特許第6226891号(P6226891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226891股関節インプラント用のセラミック製のカップインサートを検査する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226891
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】股関節インプラント用のセラミック製のカップインサートを検査する装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A61F2/46
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-560349(P2014-560349)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-512679(P2015-512679A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013054469
(87)【国際公開番号】WO2013131938
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】102012203513.3
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス フローア
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク ベアトマーリング
(72)【発明者】
【氏名】キム ラース ホイスラー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレナ グラーフ
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061069(JP,A)
【文献】 特表2002−525569(JP,A)
【文献】 特表2000−514324(JP,A)
【文献】 実開昭59−087648(JP,U)
【文献】 実開昭63−097843(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/32
A61F 2/46
A61F 2/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節インプラントのセラミック製のカップインサート(3)を検査する装置であって、収容装置(5)と、押圧部材(6)と、選択的にプランジャ(7)とを備え、前記収容装置(5)は、前記カップインサート(3)を収容するための位置決め範囲(10)を備えた切欠き(9)を有し、該切欠き(9)は前記位置決め範囲(10)に収容円錐部(11)を有する、股関節インプラントのセラミック製のカップインサートを検査する装置において、前記位置決め範囲(10)で前記収容装置(5)と前記カップインサート(3)との間に、環状で延性のアダプタ部材(8)が配置されており、該アダプタ部材(8)は、前記収容円錐部(11)に接触する円錐形の外面と、前記カップインサート(3)に接触する内面とを有しており、前記収容装置(5)と前記アダプタ部材(8)との間の摩擦が、前記アダプタ部材(8)と前記カップインサート(3)との間よりも低く形成されており、これにより、前記押圧部材(6)により前記カップインサート(3)に荷重が加えられると、前記収容装置(5)と前記アダプタ部材(8)との間で相対運動が生じるようになっていることを特徴とする、股関節インプラントのセラミック製のカップインサートを検査する装置。
【請求項2】
前記収容円錐部(11)が、少なくとも前記位置決め範囲(10)において研磨されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記アダプタ部材(8)が、黄銅から成っている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記収容装置(5)が、表面焼入れされた鋼から成っている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記アダプタ部材(8)の円錐形の外面と、前記切欠き(9)の収容円錐部(11)との間に、かつ/または前記アダプタ部材(8)の内面と前記カップインサート(3)との間に、角度ギャップX゜が設けられており、該角度ギャップX゜は、前記収容円錐部(11)の、前記カップインサート(3)に面した上端部を起点として下方に向かって増大している、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記角度ギャップX゜は、30角度秒〜20角度分ある、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記角度ギャップX゜は、8角度分である、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記押圧部材(6)に力を付与するためのプランジャ(7)が設けられており、該プランジャ(7)の材料が、前記押圧部材(6)の材料よりも硬質であり、記プランジャ(7)は、焼入れされた鋼から成っており、前記押圧部材(6)は、プラスチックら成っている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、セラミック製のカップインサートを検査する装置に関する。
