特許第6226818号(P6226818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226818プレストレス装置、これを備えるスタンド拡縮ミル及びプレストレスの付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226818
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】プレストレス装置、これを備えるスタンド拡縮ミル及びプレストレスの付与方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/04 20060101AFI20171030BHJP
   B21B 13/10 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B21B31/04
   B21B13/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-114956(P2014-114956)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-229166(P2015-229166A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】須田 清次
(72)【発明者】
【氏名】新保 健太郎
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−254003(JP,A)
【文献】 特開昭60−141309(JP,A)
【文献】 特開昭50−078551(JP,A)
【文献】 実開昭60−034306(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0158802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 13/00−13/22
B21B 27/00−35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハウジングの間隔を変えてそれぞれの前記間隔で圧延を行うスタンド拡縮ミルに用いられ、
前記一対のハウジングのうちの一方に取り付けられるシリンダケーシング、
前記シリンダケーシング内を軸方向に摺動可能なピストン、
前記ピストンに挿入されている頭部を有し、前記一対のハウジング間にプレストレスを付与するプレストレスロッド、及び
前記ハウジング間に配置されるスペーサーを備えるプレストレス装置において、
前記プレストレスロッドの頭部は、径方向に突出する突起部を有し、
前記ピストンは、内部に軸方向に分離して設けられた複数のボス部を有し、
該複数のボス部のうちの少なくとも1つには、所定通過角度で前記プレストレスロッドの頭部を通過させる凹部が形成されていることを特徴とするプレストレス装置。
【請求項2】
請求項1記載のプレストレス装置において、前記複数のボス部のうちの少なくとも隣り合う2つに前記凹部が形成されており、前記所定通過角度が隣り合う前記ボス部間で異なることを特徴とするプレストレス装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプレストレス装置において、前記突起部が点対称に形成されていることを特徴とするプレストレス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレストレス装置において、前記スペーサーが、前記プレストレスロッドを覆う筒状スペーサーと、断面U字状スペーサーとを有することを特徴とするプレストレス装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレストレス装置において、前記ピストンを回転させる回転手段をさらに備えていることを特徴とするプレストレス装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレストレス装置を備えることを特徴とするスタンド拡縮ミル。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレストレス装置を用いたプレストレスの付与方法において、
前記プレストレスロッドの頭部の突起部といずれか1の前記ボス部とを接触させた状態で前記ピストンに圧力をかけることにより前記プレストレスを付与する工程を有することを特徴とするプレストレスの付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼の圧延などの際にハウジング間にプレストレスを付与するプレストレス装置、これを備えるスタンド拡縮ミル及びプレストレスの付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形鋼の圧延を行うミルとしては、H形鋼を圧延するユニバーサルミル、山形鋼や鋼矢板等の一般形鋼を圧延する水平二重ミルなどがある。このようなミルには、スタンド間隔(ハウジング間隔)を拡縮し、かつロールを交換することでユニバーサルミルと水平二重ミルとの両方に対応できるコンビネーションミル等のスタンド拡縮ミルがある。
