特許第6226779号(P6226779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226779磁気メモリ、磁気メモリ装置、及び磁気メモリの動作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226779
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】磁気メモリ、磁気メモリ装置、及び磁気メモリの動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8239 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01L27/105 447
   H01L43/08 Z
   H01L29/82 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-46854(P2014-46854)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-170820(P2015-170820A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149803
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 康高
(74)【代理人】
【識別番号】100152788
【弁理士】
【氏名又は名称】手塚 史展
(74)【代理人】
【識別番号】100125667
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100138601
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 正成
(74)【代理人】
【識別番号】100151323
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 剛司
(74)【代理人】
【識別番号】100177046
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 百合香
(74)【代理人】
【識別番号】100149629
【弁理士】
【氏名又は名称】柘 周作
(72)【発明者】
【氏名】中村 志保
(72)【発明者】
【氏名】大寺 泰章
(72)【発明者】
【氏名】島田 拓哉
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−123640(JP,A)
【文献】 特開2013−041880(JP,A)
【文献】 特開2012−204802(JP,A)
【文献】 特開2010−218678(JP,A)
【文献】 特開2007−005664(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0149649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239
H01L 27/105
H01L 29/82
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁区を有する磁性細線と、
前記磁性細線の一端を囲み、磁化を有する参照層と、
前記参照層と前記磁性細線との間に設けられた非磁性層と、
前記参照層の両端に設けられ、互いに逆向きの磁化を有する第1の磁化固定部及び第2の磁化固定部と、
前記第1の磁化固定部に設けられた第1の電極と、
前記第2の磁化固定部に設けられた第2の電極と、
前記磁性細線の他端に設けられた第3の電極と、
を備える磁気メモリ。
【請求項2】
前記第1の磁化固定部と前記第1の電極との間に設けられた反強磁性層をさらに備える請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項3】
前記磁性細線が有する磁化、前記第1の磁化固定部の磁化、及び前記第2の磁化固定部の磁化の少なくとも1つは、前記第1の電極と前記第2の電極とを結ぶ線に交わる方向に磁化容易軸を有する請求項1又は2に記載の磁気メモリ。
【請求項4】
前記非磁性層は、銅、銀、金、及び白金から選択される少なくとも1つを含む材料、又はこれらの材料を組み合わせた合金、又は酸化物、又は窒化物、又はグラファイトを含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁気メモリ。
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流を印加する手段と、
前記第1の電極又は前記第2の電極と前記第3の電極との間に電流を印加する手段と、
前記第1の電極及び前記第2の電極との間の抵抗値を読み出す手段と、
をさらに備える請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の磁気メモリ。
【請求項6】
複数の磁区を有する第1の磁性細線と、
前記第1の磁性細線の一端を囲み、磁化を有する第1の参照層と、
前記第1の参照層と前記第1の磁性細線との間に設けられた第1の非磁性層と、
前記第1の参照層の両端に設けられ、互いに逆向きの磁化を有する第1の磁化固定部及び第2の磁化固定部と、
前記第1の磁化固定部に設けられた第1の電極と、
