特許第6226817号(P6226817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226817
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20171030BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-109255(P2014-109255)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-224696(P2015-224696A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 雄介
(72)【発明者】
【氏名】北井 浩昭
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−204693(JP,A)
【文献】 特開2013−204694(JP,A)
【文献】 実開昭54−000402(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00−57/12
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分であり、
前記前伝動ケースの一部は、前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路よりも上方に配置され、
前記前伝動ケース及び前記後伝動ケースのうち前記前伝動ケースのみに、オイルゲージが設けられ、
前記後伝動ケースに、前記第一潤滑油通路と接続される第一接続口と、前記第二潤滑油通路と接続される第二接続口と、が設けられ、
前記第一潤滑油通路は、前記前伝動ケース側の第一前側通路部と、前記後伝動ケース側で前記後伝動ケースの昇降を許容可能な第一後側通路部と、を有し、
前記第二潤滑油通路は、前記前伝動ケース側の第二前側通路部と、前記後伝動ケース側で前記後伝動ケースの昇降を許容可能な第二後側通路部と、を有し、
前記第一前側通路部のうち前記第一後側通路部と接続される接続口、及び前記第二前側通路部のうち前記第二後側通路部と接続される接続口は、最も上昇した状態の前記後伝動ケースのうち前記第一接続口及び前記第二接続口よりも上方に位置するように構成されている水田作業機。
【請求項2】
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分であり、
前記前伝動ケースの一部は、前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路よりも上方に配置され、
前記前伝動ケース及び前記後伝動ケースのうち前記前伝動ケースのみに、オイルゲージが設けられている水田作業機。
【請求項3】
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分である水田作業機。
【請求項4】
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有している水田作業機。
【請求項5】
記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後輪を支持する左右一対の後車軸を収容する左右一対の収容部が形成され、
前記後車軸ケースは、左右一対の前記収容部に亘るケース本体部と、前記収容部の横外側部分を構成し、前記ケース本体部に対して着脱可能な左右一対のケース側部と、を有し、
前記排出口は、前記ケース本体部に設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後車軸への動力を入切する左右一対のサイドクラッチが収容され、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記サイドクラッチを入切操作する左右一対のフォークロッドが、上下向きの揺動軸心周りで揺動可能に支持され、
前記排出口の軸心の方向は、前記フォークロッドの前記揺動軸心の方向と平行となるように設定されている請求項1から4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項6】
記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後輪を支持する左右一対の後車軸を収容する左右一対の収容部が形成され、
前記後車軸ケースは、左右一対の前記収容部に亘るケース本体部と、前記収容部の横外側部分を構成し、前記ケース本体部に対して着脱可能な左右一対のケース側部と、を有し、
前記排出口は、前記ケース本体部に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項7】
記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項8】
