特許第6226784号(P6226784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226784
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-53960(P2014-53960)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-173907(P2015-173907A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和彦
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−207644(JP,A)
【文献】 特開2006−134209(JP,A)
【文献】 特表2005−514078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と、ナースステーションに設置されて前記ナースコール子機からの呼び出しに看護師が応答するためのナースコール親機と、病室毎に設置されて前記ナースコール子機からの呼び出しを報知すると共に呼出信号を前記ナースコール親機に伝送するための廊下灯と、前記ナースコール親機と前記廊下灯との間の通信を制御する制御機と、患者名、担当医師、担当看護師、救護区分、処方を含む患者情報が蓄積されたデータベースを有するナースコールサーバとを備えたナースコールシステムにおいて、
前記ナースコール親機を複数具備し、それぞれ前記患者情報の一覧を表示するモニタを有し、
そのうち特定の第1病棟に設置された前記ナースコール親機は、前記モニタに他科の特定の第2病棟に設置された前記ナースコール親機が表示可能な患者情報を表示する他科表示エリアを有し、
前記ナースコールサーバは、前記ナースコール親機が個々に設置病棟に合わせて表示する患者情報を記憶する第1データベースに加えて、前記他科表示エリアに表示させるために前記第2病棟の患者情報の少なくとも一部を複写して記憶する第2データベースを有することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
前記ナースコールサーバは、前記第2病棟の追加或いは変更された患者情報が予め設定された条件を満たしていれば、当該患者情報を複写して前記第2データベースに記憶することを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。
【請求項3】
患者の入退院等のオーダを指示するオーダリングシステムが前記ナースコールサーバに接続され、
前記オーダリングシステムにより入院患者が追加されると、前記ナースコールサーバは追加された患者情報が前記第2病棟の患者であって、且つ特定の条件を満たしていたら前記第2データベースに複写して登録することを特徴とする請求項2記載のナースコールシステム。
【請求項4】
前記第1病棟が小児科病棟であると共に、前記第2病棟が産科病棟であって、
前記ナースコールサーバは、新生児が入院患者として追加されたことを検知すると、追加された新生児の患者情報を前記第2データベースに複写して登録することを特徴とする請求項2又は3記載のナースコールシステム。
【請求項5】
前記他科表示エリアに表示されている患者のベッドから呼出信号が送信された場合、前記第2病棟に設置された前記ナースコール親機でのみ呼び出しを実施することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が看護師を呼び出して通話を実施できるナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のナースコール親機を備えて、ナースステーション毎にナースコール親機を備えたナースコールシステムが普及している。従来のこのようなナースコールシステムは、ナースコール親機毎に表示される患者情報は異なり、ナースコール親機が設置されたナースステーションが担当するエリア(病棟)の患者情報のみ表示するよう構成され、他病棟の患者情報まで表示することはなかった(例えば、特許文献1参照)。
また、ナースコール親機には、患者情報をモニタに表示させる際にオーダリングシステムから送られてきた患者情報、及びベッド情報をもとに、病棟のベッド位置に合わせて表示するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−107239号公報
