特許第6226897号(P6226897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226897
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】OFDR装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20171030BHJP
   G01K 11/32 20060101ALI20171030BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01B11/16 G
   G01K11/32 D
   G01D5/353 C
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-32227(P2015-32227)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153768(P2016-153768A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 隆
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/107838(WO,A1)
【文献】 特開2005−147900(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0176597(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0160483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01K 1/00−19/00
G01D 5/26− 5/38
G02B 6/26− 6/27
6/30− 6/34
6/42− 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引された光を出力する光源(11)と、ファイバブラッグ回折格子(131〜133)を含む被測定光ファイバ(13)と、前記光源(11)からの出力光の一部を前記被測定光ファイバに入力すると共に前記被測定光ファイバからの反射光と前記光源からの出力光の一部を合波する光合分波部(12)と、前記光合分波部からの光を電気信号に変換する受光器(22)と、前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器(23)と、前記ディジタル信号を離散フーリエ変換してスペクトログラムを算出するスペクトログラム算出部(24)と、前記スペクトログラムの波長軸上のピークを検出するピーク波長検出部(25)と、を有し、前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定するOFDR装置において、
前記被測定光ファイバは、反射波長が異なる複数の重複したファイバブラッグ回折格子(131a,131b)を有するものであり、
前記被測定光ファイバの歪みまたは温度変化に対する前記重複した各ファイバブラッグ回折格子のピーク波長の変化の特性を示し、前記特性中、前記ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、前記歪みまたは温度変化の軸方向に連続する複数の歪みまたは温度変化範囲が設定された測定波長範囲外検出条件データ(Ds)に基づき、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長から、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度が含まれる歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かを検出する測定範囲外検出部(26)、を備え、
前記測定範囲外検出部による前記歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かの検出結果に基づいて前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定することを特徴とするOFDR装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外であると検出されているときに前記ピーク波長検出部により検出されている前記測定波長範囲の範囲内である測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に歪みまたは温度変化の測定処理用の波長が含まれるか否かを判定し、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に前記測定処理用の波長が含まれないときは、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を前記測定処理用の波長に換算して出力するピーク波長補正部(27)をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のOFDR装置。
【請求項3】
前記被測定光ファイバは、2つの重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記2つの重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長の間隔が前記測定波長範囲の1/2以下に設定され、
前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク波長の個数が2の場合は前記2つの重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲内と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で検出されたピーク波長が測定波長範囲の中間よりも長波長側の場合は長波長側の前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲外と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で検出されたピーク波長が測定波長範囲の中間よりも短波長側の場合は短波長側の前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲外と判断することを特徴とする請求項1または2記載のOFDR装置。
【請求項4】
前記被測定光ファイバは、3つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔が異なる値に設定され、
前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項1または2記載のOFDR装置。
【請求項5】
前記被測定光ファイバは、2つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率が異なる値に設定され、
前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項1または2記載のOFDR装置。
【請求項6】
前記被測定光ファイバは、n個(n≧3)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)/2倍以下に設定され、
前記ピーク波長検出部は、2つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、前記検出された2つのピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項4記載のOFDR装置。