記前伝動ケースは、無段変速装置を収容する無段変速ケースと、左右一対の前記前輪を支持する左右一対の前車軸ケースと、を有し、
左右一対の前記前車軸ケースのうち何れか一方と前記無段変速ケースとに亘って設けられ、左右一対の前車軸ケースのうち何れか一方と前記無段変速ケースとの間で潤滑油が流れる潤滑油通路を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の水田作業機であって、植播系作業機である水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような水田作業機として、例えば、特許文献1に記載の乗用型田植機が既に知られている。この乗用型田植機は、機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、を備えている。後伝動ケースは、機体フレームに対して前後向きの揺動軸心周りに揺動可能に構成されている。
【0003】
また、前伝動ケースから後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、後伝動ケースから前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、が前伝動ケースと後伝動ケースとに亘って設けられている。これにより、前伝動ケースと後伝動ケースとの間に、潤滑油の循環経路が構築されている。潤滑油を循環経路によって循環させることにより、潤滑油の冷却を図ることができる。
【0004】
また、後伝動ケースは、左右一対の後輪を支持する後車軸ケースを有している。後車軸ケースには、潤滑油を排出する排出口が横内方に開口する状態で設けられている。後車軸ケース内の潤滑油を排出口から横方に排出することにより、後車軸ケース内の潤滑油を抜き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−204693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の乗用型田植機では、後伝動ケースが上方に揺動した場合、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し易く、好ましくない。
【0007】
また、特許文献1に記載の乗用型田植機では、潤滑油を排出口から横方に排出するため、潤滑油が後車軸ケース内の底部に残り易く、後車軸ケース内の潤滑油を抜き取るのが容易でない。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の乗用型田植機では、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を、前伝動ケースと後伝動ケースとに亘って設ける必要があり、潤滑油の循環経路が大掛かりとなる。
【0009】
上記状況に鑑み、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機が要望されている。また、後車軸ケース内の潤滑油を容易に抜取り可能な水田作業機が要望されている。さらに、潤滑油の循環経路を簡易的に構築して、ある程度の潤滑油の冷却を図ることが可能な水田作業機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分であり、
前記前伝動ケースの一部は、前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路よりも上方に配置され、
前記前伝動ケース及び前記後伝動ケースのうち前記前伝動ケースのみに、オイルゲージが設けられ、
前記後伝動ケースに、前記第一潤滑油通路と接続される第一接続口と、前記第二潤滑油通路と接続される第二接続口と、が設けられ、
前記第一潤滑油通路は、前記前伝動ケース側の第一前側通路部と、前記後伝動ケース側で前記後伝動ケースの昇降を許容可能な第一後側通路部と、を有し、
前記第二潤滑油通路は、前記前伝動ケース側の第二前側通路部と、前記後伝動ケース側で前記後伝動ケースの昇降を許容可能な第二後側通路部と、を有し、
前記第一前側通路部のうち前記第一後側通路部と接続される接続口、及び前記第二前側通路部のうち前記第二後側通路部と接続される接続口は、最も上昇した状態の前記後伝動ケースのうち前記第一接続口及び前記第二接続口よりも上方に位置するように構成されていることにある。
【0011】
本特徴構成によれば、後伝動ケースが最も上昇した場合でも、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分によって、後伝動ケース側に空気が流れ難くなる。これにより、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機を実現することができる。
そして、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分を、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を屈曲又は湾曲するように形成するだけで、簡単に構成することができる。
