【実施例】
【0036】
[評価法]
(1)ジェットプリンター用インク適性
日立産機(株)製コンティニュアスタイプのCX−RH機種を用いて、周波数および励振電圧を変えて印字可能領域を調べた。また1日約8時間の運転を1ケ月実施し、インクジェット適性を調べた
○:印字可能励振電圧範囲が10以上
可能な周波数帯が広く取れインクジェット適性は良好
△:上記周波数帯がやや狭いが、インクジェット適性は良好
×:印字適性狭く、インクジェット適性は悪い
××:インク保存安定性悪く、インクジェット運転不可
【0037】
インクジェットプリンターにて、コロナ放電などの表面処理をしない無処理ポリプロピレンおよびポリエチレンフィルムに印字マーキングを施し、以下の評価に供した。
(2)ダンボールアブレジョン試験
包装容器用ダンボールを10cm角に切り出し、内面側を外に向けて2kgの重りに張り付ける。ダンボール面を印字面に乗せて、約6〜7cmのストロークでおよそ往復60回/分の速さで擦る。ダンボールはサンプル毎に取り換えた。
◎:300回以上擦過しても印字のかすれはない
○:300回擦過すると少しかすれが見られるが判読は良好
△:200回目くらいでかすれが見られるが判読はできる
×:100回以下でかなりかすれが見られ判読困難
【0038】
(3)摩耗試験
市販のトンボ製消しゴムを印字面に強く押しつけて擦る。
◎:30回以上擦っても印字のかすれはない
○:20回擦するとやや薄くなるが充分判読できる
△:15回でかなり薄くなるが判読は可能
×:10回以下で印字が消失
【0039】
密着性試験
(4)セロテープ剥離試験
市販のニチバン製粘着セロハンテープを印字面に張り付け剥離試験を行った。
◎:剥離は見られない
○:印字が薄くなるが充分判読できる
△:一部剥離し印字全体薄くなるが判読はできる
×:かなり剥離し判読困難か完全に剥離
【0040】
(5)手もみ
ポリエチレンフィルムに印字したサンプルを用いて、印字したフィルムの両はしを手で掴んで印字部を擦り合わせるように10回手もみを行った。
○:剥離は見られない
△:一部印字がかすれているが判読はできる
×:かなり剥離し判読困難
【0041】
(6)見映え
ポリプロピレンフィルムに印字し、目視で印字の色を観察、また水で濡れた指で数回擦って印字の滲みを観察した。
○:変化なし
△:色が薄いか、または少し色素の滲みがみられる
×:色がかなり薄いか、または色素の滲みがかなり見られ印字周辺が汚れる
【0042】
[使用材料]
以下の実施例で使用する材料を表1で使用する符号とともに記す。
(1)バインダー樹脂
熱可塑性ポリエステル樹脂
A1:バイロン240(東洋紡(株))、数平均分子量15,000、Tg60℃、
A2:バイロン270(東洋紡(株))、数平均分子量23,000、Tg67℃、
A3:バイロンGK640(東洋紡(株))、数平均分子量18,000、Tg79℃、A4:バイロンUR8200(東洋紡(株))、数平均分子量25,000、Tg73℃、
A5:ポリエスターTP235(日本合成化学(株))、数平均分子量16,000、Tg65℃、
A6:エリーテルUE3200(ユニチカ(株))、数平均分子量16,000、Tg65℃、
A7:バイロンGK250(東洋紡(株)、数平均分子量10,000、Tg60℃、
A8:バイロン226(東洋紡(株)、数平均分子量8,000、Tg65℃、
A9:バイロンGK140(東洋紡(株)、数平均分子量13,000、Tg20℃
【0043】
比較例用
A10:バイロンGK810(東洋紡(株)、数平均分子量6,000、Tg46℃、
A11:エリーテルUE3500(ユニチカ(株))、数平均分子量30,000、Tg35℃、
【0044】
塩素化ポリオレフィン樹脂
C1:スーパークロン390S 重量平均分子量80,000、塩素含有量36%
C2:スーパークロン224H(アクリル変性) 重量平均分子量80,000、塩素含有量12.5%
