特許第6226896号(P6226896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226896衝突確信度に基づいてブレーキ介入を最小限にするための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226896
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】衝突確信度に基づいてブレーキ介入を最小限にするための方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20171030BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60T7/12 C
   G08G1/16 C
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-15673(P2015-15673)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-140181(P2015-140181A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】61/933,083
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/603,490
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド レスリー アグニュー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ラニア フレッチャー
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−308036(JP,A)
【文献】 特開2012−144158(JP,A)
【文献】 特開2011−227582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
G08G 1/16
B60W 30/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の減速を制御する方法において、
少なくとも1つのセンサによって、前記車両に近接するオブジェクトを検出及び監視し、
前記車両の動きを監視し、
前記車両内に設けられた制御装置によって、前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率を表している衝突確信度値を継続的に計算し、
速度プロファイルを、現在の衝突確信度値に基づいて決定する際に、
衝突確率の増加を表す前記衝突確信度値の増加時の前記速度プロファイルは、より小さい衝突確率を表している現在の衝突確信度値に基づいて決定された速度プロファイルに比べて、前記オブジェクトからより遠く離れた所から前記車両の減速操作を開始するよう規定するように決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記速度プロファイルは、前記車両と求めた衝突位置との間の距離に亘って実施される減速操作を、関連する制動操作が、前記距離に亘って、前記車両を前記衝突位置よりも前に停止させる最小の車両減速度を提供するように規定する、
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項3】
前記車両のブレーキを自動制動システムによって作動させ、
前記自動制動システムは、前記車両のブレーキを作動させるために電子ブレーキシステムへと命令を送信する、
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項4】
前記センサからのデータを制御装置によって分析し、検出された前記オブジェクトの特性と、前記オブジェクトが前記車両にとって回避すべき障害物であるか否かとを決定する、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記オブジェクトの動きの予測モデルを生成する、
なお、当該オブジェクトの動きの予測モデルは、前記オブジェクトの現在の位置及び動きに基づいた関連する確率値を有する、未来の時点における前記オブジェクトの可能な位置範囲を含むものである、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記車両の動きを表している車両信号を監視することによって、車両経路を決定するための前記車両の予測モデルを生成する、
なお、当該車両の予測モデルは、関連する確率値を有する、可能な車両経路の範囲を画定し、かつ、当該車両の予測モデルは、前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率を求めるために、当該車両の予測モデルを、前記オブジェクトの動きの予測モデルに関連させる、
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記オブジェクトとの前記衝突確率が変化すると、減速操作中に前記衝突確信度値を再計算し、
再計算された前記衝突確信度値に基づいて、新しい望ましい速度プロファイルを決定し、
前記新しい望ましい速度プロファイルに基づいて、前記車両のブレーキを作動させる、
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項8】