また、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路よりも上方に位置する前伝動ケースにオイルゲージを設けて、前伝動ケースと後伝動ケースとでオイルゲージの共通化を図ることができる。
さらに、後伝動ケースが最も上昇した場合でも、第一前側通路部の接続口及び第二後側通路部の接続口が、後伝動ケースの第一接続口及び第二接続口よりも上方に位置するため、後伝動ケース側に空気が流れ難くなる。これにより、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機を実現することができる。
【0012】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分であり、
前記前伝動ケースの一部は、前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路よりも上方に配置され、
前記前伝動ケース及び前記後伝動ケースのうち前記前伝動ケースのみに、オイルゲージが設けられていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、後伝動ケースが最も上昇した場合でも、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分によって、後伝動ケース側に空気が流れ難くなる。これにより、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機を実現することができる。
そして、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分を、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を屈曲又は湾曲するように形成するだけで、簡単に構成することができる。
また、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路よりも上方に位置する前伝動ケースにオイルゲージを設けて、前伝動ケースと後伝動ケースとでオイルゲージの共通化を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有し、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成され、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路における最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分は、屈曲又は湾曲する部分であると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、後伝動ケースが最も上昇した場合でも、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分によって、後伝動ケース側に空気が流れ難くなる。これにより、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機を実現することができる。
そして、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分を、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を屈曲又は湾曲するように形成するだけで、簡単に構成することができる。
【0016】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、
前記後伝動ケースを前記機体フレームに対して昇降可能に支持するサスペンション機構と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記前伝動ケースから前記後伝動ケースに潤滑油が流れる第一潤滑油通路と、
前記前伝動ケースと前記後伝動ケースとに亘って設けられ、前記後伝動ケースから前記前伝動ケースに潤滑油が流れる第二潤滑油通路と、を備え、
前記第一潤滑油通路及び前記第二潤滑油通路は、前記後伝動ケースの昇降を許容可能に構成され、かつ、最も上昇した状態の前記後伝動ケースよりも上方に位置する部分を有していると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、後伝動ケースが最も上昇した場合でも、第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路における最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分によって、後伝動ケース側に空気が流れ難くなる。これにより、前伝動ケース内の空気が第一潤滑油通路及び第二潤滑油通路を介して後伝動ケースに流入し難い水田作業機を実現することができる。
