特許第6226819号(P6226819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226819
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】移動式クレーンの上部本体
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/62 20060101AFI20171030BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B66C23/62
   B66C23/36 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-114998(P2014-114998)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-229535(P2015-229535A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 康博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−046503(JP,A)
【文献】 特開2010−241586(JP,A)
【文献】 特開2001−316080(JP,A)
【文献】 実開昭61−040459(JP,U)
【文献】 特開2010−275100(JP,A)
【文献】 実開昭56−124690(JP,U)
【文献】 特開2002−129590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00─23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回ベアリングを介して下部走行体に取り付けられる、移動式クレーンの上部本体であって、
旋回フレームと、
前記旋回ベアリングの上面および前記旋回フレームに固定されるベアリング座面と、
前記旋回フレームの側板と前記ベアリング座面とを連結する補強構造部材と、
を備え、
前記補強構造部材には、
前記補強構造部材の前記ベアリング座面への固定位置である第1固定位置と、
前記補強構造部材の前記側板への固定位置である第2固定位置と、
があり、
前記第1固定位置は、前記旋回ベアリングの旋回中心よりも後側、かつ、前記側板よりも機械幅方向内側の位置であり、
前記第2固定位置は、前記第1固定位置よりも後側かつ上側の位置である、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記補強構造部材は、前記第1固定位置と前記第2固定位置とを結ぶ直線に沿うように配置される傾斜部を備え、
上下方向から見たとき、前記傾斜部は、前記旋回中心を向くように延びる、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記補強構造部材は、前記第1固定位置と前記第2固定位置とを結ぶ直線に沿うように配置される傾斜部を備え、
機械幅方向から見たとき、前記傾斜部の水平方向に対する傾きは、20°以上80°以下である、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記第2固定位置は、前記側板の上側端部の位置である、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記補強構造部材は、前記補強構造部材の前記旋回フレームの底部への固定位置である第3固定位置を備える、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記補強構造部材は、中空部分を有する箱状部を備える、
移動式クレーンの上部本体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動式クレーンの上部本体であって、
前記補強構造部材は、前記第1固定位置から前記第2固定位置にわたって設けられるハニカム部を備え、
前記ハニカム部は、前記第1固定位置と前記第2固定位置とを結ぶ方向から見たときに複数の中空の多角形断面を有する、
移動式クレーンの上部本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの上部本体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の移動式クレーンが記載されている。同文献の要約には次の記載がある。「下部走行体上に上部旋回体が旋回ベアリングを介在して旋回中心軸回りに旋回可能に搭載され、この上部旋回体は、左右の側板(6L,6R)を有する旋回フレーム(7)と、・・・」。なお、特許文献1に記載の符号に括弧を付した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移動式クレーンでは、ベアリングボルトの軸力(ベアリングボルト軸力)が局所的に大きくなる。この問題の詳細は次の通りである。図17に、従来の移動式クレーン601の上部本体630などに作用する力の流れを模式的に示す。移動式クレーン601の作業時や組立時には、吊荷Lによる吊荷重f1およびブーム621の自重f2は、旋回フレーム640の前側X1部分に圧縮力f3を作用させ、起伏ロープ624に張力f5を発生させる。張力f5は、旋回フレーム640の後側X2端部(下部スプレッダ625)に、上側Z1向き(鉛直上向き)かつ前側X1向きの力f6を作用させる。その結果、旋回ベアリング605の前側X1部分に圧縮荷重f21が作用し、旋回ベアリング605の後側X2部分に引張荷重f22が作用する。この引張荷重f22は、図18に示すベアリングボルト606に受け持たれる。なお、図18では、複数のベアリングボルト606の一部にのみ符号を付した。ベアリングボルト606は、図17に示す旋回ベアリング605とベアリング座面650とを締結するボルトである。図18に示すように、上下方向Zから見たとき、旋回フレーム640の側板642とベアリング座面650とが交差する位置を側板交差位置642aとする。図19に、ベアリングボルト606の軸力(ベアリングボルト軸力)と角度θとの関係を示す。同図に示すように、ベアリングボルト軸力は、側板交差位置642a(図18参照)およびその周辺(図19に示す例ではθ≒±45°)で局所的に大きい。この例のように、従来の移動式クレーンでは、上下方向から見たときに旋回フレームの側板とベアリング座面とが交差する位置およびその周辺で、ベアリングボルト軸力が局所的に大きくなる。