【0003】
また、形鋼を圧延するミルにおいては、形鋼の公差ずれを低減することなどを目的に、両ハウジング間にプレストレスを付与するプレストレス装置が備えられる。プレストレス装置は、両ハウジングを連結し、プレストレス(両ハウジングを引き付ける力)を付与するプレストレスロッドと、両ハウジング間に配置されるスペーサーとを有する。プレストレスを付与した際にスペーサーにはプレストレスに対する反力が生じ、このようなプレストレス装置により一対のハウジング間の剛性を高めている。
【0004】
コンビネーションミル(スタンド拡縮ミル)に備えられるプレストレス装置には、ハウジング間隔の変更に対応可能な構造が求められる。そこで、ボス部が形成されたピストンを用いて、ピストンへのプレストレスロッドの出し入れを可能とした発明や(特許文献1参照)、分割された2つのスペーサーを組み合わせることで、合体したスペーサーの長さを変えることができる発明(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1の発明においては、ハウジング間隔を広げたときに適正なプレストレスを付与できる構造となっていない。特許文献2の発明においては、スペーサーの長さを変え、ハウジング間隔を広げたときにもプレストレスを付与できる構造になっている。しかし、ハウジング間隔を狭めたときにプレストレス荷重を受けるための凹部(段差)をプレストレスロッドの周面に設ける必要があり、凹部の強度確保のためロッド径等を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−254003号公報
【特許文献2】特開2003−126903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、プレストレスロッドの小径化も可能とするプレストレス装置、これを備えるスタンド拡縮ミル、及びこれを用いるプレストレスの付与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係るプレストレス装置は、一対のハウジングの間隔を変えてそれぞれの前記間隔で圧延を行うスタンド拡縮ミルに用いられ、前記一対のハウジングのうちの一方に取り付けられるシリンダケーシング、前記シリンダケーシング内を軸方向に摺動可能なピストン、前記ピストンに挿入されている頭部を有し、前記一対のハウジング間にプレストレスを付与するプレストレスロッド、及び前記ハウジング間に配置されるスペーサーを備えるプレストレス装置において、前記プレストレスロッドの頭部は、径方向に突出する突起部を有し、前記ピストンは、内部に軸方向に分離して設けられた複数のボス部を有し、該複数のボス部のうちの少なくとも1つには、所定通過角度で前記プレストレスロッドの頭部を通過させる凹部が形成されている。
【0009】
第1の発明に係るプレストレス装置においては、内側に複数のボス部が形成されたピストンを用いる。このため、ハウジングの間隔に対応した各ボス部にプレストレスロッドの頭部の突起部を接触させた状態で、ピストンによりプレストレスロッドに力を加えることができる。従って、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができる。さらに、第1の発明に係るプレストレス装置においては、このようにピストンのボス部の形状とプレストレスロッドの突起部とにより、各間隔でプレストレス付与を可能にしており、プレストレスロッドに凹部等を形成する必要が無いため、プレストレスロッドの小径化も可能となる。
【0010】
第1の発明に係るプレストレス装置において、前記複数のボス部のうちの少なくとも隣り合う2つに前記凹部が形成されており、前記所定通過角度が隣り合う前記ボス部間で異なることが好ましい。換言すれば、プレストレスロッドの頭部が通過可能な、ピストンとプレストレスロッドとの軸方向視の相対的な角度(所定通過角度)が、隣り合う前後のボス部間で異なるように各ボス部の凹部を形成していることが望ましい。この場合、例えば、ハウジングの間隔を拡げるときに、一のボス部の所定通過角度で、一のボス部の外側から内側にプレストレスロッドの頭部を通過させると、一のボス部の内側に設けられた他のボス部に頭部が接触する。従って、所望する位置でプレストレスロッドの移動がとまり、この状態のままプレストレスを付与することができる。
【0011】
第1の発明に係るプレストレス装置において、前記突起部が点対称に形成されていることが好ましい。突起部を点対称形状にすることで、ボス部と突起部との接触が均等的になり、ピストンからプレストレスロッドへの力の伝達が効率的になる。
【0012】
第1の発明に係るプレストレス装置において、前記スペーサーが、前記プレストレスロッドを覆う筒状スペーサーと、断面U字状スペーサーとを有することが好ましい。このようにすることで、ハウジングの間隔が最小の場合は筒状スペーサーのみを用い、ハウジングの間隔を拡げた場合は、拡げた幅に対応する断面U字状スペーサーをさらに用いることで、各ハウジング間隔に対応してスペーサーを使用することができる。
