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特許6226756電圧制御システム及び電圧制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226756
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】電圧制御システム及び電圧制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20171030BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20171030BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H02J3/12
   H02J13/00 311R
   H02J3/00 170
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-8610(P2014-8610)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-139253(P2015-139253A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 松吉
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−259553(JP,A)
【文献】 特開2009−159735(JP,A)
【文献】 特開2013−121305(JP,A)
【文献】 特開2013−074696(JP,A)
【文献】 特開2009−065788(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0114400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00− 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統に配置された複数の電圧調整機器の電圧制御量を制御することにより、当該配電系統全体の電圧制御を行う電圧制御システムであって、
前記配電系統に含まれる複数の計測地点における電圧値を取得する電圧値取得部と、
前記電圧値取得部によって取得された前記電圧値のうち、所定の電圧管理値内から逸脱しているものがあるか否かを判定する電圧判定部と、
前記各電圧調整機器に対する前記電圧制御量の情報を組み合わせてなる複数の組合せパターンを記憶するパターン記憶部と、
前記電圧判定部によって肯定判定された場合に、前記各計測地点における電圧の推定値を前記組合せパターンごとに算出する電圧推定部と、
前記推定値に対する複数の許容範囲を記憶する電圧許容範囲記憶部と、
前記組合せパターンごとに、全ての前記計測地点における前記推定値が前記複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定する電圧許容判定部と、
前記電圧許容判定部によって肯定判定された前記組合せパターンのうち、あらかじめ定められた評価関数による評価値が最も小さくなる組合せパターンを決定する最適パターン決定部と、
前記最適パターン決定部によって決定された前記組合せパターンに基づいて、前記複数の電圧調整機器に前記電圧制御量を設定する電圧制御量設定部と、を備えることを特徴とする電圧制御システム。
【請求項2】
前記電圧許容判定部は、前記複数の許容範囲のうちの1つの許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定し、否定判定した場合に当該許容範囲の次に値の範囲が広い許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の電圧制御システム。
【請求項3】
前記電圧制御量が、前記複数の電圧調整機器に設定されている現在のタップ値からの変化量であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電圧制御システム。
【請求項4】
配電系統に配置された複数の電圧調整機器の電圧制御量を制御することにより、当該配電系統全体の電圧制御を行う電圧制御システムとしてコンピュータを機能させるための電圧制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記配電系統に含まれる複数の計測地点における電圧値を取得する電圧値取得処理と、
前記電圧値取得処理によって取得された前記電圧値のうち、所定の電圧管理値内から逸脱しているものがあるか否かを判定する電圧判定処理と、
前記各電圧調整機器に対する前記電圧制御量の情報を組み合わせてなる複数の組合せパターンを記憶するパターン記憶処理と、
前記電圧判定処理によって肯定判定された場合に、前記各計測地点における電圧の推定値を前記組合せパターンごとに算出する電圧推定処理と、
前記推定値に対する複数の許容範囲を記憶する電圧許容範囲記憶処理と、
前記組合せパターンごとに、全ての前記計測地点における前記推定値が前記複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定する電圧許容判定処理と、
前記電圧許容判定処理によって肯定判定された前記組合せパターンのうち、あらかじめ定められた評価関数による評価値が最も小さくなる組合せパターンを決定する最適パターン決定処理と、