前記衝突確信度値が増加するときには、前記衝突確信度値に基づいて選択された予め定められた制動曲線のセットに基づき、制動力をより早期に、より小さい減速度値で、より長い期間に亘って作動させ、
前記衝突確信度値が減少するときには、前記衝突確信度値に基づいて選択された予め定められた制動曲線のセットに基づき、制動力をより後の時点に、より大きい減速度値で、より短い期間に亘って作動させる、
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項9】
車両用自動制動システムにおいて、
前記車両を減速させるための車輪ブレーキを作動させることの可能な電子ブレーキシステムと、
前記車両内に設けられた制御装置とを含み、
当該制御装置は、
車両の動きを監視させるための命令と、
後退時衝突回避システムの少なくとも1つのセンサによって、前記車両に近接するオブジェクトを検出させるための命令と、
前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率を表している衝突確信度値を計算させるための命令と、
前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突を回避する前記車両の望ましい速度プロファイルを当該制御装置によって決定させるための命令と、
前記衝突確信度値が増加するときには、前記衝突確信度値に基づいて選択された予め定められた速度プロファイルのセットに基づき、制動力をより早期に、より小さい減速度値で、より長い期間に亘って作動させるための命令と
を生成することを特徴とする車両用自動制動システム。
【請求項10】
前記制御装置はさらに、前記衝突確信度値が減少するときには、前記衝突確信度値に基づいて選択された予め定められた速度プロファイルのセットに基づき、制動力をより後の時点に、より大きい減速度値で、より短い期間に亘って作動させるための命令を含み、
前記制御装置はさらに、前記制御装置によって決定された望ましい前記速度プロファイルに基づき、減速操作中に亘って、前記車両のブレーキを作動させるための命令を含む、
ことを特徴とする請求項記載の自動制動システム。
【請求項11】
前記制御装置はさらに、
前記オブジェクトの現在の位置及び動きに基づいて、将来の時点における前記オブジェクトの可能な位置範囲を含む、前記オブジェクトの予測モデルを生成させるための命令と、
可能な車両経路の範囲を含む、前記車両の予測モデルを生成させるための命令と、
前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率を求めるために、前記車両の予測モデルを、前記オブジェクトの動きの予測モデルに関連させるための命令と、
を含むことを特徴とする請求項記載の車両用自動制動システム。
【請求項12】
前記制御装置はさらに、
前記オブジェクトとの前記衝突確率が変化すると、前記車両の減速中に前記衝突確信度値を再計算させるための命令と、
計算された前記衝突確信度値に基づいて、新しい望ましい速度プロファイルを決定させるための命令と、
前記新しい望ましい速度プロファイルに基づいて、前記車両のブレーキを作動させるための命令と、
を含むことを特徴とする請求項11記載の車両用自動制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年1月29日に出願された米国仮出願第61/933,083号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本開示は自動車に関し、特に自動車用の運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
センサ技術の進歩により、自動車用安全システムを改善することが可能となっている。衝突を検出及び回避するための装置及び方法が利用可能になりつつある。このような運転者支援システムは、車両に配置されたセンサを使用して、差し迫る衝突を検出する。このシステムは、様々な運転状況を運転者に警告して、衝突を防止又は最小限にすることができる。さらには車両の後進時に障害物となり得るものを運転者に警告するためにも、センサ及びカメラが使用される。このようなシステムは、自動走行又は半自動走行の状況下で運転される車両の安全性を向上させるために特に有用である。
【0004】
本明細書に記載される背景技術の説明は、概して本開示の背景を提示することを目的とする。その研究が本背景技術の章に説明される範囲にとどまる、本明細書に記名される発明者の研究、並びに、その他の点でも出願時における先行技術として見なされ得ない、背景技術の説明は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められるものではない。
【0005】
概要
本開示の車両用自動制動システムは、他の可能なもののうち、車両を減速させるための車輪ブレーキを作動させることの可能な電子ブレーキシステムと、制御装置とを含む。前記制御装置は、前記車両の動きを監視させるための命令、及び、後退時衝突回避システムの少なくとも1つのセンサによって、前記車両に近接するオブジェクトを検出させるための命令を含む。前記制御装置はさらに、前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率に基づいて衝突確信度値を求めさせるための命令を含む。前記制御装置はさらに、前記車両を障害物と衝突する前に停止させるために、前記車両を減速させるための望ましい速度プロファイルを決定させるための命令を含む。
【0006】
