(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記浸水防止壁は、その上端部に、前記浸水防止壁の延びる方向に交差して一の前記室側と他の前記室側との少なくとも一方に延びる端板を備える請求項1に記載の船舶。
前記囲壁は、前記船体内で、前記舷側に沿った位置、左右一対の前記舷側の中央部、および、前記舷側に沿った位置と前記中央部との中間部のいずれかに設けられている請求項1から6の何れか一項に記載の船舶。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船体の内部に、上述した複数の室として設けられる主機室や発電機室は、室内空気を排出するためのダクトを備えている。主機室や発電機室から排出される空気は、このダクトを通り、船体の上部に設けられた煙突から外部に排出される。
ここで、主機室および発電機室の上部を跨がるようにダクトを設けることがある。つまり、主機室と発電機室とで、ダクトを共用することがある。このような構成において、主機室および発電機室の天井には、ダクト内に連通する開口部を設ける。主機室および発電機室から排出される空気は、それぞれの天井に形成された開口部を通して、ダクト内に排出される。
【0006】
しかしながら、このような構成においては、特許文献1に記載のように、複数の室の間に浸水防止室を備えたとしても、船体が傾いたときに、浸水が生じた室の上部に形成された開口部から、水がダクト内に流出する。すると、ダクト内に流出した水が、他の室の上部に形成された開口部から室内に入り込み、他の室も浸水してしまう。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の室の上部を跨がるように、ダクト等の囲壁を備えた場合においても、船舶の復原性を有効に確保することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、船舶は、左右一対の舷側を有する船体と、前記船体の内部に互い隣接するように隔壁によって区画された複数の室と、前記隔壁上及び前記隔壁によって区画される複数の前記室上に跨がるように配置され、上方に向けて延びる筒状の囲壁と、前記囲壁の下端部に形成され、複数の前記室のそれぞれと前記囲壁内とを連通する連通部と、前記囲壁内に設けられ、前記囲壁内で一の前記室の前記連通部と他の前記室の前記連通部とを隔てるように、前記囲壁内の下端部から上方に向かって延在する浸水防止壁と、を備える。
【0008】
このように、複数の室上に跨がるように配置された囲壁内に、囲壁内で一の室の連通部と他の室の連通部とを隔てるように浸水防止壁を備えることによって、一の室と他の室の一方に浸水が生じた場合、その室から連通部を通して囲壁内に水が流出しても、浸水防止壁によって水が遮られる。これによって、浸水防止壁を乗り越えない限り、他方の室に水が浸入することを抑制できる。
【0009】
この発明の第二態様によれば、船舶は、第一態様における前記浸水防止壁が、その上端部に、前記浸水防止壁の延びる方向に交差して一の前記室側と他の前記室側との少なくとも一方に延びる端板を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、一の室と他の室の一方に浸水が生じ、その室から連通部を通して囲壁内に流出した水は、浸水防止壁とその上端部の端板とによって確実に遮られる。
【0010】
この発明の第三態様によれば、船舶は、第一又は第二態様において、複数の前記室が、主機を収容した主機室と、発電機を収容した発電機室であるようにしてもよい。
このように構成することで、主機室と発電機室の双方が浸水してしまうことを抑制できる。
【0011】
この発明の第四態様によれば、船舶は、第三態様において、前記船体の上部に煙突が設けられ、前記囲壁が、前記主機室および前記発電機室からの排気を前記煙突に導くケーシングであるようにしてもよい。
このように構成することで、主機室と発電機室とで、排気経路を共用しつつ、囲壁内の浸水防止壁によって、主機室と発電機室の双方が浸水することを抑制できる。
【0012】
この発明の第五態様によれば、船舶は、第一又は第二態様において、前記浸水防止壁が、乾舷甲板上に設けられ、前記乾舷甲板と前記乾舷甲板の上方1層目の甲板との間に設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、囲壁の下端部内において、浸水防止壁により、主機室と発電機室の双方が浸水することを抑制できる。
【0013】
この発明の第六態様によれば、船舶は、第一又は第二態様において、前記囲壁が、複数の前記室の内部に吸気または排気を行う通風ダクトであるようにしてもよい。
このように構成することで、複数の室で通風ダクトを共用しつつ、船体の復原性を確保することができる。さらに、複数の通風ダクトを共用することで、通風ファンも共用することができ、低コスト化を図ることができる。
【0014】
