(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226850
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/46 20060101AFI20171030BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B60N2/46
B60N3/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-225308(P2014-225308)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-88302(P2016-88302A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 那尭
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
(72)【発明者】
【氏名】横山 太一
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−194045(JP,A)
【文献】
特開2002−120627(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0334375(US,A1)
【文献】
特開2005−118312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
B60N 3/00
A47C 7/00 − 7/74
B60R 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの側面部にアームレストが取り付けられ、このアームレストに荷物を掛けることが可能なフック部材が設けられている乗り物用シートにおいて、
前記アームレストは、本体が表皮によって覆われていると共に、前記側面部に固定された軸部材を中心として、前後方向にスイング可能に設けられ、
前記本体には、前記軸部材を囲うようにシート幅内方に向かって凹む凹部が形成され、
前記フック部材は、
前記軸部材の先端に取り付けられると共に、前記凹部に嵌め込まれ、
前記本体と共に前記表皮を挟みこみ、前記表皮を押さえる押え部と、
この押え部からシート幅外方に向かって延び、前記荷物が掛けられる荷物係止部と、
前記荷物係止部の先端において、前記軸部材の軸線に対して略垂直な方向に延び、前記荷物の落下を抑制するかえし部と、を有していることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
前記かえし部には、シート幅内方に向かって延びる折り返し部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の乗り物用シート。
【請求項3】
前記荷物係止部及び前記かえし部は、前記シートバックを側面から見た場合に、前記軸部材を中心とした円形状を呈することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記アームレストの幅は、前記フック部材が取り付けられる部位よりもその前方の部位の幅が広く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を掛けることが可能な乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用シートは、通常、乗員が着座するシートクッションと、背凭れとなるシートバックとからなる。一部のシートにおいては、シートバックの側面部にアームレストが設けられ、このアームレストに荷物を掛けることが可能なフック部材が設けられることがある。このような乗り物用シートに関する技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1の車両用シートにおいては、アームレストは、本体が表皮によって覆われていると共に、側面部に固定された軸部材を中心として、前後方向にスイング可能に設けられている。
【0004】
軸部材の周辺において、アームレストの本体を包むクッション材には、軸部材を囲うようにシート幅内方に向かってへこむ凹部が形成されている。荷物を掛けることが可能なフック部材は、この凹部を塞ぐように、クッション材に嵌め込まれる。フック部材は、凹部の底を覆う底部と、この底部の縁からシート幅外方に向かって延びる円筒部と、円筒部の下部の縁から上方に延び、荷物を掛けることができる荷物係止部とからなる。
【0005】
ここで、フック部材に重量の大きい荷物が掛けられることを考慮すると、よりフック部材の取付強度が高められた乗り物用シートの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−194045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フック部材の取付強度が高められた乗り物用シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1による発明によれば、シートバックの側面部にアームレストが取り付けられ、このアームレストに荷物を掛けることが可能なフック部材が設けられている乗り物用シートにおいて、
前記アームレストは、本体が表皮によって覆われていると共に、前記側面部に固定された軸部材を中心として、前後方向にスイング可能に設けられ、
前記本体には、前記軸部材を囲うようにシート幅内方に向かって凹む凹部が形成され、
前記フック部材は、
前記軸部材の先端に取り付けられると共に、前記凹部に嵌め込まれ、
前記本体と共に前記表皮を挟みこみ、前記表皮を押さえる押え部と、
この押え部からシート幅外方に向かって延び、前記荷物が掛けられる荷物係止部と、
前記荷物係止部の先端において、前記軸部材の軸線に対して略垂直な方向に延び、前記荷物の落下を抑制するかえし部と、を有していることを特徴とする乗り物用シートが提供される。
【0009】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記かえし部には、シート幅内方に向かって延びる折り返し部が形成されている。
