特許第6226762号(P6226762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6226762光学用ポリエステルフィルム、偏光板、画像表示装置、光学用ポリエステルフィルムの製造方法、および易接着層用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226762
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】光学用ポリエステルフィルム、偏光板、画像表示装置、光学用ポリエステルフィルムの製造方法、および易接着層用組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20171030BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20171030BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   B32B27/36
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-16873(P2014-16873)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143758(P2015-143758A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】野村 達也
(72)【発明者】
【氏名】細田 英正
(72)【発明者】
【氏名】二村 恵朗
(72)【発明者】
【氏名】植木 啓吾
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−334168(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/020909(WO,A1)
【文献】 特開平09−258023(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/100041(WO,A1)
【文献】 特開2003−071991(JP,A)
【文献】 特表2006−510784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00 − 43/00
G02F 1/1335− 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層とを有し、前記易接着層は、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂およびイソシアネート系架橋剤を含む、光学用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムの融解サブピーク温度が130〜200℃である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記イソシアネート系架橋剤が、少なくともマロン酸エステル誘導体によりブロックされたブロックイソシアネート化合物である、請求項1または2に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂の数平均分子量が、15000以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムの面内方向のレタデーションReが4000〜30000nmであり、厚み方向のレタデーションRthと面内方向のレタデーションReの比であるRe/Rthが0.6〜1.2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
未延伸のポリエステルフィルムを少なくとも含むフィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下であるポリエステルフィルムを少なくとも含むフィルムを、これに直交する方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記光学用ポリエステルフィルムの横方向の延伸倍率と縦方向の延伸倍率との比率である、横方向の延伸倍率/縦方向の延伸倍率が、1.5以上であるか、又は前記光学用ポリエステルフィルムの縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率との比率である、縦方向の延伸倍率/横方向の延伸倍率が、1.5以上である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
偏光子保護用フィルムである、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
請求項1〜5又は9のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法であって、未延伸のポリエステルフィルム、または縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を積層して積層フィルムを得る工程と、前記積層フィルムを縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸する工程を含む、光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5又は9のいずれか1項に記載の光学用ポリエステルフィルムと偏光子とを少なくとも有する偏光板。
【請求項12】
さらに保護フィルムとハードコート層とを含む請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
請求項11または12に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項14】
ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を少なくとも含む易接着層用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用ポリエステルフィルム、偏光板、画像表示装置、光学用ポリエステルフィルムの製造方法、および易接着層用組成物に関する。具体的には、本発明は、ポリエステルフィルムと、特定の材料からなる易接着層とを有する光学用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等に代表される画像表示装置には、拡散フィルム、プリズムシート、偏光板等の光学フィルムが使用されている。
偏光板は、ポリビニルアルコールを含む偏光子とその両側に貼り合わされる保護フィルムから形成され、保護フィルムには、光学的歪みによる画質の低下(斜め方向から観察した際の虹状の色斑)を防止するため、従来より、光学異方性(Re値:レタデーション値)が小さいトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが主に使用されている。
【0003】
近年には低透湿性のポリエステルフィルムを使用する検討が行われており、例えば、特許文献1には、複屈折性を有し光学的歪みが大きいポリエステルフィルムを、一軸方向に延伸することによりRe値を大きくし、虹状の色斑を改良することが記載されている。また、特許文献2には、ポリエステルフィルムを縦方向に延伸した後に、易接着層の塗布液が塗布され、その後、幅方向に延伸が行われており、ほぼ均等な倍率で二軸方向に延伸を行うことが記載されている。
【0004】
一方、特許文献3には、ポリエステルフイルムの少なくとも片面に塗膜を積層せしめたフイルムであって、前記塗膜が(A)所定のコポリエステル50〜80重量%、(B)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10〜30重量%、(C)平均粒径が20〜80nmの微粒子3〜25重量%及び(D)架橋剤1〜20重量%からなり、塗膜の表面エネルギーが50〜65dyne/cmであることを特徴とするインク受像層易接着ポリエステルフイルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2012/157663号パンフレット
【特許文献2】特開2013−63610号公報
【特許文献3】特開2000−168012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TACフィルムは、透湿性が高く、高温多湿環境下で使用すると偏光機能や色相等の偏光板機能を低下させるという問題があったので、この問題を改良するため、例えば、特許文献1に記載されるポリエステルフィルムなどが報告されている。しかし、特許文献1では、熱固定温度が高い影響で、ロールトゥロール法でポリエステルフィルムを作製する延伸過程でボーイングが大きくなり、フィルム幅方向での配向軸を均一な方向に定めることが困難であるという問題がある。従って、ロールトゥロール法でポリエステルフィルムと偏光子とを貼り合わせた場合に、偏光子の吸収軸とポリエステルフィルムの配向軸にある程度のばらつきが生じ、反射型偏光子との組み合わせで使用した場合に、輝度低下の問題が発生する場合がある。また、ポリエステルフィルムの熱固定温度が高い影響で、結晶化に伴う厚み方向のレタデーション(Rth)の上昇が大きいことから、Re/Rth比が小さくなり、虹ムラ改良効果も不足するという問題もある。
【0007】
特許文献2では、ポリエステルフィルムの熱固定温度を140℃まで低下させる検討が行われているが、密着力の低下が発生しており、加工時に偏光子の剥離が発生する等の不具合が生じることが予想される。また、ポリエステルフィルムを二軸方向にほぼ均一に延伸しているため、Re/Rth比の値が極めて小さくなることが予想でき、偏光子保護フィルム等の光学用途には、虹状の色斑の問題で使用が難しい。
【0008】
また、特許文献3には、密着改良のために、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、および架橋剤の組み合わせからなるインク受像層用の易接着層が提案されているが、イソシアネート系架橋剤の検討はなく、ポリエステルフィルムの熱固定温度が低い場合に、強固な密着性の確保は困難である。また、ポリエステルフィルムの熱固定温度が高いので光学用途としては使用できない。
【0009】
本発明は、配向軸のばらつきが小さく、密着性が良好な光学用ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、本発明の光学用ポリエステルフィルムを含む偏光板、及び画像表示装置を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、配向軸のばらつきが小さく、密着性が良好な光学用ポリエステルフィルムを製造することができる易接着層用組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層とを有する光学用ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を含む易接着層を使用した場合には、強固な密着性を確保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
[1] ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層とを有し、易接着層は、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂およびイソシアネート系架橋剤を含む、光学用ポリエステルフィルム。
[2] ポリエステルフィルムの融解サブピーク温度が130〜200℃である、[1]に記載の光学用ポリエステルフィルム。
[3] イソシアネート系架橋剤が、少なくともマロン酸エステル誘導体によりブロックされたブロックイソシアネート化合物である、[1]または[2]に記載の光学用ポリエステルフィルム。
[4] ポリエステル系樹脂の数平均分子量が、15000以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
[5] ポリエステルフィルムの面内方向のレタデーションReが4000〜30000nmであり、厚み方向のレタデーションRthと面内方向のレタデーションReの比であるRe/Rthが0.6〜1.2である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
[6] 未延伸のポリエステルフィルム、または縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することにより製造される、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
[7] 未延伸のポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することにより製造される、[1]〜[6]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
[8] 積層フィルムの横方向の延伸倍率と縦方向の延伸倍率との比率である、横方向の延伸倍率/縦方向の延伸倍率が、1.5以上であるか、又は積層フィルムの縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率との比率である、縦方向の延伸倍率/横方向の延伸倍率が、1.5以上である、[6]または[7]に記載の光学用ポリエステルフィルム。