前記最適パターン決定処理によって決定された前記組合せパターンに基づいて、前記複数の電圧調整機器に前記電圧制御量を設定する電圧制御量設定処理と、を実行させることを特徴とする電圧制御プログラム。
【請求項5】
前記電圧許容判定処理は、前記複数の許容範囲のうちの1つの許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定し、否定判定した場合に当該許容範囲の次に値の範囲が広い許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の電圧制御プログラム。
【請求項6】
前記電圧制御量が、前記複数の電圧調整機器に設定されている現在のタップ値からの変化量であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電圧制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御システム及び電圧制御プログラムに関し、特に、配電系統の電圧を集中的に制御する電圧制御システム及び電圧制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統においては、電力の需要と供給のバランスが刻々変化しており、安定した品質の電力供給を行うためには、需要家の受電地点における受電電圧を規定の許容範囲に収めて、適正な系統電圧を維持することが重要である。
【0003】
例えば、配電系統の複数の地点に電圧センサを設け、それらの電圧センサで検出された電圧があらかじめ設定された電圧管理値を逸脱した場合に、当該配電系統に設けられた負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT:Load Ratio control Transformer)やステップ式自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)などの電圧調整機器の電圧制御量を決定し、それらの電圧制御量を電圧調整機器に出力して配電系統の電圧適正化をする電圧制御システムが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1,2参照)。
【0004】
従来の電圧制御システムは、LRT、SVRの各電圧制御量を決定する場合、LRT、SVRの電圧制御量の組合せパターンを作成し、組合せパターンごとに配電系統の各地点の電圧を推定した上で、例えば、以下の式(1.1)に示す評価関数が最小となる組合せパターンを最適な電圧制御量の組合せパターンとして決定することがある。
【0005】
【数1】
【0006】
式(1.1)の評価関数において、Dは基準電圧からの偏差、Eは上限管理値又は下限管理値からの逸脱度合いに相当するものである。ここで、ρは上限管理値又は下限管理値からの逸脱がある場合に評価関数の評価値Fを大きくし、上限管理値又は下限管理値から逸脱するような電圧を生じさせる電圧制御量を除外するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−229267号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】吉永淳、外5名、「配電系統における集中型電圧制御方式の開発」、平成16年電気学会電力・エネルギー部門大会論文集、2004年08月05日、第15巻、第30号、p. 25-1-25-6
【非特許文献2】「低炭素社会の実現に向けた配電系統の高度化」、電気協同研究会、平成22年、第66巻、第2号、p. 34-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の電圧制御システムにおいては以下に述べるような問題がある。例えば図10(a)に示すように、LRT、SVRの電圧制御量の組合せパターンとしてXとYの2つのパターンがあり、配電線の各計測地点1〜nにおける推定電圧として、図10(b),(c)に示すような電圧がそれぞれのパターンで得られる場合を例に挙げて、従来の問題点を説明する。
【0010】
なお、図10では、a=Vxmin(計測地点xの下限管理値)、b=Vxmax(計測地点xの上限管理値)、(a+b)/2=VxS(基準電圧)とし、各値は基準電圧に対する割合(百分率)であるとしている。
【0011】
図10(b)に示すパターンXについては、各計測地点の推定電圧の全てが上限管理値よりxだけ逸脱しているとする。一方、図10(c)に示すパターンYについては、計測地点1の推定電圧が上限管理値からyだけ逸脱し、それ以外の計測地点の推定電圧は基準電圧に等しいとする。
【0012】
ここで、具体的に評価するため、n=20、b=2%、x=1%、y=4%とすると、パターンXの評価関数の大きさFは20ρ+180、パターンYの評価関数の大きさFは16ρ+36となる。
【0013】
つまり、ρの値をいくら大きくしてもFはFよりも小さいため、電圧管理値を大きく逸脱した推定電圧が存在するパターンYの電圧制御量の組合せパターンが最適パターンとして決定されてしまう。
【0014】
また、計測地点の総数nがさらに大きくなると、図10(c)におけるyがさらに大きい場合、すなわちyが上限管理値から大きく外れた場合であっても、パターンYが最適パターンとして決定されることになる。
【0015】
なお、電圧管理値から逸脱した推定電圧をもたらす組合せパターンをできるだけ除外するには、ρを極力大きくする必要がある。しかしながら、ρを大きくすると、評価関数のρEの項が大きくなるため、Dの項が埋もれてEの項のみで評価が行われることになり、誤判定につながる場合がある。