【0005】
ベアリングボルトの軸力はベアリングボルトの強度に影響し、ベアリングボルトの強度により移動式クレーンの吊能力および強度が決定される(律則される)場合がある。この場合、ベアリングボルトの強度による、移動式クレーンの吊能力および強度への影響を無くすまたは抑制するためには、ベアリングボルトの軸力の最大値を低減させる必要がある。
【0006】
一般的に、ベアリング座面の板厚を厚くすることで、ベアリング座面の剛性が高まり、ベアリング座面の荷重分布が分散し(局在化が抑制され)、ベアリングボルトの軸力の最大値が低減する。しかし、ベアリング座面の板厚を厚くすれば、移動式クレーンの重量が増加する問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、ベアリング座面の板厚を厚くする必要なく、ベアリングボルト軸力の最大値を低減させることができる、移動式クレーンの上部本体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移動式クレーンの上部本体は、旋回ベアリングを介して下部走行体に取り付けられる。前記上部本体は、旋回フレームと、前記旋回ベアリングの上面および前記旋回フレームに固定されるベアリング座面と、前記旋回フレームの側板と前記ベアリング座面とを連結する補強構造部材と、を備える。前記補強構造部材には、前記補強構造部材の前記ベアリング座面への固定位置である第1固定位置と、前記補強構造部材の前記側板への固定位置である第2固定位置と、がある。前記第1固定位置は、前記旋回ベアリングの旋回中心よりも後側、かつ、前記側板よりも機械幅方向内側の位置である。前記第2固定位置は、前記第1固定位置よりも後側かつ上側の位置である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、ベアリング座面の板厚を厚くする必要なく、ベアリングボルト軸力の最大値を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】移動式クレーン1を機械幅方向Yから見た模式図である。
図2図1に示す上部本体30を上側Z1から見た模式図である。
図3図1に示す上部本体30を機械幅方向Yから見た模式図である。
図4図1に示す箱状部材60などを示す斜視図である。
図5図3に示す側板42に作用する力を示す図である。
図6図3に示す補強構造部材70などを示す図である。
図7図2に示す角度θとベアリングボルト軸力との関係を示すグラフである。
図8】第2実施形態の図2相当図である。
図9】第2実施形態の図3相当図である。
図10】第3実施形態の図2相当図である。
図11】第3実施形態の図3相当図である。
図12】第4実施形態の図2相当図である。
図13】第4実施形態の図3相当図である。
図14図12および図13に示すF13矢視断面の模式図である。
図15】第5実施形態の図2相当図である。
図16】第6実施形態の図3相当図である。
図17】従来の移動式クレーン601を機械幅方向Yから見た模式図である。
図18図17に示す従来の上部本体630を上側Z1から見た模式図である。
図19図18に示す角度θとベアリングボルト軸力との関係を示すグラフである。
図20】比較例2の上部本体730の斜視図である。
図21図20に示す上部本体730を上側Z1から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、図1に示す第1実施形態の移動式クレーン1の上部本体30について説明する。
【0012】
移動式クレーン1は、ブーム21(後述)により吊荷Lを吊り上げる作業などを行う機械である。移動式クレーン1は、下部走行体3と、旋回ベアリング5と、上部旋回体10と、を備える。下部走行体3は、移動式クレーン1を走行させる部分である。下部走行体3は、例えばクローラ式であり、ホイール式でもよい。上下方向(鉛直方向)を上下方向Zとする。上側を上側Z1とし、下側を下側Z2とする。
【0013】
旋回ベアリング5は、下部走行体3に対して上部旋回体10を旋回自在に支持する。旋回ベアリング5は、下部走行体3と上部旋回体10(後述する上部本体30)との間に配置される。旋回ベアリング5は、円環状である。旋回ベアリング5の径方向(後述するベアリング座面50の径方向)を「ベアリング径方向」とする。旋回ベアリング5の周方向(後述するベアリング座面50の周方向)を「ベアリング周方向」とする。図3に示すように、旋回ベアリング5は、インナーレース5i(内輪)と、アウターレース5o(外輪)と、を備える。インナーレース5iは、下部走行体3の上部(上側Z1部分)に固定される。アウターレース5oは、インナーレース5iのベアリング径方向外側に配置される。アウターレース5oは、ベアリングボルト6によりベアリング座面50(後述)に締結される(固定される)。アウターレース5oは、インナーレース5iに対して回転自在である。インナーレース5iに対するアウターレース5oの回転の中心軸(図1に示す下部走行体3に対する上部旋回体10の旋回の中心軸)を、旋回中心5cとする。