[9] 偏光子保護用フィルムである、[1]〜[8]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法であって、未延伸のポリエステルフィルム、または縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を積層して積層フィルムを得る工程と、積層フィルムを縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸する工程を含む、光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムと偏光子とを少なくとも有する偏光板。
[12] さらに保護フィルムとハードコート層とを含む[11]に記載の偏光板。
[13] [11]または[12]に記載の偏光板を有する画像表示装置。
[14] ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を少なくとも含む易接着層用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配向軸のばらつきが小さく、密着性が良好な光学用ポリエステルフィルム及びその製造方法が提供される。さらに本発明の光学用ポリエステルフィルムを含む偏光板及び画像表示装置によれば、偏光子との密着が良好であり、反射型偏光子と組み合わせて使用した場合の輝度の低下を抑制することができる。さらに本発明の易接着層用組成物を用いることにより、配向軸のばらつきが小さく、密着性が良好な光学用ポリエステルフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の光学用ポリエステルフィルムの構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の光学用ポリエステルフィルムの構成の他の一例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の偏光板の構成の一例を示す断面図である。
図4図4は、液晶表示装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書において「縦方向」とは、帯状(長尺状)のフィルムの流延方向(MD方向)をいい、「横方向(幅方向ともいう)」とは、帯状(長尺状)のフィルムの流延方向(MD方向)と直行する方向(TD方向)をいう。
【0015】
(光学用ポリエステルフィルム)
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層とを有し、前記易接着層は、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールを「PVA」ともいう)、およびイソシアネート系架橋剤を少なくとも含むことを特徴とする。本発明の光学用ポリエステルフィルムの用途は特に制限はないが、例えば、偏光子保護用フィルムとして用いることができる。
【0016】
本発明の光学用ポリエステルフィルムが強固な密着性を達成するメカニズムについては、易接着層において、カルボン酸基(COOH基)の存在により酸価が増大することによりイソシアネート反応速度が増大する効果(触媒作用)、あるいはカルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂のOH基とイソシアネート基との反応に加え、カルボン酸基とイソシアネート基との反応による三次元架橋構造が形成されることによる効果と推測されるが、本発明はこれらのメカニズムによって何ら限定されるものではない。
【0017】
図1には、本発明の光学用ポリエステルフィルムの構成例が示されている。図1に記載の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム10、及び易接着層12を有している。図2には、本発明の光学用ポリエステルフィルムの別の構成例が示されている。図2に記載の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム10の両面に易接着層12及び易接着層14を有している。図1及び図2に示す通り、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を有していればよく、ポリエステルフィルムの片面のみに易接着層を有していてもよいし、ポリエステルフィルムの両面に易接着層を有していてもよい。図1及び図2に記載の光学用ポリエステルフィルムにおいては、ポリエステルフィルム10と易接着層12、およびポリエステルフィルム10と易接着層14は接するように積層されていることが好ましい。なお、図2において、易接着層12および易接着層14の構成は同じであってもよく、異なっていてもよいが、各々の易接着層の上に積層される被着対象物との接着性が十分に発揮されるよう調製されることが好ましい。
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、上記のような構成を有することにより、後述するハードコート層や偏光子に貼り合わせた際に優れた密着性を発揮することができる。
【0018】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、未延伸のポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することにより製造されることが好ましい。中でも、光学用ポリエステルフィルムの製造に用いられるポリエステルフィルムは未延伸のポリエステルフィルムであることが好ましく、未延伸のポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することにより光学用ポリエステルフィルムが製造されることがより好ましい。
【0019】
さらに、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、未延伸のポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを、横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することにより製造されることがより好ましい。横方向の延伸倍率は、3.0倍以上7.0倍以下であることが好ましく、3.5倍以上6.0倍以下であることがより好ましく、4.0倍以上5.0倍以下であることがさらに好ましい。
なお、光学用ポリエステルフィルムの製造に用いられるポリエステルフィルムが縦方向あるいは横方向に延伸されたポリエステルフィルムである場合、易接着層を積層する前の延伸倍率は、1.0倍以上1.4倍以下であればよく、1.0倍以上1.3倍以下であることが好ましく、1.0倍以上1.2倍以下であることがより好ましい。
【0020】
易接着層を積層した後のポリエステルフィルムの縦方向あるいは横方向の延伸倍率は、3.0倍以上7.0倍以下であることが好ましく、3.5倍以上6.0倍以下であることがより好ましく、4.0倍以上5.0倍以下であることがさらに好ましい。すなわち、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムに易接着層を積層した積層フィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が少なくとも3.0倍以上となるように、延伸して製造されることが好ましい。
なお、未延伸フィルムに易接着層を積層した後、すなわち積層フィルムを形成した後、同時に縦方向と横方向に延伸することもできるが、その場合、縦方向あるいは横方向のいずれか一方の延伸倍率は1.0倍以上1.4倍以下とし、1.0倍以上1.4倍以下に延伸した方向とは直交する方向に3.0倍以上7.0倍以下延伸することが好ましい。また、縦方向の延伸倍率を1.0倍以上1.4倍以下とし、横方向の延伸倍率を3.0倍以上7.0倍以下とすることが、より好ましい。
【0021】
本発明において好ましくは、積層フィルムの横方向の延伸倍率と縦方向の延伸倍率との比率(横方向の延伸倍率/縦方向の延伸倍率)を1.5以上とするか、又は積層フィルムの縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率との比率(縦方向の延伸倍率/横方向の延伸倍率)を1.5以上とすることができる。このような比率は、画像表示装置における虹ムラの解消に有効である。なお、上記比率の上限は特に限定されないが、一般的には10以下である。
【0022】
なお、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、シート状フィルムであってもよく、ロール状フィルムであってもよい。光学用ポリエステルフィルムがロール状である場合、ロールを巻き出した際の長手方向がMD方向となる。
【0023】
<ポリエステルフィルム>
本発明の光学用ポリエステルフィルムに用いるポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするフィルムであって、好ましくは融解サブピーク温度(Tsm)が130〜200℃であるフィルムである。ポリエステルフィルムは、単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。また、これら単層フィルムまたは多層フィルムの両面または片面に表面処理が施されたものであってもよく、この表面処理は、コロナ処理、真空グロー処理、大気圧グロー処理、火炎処理、ケン化処理、熱処理、紫外線照射、電子線照射等による表面改質であってもよいし、高分子や金属等の塗布や蒸着等による薄膜形成であってもよい。ポリエステルを主成分とするフィルムとは、ポリエステルフィルム全体に占めるポリエステルの質量割合が、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるフィルムを意味する。
【0024】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0025】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する構成単位と、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する構成単位とを有するポリエステルであり、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるものがよく、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分や、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が用いられていてもよい。ポリエチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸および/または他のジオールを直接反応させるいわゆる直接重合法や、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール、並びに必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステルおよび/または他のジオールをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。
【0026】
光学用ポリエステルフィルムの製造に用いられるポリエステルフィルムは、未延伸のポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムであることが好ましい。このポリエステルフィルムに、易接着層が積層され、次いで易接着層が積層された積層フィルムは、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸される。このような工程を経て光学用ポリエステルフィルムは製造される。すなわち、光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは、主として一軸方向のみ方向に延伸されたものである。
【0027】
なお、ポリエステルフィルムに易接着層が積層された積層フィルムを、縦方向あるいは横方向の延伸倍率が3.0倍以上7.0倍以下となるように延伸した光学用ポリエステルフィルムにおいては、易接着層表面のSEM観察を行うことにより、積層フィルムを所定の条件で延伸したことを判別することができる。SEM観察では、易接着層表面の微細凹凸の形状や易接着層中に添加する粒子付近の塗布層の乱れの形状を観察することができ、これにより、積層フィルムを所定の条件で延伸したことを判別することができる。
また、積層フィルムを、横方向の延伸倍率が3.0倍以上7.0倍以下となるように延伸した光学用ポリエステルフィルムにおいては、面内方向のレタデーション(Re)を求める際の屈折率の値から、積層フィルムを所定の条件で延伸したことを判別することができる。ここで、面内方向のレタデーション(Re)を求める際の屈折率とは、後述する式(1)においてnaおよびnbで表される値であり、屈折率が大きい方が、主たる延伸方向となっている。
【0028】