【0013】
第1の発明に係るプレストレス装置において、前記ピストンを回転させる回転手段をさらに備えていることが好ましい。ピストンを回転させる回転手段を備えることで、ハウジング間隔の変更に伴うプレストレスロッドの調整を効率的に行うことができる。
【0014】
第2の発明に係るスタンド拡縮ミルは、第1の発明に係るプレストレス装置を備える。第2の発明に係るスタンド拡縮ミルは、第1の発明に係るプレストレス装置を備えているため、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、公差ずれが低減された形鋼の圧延を行うことができる。
【0015】
第3の発明に係るプレストレスの付与方法は、第1の発明に係るプレストレス装置を用いたプレストレスの付与方法において、前記プレストレスロッドの頭部の突起部といずれか1の前記ボス部とを接触させた状態で前記ピストンに圧力をかけることにより前記プレストレスを付与する工程を有する。第3の発明に係るプレストレスの付与方法によれば、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、公差ずれが低減された形鋼の圧延を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係るプレストレス装置によれば、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、プレストレスロッドの小径化も可能となる。第2の発明に係るスタンド拡縮ミルによれば、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、公差ずれが低減された形鋼の圧延を行うことができる。第3の発明に係るプレストレスの付与方法によれば、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、この方法を用いて圧延を行うことで、公差ずれが低減された形鋼の圧延を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスタンド拡縮ミルを示す模式図である。
図2】(a)は同スタンド拡縮ミルの狭幅時におけるプレストレス装置を示す断面図であり、(b)は同スタンド拡縮ミルの拡幅時におけるプレストレス装置を示す断面図である。
図3】(a−1)は図2(a)のA1−A1矢視断面図であり、(a−2)は図2(a)のA2−A2矢視断面図であり、(a−3)は図2(a)のA3−A3矢視断面図であり、(b−1)は図2(b)のB1−B1矢視断面図であり、(b−2)は図2(b)のB2−B2矢視断面図であり、(b−3)は図2(b)のB3−B3矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しながら本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るスタンド拡縮ミル10は、一対のハウジング(スタンド)としての駆動側ハウジング11及び操作側ハウジング12と、複数のプレストレス装置13と、一対のハウジング(駆動側ハウジング11及び操作側ハウジング12)間に設けられた一対の水平ロール14と、駆動側ハウジング11及び操作側ハウジング12のそれぞれの上部に設けられた水平圧下装置(図示せず)と、駆動側ハウジング11及び操作側ハウジング12のそれぞれの下部に設けられた水平圧上装置(図示せず)と、駆動側ハウジング11及び操作側ハウジング12のそれぞれに取り付けられ、それぞれに竪ロール17を有する対向する一対のヨーク18とを備える。駆動側ハウジング11は固定されており、操作側ハウジング12は駆動側ハウジング11との間隔を調整可能な移動式のハウジングである。各プレストレス装置13は、駆動側ハウジング11と操作側ハウジング12とを連結するように配置されている。この図1におけるスタンド拡縮ミル10は、H形鋼を圧延するユニバーサル圧延の構造になっている。
【0019】
スタンド拡縮ミル10は、ユニバーサル圧延又は水平二重圧延から水平二重圧延又はユニバーサル圧延に使用できるように、駆動側ハウジング11と操作側ハウジング12との間隔を変えて、所要の面長のロールを組み込み可能な構造としている。図1において、両ハウジング11、12の間隔は、L1とL2とで変更することができる。スタンド拡縮ミル10におけるプレストレス装置13以外の装置、構造等の詳細は従来公知の技術を適宜参照することができる。
【0020】
図1図3に示されるように、プレストレス装置13は、シリンダケーシング19、ピストン20、プレストレスロッド21、スペーサー22、及び回転手段としての油圧シリンダ23を備えている。
【0021】
シリンダケーシング19は、駆動側ハウジング11の外側にボルト等によって取り付けられている。シリンダケーシング19は筒状構造を有し、内周面に環状凹部24が形成されている。