【特許文献2】特開2010−51544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば産科病棟の新生児の場合は、症状によっては小児科医師が診察を行なうことがあるが、上述したように異なる病棟の患者情報は表示できないため、小児科病棟のナースコール親機では新生児の入院状況を把握することができず、産科病棟のナースコール親機において患者情報を把握するしかなかった。そのため、他病棟の患者情報であっても、少なくとも予め設定した特定の病棟の患者情報に関しては、その病棟に設置されたナースコール親機でなくとも他のナースコール親機から確認できるシステムが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、科目の異なる他病棟の患者情報であっても特定の病棟の患者情報に関しては表示することができるナースコール親機を備えたナースコールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と、ナースステーションに設置されてナースコール子機からの呼び出しに看護師が応答するためのナースコール親機と、病室毎に設置されてナースコール子機からの呼び出しを報知すると共に呼出信号をナースコール親機に伝送するための廊下灯と、ナースコール親機と廊下灯との間の通信を制御する制御機と、患者名、担当医師、担当看護師、救護区分、処方を含む患者情報が蓄積されたデータベースを有するナースコールサーバとを備えたナースコールシステムにおいて、ナースコール親機を複数具備し、それぞれ患者情報の一覧を表示するモニタを有し、そのうち特定の第1病棟に設置されたナースコール親機は、モニタに他科の特定の第2病棟に設置されたナースコール親機が表示可能な患者情報を表示する他科表示エリアを有し、ナースコールサーバは、ナースコール親機が個々に設置病棟に合わせて表示する患者情報を記憶する第1データベースに加えて、他科表示エリアに表示させるために第2病棟の患者情報の少なくとも一部を複写して記憶する第2データベースを有することを特徴とする。
この構成によれば、特定の第1病棟のナースコール親機は、自身が設置された病棟の患者情報に加えて第2病棟の患者情報も表示できる。そのため、例えば第1病棟を小児科、第2病棟を産科とした場合に、小児科に設置されたナースコール親機に産科の乳児の患者情報を表示させることができ、小児科の医師が乳児を診察する場合にスムーズに対処できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、ナースコールサーバは、第2病棟の追加或いは変更された患者情報が予め設定された条件を満たしていれば、当該患者情報を複写して第2データベースに記憶することを特徴とする。
この構成によれば、ナースコールサーバが第2データベースに複写する患者情報を認識して自動で第2データベースに複写するため、看護師の負担にならない。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、患者の入退院等のオーダを指示するオーダリングシステムがナースコールサーバに接続され、オーダリングシステムにより入院患者が追加されると、ナースコールサーバは追加された患者情報が第2病棟の患者であって、且つ特定の条件を満たしていたら第2データベースに複写して登録することを特徴とする。
この構成によれば、オーダリングシステムにより入院手続きがされると、データが転送されて他科表表示エリアにその患者の患者情報の表示が可能となるため、別途ナースコール親機等で入力操作得する必要が無く、看護師の負担になることがない。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の構成において、第1病棟が小児科病棟であると共に、第2病棟が産科病棟であって、ナースコールサーバは、新生児が入院患者として追加されたことを検知すると、追加された新生児の患者情報を第2データベースに複写して登録することを特徴とする。
この構成によれば、新生児の入院情報は小児科病棟のナースコール親機で確認でき、小児科において新生児の情報を容易に把握できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、他科表示エリアに表示されている患者のベッドから呼出信号が送信された場合、第2病棟に設置されたナースコール親機でのみ呼び出しを実施することを特徴とする。
この構成によれば、他病棟のナースコール親機で患者情報が表示されても、その患者からの呼出信号の送信は患者が入院している病棟のナースコール親機に対してのみ実施される。よって、表示のみ実施しているナースステーションの看護師の負担が増大することがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の第1病棟のナースコール親機は、自身が設置された病棟の患者情報に加えて特定の第2病棟の患者情報も表示できる。そのため、例えば第1病棟を小児科、第2病棟を産科とした場合に、小児科に設置されたナースコール親機に産科の乳児の患者情報を表示させることができ、小児科の医師が乳児を診察する場合にスムーズに対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。
