(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226870
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20171030BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20171030BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
A61B1/00 522
A61B1/00 735
G02B23/24 B
G02B23/26 C
G02B23/24 A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-537505(P2014-537505)
(86)(22)【出願日】2012年8月18日
(65)【公表番号】特表2014-534854(P2014-534854A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】EP2012003522
(87)【国際公開番号】WO2013060401
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】102011117389.0
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508209440
【氏名又は名称】シェリー ファイバーオプティック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Schoelly Fiberoptic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ホーファー
【審査官】
山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04862873(US,A)
【文献】
特開平03−023416(JP,A)
【文献】
特開2006−292990(JP,A)
【文献】
米国特許第04249814(US,A)
【文献】
特開平04−046323(JP,A)
【文献】
特開2011−070155(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公開第02720859(DE,A)
【文献】
特表2001−515224(JP,A)
【文献】
特開2002−162572(JP,A)
【文献】
特開2002−258180(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/047463(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/127827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体視のために設けられた2つの光学的な光路(3,4)を備え、該光路(3,4)の各々は、一区間において、該光路(3,4)に割り当てられた光透過性の材料(14)からなる光学素子(9,10,11,12)内を案内されており、前記材料(14)の境界面(15,16,17,18,19,20)に衝突点(21,22,23,24,25,26)において内側から接触するようになっている内視鏡(1)であって、
両光路(3,4)の衝突点(21,22,23,24,25,26)に、それぞれの衝突点(21,22,23,24,25,26)における反射特性を変更することが可能な、それぞれ1つの切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)が形成されており、前記境界面(15,16,17,18,19,20)は、前記衝突点(21,22,23,24,25,26)において粗面として形成されており、該粗面は、全反射を阻止することを特徴とする、内視鏡。
【請求項2】
前記切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)は、前記材料(14)の外側の、前記衝突点(21,22,23,24,25,26)の周囲(13)内の屈折率を変更するために設けられており、かつ/又は前記切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)は、反射切換位置と非反射又は吸収切換位置との間で切換可能に設けられている、請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