【請求項7】
前記被測定光ファイバは、n個(n≧2)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)倍以下に設定され、
前記ピーク波長検出部は、1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、前記検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項5記載のOFDR装置。
【請求項8】
前記被測定光ファイバは、n個(n≧3)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、反射波長が隣接した前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率の差がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)/2倍以下に設定され、
前記ピーク波長検出部は、2つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、前記検出された2つのピーク波長の強度の差に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項5記載のOFDR装置。
【請求項9】
前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長が、波長間隔Δλsの等間隔波長に対してそれぞれシフト無しまたはΔλ1シフトした波長に設定されるとともに、前記シフト無しと前記Δλ1シフトはm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、
前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、隣接する前記ピーク波長の間隔がΔλsかΔλs+Δλ1かΔλs−Δλ1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項4記載のOFDR装置。
【請求項10】
前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接した反射波長の間隔がそれぞれΔλ0またはΔλ1に設定されるとともに、前記Δλ0またはΔλ1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、
前記ピーク波長検出部は、少なくとも(m+1)個のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、隣接する前記ピーク波長の間隔がΔλ0またはΔλ1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項4記載のOFDR装置。
【請求項11】
前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれR0またはR1に設定されるとともに、前記R0とR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、
前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長の強度から反射率がR0かR1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項5記載のOFDR装置。
【請求項12】
前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれR0またはR1に設定されるとともに、前記R0とR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、
前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、隣接した前記ピーク波長の強度差がゼロかR0−R1かR1−R0かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項5記載のOFDR装置。
【請求項13】
反射波長が隣接した前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率の差がそれぞれΔR0またはΔR1に設定されるとともに、前記ΔR0とΔR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、
前記ピーク波長検出部は、少なくとも(m+1)個のピーク波長を検出し、
前記測定範囲外検出部は、隣接した前記ピーク波長の強度差から反射率差がΔR0かΔR1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項5記載のOFDR装置。
【請求項14】
波長掃引された光を出力する光源と、ファイバブラッグ回折格子を含む被測定光ファイバと、前記光源からの出力光の一部を前記被測定光ファイバに入力すると共に前記被測定光ファイバからの反射光と前記光源からの出力光の一部を合波する光合分波部と、前記光合分波部からの光を電気信号に変換する受光器と、前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記ディジタル信号を離散フーリエ変換してスペクトログラムを算出するスペクトログラム算出部と、前記スペクトログラムの波長軸上のピークを検出するピーク波長検出部と、を有し、前記被測定光ファイバは、反射波長が異なる複数の重複したファイバブラッグ回折格子を有するOFDR装置における前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定するOFDR方法であって、
前記被測定光ファイバの歪みまたは温度変化に対する前記重複した各ファイバブラッグ回折格子のピーク波長の変化の特性を示し、前記特性中、前記ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、前記歪みまたは温度変化の軸方向に連続する複数の歪みまたは温度変化範囲が設定された測定波長範囲外検出条件データ(Ds)を設定する設定ステップ(S11)と、
前記測定波長範囲外検出条件データと、前記ピーク波長検出部による前記ピーク波長の検出出力とに基づいて、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度が含まれる歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かを検出する検出ステップ(S14)と、を有し、
前記検出ステップにおける前記歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かの検出結果に基づいて前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定することを特徴とするOFDR方法。
【請求項15】
前記検出ステップで少なくとも1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外であると検出されているときに前記ピーク波長検出部により検出されている前記測定波長範囲の範囲内である測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に歪みまたは温度変化の測定処理用の波長が含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に前記測定処理用の波長が含まれないと判定されたときは、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を前記測定処理用の波長に換算して出力するピーク波長補正ステップと、をさらに有することを特徴とする請求項14記載のOFDR方法。