図2】ナースコール親機の要部回路ブロック図である。
図3】ナースコールサーバの要部回路ブロック図である。
図4】ナースコール親機に表示された患者情報の一例を示すモニタ画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図であり、1はベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機(以下、単に「子機」と称する。)、2はナースステーションに設置されてナースコール子機1からの呼び出しに看護師が応答するためのナースコール親機(以下、単に「親機」と称する。)、3は病室毎に設置されて子機1からの呼び出しを報知すると共に呼出信号を親機2に伝送するための廊下灯、4は親機2と廊下灯3との間の通信を制御する制御機、5は患者名、担当医師、担当看護師、救護区分、処方を含む患者情報が蓄積されたデータベースを有するナースコールサーバ、6は患者の入退院等のオーダを指示するオーダリングシステムである。
【0014】
子機1は病室毎に廊下灯3に伝送線L1を介して接続され、廊下灯3は廊下灯幹線L2を介して制御機4に接続され、親機2は伝送線L3を介して制御機4に接続され、ナースコールサーバ5は伝送線L4を介して制御機4に接続されている。また、オーダリングシステム6は、ナースコールサーバ5に接続されている。
尚、ここでは、第1病棟E1及び第2病棟E2に親機2をそれぞれ設置し、第1病棟E1が小児科病棟、第2病棟E2が産科病棟として以下説明する。
【0015】
子機1は、看護師を呼び出すナースコール呼出を実施する呼出握りボタン1aと、通話するためのマイク及びスピーカを備えたプレート子機1bとで構成され、プレート子機1bが廊下灯3に接続されている。
【0016】
図2は親機2の要部回路ブロック図を示している。図2に示すように、親機2は患者情報を一覧表示する第1モニタ21、呼出元の患者情報等を表示する第2モニタ22、通話するためのハンドセット23、各種操作を実施するために第1モニタ21上に設けられたタッチパネル24、第1モニタ21及び第2モニタ22へ表示する映像や画像を生成する映像処理部25、通話音声を制御する音声処理部26、親機2全体を制御する親機CPU27、制御機4と通信する通信IF28等を備えている。
【0017】
廊下灯3は、病室毎にその入口付近に設置され、ナースコール呼出が発生したら点滅等の報知動作する通知灯3a、病室の患者情報を表示する患者情報表示部3bを有し、子機1から送出された呼出信号を中継して制御機4に送信する。
【0018】
図3はナースコールサーバ5の要部回路ブロック図を示している。図3に示すように、ナースコールサーバ5は個々の親機2が表示する患者情報を蓄積した第1データベース51、特定の患者情報を蓄積する第2データベース52、ナースコールサーバ5全体を制御するサーバCPU53、制御機4及びオーダリングシステム6と通信する通信IF54等を備えている。
【0019】
上記の如く構成されたナースコールシステムの動作は以下の様である。但し、子機1が呼出操作されたら親機2が呼出音を報音し、親機2のハンドセット23を採り上げると親機2と子機1との間で通話路が形成され、患者と看護師とが通話できる動作は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは患者情報の表示を中心に説明する。
【0020】
小児科病棟E1において、親機2の第1モニタ21には小児科に入院中の患者情報の一覧が例えば病室レイアウトに合わせて表示され、所定の操作で産科病棟E2に入院中の新生児情報を合わせて表示させることができる。
図4は小児科病棟E1に設置された親機2の第1モニタ21に患者情報の一覧が表示された状態を示す表示説明図である。図4において、A1に示すエリアが親機2が設置された病棟の患者情報を表示する担当患者表示エリア、即ち親機2を設置したナースステーションの看護師が担当する患者の表示エリアであり、C1は個々の患者情報表示部である。患者情報は病室毎にベッド配置に合わせて患者情報表示枠を表示し、その枠の中に患者氏名、病室番号、ベッド番号、診療科目等の患者情報が表示されている。
【0021】
そして、図4に示すように、画面下部には他科表示エリアA2が設けられ、小児科病棟には存在しない産科病棟の新生児室の表示エリアが設けられ、ベッド配置に合わせて入院中の患者情報である新生児情報C2が表示される。