【0016】
例えば、図11(a),(b)に示すように、推定電圧が上限管理値から外れた計測地点が1点あり、それ以外の計測地点の推定電圧が電圧管理値内となるような電圧制御量の組合せパターンX,Yが存在する場合について考察する。
【0017】
ここで、計測地点1における推定電圧の上限管理値からの逸脱の大きさがパターンX,Yで同じであり、他の計測地点の推定電圧がパターンXでは基準電圧から僅かにxだけずれており、パターンYでは上限管理値付近にあったとすれば、最適パターンはパターンXとなる。
【0018】
具体的に、n=4、b=2%、x=4%、x=1%、y=4%とすると、パターンXの評価関数の大きさFは16ρ+39、パターンYの評価関数の大きさFは16ρ+48となる。つまり、ρを大きくしてもパターンXが最適パターンであると判定されることになる。
【0019】
しかしながら、パターンXの上限管理値から逸脱した推定電圧xが、パターンYの推定電圧yより若干大きい場合、パターンXのE,Dは共に若干大きな値となる。Eについてはその大きさにρが乗じられたものとなるため、ρを大きくするとパターンXの評価関数の大きさFがパターンYの評価関数の大きさFよりも大きくなり、パターンYが最適パターンとして判定されてしまうことになる。
【0020】
具体的に、xが0.1%大きく、x=4.1%となったとすると、パターンXの評価関数の大きさFは16.81ρ+40.21となり、ρが10以上であると、パターンYが最適パターンであると判定されることになる。すなわち、ρを余り大きくすると誤判定される場合が生じることになる。
【0021】
また、このような若干の差は計測誤差や計算誤差によっても発生するため、それらの誤差が拡大されて評価され、最適な電圧制御量の組合せパターンの判定を誤ることにもなり得る。以上の理由から、ρを余り大きくできないことが分かる。
【0022】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを、最適パターンとして誤判定することを低減できる電圧制御システム及び電圧制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る電圧制御システムは、配電系統に配置された複数の電圧調整機器の電圧制御量を制御することにより、当該配電系統全体の電圧制御を行う電圧制御システムであって、前記配電系統に含まれる複数の計測地点における電圧値を取得する電圧値取得部と、前記電圧値取得部によって取得された前記電圧値のうち、所定の電圧管理値内から逸脱しているものがあるか否かを判定する電圧判定部と、前記各電圧調整機器に対する前記電圧制御量の情報を組み合わせてなる複数の組合せパターンを記憶するパターン記憶部と、前記電圧判定部によって肯定判定された場合に、前記各計測地点における電圧の推定値を前記組合せパターンごとに算出する電圧推定部と、前記推定値に対する複数の許容範囲を記憶する電圧許容範囲記憶部と、前記組合せパターンごとに、全ての前記計測地点における前記推定値が前記複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定する電圧許容判定部と、前記電圧許容判定部によって肯定判定された前記組合せパターンのうち、あらかじめ定められた評価関数による評価値が最も小さくなる組合せパターンを決定する最適パターン決定部と、前記最適パターン決定部によって決定された前記組合せパターンに基づいて、前記複数の電圧調整機器に前記電圧制御量を設定する電圧制御量設定部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この電圧制御システムによると、全ての計測地点における推定電圧が複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定することにより、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを、最適パターンとして誤判定することを低減できる。
【0025】
この電圧制御システムにおいては、前記電圧許容判定部は、前記複数の許容範囲のうちの1つの許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定し、否定判定した場合に当該許容範囲の次に値の範囲が広い許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定するものであってもよい。
【0026】
この電圧制御システムによると、電圧逸脱の許容範囲を順次広げて最適パターンを決定するため、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを効率的に除外することができる。
【0027】
この電圧制御システムにおいては、前記電圧制御量が、前記複数の電圧調整機器に設定されている現在のタップ値からの変化量であってもよい。
【0028】