前記第2の磁化固定部に設けられた第2の電極と、
前記第1の磁性細線の端に設けられた第3の電極と、
を備える第1の磁気メモリと、
複数の磁区を有する第2の磁性細線と、
前記第2の磁性細線の一端を囲み、磁化を有する第2の参照層と、
前記第2の参照層と前記第2の磁性細線との間に設けられた第2の非磁性層と、
前記第2の参照層の両端に設けられ、互いに逆向きの磁化を有する第3の磁化固定部及び第4の磁化固定部と、
前記第3の磁化固定部に設けられた第4の電極と、
前記第4の磁化固定部に設けられた第5の電極と、
前記第2の磁性細線の端に設けられた第6の電極と、
を備える第2の磁気メモリと、
を備える磁気メモリ装置。
【請求項7】
前記第3の電極と前記第6の電極は共有されている請求項6に記載の磁気メモリ装置。
【請求項8】
前記第1の電極と前記第4の電極は共有されている請求項6に記載の磁気メモリ装置。
【請求項9】
前記第1の参照層と前記第2の参照層は共有されている請求項6に記載の磁気メモリ装置。
【請求項10】
複数の磁区を有する磁性細線と、
前記磁性細線の一端を囲み、磁化を有する参照層と、
前記参照層と前記磁性細線との間に設けられた非磁性層と、
前記参照層の両端に設けられ、互いに逆向きの磁化を有する第1の磁化固定部及び第2の磁化固定部と、
前記第1の磁化固定部に設けられた第1の電極と、
前記第2の磁化固定部に設けられた第2の電極と、
前記磁性細線の端に設けられた第3の電極と、
を備える磁気メモリの動作方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に第1の電流を流し、前記参照層の磁化及び前記磁性細線の前記非磁性層で囲まれた領域の磁化を制御することで書き込みを行うステップと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に前記第1の電流より小さな第2の電流を流すことで読出しを行うステップと、
を備える磁気メモリの動作方法。
【請求項11】
前記第1の電極又は前記第2の電極と前記第3の電極との間に、前記第1の電流より小さく、かつ前記第2の電流よりも大きな第3の電流を流すことで前記複数の磁区を移動させるステップをさらに備える請求項10に記載の磁気メモリの動作方法。
【請求項12】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記第2の電流より大きく、かつ前記第3の電流より小さな第4の電流を流すことで前記参照層の磁化の向きを固定するステップをさらに備える請求項11に記載の磁気メモリの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリ、磁気メモリ装置、及び磁気メモリの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリの大容量化を実現する方法として、磁壁を用いたスピンシフトレジスト型の3次元メモリが提案されている。このような3次元メモリは、磁性細線、読出し部、及び書き込み部を含む。このような3次元メモリは、磁性細線とこの読出し部及びこの書き込み部との位置合わせが容易な構造が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国登録特許公報6834005
【特許文献2】米国特許公報2012/833446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、磁性細線との位置合わせが容易で信号アクセスが可能な読み出し部及び書き込み部を有する磁気メモリ、磁気メモリ装置、及び磁気メモリの動作方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る磁気メモリは、複数の磁区を有する磁性細線と、前記磁性細線の一端を取り囲み、磁化を有する参照層と、前記参照層と前記磁性細線との間に設けられた非磁性層と、前記参照層の両端に設けられ、互いに逆向きの磁化を有する第1の磁化固定部及び第2の磁化固定部と、前記第1の磁化固定部に設けられた第1の電極と、前記第2の磁化固定部に設けられた第2の電極と、前記磁性細線の他端に設けられた第3の電極とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る磁気メモリを示す図。
図2A】実施形態を説明するための図。
図2B】実施形態を説明するための図。
図3A】実施形態を説明するための図。
図3B】実施形態を説明するための図。
図3C】実施形態を説明するための図。
図4A】実施形態を説明するための図。
図4B】実施形態を説明するための図。
図4C】実施形態を説明するための図。
図5A】実施形態を説明するための図。
図5B】実施形態を説明するための図。
図6A】実施形態を説明するための図。
図6B】実施形態を説明するための図。
図7】実施形態を説明するための図。
図8A】実施形態を説明するための図。
図8B】実施形態を説明するための図。
図9A】実施形態を説明するための図。
図9B】実施形態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同様のものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
【0008】
図1は、磁気メモリ100の断面図である。磁気メモリ100は、基板10上に設けられている。図1の矢印は磁化を示す。基板10は、集積回路が搭載されていても良い。
