特許第6226822号(P6226822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特許6226822生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム
<>
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000002
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000003
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000004
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000005
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000006
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000007
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000008
  • 特許6226822-生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226822
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、作動方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20171030BHJP
   A61B 5/0472 20060101ALI20171030BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A61B5/02 610Z
   A61B5/04 312Q
   A61B5/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-120503(P2014-120503)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-77(P2016-77A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170911
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小山 幸夫
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−071018(JP,A)
【文献】 特開2011−092556(JP,A)
【文献】 特開2008−079813(JP,A)
【文献】 特開平02−185231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 − 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の血圧脈波を測定する血圧脈波測定手段と、
前記被験者の心拍の解析に基づいて、前記血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成手段と、
前記単位脈波生成手段が生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出手段と、
前記単位脈波抽出手段が抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力手段と、
を備える、生体情報測定装置。
【請求項2】
前記被験者の心電図を測定する心電図測定手段を更に有し、
前記単位脈波生成手段は、前記心電図内のQRS波を検出し、RR間隔に対応する前記血圧脈波を前記単位脈波として其々生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記単位脈波抽出手段が抽出した前記単位脈波に対し、加算平均を行って算出した血圧脈波を表示した表示画面を出力する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記単位脈波抽出手段が抽出した前記単位脈波に対し、統計処理を行って算出した平均血圧値を出力する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記単位脈波抽出手段が抽出した前記単位脈波の表示効果と、前記単位脈波抽出手段が抽出しなかった前記単位脈波の表示効果と、を異なるものにして重畳的に記載した表示画面を出力する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記統計値は、平均血圧値の最頻値であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
血圧脈波測定手段が被験者の血圧脈波を測定する血圧脈波測定ステップと、