前記切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)は、それぞれ1つの切換素子(29,30)を有し、該切換素子(29,30)は、該切換素子(29,30)が前記境界面(15,16,17,18,19,20)に衝突点(21,22,23,24,25,26)において面接触する第1の切換位置と、該切換素子(29,30)が前記境界面(15,16,17,18,19,20)から離間している第2の切換位置との間で切換可能である、請求項1又は2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記切換素子(29,30)は、電気式、空気圧式又は液圧式に切換可能に設けられている、請求項3記載の内視鏡。
【請求項5】
前記光路(3,4)の前記光学素子(9,10,11,12)は、一体的に互いに結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の内視鏡。
【請求項6】
各光路(3,4)は、対応する切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)の反射切換位置において、両光路(3,4)のために共用される1つの撮像チップ(33)に向けて案内されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の内視鏡。
【請求項7】
各光路(3,4)は、対応する切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)の非反射又は吸収切換位置において、光路(3,4)が終端するか、又は周囲(13)に向けて外部へ変向されるようになっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の内視鏡。
【請求項8】
前記切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)を、同時に又は連結して、逆向きに動作するように、切り換えることが可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の内視鏡。
【請求項9】
前記切換素子(29,30)が前記境界面(16,19)に圧着されると、前記光路(3,4)が前記衝突点(22,25)において反射され、引き続き案内されるミラー面が生じるようになっている、請求項3又は4記載の内視鏡。
【請求項10】
前記光路(3,4)の各々は、前記切換可能なミラー面(27,28,33,34,35,36)の反射切換位置において、前記両光路(3,4)に共用される1つの撮像チップ(33)に導かれており、前記切換可能なミラー面(27,28)が同時に又は連結されて逆向きに切換可能であることにより、前記撮像チップ(33)はその都度前記光路(3,4)の一方しか撮像しないようになっており、前記切換素子(29,30)は、互いに別体に形成されているか、互いに一体的にか、又は間接的に互いに結合されて形成されている、請求項3又は4記載の内視鏡。
【請求項11】
前記光路(3,4)の各々は、対物レンズアッセンブリ(5,6)により、前記光学素子(9,10,11,12)を有するプリズムアッセンブリ(7,8)に向けて案内されていて、前記対物レンズアッセンブリ(5,6)は、互いに別体に形成されているか、ペア状に一体的に1つの共通のレンズボディに形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体視のために設けられた2つの光学的な光路を備え、光路の各々は、一区間において、光路に割り当てられた光透過性(optisch durchlaessig)の材料からなる光学素子内を案内されており、材料の境界面に衝突点において内側から接触するようになっている内視鏡に関する。
【0002】
このような立体視のための内視鏡は、公知であり、実証されている。この場合、光学的な光路は、画像奥行き情報をもった画像(3D画像)を獲得するために、左側の視野と右側の視野とに割り当てられている。
【0003】
内視鏡内の光損失をできる限り回避するために、しばしばミラーなしの光路の反射を可能にする光学素子が使用される。これらの光学素子は、光路が案内されている光透過性の材料から製造されており、光路は、材料の境界面に衝突点において内側から、つまり光学的に厚い(optisch dicht)媒質から光学的に薄い(optisch duenn)媒質への移行部において、光線が全反射されるように接触する。このことは、衝突点における反射特性が従来慣用のミラーと比較して改善されているという利点を有している。反射特性は、例えば反射率、特にそれぞれの光路により規定される入射方向に関する反射率により表示可能である。
【0004】
立体視のための内視鏡では、遠位の領域に、2つの光学的な光路から画像を交互に撮影する1つの撮像チップを配置することが一般的となっている。
【0005】
このために、2つの作動位置間で可変であり、光路を交互に撮像チップに向けて変向する機械的に位置調節可能なミラーを設けることが提案されている。このことは、ミラーの大きな旋回範囲と、ミラーの手間のかかる懸架とを要求する。
【0006】