車両の減速を制御する本開示の方法においては、他の可能なもののうち、少なくとも1つのセンサによって前記車両に近接するオブジェクトを検出及び監視し、前記車両の動きを監視し、前記車両内に設けられた制御装置によって、前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突確率を表している衝突確信度値を継続的に計算する。前記制御装置は、前記車両と前記オブジェクトとの間の衝突を回避する、前記車両の速度プロファイルを、前記衝突確信度値に基づいて決定させるための命令を含む。
【0007】
種々の実施例は、図面に示された特定の構成要素を有しているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されるものではない。種々の実施例のうちの1つの実施例のいくつかの特徴又は構成要素を、種々の実施例のうちの別の1つの実施例の特徴又は構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0008】
本明細書に開示される特徴及びその他の特徴は、以下の説明及び図面から非常に良好に理解することができる。以下に、各図を簡単に説明する。
【0009】
図面の簡単な説明
本開示は、以下の詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の自動制動システムを使用する車両の概略上面図である。
図2】1つの実施例に基づく自動制動システムによって生成された、可能性のあるオブジェクトと、可能な車両経路とを示す概略図である。
図3】制動操作のための複数の速度曲線を示す線図である。
図4】制動操作のための速度曲線に対する衝突確信度による影響を示す線図である。
図5図4の制動操作のための減速曲線に対する衝突確信度による影響を示す線図である。
図6】1つの実施例に基づく自動制動システムの処理ステップを概略的に示すフローチャートである。
【実施例】
【0011】
発明の詳細な説明
以下の説明は本質的に単なる例示であり、本開示、本開示の適用、又は、本開示の使用を限定することを意図するものではない。明確性を期するため、図面においては、同様の構成要素を識別するために同一の参照符号が使用される。
【0012】
図1を参照すると、運転者支援システム、特に自動制動システム12を有する車両10が概略的に図示されている。自動制動システム12は、自動走行及び半自動走行の車両運転中に車両10を制動するために使用することができる。特に自動制動システム12は、車両10の後退走行運転中に使用することができる。明細書全体に亘って、相対的な前進方向及び後退方向は、車両10の操作時に当該車両10の操作者が主として向かい合うこととなる方向に関連している。
【0013】
自動制動システム12は、後退時衝突回避システム14や電子制御ブレーキシステム(EBS)16のような他の安全システムと共に使用することができる。各システム12,14,16は、共通の制御装置又は別個の制御装置18を使用することができる。
【0014】
自動制動システム12は、制動イベントを発生させる必要が生じた場合に、車両10が前進方向に走行しているのか、又は後退方向に走行しているのかを判定する。自動制動システム12、後退時衝突回避システム14、又は類似のシステムは、オブジェクト34が検出されると衝突確率を求める。衝突確率は、衝突確信度値を求めるために使用される。オブジェクト34と衝突する可能性が高くなればなるほど、衝突確信度値は高くなる。衝突確率が所定の閾値を上回った場合には、制御装置18は、少なくとも1つの車両衝突回避行動が必要であることを指示する。必要とされる行動は、オブジェクトが検出された場合における運転者への警告の形態とすることができる、及び/又は、車両を減速又は停止するための自動制動システム12の作動とすることができる。車両10内に警告装置22を設置することができ、警告信号22は、オブジェクト34の存在を運転者に警告する照明光のような信号又は可聴信号を含むことができる。
【0015】
引き続き図1を参照しながら図2を参照すると、本実施例に基づく自動制動システム12は、通常の状況下における運転者操作への介入を最小限にするためのアルゴリズムを含む。従って、本実施例に基づくブレーキシステム12は、運転者による制動操作より優先するため及び/又は運転者による制動操作を補完するために実施される自動制動行動のレベルを最小限にする。
【0016】
本開示の実施例に基づくアルゴリズムは、センサから報告される、静止オブジェクト及び移動歩行者を含むオブジェクト、及び、検出された歩行者の予測される及び/又は可能性のある動き、及び、予測される及び/又は可能性のある運転者入力を、確率論的に分析する。現在の車両経路、及び、可能性のある運転者入力は、可能な車両経路の範囲を予測するために利用される。予測された車両経路と、予測された歩行者経路(又は静止オブジェクトの位置)とが交差する場合には、衝突の可能性が示される。検出された全ての起こり得る衝突のうちの1つが他のものよりも前に介入を必要とし、そして、その介入が実行されることとなる。
【0017】
確率論的な分析は、可能な車両経路40の予測モデルの生成と、可能なオブジェクト経路42の予測モデルの生成とを含む。可能な車両経路40は、車両が引き続き、参照符号46Aで示された車両経路によって概略的に図示された現在の車両経路に沿って進行する可能性、又は択一的に、運転者が車両10の進路を変更して、参照符号46B,46C,46Dで概略的に示されるような代替経路に沿って進行する可能性を含む。
【0018】