光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの面内方向のレタデーション(Re)は、4000〜30000nmであることが好ましく、4500〜25000nmであることがより好ましく、5000〜20000nmであることがさらに好ましい。ここで、面内方向のレタデーション(Re)とは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△nab=|na−nb|)とフィルム厚みd(nm)との積(△nab×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。
面内方向のレタデーション(Re)は、下記式(1)で表される。
Re=(na−nb)×d・・・(1)
上記式(1)において、naは延伸ポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率であり、nbは延伸ポリエステルフィルムの面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率であり、dは延伸ポリエステルフィルムの厚みである。
【0029】
光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの面内方向のレタデーション(Re)を上述した通り、高いレタデーション値とすることにより、光学用ポリエステルフィルムを画像表示装置等に組み込んだ際に虹ムラが発生することを抑制することができる。
【0030】
光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの融解サブピーク温度(Tsm)は好ましくは130〜200℃であり、140〜180℃であることがより好ましく、150〜175℃であることが特に好ましい。ここで、融解サブピーク温度とは、示差走査熱量計測定による結晶融解前に現れる微小吸熱ピークである。この融解サブピーク(Tsm)はフィルムの熱固定温度に相当する温度に微小ピークとして観測され、熱固定処理で形成された結晶構造のうち不完全な部分(擬結晶)が融解するために生じるものである。すなわち、光学用ポリエステルフィルムを製造する際のポリエステルフィルムの熱固定温度は、好ましくは130〜200℃であり、140〜180℃であることがより好ましく、150〜175℃であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の光学用ポリエステルフィルムにおいては、ポリエステルフィルムの熱固定温度を上記のように設定した場合であっても光学用ポリエステルフィルムと偏光子やハードコート層等との密着性を十分に確保することができる。これは、ポリエステルフィルムの上に易接着層を積層する時点におけるポリエステルフィルムの延伸倍率が低く、ポリエステルの配向性および結晶性が低いため、ポリエステルフィルムと易接着層間の密着が得られ易いためと推定される。これにより、光学用ポリエステルフィルムと偏光子やハードコート層との密着性を効果的に高められるものと考えられる。
【0032】
光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの厚み方向のレタデーション(Rth)は、3000〜35000nmであることが好ましく、3500〜33000nmであることがより好ましく、4000〜30000nmであることがさらに好ましい。ここで、厚さ方向のレタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△nac(=|na−nc|)、△nbc(=|nb−nc|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるレタデーションの平均を示すパラメーターである。
厚み方向のレタデーション(Rth)は、下記式(2)で表される。
Rth={(na+nb)/2−nc}×d (2)
上記式(2)において、naは延伸ポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率であり、nbは延伸ポリエステルフィルムの面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率であり、ncは延伸ポリエステルフィルムの厚み方向の屈折率であり、dは延伸ポリエステルフィルムの厚みである。
【0033】
Re/Rthは、0.6〜1.2であればよく、0.6〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましく、0.9〜1.1であることがさらに好ましい。Re/Rthを上記範囲内とすることにより、光学用ポリエステルフィルムと偏光子やハードコート層との密着性を効果的に高めることができる。さらに、光学用ポリエステルフィルムを画像表示装置等に組み込んだ際に虹ムラが発生することを抑制することができる。
【0034】
ポリエステルフィルムの厚みは、15〜300μmとすることが好ましく、25〜260μmとすることがより好ましく、40〜100μmとすることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みを上記範囲内とすることにより、偏光板を薄膜化することが可能となり、かつ光学用ポリエステルフィルムを画像表示装置に組み込んだ際の虹ムラの発生を抑制することができる。
【0035】
ポリエステルフィルムには、必要に応じて公知の添加剤を配合してもよく、その例としては、紫外線吸収剤、粒子、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、染料、顔料等が挙げられる。ただし、ポリエステルフィルムを防眩フィルムの基材フィルムとして用いる場合は、一般に透明性が必要とされるため、添加剤の添加量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0036】
ポリエステルフィルム中には液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止するために、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0037】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系、ベンゾフェノン系、トリアジン系などが挙げられる。耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、トリアジン系、環状イミノエステル系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0038】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0039】
また市販品として、例えば、アデカスタブLA−31(商品名、ADEKA製)、JAST−500(商品名、城北化学工業)等を挙げることができる。
【0040】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、
2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)1,3,5−トリアジン−2−イル]トリアジン−2(オクチロキシ)フェノール、2−[4,6−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ] −フェノール、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等を用いることができる。
【0041】
また市販品として、例えば、Tinuvin1577FF(商品名、Ciba製)、CYASORB UV−1164(商品名、Cytec製)、アデカスタブLA−46(商品名、ADEKA製)等を挙げることができる。
【0042】
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−または2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(またはm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−(p−(N−メチルカルボニル)フェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2、2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]〔なお、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)とも言う〕、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−または1,5−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0043】
上記化合物のうち、色調を考慮した場合、黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系の化合物が好適に用いられ、その例としては、下記の一般式(1)で表されるものがより好適に用いられる。
【0044】
【化1】
【0045】
上記一般式(1)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表しXおよびXはそれぞれ独立して水素原子または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0046】
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、アルコキシル基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基。
【0047】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、本発明においては、2、2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が特に好ましい。
【0048】
ポリエステルフィルム中に含有させる紫外線吸収剤の添加率は、ポリエステルフィルムの全質量に対し、10.0質量%以下であることが好ましく、0.3〜3.0質量%であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加率を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの接着性の低下や表面機能性の悪化を防ぐことができる。
【0049】
また、多層構造のポリエステルフィルムの場合、少なくとも3層構造のものが好ましく、紫外線吸収剤は、その中間層に配合することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を配合することにより、当該化合物がフィルム表面へブリードアウトしてくるのを防ぐことができ、その結果、フィルムの接着性等の特性を維持することができる。
【0050】
ポリエステルフィルムによって、紫外線による液晶の劣化を防止するならば、目安として、ポリエステルフィルムの波長380nmの光線透過率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5%以下である。
【0051】
ポリエステルフィルムには、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステルフィルム製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0052】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0053】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、ポリエステルフィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、ポリエステルフィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において防眩層やクリアハードコート層、反射防止層等の機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。なお平均粒径は、体積平均粒径を指し、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0054】
さらにポリエステルフィルム中の粒子含有量は、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜3質量%の範囲である。粒子含有量が0.001質量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5質量%を超えて添加する場合には、ポリエステルフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0055】
ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用し得る。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0056】
また、ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などが挙げられる
【0057】
また、ポリエステルフィルムにヘイズを付与するために、ポリエステルフィルムに無機微粒子または有機微粒子を配合してもよい。無機微粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものを代表的なものとして挙げることができる。また、有機微粒子としては、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)等の樹脂粒子を用いることができる。