本発明の課題は、立体視のための内視鏡の機械的な頑強性を高めることである。
【0007】
上記課題を解決するために、冒頭で述べた形態の本発明に係る内視鏡では、両光路の衝突点に、それぞれの衝突点における反射特性を変更することが可能な、それぞれ1つの切換可能なミラー面が形成されているようにした。この場合、光路の、撮像チップへの交互の案内が、機械的に旋回可能なミラーを操作する必要なしに、可能であることは、有利である。このことは、構造を単純化し、システム全体の機械的な頑強性を高める。好ましくは、切換可能なミラー面は、境界面の外面、つまり材料の外側に形成されている構造を有している。
【0008】
この構造は、ミラー面が反射状態と非反射状態との間で切換可能であるように設けられていてもよい。
【0009】
本発明の一態様において、切換可能なミラー面は、材料の外側の、衝突点の周囲内の屈折率を変更するために設けられていてもよい。この場合、簡単に衝突点における全反射の臨界角が可変であり、その結果、境界面が、光路が全反射される状態と、境界面が透過性であり、実質的に反射しない状態との間で切換可能であることは、有利である。これは、全反射の臨界角が、境界面の両側の屈折率の関係により規定されているからである。
【0010】
本発明の一態様において、切換可能なミラー面は、それぞれ、反射切換位置と非反射又は吸収切換位置との間で切換可能に設けられていてもよい。この場合、切換位置が非線形にその都度達成される光線の案内と関連しているので、切換位置間での切換のために、小さな切換距離が必要とされるにすぎないか、又は切換距離がまったく必要とされないことは、有利である。これにより、小さな切換行程により、光路の定性的な変更が達成可能である。
【0011】
本発明の一態様において、切換可能なミラー面は、それぞれ1つの切換素子を有し、切換素子は、切換素子が境界面に衝突点において面接触する第1の切換位置と、切換素子が境界面から離間している第2の切換位置との間で切換可能であるようになっていてもよい。このことは、境界面における全反射の発生に影響を及ぼす特に簡単な方法である。好ましくは、切換素子の屈折率は、周囲(例えば空気、真空、保護ガス又は液体)の屈折率とは異なっているか、又は切換素子は、光不透過性である。この場合、切換素子により、境界面の外側に配置された媒質が押し退け可能であることは、有利である。これにより、屈折率は、媒質が切換素子により置換可能であることにより、段階的に変更可能である。切換素子は、互いに別体に、互いに連結されて又は一体的に結合されて形成されていてもよい。
【0012】
本発明の一態様において、境界面は、衝突点において平滑面として形成されており、平滑面は、全反射を示すようになっていてもよい。これにより、境界面のために、全反射の臨界角が規定されている。この臨界角を超えると、全反射が発生する。平滑な面は、鏡面化されていてもよい。
【0013】
例えば光路は、材料内を、切換可能なミラー面の第1の切換位置で全反射され、別の切換位置で全反射されないか、又はそれどころか吸収されるように、衝突点に向けて案内されていてもよい。
【0014】
本発明の一態様において、境界面は、衝突点において粗面として形成されており、粗面は、全反射を阻止するようになっていてもよい。本態様において境界面は、光路が材料から周囲の空気又は周囲の媒質に拡散するような形で出る粗面を有して形成されていてもよい。粗面の凹凸が適当な屈折率を有する物質で満たされると、この変更された境界面において光路を反射させることが可能である。
【0015】
本発明の一態様において、切換素子は、電気式に切換可能に設けられていてもよい。この場合、切換可能なミラー面の制御と、切換のために必要なエネルギの供給とが、特に簡単に実現可能であることは、有利である。
【0016】
択一的には、切換素子は、空気圧式又は液圧式に切換可能に設けられていてもよい。この場合、切換可能なミラー面のための給電部が省略可能であることは、有利である。
【0017】
特に単純かつコンパクトな構造を達成するために、光路の光学素子は、一体的に互いに結合されていてもよい。
【0018】
光学素子を機械的に連結解除することができるように、光学素子は、互いに別体に形成されていてもよい。
【0019】
両光路を交互に、共用される1つの撮像チップに向けて案内するために、各光路は、対応する切換可能なミラー面の反射切換位置において、両光路のために共用される1つの撮像チップに向けて案内されていてもよい。例えば、切換可能なミラーにおける反射切換位置は、衝突点において光路のために全反射が生じる切換位置であってよい。
【0020】
各光路は、対応する切換可能なミラー面の非反射又は吸収切換位置において、光のトラップ(Lichtfalle)に向けて案内されていてもよい。この場合、両光路が、干渉し合わず別々に、例えば交互に1つの撮像チップにおいて捕捉可能であることは、有利である。
【0021】