【請求項16】
前記被測定光ファイバは、3つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔が異なる値に設定され、
前記検出ステップでは、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項14または15記載のOFDR方法。
【請求項17】
前記被測定光ファイバは、2つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率が異なる値に設定され、
前記検出ステップでは、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする請求項14または15記載のOFDR方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDR装置および方法に関し、特に所定の波長範囲を掃引する光源を用いて反射波長が異なる複数の重複したファイバブラッグ回折格子(Fiber Bragg Grating:FBG)を含む被測定光ファイバの歪み分布又は温度分布を測定するOFDR装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry:OFDR)を用いて、光ファイバの歪み分布又は温度分布を測定するOFDR装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。光ファイバの歪み分布と温度分布は同じ手法で測定可能であるため、以下では歪み測定を例に挙げてOFDR装置の構成および動作を説明する。
【0003】
図15に、従来のOFDR装置の基本構成を示す。掃引光源41は、時間に対して光の周波数が直線的に変化するように出力光の波長を掃引する。光カプラ42は掃引光源41の出力光を2つに分岐する。光カプラ42で分岐された光の一方は被測定光ファイバ43に入射し、他方は基準光用光ファイバ44に入射する。
【0004】
被測定光ファイバ43は、所定の長さのファイバブラッグ回折格子(Fiber Bragg Grating;FBG)431,432,433を有する。FBGは、図15のように複数個離散的に配置しても、1個のみでも良い。
【0005】
FBGを複数個配置する場合は、それぞれ異なる格子間隔にしても、全て同じ格子間隔にしても良い。FBGはその格子間隔に応じた特定の波長の光を反射するものであり、被測定光ファイバ43の長手方向に歪みが加わると反射する光の波長が変化する。
【0006】
基準光用光ファイバ44の先端には全ての波長の光を反射する反射膜(反射面)44aが付いている。被測定光ファイバ43で反射した光と基準光用光ファイバ44の反射面44aで反射した光(基準光)は光カプラ42で合波され、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光が干渉する。受光器46は入力光の強度に比例した電気信号を出力するものであり、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光の干渉によるビート信号を出力する。前記電気信号はA/D変換器47でディジタル信号に変換される。
【0007】
スペクトログラム算出部48では、前記ディジタル信号について微小波長区間毎に離散フーリエ変換を行ない、スペクトログラムを算出する。ピーク波長検出部49は、前記スペクトログラムの微小周波数区間毎に波長軸方向のピークを検出し、被測定光ファイバ43の位置毎の歪みを出力する。微小周波数区間毎に歪みが得られるので、所定の長さのFBG内の歪み分布を測定できるのが本方式の特徴である。
【0008】
FBGは、光ファイバの長手方向に周期的な屈折率変化を与えて格子を形成したものである。FBGの格子間隔をΛとすると、歪みが無い場合の反射波長λ0は、
λ0 = 2nΛ ・・・ (1)
となる。ここで、nは被測定光ファイバの屈折率である。被測定光ファイバの長手方向に歪みεが加わった場合の反射波長の変化Δλは、
λ0+Δλ = 2(n+Δn)(Λ+ΔΛ) ・・・ (2)
となる。
【0009】
ここで、Δnは歪みεが加わった場合の屈折率変化、ΔΛは歪みεが加わった場合の格子間隔の変化である。通常ΔnとΔΛはそれぞれnとΛに比べて十分小さいため、
【数1】
と表すことができる。n=1.45,λ0 =1550nmの場合、Δλ≒1.2×10-6・εとなり、反射波長の変化Δλを測定することにより被測定光ファイバの歪みεを得ることができる。
【0010】
図16(a)に示すように、被測定光ファイバ43にa点,b点,c点の3つの反射点を想定し、被測定光ファイバ43の近端o点からの距離をLa,Lb,Lcとする。光カプラ42から被測定光ファイバ43の近端o点で反射して光カプラ42に戻る距離と、光カプラ42から基準光用光ファイバ44の反射面44aで反射して光カプラ42に戻る基準光の距離を等しくすると、被測定光ファイバ43のa点で反射した光は基準光に比べてta=2nLa/cだけ時間が遅れて光カプラ42で合波される。ここでnは被測定光ファイバ43の屈折率、cは光速である。
【0011】
同様にb点,c点で反射した光はtb=2nLb/c,tc=2nLc/cだけ時間が遅れる。基準光の光周波数νr,a点からの反射光の光周波数νa,b点からの反射光の光周波数νb,c点からの反射光の光周波数νc図16(b)のようになる。
【0012】
掃引光源41の出力光の単位時間当たりの光周波数変化量をSとすると、a点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数は、
【数2】
となる。同様にb点およびc点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数は、
【数3】
【数4】
となる。よって、受信信号をフーリエ変換すると、図16(c)のように距離La,Lb,Lcに比例した周波数fa,fb,fcのビート信号が観測される。なお、各点での反射率は十分小さいと仮定し、多重反射は無視している。以上のように、光周波数領域反射測定方法によって、被測定光ファイバからの反射の長手方向の分布を測定することができる。
【0013】
スペクトログラムは、所定の時間毎に短時間の離散フーリエ変換を行ない、時間軸と周波数軸の2次元平面上に強度を色や濃度で表したものである。各離散フーリエ変換では、必要に応じて窓関数をかけ、通常は時間領域でオーバーラップさせる。掃引光源41の出力光は波長掃引されているので時間軸は波長に換算可能で、前記の関係から波長を歪みに換算可能である。また、前述のようにビート周波数は被測定光ファイバ43上の距離に対応するため、周波数軸は距離に換算可能である。
【0014】
これより、横軸を距離、縦軸を歪みとした2次元平面上の強度データが得られる。被測定光ファイバ43に歪みが加わらない場合のビート信号のスペクトログラムは図17(a)のようになる。図17において、黒色は強度小、白色は強度大を表している。被測定光ファイバ43に歪みが加わると、スペクトログラムは例えば図17(b)のようになる。スペクトログラムの波長軸方向のピークを求めると、歪みが加わらない場合は図17(c)、歪みが加わった場合は例えば図17(d)のようになり、被測定光ファイバ43のFBG内の歪み分布が得られる。
【0015】