この電圧制御システムによると、複数の電圧調整機器のタップ値を制御することにより、配電系統全体の電圧制御を行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る電圧制御プログラムは、配電系統に配置された複数の電圧調整機器の電圧制御量を制御することにより、当該配電系統全体の電圧制御を行う電圧制御システムとしてコンピュータを機能させるための電圧制御プログラムであって、前記コンピュータに、前記配電系統に含まれる複数の計測地点における電圧値を取得する電圧値取得処理と、前記電圧値取得処理によって取得された前記電圧値のうち、所定の電圧管理値内から逸脱しているものがあるか否かを判定する電圧判定処理と、前記各電圧調整機器に対する前記電圧制御量の情報を組み合わせてなる複数の組合せパターンを記憶するパターン記憶処理と、前記電圧判定処理によって肯定判定された場合に、前記各計測地点における電圧の推定値を前記組合せパターンごとに算出する電圧推定処理と、前記推定値に対する複数の許容範囲を記憶する電圧許容範囲記憶処理と、前記組合せパターンごとに、全ての前記計測地点における前記推定値が前記複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定する電圧許容判定処理と、前記電圧許容判定処理によって肯定判定された前記組合せパターンのうち、あらかじめ定められた評価関数による評価値が最も小さくなる組合せパターンを決定する最適パターン決定処理と、前記最適パターン決定処理によって決定された前記組合せパターンに基づいて、前記複数の電圧調整機器に前記電圧制御量を設定する電圧制御量設定処理と、を実行させることを特徴とする。
【0030】
この電圧制御プログラムによると、全ての計測地点における推定電圧が複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定することにより、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを、最適パターンとして誤判定することを低減できる。
【0031】
この電圧制御プログラムにおいては、前記電圧許容判定処理は、前記複数の許容範囲のうちの1つの許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定し、否定判定した場合に当該許容範囲の次に値の範囲が広い許容範囲に全ての前記計測地点における前記推定値が含まれる前記組合せパターンがあるか否かを判定するものであってもよい。
【0032】
この電圧制御プログラムによると、電圧逸脱の許容範囲を順次広げて最適パターンを決定するため、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを効率的に除外することができる。
【0033】
この電圧制御プログラムにおいては、前記電圧制御量が、前記複数の電圧調整機器に設定されている現在のタップ値からの変化量であってもよい。
【0034】
この電圧制御プログラムによると、複数の電圧調整機器のタップ値を制御することにより、配電系統全体の電圧制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、全ての計測地点における推定電圧が複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定することにより、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを、最適パターンとして誤判定することを低減できる電圧制御システム及び電圧制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態としての電圧制御システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態としての電圧制御システムの電圧制御部が実行する処理を説明するためのフローチャートである。
図3図2のフローチャートにおけるステップS5の処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図4図2のフローチャートにおけるステップS6の処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の実施形態としての電圧制御システムの動作を説明するための配電系統モデルの構成図である。
図6】本発明の実施形態としての電圧制御システムを用いて計測した電圧値の一例を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態としての電圧制御システムを用いて算出した推定電圧を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態としての電圧制御システムを用いて算出した評価値を組合せパターンごとに示すグラフである。
図9】本発明の実施形態としての電圧制御システムを用いて算出した、基準電圧の±2%を超える計測地点の数を組合せパターンごとに示すグラフである。
図10】電圧制御量の組合せパターンの一例を示す説明図である。
図11】電圧制御量の組合せパターンの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る電圧制御システム及び電圧制御プログラムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0038】
<電圧制御システム>
まず、本発明の実施形態としての電圧制御システムの構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の電圧制御システムは、配電用変電所に設けられる負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT)200を介して、配電線F1,F2,F3に三相交流を配電するような配電系統の電圧制御を行うものである。なお、図1では配電線の本数を3つとしているが、本発明はこれに限定されず、配電線の本数は2つ以下であっても4つ以上であってもよい。