【0022】
ピストン20は、シリンダケーシング19内を軸方向(図2(a)、(b)における左右方向)に摺動可能に配置されている。ピストン20の一端側(外側)は、シリンダケーシング19から露出した露出部分42となっている。ピストン20は筒状構造を有し、外周面に環状凸部25が形成されている。環状凸部25の軸方向の長さ(厚さ)は、シリンダケーシング19の環状凹部24の軸方向の長さより小さく形成されている。シリンダケーシング19とピストン20とで液圧シリンダ構造を構成し、環状凹部24と環状凸部25との間に形成される空間が油圧室26となる。また、油圧室26の軸方向長さが、ピストン20の最大摺動長さとなる。油圧室26は、図示しない油圧ポンプ等と連結されている。ピストン20の内部構造については後述する。
【0023】
プレストレスロッド21は、一対のハウジング11、12間にプレストレス(両ハウジング11、12間距離を縮める力)を付与する棒状部材であり、両ハウジング11、12を貫通するように配置されている。プレストレスロッド21の操作側ハウジング12側の端部(尾部27)側は、操作側ハウジング12を貫通し、例えばボルトなどの固定手段により操作側ハウジング12に着脱可能に固定されている。
【0024】
プレストレスロッド21の駆動側ハウジング11側の端部(頭部28)側は、駆動側ハウジング11を貫通している。頭部28は、シリンダケーシング19に嵌入したピストン20に挿入されている。頭部28は、径方向に突出する突起部29を有する。突起部29は、図3(a−1)等に示されるように、軸方向視で4つのスプライン状の突起片が90°ピッチで形成された構造となっている。すなわち、突起部29は、軸方向視で点対称に形成されている。また、図2(a)等に示されるように、突起部29の各突起片は径方向視で方形に形成されている。
【0025】
スペーサー22は、一対のハウジング11、12間に配置される。具体的には、スペーサー22は、筒状の第1スペーサー30(筒状スペーサー)と、筒状の第2スペーサー31(筒状スペーサー)と、断面U字状の第3スペーサー32(断面U字状スペーサー)とを有する。
【0026】
第1スペーサー30は、駆動側ハウジング11の内側に、プレストレスロッド21を覆うように取り付けられている。第2スペーサー31は、操作側ハウジング12の内側に、プレストレスロッド21を覆うように取り付けられている。第1スペーサー30及び第2スペーサー31は各ハウジング11、12に対する取り付け部分がフランジ構造となっており、各ハウジング11、12の内側面に加工された複数のタップ孔に螺合するボルト等によって締結され、着脱可能な構造となっている。第1スペーサー30及び第2スペーサー31は、図2(a)に示すように、一対のハウジング11、12の狭幅時の間隔に対応した長さとなっており、第1スペーサー30及び第2スペーサー31の対向面同士が接触した状態で、一対のハウジング11、12間の距離がL1となるように設定されている。
【0027】
第3スペーサー32は、図3(a−3)、(b−3)に示されるように、軸方向視が断面U字状である。第3スペーサー32には、油圧シリンダ33が接続されている。油圧シリンダ33の操作により第3スペーサー32は進退し、プレストレスロッド21への第3スペーサー32の着脱が可能になっている。なお、第3スペーサー32は、上下方向に進退するように設けられていてもよいし、水平方向に進退するように設けられていてもよい。第3スペーサー32は、カバー34により覆われている。第3スペーサー32は、一対のハウジング11、12の間隔の拡幅長さLに一致する長さとなっている。すなわち、第1スペーサー30、第2スペーサー31及び第3スペーサー32は、図2(b)に示すように、一対のハウジング11、12の拡幅時の間隔に対応した長さとなっており、第1スペーサー30と第2スペーサー31との間に第3スペーサー32を挟んで、各スペーサー30、31、32の端面同士が接触した状態のとき、一対のハウジング11、12間の距離がL1+L(=L2)となるように設定されている。すなわち、第3スペーサー32の軸方向長さはLとなっている。
【0028】
ここでピストン20の内側の構造について説明する。ピストン20の内側には、プレストレスロッド21の頭部28が挿入され、一対のハウジング11、12の幅(間隔)を狭幅と拡幅とに変えた場合、狭幅状態及び拡幅状態のいずれにおいても、プレストレスロッド21によりプレストレスを付与可能な構造となっている。ピストン20の内部には2つのボス部(第1ボス部36、第2ボス部37)が、軸方向に分離して設けられている。各ボス部(第1ボス部36、第2ボス部37)は、ピストン20の軸中心方向に向かって形成された環状の突起である。ピストン20の内部には、内側(操作側ハウジング12側)から順に側面視で、第1ボス部36、第1円柱空間部38、第2ボス部37及び第2円柱空間部39が設けられている。
【0029】