被測定光ファイバ43の歪みと反射光のピーク波長の関係は、図18のようになる。反射波長の変化Δλと歪みεの関係をΔλ=a・εとし、測定波長範囲をΔλmとすると、歪み測定可能範囲Δεは、
【数5】
で表される。例えば、a=1.2×10-6の場合、Δλm=1nmの測定波長範囲でΔε=0.08%の範囲の歪みを測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−147900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、被測定光ファイバの長手方向に加わる歪みによってFBGの反射波長が変わるため、特許文献1に記載するような従来のOFDR方法では、測定波長範囲をFBGの反射波長の変化範囲以上に設定する必要があった。これにより、歪みが大きくなると、FBGの反射波長の変化範囲が広くなるため、測定波長範囲を広くする必要があり、レーザ(掃引光源)の掃引波長範囲を測定波長範囲より広く設定する必要がある。従って、大きな歪みを測定するためには掃引光源の掃引波長範囲を広くする必要があるが、一般に掃引光源の掃引波長範囲を広くするのは困難であるという問題があった。
【0018】
また、掃引周波数が一定のレーザでは、掃引波長範囲を広くすると波長掃引速度(単位時間当たりの波長変化) が増加し、ビート信号の周波数が高くなるため、高速の受光器およびA/D 変換器が必要となり、コストが高くなるという問題があった。
【0019】
これに対し、波長掃引速度を増加することなく掃引波長範囲を広くするためには、掃引周波数を低くする必要があり、歪みの測定レートが低くなるという問題があった。
【0020】
また、測定距離範囲を長くすると、ビート信号の周波数が高くなるため、高速の受光器およびA/D変換器が必要となり、コストが高くなるという問題があった。
【0021】
ビート周波数を低くするためには波長掃引速度を低くする必要があるが、掃引周波数を低くすると歪みの測定レートが低くなるという問題があった。また、掃引周波数を低くすることなく波長掃引速度を低くするためには、掃引波長範囲を狭くする必要があり、大きな歪みが測定できなくなるという問題があった。
【0022】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、FBGを用いて狭い測定波長範囲で大きな歪み分布又は温度分布を測定可能なOFDR装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1のOFDR装置は、波長掃引された光を出力する光源(11)と、ファイバブラッグ回折格子(131〜133)を含む被測定光ファイバ(13)と、前記光源(11)からの出力光の一部を前記被測定光ファイバに入力すると共に前記被測定光ファイバからの反射光と前記光源からの出力光の一部を合波する光合分波部(12)と、前記光合分波部からの光を電気信号に変換する受光器(22)と、前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器(23)と、前記ディジタル信号を離散フーリエ変換してスペクトログラムを算出するスペクトログラム算出部(24)と、前記スペクトログラムの波長軸上のピークを検出するピーク波長検出部(25)と、を有し、前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定するOFDR装置において、前記被測定光ファイバは、反射波長が異なる複数の重複したファイバブラッグ回折格子(131a,131b)を有するものであり、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度変化に対する前記重複した各ファイバブラッグ回折格子のピーク波長の変化の特性を示し、前記特性中、前記ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、前記歪みまたは温度変化の軸方向に連続する複数の歪みまたは温度変化範囲が設定された測定波長範囲外検出条件データ(Ds)に基づき、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長から、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度が含まれる歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かを検出する測定範囲外検出部(26)、を備え、前記測定範囲外検出部による前記歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かの検出結果に基づいて前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項2のOFDR装置においては、少なくとも1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外であると検出されているときに前記ピーク波長検出部により検出されている前記測定波長範囲の範囲内である測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に歪みまたは温度変化の測定処理用の波長が含まれるか否かを判定し、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に前記測定処理用の波長が含まれないときは、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を前記測定処理用の波長に換算して出力するピーク波長補正部(27)をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項3のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、2つの重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記2つの重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長の間隔が前記測定波長範囲の1/2以下に設定され、前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク波長の個数が2の場合は前記2つの重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲内と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で検出されたピーク波長が測定波長範囲の中間よりも長波長側の場合は長波長側の前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲外と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で検出されたピーク波長が測定波長範囲の中間よりも短波長側の場合は短波長側の前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲外と判断することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項4のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、3つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔が異なる値に設定され、前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項5のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、2つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率が異なる値に設定され、前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項6のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、n個(n≧3)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)/2倍以下に設定され、前記ピーク波長検出部は、2つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、前記検出された2つのピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項7のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、n個(n≧2)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)倍以下に設定され、前記ピーク波長検出部は、1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、前記検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項8のOFDR装置においては、前記被測定光ファイバは、n個(n≧3)の重複したファイバブラッグ回折格子を有し、反射波長が隣接した前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率の差がそれぞれ異なる値に設定されるとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差が前記測定波長範囲の(n−1)/2倍以下に設定され、前記ピーク波長検出部は、2つの前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、前記検出された2つのピーク波長の強度の差に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項9のOFDR装置においては、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射波長が、波長間隔Δλsの等間隔波長に対してそれぞれシフト無しまたはΔλ1シフトした波長に設定されるとともに、前記シフト無しと前記Δλ1シフトはm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、隣接する前記ピーク波長の間隔がΔλsかΔλs+Δλ1かΔλs−Δλ1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項10のOFDR装置においては、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接した反射波長の間隔がそれぞれΔλ0またはΔλ1に設定されるとともに、前記Δλ0またはΔλ1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、前記ピーク波長検出部は、少なくとも(m+1)個のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、隣接する前記ピーク波長の間隔がΔλ0またはΔλ1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項11のOFDR装置においては、前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれR0またはR1に設定されるとともに、前記R0とR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、前記ピーク波長の強度から反射率がR0かR1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項12のOFDR装置においては、前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率がそれぞれR0またはR1に設定されるとともに、前記R0とR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、前記ピーク波長検出部は、少なくともm個のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、隣接した前記ピーク波長の強度差がゼロかR0−R1かR1−R0かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0035】
また、本発明の請求項13のOFDR装置においては、反射波長が隣接した前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射率の差がそれぞれΔR0またはΔR1に設定されるとともに、前記ΔR0とΔR1はm段の疑似ランダムパターンに従って選択され、前記ピーク波長検出部は、少なくとも(m+1)個のピーク波長を検出し、前記測定範囲外検出部は、隣接した前記ピーク波長の強度差から反射率差がΔR0かΔR1かを弁別して少なくともmビットのパターンを検出し、前記少なくともmビットのパターンから前記疑似ランダムパターンの位相を求めてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0036】
また、本発明の請求項14のOFDR測定方法は、波長掃引された光を出力する光源と、ファイバブラッグ回折格子を含む被測定光ファイバと、前記光源からの出力光の一部を前記被測定光ファイバに入力すると共に前記被測定光ファイバからの反射光と前記光源からの出力光の一部を合波する光合分波部と、前記光合分波部からの光を電気信号に変換する受光器と、前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記ディジタル信号を離散フーリエ変換してスペクトログラムを算出するスペクトログラム算出部と、前記スペクトログラムの波長軸上のピークを検出するピーク波長検出部と、を有し、前記被測定光ファイバは、反射波長が異なる複数の重複したファイバブラッグ回折格子を有するOFDR装置における前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定するOFDR方法であって、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度変化に対する前記重複した各ファイバブラッグ回折格子のピーク波長の変化の特性を示し、前記特性中、前記ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、前記歪みまたは温度変化の軸方向に連続する複数の歪みまたは温度変化範囲が設定された測定波長範囲外検出条件データ(Ds)を設定する設定ステップ(S11)と、前記測定波長範囲外検出条件データと、前記ピーク波長検出部による前記ピーク波長の検出出力とに基づいて、前記被測定光ファイバの歪みまたは温度が含まれる歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かを検出する検出ステップ(S14)と、を有し、前記検出ステップにおける前記歪みまたは温度変化範囲またはどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外かの検出結果に基づいて前記被測定光ファイバの歪み分布または温度分布を測定することを特徴とする。