【0039】
配電線F1,F2,F3には複数の計測地点が設けられている。そして、配電線F1の計測地点には電圧センサ401a〜401f、配電線F2の計測地点には電圧センサ402a〜402e、配電線F3の計測地点には電圧センサ403a〜403dがそれぞれ配置されている。電圧センサの配置箇所及び個数は図1の例に限定されない。
【0040】
周知のように、配電線には長さに比例した電気抵抗があるため、配電線を流れる電流に比例した電圧降下が発生することは避けられない。また、近年、家庭用太陽光発電(PV:Photovoltaic power generation)システムをはじめとする分散型電源が普及しつつあり、このような分散型電源の導入により、配電系統に逆潮流が発生する状況が見られるようになってきている。
【0041】
このため、配電線の途中に電圧調整機器を介在させて適宜昇圧補正あるいは降圧補正を行う必要がある。具体的には、電圧調整機器は、遠隔地にある需要家へ電気事業法で定められている101±6Vの電圧を供給することが可能となる程度まで電圧を昇圧又は降圧して配電線F1,F2,F3に給電するようになっている。
【0042】
ここで、電圧調整機器としては、上記のLRT200に加えて、ステップ式自動電圧調整器(SVR)、静止形無効電力補償装置(SVC)、電力用コンデンサ(SC)などが挙げられる。SVRやLRTは、タップ切換で電圧を離散的に可変するものである。
【0043】
配電線F1においては、電圧調整機器としてのSVR301aが電圧センサ401bと401cの間に介挿され、SVR301bが電圧センサ401dと401eの間に介挿されている。また、配電線F2においては、SVR302aが電圧センサ402bと402cの間に介挿されている。
【0044】
なお、電圧センサ401a〜401f,402a〜402e,403a〜403dは、各計測地点に設置された開閉器に内蔵されたものであってもよい。
【0045】
本実施形態の電圧制御システムは、電圧調整機器としてのLRT200及びSVR301a,301b,302aの電圧制御量を制御することにより、配電系統全体の電圧制御を行うための電圧制御部100を備えている。
【0046】
電圧制御部100は、後述する電圧制御プログラムを実行するプロセッサを備えたコンピュータとして実現することが可能であり、電圧値取得部101、電圧判定部102、パターン記憶部103、電圧推定部104、電圧許容範囲記憶部105、電圧許容判定部106、最適パターン決定部107、及び、電圧制御量設定部108を有する。
【0047】
電圧値取得部101は、電圧センサ401a〜401f,402a〜402e,403a〜403dで計測された複数の計測地点における電圧値を所定の時間間隔で取得するようになっている。ここで、電圧センサ401a〜401f,402a〜402e,403a〜403dで計測される電圧値は、三相の各線間に現れる線間電圧であり、例えば三相分を平均した線間電圧三相平均値(V)である。
【0048】
なお、電圧値取得部101が取得する電圧値は、電圧センサの計測値の瞬時値であってもよいが、電圧センサの計測値を計測地点ごとに所定時間にわたって平均化処理した値であってもよい。
【0049】
電圧判定部102は、電圧値取得部101によって取得された電圧値のうち、所定の電圧管理値内から逸脱しているもの(以下、逸脱電圧値ともいう)があるか否かを判定するようになっている。ここで、電圧管理値は、基準電圧の±1%の値であるとする。例えば、基準電圧が6600Vの場合には、電圧管理値は6600V±66Vとなる。
【0050】
パターン記憶部103は、LRT200及びSVR301a,301b,302aに対する電圧制御量の情報を組み合わせてなる複数の組合せパターンを記憶するようになっている。例えば、電圧制御量は、LRT200及びSVR301a,301b,302aのタップ値、あるいは現在のタップ値からの変化量(以下、タップ切換量ともいう)である。なお、パターン記憶部103は、上記の複数の組合せパターンを生成して記憶するものであってもよい。
【0051】
電圧推定部104は、電圧判定部102によって電圧管理値内から逸脱した電圧値があると判定されたことを条件として、各計測地点における電圧の推定値(以下、推定電圧ともいう)を組合せパターンごとに算出するようになっている。なお、パターン記憶部103は、電圧推定部104で算出された推定電圧を記憶するようになっている。
【0052】
電圧許容範囲記憶部105は、推定電圧に対する複数の許容範囲を記憶するようになっている。ここで、複数の許容範囲は互いに相違しているものとする。なお、電圧許容範囲記憶部105は、上記の複数の許容範囲を生成して記憶するものであってもよい。
【0053】
電圧許容判定部106は、組合せパターンごとに、全ての計測地点における推定電圧が上記の複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定するようになっている。
【0054】
例えば、電圧許容判定部106は、複数の許容範囲のうちの1つの許容範囲に全ての計測地点における推定電圧が含まれる組合せパターンがあるか否かを判定し、否定判定した場合に当該許容範囲よりも値の範囲が広い許容範囲に全ての計測地点における推定電圧が含まれる組合せパターンがあるか否かを判定するようになっている。特に、電圧許容判定部106は、最も狭い許容範囲から一段階ずつ許容範囲を広げながら、許容範囲ごとに全ての計測地点における推定電圧が含まれる組合せパターンがあるか否かを判定するようになっていることが望ましい。