単位脈波生成手段が前記被験者の心拍の解析に基づいて、前記血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成ステップと、
単位脈波抽出手段が前記単位脈波生成ステップにおいて生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出ステップと、
出力手段が前記単位脈波抽出ステップにおいて抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力ステップと、
を備える、生体情報測定装置の作動方法
【請求項8】
コンピュータに、
被験者の心拍の解析に基づいて、前記被験者の血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成ステップと、
前記単位脈波生成ステップにおいて生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出ステップと、
前記単位脈波抽出ステップにおいて抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被験者の血圧を観血的に測定する生体情報測定装置、血圧解析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者管理を行う上で、血圧は重要な指標とされている。特に重症患者に対し、観血的に動脈圧や静脈圧をモニタリングするのが一般的である。ここで観血式血圧測定とは、血管や心臓内にカテーテル等を留置し、連続的に血圧波形や血圧値を測定するものである。
【0003】
心臓は胸腔内にあるため、患者の呼吸による胸腔内圧の変動の影響を観血血圧波形が受けてしまい、正確な血圧波形や血圧値が得られないという問題があった。例えば右心房近傍の中心静脈圧(CVP:Central Venous Pressure)は低圧であり、呼吸性変動の影響を顕著に受けてしまう。また低圧系のパラメータは、呼吸性変動のみならず体動等によっても影響を受けてしまう恐れがある。
【0004】
そこで従来技術では、上記のような観血血圧波形の呼吸性変動等の影響を抑えるために、得られる血圧値に対して平均化処理を行っていた。
【0005】
また特許文献1は、呼吸センサにより取得した呼吸波形に同期して血圧値を算出する生体信号測定装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−200901号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】桜井、渡辺、「ME早わかりQ&A3 血圧計・心拍出量計・血流計」、南江堂、p.33-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、平均化処理を行う従来手法は、呼吸性変動等の影響が大きい場合には十分な効果が得られないという問題があった。また特許文献1の手法では、血圧測定の構成とは別に呼吸波形センサを設ける必要があった。
【0009】
そこで本発明は、構成の複雑化を伴うことなく、呼吸性変動や体動等の影響を抑制した(キャンセルした)血圧状態を把握できる生体情報測定装置、作動方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る生体情報測定装置の一態様は、
被験者の血圧脈波を測定する血圧脈波測定手段と、
前記被験者の心拍の解析に基づいて、前記血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成手段と、
前記単位脈波生成手段が生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出手段と、
前記単位脈波抽出手段が抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力手段と、
を備える、ものである。
【0011】
本発明にかかる生体情報測定装置の作動方法の一態様は、
血圧脈波測定手段が被験者の血圧脈波を測定する血圧脈波測定ステップと、
単位脈波生成手段が前記被験者の心拍の解析に基づいて、前記血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成ステップと、
単位脈波抽出手段が前記単位脈波生成ステップにおいて生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出ステップと、
出力手段が前記単位脈波抽出ステップにおいて抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力ステップと、
を備える、ものである。
【0012】
本発明にかかるプログラムの一態様は、
コンピュータに、
被験者の心拍の解析に基づいて、前記被験者の血圧脈波から一心拍又は複数心拍に対応する単位脈波を生成する単位脈波生成ステップと、
前記単位脈波生成ステップにおいて生成した前記単位脈波の血圧値を統計処理し、統計処理により求めた統計値に基づいて、必要な前記単位脈波のみを抽出する単位脈波抽出ステップと、