【0037】
また、本発明の請求項15のOFDR測定方法においては、前記検出ステップで少なくとも1つの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が前記測定波長範囲の範囲外であると検出されているときに前記ピーク波長検出部により検出されている前記測定波長範囲の範囲内である測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に歪みまたは温度変化の測定処理用の波長が含まれるか否かを判定する判定ステップと、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長に前記測定処理用の波長が含まれないと判定されたときは、前記測定波長範囲内の前記重複したファイバブラッグ回折格子のピーク波長を前記測定処理用の波長に換算して出力するピーク波長補正ステップと、をさらに有することを特徴とする。
【0038】
また、本発明の請求項16のOFDR測定方法においては、前記被測定光ファイバは、3つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複したファイバブラッグ回折格子の隣接する反射波長の間隔が異なる値に設定され、前記検出ステップでは、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の間隔に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【0039】
また、本発明の請求項17のOFDR測定方法においては、前記被測定光ファイバは、2つ以上の重複したファイバブラッグ回折格子を有するとともに、前記重複した各ファイバブラッグ回折格子の反射率が異なる値に設定され、前記検出ステップでは、前記ピーク波長検出部により検出されたピーク波長の強度に基づいてどの前記重複したファイバブラッグ回折格子の反射波長が測定波長範囲外かを推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、FBGを用いて狭い測定波長範囲で大きな歪み分布又は温度分布を測定可能なOFDR装置および方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係るOFDR装置の構成を示す図である。
図2】本発明に係るOFDR装置における重複配置FBGを用いた測定波長範囲外検出処理を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図4】第2の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図5】第3の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図6】第4の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図7】第5の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図8】第6の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図9】第7の実施形態に係る疑似ランダムパターン生成回路の構成を示すブロック図である。
図10】第7の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図11】第8の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図12】第9の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図13】第10の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。
図14】本発明の変形例に係るOFDR装置の構成を示す図である。
図15】従来のOFDR装置の構成を示す図である。
図16】従来のOFDR装置における被測定光ファイバからの反射光の長手方向の分布の測定結果を示すグラフである。
図17】従来のOFDR装置におけるスペクトログラムによる歪み分布測定結果を示すグラフである。
図18】被測定光ファイバの歪みとFBG反射波長の変化量との関係特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係るOFDR装置の実施形態について、図面を用いて説明する。OFDRでは光ファイバの歪み分布又は温度分布を測定することができるが、光ファイバの歪み分布と温度分布は同じ手法で測定可能であるため、以降は歪み測定を例に挙げてOFDR装置の測定原理を説明する。
【0043】
図1は、本発明に係るOFDR装置の構成を示す図である。図1に示すように、本発明に係るOFDR装置1は、波長掃引された光を出力する掃引光源11と、光カプラにより構成される光合分波部12と、FBG131,132,133を含む被測定光ファイバ13と、反射膜14aを有するミラーを含む基準光用光ファイバ14と、反射波長検出部20と、を備えて構成される。
【0044】
掃引光源11は、規定された波長範囲および掃引速度で出力光の波長を掃引する。例えば、回折格子を用いた外部共振器レーザにおいて、回折格子やミラー等の角度を変えて共振波長を変えることにより発振波長を掃引することができる。一般にOFDR法では、時間に対して光の周波数が直線的に変化する掃引が理想であるが、それに限られるものではなく、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引でも良い。
【0045】
中心波長に対して波長掃引幅が十分小さい場合、波長が直線的に変化する掃引は、周波数がほぼ直線的に変化することになる。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引とみなすことができる。また、特許文献1などに記載されているように、別途遅延干渉計を用いて掃引の非直線性を補正することもできる。
【0046】
光合分波部12は、掃引光源11からの出力光を2つに分岐し、一方を被測定光ファイバ13に入力し、他方を基準光用光ファイバ14に入力すると共に、被測定光ファイバ13からの反射光と基準光用光ファイバ14の反射膜14aで反射された掃引光源11からの出力光の一部を合波して出力する。
【0047】
被測定光ファイバ13は、所定の長さのFBGを有する。FBGは、図1に示すFBG131,132,133のように複数個を離散的に配置しても、1個のみでも良い。FBGを複数個配置する場合は、それぞれ異なる格子間隔にしても、全て同じ格子間隔にしても良い。
【0048】
また、本発明に係るOFDR装置1の特徴の一つとして、被測定光ファイバ13は、前述した1または複数のFBGが、それぞれ、格子間隔の異なる複数のFBGを重複して配置した構成を有する。
【0049】
一例として、図1では、例えば、FBG131は、格子間隔の異なる2つのFBG131aと131bとを重複して配置して構成されている。同様に、FBG132および133も、それぞれ、格子間隔の異なる2つのFBG132aと132b、およびFBG133aと133bとを重複配置した構成を有する。なお、以下の説明においては、上述した格子間隔が異なる重複して配置されたFBG131aと131b、FBG132aと132b、FBG133aとFBG133bを重複配置FBGと呼称するものとする。
【0050】