【0055】
なお、電圧許容範囲記憶部105は、電圧許容判定部106によって、全ての計測地点における推定電圧が上記の複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれると判定された組合せパターンを逸脱電圧許容パターンとして記憶するようになっている。
【0056】
最適パターン決定部107は、上記の逸脱電圧許容パターンのうち、式(1.1)の評価関数による評価値Fが最も小さくなる組合せパターンを決定するようになっている。ここで、式(1.1)の評価関数におけるρの値は、10未満の正の値、より好ましくは1程度の値であるとする。
【0057】
電圧制御量設定部108は、最適パターン決定部107によって決定された組合せパターンに基づいて、LRT200及びSVR301a,301b,302aに電圧制御量を設定するようになっている。具体的には、電圧制御量設定部108は、タップ切換信号を発生させて、LRT200及びSVR301a,301b,302aのタップ値を制御するようになっている。
【0058】
<電圧制御プログラム>
次に、本実施形態の電圧制御システムを用いた電圧制御方法について説明する。図2図4は、電圧制御部100が実行する電圧制御プログラムのフローチャートである。なお、以下では簡単のために、図5に示す配電系統モデル300を用いて、本実施形態の電圧制御システムによる電圧制御方法を説明する。
【0059】
配電系統モデル300は、LRTの二次母線から配電線が2回線引き出され、各回線の途中にSVRが接続されたものであるとする。1〜16は電圧管理をする地点(計測地点x)を表しており、各計測地点xには電圧センサが設置されるとともに、計測地点4,5の間と計測地点12,13の間にそれぞれSVRが設置されているとする。ただし、計測地点1,9の電圧センサは同じ母線に接続されているため、計測地点1,9で計測される電圧は同一値となる。
【0060】
まず、ステップS1で電圧値取得部101は、複数の計測地点1〜16に設置された電圧センサにより計測された電圧値を取得する。
【0061】
図6に計測された電圧値(以下、計測電圧ともいう)の一例を示す。ここで、計測電圧は基準電圧で規格化されている。図6によると、16の計測地点xのうち、6つの計測地点(計測地点1,9〜13)の計測電圧のみが基準電圧の±1%の電圧管理値内に収まっている。
【0062】
次に、ステップS2で電圧判定部102は、ステップS1で取得された各計測地点xにおける計測電圧のうち、電圧管理値から逸脱しているものを検出する。この検出方法としては、例えば次の2つの方法がある。
【0063】
1つ目の方法は、電圧管理値を逸脱した計測電圧の出現回数を各計測地点xでカウントし、その出現回数があらかじめ定められた所定回数に到達した場合に、電圧の逸脱があったと判定する方法である。2つ目の方法は、計測電圧の電圧管理値からの逸脱量を各計測地点xで積分し、その積分値があらかじめ定められた所定値に到達した場合に、計測電圧の逸脱があったと判定する方法である。
【0064】
これらステップS1,S2の処理は、所定間隔の定周期で繰り返される(例えば1分間)。
【0065】
次に、ステップS3で電圧判定部102は、ステップS2で計測電圧の逸脱が検出されたか否かを判定する。ステップS3で否定判定がなされた場合には処理を終了し、肯定判定がなされた場合にはステップS4に進む。
【0066】
ステップS4で電圧推定部104は、各計測地点xにおける推定電圧を組合せパターンごとに算出する。表1にLRTと2つのSVRのそれぞれのタップ切換量の組合せパターンを示す。表1のテーブルは、パターン記憶部103に記憶されている。表1において、「0」はタップ切換がない状態、「1」は1タップ分昇圧された状態、「−1」は1タップ分降圧された状態を示している。
【0067】
表1に示した例では、LRT、SVRの現在のタップ値から±1タップ分を切換するものとしている。1タップ分の電圧調整幅は約1.5%である。なお、現在のタップ値からの変化分は上記の±1タップ分に限定されず、±2タップ分以上であってもよい。
【0068】
【表1】
【0069】
ステップS4で電圧推定部104は、表1の各組合せパターンに対応する推定電圧を各計測地点xに関して算出する。図7に、図6の計測電圧(パターンP1)に対してパターンP6とパターンP16をそれぞれ適用した場合の推定電圧を示す。
【0070】
例えば、パターンP6に注目すれば、SVRの上流側にある計測地点1〜4の推定電圧は、図6に示したパターンP1の計測電圧と同一となり、SVRの下流側にある計測地点5〜8の推定電圧は、パターンP1の計測電圧から1タップ分昇圧された値となる。一方、SVRの上流側にある計測地点9〜12の推定電圧は、パターンP1の計測電圧と同一となり、SVRの下流側にある計測地点13〜16の推定電圧は、パターンP1の計測電圧から1タップ分降圧された値となる。
【0071】
次に、ステップS5で電圧許容判定部106は、組合せパターンごとに全ての推定電圧が、下記の表2に示す許容ランクkによりランク付けされた複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定する。
【0072】