同様にして、オブジェクト経路の境界線42は、オブジェクト34の速度及び位置のような現在の特性に基づいて時間の経過と共に拡大する。オブジェクト34の位置は、可能な位置範囲であり、この範囲は、連続する将来の期間毎に絶えず拡大していく。拡大の速度、及び、可能な位置範囲は、将来の位置の不確実性を表しており、オブジェクトの分類に依存して変化し得る。可能な車両経路40に対する、可能性のあるオブジェクト32の位置に関して、オブジェクト32の初期位置から予測モデルが生成される。
【0019】
衝突を示す、可能性のある交点を識別するために、車両経路40の予測モデルとオブジェクト経路42の予測モデルとが組み合わされる。この交点の位置は、将来の時点において起こり得る衝突を識別するため、及び、当該起こり得る衝突の重要度を決定するために利用される。
【0020】
将来の時点において可能性のある交点が存在する場合には、予測される車両位置と当該交点との位置偏差、及び、予測されるオブジェクト位置と当該交点との位置偏差の双方によって、当該交点の重要度が決定される。衝突確信度値を求めるために、最も高い重要度を有する交点が使用され、この衝突確信度値が、起こり得る衝突に対応するためのシステム戦略に対して直接的に影響を与える。自動制動行動を、求められた衝突確信度値に基づいて修正することによって、車両の運転者制御への介入を最小限にすることができる。
【0021】
制御装置18は、車両経路40の予測モデルとオブジェクト経路42の予測モデルとに基づいてアルゴリズムを実行する。アルゴリズムは、以下のループを実行する:起こり得る全ての衝突を予測する;検出されたそれぞれの衝突に対して、その衝突が起こる確信度を求める(相応する衝突確信度値を計算する);検出された衝突のうちどれが最初に介入を必要とするか(最も関連性の高い衝突)を決定する;衝突の重要度と、衝突が起こる時間とを考慮して、最も関連性の高い衝突に対する最適な制動応答を計算する。
【0022】
引き続き図2を参照しながら図3を参照すると、線図50は、車両速度52と時間54とに関連しており、車両の減速度62を図示している。衝突確信度値は、制動操作のための最大減速度を直接的に求めるために使用される。車両減速度の下限は、参照符号56で示されるように、衝突確信度値が高い場合に生じる。車両減速度の下限56は、比較的長い期間に亘って傾きが緩やかである。車両減速度の上限は、参照符号60で示されるように、衝突確信度値が低い場合に生じる。この種類の減速は衝突確率が低い場合に実施され、それゆえシステムは、制動操作を実施するために、衝突が起こる可能性がないことを期待してより長い時間待機する。確率の低いできごとが発生して衝突条件がより可能性の高いものになった場合には、より強い制動力が必要となり、その結果、より短い期間でより大きく減速される。
【0023】
減速度の上限56と下限60は、参照符号58で示された望ましい減速度速度プロファイルを画定するために利用され、この望ましい減速度速度プロファイルにより、当該望ましい減速度速度プロファイルを実現するための制動力が求められる。衝突位置と衝突確信度のレベルとを補償することにより、高い確率を有する衝突を防止するために、より早期に、より長い期間、より長い距離に亘って低減された減速度によって、制動を実施することが可能となる。その一方で、低かった衝突確率が将来の時点において増加した場合には車両を停止させるためにより積極的な制動力及び車両減速度が必要とされることとなる、という僅かな可能性は甘受しなければならない。システムは、衝突確信度値に反映される初期の衝突確率が低い場合には、より急勾配の積極的な減速が必要になるかもしれないと予測する。
【0024】
図4を参照すると、線図64は、求められた衝突確信度値に基づく複数の速度プロファイルを示す。システム12,14が、障害物と衝突する可能性があることを検出した場合、1つの回避行動として、衝突を防止するためにブレーキ20を作動させる自動制動システム12を使用することができる。
【0025】
決定された重要度に基づく衝突確信度値の使用により、システム12は、制動操作のための初期のピーク減速度を求める。線68で示されるように、検出された衝突の確信度値が低い場合には、システム12は介入までにより長い期間待機する。確信度値が低い値から後々高い値へと変化した場合、システム12は、衝突を回避するために必要な、より大きい減速度で応答するように構成されている。しかしながら衝突確信値が反映しているように、衝突確率は低いので、回避行動は必要とされない可能性が非常に高い。この戦略によってまた、運転者は、反応するために追加的な時間が利用可能となるということが保証される。
【0026】
しかしながら線66によって示されるように、検出された衝突の確信度値が高い場合には、運転者が体験することとなる最大減速度を低下させるためにより早期に行動が実施され、介入は最小限となり安全性が向上する。より早期に制動することにより、激しい急制動による不快感を最小限に抑えることが可能となる。全てのシナリオにおいて介入が必要であるとは限らないので、ピーク制動減速度は衝突確信度値に応じて決まる。
【0027】
引き続き図4を参照しながら図5を参照すると、種々の衝突確信度の重要度を考慮した制動操作中における加速度が概略的に図示されている。異なる一連の制動操作に亘って運転者への介入を最小限にするために、衝突確信度値に基づいて制動の割合が求められる。高い確信度値又は高い重要度は、参照符号72で示されるようなより緩やかな減速を提供するために、より早期により少ない力でブレーキを作動させるようにシステム12をトリガする。確信度値が低い場合には、車両を停止するためにシステムが介入する必要は決してない。衝突が起こる確率が低いので、システムはより長い間待機し、その結果、参照符号74で示されるようにより大きい制動力、ひいてはより大きい減速が必要とされることとなる。