【0009】
磁気メモリ100は、磁性細線20と、書き込み/読出し部30とを備える。書き込み/読出し部30は非磁性層31、第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33を含む参照層34を備える。
【0010】
磁性細線20はデータを記憶する。磁性細線20は磁性体からなる細線で形成されている。磁性細線20は基板10の表面の法線方向に延在している。磁性細線20は複数の磁区を有する。磁性細線20は一端と他端を有する。磁性細線20の一端には電極40が設けられている。磁性細線20の他端は非磁性層31で取り囲まれている。
【0011】
磁性細線20の断面形状は、長方形、正方形、円形、楕円形等である。磁性細線20の断面形状の中央に非磁性体が埋め込まれていてもよい。磁性細線20の幅は0.5nm以上500nm以下である。この幅は、磁性細線20が延在する方向に直交する方向の大きさに相当する。磁性細線20の延在方向における長さは、50nm以上100μm以下である。しかしながら、この長さは磁気メモリ100のデータ容量に依存する。
【0012】
磁性細線20には、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つを含む材料を用いることができる。磁性細線20にはこれらの材料を組み合わせた合金を用いることもできる。さらに、これらの材料を層に含む多層膜を用いることができる。
【0013】
磁性細線20の磁化は、磁性細線20が延在する方向に直交する方向であることが好ましい。磁性細線20は、希土類遷移金属と3d遷移金属との合金からなるTbFeCo等の希土類−遷移金属アモルファス合金膜を用いることができる。磁性細線20は、Co/Ni多層膜、Co/Pd多層膜等の多層膜を用いることができる。磁性細線20は、FePt、CoPt、FePd等の規則合金を用いることができる。これらの材料を用いることで、磁性細線20を形成する膜が、磁性細線20の延材する方向を含む側壁面に対して垂直方向を磁化容易軸とする垂直磁気異方性を有する。さらに、磁性細線20が延在する方向に直交する方向に磁性細線20の磁化を向かせることができる。これ以外に、磁歪を用いること、又は磁性細線20の結晶方位を揃えることで、磁性細線20の磁化容易軸を磁性細線20が延在する方向に直交する方向に向かせることができる。さらに、磁性細線20の磁化は、磁性細線20が延在する方向に直交する方向であり、磁性細線20が延在する方向に直交する面上で異なる角度を持ってもよい。非磁性層31は参照層34で取り囲まれている。非磁性層31は、MgOを用いることができる。非磁性層31の膜厚は0.4nm以上20nm以下である。非磁性層31には、トンネルバリアとして働く酸化物又は窒化物を用いることができる。これら酸化物又は窒化物を用いると、非磁性層の厚さを薄くすることが出来るため、記録容量をあげることができる。非磁性層31には、銅、銀、金、アルミニウム、及び白金から選択される少なくとも1つの材料を用いることができる。非磁性層31にはこれらの材料を組み合わせた合金を用いることもできる。これらの金属を用いることで、非磁性層31の膜厚を厚くすることができ、製造が容易となる。非磁性層31には、グラフェンを含むグラファイトを用いることができる。
【0014】
参照層34の両端は第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33となっている。第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33は、参照層34と分離して形成されていてもよい。参照層34の膜厚は例えば0.4nm以上100nm以下である。参照層34は、基板10の表面に平行であるので、参照層34は基板10の表面に平行な方向に寸法を広げることができる。この寸法を大きくすることで、磁性細線20の幅に対して参照層34のサイズを大きくすることができる。このため、磁性細線20と書き込み/読出し部30との位置合わせを容易にすることができる。参照層34の基板10の表面に平行な方向における大きさは例えば0.6nm以上20μm以下である。
【0015】
参照層34には、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つを含む材料を用いることができる。参照層34にはこれらの材料を組み合わせた合金を用いることもできる。参照層34の磁化は、基板10の表面と平行な面内に向いているとよい。また、その磁化は第1の磁化固定部32と第2の磁化固定部33とを結ぶ方向に直交しているとさらによい。
【0016】
第1の磁化固定部32の磁化と第2の磁化固定部33の磁化は互いに反対を向いている。この状態を反平行という。第1の磁化固定部32の磁化と第2の磁化固定部33の磁化は、磁性細線20の磁化と平行もしくは反平行である。第1の磁化固定部32と第2の磁化固定部33の材料は参照層34と同じ材料を用いることができる。反平行の状態にするためには、第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33の材料を変更する、又はイオンを第1の磁化固定部32もしくは第2の磁化固定部33の少なくとも一方に照射する。これは、このようにすることで第1の磁化固定部32と第2の磁化固定部33の磁気異方性が変更され、異なる保磁力を第1の磁化固定部32と第2の磁化固定部33がそれぞれ有するからである。