被測定光ファイバ13において、例えばFBG131は、上述した複数の重複配置FBG131a,131bをそれぞれ光ファイバに書き込むことにより作製可能である。また、FBG131は、上記重複配置FBG131a,131bの重複した複数の格子が予め形成されたマスクを用いて1回の光ファイバへの書き込みによって作製しても良い。
【0051】
FBGはその格子間隔に応じた特定の波長の光を反射するものであり、図1のFBG131のように、格子間隔の異なる2つの重複配置FBG131a,131bが書き込まれている場合は、各重複配置FBG131a,131bにそれぞれ対応する2つの異なる波長にて光を反射する。
【0052】
被測定光ファイバ13の長手方向に歪みが加わると、該被測定光ファイバ13を構成する例えばFBG131に含まれる重複配置FBG131aと131bとによる2つの反射光波長が共に変化する。被測定光ファイバ13の温度が変化した場合も2つの重複配置FBG131a、131bの反射光波長が共に変化する。被測定光ファイバ13の歪みと温度は同じ手法で測定可能であるため、以降は歪み測定について述べるものとする。
【0053】
基準光用光ファイバ14は、反射膜14aによって全ての波長の光を反射する。ここでは、光合分波部12から基準光用光ファイバ14の反射膜14aまでの距離は光合分波部12から被測定光ファイバ13の近端までの距離以下に設定されているが、光合分波部12から被測定光ファイバ13の遠端までの距離以上に設定しても良く、必要に応じて図示しない遅延ファイバを光合分波部12から反射膜14aまでの間や、光合分波部12から被測定光ファイバ13までの間に挿入しても良い。
【0054】
被測定光ファイバ13で反射した光と基準光用光ファイバ14の反射膜14aで反射した光(基準光)は光合分波部12で合波され、被測定光ファイバ13からの反射光と基準光が干渉する。被測定光ファイバ13や基準光用光ファイバ14が通常の単一モードファイバで構成される場合、光の偏波状態が不定となるので、被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の偏波が直交して干渉信号が得られなくなることが起こり得る。
【0055】
このような事態を避けるために、被測定光ファイバ13側または基準光用光ファイバ14側の少なくとも一方に図示しない偏波コントローラを挿入して偏波を調整する構成とすることができる。また、上述した被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の偏波が直交して干渉信号が得られなくなることを回避するための別の構成として、被測定光ファイバ13からの反射光の互いに直交する2つの偏波成分をそれぞれ検出する偏波ダイバーシティ受信を用いる構成としてもよい。
【0056】
また、被測定光ファイバ13および反射膜14aで反射した光が光合分波部12を介して掃引光源11に戻ることによる悪影響を防ぐため、必要に応じて掃引光源11と光合分波部12の間に図示しない光アイソレータを挿入する場合がある。
【0057】
反射波長検出部20は、光合分波部12からの出力光を入力し、該入力光から被測定光ファイバ13に配置される例えばFBG131が含む重複配置FBG131a,131bのうちの少なくとも一つの反射光の波長を検出するものである。反射波長検出部20は、光合分波部12からの出力光からFBG132および133に含まれる重複配置FBG132a,132bのうちの少なくとも一つおよび133a,133bのうちの少なくとも一つの反射光の波長も検出可能であるが、以下では、説明を簡単にするため、重複配置FBG131a,131bのうちの少なくとも一つを前提に反射光波長検出動作を説明する。
【0058】
反射波長検出部20は、掃引光源11により掃引する波長の範囲を設定する掃引波長範囲設定部21と、光合分波部12からの出力光を電気信号に変換する受光器22と、上記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器23と、上記ディジタル信号を離散フーリエ変換してスペクトログラムを算出するスペクトログラム算出部24と、スペクトログラムの波長軸上のピークを検出するピーク波長検出部25と、測定範囲外検出部26およびピーク波長補正部27と、を備えて構成される。
【0059】
受光器22は、入力光の強度に比例した電気信号を出力するものであり、被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の干渉によるビート信号を出力する。
【0060】
受光器22から出力された電気信号は、A/D変換器23でディジタル信号に変換される。スペクトログラム算出部24は、A/D変換器23で変換されたディジタル信号について微小波長区間毎に離散フーリエ変換を行ない、スペクトログラムを算出する。ピーク波長検出部25は、スペクトログラム算出部24により算出されたスペクトログラムの微小周波数区間毎に波長軸方向のピークを検出する。
【0061】
本発明に係る被測定光ファイバ13の構成(図1参照)によれば、ピーク波長検出部25は、被測定光ファイバ13のFBG131に含まれる重複配置FBG131a,131bのうちの少なくとも一つからの反射光のピーク波長を検出する。
【0062】
ピーク波長検出部25の反射光のピーク検出結果は、測定範囲外検出部26およびピーク波長補正部27に入力される。測定範囲外検出部26およびピーク波長補正部27は、前述した重複配置FBG131a,131bとともに本発明の特徴的な構成要素である。このうち、測定範囲外検出部26は、微小周波数区間毎にFBG131に含まれる重複配置FBG131a,131bの反射波長が測定波長範囲外にあるかを検出し、測定波長範囲外の場合はどの重複配置FBGの反射波長が測定波長範囲外かを検出する。ピーク波長補正部27は、重複配置FBG131aまたは131bの反射波長が測定波長範囲外の場合はそれに応じてピーク波長を補正し、被測定光ファイバ13の位置毎の歪み(歪み分布)を出力する。
【0063】
図2は、本発明に係るOFDR装置における重複配置FBGを用いた測定波長範囲外検出処理を示すフローチャートである。なお、ここでは、被測定光ファイバ13のFBG131が2つ以上の重複配置FBG131a,131b,・・・を有している場合を前提とした測定波長範囲外検出処理について説明する。
【0064】
上記処理を行うために、OFDR装置1では、まず、FBG131に含まれる重複配置FBG131a,131b,・・・に対応する測定波長範囲外検出条件データ(以下、検出条件データという。)Dsを設定する処理を行う(ステップS11)。この検出条件データDsは、例えば、図3図6図10図13に示すように、被測定光ファイバ13の歪みに対するそれぞれの重複配置FBG131a,131b,・・・のピーク波長の変化の特性をベースとし、該特性中、ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、歪みの軸方向に連続する複数の歪み範囲が設定されたものである。
【0065】
なお、上記の各図に示される歪み対ピーク波長変化特定からも分かるように、被測定光ファイバ13のFBG131を構成する各重複配置FBG131a,131b,・・・は、被測定光ファイバ13の歪みに応じてそれぞれのピーク波長が間隔をほぼ保ちながら変化する構造を有している。
【0066】
上記検出条件データDsは、例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)等の外部装置からOFDR装置1の図示しないROM等の記憶手段に記憶させることができる。図1においては、測定範囲外検出部26の内部ROMに上記検出条件データDsを格納した構成を例示している。
【0067】