この発明の第七態様によれば、船舶は、第一から第六態様の何れか一つの態様において、前記囲壁が、前記船体内で、前記舷側に沿った位置、左右一対の前記舷側の中央部、および、前記舷側に沿った位置と前記中央部との中間部のいずれかに設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、囲壁を船体内のいかなる位置に設けても、囲壁内の浸水防止壁によって、一の室と他の室の双方が浸水することを抑制できる。
【0015】
この発明の第八態様によれば、船舶は、第七態様において、前記囲壁が前記舷側に沿った位置に設けられ、前記囲壁の下方に位置する複数の前記室の間に、浸水防止室が設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、複数の室の間に浸水防止室が設けられている場合においても、囲壁内の浸水防止壁によって、一の室と他の室の双方が浸水することを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る船舶によれば、複数の室の上部を跨がるように、ダクト等の囲壁を備えた場合においても、浸水防止壁によって囲壁内で一の室から他の室に水が浸入するのを抑えることによって、船舶の復原性を有効に確保することができ、船舶の損傷時の安全性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一実施形態に係る船舶を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の第一実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図2は、上記船舶の船体内部構成を示す図であり、
図1のX−X矢視断面図である。
図3は、この発明の第一実施形態におけるケーシングの下端部を示す側断面図である。
図4は、上記ケーシングの平断面図である。
図1、
図2に示すように、この実施形態の船舶1は、車両を運搬可能な車両運搬船(フェリー)である。この船舶1の船体2は、舷側3A,3Bと、船底4と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の船側外板からなる。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板からなる。船体2は、これら一対の舷側3A,3B及び船底4により断面形状がU字状に形成されている。
【0019】
船体2は、船尾2b側に、プロペラ5と、舵6とを備えている。プロペラ5は、船体2内に設けられた主機(図示せず)によって駆動され、船舶1を推進させる推進力を発生させる。舵6は、プロペラ5の後方に設けられ、船体2の進行方向を制御する。
【0020】
また、船体2は、車両を船体2内に乗船(ロールオン)または下船(ロールオフ)させるため、船首側ランプウェイ7A、船尾側ランプウェイ7Bを備えている。船首側ランプウェイ7Aは、船首2a側の右舷側に設けられている。船尾側ランプウェイ7Bは、船尾2bの右舷側に設けられている。船首側ランプウェイ7A、船尾側ランプウェイ7Bは、それぞれ起倒式で、船体2の外方側に倒して展開することで、船首側ランプウェイ7A、船尾側ランプウェイ7B上を走行させて車両を乗船または下船させることができるようになっている。
【0021】
また、船体2の上部後方には、煙突8が上方に向けて突出して設けられている。
【0022】
船体2の内部には、水平方向に延びる乾舷甲板11が設けられている。乾舷甲板11とは、一般に最下層の全通甲板である。船首側ランプウェイ7A、船尾側ランプウェイ7Bを倒して展開させた状態で、車両は、船首側ランプウェイ7A、船尾側ランプウェイ7Bを通して、この乾舷甲板11上に乗り込む。すなわち、乾舷甲板11が車両の乗り込み甲板となる。
【0023】
船体2の内部には、乾舷甲板11の上方に、複数層の甲板12,13,14,15,16が設けられている。
この実施形態では、乾舷甲板11と、その上層の甲板12との間に、車両が走行可能なランプ(図示せず)が設けられている。
【0024】
また、船体2は、乾舷甲板11の下方に、乾舷甲板11と船底4との間で2重底となる甲板18を備えている。
【0025】
図2に示すように、船体2内の船首2a側には、乾舷甲板11と甲板18との間に、舷側3A,3Bに対して船体2の内側に間隔を空けてロンジバルクヘッド隔壁19A,19Bが設けられている。そして、甲板18上において、ロンジバルクヘッド隔壁19A,19Bに囲まれた領域が、車両搭載区画とされている。
【0026】
船体2の船首2a側において、左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとの間、左舷側の舷側3Aとロンジバルクヘッド隔壁19Aとの間、および右舷側の舷側3Bとロンジバルクヘッド隔壁19Bとの間には、船首尾方向に間隔を空けて複数の隔壁20が設けられている。左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとの間、左舷側の舷側3Aとロンジバルクヘッド隔壁19Aとの間、および右舷側の舷側3Bとロンジバルクヘッド隔壁19Bとの間には、乾舷甲板11と、甲板18と、船首尾方向において互いに隣り合う2枚の隔壁20,20とに囲まれて、複数の水密区画室(室)S1,S2,…が設けられている。これらの水密区画室S1,S2,…は、ボイドスペース、燃料タンク、バラストタンク、各種の機器室、倉庫、貨物庫、清水タンク、汚物処理スペース、フィンスタビライザスペース等として用いることができる。