前記単位脈波抽出ステップにおいて抽出した前記単位脈波に基づいて出力を行う出力ステップと、を実行させる、ものである。
【0013】
本発明では、被験者の心拍を基に血圧脈波から単位脈波を生成している。この単位脈波を解析し、異常値等を除いた単位脈波のみを抽出する。この抽出した単位脈波をユーザに把握できる形で出力することにより、ユーザは呼吸性変動等の影響を取り除いた正確な血圧脈波の状態を把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、構成の複雑化を伴うことなく、呼吸性変動や体動等の影響を抑制した(キャンセルした)血圧状態を把握できる生体情報測定装置、作動方法、及びプログラムを提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1にかかる生体情報測定装置1の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる中心静脈(CV)の血圧波形を示す図である。
図3】実施の形態1にかかる心電図測定手段11が測定した心電図と、血圧脈波測定手段12が測定した血圧波形と、を示す図である。
図4】実施の形態1にかかる単位脈波生成手段13が生成した単位脈波を重畳的に表示したグラフである。
図5】実施の形態1にかかる単位脈波抽出手段14が生成したヒストグラムを示す図である。
図6】平均血圧値の最頻値を含む階級の単位脈波のみを表示したグラフである。
図7】実施の形態1にかかる出力手段15の出力表示例を示す図である。
図8】実施の形態1にかかる出力手段15の出力表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる生体情報測定装置1の構成を示すブロック図である。生体情報測定装置1は、心電図測定手段11、血圧脈波測定手段12、単位脈波生成手段13、単位脈波抽出手段14、及び出力手段15を備える。生体情報測定装置1は、好適には観血式血圧計であるが、観血的に血圧を測定できるものであれば他の機能も有するものであってもよい。
【0017】
心電図測定手段11は、心電図電極、増幅回路等により構成される。心電図電極は、被験者の胸部等に装着される。心電図測定手段11は、心電図電極から得られた心電図信号を基に心電図(ECG:Electrocardiogram)を取得し、取得した心電図(ECG)を単位脈波生成手段13に供給する。
【0018】
血圧脈波測定手段12は、被験者の血圧脈波を観血的に測定する。血圧脈波測定手段12は、血圧トランスデューサ、増幅回路、カテーテル、各種チューブ、三方コック等により構成される。ここで血圧脈波測定手段12が測定する血圧脈波は、任意の血管の脈波であればよいが、以下の説明では中心静脈(CV)に関するものとする。医師等のユーザは、血圧の測定開始にあたって血圧値のゼロ点調整を行う。血圧トランスデューサを大気開放状態にした上で血圧トランスデューサにかかる圧力をゼロにする。血圧脈波測定手段12は、血圧トランスデューサによって血圧を血圧信号に変換し、当該血圧信号を単位脈波生成手段13に供給する。なお血圧脈波測定手段12による血圧脈波の測定処理は、一般的な観血式血圧測定処理(非特許文献1)と同様であればよい。
【0019】
図2を参照して、血圧脈波測定手段12が測定した中心静脈(CV)の血圧脈波について説明する。図2は、中心静脈(CV)の血圧脈波の例を示す。中心静脈の圧(CVP)は、呼吸性変動や体動等の影響を受けやすい。図2においても、呼吸に由来するアーチファクトの影響を受けた波形が表れている。
【0020】
再び図1を参照する。単位脈波生成手段13は、心電図測定手段11が測定した心電図を基にして、血圧脈波から複数の単位脈波を生成する。単位脈波とは、心拍を基にして血圧脈波から生成したものであり、一定単位(好適には一心周期当たり)の中心静脈の脈波である。詳細には単位脈波生成手段13は、心電図からQRS波を検出し、QRS波の検出タイミングから一心周期を把握し、当該一心周期を用いて血圧脈波から複数の単位脈波を生成する。以下、図3を参照して単位脈波生成手段13による生成処理の具体例を説明する。
【0021】
図3は、心電図測定手段11が測定した心電図と、血圧脈波測定手段12が測定した血圧脈波と、を示す図である。単位脈波生成手段13は、心電図を解析し、QRS波を検出する。いわゆるRR間隔(RR Interval)は、心拍間隔と同視できる。そのため単位脈波生成手段13は、このRR間隔を用いて血圧脈波から複数の単位脈波を生成する。RR間隔と同じ時間で血圧脈波を分割した場合、単位脈波は一心周期に対応する時間の血圧脈波となる。なお上述の単位脈波生成手段13によるQRS波の検出は、心臓の拍動の時間的間隔を把握するためのものである。そのため単位脈波生成手段13は、精度は落ちるもののT波の検出を用いて単位脈波の生成を行うことも可能である。また単位脈波生成手段13は、複数心拍(例えば二拍毎)に対応する単位脈波を生成することも可能であるが、一拍単位で単位脈波を生成することにより、後述する単位脈波抽出手段14等で精密な分析を行うことができる。
【0022】