【0010】
請求項3に記載のごとく、前記荷物係止部及び前記かえし部は、前記シートバックを側面から見た場合に、前記軸部材を中心とした円形状を呈する。
【0011】
請求項4に記載のごとく、前記アームレストの幅は、前記フック部材が取り付けられる部位よりもその前方の部位の幅が広く形成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、アームレストは、本体が表皮によって覆われていると共に、側面部に固定された軸部材を中心として、前後方向にスイング可能に設けられている。本体には、軸部材を囲うようにシート幅内方に向かって凹む凹部が形成され、荷物を掛けることが可能なフック部材は、軸部材の先端に取り付けられると共に、凹部に嵌め込まれる。
【0013】
すなわち、フック部材は、軸部材及び凹部が形成された本体の双方により支持されている。軸部材は、シートバックの側面部に取り付けられており、高い取付強度を有している。フック部材は、この取付強度の高い軸部材に直接取り付けられている。加えて、フック部材は、アームレストの本体に嵌め込まれているため、さらに取付強度は高くなる。これにより、フック部材の車両用シートに対する取付強度を高くすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、かえし部には、シート幅内方に向かって延びる折り返し部が形成されている。この折り返し部が形成されるかえし部は、荷物係止部の先端において、軸部材の軸線に対して略垂直な方向に延び、荷物の落下を抑制する部位である。そのため、荷物係止部の先端において、荷物は、上下方向への移動が抑制され、荷物係止部から外れにくい。
【0015】
請求項3に係る発明では、荷物係止部及びかえし部は、シートバックを側面から見た場合に、軸部材を中心とした円形状を呈する。そのため、アームレストのスイング角度によって、フック部材の使い勝手に差異は生じない。フック部材は、高い使い勝手性を得ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、アームレストの幅は、フック部材が取り付けられる部位よりもその前方の部位の幅が広く形成されている。そのため、フック部材がアームレストの軸部材に取り付けられても、フック部材の側方への突出を抑制することができる。結果、フック部材に掛けられた荷物は、シート側方へ突出しにくい。シートの側方の空間の占有を抑えつつ、荷物を掛けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例による乗り物用シートとしての車両用シートの斜視図である。
【
図2】
図1に示された車両用シートのアームレストを上方から見下ろした図である。
【
図4】
図1に示されたアームレストの側面図である。
【
図5】
図1に示された乗り物用シートとしての車両用シートの作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Lは乗員から見て左、Rは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例>
【0019】
図1には、乗り物用シートの一例として、車両用シート10が示されている。この車両用シート10は、右ハンドル車の運転席として用いられるものである。
【0020】
車両用シート10は、床部11に固定されている左右の脚部12,12と、これらの左右の脚部12,12に掛け渡されている連結部13と、左右の脚部12,12のそれぞれの上部に固定されている左右のレール14,14と、これらの左右のレール14,14を介して前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション20と、このシートクッション20の後端から立ち上げられるシートバック30と、シートバック30の上端に設けられるヘッドレスト15と、シートバック30の側面部33に取り付けられたアームレスト40と、からなる。
【0021】
シートクッション20は、乗員が着座する着座部21と、この着座部21の左右の両端から上方に膨らむ左右のクッション部サイドサポート22,22と、この左右のサイドサポート22,22のそれぞれの側部に設けられる樹脂製のクッション支持部23,23とからなる。
【0022】
シートバック30は、乗員の背中を支える背凭れ部31と、この背凭れ部31の左右の両端から前方に膨む左右のバック部サイドサポート32,32とからなる。
【0023】
図2を参照する。アームレスト40は、シートバック30の左の側面部33に固定された軸部材16を中心として、前後方向にスイング可能に設けられている。
【0024】
軸部材16の先端には、荷物を掛けることが可能なフック部材50が取り付けられている。
【0025】
アームレスト40において、フック部材50が取り付けられる取付部41(フック部材50が取り付けられる部位41)と、アームレスト50の前後方向において中央付近の中央部42(前方の部位41)とを比較すると、取付部41の幅W1よりも中央部42の幅W2が広く形成されている。
【0026】
特に、本実施例では、フック部材50の先端は、中央部42におけるシート幅外方の端部42aよりもシート幅中央側に位置している。すなわち、フック部材50は、アームレストの端部42aよりもシート幅外方に突出しない。
【0027】
図3を参照する。
図3は、フック部材50が取り付けられている部位において、アームレスト40を断面した図である。シートバック30(
図1参照)のフレームである、シートバックフレーム91の側面部には、アームレスト40を取り付けるための取付部材92が固定されている。
【0028】
アームレスト40は、クッション材43に包まれた本体44が、表皮45に覆われることにより構成される。アームレスト40には、軸部材16が通る軸孔46が形成されている。軸部材16は、インサート成形により成形され、金属製のボルト16aの一部が金属製の金属芯部16bにより包まれることにより構成される。
【0029】
本体44のシート幅外方の側面部には、軸部材16を囲うようにシート幅内方に向かって凹む凹部48が形成されている。凹部48は、軸部材16を中心とした円形状を呈するが、多角形状などでもよい。