【0028】
例えば車両の動き、車両の移動によるオブジェクトの動きによって衝突確信度の数値が変化すると、望ましい制動減速操作及び制動減速比も変化する可能性がある。制御装置18は、オブジェクト34と車両10の動きに基づいて各予測モデルを継続的に更新し、制動操作中における確信度値の再計算を可能にする。
【0029】
引き続き図1及び2を参照しながら図6を参照すると、後退時衝突回避システム14を使用した場合に、車両10を制動するために自動制動システム12を使用することができる。後退時衝突回避システム14は、車両10の後退走行方向の景色を供給するために取り付けられるカメラ30を含む。カメラ30は、単眼カメラ、双眼カメラ、又は、車両10の後退走行経路の景色を供給可能な別の種類の検出装置とすることができる。カメラ30は、車両10の後退走行経路の景色を供給する任意の場所に取り付けることができる。画像/データを分析し、画像内に存在する、車両10に対する障害となり得るオブジェクト34を識別するために、カメラ30に制御装置18を接続することができる。衝突回避システム14は、カメラ30の他にも、オブジェクト34の識別を支援するための他のシステム及びセンサを使用することができる。以下のようなシステム及びセンサを含むことができるが、これらには限定されない:近接センサ36、LIDAR、レーダ、超音波センサ、GPS38、無線センサ等。
【0030】
車両10が始動され、後退ギアへとシフトされると直ぐに、後退時衝突回避システム14が開始される。障害物が検出されると運転者に警告が与えられ、オブジェクトが障害物であると判定される確率が所定の閾値を上回る場合には、少なくとも1つの車両衝突回避行動も実施される。
【0031】
本実施例に基づく制御装置18は、センサ36、カメラ30、GPSシステム38を用いて車両10に近接するオブジェクト34を検出させるための命令を含む。制御装置18はさらに、各予測モデルに基づいて生成されたオブジェクトとの衝突確率に基づいて、衝突確信度値を求めさせるための命令を含む。制御装置18はさらに、求められた衝突確信度値に対して制動力が反比例するように、制動操作のための望ましい制動力を決定させるための命令を含む。
【0032】
運転中に後退時衝突回避システム14は、参照符号78で示されるように速度、経路、及び、操舵角を含む車両の動きを検出する。検出されたパラメータは、参照符号80で示されるように制御装置18によって使用され、将来の時点における所定の距離に亘る車両経路の予測モデルが生成される。同時に、参照符号82で示されるようにカメラ30、センサ36、及び、他の検出システムが使用され、車両10に近接するオブジェクトが検出される。参照符号84で示されるように、車両に近接していると識別された各オブジェクトは分類分けされる。分類には、静止オブジェクトであるか又は移動オブジェクトであるかの識別、及び、移動オブジェクトである場合にはその移動速度及び移動方向の識別を含めることができる。近接するオブジェクトに関して得られた情報は、参照符号86で示されるように、将来のある時点における移動オブジェクトの可能性のある位置の予測モデルを生成するために利用される。予測モデルは、オブジェクトが歩行者であるか又は自転車運転者であるかといったオブジェクトの種類を鑑みて動きを考慮することができる。歩行者の動きを、歩行者が大人であるか子供であるかといった他の識別特性に基づいて予測することも可能である。
【0033】
これらの予測モデルが生成されると、これらは参照符号88で示されるように制御装置18によって利用され、所定の時間に対する衝突確信度値が求められる。本実施例における衝突確信度の数値は、各予測モデルに基づく、車両と検出されたオブジェクトとの衝突確率に関する指標を提供している重要度の値である。
【0034】
後退時衝突回避システム14が、障害物と衝突する可能性があることを検出すると、衝突を防止するために1つの回避行動として、参照符号92で示されるように、自動制動システム12にブレーキ20を作動させるよう命令することができる。制動の割合は、参照符号90で示されるように、衝突確信度に反比例する割合に基づいて求められる。制御装置18は継続的に各予測モデルを更新し、それによって、戻る矢印94によって示されるように衝突確信度値を更新する。例えば車両の動き、車両の移動によるオブジェクトの動きによって衝突確信度の数値が変化すると、望ましい制動の割合も変化する可能性がある。
【0035】
後退時衝突回避システム14のための制御装置18は、衝突確信度値を求め、その一方で、自動制動システム12のための別個の制御装置は、望ましい制動の割合を求めることができる。択一的に、同じ1つの制御装置18が両方又は一方の機能を実施するようにしてもよい。
【0036】
このようにして、本実施例に基づく後退時衝突回避システム14は、車両経路40の予測モデルと、検出されたオブジェクト42の予測モデルの双方を利用して、いつ、どのように制動操作を行うかを決定するために利用される衝突確信値又は重要度を決定する。
【0037】
以上、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明してきたが、本開示の正当な範囲はこれらの形態に限定されるべきではない。なぜなら、本発明に関連する分野に精通する当業者であれば、添付の特許請求の範囲内において、本発明を実施するための種々異なる複数の択一的手段及び実施形態が存在することが明確に理解されるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6