図4は、生成した単位脈波を重畳的に表示したグラフである。図4の例では、呼吸性変動等の影響により、単位脈波の平均血圧値や脈波の波形にズレがあることを示している。具体的には、少数の単位脈波の脈圧値が全体的に高くなっていることがわかる。
【0023】
再び図1を参照する。単位脈波生成手段13は、上記の生成処理により算出した複数の単位脈波を単位脈波抽出手段14に供給する。単位脈波抽出手段14は、この単位脈波の解析を行い、当該解析に応じて必要な単位脈波のみを抽出する。以下、単位脈波の解析及び抽出処理の詳細について説明する。
【0024】
単位脈波抽出手段14は、単位脈波生成手段13が生成した単位脈波のデータを統計的に解析する。例えば単位脈波抽出手段14は、各単位脈波の平均血圧値を算出し、当該平均血圧値を用いたヒストグラムを生成する。図5は、図4に示す単位脈波のデータを基に単位脈波抽出手段14が生成したヒストグラムの一例である。
【0025】
図5に示すヒストグラムは、各単位脈波の平均血圧値(例えば小数点第1位を四捨五入して算出する)を用いて生成されている。なおヒストグラムは、各単位脈波の最低血圧値や最高血圧値を用いて生成されてもよい。図5の例では、10mmHgが最頻値となる。単位脈波抽出手段14は、この平均血圧値が最頻値に属する(または最頻値の近辺に属する)単位脈波のみを抽出する。図6は、図4に示す単位脈波から平均血圧値の最頻値を含む階級の単位脈波のみを抽出した例を示す図である。最頻値の単位脈波は、呼吸性変動等のアーチファクトの影響を受けていない安定した単位脈波と捉えることができる。
【0026】
なお、単位脈波抽出手段14は、上述の例では最頻値を用いて単位脈波の抽出を行ったがこれに限られない。単位脈波抽出手段14の抽出処理は、呼吸変動等の影響を受けた異常な単位脈波を除外して必要な単位脈波のみを抽出することを目的としている。そのため単位脈波抽出手段14は、最頻値に代わって平均値や中央値を用いて必要な単位脈波を抽出してもよい。すなわち単位脈波抽出手段14は、単位脈波生成手段13が生成した単位脈波のデータを基に統計的な解析を行い、当該統計解析により得られた統計値を用いて必要な単位脈波のみを抽出できる構成であればよい。ただし呼吸性変動の影響がある場合、中心静脈波等の低圧系のパラメータは、人工呼吸器使用時には高くなり、自発呼吸時には低くなることが想定される。そのため単位脈波抽出手段14は、平均値や中央値ではなく、最頻値を用いて処理を行うことが好ましい。
【0027】
単位脈波抽出手段14は、抽出した単位脈波を出力手段15に供給する。ここで単位脈波抽出手段14は、抽出した単位脈波のみを出力手段15に供給してもよく、抽出対象となった単位脈波にフラグ等をつける等の区別を行った上で全ての単位脈波を出力手段15に供給してもよい。
【0028】
出力手段15は、単位脈波抽出手段14が抽出した単位脈波に基づいた出力を行う。以下、出力手段15による出力処理の例を説明する。
【0029】
第1の出力例を説明する。出力手段15は、抽出した単位脈波の平均血圧値等を生体情報測定装置1に設けられた表示モニタに表示する。出力手段15は、抽出した単位脈波に対する統計処理(例えば加算平均である。以下、加算平均を行うものとして説明する。)を行って平均血圧値(例えば“10.4mmHg”)を算出し、算出した平均血圧値を表示モニタに表示する。なお出力手段15は、算出した平均血圧値を表示モニタに表示するとともに生体情報測定装置1に内蔵されたハードディスク等に書き込んでもよい。
【0030】
続いて第2の出力例を、図7を参照して説明する。出力手段15は、抽出した単位脈波のみを表示モニタに表示する。また抽出した単位脈波を用いて加算平均を行って平均的な脈波を算出し、当該脈波も表示モニタに表示する。図7の例では、抽出した単位脈波から算出した平均的な脈波を太丸で示している。なお出力手段15は、加算平均により求めた平均的な脈波を連続波形で表示することも勿論可能である。ユーザ(医師や看護師)は、図7を参照することにより、呼吸性変動等の影響を受けていないと考えられる中心静脈の脈波形や脈圧値の概要を視覚的に把握することができる。
【0031】
次に第3の出力例を、図8を参照して説明する。出力手段15は、抽出した単位脈波と、抽出対象外となった単位脈波と、を異なる表示効果で表示する。図8の例では、抽出対象となった単位脈波は実線で示されており、抽出対象外となった単位脈波は点線で示されている。ユーザ(医師や看護師)は、図8を参照することにより、呼吸変動等の影響を受けていないと考えられる中心静脈の脈波形や脈圧値の概要を視覚的に把握することができる。またユーザ(医師や看護師)は、呼吸性変動等の影響がどの程度あるのか(呼吸数変動等の影響を受けている脈波の数(割合)、呼吸数変動等により脈波がどの程度変化するか)を視覚的に把握することができる。
【0032】
続いて本実施の形態にかかる生体情報測定装置1の効果について説明する。単位脈波生成手段13は、血圧脈波から複数の単位脈波を生成する。そして単位脈波抽出手段14は、単位脈波を解析することによって必要な単位脈波のみを抽出する。この抽出の際に呼吸変動等の影響を受けた単位脈波は、抽出対象外となる。出力手段15は、この抽出した単位脈波をユーザに把握できる形で出力することにより、ユーザは正確な血圧脈波の状態(血圧波形、血圧値等)を把握することができる。