一例として、電圧許容判定部106による上記の判定に用いる許容ランクkの総数NRをNR=5とした場合の、各許容ランクの下限許容値VxLpukと上限許容値VxHpukを表2に示す。表2のテーブルは、電圧許容範囲記憶部105に記憶されている。表2においては下位の許容ランクほど許容範囲が広く設定されている。なお、許容ランクの総数NR、下限許容値VxLpuk、上限許容値VxHpukは表2に示された値に限定されず、配電系統の運用状況に応じた値に設定されていることが望ましい。
【0073】
ステップS5で否定判定がなされた場合には処理を終了し、肯定判定がなされた場合にはステップS6に進む。なお、ステップS5の処理の詳細については後述する。
【0074】
【表2】
【0075】
ステップS6で最適パターン決定部107は、全ての計測地点xにおける推定電圧が許容ランクkに含まれる組合せパターンのうち、式(1.1)の評価関数による評価値Fが最も小さくなる組合せパターンを決定する。なお、ステップS6の処理の詳細については後述する。
【0076】
次に、ステップS7で電圧制御量設定部108は、表1のテーブルを参照して、ステップS6で決定された組合せパターンに対応するタップ値をLRT、SVRに設定することにより、LRT、SVRのタップ切換を行う。
【0077】
これらステップS3〜S7の処理は所定間隔の定周期で実施される。なお、図2は、ステップS1,S2の処理間隔とステップS3〜S7の処理間隔とが相違するものとして示しているが、これらの処理間隔は同じでもよい。
【0078】
<逸脱電圧許容判定処理>
図3は、図2のフローチャートのステップS5の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS11で電圧許容判定部106は、組合せパターンPiの総数NP、許容ランクkの総数NRを定義する。
【0080】
次に、ステップS12で電圧許容判定部106は、パターン番号iとランク番号kの値をいずれも1に設定する。
【0081】
次に、ステップS13で電圧許容判定部106は、電圧許容範囲記憶部105に記憶されている表2のテーブルを参照して、許容ランクkの許容範囲の上下限値である上限許容値VxHpuk及び下限許容値VxLpukを読み込む。
【0082】
次に、ステップS14で電圧許容判定部106は、ステップS4で組合せパターンPiに関して算出された各計測地点xにおける推定電圧をパターン記憶部103から読み込む。
【0083】
次に、ステップS15で電圧許容判定部106は、各計測地点xにおける推定電圧と、許容ランクkの上限許容値VxHpuk及び下限許容値VxLpukとの比較を行う。具体的には、電圧許容判定部106は、各計測地点xにおける推定電圧が下限許容値VxLpuk以上かつ上限許容値VxHpuk以下であるか否かを判定する。
【0084】
ステップS15で肯定判定がなされた場合にはステップS16に進み、否定判定がなされた場合にはステップS17に進む。
【0085】
ステップS16で電圧許容判定部106は、許容ランクkの許容範囲内に全ての推定電圧が含まれる組合せパターンPiを逸脱電圧許容パターンとして、電圧許容範囲記憶部105に記憶する。これらステップS15,S16の処理により、許容ランクkの許容範囲を超える推定電圧が含まれる組合せパターンを除外し、許容ランクkの許容範囲を満足する組合せパターンのみを抽出することが可能となる。
【0086】
ステップS17で電圧許容判定部106は、全ての組合せパターンPiについてステップS15の判定処理が行われたか否かを判定する。ステップS17で肯定判定がなされた場合にはステップS19に進み、否定判定がなされた場合にはステップS18に進む。
【0087】
ステップS18で電圧許容判定部106は、パターン番号iをインクリメントし、ステップS14に戻る。
【0088】
ステップS19で電圧許容判定部106は、許容ランクkの許容範囲内に全ての推定電圧が含まれる逸脱電圧許容パターンが1つ以上存在したか否かを判定する。ステップS19で肯定判定がなされた場合にはステップS6に進み、否定判定がなされた場合にはステップS20に進む。
【0089】
ステップS20で電圧許容判定部106は、全ての許容ランクkについてステップS13〜S19の処理が行われたか否かを判定する。ステップS20で肯定判定がなされた場合には処理を終了し、否定判定がなされた場合にはステップS21に進む。これにより、最大の許容範囲を満足する組合せパターンが存在しない場合には、最適パターンはないと判断されることになる。
【0090】
ステップS21で電圧許容判定部106は、ランク番号kをインクリメントし、ステップS13に戻る。
【0091】
<最適パターン決定処理>
図4は、図2のフローチャートのステップS6の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0092】
ステップS31で最適パターン決定部107は、許容ランクkの許容範囲内に全ての推定電圧が含まれる逸脱電圧許容パターンが複数存在したか否かを判定する。ステップS31で肯定判定がなされた場合にはステップS32に進み、否定判定がなされた場合にはステップS34に進む。
【0093】
ステップS32で最適パターン決定部107は、複数の逸脱電圧許容パターンのそれぞれから得られた推定電圧に対して、式(1.1)の評価関数を用いて評価値Fを算出する。
【0094】
ステップS33で最適パターン決定部107は、複数の逸脱電圧許容パターンのうち、式(1.1)の評価関数による評価値Fが最も小さくなる組合せパターンを最適パターンとして決定し、ステップS7に進む。
【0095】