【0002】
市場には、天然の股関節を置換するための多数のプロステーシス・システムが存在している。これらのプロステーシス・システムは、図1に図示されているように、一般にボールヘッド2と連結されたステム1と、カップインサート3と連結された人工の寛骨臼カップ4とから成っている。ステム1と寛骨臼カップ4とは、たいてい大腿骨もしくは寛骨内への生着によって身体に結合されていて、ボールヘッド2もしくはカップインサート3のためのキャリヤとなる。ボールヘッド2は、カップインサート3の椀形の凹部内に回転可能に支承されていて、このカップインサート3と共に滑り対偶を形成している。滑り対偶としては、種々の材料、とりわけセラミックスが使用される。滑り対偶の寛骨臼側には、上で説明したように、モジュール式のシステムが存在している。すなわち、寛骨臼カップとカップインサートとは別個に提供され、これに相応して現場ではじめて嵌め合わされる。その他に、モノリシック式のシステムも存在し、モノリシック式のシステムは、唯一つの寛骨臼コンポーネントしか有しておらず、直接に寛骨内に挿入される。さらに、予め嵌め合わされた予嵌合式のシステムも存在し、予嵌合式のシステムでは既に工場側で寛骨臼カップとカップインサートとが互いに結合される。
【0003】
セラミック製の寛骨臼の股関節インプラントの所要の最小強度は、しばしばプルーフテスト(100%テスト)により保証される。この場合、寛骨臼の股関節インプラントは機械的に負荷される。このことは、欧州特許出願公開第0921771号明細書または独国特許出願公開第19841826号明細書に記載されている。100%テストとは、構成部分に出荷前に機械的な負荷を加え、そして臨界的な欠陥を有する構成部分はプルーフテストにおいて破損するので、十分に高い機械的強度を有する構成部分だけがプルーフテストに合格することを意味する。
【0004】
これまで、寛骨臼の股関節インプラントの多くの固有のジオメトリ(幾何学的形状)のために、種々様々なテスト構造物が使用されてきた。このことは、多数のテスト構造物を必要とし、ひいては大きな保管容量をも必要とする。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、請求項1の上位概念部に記載の装置を改良して、あらゆる寛骨臼の股関節インプラント(モノリシック式、モジュール式、予嵌合式)に合わせて多目的に使用することができ、ひいては目下の全ての装置の代わりに使用することができるような装置を提供することである。
【0006】
本発明によれば、この課題は請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0007】
位置決め範囲で収容装置とカップインサートとの間に、環状で延性のアダプタ部材が配置されており、このアダプタ部材が、収容円錐部に接触する円錐形の外面と、カップインサートに接触する内面とを有しており、収容装置とアダプタ部材との間の摩擦が、アダプタ部材とカップインサートとの間よりも低く形成されていることにより、荷重を加えられると、主として収容装置とアダプタ部材との間に相対運動が生ぜしめられる。このことは、円錐形に形成された収容装置もしくは収容円錐部との組合せにおいて、半径方向に作用する力成分(分力)の増大を保証する。これにより、本発明による装置は、あらゆる寛骨臼の股関節インプラント(モノリシック式、モジュール式、予嵌合式)に合わせて多目的に使用され得る。
【0008】
カップインサートの外側輪郭における、目標とされるべき一定の応力曲線もしくは連続的な応力変化に基づき、カップインサートもしくはインプラントは、生体内での条件下に受けるほぼ全ての荷重状況を再現することができる。
【0009】
収容円錐部が、少なくとも位置決め範囲において研磨されていると好適である。これにより、アダプタ部材は収容円錐部もしくは収容装置に沿って容易にスライドするようになる。
【0010】
本発明のさらに別の実施態様では、アダプタ部材が、黄銅から成っており、収容装置が、表面焼入れされた鋼から成っている。
【0011】
アダプタ部材の円錐形の外面と、切欠きの収容円錐部との間に、かつ/またはアダプタ部材の内面とカップインサートとの間に、角度ギャップX゜が設けられており、該角度ギャップX゜は、前記収容円錐部の、カップインサートに向けられた上端部を起点として下方に向かって増大していると好適である。
【0012】
これにより、収容面もしくは接触面が、荷重増大を受けて収容装置とアダプタ部材との間および/またはアダプタ部材とカップインサートとの間で、カップインサートの端面を起点として形成されることが保証されている。角度ギャップX゜は、カップインサートが、あとからの生体内での使用に相応して負荷されることを確保する。付加的に、引張応力が既に円錐範囲において形成される。