尚、このとき表示される患者情報は、ナースコールサーバ5から読み取って表示され、担当患者表示エリアA1の表示情報は第1データベース51から読み取って表示され、他科表示エリアA2の表示情報は第2データベース52から読み取って表示される。また、この他科表示エリアA2に表示される患者情報は産科病棟E2の親機2のモニタ21にも表示できることは言うまでもない。
【0022】
オーダリングシステム6において、出産により新生児の入院オーダが発生すると、オーダリングシステム6からナースコールサーバ5に対して、産科の入院情報が新生児氏名(未定の場合は母親の氏名+第何子となる)、生年月日、担当医師、担当看護師、救護区分、処方等及びベッド番号(新生児室何番)とともに送付される。
【0023】
入院情報を受信したナースコールサーバ5は、サーバCPU53が入院情報の例えばベッド番号に新生児室が含まれていることを検知して、当該入院情報を第1データベース51の産科病棟E2に対応する場所に保存する。同時に、新生児の入院であることを認識して第2データベース52にコピーして保存し、小児科の入院情報として小児科病棟E1に設置された親機2の第1モニタ21下部の新生児室のベッドに新生児情報が表示される。
【0024】
尚、新生児であるか否かの判別は、上述したようにベッド番号により判別できるが、生年月日で判別しても良い。例えば、産科で1歳未満の患者の入院オーダがあれば、その患者は新生児であると判断して、小児科にも表示を行なうことができる。
また、言うまでもないが、小児科とともに、産科の親機2の第1モニタ21にも新生児室が表示されており、当該モニタ21の新生児室のベッドにも新生児を表示し、2つのナースステーションの別々のベッド表示に同一患者が表示される。
【0025】
そして、小児科の看護師が小児科の親機2の第1モニタ21上のタッチパネル24を操作して、新生児を選択すると、新生児の詳しい患者情報がポップアップ等で表示され、小児科から産科の新生児を臨時に診察する際に情報を確認することができる。
【0026】
また、このような構成のナースコールシステムにおいて、新生児のベッドに体温を検知するセンサ等が呼出握りボタン1aの代わりにプレート子機1bに接続されている場合には、当該センサの作動によりプレート子機1bから呼出信号が発生する。この呼出信号を受信した制御機4は、産科病棟E2の親機2のみに呼出信号を送信して呼出報音及び呼出表示を行ない、小児科病棟E1の親機2には呼出信号を送信しない。これは、小児科看護師は通常時は新生児の管理を行なっていないし、小児科の看護師の負担を増大させないためである。
【0027】
このように、特定の第1病棟E1の親機2は、自身が設置された病棟の患者情報に加えて第2病棟E2の患者情報も表示できる。そのため、第1病棟E1が小児科、第2病棟E2が産科である場合、小児科病棟E1に設置された親機2に産科病棟E2の乳児の患者情報を表示させることができ、小児科の医師が乳児を診察する場合にスムーズに対処できる。
また、ナースコールサーバ5が第2データベース2に複写する患者情報を認識して第2データベース52に複写するため看護師の負担にならないし、オーダリングシステム6により入院手続きがされると、データが転送されて他科表表示エリアA2にその患者の患者情報の表示が可能となるため、別途親機2等で入力操作等する必要が無く、看護師の負担になることがない。
【0028】
尚、上記実施形態は、第1病棟(小児科病棟)E1、第2病棟(産科病棟)E2にそれぞれ親機2を1台設置した構成を説明したが、複数台ずつ設置しても良いし、更に多数の病棟を跨いで設置しても良い。そして、小児科病棟E1の親機2において産科病棟E2の新生児情報(患者情報)を表示する構成を説明したが、それ以外の科目の病棟間で患者情報の複写表示を行っても良く、スムーズな看護に役立つのは言うまでもない。
また、ナースコールサーバ5の第1データベース51、第2データベース52を設けたが、サーバ機能を制御機4に設けても良くその場合は制御機4に患者情報が記憶される。
更に、産科と小児科双方にベッドが表示されているが、産科では母親を基準として入院管理を行なっていることから、産科の親機2では新生児を表示せず、小児科の親機2のモニタのみ新生児を表示しても良い。但し、新生児の異常時には産科で対応する必要があるため、生体モニタ等のセンサを設置して新生児の異常を検出した場合は、産科の親機2で呼出報知を行なうと共に、患者情報である新生児情報の表示が行われる。
【符号の説明】
【0029】
1・・ナースコール子機、2・・ナースコール親機、3・・廊下灯、4・・制御機、5・・ナースコールサーバ、6・・オーダリングシステム、21・・第1モニタ(モニタ)、24・・タッチパネル、51・・第1データベース、52・・第2データベース、53・・サーバCPU、A2・・他科表示エリア。
図1
図2
図3
図4