【0014】
ベアリングボルト6は、図3に示すように、アウターレース5oとベアリング座面50(後述)とを締結する部材である。ベアリングボルト6の軸方向は、上下方向Zである。ベアリングボルト6は、アウターレース5oの下側Z2からアウターレース5oに通され、ベアリング座面50に締結される。なお、ベアリングボルト6は、ベアリング座面50の上側Z1からベアリング座面50に通され、アウターレース5oに締結されてもよい(図示なし)。図2に示すように、ベアリングボルト6は、ベアリング周方向に並ぶように複数(多数)設けられる。図2では、複数のベアリングボルト6のうち、一部のベアリングボルト6にのみ符号を付した(他の図についても同様)。
【0015】
上部旋回体10は、図1に示すように、下部走行体3の上側Z1に配置(搭載)され、下部走行体3に対して旋回可能である。上部旋回体10は、起伏部材20と、上部本体30と、を備える。
【0016】
ここで、上部旋回体10に関する方向(上部本体30に関する方向)を次のように定義する。上部本体30の前後方向(長手方向)を、機械前後方向Xとする。機械前後方向Xにおいて、下部スプレッダ25(後述)からブーム21(後述)の基端部に向かう側を、前側X1とする。機械前後方向Xにおいて、前側X1とは逆側を、後側X2とする。図2に示すように、機械前後方向Xに延びる直線であって、旋回中心5c(後述)を通る直線を、直線Xsとする。機械前後方向Xに直交する方向、かつ水平方向を、機械幅方向Yとする。機械幅方向Yには、幅方向内側Y1(機械幅方向内側)と、幅方向外側Y2(機械幅方向外側)と、がある。幅方向内側Y1は、機械幅方向Yにおいて、直線Xsに近づく側である。幅方向外側Y2は、機械幅方向Yにおいて、直線Xsから遠ざかる側である。機械幅方向Yに延びる直線であって、旋回中心5cを通る直線を、直線Ysとする。上側Z1から下側Z2を見たとき、旋回中心5cから後側X2に延びる半直線に対する角度を角度θとする。
【0017】
起伏部材20は、図1に示すように、ブーム21、および、ブーム21を起伏させるための部材により構成される。起伏部材20は、上部本体30に取り付けられる。起伏部材20は、ブーム21と、ガイライン22と、マスト23と、起伏ロープ24と、下部スプレッダ25と、を備える。ブーム21は、吊上げロープを介して吊荷Lを吊り上げる。ブーム21の基端部(ブームフット)は、上部本体30の前側X1端部に取り付けられる。ガイライン22は、ブーム21とマスト23とにつながれる。マスト23は、ブーム21の後側X2に配置され、ガイライン22を介してブーム21を起伏させる。起伏ロープ24は、マスト23の先端部(図示しない上部スプレッダ)と、下部スプレッダ25と、に掛け回される。起伏ロープ24がウインチ(図示なし)により巻込みおよび巻出しされることで、マスト23が起伏する結果、ブーム21が起伏する。下部スプレッダ25は、上部本体30の後側X2端部の上面(上側Z1の面)に配置される。
【0018】
上部本体30(上部本体構造)は、旋回ベアリング5を介して下部走行体3に取り付けられる。図3に示すように、上部本体30の前側X1部分(機械前後方向Xにおける中央よりも前側X1部分)には、ベアリング座面50(後述)を介して、旋回ベアリング5(アウターレース5o)が固定される。図2および図3に示すように、上部本体30は、旋回フレーム40と、ベアリング座面50と、箱状部材60と、補強構造部材70と、を備える。
【0019】
旋回フレーム40(アッパーフレーム)は、起伏部材20(図1参照)などが取り付けられる構造物である。図3に示すように、旋回フレーム40は、底部41と、側板42と、を備える。底部41は、旋回フレーム40の下側Z2部分である。底部41は、例えば板状(底板、機体底板)である。板状である底部41は、上下方向Z(略上下方向Zを含む)に直交する板である。底部41は、孔や棒状部材などを備えてもよい(図示なし)。図2に示すように、側板42(機体側板)は、旋回フレーム40の幅方向外側Y2部分(両外側部分、左右)の板である。側板42は、底部41の幅方向外側Y2端部から上側Z1に延びる。側板42は、機械幅方向Y(略機械幅方向Yを含む)に直交する板である。
【0020】
ベアリング座面50は、図3に示すように、旋回ベアリング5に取り付けられる。ベアリング座面50は、ベアリングボルト6による締結(上記)により、アウターレース5oの上面(上側Z1の面)に固定される。ベアリング座面50は、旋回フレーム40に固定される。ベアリング座面50の上面は、底部41に接合(溶接などにより直接固定)される。図2および図3に示すように、ベアリング座面50の上面は、箱状部材60を介して、側板42に固定される。ベアリング座面50の上面は、例えば箱状部材60を介さずに側板42に固定されてもよく(直接接合されてもよく)、また例えば底部41を介して側板42に固定されてもよい。ベアリング座面50は、円環状(リング形状)である。ベアリング座面50は、上下方向Zに直交する板状である(厚さ方向が上下方向Zの板状である)。図2に示すように、上下方向Zから見たとき、旋回中心5cよりも後側X2(直線Ysよりも後側X2)のベアリング座面50と、側板42と、が交差する位置を側板交差位置42aとする。
【0021】