立体視のために、切換可能なミラー面を、同時に又は連結して、好ましくは逆向きに動作するように連結して、切り換えることが可能な切換論理が設けられていてもよい。この場合、切換論理は、切換ミラーを交互に切り換えるように設けられていてもよい。この場合、切換可能なミラー面間の連結が簡単に設けられ、この連結が切換可能なミラー面の同時の切換を招くので、常に一方の光路だけが、1つの撮像チップ又は共用される1つの光学系統に向けて変向されていることは、有利である。この場合、その都度他方の光路は、その内部を案内される光が妨げとならないように、他の方向に変向されているか、又は吸収されていることができる。
【0022】
以下に、本発明について、複数の実施の形態を基に詳説するが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。別の実施の形態は、特許請求の範囲に記載の単数又は複数の特徴の相互の組み合わせ及び/又は実施の形態の単数又は複数の特徴との組み合わせから生じる。
【0023】
図面は、本発明の原理を説明するために著しく簡略化した概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】互いに別体に形成された光学素子を備える本発明に係る内視鏡を示す図である。
【
図2】互いに一体的に結合された光学素子を備える本発明に係る別の内視鏡を示す図である。
【0025】
図1は、著しく簡略化した図で、全体として符号1を付した本発明に係る内視鏡を示している。
【0026】
この内視鏡1のうち、本発明を実現するために直接互いに協働する構成部材のみを図示し、そのまま使用することが可能な内視鏡を実現するために必要な、それ自体としては公知の構成部材については、図を簡略化するために、省略した。
【0027】
図1に示した内視鏡1の構成部材は、例えば遠位の区間において硬性の内視鏡を形成するための管状のハウジングの遠位の端部2に配置可能である。これらの構成部材は、軟性の内視鏡1のチューブ状のハウジングの遠位の端部2に配置されていてもよい。
【0028】
遠位の端部2は、
図1で見て上側に位置する。
【0029】
内視鏡1には2つの光路3,4が設けられており、両光路3,4により画像が遠位の端部2において捕捉可能である。
【0030】
光路3,4は、立体視のために設けられている。光路3は、左側の視野に対応し、光路4は、右側の視野に対応する。
【0031】
光路3,4の各々は、対物レンズアッセンブリ5,6によりプリズムアッセンブリ7,8に向けて案内される。対物レンズアッセンブリ5,6は、互いに別体に形成されていても、ペア状に、それぞれ1つの左側の素子と1つの右側の素子とを備えて、一体的に1つの共通のレンズボディに形成されていてもよい。対物レンズアッセンブリの素子を一体的に形成すると、より簡単な組立が可能である。
【0032】
プリズムアッセンブリ7,8は、光学素子9,10,11,12を有している。これらの光学素子9,10,11,12は、周囲13の屈折率より大きい屈折率を有する光透過性の材料14、例えばガラスからなっている。
【0033】
材料14の屈折率は、例えば空気その他の気体又は真空であってもよい周囲13の屈折率より大きいので、光学素子9,10,11,12の材料14の境界面15,16,17,18,19,20において、ある特定の入射角から全反射が起こる。
【0034】
全反射は、光路3,4が、光学素子9,10,11,12の光透過性の材料14を通して、境界面15,16,17,18,19,20に衝突点21,22,23,24,25,26において内側から接触するように案内されることにより、光路3,4の光線の案内のために利用される。光路3,4内の光は、衝突点21,22,23,24,25,26において、材料14より光学的に薄い媒質、つまり周囲13へ出ることができず、材料14内で完全に反射される。
【0035】
衝突点22,25の周囲には、境界面16,19に、それぞれ1つの切換可能なミラー面27,28が形成されている。
【0036】
本実施の形態では、切換可能なミラー面27は、左側の光路3に割り当てられ、切換可能なミラー面28は、右側の光路4に割り当てられている。これにより、光路3,4にそれぞれ1つの切換可能なミラー面27,28が割り当てられている。
【0037】
切換可能なミラー面27,28により、衝突点22あるいは25における反射特性は変更可能である。
【0038】
これにより、切換可能なミラー面27,28により、光路3,4が衝突点22,25において反射されるか否かが制御される。
図1は、両光路3,4について、光路3,4が衝突点22,25において反射される状態を示している。しかし、この状態が使用時に生じることはなく、むしろ、常に一方の光路3,4のみが、それぞれの衝突点22,25において反射され、他方の光路4,3は、反射されない。
【0039】
反射特性の変更は、材料14の外側において衝突点22,25の周囲13における屈折率が変更されることにより達成される。
【0040】
この屈折率の変更は、切換素子29,30により達成される。
