特許第6226783号(P6226783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6226783-部材の摩擦撹拌接合方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226783
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】部材の摩擦撹拌接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   B23K20/12 360
   B23K20/12 310
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-52866(P2014-52866)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-174114(P2015-174114A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 新
(72)【発明者】
【氏名】新村 仁
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−042117(JP,A)
【文献】 特開2010−036230(JP,A)
【文献】 特開2012−236205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、当該第1部材の上面側に一部が張出すように第2部材とを段差突き合せした状態で、
先端の第1ピン部と、当該第1ピン部よりも外径の大きい第2ピン部を有する回転ツールを第2部材側から挿入し、
第1ピン部は第2部材であって第1部材との下側突き合せ近傍に位置し、第2ピン部は第2部材の張出部に位置し、
前記回転ツールは前記第2ピン部の上側に当該第2ピン部よりも外径の大きいショルダー部を有し、
前記ショルダー部は第1及び第2ピン部の挿入により発生するバリを抑えるものであることを特徴とする部材の摩擦撹拌接合方法。
【請求項2】
前記第2部材は第1部材よりも塑性流動性であるか又は低融点であることを特徴とする請求項記載の部材の摩擦撹拌接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ツールを用いて部材を摩擦撹拌接合する接合方法及びそれにより得られる接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
接合部材の突き合せ部又はその近傍に回転ツールのピン部を挿入し、部材にその摩擦熱により塑性流動と加圧力を生じさせることで部材の突き合せ部に拡散接合層を形成する部材の接合方法は公知である。
この際に同じ材質からなる一対の部材の接合の場合には比較的接合が容易であるが、材質の異なる部材間の接合の場合には、例えば図4(a),(b)に示すように部材101,102の突き合せ部の近傍であって、一方の部材のみに回転ツール110のピン部を挿入することが一般的であった。
この場合には、一対の部材の突き合せ面のみに拡散接合層が形成されることになり、接合強度が不充分になりやすかった。
そこで特許文献1には、ショルダー部が当たる部分をピン部が挿入される部材と同じ材質で覆う方法が提案されている[図4(c),(d)]。
しかし、同公報における上記覆う方法は、同じ材質の板を置くか、断面略三角形の突き出し形状にするものであり、これはショルダー部が両方の部材に当たり、異なる材料が入り混ざるのを防止するのが目的であるからであり、接合強度向上には充分寄与していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−42117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接合強度の向上に効果的な摩擦撹拌接合方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る部材の摩擦撹拌接合方法は、第1部材と、当該第1部材の上面側に一部が張出すように第2部材とを段差突き合せした状態で、先端の第1ピン部と、当該第1ピン部よりも外径の大きい第2ピン部を有する回転ツールを第2部材側から挿入し、第1ピン部は第2部材であって第1部材との下側突き合せ近傍に位置し、第2ピン部は第2部材の張出部に位置することを特徴とする。
ここで第1ピン部のみならず、第2ピン部も第2部材に挿入することで第1ピン部が段差突き合せ部のうち、下側の突き合せ部の拡散接合に寄与するとともに第2ピン部が第2部材と第1部材との段差部の重ね合せ部の拡散接合に寄与することになり、拡散接合層は断面L字状に形成されるので接合強度が向上される。
【0006】
この場合に第2ピン部も第2部材側に挿入されるので、第2ピン部の外周部付近にバリが発生しやすい。
このバリが問題となる部材にあっては、回転ツールは前記第2ピン部の上側に当該第2ピン部よりも外径の大きいショルダー部を有し、前記ショルダー部で第1及び第2ピン部の挿入により発生するバリを抑えるようにするのが好ましい。
【0007】