箱状部材60は、側板42からベアリング座面50に伝わる力の経路(荷重伝達経路)を分散させる。箱状部材60は、図2および図3に示すように、側板42とベアリング座面50との間に配置される。箱状部材60は、箱状(中空)の構造物である。図4に示すように、箱状部材60は、側板42(図4において想像線(二点鎖線)で示す)の下側Z2、かつ、ベアリング座面50の上側Z1に配置される。箱状部材60は、側板42に接合される。箱状部材60は、ベアリング座面50に接合される。図2に示すように、箱状部材60は、少なくとも側板交差位置42aおよびその近傍に配置される。箱状部材60は、ベアリング座面50の上面(上側Z1の面)を覆う。箱状部材60は、側板42よりも幅方向内側Y1の位置から、側板42よりも幅方向外側Y2の位置(例えばベアリング座面50の幅方向外側Y2の端部の位置)にわたって配置される。上下方向Zから見たとき、箱状部材60は、中心角が90°未満の円弧と、この円弧の両端をつなぐ弦と、で囲まれた形状(半円よりも小さい略半円状)を有する。なお、図2では、線が重なることを避けるために、上記円弧の部分と、ベアリング座面50の外周とをずらして記載したが、このずれはなくてもよい(あってもよい)(図2以外の図についても同様)。図4に示すように、箱状部材60は、箱状部材底板61と、箱状部材縦板63と、箱状部材上板65と、を備える。
【0022】
箱状部材底板61は、箱状部材60の下側Z2部分を構成する板である。箱状部材底板61は、ベアリング座面50の上面に接合される。箱状部材縦板63は、箱状部材60の側面を構成する板である。箱状部材縦板63は、水平方向に直交する。箱状部材縦板63は、箱状部材底板61から上側Z1に延びる。箱状部材縦板63の一部は、ベアリング座面50の上側Z1(真上)に配置される。図2に示すように、上下方向Zから見たとき、箱状部材縦板63の一部は、ベアリング座面50と交差する。上下方向Zから見たとき、旋回中心5cよりも後側X2のベアリング座面50と、箱状部材縦板63と、が交差する位置を、縦板交差位置63aとする。図4に示すように、箱状部材上板65は、箱状部材60の上側Z1部分を構成する板である。箱状部材上板65は、箱状部材縦板63の上側Z1端部に接合される。なお、箱状部材60は設けられなくてもよい。
【0023】
補強構造部材70は、図2および図3に示すように、旋回フレーム40の側板42と、ベアリング座面50と、を連結する。補強構造部材70は、側板42から、側板42よりも幅方向内側Y1のベアリング座面50に力を伝える。補強構造部材70は、板状(板材)である。補強構造部材70は、箱状や棒状などでもよい(後述)。以下では補強構造部材70が板状の場合について説明する。図3に示すように、補強構造部材70は、三角形状(板の厚さ方向から見て三角形状)である。補強構造部材70は、直角三角形状である。この直角三角形は、底辺(水平方向に延びる辺)と、上下方向Zに延びる辺と、がなす角が直角である。補強構造部材70は、略三角形状でもよく、例えば三角形の一部を切り欠いた形状などでもよい(後述する第5実施形態(図16)参照)。図6に示すように、補強構造部材70には、第1固定位置71と、第2固定位置72と、第3固定位置73と、第4固定位置74と、がある。補強構造部材70は、傾斜部77と、底部連結部79と、を備える。
【0024】
第1固定位置71は、補強構造部材70の(傾斜部77の)ベアリング座面50への固定位置である。第1固定位置71では、補強構造部材70は、例えばベアリング座面50に直接接合される。第1固定位置71では、補強構造部材70は、例えば底部41を介してベアリング座面50に固定されてもよく、また例えば部材を介してベアリング座面50に固定されてもよい(後述する第5実施形態(図16)参照)。図2に示すように、第1固定位置71は、旋回中心5cよりも後側X2(直線Ysよりも後側X2)の位置である。第1固定位置71は、例えばベアリング座面50の後側X2の端部の近傍の位置である。第1固定位置71は、側板42よりも幅方向内側Y1の位置である。
【0025】
第2固定位置72は、補強構造部材70の(傾斜部77の)側板42への固定位置である。図6に示すように、第2固定位置72は、補強構造部材70の側板42への固定位置のうち、上側Z1端部(およびその近傍)である。第2固定位置72では、補強構造部材70は、例えば側板42に直接接合され、また例えば図示しない部材を介して側板42に固定されてもよい(後述する第4固定位置74についても同様)。第2固定位置72は、第1固定位置71よりも後側X2の位置である。第2固定位置72は、第1固定位置71よりも上側Z1(ベアリング座面50よりも上側Z1)の位置である。第2固定位置72は、後述するせん断圧縮力f31(図5参照)を支えやすいような位置であることが好ましい。具体的には、第2固定位置72は、上側Z1であるほど(側板42の上側Z1端部に近いほど)好ましい。さらに詳しくは、側板42の下側Z2端部から第2固定位置72の上側Z1端部までの高さ(上下方向Zの距離)を、高さh72としたとき、高さh72が大きいほど好ましい。第2固定位置72の高さh72は、側板42の高さ(上下方向Zの幅)の例えば50%以上であり、例えば60%以上であり、例えば70%以上であり、例えば80%以上であり、例えば90%以上であり、例えば100%でもよい。第2固定位置72の高さh72が、側板42の高さの80%以上である場合、「第2固定位置72は、側板42の上側Z1端部である」とする。
【0026】
第3固定位置73は、補強構造部材70の(底部連結部79の)底部41への固定位置である。第3固定位置73では、補強構造部材70は、例えば底部41に直接接合され、また例えば図示しない部材を介して底部41に固定されてもよい。第3固定位置73は、第1固定位置71よりも後側X2の位置である。第3固定位置73は、第1固定位置71と第2固定位置72とをつなぐ直線の(傾斜部77の)下側Z2(真下)の位置である。
【0027】
第4固定位置74は、補強構造部材70の(底部連結部79の)側板42への固定位置である。第4固定位置74は、第2固定位置72よりも下側Z2の位置である。
【0028】