第1ボス部36及び第2ボス部37には、所定通過角度でプレストレスロッド21の頭部28を通過させる凹部40、41がそれぞれ形成されている(図3(a−1)、(a−2)、(b−1)、(b−2)等参照)。なお、第1ボス部36の凹部40は必須ではないが、これによりプレストレスロッド21を駆動側ハウジング11に貫通させた後にピストン20を取り付けることができるようになる。これにより組み立て順序の自由度が高まる。凹部40、41は、頭部28の突起部29の形状(等角度間隔に配置された4つのスプライン上の突起片からなる形状)に対応する、90°ピッチで配置された4つの溝状切り欠きで形成されている。第1ボス部36の凹部40と第2ボス部37の凹部41の形状は同一であるが、軸方向視の角度が45°異なる。具体的には、図2(a)の状態においては、第1ボス部36の凹部40は「+」状に形成されており(図3(a−2)参照)、第2ボス部37の凹部41は「X」状に形成されている(図3(a−1)参照)。すなわち、プレストレスロッド21の頭部28の通過角度(所定通過角度)は、第1ボス部36と第2ボス部37とで45°異なる。
【0030】
第1円柱空間部38及び第2円柱空間部39は、頭部28を収容及び軸回りに回転可能なサイズで形成されている。すなわち、第1円柱空間部38及び第2円柱空間部39の軸方向の長さは、頭部28の長さと等しいかそれより大きく形成されている。また、第1円柱空間部38及び第2円柱空間部39の直径は、頭部28の直径と等しいかそれより大きく形成されている。
【0031】
油圧シリンダ23は、一端側が駆動側ハウジング11に、他端側がピストン20の外側周面の露出部分42に接続されている。図3(a−1)、(b−1)に示されるように、油圧シリンダ23の伸縮によりピストン20が45°回転する。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態としてのプレストレス装置13を用いたプレストレスの付与方法及びハウジング間隔の調整方法について説明する。
【0033】
(1)狭幅状態におけるプレストレス付与
図2(a)に示される、一対のハウジング11、12間の距離がL1の狭幅状態におけるプレストレスの付与方法について説明する。このとき、スペーサー22としては、第3スペーサー32はプレストレスロッド21から外し、第1スペーサー30と第2スペーサー31とが配置された状態となっている。また、プレストレスロッド21の頭部28は、ピストン20の最も奥(第2円柱空間部39)に挿入されている。このとき、頭部28の突起部29の向きは上下左右方向(軸方向視で「+」形状)となっている(図3(a−1)参照)。また、第2ボス部37の凹部41の向きはそれぞれ斜め方向(軸方向視で「X」形状)となっており(図3(a−1)参照)、第1ボス部36の凹部40の向きは上下左右方向(軸方向視で「+」形状)となっている(図3(a−2)参照)。このような配置により、頭部28は、第2ボス部37を通過することができず、頭部28の突起部29と第2ボス部37とが接触した状態となっている。突起部29と第2ボス部37とは互いに平面で接触している。
【0034】
このように、突起部29と第2ボス部37とを接触させた状態で、油圧室26に油圧を作用させる。この油圧により、ピストン20に外側方向に圧力がかかり、第2ボス部37の外側面を介してプレストレスロッド21の頭部28に対しても外側方向に力が加わる。プレストレスロッド21の尾部27は操作側ハウジング12に固定されているので、このとき両ハウジング11、12には、プレストレスロッド21により間隔を狭める向きに力(プレストレス)が生じ、第1スペーサー30及び第2スペーサー31にはその反力が生じる。このように両ハウジング11、12間にプレストレスがかかり、強固に連結される。
【0035】
(2)狭幅状態から拡幅状態への変更
次いで、上述した図2(a)の狭幅状態から図2(b)の拡幅状態へのハウジング間隔(スタンド間隔)の変更方法について説明する。まず、油圧室26の圧を抜き、シリンダケーシング19及びピストン20に圧がかかっていない状態にする。次いで、油圧シリンダ23を作動させ、軸を中心にピストン20を45°回転させる。なお、このときプレストレスロッド21は回転しない。このピストン20の回転により、第2ボス部37の凹部41の向きは上下左右方向(軸方向視で「+」形状、図3(b−1)参照)、第1ボス部36の凹部40の向きはそれぞれ斜め方向(軸方向視で「X」形状、図3(b−2)参照)となっている。すなわち、第2ボス部37の凹部41の向きと、頭部28の突起部29の向きは一致し、頭部28が第2ボス部37を通過可能な状態(第2ボス部37における所定通過角度)となっている。この状態で、操作側ハウジング12を外側に距離Lほど移動させ、一対のハウジング11、12間の距離をL1+L(=L2)とする。このとき、プレストレスロッド21の頭部28は、第2ボス部37を通過して、第1円柱空間部38に移動する。次いで、拡がった第1スペーサー30と第2スペーサー31との間に第3スペーサー32を配置し、図2(b)の拡幅状態となる。
【0036】
(3)拡幅状態におけるプレストレス付与