【0058】
<易接着層>
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を有し、易接着層は、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を含む。易接着層がポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を含むことで、密着性を向上させることができる。
【0059】
本発明の光学用ポリエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、一方の易接着層は偏光子側となり、他方の易接着層はハードコート側とすることができる。偏光子側の易接着層は、各種偏光子との接着性を向上させるための層であり、ハードコート層側の易接着層は、各種のハードコート層との接着性を向上させるための層である。偏光子側の易接着層が、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を含んでいればよく、ハードコート層側の易接着層は、偏光子側の易接着層と同一の易接着層であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
<<ポリエステル系樹脂>>
易接着層に用いられるポリエステル系樹脂の主な構成成分は、特に制限はないが、例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物であることが好ましい。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ソジウムスルホテレフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、4−ソジウムスルホイソフタル酸、4−カリウムスルホイソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。
【0061】
多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールエチルスルホン酸カリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0062】
ポリエステル系樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性の観点から、疎水性の方が好ましく、その酸価は低い方が好ましい。具体的には、10KOHmg/g以下、好ましくは、5KOHmg/g以下、更に好ましくは、3KOHmg/g以下が良い。
また、ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)は、密着性の観点から、易接着層の凝集力を高める必要があり、10000以上が好ましい。好ましくは、15000以上であり、さらに好ましくは20000以上が良い。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、30℃〜90℃が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。
【0063】
なお、易接着層に占めるポリエステル系樹脂由来の化合物の含有率は、30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることがさらに好ましい。ポリエステル系樹脂由来の化合物の含有率を上記範囲内とすることにより、易接着層と偏光子またはハードコート層、および易接着層とポリエステルフィルムの密着性を高めることができる。
【0064】
<<カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂>>
易接着層に用いられるカルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂は、カルボン酸変性されたポリビニルアルコール部位を有するものである。
易接着層に用いられるカルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂の原料となる酸成分には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、あるいはそのモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸等、側鎖にカルボキシル基を含むものであればいずれも使用可能であるが、酸により架橋を形成しやすいジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸が好ましく、マレイン酸、イタコン酸がより好ましい。
【0065】
カルボン酸変性度は、特に限定されるものではないが、0.5〜10モル%が好ましく、2〜5モル%がより好ましい。
けん化度は、特に限定されるものではないが、50〜95モル%であることが好ましく、60〜90モル%であることがより好ましく、70〜90モル%であることがさらに好ましい。
また、重合度は、特に限定されるものではないが、300以上2000以下が好ましく、400以上2000以下がより好ましく、500以上2000以下がさらに好ましい。重合度が高いものほど、易接着層の凝集力を高めることができ、密着力を向上させることができるが、塗布液としての粘度が上昇してしまう。塗布液粘度の観点から、重合度の上限は2000以下であることが好ましい。また、重合度の異なるものをブレンドすることで、易接着層の凝集力を高めながら、塗布液の粘度を調整することもできる。
【0066】
なお、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂に詳細については、特開平3−279410号公報に記載されており、特開平3−279410号公報に記載の内容は本明細書の開示の一部として本明細書中に引用されるものとする。
【0067】
カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂の含有率は、易接着層全体の質量に対して、10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることがさらに好ましい。含有率を上記範囲内とすることにより、密着性を高めることができる。
【0068】
<<イソシアネート系架橋剤>>
易接着層は、イソシアネート化合物を含むイソシアネート系架橋剤を含む。イソシアネート系架橋剤を使用することにより、強固な密着力が確保可能となる。イソシアネート系架橋剤は、インラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0069】
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体由来の化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0070】
イソシアネート化合物は、塗布液のポットライフの観点から、ブロックイソシアネートの状態で使用することが好ましい。そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジイソプロピルアミン、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物、ジメチルピラゾール、1、2,4−トリアゾールなどのピラゾール化合物等が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0071】
また、本発明においては、未延伸、あるいは一方向に1.0倍以上1.4倍以下の延伸を行ったポリエステルフィルムに塗布後、延伸するため、ブロックイソシアネート化合物は、90℃程度の低温でブロック剤が外れる必要がある。そのため、ブロック剤としては、活性メチレン系化合物のマロン酸ジエステル誘導体を使用したものが好ましい。また、アミン系化合物として、鎖状2級アミンが好ましく、中でもジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミンがより好ましい。さらに、活性メチレン系およびアミン系を併用することがより好ましく、特に、マロン酸ジエチルとジイソプロピルアミンから成るブロック剤が好ましい。
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いても良いし、複数種を用いても良い。さらには、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0072】
イソシアネート系架橋剤の含有率は、易接着層全体の質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜25質量%であることがより好ましく、2〜20質量%であることがさらに好ましい。含有率を上記範囲内とすることにより、密着性を高めることができる。
また、イソシアネート系架橋剤の他に、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等からなる架橋剤を混合して用いてもよい。
【0073】
<<その他の成分>>
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、易接着層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。また、本発明で用いられる易接着層用塗布組成物には、必要に応じて触媒、界面活性剤、分散剤、増粘剤、成膜助剤、アンチブロッキング剤などを含んでもよい。例えば、触媒としては有機スズ系化合物(例えば第一工業製薬製、エラストロンCat・21)、界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、スルホコハク酸系界面活性剤、ポリエチレンオキサイド系界面活性剤(例えば三洋化成工業製、ナロアクティCL−95)などが挙げられる。なお、易接着層中の各種成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0074】
前述の通り、ハードコート層側の易接着層(ハードコート層側易接着層)は、上述した偏光子側の易接着層と同様のものであってもよく、異なっていてもよい。ハードコート層側の易接着層に用いられる樹脂や、バインダーポリマー、架橋剤等については、上述した偏光子側の易接着層(偏光子側易接着層)に用いたものを同様に例示することができるが、用いる樹脂や添加剤は偏光子側の易接着層と異なっていてもよい。
【0075】
ハードコート層側の易接着層中には、ハードコート層等、クリアな表面機能層が形成された場合に、外光による干渉ムラを軽減するために、屈折率を調整する材料を使用することも可能である。屈折率を調整する材料とは、具体的には、本発明においては高屈折率材料である。高屈折率材料としては、例えば、金属化合物、芳香族含有有機化合物、硫黄原子、臭素原子等が挙げられる。
【0076】
金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化セリウム、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の金属酸化物、アルミニウムアセチルアセトナート、ヒドロキシアルミニウムジアセテート、ジヒドロキシアルミニウムアセテート等のアルミニウム類;テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタン類;鉄アセチルアセトナート、鉄アセテート等の鉄類;コバルトアセチルアセトナート等のコバルト類;銅アセテート、銅アセテートモノヒドレート、銅アセテートマルチヒドレート、銅アセチルアセトナート等の銅類;亜鉛アセテート、亜鉛アセテートジヒドレート、亜鉛アセチルアセトナートヒドレート等の亜鉛類;ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等のジルコニウム類等の金属元素を有する有機化合物が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0077】
上記金属元素を有する有機化合物の中でも特に塗布性や透明性が良好であるという点でチタン元素あるいはジルコニウム元素を有する有機化合物が好ましく、さらに好ましくはインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性チタンキレート化合物、水溶性ジルコニウムキレート化合物等が好適に使用される。
【0078】
芳香族含有有機化合物としては、例えば、ナフタレン環やアントラセン環等で例示できる縮合多環式芳香族化合物、ビスフェノールA化合物、ビフェニル化合物、フルオレン化合物等のベンゼン環の割合が高い化合物、芳香族含有イミド化合物、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤含有化合物、各種複素芳香環化合物等が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。芳香族化合物はハードコート層側易接着層中に含有するポリエステル樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂に組み入れることが可能であるため有効である。中でもポリエステル樹脂はその構造上、容易に多くの芳香族化合物を使用することが可能である。芳香族化合物の中でもナフタレン環やビスフェノールA化合物は効率よく易接着層を高屈折率化することが可能であるため有用である。また、架橋剤として利用可能なメラミン化合物は、複素芳香環の割合が高い化合物であり、高屈折率化に有効な化合物でもある。