本発明に係る摩擦撹拌接合にあっては、第1部材と第2部材とが同じ材質の場合でも接合強度向上に寄与するが、第2部材は第1部材よりも塑性流動性であるか又は低融点である場合に特に有効である。
このような接合方法を用いると、接合強度に優れた接合部材が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る摩擦撹拌接合方法にあっては、断面L字状に拡散接合層が形成されるので、従来の突き合せ接合よりも接合強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施例に係る接合方法を示し、(a)は接合前、(b)は接合状態を模式的に示す。
図2】第2の実施例に係る接合方法を示し、(a)は接合前、(b)は接合状態を示す。
図3】接合部材の接合外観を示す。
図4】従来の接合方法例を示す。(a),(b)は突き合せ状態で接合する方法を示し、(c),(d)は特許文献1に開示する接合方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に基づいて本発明に係る接合例を以下説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、第1の実施例であり、回転ツール10のピン部が先端側の外径dの第1ピン部11と、この外径dよりも大きい外径dの第2ピン部12からなる2段ピン形状の例である。
ピン部は、ストレート形状でもネジが切ってあるものでもよい。
接合する部材は、第1部材Mの突き合せ部の上面側を段差状に切り欠き、第2部材Mの突き合せ部の上面側に段差状の張出部を形成することで、第2部材Mの上側張出部Uと第1部材Mの下側張出部Lが重なるように段差突き合せした状態にする。
また、図1にて板厚tは、第2部材Mの上側張出部の肉厚tよりも厚くなっている限りにおいて制限はなく、また第2部材Mの板厚よりも厚くてもよい。
第2部材Mの上側張出部Uの肉厚tの大きさを考慮しつつ、回転ツール10の第1ピン部11の長さLが設定される。
肉厚tは、1〜10mm程度の範囲が好ましい。
具体的には、図1(b)に示すように第1ピン部11の外周部が第1部材Mの下側張出部Lの突き合せ部の先端側近傍に位置するように回転ツール10を回転させながら挿入する。
すると、回転ツール10の回転による摩擦熱により第2部材Mが塑性流動し、回転ツールによる加圧力も生じる。
これにより、第1部材Mの下側張出部Lの先端部aと第2部材の上側張出部Uとの重ね合せ部bに拡散接合層が形成される。
従って、本発明では第2ピン部12が第2部材の上側張出部Uに挿入するが、第1部材Mの下側張出部Lまでは到着しない範囲で挿入深さを制御する。
これにより、第1部材Mと第2部材Mとの段差突き合せ部に断面L字状の拡散接合層が形成されるので、接合強度が高い。
【0011】
図2は、第2の実施例を示す。
回転ツール10Aは、先端側の外径dからなる第1ピン部11と、その上に外径dより大きい外径の第2ピン部12を有し、さらにその上に外径dよりも大きい外径dのショルダー部13を有する。
第2ピン部12の長さLは、第2部材Mの上側張出部Uの肉厚tと同等又は少し小さい。
このように設定すると、図2(b)に示すように第2部材Mの上面側に発生するバリ部cをショルダー部13の下面にて押圧するので、バリの発生を抑える。
【0012】
本発明において、第1部材Mと第2部材Mとは同じ材質でもよいが、第2部材Mが第1部材Mよりも塑性流動性が良いもの、あるいは低融点である異材の組み合せに有効である。
例えば、第1部材Mが鉄材に対して、第2部材Mが銅系,アルミ系の部材,第1部材Mが銅材に対する第2部材Mがアルミ系の部材等である。
また、第1部材はセラミックス等の非金属部材であってもよい。
回転ツールの材質は、第2部材Mよりも硬いものが選定される。
例えば鋼材である。
【0013】
次に、接合強度を評価したので説明する。
図2(a)に示す回転ツール10Aを用いて評価した。
回転ツール10Aのd=M4,d=12φ,d=25φ,L=2mm,L=2mm,部材としては、第1部材Mが鉄材で第2部材Mがアルミ材の組み合せでt=2mmt=4mmにした
また、第1部材Mと第2部材Mとの重ね幅(図2にて奥行方向幅)を50mmとした。
なお、重ね代は30mmである。
回転ツール10Aの回転数1000rpm,送り速度5mm/minとした。
接合外観を図3の<本発明1>に示す。
バリの発生が抑えられているのが分かる。
接合強度を第1部材と第2部材間の引張強度で評価すると、8,447kNであった。
次に、図1に示すタイプのショルダー部13が無い第1ピン部11と、第2ピン部12とからなる2段ピン形状の回転ツール10を用いて、上記と同様の接合をした。
その外観を図3の<本発明2>に示す。
バリの発生が大きく、その接合部の引張強度は3,608kNであった。
比較するために、図1のタイプの上記回転ツール10を用いて、従来と同様に第1部材と第2部材との端部を単に付き合せた状態(段差部なし)で接合したところ、その引張強度は1,521kNと<本発明2>の半分以下であった。
【符号の説明】
【0014】
10 回転ツール
10A 回転ツール
11 第1ピン部
12 第2ピン部
13 ショルダー部
図1
図2
図3
図4