図2(b)に示される、一対のハウジング11、12間の距離がL2の拡幅状態におけるプレストレスの付与方法について説明する。前記(2)の操作が終了した状態においては、頭部28の突起部29の向きは上下左右方向(軸方向視で「+」形状)、第1ボス部36の凹部40の向きはそれぞれ斜め方向(軸方向視で「X」形状)となっている(図3(b−2)参照)。このような配置により、頭部28は、第1ボス部36を通過することができず、頭部28の突起部29と第1ボス部36とが接触した状態となっている。突起部29と第1ボス部36とは互いに平面で接触している。このような状態で、油圧室26に油圧を作用させると、狭幅時と同様に、ピストン20に外側方向に圧力がかかり、第1ボス部36の外側面を介してプレストレスロッド21の頭部28に対しても外側方向に力が加わる。このとき両ハウジング11、12には、プレストレスロッド21により間隔を狭める向きに力(プレストレス)が生じ、第1スペーサー30、第2スペーサー31及び第3スペーサー32にはその反力が生じる。このように拡幅時においても、両ハウジング11、12間にプレストレスを付与することができ、強固に連結される。
【0037】
(4)拡幅状態から狭幅状態への変更
拡幅状態から狭幅状態への変更については、前記(2)狭幅状態から拡幅状態への変更手順を逆に行えばよい。
【0038】
このようにプレストレス装置13によれば、ハウジング11、12の間隔を、狭幅状態から拡幅状態に変えても、それぞれの間隔で適正なプレストレスを付与することができる。また、プレストレスロッド21に凹部等を設ける必要が無いため、プレストレスロッド21の小径化も可能となる。また、このプレストレス装置13を備えるスタンド拡縮ミル10によれば、ハウジング11、12の間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、公差ずれが低減された形鋼の圧延を行うことができる。
【0039】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、間隔を変えるために両ハウジングが移動可能なミルであってもよい。また、プレストレス装置13においては、筒状の第1スペーサー30と第2スペーサー31とを各ハウジング11、12の内側に固定したが、長さがL1の一つの筒状のスペーサーを用いて、一方のハウジングの内側に固定してもよい。また、ユニバーサル圧延と水平二重圧延とを変更可能なユニバーサルミルに限定されず、複数幅のユニバーサル圧延又は水平二重圧延を行うスタンド拡縮ミルに適用してもよい。
【0040】
ピストン内部に3以上のボス部を形成し、ハウジング間隔(スタンド間隔)を3段以上に変更可能なスタンド拡縮ミル及びプレストレス装置であってもよい。この場合、隣り合う前後のボス部間で、頭部が通過するときの通過角度(所定通過角度)が異なる、具体的には凹部の位置が異なるようになっている。但し、隣り合わない、例えば1番目と3番目のボス部の凹部位置は同一であってもよい。また、3段以上に間隔を変更する場合、各間隔に対応する断面U字状のスペーサーを複数用意することなどができる。各ボス部36、37及び各凹部40、41の軸方向視の形状は同一としたが、異なっていてもよい。また、ボス部36、37における軸方向視の空間部分の形状は頭部28の軸方向視の形状と同一の「+」形状となっていたが、ボス部の空間部分の形状と頭部の形状とは、頭部が所定通過角度で通過可能であれば異なっていてもよい。
【0041】
頭部に形成する突起部の形状としては、4つの突起片からなるスプライン形状に限定されない。突起部の軸方向視の形状としては、3以下又は5以上の突起片からなるスプライン形状、十字状、三角形、長方形等の多角形状とすることができ、非対称形状のものであってもよい。但し、スプライン形状、十字状、多角形状などの軸心を中心とした点対称形状のものを用いることで、ボス部と突起部との接触が均等的になり、ピストンからプレストレスロッドへの力の伝達が効率的になる。
【0042】
その他、プレストレス装置13においては、油圧シリンダ23によりピストン20を回転させて、軸方向視におけるボス部36、37とプレストレスロッド21の頭部28との角度を変更したが、逆にプレストレスロッドを回転させるような構造であってもよい。シリンダケーシング19は、駆動側ハウジング11に取り付けたが、操作側ハウジング12に取り付けてもよい。また、油圧シリンダ以外の手段、例えばモータ等によって、ピストンを回転させてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10:スタンド拡縮ミル、11:駆動側ハウジング、12:操作側ハウジング、13:プレストレス装置、14:水平ロール、17:竪ロール、18:ヨーク、19:シリンダケーシング、20:ピストン、21:プレストレスロッド、22:スペーサー、23:油圧シリンダ、24:環状凹部、25:環状凸部、26:油圧室、27:尾部、28:頭部、29:突起部、30:第1スペーサー、31:第2スペーサー、32:第3スペーサー、33:油圧シリンダ、34:カバー、36:第1ボス部、37:第2ボス部、38:第1円柱空間部、39:第2円柱空間部、40、41:凹部、42:露出部分
図1
図2
図3