【0079】
偏光子側およびハードコート層側易接着層中には、易接着層のブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を含有してもよい。粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいはPMMAやポリスチレン等の架橋高分子粒子等の有機粒子等が挙げられる。具体的には、平均粒径30nm〜粒径300nmのシリカゾル等が挙げられる。
【0080】
<光学用ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、未延伸のポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムの両面に易接着層を積層し、積層フィルムを得る工程と、積層フィルムを縦方向あるいは横方向に延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸する工程を含む。また、光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの融解サブピーク温度(Tsm)は好ましくは130〜200℃であり、易接着層は、ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤を含む。
【0081】
なお、積層フィルムを延伸する工程では、積層フィルムを横方向に延伸倍率が3.0倍以上となるように延伸することが好ましく、3.0倍以上7.0倍以下となるように延伸することがより好ましく、3.5倍以上6.0倍以下となるように延伸することがさらに好ましく、4.0倍以上5.0倍以下となるように延伸することが特に好ましい。
【0082】
光学用ポリエステルフィルムを製造する際には、まず、ポリエステル樹脂をフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸ポリエステルフィルムを得る。この未延伸ポリエステルフィルムには必要であれば、縦方向、あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸を施してもよい。延伸を行う場合は、ポリエステルフィルムのTg〜(Tg+60)℃の温度で延伸することが好ましい。
【0083】
未延伸ポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムに、易接着層塗布液が塗布される。
易接着層は、インラインコーティング方によって設けられることが好ましい。この場合、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50質量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて、ポリエステルフィルムを製造することが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0084】
易接着層塗布液の塗布量は、0.1〜20g/mであることが好ましく、1〜15g/mであることがより好ましく、3〜10g/mであることがさらに好ましい。また、易接着層の膜厚は、0.002〜1.0μmであることが好ましく、0.02〜0.5μmであることがより好ましく、0.03〜0.3μmであることがさらに好ましい。易接着層塗布液の塗布量や膜厚を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムや偏光子、ハードコート層との密着性を保持しつつ、外観や透明性を高めることができる。
【0085】
本発明において、易接着層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
【0086】
本発明において、ポリエステルフィルム上に易接着層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、インラインコーティングにより易接着層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うことが好ましい。さらに好ましくは、80℃〜140℃で3〜100秒間熱処理を行うことが良い。なお、オフラインコーティングにより易接着層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜190℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うことが好ましい。
【0087】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0088】
次いで、易接着層塗布液を塗布した積層フィルムは、縦方向あるいは横方向に3.0以上、例えば3.0〜7.0倍、好ましくは3.5〜6.0倍、さらに好ましくは4.0〜5.0倍になるよう延伸される。なお、ポリエステルフィルムは横方向に一軸延伸されてなることが、1m以上の幅を有する製品ロールを生産する際の生産効率の観点から好ましい。なお、光学用ポリエステルフィルムは、横方向にのみ一軸延伸されてなることが好ましいため、光学用ポリエステルフィルムの製造に用いるポリエステルフィルムは未延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0089】
なお、延伸工程を行う前にフィルムを予熱することが好ましい。イソシアネート系架橋剤としてマロン酸エステル誘導体によりブロックされたブロックイソシアネート化合物を使用した場合には、上記の通り予熱することにより、ブロック剤としてのマロン酸エステル誘導体が脱離し、架橋反応が進む。特に、未延伸のポリエステルフィルムまたは縦方向あるいは横方向の延伸倍率が1.4倍以下となるように延伸されたポリエステルフィルムに適した予熱温度は80℃〜120℃であり、このような低い予熱温度でも、架橋反応を進めることが出来る。予熱温度としては、80〜140℃が好ましく、80〜120℃がより好ましく、85〜105℃がさらに好ましい。
【0090】
横方向の延伸が施された積層フィルムには、次に、130〜185℃の温度で、1〜60秒間熱処理(ここでは熱固定という)を行うことが好ましい。熱固定の温度は130〜185℃であればよく、140〜180℃であることがより好ましく、150〜175℃であることがさらに好ましい。
【0091】
さらに、熱固定温度より10〜20℃低い温度で幅方向に0〜20%収縮させながら再熱処理(弛緩処理という)を行うことが好ましい。この方法では、フィルムがロールに接触することが少なくなるため、フィルム表面に微小な傷等ができにくく、光学用途への適用に有利である。
【0092】
上記のようにして得られた光学用ポリエステルフィルムを偏光子に貼り合わせる場合、偏光子の易接着層側に接着剤を介して偏光子を貼り合わせる。接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリブチルアクリレート等のアクリル系化合物、グリシジル基やエポキシシクロヘキサンに例示される脂環式エポキシ基を有するエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0093】
作製した接着剤層の上に、例えば一軸延伸され、ヨウ素等で染色されたポリビニルアルコールを偏光子として貼り合わせることが好ましい。偏光子の反対側にも保護フィルムや位相差フィルム等を貼り合わせて偏光板とすることができる。
【0094】
(偏光板)
本発明は、上述したような光学用ポリエステルフィルムと偏光子とを含む偏光板に関する。偏光板には、さらにハードコート層や保護フィルムが含まれることが好ましい。図3には、本発明の偏光板の態様の一例を示す断面図が示されている。図3に示されているように、偏光板は、ポリエステルフィルム10と易接着層12および14を有する光学用ポリエステルフィルムと、偏光子20と、保護フィルム30と、ハードコート層40を有することが好ましい。ここでは、易接着層12は、偏光子側の易接着層であり、易接着層14はハードコート層側の易接着層である。易接着層12と易接着層14とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0095】
本発明の偏光板に用いる偏光子は、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。偏光子の製造方法としては特に制限はないが、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。
【0096】
光学用ポリエステルフィルムの延伸方向と偏光子の透過軸あるいは吸収軸は、平行あるいは直交させることが好ましい。光学用ポリエステルフィルムの延伸方向と偏光子の透過軸あるいは吸収軸を平行あるいは直交させることにより、光学用ポリエステルフィルムをバックライト側の偏光板用に用いた場合であって、反射型偏光子(例えば、3M社製DBEFシート)と組み合わせて使用した場合の輝度低下を抑制することができる。
【0097】
ハードコート層は、物理強度を付与するために、偏光板の表面に設けられることが好ましい。ハードコート層の形成方法については、公知の方法を採用することができるが、本発明の偏光板においては、ハードコート層は塗布により形成されてなることが好ましい。また、ハードコート層は、紫外線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂と光重合開始剤とを含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0098】
電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1または2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができ、本発明の偏光板はハードコート層がアクリレートを含むことが、光学用ポリエステルフィルムとしてのポリエステルフィルムとポリエステルフィルムに積層するハードコート層の湿熱経時後との密着性を向上させる観点から、好ましい。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等およびこれらをエチレンオキサイド(EО)等で変性した多官能化合物、または、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよびアクリレートを指すものである。
【0099】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量(数平均分子量300〜8万、好ましくは400〜5000)のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。なお、この場合の樹脂とは、モノマー以外のダイマー、オリゴマー、ポリマー全てを含む。
【0100】
アクリレートとして好ましい化合物としては、3以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。このような化合物を用いると形成するハードコート層の架橋密度を高めることができ、硬度を良好にできる。
具体的には、本発明においては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステル多官能アクリレートオリゴマー(3〜15官能)、ウレタン多官能アクリレートオリゴマー(3〜15官能)等を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
【0101】
電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0102】
熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂およびゴムまたはエラストマー等を挙げることができる。熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性の観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0103】
また、ハードコート層用組成物は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0104】
光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、光重合開始剤としては、具体例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0105】
光重合開始剤としては、電離放射線硬化型樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独または混合して用いることが好ましい。また、電離放射線硬化型樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独または混合物として用いることが好ましい。
【0106】
