度の温度及び5〜9程度のpHとすればよい。反応時間は、特に限定はされないが5分〜24時間程度とすればよい。この反応時間が、工程2での「至適活性条件下におく」時間となる。
【0182】
工程3について
工程3は、工程2の後にタンパク質又はペプチド集合体を回収する工程である。この工程において、回収とは、精製する工程が含まれていても良い。
【0183】
具体的な精製方法は、特に限定はされず、工程2にて得られた混合物中から、タンパク質又はペプチド変異体、ビオチン化合物、トランスグルタミナーゼ、並びに、ビオチン化合物を除去するための手段であれば、特に限定されることは無く、上述した本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体の製造方法と同様にすればよい。
【0184】
以下、本発明のタンパク質又はペプチドが、アルカリホスファターゼ集合体である場合について詳述する。
【0185】
アルカリホスファターゼ集合体は、4量体以上を形成する。そして、集合体形成する原料である、アルカリホスファターゼが2量体を形成していることから、アルカリホスファターゼ集合体は、4量体、6量体、8量体等のように、偶数の単量体によって形成されることが好ましい。
【0186】
アルカリホスファターゼ集合体の分子径は、特に限定はされないが、通常13nm以上が好ましい。また、分子量も特に限定はされないが、通常は、通常200kDa以上が好ましい。