C3:スーパークロン814HS 重量平均分子量20,000、塩素含有量41%
C4:スーパークロン360T(ウレタン変性) 重量平均分子量20,000、塩素含有量31%
【0045】
比較例用
C6:スーパークロン223M(アクリル変性) 重量平均分子量50,000、塩素含有量5%
C7:スーパークロン803M 重量平均分子量160,000、塩素含有量30%
C8:スーパークロン773H 重量平均分子量110,000、塩素含有量32%
C9:スーパークロンL206 重量平均分子量9,000、塩素含有量32%
いずれも日本製紙ケミカル(株)製
【0046】
その他
B1:アミド樹脂 バーサミド744(ヘンケル(株) 酸価20<)
B2:ロジン樹脂 ハリタックSE−10 (ハリマ(株))
B3:テルペンフェノール樹脂 YSポリスターN125 (ヤスハラケミカル(株))
B4:塩酢ビ樹脂VINNOL E15/40A(WACKER社(株)、数平均分子量40,000〜50,000、Tg69℃)
B5:エポキシ樹脂1004(三菱化学(株)、数平均分子量1,600、Tg97℃)
B6:フェノール樹脂(ヒタノール1140(日立化成ポリマー(株))
【0047】
(2)色素
C1:ソルベントブラック29(バリファストブラック3810
C2:ソルベントブラック27(バリファストブラック3818)
C3:オイルブラック860
いずれもオリエント化学工業(株)製
【0048】
(3)レベリング剤
F1:FZ2123(東レ・ダウコーニング(株))
F2:シルフェースSAG008(信越シリコーン(株))
【0049】
(4)溶剤
S1:メチルエチルケトン100%
S2:メチルエチルケトン/メタノール95/5(重量%)
S3:メチルエチルケトン/1,2−ジメトキシエタン=50/50(重量%)
S4:メチルイソプロピルケトン/1,2−ジメトキシエタン=50/50(重量%)
S5:メチルイソプロピルケトン/1,2−ジメトキシエタン/メタノール=
45/50/5(重量%)
S6:メチルエチルケトン/トルエン=85/15(重量%)
S7:メチルエチルケトン/酢酸エチル=90/10(重量%)
S8:エタノール/メチルエチルケトン=70/30(重量%)
S9:メチルエチルケトン/n−ブタノール85/15(重量%)
S10:メチルイソプロピルケトン/1,2−ジメトキシエタン/メチルセロソルブ
45/40/15(重量%)
【0050】
[実施例1〜15、比較例1〜6]
表1に記載した種類と量のバインダー樹脂、レベリング剤、色素、及び溶剤からなる溶液を作成し、1μmフィルターにて濾過してインクを作成した。
作成したインクのジェットプリンター用インク適性(評価1)を調べるとともに、このインクを用いて、無処理ポリプロピレンおよびポリエチレンフィルムに印字したサンプルについてセロテープ剥離試験(評価2)、ダンボールによるアブレジョン試験(評価3)を、また消しゴム摩耗試験(評価4)、手もみ試験(評価5)、および見映え(評価6)を行なった。その結果を表1〜3に示す。
【0051】
実施例1〜14及び比較例1〜6では、熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量および塩素
化ポリオレフィン樹脂の分子量と塩素含有量による影響を調べた。
すべての実施例において、インクジェット適性は良好であり、ダンボールアブレジョンや摩耗耐性などに対して良好な結果を示した。
これに対してバインダー樹脂の分子量が本発明の範囲から外れる場合、比較例1,6ではダンボールアブレジョンや摩耗耐性が本発明の実施例より弱く、また比較例2〜5ではインクジェット適性が悪く、特に比較例3〜5は運転中に沈殿が生じノズル詰まりが発生したりする。
【0052】
比較例7〜10は、熱可塑性ポリエステル樹脂および塩素化ポリオレフィン樹脂単独で作成したインクについて調べた場合で、前者は密着がなく、後者は密着性はあるもののダンボールアブレジョンあるいは摩耗耐性が不十分であった。