光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する電離放射線硬化型樹脂の場合は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンが、電離放射線硬化型樹脂との相溶性、および、黄変も少ないという理由から好ましい。
ハードコート層用組成物にける光重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、ハードコート層の硬度を上述した範囲とすることができないことがあり、10質量部を超えると、塗設した膜の深部まで電離放射線が届かなくなり内部硬化が促進されず、目標であるハードコート層の表面の鉛筆硬度3H以上が得られないおそれがあるためである。
【0107】
光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は2質量部であり、より好ましい上限は8質量部である。光重合開始剤の含有量がこの範囲にあることで、膜厚方向に硬度分布が発生せず、均一な硬度になりやすくなる。
ハードコート層には、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
【0108】
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またはドコート層の耐擦傷性は、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後のハードコート層を塗設した試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0109】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を含むことを特徴とする。画像表示装置としては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELDまたはIELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。これらの画像表示装置は、画像表示パネルの表示画面側に本発明の偏光板を備えることが好ましい。
【0110】
<液晶表示装置>
液晶表示装置は、本発明の偏光板と、液晶表示素子とを備えるものであることが好ましい。ここで、液晶表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の偏光板を適用することができる。液晶表示装置においては、本発明の偏光板は、そのハードコート層側を外側にして液晶表示素子よりも視認側に配置されることが好ましい。ポリエステルフィルムは、液晶表示素子の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを液晶表示素子とする場合は、例えば先述のように、偏光子を介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。また、本発明の偏光板は、ハードコート層側の易接着層を外側にして、液晶表示素子よりもバックライト側に配置されることも好ましい。この場合、ハードコート層側の易接着層上にハードコート層を形成しても良いが、易接着層が最表面として使用される形態でもよい。このように、ポリエステルフィルムを有する本発明の偏光板を液晶表示素子に適用した場合には、ポリエステルフィルムとハードコート層との湿熱経時後の密着耐久性に優れるうえ、従来の保護フィルムを用いた場合よりも、高温多湿環境下で使用した際の偏光機能や色相等の低下を防止することができる。また、液晶表示素子の強度が補強され、液晶表示素子の反りを防止することもできる。液晶表示装置の一例を図4に示す。図4において、液晶セル42の視認側には、保護フィルム30、偏光子20、易接着層12、ポリエステルフィルム10、易接着層14及びハードコート層40がこの順に配置されている。また、液晶セル42のバックライト側には、保護フィルム30、偏光子20、易接着層12、ポリエステルフィルム10、易接着層14がこの順に配置されている。図4に示す液晶表示装置は上記に加えて、反射型偏光子44、プリズムシート46、拡散シート48、導光板50、反射シート52及び光源54から構成されている。図4に示すように、本発明の偏光板は、液晶セルの視認側およびバックライト側の両方で使用することができる。バックライト側に反射型偏光子が使用された場合、偏光子と光学フィルムの軸ズレにより偏光面が回転すると、輝度低下が発生することがある。図4の構成を採用することにより、上記したような輝度低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0112】
[実施例1]
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行う直接エステル化法を用いて、連続重合装置により原料ポリエステル1(Sb触媒系PET)を得た。
【0113】
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4700kgとエチレングリコール1800kgを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/時間の流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、三酸化アンチモンはSb添加量が元素換算値で150ppmとなるように連続的に添加した。
【0114】
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させた。第二エステル化反応槽には、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液と、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、Mg添加量およびP添加量が元素換算値でそれぞれ65ppm、35ppmになるように連続的に供給した。
【0115】
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
【0116】
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10−4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
【0117】
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10−4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
【0118】
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット(断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm)を作製した。
【0119】
得られたポリマーは、IV=0.65であった。このポリマーを原料ポリエステル1とした(以降、PET1と略す)。なお、IVは固有粘度を表す。ポリエステルの固有粘度(IV)は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、25℃で測定した溶液粘度から、下式より固有粘度を算出することができる。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量であり(本測定では1g/100mlとする)、Kはハギンス定数(0.343とする)であり、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定することができる。
【0120】
(原料ポリエステル2)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)10質量部、PET1(IV=0.65)90質量部を混合し、混練押出機を用い、PET1の作製と同様にしてペレット化して、紫外線吸収剤を含有する原料ポリエステル2を得た(以降、PET2と略す)。
【0121】
<ポリエステルフィルムの製造>
−フィルム成形工程−
原料ポリエステル1(PET1)90質量部と、紫外線吸収剤を含有した原料ポリエステル2(PET2)10質量部を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入し、押出機1で300℃に溶融した(中間層II層)。
またPET1を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径30mmの1軸混練押出機2のホッパー2に投入し、押出機2で300℃に溶融した(外層I層、外層III層)。
これらの2種のポリマー溶融物をそれぞれギアポンプ、濾過器(孔径20μm)に介した後、2種3層合流ブロックにて、押出機1から押出されたポリマーが中間層(II層)に、押出機2から押出されたポリマーが外層(I層及びIII層)になるように積層し、幅120mmのダイよりシート状に押し出した。
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂を、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルム1を得た。このとき、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押出機の吐出量を調整した。
【0122】
−縦延伸工程−
未延伸ポリエステルフィルム1を、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて、95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群でフィルム走行方向に3.1倍延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルム2を得た。
【0123】
−易接着層の形成−
(1)ハードコート層側易接着層の形成
下記化合物を下記の比率で混合し、ハードコート層側易接着層用の塗布液H1を作製した。
【0124】
(ハードコート層側易接着層用の塗布液H1)
水 56.6質量部
アクリル樹脂(A1、固形分28質量%) 21.4質量部
カルボジイミド化合物(C1、固形分40質量%) 2.9質量部
界面活性剤(E1、固形分1質量%水溶液) 8.1質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 9.6質量部
粒子(F1、固形分40質量%) 0.4質量部
滑剤(G、固形分30質量%) 1.0質量部
【0125】
以下に使用化合物の詳細を示す。
・アクリル樹脂(A1)
アクリル樹脂(A1)としては、下記組成のモノマーで重合したアクリル樹脂の水分散体(固形分28質量%)を用いた。
メチルメタアクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタアクリレート/アクリル酸=59/9/26/5/1(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)、Tg=45℃
・カルボジイミド化合物:(C1)(日清紡製、カルボジライトV−02−L2)
【0126】
・界面活性剤(E1):スルホコハク酸系界面活性剤(日本油脂製、ラピゾールA−90)
・界面活性剤(E2):ポリエチレンオキサイド系界面活性剤(三洋化成工業製、ナロアクティCL−95)
・粒子(F1):平均粒径50nmのシリカゾル
・滑剤(G):カルナバワックス
【0127】
(2)偏光子側易接着層の形成
下記化合物を下記の比率で混合し、偏光子側易接着層用の塗布液P1を作製した。
(偏光子側易接着層用の塗布液P1)
水 47.2質量部
ポリエステル水分散体(A2、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0128】
以下に使用化合物の詳細を示す。
・ポリエステル樹脂(A2)
ポリエステル樹脂(A2)としては、下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体を用いた。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=44/46/10//84/16(mol%)、Tg=61℃、酸価=2KOHmg/g、Mn=20000
・ポリビニルアルコール水溶液(B1)
ポリビニルアルコール水溶液(B1)は下記の手順で作製した。水90質量部を入れ、攪拌しながらケン化度が77%で重合度600のカルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(クラレ製)10質量部を徐々に添加した。添加後、液を攪拌しながら、95℃まで加熱し、樹脂を溶解させた。溶解後、攪拌しながら室温まで冷却して、固形分10質量%のポリビニルアルコール水溶液(B1)を作製した。
【0129】
・イソシアネート系化合物(C2)
イソシアネート系化合物(C2)は下記の手順で作製した。攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート):1000質量部、3価アルコールであるトリメチロールプロパン(分子量134)22質量部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化を行った。その後反応液温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒トリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイドを加え、転化率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は25,000mPa・s、イソシアネート基含有量は19.9質量%、数平均分子量は1080、イソシアネート基平均数は5.1であった。その後、NMR測定により、ウレタン結合、アロファネート結合、イソシアヌレート結合の存在を確認した。