【0017】
第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33のスピン偏極方向と磁化との組み合わせを変えることで、反平行の状態を実現できる。例えば、第1の磁化固定部32にはTb、Gdのような希土類リッチの希土類−遷移金属を用いて、第2の磁化固定部33にはFe、Co、Niのような3d遷移金属リッチの希土類−遷移金属を用いる。その後、第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33に外部磁化を印加することで第1の磁化固定部32及び第2の磁化固定部33の磁化を初期化する。
【0018】
第1の磁化固定部32には電極50が接して設けられている。第2の磁化固定部33には電極51が接して設けられている。電極50、51は、磁気メモリ100を書き込み、読出し、又は磁性細線20の磁壁を移動させるときに電流を流して用いられる。
【0019】
図2Aに示すように第1の磁化固定部32と電極50との間に第1の反強磁性層35が設けられ、第2の磁化固定部33と電極51との間に第2の反強磁性層36が設けられていても良い。第1の反強磁性層35のネール温度と第2の反強磁性層36のネール温度が異なれば、第1の磁化固定部32の磁化と第2の磁化固定部33の磁化を反平行の状態にできる。
【0020】
図2Bに示すように第2の固定部33と第2の反強磁性層36との間にRu等の非磁性層37や磁性層38を設けても良い。このようにすることで、第1の磁化固定部32の磁化と第2の磁化固定部33の磁化を反平行の状態にできる。
【0021】
磁性細線20の電極40と非磁性層31との間は絶縁層60で囲まれている。絶縁層60は、アルミナ、酸化シリコン等の酸化物、又は窒化シリコン等の窒化物、絶縁性ポリマーを用いることができる。磁性細線20は、厚く積層した誘電体にリソグラフィと反応性イオンエッチングを用いることで溝を掘り、ALD法又はCVD法によって磁性膜を形成した後で、これを細線に加工することで作製することができる。
【0022】
参照層34の面は基板10の表面と平行である。
【0023】
電極40は磁性細線20に電流を流す。
【0024】
次に磁気メモリ100の動作について説明する。
【0025】
図3A図3Cは磁気メモリ100の動作を説明するための図である。
【0026】
図3Aは磁気メモリ100への書き込みを説明するための図である。電極50と電極51の間に書き込み電流(Iwrite)を流すことで、磁性細線20の非磁性層31で囲まれた部分の磁化を制御する。書き込まれる磁化は、書き込み電流の向きによって決まる。書き込まれる磁化は、書き込み電流の向きとは逆向きの電子流Ie(write)が流れ出る第1の磁化固定部32又は第2の磁化固定部33の磁化のいずれかに揃う。非磁性層31を介して参照層34から磁性細線20へスピントランスファトルクを伝搬させることで書き込みが行われる。磁気メモリ100に1ビットの書き込みを行った後、電極50又は電極51と電極40との間に電流Ishiftを流すことで1ビットをシフトさせる。Ishiftの絶対値はIwriteの絶対値よりも小さい。Ishiftの流れる向きは、電極50又は電極51から電極40へ流れても、その逆でも良く、材料により調整できる。この動作を繰り返すことで、磁気メモリ100へデータを書き込む。
【0027】
図3Bは磁気メモリ100の読み出しを説明するための図である。電極50と電極51との間に読出し電流(Iread)を流すことで、磁性細線20の非磁性層31で囲まれた部分の磁化状態を磁気抵抗から読み出す。非磁性層31を介して参照層34と磁性細線20との間で生じる磁気抵抗効果を利用してデータを読出す。電極50又は電極51と電極40との間に電流Ishiftを流すことで1ビットをシフトさせる。読出し時のIshiftの向きは、書き込み時のIshiftの向きと逆方向である。Ireadの絶対値はIshiftの絶対値よりも小さい。この動作を繰り返すことで、磁気メモリ100からデータを読み出す。
【0028】
読出しの際には、参照層34の磁化を予め制御しておくことが望ましい。図3Cに示すように、電極50と電極51との間にIreadの絶対値より大きくIshiftの絶対値より小さなセット電流(Iset)を流すことで参照層34の磁化を制御する(セット動作)。このとき、セット電流と逆向きに電流Ie(set)が流れる。参照層34の磁化はIsetの向きによって決まる。参照層34の磁化は電子流Ie(set)が流れ出す第1の磁化固定部32又は第2の磁化固定部33の磁化に揃う。電流の大小関係は次の通りである。 |Iread| < |Iset| < |Ishift| < |Iwrite|。
【0029】
上記した、書き込み及び読み込み等の動作は、後述する電流源回路(Current Source Circuit)を用いて行われる。
【0030】
磁気メモリ100を複数接続する場合は、図4Aに示すように電極40を共通にする。また、図4Bに示すように、磁化固定部を共有してもよい。磁化固定部を共有することで、図4Aで示された複数の磁気メモリ100よりも基板に搭載したときの占有面積を小さくすることができる。複数の磁気メモリ100を備える装置を磁気メモリ装置と定義する。図4Cのように、参照層34に設けられた電極を共有しても良い。
【0031】