【0018】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、を備え、
前記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後輪を支持する左右一対の後車軸を収容する左右一対の収容部が形成され、
前記後車軸ケースは、左右一対の前記収容部に亘るケース本体部と、前記収容部の横外側部分を構成し、前記ケース本体部に対して着脱可能な左右一対のケース側部と、を有し、
前記排出口は、前記ケース本体部に設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後車軸への動力を入切する左右一対のサイドクラッチが収容され、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記サイドクラッチを入切操作する左右一対のフォークロッドが、上下向きの揺動軸心周りで揺動可能に支持され、
前記排出口の軸心の方向は、前記フォークロッドの前記揺動軸心の方向と平行となるように設定されていると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、潤滑油を排出口から下方に排出することにより、後車軸ケース内の底部に潤滑油が残り難く、後車軸ケース内の潤滑油を容易に抜き取ることができる。
そして、ケース側部よりも大型の部材であるケース本体部に排出口を設けることにより、排出口を設ける位置の自由度が高く、排出口を容易に設けることができる。
また、フォークロッドを支持する部分と同じ方向から、後車軸ケースを加工して排出口を設けることにより、排出口を容易に設けることができる。
【0020】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、を備え、
前記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられ、
前記後車軸ケースに、左右一対の前記後輪を支持する左右一対の後車軸を収容する左右一対の収容部が形成され、
前記後車軸ケースは、左右一対の前記収容部に亘るケース本体部と、前記収容部の横外側部分を構成し、前記ケース本体部に対して着脱可能な左右一対のケース側部と、を有し、
前記排出口は、前記ケース本体部に設けられていると好適である。
【0021】
本特徴構成によれば、潤滑油を排出口から下方に排出することにより、後車軸ケース内の底部に潤滑油が残り難く、後車軸ケース内の潤滑油を容易に抜き取ることができる。
そして、ケース側部よりも大型の部材であるケース本体部に排出口を設けることにより、排出口を設ける位置の自由度が高く、排出口を容易に設けることができる。
【0022】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの後部に設けられ、左右一対の後輪に動力を伝達する伝動系を収容する後伝動ケースと、を備え、
前記後伝動ケースは、左右一対の前記後輪を支持する後車軸ケースを有し、
前記後車軸ケースに、潤滑油を排出する排出口が下方に開口する状態で設けられていると好適である。
【0023】
本特徴構成によれば、潤滑油を排出口から下方に排出することにより、後車軸ケース内の底部に潤滑油が残り難く、後車軸ケース内の潤滑油を容易に抜き取ることができる。
【0024】
さらに、本発明において、
機体フレームと、
前記機体フレームの前部に設けられ、左右一対の前輪に動力を伝達する伝動系を収容する前伝動ケースと、を備え、
前記前伝動ケースは、無段変速装置を収容する無段変速ケースと、左右一対の前記前輪を支持する左右一対の前車軸ケースと、を有し、
左右一対の前記前車軸ケースのうち何れか一方と前記無段変速ケースとに亘って設けられ、左右一対の前車軸ケースのうち何れか一方と前記無段変速ケースとの間で潤滑油が流れる潤滑油通路を備えると好適である。
【0025】
本特徴構成によれば、前伝動ケース内の潤滑油が潤滑油通路を介して循環される。したがって、潤滑油の循環経路を簡易的に構築して、ある程度の潤滑油の冷却を図ることができる。
【0026】
さらに、本発明において、
水田作業機であって、植播系作業機であると好適である。
【0027】
本特徴構成によれば、好適な植播系作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】田植機を示す左側面図である。
図2】前伝動ケース及び後伝動ケースの懸架構造を示す左側面図である。
図3】前伝動ケース及び後伝動ケースの懸架構造を示す右側面図である。
図4】前伝動ケース及び後伝動ケースの懸架構造を示す平面図である。
図5】ミッションケースを示す右側面図である。
図6】前車軸ケースの左側部を示す斜視図である。
図7】後車軸ケースを示す展開断面図である。
図8】後車軸ケースの左側部を示す斜視図である。
図9】潤滑油の循環経路を模式的に示す平面図である。