【0041】
切換素子29、例えば薄いシートは、第1の切換位置と第2の切換位置との間で切換可能である。
【0042】
第1の切換位置で切換素子29は、境界面16の外面に面接触する。このことは、切換素子29の屈折率を適当に選択しておけば、光路3に沿って入射した光線のために全反射がもはや生じないようにする。切換素子29は、境界面16の周囲13の空気を押し退け、これにより境界面16の外側及び近傍の屈折率を変化させる。これにより、全反射の臨界角は、変化するか、又はそれどころか完全に消滅する。
【0043】
これにより光路3は、第1の切換位置では、衝突点22の箇所で中断される。これにより第1の切換位置は、切換可能なミラー面27の吸収又は非反射切換位置に相当する。
【0044】
第2の切換位置で切換素子29は、境界面16から離間して配置されている。その結果、平滑な面として形成された境界面16には、全反射が生じる。今度は、境界面16の周囲13、つまり境界面16と切換素子29との間の空間は、空気で充満される。空気は、材料14より低い屈折率を有している。これにより、切換素子29の第2の切換位置では、対物レンズアッセンブリ5,6を介して捉えられた光は、光路3に沿って、
図1に示すように、衝突点22より先に案内される。これにより、第2の切換位置は、切換可能なミラー面27の反射切換位置に相当する。
【0045】
光学素子12には、相応の形式で、切換可能なミラー面28の切換素子30が形成されている。切換素子30も、切換素子30が境界面28に面接触する吸収切換位置としての第1の切換位置と、切換素子30が境界面28から離間する反射切換位置としての第2の切換位置との間で切換可能である。
【0046】
これにより、両切換位置間での切換により、光路4は、衝突点25において開通又は遮断可能である。
【0047】
切換素子29,30は、例えば電気的に、それ以上の説明はしない圧電素子を介して制御可能であり、両切換位置間で切換可能である。切換素子29,30は、互いに別体に形成されていても、互いに一体的にか、又は間接的に互いに結合されて形成されていてもよい。この結合により、簡単に、切換可能なミラー面27における両切換位置間での切換が、切換可能なミラー面28における両切換位置間での反対又は逆向きの切換と同時に実施されることが達成可能である。
【0048】
切換素子29,30は、空気圧式又は液圧式に切換可能に形成されていてもよい。
【0049】
衝突点22,25での材料14から周囲13への移行部における反射特性を介した光路3,4の制御は、切換素子29,30がそれぞれ、光路3,4を遮断又は開通するのに、小さな切換距離を移動するだけで済むという利点を有している。
【0050】
境界面16,19は、別の実施の形態では択一的に粗面として形成されていてもよい。この場合、対物レンズアッセンブリ5,6を介して光路3,4に沿って入射した光は、衝突点22,25において、それぞれの切換素子29,30が境界面16,19に面接触せず、境界面16,19から離間して配置されているとき、周囲13に拡散放射される。
【0051】
本実施の形態では、切換素子29,30が境界面16,19に圧着されると、切換素子29,30の材料を適当に選択しておけば、光路3,4が衝突点22,25において
図1に示した実施の形態と同様に反射され、引き続き案内されるミラー面が生じる。
【0052】
それゆえ、本実施の形態では、切換素子29(あるいは30)が境界面16(あるいは19)に面接触する切換位置が、反射切換位置である一方、切換素子29(あるいは30)が境界面16(あるいは19)から離間して配置されている切換位置は、吸収切換位置である。
【0053】
光線の案内を明示するために、
図1は、切換可能なミラー面27,28が反射切換位置にあるときの光路3,4を示している。
【0054】
図1に示した反射切換位置において、光路3あるいは4は、レンズ31あるいは32を介して、両光路3,4に共用される1つの撮像チップ33に導かれる。レンズ31,32は、互いに別体に形成されていても、一体的に1つの共通のレンズ体に形成されていてもよい。一体的な構成は、より簡単な組立の利点を有している。
【0055】
切換可能なミラー面27,28のそれぞれの吸収切換位置において、衝突点22,25は、光路3,4が終端するか、又は周囲13に向けて外部へ変向される光のトラップを形成する。
【0056】
これにより、切換可能なミラー面27,28の切換位置次第で、撮像チップ33は、対物レンズアッセンブリ5を介して入射した左側の画像か、又は対物レンズアッセンブリ6を介して入射した右側の画像を撮影する。
【0057】
これらの撮影された画像は、次に、立体画像をデジタル式又は電子式に提供するために、それ自体は公知の形式で電子式又はデジタル式に処理される。
【0058】