【0030】
フック部材50は、凹部48に嵌め込まれ、カラー47,47を介して、アームレスト40と共に軸部材16に取り付けられる。ボルト16aは、シート幅外方に突出し、フランジ付きナット16cを用いて締結される。
【0031】
フック部材50は、軸部材16周辺の表皮43の表面に配置される第1カバー部60と、この第1カバー部60に嵌め込まれる第2カバー部70と、この第2カバー部70に取り付けられ、軸部材16の先端を覆うキャップ部材80とからなる。
【0032】
第1カバー部60は、アームレスト本体42と共に表皮43を挟みこみ、表皮43を押さえる押え部61と、この押え部61からシート幅外方に向かって延び、荷物が掛けられる荷物係止部62と、からなる。
【0033】
押え部61は、凹部48に嵌め込まれ、凹部48に位置する表皮43を押える内押え部61aと、凹部48の縁の周辺に位置する表皮43を押える外押え部61bと、からなる。内押え部61aの底には、軸部材16が通る孔が形成されている。
【0034】
第2カバー部70は、内押え部61aの底に接触する底部71と、この底部71の縁からシート幅外方に向かって延び、荷物係止部62を支える周壁部72と、この周壁部72の先端において、軸部材16の軸線CLに対して略垂直な方向に延び、荷物の落下を抑制するかえし部73と、からなる。底部71には、軸部材16が通る孔が形成されている。
【0035】
かえし部73は、シート幅外方に延びる直線部73aと、この直線部73aの端部からからシート幅内方に向かって延びる折り返し部73bとからなる。折り返し部73bは、シート幅内方に向かって連続的に径が広がっている。
【0036】
周壁部72は、シート幅内方に向かうに連れて径が小さくなる円錐台形状を呈する。第2カバー部70が第1カバー部60に嵌め込まれた時に、周壁部72は荷物係止部62と接触する。そのため、荷物係止部62もシート幅内方に向かうに連れて径が小さくなる円錐台形状を呈する。
【0037】
キャップ部材80には、シート幅内方に向かって延び、周壁部72に係止される、係止爪81が形成されている。
【0038】
図4を参照する。第1カバー部60の荷物係止部62、及び、第2カバー部70のかえし部73は、シートバック30を側面から見た場合に、軸部材16を中心とした円形状を呈する。
【0039】
次に、本発明の作用及び効果について説明する。
図5を参照する。車両用シート10のアームレスト40は、シートバック30の側面部33に固定された軸部材16(
図2参照)を中心として、前後方向にスイング可能に設けられ、アームレスト40には、荷物を掛けることが可能なフック部材50が取り付けられている。そのため、車両用シート10の側方には、荷物Bを掛けることができる。
【0040】
図3を併せて参照する。アームレスト40の本体には、軸部材16を囲うようにシート幅内方に向かって凹む凹部48が形成され、フック部材50は、軸部材16の先端に取り付けられると共に、凹部48に嵌め込まれる。
【0041】
すなわち、フック部材50は、軸部材16及び凹部48が形成された本体44の双方により支持されている。軸部材16は、シートバック30の側面部33に取り付けられており、高い取付強度を有している。フック部材50は、この取付強度の高い軸部材16に直接取り付けられている。加えて、フック部材50は、アームレスト40の本体44に嵌め込まれているため、さらに取付強度は高くなる。これにより、フック部材50の車両用シート10に対する取付強度を高くすることができる。
【0042】
第2カバー部70は、荷物係止部62の先端において、軸部材16の軸線CLに対して略垂直な方向に延び、荷物の落下を抑制するかえし部73を有する。本実施例では、かえし部73は、シート幅外方に延びる直線部73aと、この直線部73aからシート幅内方に向かって延びる折り返し部73bとからなる。そのため、荷物係止部62に掛けられた荷物は、直線部73aと折り返し部73bとの間に形成された空間に入り込みやすくなり、荷物は荷物係止部62から外れにくい。
【0043】
図4を参照する。第1カバー部60の荷物係止部62、及び、第2カバー部70のかえし部73は、シートバック30を側面から見た場合に、軸部材16を中心とした円形状を呈する。そのため、アームレスト40のスイング角度によって、フック部材50の使い勝手に差異は生じない。フック部材50は高い使い勝手性を得ることができる。
【0044】
図2を参照する。アームレスト40の幅は、取付部41よりもその中央部42の幅が広く形成されている。そのため、フック部材50が軸部材16に取り付けられても、フック部材50の側方への突出を抑制することができる。結果、フック部材50に掛けられた荷物は、車両用シート10の側方へ突出しにくい。車両用シート10の側方の空間の占有を抑えつつ、荷物を掛けることができる。
【0045】
特に、本実施例では、フック部材50の先端は、中央部42におけるシート幅外方の端部42aよりもシート幅中央側に位置している。すなわち、フック部材50は、アームレストの端部42aよりもシート幅外方に突出しない。フック部材50が取り付けられたアームレスト40が占める空間は、一般的なアームレストと変わらないため、フック部材50を有する車両用シート10の汎用性は高くなる。
【0046】
なお、車両用シート10は、左ハンドルの車の運転席に用いることも可能である。この場合、アームレスト40はシートバック30の右の側面部に取り付けられる。また、本発明は、電車、飛行機、船等の他の乗り物にも適用可能である。さらに、金属芯部16bをフック部材に求められる耐荷重量を考慮して樹脂製の芯部にしてもよい。即ち、本発明は、作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の乗り物用シートは、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0048】
10…車両用シート
30…シートバック
33…側面部
40…アームレスト
44…本体
45…表皮
48…凹部
50…フック部材
60…第1カバー部
61…押さえ部(61a…内押え部、61b…外押え部)
62…荷物係止部
70…第2カバー部
73…かえし部(73a…直線部、73b…折り返し部)