図5Aには、磁気メモリ100をアレイ状に配列するための構造例を示す。図を理解しやすくするめに、非磁性層31、電極40、50、51は省略している。図5Aは、2つの磁気メモリ100の電極40を共有している。それぞれの磁気メモリ100の電極50、51には1つ又は2つの選択トランジスタが接続されている。それぞれの選択トランジスタのゲート電極はビット線及びワード線に接続されている。
【0032】
図5Bには、磁気メモリ100が電極40を共有しない場合の図を例示する。電極40は選択トランジスタを介してビット線に接続され、電極50、51は選択トランジスタを介してビット線及びワード線に接続されている。選択トランジスタのゲート電極がビット線又はワード線に接続されている。このような構造はビット線及びワード線を選択することで磁気メモリ100の選択を可能にする。
【0033】
図5A及び図5Bの形態も、複数の磁気メモリ100を備えるので磁気メモリ装置と定義される。
【0034】
図6A及び図6Bは、複数の磁気メモリ100を用いた回路図を例示したものである。図6A及び図6Bの回路構成は、電極50、51を隣接メモリ間で共通させた図4Cの磁気メモリに対応する。また、この回路構成は、磁化固定部を隣接メモリ間で共有させた図4Bの磁気メモリへも適用できる。ビット線及びワード線は各セレクタ(Selector)に接続され、各セレクタは電流原回路に接続されている。2つのセレクタのうちの1つのセレクタは読出部(Reading unit)に接続されている。
【0035】
図7aから図7fを用いて磁気メモリ100の製造方法について説明する。
【0036】
陽極酸化によって形成されたポーラスアルミナの孔にCVD法によってCo及びNiの多層膜からなる磁性体を充填することで磁性細線を形成する(図7a)。このとき、ALD法を用いることもできる。
【0037】
アルミナ(AlOx)のポーラス面の片面をエッチングすることで磁性細線の一部を露出させる(図7b)
MgOからなる非磁性層をアルミナ及び磁性細線の一部を覆うように成膜する。非磁性層上にCoFeからなる参照層を成膜する(図7c)。
【0038】
非磁性層の表面が露出するまで削る(図7d)。
【0039】
露出した表面の一部にレジストを塗布してEB描画によってマスクを形成する。露出した表面及びマスク上に、CoFeの極薄膜、Ru膜、CoFe膜、IrMn膜の順に膜形成をする。これらの磁性膜が磁化固定層に相当する。マスクを除くことで2つの磁化固定部の1つを形成する(図7e)。再び、露出した表面の一部にレジストを塗布してEB描画によってマスクを形成する。露出した表面及びマスク上に、CoFeの極薄膜、IrMn膜の順に膜形成をする。これらの磁性膜がもう一つの磁化固定層に相当する。マスクを除くことでもう一つの磁化固定部を形成する。磁化固着部間を絶縁層で埋め込み、磁化固定層上に電極をリフトオフ法で形成する。参照層をミリングすることでそれぞれの磁気メモリを分離させる(図7f)。
【0040】
磁性細線の加工されていない側の磁性細線に接するように、Cr/Auからなる電極を形成する(図7g)。
【0041】
選択トランジスタと配線が設けられた基板を用意し、これを参照層の電極が形成されている面に接合する。このとき、配線と電極の位置は対応付けられている。
【0042】
このようにして、磁気メモリ100を作製する。
【0043】
本実施形態は、磁性細線との位置合わせが容易で信号アクセスが可能な読み出し素子及び書き込み素子を有する磁気メモリ、磁気メモリ装置、及び磁気メモリの読出し並びに書き込み方法を提供することができる。
【0044】
図8Aは、磁気メモリ素子200を示す。第1の磁化固定部32と第2の磁化固定部33との間に複数の磁性細線20が設けられている点が磁気メモリ100と異なる。図8Bは、図8AのA−Bにおける断面図を示す。1つの書き込み/読出し部30(図示せず)に対して、複数の磁性細線が対応する。それぞれの磁性細線20の一端において、参照層34と磁性細線20との間に非磁性層31が設けられている。それぞれの磁性細線20の他端には、電極40が設けられている。磁性細線20の幅が参照層34よりも十分小さいので、この構造は磁性細線20と書き込み/読出し部30の位置合わせを容易にする。
【0045】
磁気メモリ素子200では、1層の参照層34に接続された複数の磁性細線20へ、一括して書き込みを行い、複数の磁性細線に書き込まれたデータ情報の平均値として読み出す。1ビットのシフトは、複数の磁性細線20を一単位として行う。一単位として複数の磁性細線20を扱うことは、書き込み及び読出しの動作に対して欠陥やエラーを抑制することを可能にする。
【0046】
図9Aは、磁気メモリ素子200において、磁化固定部を共有した磁気メモリ装置を示す。図9Bは、磁気メモリ素子200において、電極40を共通にした磁気メモリ装置を示す。
【0047】
「直交」及び「平行」は、製造工程におけるばらつきを含むので、実質的に直交及び平行であれば良い。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10…基板、20…磁性細線、30…書き込み/読出し部、31…非磁性層、32…第1の磁化固定部、33…第2の磁化固定部、34…参照層、35…第1の反強磁性層、36…第2の反強磁性層、37…非磁性層、38…磁性層、40、50、51…電極、60…絶縁層、100…磁気メモリ、200…磁気メモリ素子
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B