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、上記で得られたポリイソシアネート100質量部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル76.6質量部を仕込み、80℃で6時間保持した。その後反応温度を60℃に冷却し、マロン酸ジエチル72質量部、ナトリウムメチラートの28%メタノール溶液0.88質量部を添加し、4時間保持した後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86質量部を添加した。
引き続き、ジイソプロピルアミン43.3質量部を添加し、反応液温度70℃で5時間保持した。この反応液をガスクロマトグラフで分析し、ジイソプロピルアミンの反応率が70%であることを確認し、固形分濃度70質量%のイソシアネート系化合物(B2)を得た。(有効NCO基質量5.3%)
【0130】
・触媒:有機スズ系化合物:(第一工業製薬製、エラストロンCat・21)
・粒子(F2):平均粒径80nmのシリカゾル
【0131】
(3)ポリエステルフィルムの両面への易接着層の塗布
一軸延伸ポリエステルフィルム2の両側に、500J/mの処理量でコロナ放電処理を実施した。その後、リバースロール法にて、片側に上記ハードコート層側易接着層用の塗布液H1を、もう一方の面に偏光子側易接着層用の塗布液P1を乾燥後の塗布量がどちらの面も0.12g/mになるように調整しながら、塗布した。
【0132】
−横延伸工程−
(予熱部)
この易接着層を形成した一軸延伸ポリエステルフィルム2を、テンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、予熱温度を120℃とし、延伸可能な温度まで加熱した。
【0133】
(延伸部)
引き続き、下記の方法、条件にてTD方向(フィルム幅方向、横方向)に横延伸し、5m幅のフィルムを得た。
《条件》
・横延伸温度:130℃
・横延伸倍率:4.0倍
・延伸速度 :900%/分
【0134】
(熱固定部)
次いで、ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら、熱固定処理を行った。
《条件》
・熱固定温度:160℃
・熱固定時間:20秒
【0135】
(熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムを緩和した。
《条件》
・熱緩和温度:160℃
・熱緩和率:TD方向(フィルム幅方向、横方向)1.5%
【0136】
(冷却部)
次に、熱緩和後のポリエステルフィルムを50℃の冷却温度にて冷却した。
【0137】
(フィルムの回収と、フィルムの分割)
冷却後の、偏光子側易接着層上に、15000J/mの処理量でコロナ放電処理を実施した。その後、ポリエステルフィルムを1.5m幅に幅方向に3分割し、クリップで把持したチャック部をトリミングした。その後、分割した各ロールの両端に幅10mm、高さ10μmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力18kg/mで2000m巻き取った。上記の通り3分割したサンプルを一方の端部側からそれぞれ端部A、中央部B、端部Cとした。
以上のようにして、厚さ100μm、幅1.5mの帯状(長尺状)の光学用ポリエステルフィルムA(端部)、B(中央部)、C(端部)を製造し、光学用ポリエステルフィルムとして用いた。
【0138】
[実施例2〜8]
実施例2及び3の光学用ポリエステルフィルムは、熱固定温度を、下記表の値となるように制御した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0139】
実施例4の光学用ポリエステルフィルムは、未延伸ポリエステルフィルム1の両側に直接、実施例1と同様に、コロナ放電処理、リバースロール法による塗布を行い、その後、テンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、実施例1と同様に横延伸処理を行った。なお、予熱温度、延伸温度ともに92℃とした。
【0140】
実施例5、6の光学用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの厚みを、下記表1の値となるように変更した以外は、実施例4と同様に作製した。
【0141】
実施例7、8の光学用ポリエステルフィルムは、縦延伸倍率を、下記表の値となるように制御した以外は、実施例1と同様に作製した。尚、予熱温度、延伸温度ともに100℃とした。
【0142】
[実施例9]
実施例4において、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P2に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P2は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
(偏光子側易接着層用の塗布液P2)
水 48.67質量部
ポリエステル水分散体(A2、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 21.8質量部
イソシアネート系化合物(C3、固形分27質量%) 2.7質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
炭酸水素ナトリウム 0.01質量部
炭酸ナトリウム1水和物 0.02質量部
【0143】
・イソシアネート化合物(C3)
イソシアネート化合物(C3)は下記の手順で作製した。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とマレイン酸とのポリエステル200質量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート34質量部を添加し、反応を行い、30質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を73質量部添加し攪拌を行った後、水で希釈し、固形分27質量%のブロックイソシアネート化合物(C3)を得た。
【0144】
[実施例10]
実施例4において、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P3に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P3は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
【0145】
(偏光子側易接着層用の塗布液P3)
水 50.2質量部
ポリエステル水分散体(A2、固形分30質量%) 14.5質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 21.8質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 1.0質量部
イソシアネート系化合物(C3、固形分27質量%) 2.7質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
炭酸水素ナトリウム 0.01質量部
炭酸ナトリウム1水和物 0.02質量部
【0146】
[実施例11]
実施例4において、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P4に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P4は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
(偏光子側易接着層用の塗布液P4)
水 47.2質量部
ポリエステル水分散体(A2、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 20.4質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B2、固形文10質量%) 5.1質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0147】
・ポリビニルアルコール水溶液(B2)
ポリビニルアルコール水溶液(B2)は下記の手順で作製した。水90質量部を入れ、攪拌しながらケン化度が87%で重合度1800のカルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(クラレ製)10質量部を徐々に添加した。添加後、液を攪拌しながら、95℃まで加熱し、樹脂を溶解させた。溶解後、攪拌しながら室温まで冷却して、固形分10質量%のポリビニルアルコール水溶液(B2)を作製した。
【0148】
[実施例12]
実施例4において、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P5に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P5は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
【0149】
(偏光子側易接着層用の塗布液P5)
水 47.2質量部
ポリエステル水分散体(A3、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0150】
・ポリエステル樹脂:(A3)
ポリエステル樹脂(A3)としては、下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体を用いた。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=44/52/4//50/50(mol%)、Tg=67℃、酸価=2KOHmg/g、Mn=15000
【0151】
[実施例13]
実施例4において、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P6に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P6は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
【0152】
(偏光子側易接着層用の塗布液P6)
水 47.2質量部
ポリエステル水分散体(A4、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0153】
・ポリエステル樹脂:(A4)
ポリエステル樹脂(A4)としては、下記組成のモノマーで共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体を用いた。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=44/52/4//70/30(mol%)、Tg=70℃、酸価=2KOHmg/g、Mn=10000
【0154】
[実施例14]
実施例4において、ハードコート層側易接着層用の塗布液H1をP1に変更した以外は、実施例4と同様に、光学用ポリエステルフィルムを作製した。
【0155】
[実施例15]
実施例15の光学用ポリエステルフィルムは、熱固定温度を、表1の値となるように制御した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0156】
[比較例1]
比較例1の光学用ポリエステルフィルムは、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P7に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P7は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
【0157】
(偏光子側易接着層用の塗布液P7)
水 47.2質量部
ポリエステル水分散体(A3、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B3、固形分10質量%) 25.5質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0158】
・ポリビニルアルコール水溶液(B3)
ポリビニルアルコール水溶液(B3)は下記の手順で作製した。水90質量部を入れ、攪拌しながらケン化度が73%で重合度500のポリビニルアルコール樹脂(クラレ製)10質量部を徐々に添加した。添加後、液を攪拌しながら、95℃まで加熱し、樹脂を溶解させた。溶解後、攪拌しながら室温まで冷却して、固形分10質量%のポリビニルアルコール水溶液(B3)を作製した。
【0159】
[比較例2]
比較例2の光学用ポリエステルフィルムは、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P8に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P8は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