なお、ステップS33で最適パターン決定部107は、評価値Fが最も小さくなる逸脱電圧許容パターンが複数存在する場合には、式(1.2)のEの値が最も小さい逸脱電圧許容パターンを最適パターンとして決定する。
【0096】
さらに、Eの値が最も小さくなる逸脱電圧許容パターンが複数存在する場合には、最適パターン決定部107は、式(1.3)のDの値が最も小さい逸脱電圧許容パターンを最適パターンとして決定する。
【0097】
さらに、Dの値が最も小さくなる逸脱電圧許容パターンが複数存在する場合には、最適パターン決定部107は、例えばパターン番号iが最も小さい逸脱電圧許容パターンを最適パターンとして決定する。
【0098】
ステップS34で最適パターン決定部107は、許容ランクkの許容範囲内に全ての推定電圧が含まれる逸脱電圧許容パターンが1つのみ存在するため、その逸脱電圧許容パターンを最適パターンとして決定し、ステップS7に進む。
【0099】
<計算結果>
次に、本実施形態の電圧制御システム及び電圧制御プログラムを用いた計算結果について、図5図9を参照しながら説明する。
【0100】
図6に示した計測電圧の例では、基準電圧の±1%の値の電圧管理値から逸脱した計測電圧を示す計測地点が存在しているので、電圧制御部100による電圧制御処理が行われることになる。
【0101】
図8は、図6の計測電圧に対して、表1に示した組合せパターンPiを適用した場合における評価関数の評価値Fを示している。図8によると、評価値Fが最も小さい組合せパターンはパターンP16であり、次いでパターンP6となる。それらの組合せパターンに関する評価値Fは、パターンP16については0.0021であり、パターンP6については0.0023である。
【0102】
また、図7及び図9に示すように、パターンP16については基準電圧から±2%を越える計測地点(図5における計測地点15,16)の個数は2個であり、一方、パターンP6については0個である。なお、本例では、全ての計測地点xの推定電圧が基準電圧から±1%以内となる組合せパターンは存在しない。
【0103】
従来の方法は、評価関数の評価値Fの大きさのみで組合せパターンの良否を判定していたため、図6の計測電圧に対してはパターンP16を最適パターンとして決定する。しかしながら、上記のようにパターンP16の場合、基準電圧から±2%を越える計測地点が2箇所存在している。
【0104】
これに対して、本発明の電圧制御システム及び電圧制御プログラムは、表2に示す許容ランク1(逸脱電圧値の許容範囲は基準電圧から±2%以内)を満たす組合せパターンP6を最適パターンとして決定する。
【0105】
本例の場合は許容ランク1を満足する組合せパターンが1つしか存在しないが、許容ランク1を満足する組合せパターンが複数存在する場合には、それらの組合せパターンから評価関数の評価値Fが最も小さくなる組合せパターンを最適パターンとして決定することになる。
【0106】
なお、本例では、電圧制御部100による電圧制御処理が行われても管理電圧である基準電圧から±1%を越える計測地点が存在するので、タップ切換完了後に再度ステップS3〜S6の電圧制御処理が開始されることになる。しかしながら、タップ切換完了後の各計測地点xにおける計測電圧がパターンP6による推定電圧と一致した状態であれば、電圧制御量の最適値はパターンP6のタップ切換量であり、そのタップ切換量に対応するタップ値が維持されることになる。
【0107】
以上の結果から、従来の方法では、基準電圧から大きく逸脱する推定電圧を与えるような組合せパターンを最適と決定する場合があるが、本発明の電圧制御システム及び電圧制御プログラムは、そのような組合せパターンを除外するため、基準電圧から大きく逸脱しない推定電圧で、かつ最適な推定電圧を与える組合せパターンを適切に選択することができる。
【0108】
以上説明したように、本発明によれば、全ての計測地点における推定電圧が複数の許容範囲のうちの少なくとも1つに含まれるか否かを判定することにより、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを、最適パターンとして誤判定することを低減できる。
【0109】
また、本発明によれば、式(1.1)の評価関数におけるρの値が十分低い値に設定されているため、推定電圧の僅かな相違や計測誤差などに影響されずに最適パターンの誤判定を低減することができる。
【0110】
また、本発明によれば、最も狭い電圧逸脱の許容範囲に全ての推定電圧が含まれる組合せパターンがない場合には、次に広い許容範囲に全ての推定電圧が含まれる組合せパターンがあるか否かを調べる。このようにして、電圧逸脱の許容範囲を順次広げて最適パターンを決定するため、電圧管理値から大きく逸脱する推定電圧を与える電圧制御量の組合せパターンを効率的に除外することができる。
【0111】
また、本発明によれば、複数の電圧調整機器のタップ値を制御することにより、配電系統全体の電圧制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
100 電圧制御部
101 電圧値取得部
102 電圧判定部
103 パターン記憶部
104 電圧推定部
105 電圧許容範囲記憶部
106 電圧許容判定部
107 最適パターン決定部
108 電圧制御量設定部
200 LRT(電圧調整機器)
300 配電系統モデル
301a,301b,302a SVR(電圧調整機器)
401a〜401f,402a〜402e,403a〜403d 電圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11