【0027】
また、船体2内には、ロンジバルクヘッド隔壁19A,19Bよりも船尾2b側に、船首尾方向に間隔を空けて複数の隔壁21が設けられている。各隔壁21は、乾舷甲板11と甲板18との間に、左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとを結ぶように設けられている。
このようにして、左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとには、乾舷甲板11と、甲板18と、船首尾方向において互いに隣り合う複数枚の隔壁21とに囲まれて、複数の水密区画室(室)S11、S12、S13が形成されている。ここで、これら複数の水密区画室S11、S12、S13のうち、船首2a側の水密区画室S11は、発電機を収容する発電機室とされている。また、水密区画室S12は、主機を収容する主機室とされている。船尾2b側の水密区画室S13は、主機とプロペラ5とを接続する回転軸9を収容する軸室とされている。
【0028】
また、船体2内には、乾舷甲板11から上方に向けて延び、煙突8に繋がるケーシング30Aが設けられている。ケーシング30Aは、上下方向に連続する筒状をなし、甲板12,13,14,15を貫通して設けられている。
ケーシング30Aは、少なくともその下部が、隔壁21を挟んで船首尾方向で互いに隣り合う、発電機室としての水密区画室S11と、主機室としての水密区画室S12とを上方で跨がるように配置されている。
この実施形態において、ケーシング30Aは、船体2の船幅方向両端部、すなわち左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとに隣接して、それぞれ設けられている。
【0029】
図3、
図4に示すように、ケーシング30Aは、舷側3A,3Bと、前壁31Aと、後壁31Bと、内壁31Cとに四方を囲まれた平面視略矩形の筒状をなしている。前壁31Aは、水密区画室S11の上方において舷側3A,3Bから船幅方向内側に向けて直交して延びるよう形成されている。後壁31Bは、水密区画室S12の上方において舷側3A,3Bから船幅方向内側に向けて直交して延びるよう形成されている。内壁31Cは、前壁31Aと後壁31Bとの間で、舷側3A,3Bに対して船幅方向内側に間隔を空けて、舷側3A,3Bとほぼ平行に形成されている。
【0030】
乾舷甲板11には、ケーシング30Aの下部の内側において、発電機室としての水密区画室S11の上部と、主機室としての水密区画室S12の上部とに、それぞれ開口部(連通部)33,34が形成されている。この開口部33,34を通して、水密区画室S11,S12内とケーシング30A内の空間39sとが連通している。
開口部33,34の内側には、水密区画室S11,S12内に収容された発電機や主機等に接続された排気用のダクト管35,36等が配置されている。
また、開口部33,34には、鋼製のグレーチングやメッシュ材等、通気性を有したパネル(図示せず)が装着され、開口部33,34上を作業者が歩行できるようになっている。
【0031】
このようなケーシング30A内には、舷側3A,3Bと内壁31Cとの間に、浸水防止壁40Aが設けられている。浸水防止壁40Aは、舷側3A,3Bに直交し、乾舷甲板11から上方に向かって延びるよう形成されている。この浸水防止壁40Aは、隔壁21の鉛直上方に配置され、水密区画室S11の開口部33と、水密区画室S12の開口部34との間に設けられている。
この浸水防止壁40Aは、その上端40tが、例えば、乾舷甲板11の上方の甲板12の近傍に位置するよう設けられている。
【0032】
したがって、上述した第一実施形態の船舶によれば、開口部33,34が形成された乾舷甲板11から上方に向けて延びる浸水防止壁40Aを設けることで、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、船舶1が船首尾方向(ピッチング方向)に傾いても、開口部33または34から乾舷甲板11上にあふれ出た水は、浸水防止壁40Aを乗り越えない限り遮られる。浸水防止壁40Aの上端40tまでの高さを、船舶1で想定されるピッチング方向の傾き量に応じて設定しておくことで、開口部33または34からあふれ出た水が、浸水していない水密区画室S11およびS12の他方に侵入することを抑制できる。
【0033】
このようにして、発電機室である水密区画室S11と発電機室である水密区画室S12とで、排気経路であるケーシング30Aを共用しつつ、水密区画室S11およびS12の双方が浸水することを抑制できる。その結果、船舶1の復原性を有効に確保することが可能となる。さらに、このように船舶1の復原性を確保することで、船舶1の構成、船型、推進性能等の設計自由度を向上させることができる。