図10】別実施形態に係る潤滑油の循環経路を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0030】
〔田植機の全体構成〕
図1には、乗用型の田植機(本発明に係る「水田作業機」、「植播系作業機」に相当)を示している。この田植機には、走行機体1が備えられている。走行機体1の前部には、エンジン2が備えられている。エンジン2は、ボンネット3によって覆われている。ボンネット3の左右には、予備苗載せ台4が夫々備えられている。ボンネット3の後方には、運転部5が備えられている。運転部5は、操縦ハンドル6及び運転座席7を有している。走行機体1の後部には、苗植付装置8が昇降可能に備えられている。
【0031】
〔走行機体〕
図2から図4に示すように、走行機体1には、機体フレーム9が備えられている。機体フレーム9の前端部には、ギヤ式の有段変速装置を収容するミッションケース10が設けられている。ミッションケース10の左側部のうち上部側には、油圧式の無段変速装置を収容する無段変速ケース11が設けられている。ミッションケース10の左右両側部のうち下部側には、左右一対の前輪12を支持する左右一対の前車軸ケース13が設けられている。ミッションケース10、無段変速ケース11及び左右一対の前車軸ケース13は、前伝動ケース14を構成している。エンジン2からの動力は、無段変速ケース11、ミッションケース10及び左右一対の前車軸ケース13を順に経て、左右一対の前輪12に伝達される。
【0032】
機体フレーム9の後端部には、左右一対の後輪15を支持する後車軸ケース16(本発明に係る「後伝動ケース」、「後車軸ケース」に相当)が設けられている。後車軸ケース16は、機体フレーム9に対して昇降可能にサスペンション機構17に支持されている。前伝動ケース14と後車軸ケース16とに亘って、第一潤滑油通路18及び第二潤滑油通路19が設けられている。
【0033】
〔サスペンション機構〕
サスペンション機構17は、5リンク式のサスペンション機構によって構成されている。サスペンション機構17は、左右一対のトップリンク20と、左右一対のロアリンク21と、ラテラルロッド22と、左右一対のスプリング23と、左右一対のブラケット24と、を有している。
【0034】
ブラケット24は、後車軸ケース16の前面に固定されている。ブラケット24の上端部には、トップリンク20の後端部が揺動可能に支持されている。ブラケット24の下端部には、ロアリンク21の後端部が揺動可能に支持されている。
【0035】
スプリング23は、機体フレーム9側と後車軸ケース16側とに亘って設けられている。スプリング23の下端部は、後車軸ケース16側の下バネ受け25に支持されている。スプリング23の上端部は、機体フレーム9側の上バネ受け26に支持されている。上バネ受け26は、機体フレーム9から横外方に突出する固定部9aにボルト固定されている。
【0036】
〔前伝動ケース〕
ミッションケース10及び無段変速ケース11は、第一潤滑油通路18及び第二潤滑油通路19よりも上方に配置されている。つまり、ミッションケース10及び無段変速ケース11は、機体フレーム9よりも上方に配置されている。また、ミッションケース10の上面には、操縦ハンドル6用のパワーステアリングユニット27が固定されている。ミッションケース10には、オイルゲージ28が設けられている(図5参照)。オイルゲージ28は、ミッションケース10の上面のうちパワーステアリングユニット27の後方の部分に配置されている。なお、後車軸ケース16には、オイルゲージが設けられていない。つまり、前伝動ケース14及び後車軸ケース16のうち前伝動ケース14のみに、オイルゲージ28が設けられている。また、前車軸ケース13には、潤滑油を排出する排出口13aが横内方に開口する状態で設けられている(図6参照)。排出口13aには、ボルト13bが着脱可能に取り付けられている。
【0037】
〔後車軸ケース〕
後車軸ケース16は、第一潤滑油通路18及び第二潤滑油通路19よりも下方に配置されている。後車軸ケース16の左右両側部には、左右一対の後輪15を支持する左右一対の後車軸15Aが回転可能に支持されている。図7に示すように、後車軸ケース16の左右両側部には、左右一対の後車軸15Aを収容する左右一対の収容部16Aが形成されている。後車軸ケース16は、ケース本体部16Bと、左右一対のケース側部16Cと、を有している。ケース本体部16Bは、左右一対の収容部16Aに亘るように形成されている。ケース側部16Cは、収容部16Aの横側部を構成し、ケース本体部16Bに対して着脱可能に構成されている。
【0038】
ケース本体部16Bには、第一潤滑油通路18と接続される第一接続口16aと、第二潤滑油通路19と接続される第二接続口16bと、が設けられている。ケース本体部16Bには、左右一対の後車軸15Aへの動力を入切する左右一対のサイドクラッチ29が収容されている。ケース本体部16Bには、左右一対のサイドクラッチ29を入切操作する左右一対のフォークロッド30が設けられている。フォークロッド30は、ボス部16eに上下向きの揺動軸心Z1周りで揺動可能に支持されている。ケース本体部16Bの左右両側部には、潤滑油を排出する排出口16cが下方に開口する状態で設けられている(図8参照)。排出口16cの軸心Z2の方向は、フォークロッド30の揺動軸心Z1の方向と平行な上下向きとなるように設定されている。排出口16cには、ボルト16dが着脱可能に取り付けられている。