傾斜部77は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ直線に沿うように配置される。補強構造部材70が直角三角形状の場合、傾斜部77は、直角三角形の斜辺の部分(およびその近傍)に配置される。傾斜部77は、補強構造部材70の上側Z1の境界である(傾斜部77よりも上側Z1には、補強構造部材70がない)。ここで、補強構造部材70が、旋回フレーム40(図3参照)の上側Z1部分(例えば上板)に接合されるとする(この場合、補強構造部材70は例えば四角形状である)。この場合、補強構造部材70が、旋回フレーム40の上側Z1部分と底部41とで圧縮されることにより、補強構造部材70が座屈するおそれがある。しかし、補強構造部材70が、旋回フレーム40の上側Z1部分(上板)に接合されない場合(例えば傾斜部77よりも上側Z1に補強構造部材70がない場合)、上記の座屈が生じない。
【0029】
この傾斜部77は、図2に示すように、上下方向Zから見たとき、機械幅方向Yに対して傾斜する(機械前後方向Xに対して傾斜する)。ここで、上下方向Zから見たとき、第2固定位置72と旋回中心5cとをつなぐ線分と、傾斜部77と、がなす角度を角度αとする。角度αは、後述するせん断圧縮力f31(図5参照)を支えやすい角度であることが好ましい。具体的には、角度αは小さいほど好ましい。角度αは、例えば30°以下であり、例えば20°以下であり、例えば10°以下であり、例えば0°でもよい。角度αが20°以下である場合、「上下方向Zから見たとき、傾斜部77は、旋回中心5cを向くように延びる」とする。
【0030】
この傾斜部77は、図3に示すように、機械幅方向Yから見たとき、水平方向に対して傾斜する(機械前後方向Xに対して傾斜する、上下方向Zに対して傾斜する)。機械幅方向Yから見たとき、傾斜部77の水平方向に対する傾きは、例えば20°以上であり、例えば30°以上であり、例えば40°以上であり、例えば45°以上である。機械幅方向Yから見たとき、傾斜部77の水平方向に対する傾きは、例えば80°以下であり、例えば70°以下であり、例えば60°以下であり、例えば50°以下であり、例えば45°以下である。ここで、機械幅方向Yから見たとき、旋回フレーム40の下側Z2端部における旋回中心5cと第2固定位置72とをつなぐ線分と、傾斜部77と、がなす角度を角度βとする。角度βは、後述するせん断圧縮力f31(図5参照)を支えやすい角度であることが好ましい。具体的には、角度βは、小さいほど好ましい。角度βは、例えば30°以下であり、例えば20°以下であり、例えば10°以下であり、例えば0°でもよい。角度βが20°以下である場合、「機械幅方向Yから見たとき、傾斜部77は、旋回中心5cを向くように延びる」とする。
【0031】
底部連結部79は、図6に示すように、旋回フレーム40の底部41と、傾斜部77と、を連結する部分である。底部連結部79は、第3固定位置73と傾斜部77とを連結する部分である。底部連結部79は、傾斜部77の下側Z2(真下)に配置される。
【0032】
(移動式クレーン1に生じる力)
図1に示すように、移動式クレーン1の作業時や組立時には、移動式クレーン1に次のように力が生じる。吊荷Lによる吊荷重f1やブーム21の自重f2は、旋回フレーム40の前側X1部分(ブーム21の取付位置)に、圧縮力f3を作用させる。また、吊荷重f1や自重f2は、ブーム21からガイライン22を介して起伏ロープ24に伝わり、起伏ロープ24に張力f5を発生させる。張力f5は、旋回フレーム40の後側X2部分(下部スプレッダ25)に、上側Z1向きかつ前側X1向きの力f6を作用させる。力f6は、旋回フレーム40の後側X2部分(旋回中心5cよりも後側X2部分)に、曲げ荷重f11および圧縮荷重f12を作用させる。なお、ガイライン22の張力、起伏ロープ24の張力f5、およびマスト23の自重は、旋回フレーム40の前側X1部分(マスト23の取付位置)に、圧縮力f7を作用させる。
【0033】
(ベアリング座面50などに生じる力)
ベアリング座面50などには、次のように力が生じる。
[ベアリング座面50の前側X1部分に生じる力]旋回フレーム40の前側X1部分に生じる圧縮力f3および圧縮力f7は、旋回中心5cよりも前側X1の旋回ベアリング5に、圧縮荷重f21(下側Z2向きの力)を作用させる。この圧縮荷重f21は、ベアリング座面50により受け持たれる(ベアリング座面50が旋回ベアリング5を下側Z2向きに押す)。なお、旋回ベアリング5の中立軸の位置(圧縮荷重f21も引張荷重f22もかからない位置)は、作業の状況(吊荷Lの質量、ブーム21の起伏角度など)によって多少変動する。しかし、機械幅方向Yから見たとき、旋回ベアリング5の中立軸の位置と、旋回中心5cの位置と、はほぼ一致する。
[ベアリング座面50の後側X2部分などに生じる力]旋回フレーム40の後側X2部分に生じる曲げ荷重f11は、旋回中心5cよりも後側X2部分の旋回ベアリング5に、引張荷重f22(上側Z1向きの力)を作用させる。この引張荷重f22は、ベアリングボルト6(図3参照)により受け持たれる。さらに詳しくは、ベアリング座面50と旋回ベアリング5とが上下方向Zに互いに離れようとする力を、ベアリングボルト6(図3参照)が受ける。その結果、ベアリングボルト6に軸力が発生する。
【0034】
(補強構造部材70などに生じる力)
図6に示す圧縮荷重f41は、次のように生じる。図5に示すように、旋回フレーム40(側板42)には、圧縮荷重f12が生じる。その結果、側板42は、せん断変形しようとする(図5に示すように、長方形からひし形に変形しようとする)。その結果、圧縮荷重f12は、側板42に、せん断圧縮力f31を作用させる。ここで、図6に示すように、側板42には補強構造部材70が固定される。よって、せん断圧縮力f31(図5参照)を生じさせる力の一部は、側板42から補強構造部材70に伝わる。その結果、せん断圧縮力f31は、補強構造部材70の傾斜部77に支えられる。その結果、補強構造部材70の傾斜部77には、圧縮荷重f41が発生する。