【0034】
また、他区画と発電機室または主機室の何れかが浸水した場合、発電機室である水密区画室S11と、主機室である水密区画室S12との双方が浸水することを抑制できる。これによって発電機と主機の双方の動力を浸水によって同時に消失することを低減し、デットシップ(動力を失い、漂流状態にあること)となる可能性を低減できる。ことを低減できる。
【0035】
しかも、このような浸水防止壁40Aは、簡易な構成であるので、低コストで設置することができる。また、ケーシング30Aを備えた既存の船舶に対しても、浸水防止壁40Aを追加するのみで、上記と同様に復原性を有効に確保することができる。
【0036】
また、浸水防止壁40Aを設けることによって、開口部33,34を設ける位置や高さについても自由度が高まる。
【0037】
(第一実施形態の第一変形例)
図5は、上記第一実施形態における船舶の第一変形例の構成を示す図であり、ケーシングの下端部を示す側断面図である。
この
図5に示すように、上記実施形態で示したような浸水防止壁40Aの上端部に、浸水防止壁40Aに直交して乾舷甲板11と平行に設けられ、浸水防止壁40Aから船首2a側と船尾2b側に延びる端板41を設けても良い。
【0038】
このように浸水防止壁40Aの上端部に端板41を設け、側面視T字状とすることで、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、船舶1が船首尾方向(ピッチング方向)に傾いても、開口部33または34から乾舷甲板11上にあふれ出た水が、浸水防止壁40Aの端板41を、より一層乗り越えにくくなる。これにより、乾舷甲板11上にあふれ出た水を、より確実に遮ることができる。その結果、船舶1の復原性をさらに高めることができる。また、上記実施形態と同等の復原性を確保しながら、端板41を備えることによって、浸水防止壁40Aを、より低く形成することもできる。
【0039】
ここで、上述した第一実施形態の第一変形例においては、端板41が浸水防止壁40Aと直交する場合について説明したが、端板41と浸水防止壁40Aとが互いに垂直である必要はなく交差していれば良い。また、端板41が浸水防止壁40Aから船首尾方向の両方に延びる場合について説明したが、何れか一方にのみ延びるように形成しても良い。
【0040】
(第一実施形態の第二変形例)
図6は、この発明の第一実施形態における船舶の第二変形例の構成を示す図であり、ケーシング内に設けた浸水防止壁の斜視図である。
この
図6に示すように、上記実施形態で示したような浸水防止壁40Aに、水密区画室S11側と水密区画室S12側とを連通する開口部42を形成し、この開口部42を水密に封止できる水密扉43を開閉可能に設けても良い。
このような水密扉43を備えることで、メンテナンス作業等の際には、この開口部42を通して作業者が水密区画室S11側と水密区画室S12側とを行き来することが可能となる。
なお、この水密扉43は、水密ハッチまたはボルテットプレートとしても良い。
【0041】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかる船舶の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と浸水防止室を備えた構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図7は、この発明の第二実施形態における船舶に設けられたケーシングの下端部を示す側断面図である。
図8は、上記ケーシングの平断面図である。
図7、
図8に示すように、この実施形態における船舶1は、船体2内に、水密区画室S11と水密区画室S12とを区画する隔壁21に対して水密区画室S12側に、浸水防止室50Aを備えている。
【0042】
浸水防止室50Aは、船体2の船幅方向両端部、すなわち左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとに隣接して、それぞれ設けられている。浸水防止室50Aは、舷側3A,3Bと、隔壁21と、後壁51Aと、内壁51Bとに四方を囲まれた平面視略矩形の筒状をなしている。後壁51Aは、隔壁21に対して船尾2b側に間隔を空けた位置で、舷側3A,3Bから船幅方向内側に向けて直交して延びるよう形成されている。内壁51Bは、隔壁21と後壁51Aとの間で、舷側3A,3Bに対して船幅方向内側に間隔を空けて、舷側3A,3Bとほぼ平行に形成されている。
【0043】
このような浸水防止室50Aは、舷側3A,3Bが、水密区画室S11と水密区画室S12の境界近傍で破損しても、破損部位が、水密区画室S11と浸水防止室50A、または水密区画室S11と浸水防止室50Bとに跨がるのみで、水密区画室S11とS12の双方に跨がることを抑える。
【0044】
このような船舶1は、上記第一実施形態と同様、ケーシング30Bが、隔壁21を挟んで船首尾方向で互いに隣り合う水密区画室S11と水密区画室S12とを上方で跨がるように配置されている。