【0039】
〔第一潤滑油通路〕
図2から図4に示すように、第一潤滑油通路18は、無段変速ケース11と後車軸ケース16とに亘って設けられている。第一潤滑油通路18は、機体フレーム9の左方に配置されている。第一潤滑油通路18は、機体フレーム9の上面よりも下方に配置されている。第一潤滑油通路18は、第一ステー31を介して機体フレーム9に支持されている。第一潤滑油通路18は、前側の第一前側通路部18Aと、後側の第一後側通路部18Bと、を有している。
【0040】
〔第一前側通路部〕
第一前側通路部18Aは、硬質の管(例えば、鉄パイプ)で構成されている。第一前側通路部18Aの前端部は、無段変速ケース11の接続口11aと接続されている。第一前側通路部18Aの後端部には、第一曲部18a(本発明に係る「屈曲又は湾曲する部分」に相当)が形成されている。第一前側通路部18Aの後端部のうち第一曲部18aよりも前方の部分には、第一ステー31が取り付けられている。第一前側通路部18Aの後端部のうち第一曲部18aよりも後方の部分には、第一後側通路部18Bの前端部と接続される接続口18bが形成されている。
【0041】
〔第一後側通路部〕
第一後側通路部18Bは、機体フレーム9の下面よりも下方に配置されている。第一後側通路部18Bは、後車軸ケース16の昇降を許容可能に構成されている。第一後側通路部18Bは、軟質の管(例えば、ゴムホース)で構成されている。第一後側通路部18Bの後端部は、後車軸ケース16の第一接続口16aと接続されている。
【0042】
〔第一曲部〕
第一曲部18aは、側面視において、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成されている。第一曲部18aは、平面視において、その後端ほど左方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成されている。第一曲部18aは、側面視において、機体フレーム9と重複するように配置されている。第一曲部18aは、前後方向において、第一ステー31と固定部9aとの間に配置されている。第一曲部18aは、第一潤滑油通路18(第一前側通路部18A)のうち最も機体フレーム9の左側面に近接する部位の後端部に形成されている。
【0043】
〔第二潤滑油通路〕
第二潤滑油通路19は、右側の前車軸ケース13と後車軸ケース16とに亘って設けられている。第二潤滑油通路19は、機体フレーム9右方に配置されている。第二潤滑油通路19は、機体フレーム9の上面よりも下方に配置されている。第二潤滑油通路19は、第二ステー32を介して機体フレーム9に支持されている。第二潤滑油通路19は、前側の第二前側通路部19Aと、後側の第二後側通路部19Bと、を有している。
【0044】
〔第二前側通路部〕
第二前側通路部19Aは、硬質の管(例えば、鉄パイプ)で構成されている。第二前側通路部19Aの前端部は、右側の前車軸ケース13の接続口13cと接続されている。第二前側通路部19Aの後端部には、第二曲部19a(本発明に係る「屈曲又は湾曲する部分」に相当)が形成されている。第二前側通路部19Aの後端部のうち第二曲部19aよりも前方の部分には、第二ステー32が取り付けられている。第二前側通路部19Aの後端部のうち第二曲部19aよりも後方の部分には、第二後側通路部19Bの前端部と接続される接続口19bが形成されている。
【0045】
〔第二後側通路部〕
第二後側通路部19Bは、後車軸ケース16の昇降を許容可能に構成されている。第二後側通路部19Bは、機体フレーム9の下面よりも下方に配置されている。第二後側通路部19Bは、軟質の管(例えば、鉄パイプ)で構成されている。第二後側通路部19Bの後端部は、後前車軸ケース13の第二接続口16bと接続されている。
【0046】
〔第二曲部〕
第二曲部19aは、側面視において、その後端ほど下方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成されている。第二曲部19aは、平面視において、その後端ほど右方に位置するように屈曲又は湾曲するように形成されている。第二曲部19aは、側面視において、機体フレーム9と重複するように配置されている。第二曲部19aは、第二潤滑油通路19(第二前側通路部19A)のうち最も機体フレーム9の右側面に近接する部位の後端部に形成されている。第二曲部19aは、前後方向において、第二ステー32と固定部9aとの間に配置されている。
【0047】
〔潤滑油の循環経路〕