【0035】
図6に示す引張荷重f42は、次のように生じる。上記のように、図1に示すように、旋回フレーム40(側板42)には、曲げ荷重f11が生じる。ここで、側板42には、補強構造部材70が固定される。そのため、曲げ荷重f11の一部は、側板42から補強構造部材70を介して、底部41およびベアリング座面50に伝わる。その結果、図6に示す補強構造部材70の下側Z2端部は、底部41およびベアリング座面50を上側Z1に引っ張る。その結果、底部41およびベアリング座面50に、引張荷重f42が生じる。引張荷重f42は、補強構造部材70の下側Z2端部が接する位置(底部41上およびベアリング座面50上の位置)において、前側X1から後側X2になるにしたがって大きくなる。
【0036】
(ベアリングボルトの軸力分布)
図7に示すように、比較例1(図18参照)、比較例2(図20および図21参照)、および本実施形態(図2参照)それぞれについて、ベアリングボルト6(ベアリングボルト606)の軸力(ベアリングボルト軸力)と角度θとの関係を調べた。図18に示すように、比較例1の上部本体630は、箱状部材60(図2参照)を備えず、かつ、補強構造部材70(図2参照)を備えない。図20および図21に示すように、比較例2の上部本体730は、箱状部材760を備えるが、補強構造部材70(図2参照)を備えない。なお、図20および図21において、比較例2の構成要素のうち比較例1との共通点には、比較例1と同一の符号を付した。
【0037】
比較結果を図7に示す。
[比較例1]図7のF7−1部分に示すように、比較例1のベアリング軸力は、側板交差位置642a(図18参照)(図2に示す本実施形態の側板交差位置42aと同じ位置)で最大となった。図7のF7−3部分に示すように、側板交差位置642a(図18参照)よりも幅方向内側Y1部分のベアリング軸力は、側板交差位置642aのベアリング軸力よりも小さくなった。
【0038】
[比較例2]図7のF7−2部分に示すように、比較例2のベアリングボルト軸力は、縦板交差位置763a(図21参照)(図2に示す縦板交差位置63aと同じ位置)で最大となった。図7のF7−3部分に示すように、縦板交差位置763a(図21参照)よりも幅方向内側Y1部分のベアリングボルト軸力は、縦板交差位置663aのベアリング軸力よりも小さくなった。
【0039】
[本実施形態]図7に示すように、上部本体30(図2参照)のベアリング軸力は、縦板交差位置63a(θ≒±45°)で局所的に大きくなった。しかし、上部本体30のベアリング軸力の最大値は、比較例1および比較例2それぞれのベアリング軸力の最大値よりも小さくなった。なお、上部本体30(図2参照)のベアリング軸力は、第1固定位置71(図2参照、図7に示す例ではθ≒±20°)で局所的に大きくなった。しかし、第1固定位置71(図2参照、θ≒±20°)でのベアリング軸力のピーク値は、縦板交差位置63a(θ≒±45°)でのベアリング軸力のピーク値よりも小さい。
【0040】
(効果1)
図1に示す移動式クレーン1の上部本体30による効果を説明する。上部本体30は、旋回ベアリング5を介して下部走行体3に取り付けられる。上部本体30は、旋回フレーム40と、ベアリング座面50と、補強構造部材70と、を備える。ベアリング座面50は、旋回ベアリング5の上面(上側Z1の面)および旋回フレーム40に固定される。図2および図3に示すように、補強構造部材70は、旋回フレーム40の側板42とベアリング座面50とを連結する。図6に示すように、補強構造部材70には、第1固定位置71と、第2固定位置72と、がある。
[構成1−1]第1固定位置71は、補強構造部材70のベアリング座面50への固定位置である。
[構成1−2]第2固定位置72は、補強構造部材70の側板42への固定位置である。
[構成1−3]図2に示すように、第1固定位置71は、旋回ベアリング5の旋回中心5cよりも後側X2の位置である。
[構成1−4]第1固定位置71は、側板42よりも幅方向内側Y1の位置である。
[構成1−5]図3に示すように、第2固定位置72は、第1固定位置71よりも後側X2かつ上側Z1の位置である。
【0041】
上部本体30は、上記[構成1−1]、[構成1−2]、および[構成1−4]を備える。よって、図2に示す側板42から、側板42よりも幅方向内側Y1の(言わば側板42から遠い位置の)ベアリング座面50に、力が伝わる。よって、側板42からベアリング座面50に伝わる力の一部が、第1固定位置71周辺のベアリングボルト6により受け持たれる。よって、側板交差位置42aおよびその近傍のベアリングボルト6が受け持つ荷重を低減させることができる。よって、ベアリング座面50の板厚を厚くする必要なく、ベアリングボルト6の軸力の最大値を低減できる(図7参照)。移動式クレーン1(図1参照)の吊能力や強度が、ベアリングボルト6の軸力によって決まる(律則される)場合は、ベアリングボルト6の軸力の最大値を低減させることで、ベアリングボルト6の強度による移動式クレーン1の吊能力や強度への影響を無くすまたは抑制することができる。
【0042】
上部本体30は、上記[構成1−1]、[構成1−4]、および[構成1−5]を備える。よって、図2および図3に示すように、第1固定位置71と第2固定位置72とをつなぐ線分(具体的には傾斜部77が配置される部分)は、機械前後方向Xに対して傾斜し、かつ、機械幅方向Yに対して傾斜する。よって、第1固定位置71と第2固定位置72とをつなぐ線分(傾斜部77)が、機械前後方向Xまたは機械幅方向Yと平行である場合に比べ、第2固定位置72(側板42)から第1固定位置71(ベアリング座面50)に確実に力が伝わる。その結果、ベアリングボルト6の軸力の最大値を確実に低減できる。