【0013】
前記角度ギャップは、引張応力が、端面から、円錐範囲を介して裏側の方向に形成され/続くことを確保する。このことは、種々異なる構成部分に対して種々異なっていてよい。前記角度ギャップX゜は、30角度秒〜20角度分、極めて特に好適には6〜10角度分である。1実施態様では、特に8角度分が有利であることが判った。荷重負荷が増大するにつれて、この角度ギャップが埋められることが望ましく、それゆえに、角度ギャップの上限が設定される。許容限界値は、事情によっては負荷高さに関連している。
【0014】
押圧部材に力を付与するためのプランジャを有する実施態様では、プランジャの材料が、押圧部材の材料よりも硬く、この場合、有利にはプランジャは、焼入れされた鋼から成っており、押圧部材は、プラスチックから成っている。テフロンが好適である。
【0015】
すなわち、インプラントとも呼ばれるカップインサートは、プルーフテストにおいて収容装置を介して位置決めされ、引き続きカップインサートに荷重が加えられる。インプラントと収容装置との間には、延性の材料から成るアダプタ部材が位置している。これにより、アダプタ部材がインプラントに自動的に適合し得ることが確保されている。理想的には、アダプタ部材が黄銅から成り、収容装置が、表面焼入れされた鋼から成っている。収容装置の、アダプタ部材とインプラントとが位置決めされる範囲は、円錐形に形成されている。これにより、導入された力は、垂直方向に作用する成分(分力)と、半径方向に作用する成分(分力)とに分割される。収容装置の材料は位置決め範囲において、収容装置とアダプタ部材との間の摩擦が、アダプタ部材とインプラントとの間よりも低くなるように加工されている。理想的な事例では、この範囲が研磨されていることが望ましい。これにより、荷重を受けると、主として収容装置とアダプタとの間に相対運動が生ぜしめられる。このことは、円錐形に形成された収容装置との組合せにおいて、半径方向に作用する力成分の増大を保証する。
【0016】
実際の荷重導入は、インプラントの端面または椀形の凹部を介しても、アダプタ部材を介しても、行なわれ得る。しかし理想的には、荷重はプランジャと、このプランジャに取り付けられた押圧部材とを介して導入され、この押圧部材はインプラントの内側輪郭に適合されている。プランジャに適応される押圧部材の材料は、荷重を受けてインプラントの正確な内側輪郭への適合を保証するために十分な延性であることが望ましい。理想的には、押圧部材はテフロンから成っている。プランジャは押圧部材よりも硬くなければならず、好ましくは焼入れされた鋼から成っている。したがって、外側輪郭には、できるだけ一定の応力曲線が生ぜしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】公知の股関節インプラントの概略図である。
図2】股関節インプラントのセラミック製のカップインサートを検査する本発明による装置を示す断面図である。
【0018】
図1には、公知の股関節インプラントが図示されている。この股関節インプラントは明細書冒頭で説明した通りである。
【0019】
図2には、股関節インプラントのセラミック製のカップインサート3を検査する本発明による装置が図示されている。この装置は、収容装置5と押圧部材6とプランジャ7とから成っている。収容装置5内には、カップインサート3を収容するための位置決め範囲10を備えた切欠き9が配置されている。この切欠き9は位置決め範囲10に収容円錐部11を有する。
【0020】
収容装置5とカップインサート3との間の位置決め範囲10では、黄銅から成る環状で延性のアダプタ部材8が配置されている。このアダプタ部材8は、収容円錐部11に接触する円錐形の外面と、カップインサート3に接触する内面とを備えている。収容装置5とアダプタ部材8との間の摩擦は、アダプタ部材8とカップインサート3との間よりも低く形成されている。
【0021】
択一的な別の実施形態(図示しない)では、アダプタ部材の内面とカップインサートとの間にも、またはアダプタ部材の内面とカップインサートとの間にのみ、角度ギャップが配置されていてよい。
【0022】
カップインサート3を検査する場合、このカップインサート3は環状のアダプタ部材8を介して収容装置5内に挿入される。引き続き、プランジャ7を介して押圧部材6に荷重が加えられる。カップインサート3が破損した場合、このカップインサート3には欠陥があったことになる。カップインサート3が破損しなければ、加えられた力よりも下の力ではこのカップインサート3が破損しないことが確保されている。
【0023】
前記装置において重要となるのは、収容装置とアダプタ部材との間の摩擦が、アダプタ部材とカップインサートとの間よりも低く形成されていることである。これによって、荷重が加えられると、主として収容装置とアダプタ部材との間で相対運動が生ぜしめられる。これにより、カップインサートの外側輪郭においてできるだけ一定の応力経過が形成されるので、前記装置はあらゆるカップインサートのために使用され得る。
図1
図2