このような構成により、前伝動ケース14と後車軸ケース16との間に、潤滑油の循環経路が構築されている。すなわち、図9に示すように、ミッションケース10内の潤滑油が無段変速ケース11を通って、無段変速ケース11の接続口11aから第一潤滑油通路18に流入する。そして、第一潤滑油通路18内の潤滑油が第一接続口16aから後車軸ケース16に流入する。つまり、無段変速ケース11からの潤滑油が第一潤滑油通路18によって後車軸ケース16に流れる。
【0048】
そして、後車軸ケース16内の潤滑油が第二接続口16bから第二潤滑油通路19に流入する。そして、第二潤滑油通路19内の潤滑油が接続口13cから右側の前車軸ケース13に流入する。つまり、後車軸ケース16からの潤滑油が第二潤滑油通路19によって右側の前車軸ケース13に流れる。また、右側の前車軸ケース13内の潤滑油がミッションケース10や左側の前車軸ケース13を経て、再び無段変速ケース11から第一潤滑油通路18に流入する。こうして、前伝動ケース14と後車軸ケース16との間で、潤滑油が循環経路によって循環される。この循環経路で循環される潤滑油は、前記油圧式の無段変速装置に作動油を補給するチャージポンプPによって圧送される。
【0049】
ここで、図2及び図3に示すように、後車軸ケース16が最も上昇した場合、第一前側通路部18Aの全体及び第二前側通路部19Aの全体は、最も上昇した状態の後車軸ケース16(図2及び図3において、二点鎖線で示す後車軸ケース16)よりも上方に位置している。つまり、第一潤滑油通路18のうち第一前側通路部18A及び第二潤滑油通路19のうち第二前側通路部19Aが、夫々、本発明に係る「最も上昇した状態の後伝動ケースよりも上方に位置する部分」に相当する。そして、第一前側通路部18Aの接続口18b及び第二前側通路部19Aの接続口19bは、最も上昇した状態の後車軸ケース16の第一接続口16a及び第二接続口16bよりも上方に位置している。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、前伝動ケース14と後車軸ケース16とに亘って、第一潤滑油通路18及び第二潤滑油通路19が設けられているが、図10に示すように、右側の前車軸ケース13と無段変速ケース11とに亘って、潤滑油通路33が設けられていてもよい。この場合、潤滑油通路33は、硬質の管(例えば、鉄パイプ)及び軟質の管(例えば、鉄パイプ)の何れで構成されていてもよい。無段変速ケース11からの潤滑油は、潤滑油通路33を介して右側の前車軸ケース13に流れる。これにより、前伝動ケース14内の潤滑油が潤滑油通路33を介して循環される。つまり、前伝動ケース14のみの潤滑油の循環経路が構築されている。例えば、上記実施形態において、第一潤滑油通路18及び第二潤滑油通路19のうち何れか一方が破損した場合、当該何れか一方を取り外して、何れか他方によって潤滑油通路33を構成することができる。なお、後車軸ケース16の第一接続口16a及び第二接続口16bを塞ぐ必要がある。
【0051】
(2)上記実施形態では、第一潤滑油通路18は、機体フレーム9の左方に配置され、かつ、第二潤滑油通路19は、機体フレーム9の右方に配置されているが、第一潤滑油通路18は、機体フレーム9の右方に配置され、かつ、第二潤滑油通路19は、機体フレーム9の左方に配置されていてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、第一前側通路部18Aの全体及び第二前側通路部19Aの全体が最も上昇した状態の後車軸ケース16よりも上方に位置するように構成されているが、第一前側通路部18Aのうち第一曲部18aのみ及び第二前側通路部19Aのうち第二曲部19aのみが最も上昇した状態の後車軸ケース16よりも上方に位置するように構成されていてもよい。
【0053】
(4)上記実施形態では、排出口16cがケース本体部16Bに設けられているが、左右一対のケース側部16Cに設けられていてもよい。
【0054】
(5)上記実施形態において、「無段変速装置」は、油圧式の無段変速装置(HST)によって構成されているが、油圧−機械式の無段変速装置(HMT)によって構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、田植機の他、直播機にも利用可能である。植播系作業機には、田植機や直播機が含まれる。
【符号の説明】
【0056】
9 機体フレーム
11 無段変速ケース
12 前輪
13 前車軸ケース
14 前伝動ケース
15 後輪
15A 後車軸
16 後車軸ケース(後伝動ケース、後車軸ケース)
16A 収容部
16B ケース本体部
16C ケース側部
16a 第一接続口
16b 第二接続口
16c 排出口
17 サスペンション機構
18 第一潤滑油通路
18A 第一前側通路部
18B 第一後側通路部
18a 第一曲部(屈曲又は湾曲する部分)
18b 接続口
19 第二潤滑油通路
19A 第二前側通路部
19B 第二後側通路部
19a 第二曲部(屈曲又は湾曲する部分)
19b 接続口
28 オイルゲージ
29 サイドクラッチ
30 フォークロッド
33 潤滑油通路
Z1 揺動軸心
Z2 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10