【0045】
ケーシング30B内には、舷側3A,3Bと内壁31Cとの間に、浸水防止壁40Bが設けられている。浸水防止壁40Bは、舷側3A,3Bに直交し、乾舷甲板11から上方に向かって延びるよう形成されている。この浸水防止壁40Bは、例えば隔壁21の鉛直上方に配置され、水密区画室S11の開口部33と、水密区画室S12の開口部34との間に設けられている。
この浸水防止壁40Bは、その上端40tが、例えば、乾舷甲板11の上方の甲板12の近傍に位置するよう設けられている。
【0046】
したがって、上述した第二実施形態の船舶によれば、浸水防止壁40Bによって、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、開口部33または34からあふれ出た水が、浸水していない水密区画室S11およびS12の他方に侵入することを抑制でき、船舶1の復原性を確保することができる。
【0047】
(第二実施形態の第一変形例)
ここで、第二実施形態では、水密区画室S11と水密区画室S12とを区画する隔壁21に対して水密区画室S11側に、浸水防止室50Aを備えるようにしたが、これに限るものではない。
【0048】
図9は、この発明の第二実施形態の第一変形例におけるケーシングの下端部を示す側断面図である。
図10は、上記ケーシングの平断面図である。
この
図9、
図10に示すように、船体2内に、水密区画室S11と水密区画室S12とを区画する隔壁21の水密区画室S11側と水密区画室S12側とに、それぞれ浸水防止室50A、50Bを備えるようにしてもよい。
このような構成においても、ケーシング30B内を、水密区画室S11の開口部33側と、水密区画室S12の開口部34側とに区画する浸水防止壁40Bを設けることができる。
【0049】
このように、浸水防止室50A,50Bを備える構成においても、ケーシング30B内に浸水防止壁40Bを設けることで、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、開口部33または34からあふれ出た水が、浸水していない水密区画室S11およびS12の他方に侵入することを抑制でき、船舶1の復原性を確保することができる。
【0050】
(第一および第二実施形態の第一変形例)
上記第一、第二実施形態およびそれぞれの変形例においては、ケーシング30A、30Bを、船体2の船幅方向両端部、すなわち左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとに隣接して、それぞれ設けるようにしたが、これに限るものではない。
図11は、この発明の第一および第二実施形態の第一変形例における船舶の船体内部構成を示す平断面図である。
この
図11に示すように、ケーシング30Dは、左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとの間の、船幅方向中央部に設けるようにしてもよい。この場合、ケーシング30Dは、船幅方向に間隔を空けて設けられた側壁31D,31Dと、前壁31Aと、後壁31Bとに四方を囲まれた平面視略矩形の筒状をなしている。
このようなケーシング30Dが、隔壁21を挟んで船首尾方向で互いに隣り合う水密区画室S11と水密区画室S12とを上方で跨がるように配置されている。
【0051】
ケーシング30D内には、水密区画室S11の開口部33側と、水密区画室S12の開口部34側とに区画する浸水防止壁40Dが設けられている。
【0052】
このような構成においても、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、開口部33または34からあふれ出た水が、浸水防止壁40Dにより、浸水していない水密区画室S11およびS12の他方に侵入することを抑制でき、船舶1の復原性を確保することができる。
【0053】
(第一および第二実施形態の第二変形例)
図12は、この発明の第一および第二実施形態の第二変形例における船舶の船体内部構成を示す平断面図である。
この
図12に示すように、ケーシング30Eは、左舷側の舷側3Aと右舷側の舷側3Bとの間の、船幅方向中央Cに対して、船幅方向いずれか一方の側、例えば左舷側にオフセットして設けてもよい。つまり、ケーシング30Eは、船幅方向中央Cと、左舷側の舷側3Aまたは右舷側の舷側3Bとの間に設けられている。
【0054】
この場合も、ケーシング30Eは、船幅方向に間隔を空けて設けられた側壁31D,31Dと、前壁31Aと、後壁31Bとに四方を囲まれた平面視略矩形の筒状をなしている。
このようなケーシング30Eが、隔壁21を挟んで船首尾方向で互いに隣り合う、水密区画室S11と水密区画室S12とを上方で跨がるように配置されている。
【0055】
ケーシング30E内には、水密区画室S11の開口部33側と、水密区画室S12の開口部34側とに区画する浸水防止壁40Eが設けられている。
【0056】