【0043】
(効果2)
[構成2]図2に示すように、補強構造部材70は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ直線に沿うように配置される傾斜部77を備える。上下方向Zから見たとき、傾斜部77は、旋回中心5cを向くように延びる(具体的には角度αは20°以下である)。
【0044】
上記[構成2]により、側板42(第2固定位置72)から、傾斜部77を介して、側板42よりも機械幅方向Y内側のベアリング座面50(第1固定位置71)に、確実に力が伝わる。その結果、ベアリングボルト6の軸力の最大値をより確実に低減できる。
【0045】
(効果3)
[構成3]図3に示すように、補強構造部材70は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ直線に沿うように配置される傾斜部77を備える。機械幅方向Yから見たとき、傾斜部77の水平方向に対する傾きは、20°以上80°以下である。
【0046】
上記[構成3]により、側板42(第2固定位置72)から、傾斜部77を介して、第2固定位置72よりも下側Z2のベアリング座面50(第1固定位置71)に、確実に力が伝わる。その結果、ベアリングボルト6の軸力の最大値をより確実に低減できる。
【0047】
(効果4)
[構成4]第2固定位置72は、側板42の上側Z1端部の位置である(具体的には、図6に示すように、底部41から第2固定位置72の上側Z1端部までの高さh72は、側板42の高さの80%以上である)。
【0048】
上記[構成4]により、図3に示す側板42の上側Z1端部から、補強構造部材70を介して、ベアリング座面50(第1固定位置71)に、力が伝わる。よって、側板42(第2固定位置72)から第1固定位置71に、より確実に力が伝わる(側板42の上側Z1端部よりも下側Z2の位置のみから、第1固定位置71に力が伝わる場合と比べた場合)。その結果、ベアリングボルト6の軸力の最大値をより確実に低減できる。
【0049】
(効果5)
[構成5]補強構造部材70は、補強構造部材70の旋回フレーム40の底部41への固定位置である第3固定位置73を備える。
【0050】
(効果5−1)上記[構成5]により、側板42(第1固定位置71)から、補強構造部材70を介して、ベアリング座面50(第2固定位置72)だけでなく、底部41(第3固定位置73)にも力が伝わる。よって、側板42からベアリング座面50に伝わる力が低減する。その結果、ベアリングボルト6の軸力の最大値をより低減させることができる。
(効果5−2)上記[構成5]では、補強構造部材70は、側板42と底部41とを連結する。よって、旋回フレーム40のねじり変形に対する剛性(ねじり剛性)を向上させることができる。具体的には例えば、旋回フレーム40の断面(機械幅方向Yや機械前後方向Xから見た断面)が長方形であるので、旋回フレーム40がねじり荷重(機械幅方向Yや機械前後方向Xを軸線とするねじり荷重)を受けると、旋回フレーム40の断面がひし形に変形する。しかし、上記[構成5]により、この旋回フレーム40の断面がひし形に変形することが抑制される。なお、旋回フレーム40の断面は長方形でなくてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
図8図9を参照して、第2実施形態の上部本体230について、第1実施形態との相違点を説明する。第1実施形態では補強構造部材70(図3参照)は三角形状の板状であったが、図8および図9に示す第2実施形態の補強構造部材270は棒状である。なお、上部本体230のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した(共通点の説明を省略する点については他の実施形態についても同様)。
【0052】
補強構造部材270は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ直線に沿う棒状である。補強構造部材270は、傾斜部77を構成する。補強構造部材270は、第1実施形態の底部連結部79(図3参照)を備えない。補強構造部材270は、例えば中空の棒状(パイプ状)であり、中実の棒状でもよい。補強構造部材270の長手方向から見た断面形状は、例えば円形であり、例えば多角形(三角形、四角形など)などでもよい。
【0053】
(第3実施形態)
図10図11を参照して、第3実施形態の上部本体330について、第1実施形態との相違点を説明する。第1実施形態では補強構造部材70(図3参照)は三角形状の板状であった。図10および図11に示す第3実施形態の補強構造部材370は、箱状部377を備える。
【0054】
箱状部377は、中空部分を有する。箱状部377は、例えば略三角柱形状の箱状である。箱状部377の形状は、例えば、第1実施形態の板状の補強構造部材70(図3参照)を厚さ方向に厚くするとともに、内部を中空にしたような形状である。例えば、補強構造部材370の全体は、箱状部377である。補強構造部材370の一部が、箱状部377でもよい。箱状部377の内部に、構造物が設けられてもよい(例えば後述する第4実施形態参照)。なお、第2実施形態の補強構造部材270(図8参照)が中空の場合、この中空の補強構造部材270は、箱状部377に含まれる。
【0055】
(効果6)
図10および図11に示す第3実施形態の上部本体330による効果は次の通りである。
[構成6]補強構造部材370は、中空部分を有する箱状部377を備える。
【0056】
上記[構成6]により、補強構造部材370が箱状部377を備えない場合(板状などの場合)に比べ、補強構造部材370の強度を向上させることができる。また、箱状部377は中空なので、補強構造部材370を軽量にできる。