比較例17は
【特許文献10】特開平2010−275467号公報に記載の、乳化重合法による塩酢ビ共重合樹脂と本発明の塩素化ポリオレフィン樹脂の組み合わせたものであるが、バインダー樹脂量を10重量%より多くするとインクジェット適性が狭くなる。 また、ダンボールアブレジョンや摩耗耐性は、本発明の実施例に示したインクの方が優れていた。
【0053】
実施例15〜18および比較例11〜13では熱可塑性ポリエステル樹脂と塩素化ポリオレフィンの配合比の影響を調べたものであるが、配合比が本発明の範囲を外れるとアブレジョン、摩耗耐性が弱くなることがわかる。
【0054】
実施例19〜23及び比較例14〜16は、インク中の全バインダー樹脂量について調べたものである。全バインダー樹脂量が本発明の範囲20重量%を超える場合には、摩耗耐性などは良好であるが、インクジェット適性が悪く、また7重量%より低いと、やはりインクジェット適性が狭くなり、摩耗耐性なども実施例に比して劣るため、いずれの場合も実用に耐えるものではなかった。
【0055】
実施例18、24〜27及び比較例18〜20は、バインダー樹脂量に対する色素の添加量について調べた場合で、色素の添加量が本発明の範囲よりすくないと印字の色調が薄くなり見映えが悪くなる。また本発明の範囲より多いと色素が印字被膜表面に浮き出てしまい、手でこすると汚く見えてしまい好ましくなく、被膜も脆くなり摩耗耐性も悪くなる。また色素添加量が多いとインクジェット適性も悪くなる
【0056】
実施例28、29は、実施例21の溶剤組成をS9およびS10に替えて作成したインクである。
溶剤S9のn−ブタノールおよびS10のメチルセロソルブはそれぞれの主溶剤より沸点が10℃以上高く、かつ粘度が1cp/20℃以上であり、実施例21のインクよりアブレジョン、摩耗耐性が幾分向上している。これは実施例21の印字ドット形状がややドーナツ形状であるのに比べて、平坦な形状になったためと考えられる。
【0057】
比較例21〜28は、本発明以外の樹脂及び本発明の樹脂と本発明以外の樹脂を組み合わせて作成したインクについて評価した。比較例21〜23はポリオレフィン樹脂基材に対して比較的密着性がよいとされているが、アブレジョンや摩耗耐性は極めて弱いものであった。
比較例24,25は、ポリオレフィン樹脂基材に対して全く密着性がなかった。
比較例26〜28は、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂あるいは塩素化ポリオレフィン樹脂と組み合わせたものであるが、本発明の実施例より良好なインクは得られなかった。
【0058】
実施例30
実施例18のインクを用いて、最外層がポリエチレンで被覆された紙製牛乳容器の上部密封張り合わせ部に消費期限印字を施した。この印字部を市販トンボ製消しゴムで30回擦ったがかすかに薄くなるものの、印字は明瞭に残存していた。
また、ポリプロピレン製成形容器の胴側壁部に印字し同様に評価したところ、上記と同様の結果であった。
【0059】
また、これらの印字サンプルを30m/分速度のコンベアー上で、吹き出し流量80m
3/分、吹き出し温度700℃、長さ15mm×幅2mmの熱風スリットと印字部間隔5mmの条件で加熱処理した。
加熱したサンプルを同様に評価したところ、実施例18及び比較例17のインクとも、30回擦っても全く変化がなく、これは、加熱により密着性が強くなったためと思われる。
【0060】
比較例29
比較例1及び17のインクを用いて、実施例28と同様の評価を行った。
比較例17のインクは、いずれの場合も実施例28に比べて劣る結果であったが、加熱したものではほぼ同等の結果であった
一方、比較例1のインクは、加熱したものでも摩耗耐性は良くなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】