このような構成においても、水密区画室S11およびS12のいずれか一方が浸水した場合に、開口部33または34からあふれ出た水が、浸水防止壁40Eにより、浸水していない水密区画室S11およびS12の他方に侵入することを抑制でき、船舶1の復原性を確保することができる。
【0057】
(第一および第二実施形態の他の変形例)
さらには、
図11および
図12に示した、第一および第二実施形態の第一、第二変形例においても、
図7〜
図10に示したのと同様に、水密区画室S11と水密区画室S12とを区画する隔壁21に対して水密区画室S11および水密区画室S12の少なくとも一方側に、浸水防止室50Aまたは50Bを備えるようにしてもよい。
【0058】
(第三実施形態)
次に、この発明にかかる船舶の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一実施形態に対して浸水防止壁の設置部位のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図13は、この発明の第三実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図13に示すように、この実施形態における船舶1は、船体2内の舷側3A,3Bに沿って設けられた水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13の上方に、乾舷甲板11から上方に向けて延びる通風ダクト60を備えている。
この通風ダクト60は、水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13のうち、船首尾方向で互いに隣り合う室同士上を跨がるように設けられている。
通風ダクト60は、水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13に対して給気または排気を図るものである。通風ダクト60は、乾舷甲板11に形成された開口部(連通部:図示せず)を通して、水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13内に連通している。
【0059】
このような通風ダクト60内に、浸水防止壁40Fを設けている。浸水防止壁40Fは、通風ダクト60内で、水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13のうち船首尾方向で互いに隣り合う室間同士を隔てるよう、通風ダクト60の下端部の乾舷甲板11から上方に向かって延びるよう設けられている。
【0060】
したがって、上述した第三実施形態の船舶によれば、水密区画室S1,S2,…、水密区画室S11,S12,S13のうち、船首尾方向で互いに隣り合う室同士のいずれか一方が浸水した場合に、通風ダクト60内に設けられた浸水防止壁40Fによって、互いに隣り合う他方に水が侵入することを抑制でき、船舶1の復原性を確保することができる。
【0061】
さらに、複数の室でそれぞれ独立して通風ダクトを備えた場合には、それぞれの通風ダクトに空気を流動させる通風ファンを設けなければならない。これに対し、複数の室で通風ダクト60を共用することで、通風ファン(図示せず)も共用することができる。その結果、低コスト化、船舶1の軽量化を図るとともに、通風ダクト60や通風ファン(図示せず)の設計自由度を高めることができる。
【0062】
(その他の変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記第一〜第三実施形態およびそれらの変形例で、浸水防止壁40A〜40Fを例示したが、その高さについては何ら限定するものではない。浸水防止壁40A〜40Fは、上記第一〜第三実施形態およびそれらの変形例で図示した高さよりも低くしても良いし、乾舷甲板11の上方の甲板12よりもさらに上方に延びるよう設けても良い。例えば、浸水防止壁40A〜40Fは、例えば、最低300mm程度とし、人が跨げることができる程度の高さとしてもよい。
【0063】
また、浸水防止壁40A〜40Fは、隔壁21の鉛直上方に配置するようにしたがこれに限らない。浸水防止壁40A〜40Fは、互いに隣接する水密区画室S11の開口部33と、水密区画室S12の開口部34との間に配置すれば良い。
また、浸水防止壁40A〜40Fは、乾舷甲板11から鉛直上方に向かって延びるよう形成したが、これに限らない。浸水防止壁40A〜40Fは、乾舷甲板11から斜め上方に向かって延びるよう形成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、水密区画室S11を発電機室とし、水密区画室S12を主機室としたが、これに限らない。水密区画室S11を主機室とし、水密区画室S12を発電機室としてもよい。
【0065】
また、船舶1の船種は特定のものに限られず、例えばフェリー、RORO船(Roll−on/Roll−off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等、種々の船種を採用できる。