【0160】
(偏光子側易接着層用の塗布液P8)
水 46.3質量部
ポリエステル水分散体(A3、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
オキサゾリン系化合物 (C3、固形分25質量%) 1.4質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
・オキサゾリン系化合物:(C3)(日本触媒製、エポクロスWS−700)
【0161】
[比較例3]
比較例3の光学用ポリエステルフィルムは、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P9に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P9は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
(偏光子側易接着層用の塗布液P9)
水 12.7質量部
ポリエステル水分散体(A3、固形分30質量%) 17.0質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
エポキシ系化合物 (C4、固形分1質量%水溶液) 35.0質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
・エポキシ系化合物:(C4)(ナガセケムテックス製、デナコールEX−614B)
【0162】
[比較例4]
比較例4の光学用ポリエステルフィルムは、偏光子側易接着層用の塗布液P1を下記液P10に変更した以外は、実施例4と同様に光学用ポリエステルフィルムを作製した。なお、偏光子側易接着層用の塗布液P10は、下記化合物を下記の比率で混合し作製した。
(偏光子側易接着層用の塗布液P10)
水 46.0質量部
アクリル樹脂(A1、固形分28質量%) 18.2質量部
ポリビニルアルコール水溶液(B1、固形分10質量%) 25.5質量部
イソシアネート系化合物(C2、固形分70質量%) 0.5質量部
粒子(F2、固形分濃度40質量%) 1.8質量部
触媒(有機スズ系化合物 固形分10質量%) 0.6質量部
界面活性剤(E2、固形分1質量%水溶液) 7.4質量部
【0163】
<ハードコート層の塗布による形成>
実施例及び比較例で得られた光学用ポリエステルフィルムのハードコート層側易接着層用の塗布液H1を塗布した面に、下記組成の混合塗液(アクリル−1)を乾燥膜厚が5μmになるように塗布・乾燥し、紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 85質量部
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート 15質量部
光重合開始剤(チバスペシャルティケミカル製イルガキュア184) 5質量部
メチルエチルケトン 200質量部
【0164】
<帯状(長尺状)の偏光板加工>
偏光板保護フィルムとして市販のセルロースアセテートフィルム(ZRD40、富士フイルム(株)製)を用意し、1.5mol/L(1.5N)の水酸化ナトリウム水溶液に連続的に通し、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/L(1N)の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフィルムの表面をケン化した。
【0165】
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して搬送方向5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3質量%水溶液を接着剤として、帯状(長尺状)の光学用ポリエステルフィルムの偏光子側易接着層用の塗布液が塗布された面を偏光子側とし偏光子に貼り合わせ、さらに上記のケン化したセルロースアセテートフィルムをポリエステルフィルムとは反対側に偏光子を間にしてロールツーロールで貼り合わせた。このようにして、偏光子の両面を各フィルムによって保護した帯状(長尺)の偏光板を得た。
【0166】
(評価)
上述したようにして得られた光学用ポリエステルフィルム及び偏光板について、下記の評価を行った。
【0167】
[ポリエステルフィルムの特性、偏光板と液晶表示装置の評価]
各実施例および比較例の光学用ポリエステルフィルムに用いた光学用ポリエステルフィルムの特性評価と、各実施例、参考例および比較例の偏光板および液晶表示装置の評価を以下の方法で行った。得られた結果を下記表に記載した。
【0168】
<融解サブピーク温度(Tsm)>
セイコ−電子工業(株)製 DSC220を用い、1.5m巾のポリエステルフィルムB(中央部)において、巾方向に均等に5箇所サンプリングし、各々試料量10mgにて、昇温速度20℃/分でDSC曲線を描かせ、融解による明瞭な吸熱ピークより低温側の吸熱ピークを融解サブピーク温度(Tsm)とし、その平均値を求めた。
【0169】
<Re、Rth、Re/Rth>
面内方向のレタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx−Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。1.5m巾のポリエステルフィルムB(中央部)において、二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を、巾方向に均等に5箇所切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)によって各々測定し、その平均値を求めた。得られた屈折率値より、二軸の屈折率差の絶対値(|Nx−Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて各々測定し、その平均値の単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、レタデーション(Re)を求めた。
【0170】
厚さ方向レタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx−Nz|)、△Nyz(=|Ny−Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるレタデーションの平均を示すパラメーターである。レタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向レタデーション(Rth)を求めた。
得られたRe、Rthの値から、Re/Rthの値を求めた。
【0171】
<ポリエステルフィルムの面内配向角とポリビニルアルコール偏光子の吸収軸とのズレ角の評価>
<<ポリエステルフィルムの面内配向角の測定>>
ポリエステルフィルムの面内配向角は、位相差測定装置(KOBRA 21ADH、またはWR、王子計測機器(株))を用い、ポリエステルフィルム面内の屈折率の最大方向として求めた。具体的には、各実施例および比較例で製造したポリエステルフィルムA(端部)、ポリエステルB(中央部)、ポリエステルフィルムC(端部)それぞれにおいて、巾方向に均等に5箇所サンプリングし、フィルム横方向からのズレ角が大きい3箇所の配向角の平均値を、フィルムの面内配向角とした。
【0172】
ポリエステルフィルム試料の端部Aを用いて製造した偏光板と、ポリエステルフィルム試料の中心Bを用いて製造した偏光板と、ポリエステルフィルム試料の端部Cを用いて製造した偏光板について、それぞれポリエステルフィルムの面内配向角とPVA偏光子の吸収軸とのズレ角を以下の方法で求めた。すなわち、PVA偏光子の吸収軸を、ロールトゥロールで偏光子と各ポリエステルフィルム試料を貼り合わせるときの搬送方向(MD方向)としたときに、MD方向から、各ポリエステルフィルムの面内配向角までの角度を、ポリエステルフィルムの面内配向角とポリビニルアルコール偏光子の吸収軸とのズレ角とした。
【0173】
また、端部Aと端部Cにおける、ポリエステルフィルムの面内配向角とポリビニルアルコール偏光子の吸収軸とのズレ角を以下の基準で評価した。なお、上記A及びBは製品上問題のないレベルである。
A:80°以上
B:70°以上80°未満
C:60°以上70°未満
D:60°未満
【0174】
<偏光子密着評価>
各実施例および比較例の光学用ポリエステルフィルムを貼り合せた偏光板を、幅2.5cm×長さ15cmのサンプルに切り出した。その際、サンプルの向きは、15cm長さの方向をロール進行方向とした。切り出したサンプルのハードコート層面側を、粘着剤を介してガラス板上に貼り合わせた。その後、偏光子と光学用ポリエステルフィルム界面に切り込みを入れ、偏光子とZRD40フィルムを引き起こし、テンシロン(RTG−1310、エーアンドデイ株製)を使用し、剥離速度300mm/分で、90°方向に剥離を行った。その際の層間剥離力を測定し、以下の基準で評価した。なお、上記A〜Cは製品上問題のないレベルである。
A:剥離力 20N以上
B:剥離力 10N以上20N未満
C:剥離力 3N以上10N未満
D:剥離力 1N以上3N未満
E:剥離力 1N未満
【0175】
<反射型偏光子と組み合わせ際の輝度>
42型液晶TV(LGD製42LE5500、反射型偏光子がBLUに使用されている)のバックライト面側の偏光板のみを剥し、作製した各実施例および比較例の偏光板をZRD40が液晶セル側になるようにして貼りつけた。
作製したLCDパネルを白表示させ、色彩輝度計(BM−7,トプコンテクノハウス製)を用いて、正面輝度を測定した。
光学用ポリエステルフィルムB(中央部)を使用した時の正面輝度を100%とした時の、光学用ポリエステルフィルムA(端部)を使用した時の正面輝度を、下記基準で評価した。なお、上記A〜Cは製品上問題のないレベルである。
A:正面輝度 100%〜98%以上
B:正面輝度 98%未満〜95%以上
C:正面輝度 95%未満〜85%以上
D:正面輝度 85%未満〜75%以上
E:正面輝度 75%未満
【0176】
【表1】
【0177】
表1から、実施例1〜15のフィルムは、配向軸のばらつきが小さく、偏光子との密着性に優れていることがわかる。また、実施例1〜15のフィルムを画像表示装置に組み込むと、輝度低下も抑制できることが分かる。ポリエステル系樹脂、カルボン酸変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびイソシアネート系架橋剤のいずれかを含まない易接着層を用いた比較例1〜4は、偏光子との密着性が実施例4と比較して劣ることが分かる。
【0178】
<ハードコート密着評価>
各実施例および比較例の偏光板を55インチのサイズにトムソン刃で裁断し、23℃、相対湿度50%環境下で2時間放置した。
その後、ハードコート層面を片刃カミソリにて10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)、エルパック(登録商標)LP−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察した。その結果を下記A〜Eの5段階で以下のように評価した。なお、上記A〜Cは製品上問題のないレベルである。
A:剥がれなしの場合
B:剥離した升目の数が1以上5未満の場合
C:剥離した升目の数が5以上15未満の場合
D:剥離した升目の数が15以上30未満の場合
E:剥離した升目の数が30以上の場合
【0179】
各実施例および比較例のハードコート密着評価を行ったところ、実施例1〜14のハードコート密着性は製品上問題のないレベルであった。
【0180】
<虹ムラ評価>
IPSモード液晶セル(LGD製 42LS5600)の上下の偏光板を剥し、作製した各実施例および比較例の偏光板をZRD40が液晶セル側になるようにして貼りつけた。上側偏光板(視認側)の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板(バックライト側)の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
作製したLCDパネルを白表示させ、目視および偏光サングラス越しの観察を行った。その結果を、以下の基準にて評価した。実用上、A〜C評価であることが必要であり、A評価であることが好ましい。
A :目視、および偏光サングラス越しの双方で虹状の色ムラが見えない
B :目視では虹ムラは見えないが、偏光サングラス越しで若干虹状の色ムラが見える。
C :目視では虹ムラは見えないが、偏光サングラス越しで虹状の色ムラが見える。
D :目視、偏光子越しの双方で虹状の色ムラが見える。
【0181】
実施例4〜14ではA〜Cの良好な評価が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明によれば、配向軸のばらつきが小さく、偏光子との密着性に優れた光学用ポリエステルフィルムが提供される。また、本発明の光学用ポリエステルフィルムを含む偏光板は、反射型偏光子と組み合わせた際に良好な輝度を示す。本発明の光学用ポリエステルフィルムは、偏光板や画像表示装置等に好適に用いられ、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0183】
10 ポリエステルフィルム
12 易接着層
14 易接着層
20 偏光子
30 保護フィルム
40 ハードコート層
42 液晶セル
44 反射型偏光子
46 プリズムシート
48 拡散シート
50 導光板
52 反射シート
54 光源
図1
図2
図3
図4