【0057】
(第4実施形態)
図12図14を参照して、第4実施形態の上部本体430について、第3実施形態との相違点を説明する。図12および図13に示すように、第4実施形態の補強構造部材470は、第3実施形態の補強構造部材370(図11参照)の箱状部377の内部に、ハニカム部478を付加したものである。
【0058】
ハニカム部478は、図13に示すように、第1固定位置71から第2固定位置72にわたって(連続して)設けられる。ハニカム部478は、傾斜部77の全体にわたって設けられる。ハニカム部478は、第4固定位置74から第3固定位置73にわたって設けられる。ハニカム部478は、底部連結部79の全体にわたって設けられる。ハニカム部478は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ方向から見たときに、図14に示すように、複数の中空の多角形断面を有する。この多角形断面を構成する多角形は、例えば六角形であり、三角形や四角形など(図示なし)でもよい。なお、図12および図13に示すハニカム部478内の破線の方向は、ハニカム部478の軸線方向(多角形断面が連続する方向)を示す。
【0059】
(効果7)
第4実施形態の上部本体430による効果は次の通りである。
[構成7−1]補強構造部材470は、第1固定位置71から第2固定位置72にわたって設けられるハニカム部478を備える。
[構成7−2]ハニカム部478は、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ方向から見たときに、図14に示すように複数の中空の多角形断面を有する。
【0060】
上記[構成7−1]により、第1固定位置71での補強構造部材470とベアリング座面50との固定部分の面積が、第1固定位置71に配置されるハニカム部478の分、増える。その結果、第1固定位置71およびその周辺でのベアリング座面50の応力が分散される。よって、第1固定位置71およびその周辺でのベアリングボルト6の軸力を分散させることができる。
上記[構成7−2]により、第1固定位置71と第2固定位置72とを結ぶ方向の力に対する、補強構造部材470の強度を向上させることができる。
【0061】
(他の効果)
[構成7−3]ハニカム部478は、第3固定位置73に設けられる。
上記[構成7−3]により、ハニカム部478の分、第3固定位置73での補強構造部材470と底部41との固定部分の面積が増える。よって、側板42(第2固定位置72や第4固定位置74)から、底部41(第3固定位置73)に力がより伝わりやすい。その結果、側板42からベアリング座面50に伝わる力が減る。その結果、ベアリングボルト6の軸力をより低減させることができる。
【0062】
(第5実施形態)
図15図16を参照して、第5実施形態の上部本体530について、第1実施形態との相違点を説明する。第1実施形態の箱状部材60(図3参照)は、第1固定位置71には設けられなかった。しかし、第5実施形態の箱状部材580は、第1固定位置71に配置される。また、第1実施形態の補強構造部材70(図3参照)に対し、第5実施形態の補強構造部材570の構成は異なる。
【0063】
補強構造部材570は、箱状部材580を介して、ベアリング座面50に固定される。補強構造部材570の第1固定位置71は、箱状部材580を介したベアリング座面50への固定位置である。図16に示すように、補強構造部材570の第1固定位置71は、箱状部材580の上面(上側Z1の面)である。第1固定位置71は、底部41よりも(第3固定位置73よりも)上側Z1に配置される。補強構造部材570の下側Z2端部は、底部41に対する箱状部材580の段差(上下方向Zの段差)に沿うように形成される。例えば、補強構造部材570は、板状の三角形状の1つの角の周辺を切り欠いた形状を有する。
【0064】
箱状部材580は、図15に示すように、上下方向Zから見て円環状である。箱状部材580は、ベアリング座面50に沿うように配置される。なお、図15では、線が重なることを避けるために、箱状部材580の外周および内周と、ベアリング座面50の外周および内周と、をずらして記載したが、このずれはなくてもよい(あってもよい)。箱状部材580は、ベアリング座面50の上側Z1に配置される。第1実施形態の箱状部材60(図3参照)は、ベアリング座面50の後側X2端部や、ベアリング座面50の前側X1端部に配置されなかった。一方、第5実施形態の箱状部材580は、ベアリング座面50の後側X2端部、および、ベアリング座面50の前側X1端部に配置される。
【0065】
(変形例)
上記の各実施形態は様々に変形できる。例えば、各実施形態の構成要素の一部どうしを組み合わせてもよい。具体的には例えば、図3に示す第1実施形態の三角形状の板状の補強構造部材70を備える上部本体30に、さらに、図9に示す第2実施形態の棒状の補強構造部材270を付加してもよい。また例えば、図16に示す補強構造部材570を、図11に示す第3実施形態の補強構造部材370のように箱状にしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 移動式クレーン
3 下部走行体
5 旋回ベアリング
5c 旋回中心
30、230、330、430、530 上部本体
40 旋回フレーム
42 側板
50 ベアリング座面
70、270、370、470、570 補強構造部材
71 第1固定位置
72 第2固定位置
73 第3固定位置
77 傾斜部
377 箱状部
478 ハニカム部
X 機械前後方向
X1 前側
X2 後側
Y 機械幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21