【0033】
また上述の手法において生体情報測定装置1は、呼吸に関するパラメータを測定することなく、呼吸変動等の影響を受けていないと推定される単位脈波のみを抽出している。すなわち生体情報測定装置1は、呼吸センサ等を用いることなく、呼吸性変動等の影響を抑制した血圧状態(血圧波形、血圧値等)の算出を行うことができる。また呼吸センサを用いた手法の場合、体動等の影響を考慮することが困難である。一方、単位脈波抽出手段13は、アーチファクトの原因に関わらず異常値を除外できる構成であるため、正確に単位脈波を抽出することができる。
【0034】
単位脈波生成手段13は、心電図からQRS波を検出し、RR間隔を用いて血圧脈波から一拍単位の単位脈波を生成することが好ましい。一拍毎の単位脈波を用いた分析を行うことにより、心拍に対応した血圧の脈波分析ができる。また、QRS波は心電図において電圧値が鋭く変化するピークである。そのため単位脈波生成手段13は、QRS波を用いることによって精度良く単位脈波を生成することができる。
【0035】
単位脈波抽出手段14は、生成された単位脈波に対して統計処理を行い、統計値(好適には最頻値)を用いて必要な単位脈波のみを抽出している。ここで行われる統計処理は、一般的なものであり、計算量も多くない。すなわち単位脈波抽出手段14は、簡素な計算処理により必要な単位脈波のみを精度良く抽出することができる。
【0036】
出力手段15は、単位脈波抽出手段14が抽出した単位脈波を様々な形態で出力(好適には表示)する。例えば出力手段15が抽出された単位脈波の平均血圧値を算出して表示することにより、ユーザは呼吸性変動等の影響を受けていない正確な平均血圧値を把握することができる。
【0037】
また出力手段15は、図7に示すように呼吸性変動等の影響を受けていないと推定される単位脈波のみを表示画面に表示することも可能である。ユーザ(医師、看護師等)は、この表示(図7)を参照することにより呼吸性変動等の影響を受けていないと考えられる中心静脈の脈波形や脈圧値を視覚的に把握することができる。
【0038】
また出力手段15は、図8に示すように呼吸性変動等の影響を受けていないと推定される単位脈波を、呼吸性変動等の影響を受けていると推定される単位脈波とは表示効果(色、線種等)を変えて表示することも可能である。ユーザ(医師、看護師等)は、この表示(図8)を参照することにより呼吸性変動等の影響がどの程度あるのか(呼吸数変動により脈波がどの程度変化するか等)を視覚的に把握することができる。
【0039】
(変形例1)
上述の説明では、単位脈波生成手段13は心電図を基に単位脈波の生成を行ったが必ずしもこれに限られない。例えば生体情報測定装置1は、心電図測定手段11に代わり動脈圧測定手段(図示せず)を有していてもよい。当該動脈圧測定手段は、動脈血の血圧の変化を測定する。動脈圧は、心臓の拍動のタイミングに応じて圧値が変化する。単位脈波生成手段13は、この圧値の変化に応じて心拍周期を算出し、算出した心拍周期を用いて血圧脈波から単位脈波を生成する。なお、その他の処理については、上述の説明と同様である。
【0040】
(変形例2)
また単位脈波生成手段13は、心電図測定手段11(または動脈圧測定手段)の測定した情報を使用せず、血圧脈波自体(上述の例では中心静脈の脈波)を解析し、当該解析結果に応じて血圧脈波から複数の単位脈波を生成してもよい。図4を参照すると、一心拍に対応する単位脈波の多くには概ね3つの極大値(図中の点線軸付近)が現れる。単位脈波生成手段13は、この規則性を検出し、心拍から心拍までの時間を推定する。そして単位脈波生成手段13は、推定した心拍から心拍までの時間を用いて血圧脈波から単位脈波を生成すればよい。
【0041】
すなわち単位脈波生成手段13は、心拍の解析(心電図や心拍周期の解析等)を用いて血圧脈波から単位脈波を生成する構成であればよい。
【0042】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0043】
上述したが、本発明は中心静脈のみならず任意の脈(特に低圧系の血圧値を持つ脈)の解析に非常に有用である。例えば血圧脈波測定手段12は、肺動脈(Pulmonary Artery)等の血圧脈波を検出する構成であってもよい。
【0044】
単位脈波生成手段13の単位脈波の生成処理、単位脈波抽出手段14の単位脈波の抽出処理、及び出力手段15の出力処理は、生体情報測定装置1内で動作するコンピュータプログラムとして実現することができる。すなわち生体情報測定装置1は、一般的なコンピュータが備えるCPU(Central Processing Unit)、メモリ装置等の構成も備えているものとする。
【0045】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0046】
1 生体情報測定装置
11 心電図測定手段
12 血圧脈波測定手段
13 単位脈波生成手段
14 単位脈波抽出手段
15 出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8