撮像チップ33がその都度、光路3又は光路4の一方の画像しか撮影しないように、それ以上の説明はしない切換論理が設けられている。この切換論理により、切換可能なミラー面27,28は、同時に又は連結されて逆向きに切換可能である。この場合、逆向きの切換とは、一方の切換可能なミラー面における反射切換位置から非反射切換位置への切換が、他方の切換可能なミラー面における非反射切換位置から反射切換位置への逆向きの切換を伴うことを意味している。
【0059】
図2は、本発明に係る別の内視鏡1を、著しく簡略化した原理図で示している。
図2には、やはり、本発明の原理を実現するために直接協働する構成部材しか示していない。その他の構成部材は、簡明性のため省略した。
【0060】
図2において、
図1に示した実施の形態と機能的又は構造的に同種又は機能同一の構成部材には、同一の符号を付し、再度、個別に説明することはしない。
【0061】
図2に示した実施の形態では、左側の光路3は、左側の対物レンズアッセンブリ5を介して一体的な光学素子9の材料14内に案内される。
【0062】
光路3は、材料14内で境界面16及び17の衝突点22及び23において全反射される。次に光路3は、光学素子9を後にし、撮像チップ33に衝突する。
【0063】
境界面16には、再び切換可能なミラー面27が形成されている。切換可能なミラー面27は、光路3を衝突点22において遮断又は開通可能である。切換可能なミラー面27は、例えば
図1に示し、かつ
図1を参照しながら説明したように形成可能である。
【0064】
これにより、切換可能なミラー面27の遮断、吸収又は非反射切換位置において、光は、光路3及び対物レンズアッセンブリ5を介して撮像チップ33まで到達しない。これに対して、切換可能なミラー面27の反射又は開通切換位置において、対物レンズアッセンブリ5を介して捉えられた光は、撮像チップ33に導かれる。
【0065】
同様に、右側の光路4は、右側の対物レンズアッセンブリ6を介して光学素子9内に案内され、光学素子9の材料14内で境界面19,20の衝突点25,26において全反射される。
【0066】
境界面19には、光学素子9の外面に、切換可能なミラー面28が形成されている。切換可能なミラー面28により、衝突点25における反射特性は、変更可能である。
【0067】
切換可能なミラー面28は、2つの切換位置間で切換可能である。反射切換位置では、衝突点25において反射が実施される図示の光路4が形成されている一方、吸収又は非反射切換位置では、光路4は、衝突点25において遮断され、それ以上の説明はしない光のトラップにおいて光学素子9の外部へ変向されている。切換可能なミラー面28は、切換可能なミラー面27と機能的かつ構造的に同様に形成されている。
【0068】
これにより、切換可能なミラー面27,28の交互の制御又は切換により、光路3又は光路4が撮像チップ33に向けて案内可能である。
【0069】
切換可能なミラー面27,28は、例えば屈折率が電気的に、又はその他の方法により変更可能な材料からなる層を有していてもよい。択一的又は付加的に、切換可能なミラー面27,28は、それぞれ、それ以上の説明はしない切換素子を有していてもよい。この切換素子は、
図1に示した実施の形態と同様に、境界面16,19と接触可能であり、衝突点22あるいは25における反射を可能にしたり、阻止したりすることができる。
【0070】
切換可能なミラー面27,28は、択一的又は付加的に、
図1及び
図2において、その他の境界面15,16,17,18,19,20のうちの単数又は複数の境界面に配置されていてもよい。こうして、付加的又は択一的なミラー面33,34,35,36が形成されている。これらのミラー面33,34,35,36は、既に説明した切換可能なミラー面27,28と機能的かつ構造的に同様に形成されている。
【0071】
図2には、光路3,4の、切換可能なミラー面が形成されている光学素子が、一体的に結合され、1つの共通の光学素子9として形成されていることも看取可能である。これにより、光学素子9は、少数の作業ステップで組立可能である。
【0072】
最後に両図には、光路3,4が、対物レンズアッセンブリ5,6及び境界面15,16,17,18,19,20の配向により、一区間において、プリズムアッセンブリ7,8の光学素子9,10,11,12の材料14内を案内されていることが看取可能である。
【0073】
別の実施の形態では、切換可能なミラー面27,28,33,34,35,36を担持していない境界面15,17,18,20の幾つか又はすべてには、光路3,4を反射させる外面のコーティングが施されている。このコーティングは、例えばそれぞれの境界面15,17,18,20における入射角が全反射にとって不利な場合に施される。
【0074】
内視鏡1において、立体視のために2つの光路3,4を、各々の光路3,4が、衝突点22,25において内側から、周囲13と比較して光学的に厚い材料14の境界面16,19に導かれるようになっており、光路3,4の各々が、それぞれの衝突点22,25における反射特性の変更により開通可能かつ遮断可能であるように形成することが提案される。