上記ステップS11で被測定光ファイバ13を構成する重複配置FBG131a,131b,・・・の配置(構造)に対応して検出条件データDsを設定した後、OFDR装置1では、掃引光源11で既定された波長範囲および掃引速度で出力光の掃引を行い、ピーク波長検出処理へと移行する。
【0068】
ピーク波長検出処理では、被測定光ファイバ13の反射光と基準光用光ファイバ14の反射膜14aによる反射光(基準光)が受光器22で受光され、それによって受光器22から出力される被測定光ファイバ13の反射光と基準光との干渉によるビート信号がA/D変換器23でディジタル信号に変換される。スペクトログラム算出部24ではそのディジタル信号を入力としてスペクトログラムを算出し、ピーク波長検出部25は上記スペクトログラムから被測定光ファイバ13の微小距離区間毎のピーク波長を検出する。
【0069】
上記ピーク波長検出処理の実行中、測定範囲外検出部26は、ピーク波長検出部25における重複配置FBG131a,131b,・・・のうちの測定範囲内の反射光のピーク波長の検出出力を取込み(ステップS12)、ピーク波長の数(ピーク数)を検出する(ステップS13)。
【0070】
次いで、測定範囲外検出部26は、ピーク波長とステップS13で検出されたピーク数とステップS11で設定された検出条件データDsに基づき、被測定光ファイバ13の微小距離区間毎の歪みが含まれる歪み範囲またはどの重複配置FBGの反射波長が測定波長範囲の範囲外(以下、測定波長範囲外ということもある)かを検出する(ステップS14)。
【0071】
引き続き、測定範囲外検出部26は、ステップS14で少なくとも1つの重複配置FBGの反射波長が測定波長範囲外であると検出されているときにピーク波長検出部25により検出されている重複配置FBGのピーク波長、すなわち上記測定波長範囲の範囲内(以下、測定波長範囲内ということもある。)の重複配置FBGのピーク波長のうちの一つに歪みまたは温度の測定処理用の波長が含まれるかどうかを判定する(ステップS15)。
【0072】
ここで、上記測定処理用の波長は、ピーク波長補正部27が後段の図示しない歪み(または温度)検出部に対して出力する歪みまたは温度の測定を可能にする予め設定された特定の波長であり、一例として、重複配置FBG131a,131b,・・・の反射波長のいずれか1つが挙げられる。なお、重複配置FBG131a,131b,・・・の反射波長以外の波長を上記特定の波長として設定することも可能である。
【0073】
上記ステップS15において、測定波長範囲内の重複配置FBGのピーク波長、すなわちピーク波長検出部25で検出されたピーク波長のうちの一つが上記測定処理用の波長である場合(ステップS15でNO)、ピーク波長補正部27は、検出されたピーク波長のうちの一つを補正せずにそのまま出力する(ステップS16)。
【0074】
一方、検出されたピーク波長がいずれも上記測定用の波長ではない場合(ステップS15でYES)、ピーク波長補正部27は、検出されたピーク波長を上記測定処理用の波長に補正(換算して)して出力する(ステップS17)。
【0075】
これ以後、OFDR装置1の歪み(または温度)検出部(図示せず)では、被測定光ファイバ13の微小距離区間毎に上記ステップS16で補正せずに出力されたピーク波長、または、上記ステップS17で補正されて出力されたピーク波長に基づいてこれら重複配置FBG1311,131b,・・・を含む被測定光ファイバ13の歪み分布または温度分布を測定する。
【0076】
このように、本発明では、被測定光ファイバ13の歪みに応じて間隔をほぼ保ちながらピーク波長が変化する複数の重複したFBG131a,131b,・・・からの反射波長のうち、測定範囲外検出部26によって被測定光ファイバ13の歪みがどの歪み領域でどの重複配置FBGからの反射波長が測定波長範囲外になっているかを推定する機能を有する。被測定光ファイバ13の歪みがどの歪み領域に含まれるかの判定とどの重複配置FBGからの反射波長が測定波長範囲外かの判定とは基本的に等価であり、どちらか一方でもよい。
【0077】
これにより、本発明では、重複配置FBG131a,131b,・・・を含むFBG13を用い、これら重複配置FBG131a,131b,・・・の歪み(または温度変化)に対する各ピーク波長の変化特性に対して、例えば、単一のFBG(図15のFBG431,432,433参照)の反射波長の変化幅(図18参照)よりも狭い測定波長範囲を設定しながらも大きな歪み分布又は温度分布の測定を可能にする。これにより、掃引波長範囲の広いレーザ(11)や高速の受光器22およびA/D変換器23等を必要としない安価な構成を実現できるとともに、高い測定レートおよび長い測定距離範囲を生かして大きな歪みを検出することが可能となる。
【0078】
以下、第1〜第10の実施形態を挙げて(図3図13参照)、測定範囲外検出部26とピーク波長補正部27の詳細な処理について説明する。なお、第1〜第10の実施形態においては、OFDR装置1、被測定光ファイバ13、歪み範囲検出部26、ピーク波長補正部27、歪み範囲検出用データDsについて、便宜上、それぞれ符号1A〜1J、13A〜13J、26A〜26J、27A〜27J、Dsa〜Dsjを付して他の実施形態と識別するものとする。
【0079】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るOFDR装置1Aにおいて、被測定光ファイバ13Aは、例えば図1における重複配置FBG131a,131bのように、格子間隔が異なる2つの重複配置FBG(図1参照)を含む構成を有する。
【0080】
図3は、第1の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、格子間隔の異なる2つの重複配置FBGが重ねて書き込まれている場合の被測定光ファイバ13Aの歪みとピーク波長の変化量との関係特性がベースとなっている。
【0081】
図3に示すように、2つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Aを用いた場合、被測定光ファイバ13Aからの反射光は、2つの重複配置FBGにそれぞれ対応する波長を有する2つのピークが存在し、これら2つのピークの反射波長差は絶対波長に比べて十分小さいとすると、被測定光ファイバ13に歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら両ピーク波長が変化する。
【0082】
図3に示すグラフにおいて、横軸方向に関しては歪み測定可能範囲が3つに区切られて範囲A,B,Cが規定され、縦軸方向に関して測定波長範囲が2つに区切られて範囲aおよびcが規定されている。上記2つの重複配置FBGに対応する2波長について歪み範囲A,B,Cと測定波長範囲a,cを規定して上記2波長の重複配置FBGからの反射光を観察すると、図3に示すように、歪み範囲Aの領域では、短波長側のピーク波長が測定波長範囲外で長波長側のピーク波長のみ測定される。歪み範囲Bの領域では、2つのピーク波長が測定波長範囲内で両方のピーク波長が測定され、歪み範囲Cの領域では、長波長側のピーク波長が測定波長範囲外で短波長側のピーク波長のみ測定される。
【0083】
本実施形態において、測定範囲外検出部26Aは、図3のグラフに示された関係特性および領域区分(歪み範囲A,B,C、および測定波長範囲a,c)が設定された検出条件データDsaを保持している。
【0084】
これにより、測定範囲外検出部26Aは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsaを参照して、ピーク波長検出部25により検出された上記2つの重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク数が2の場合は測定波長範囲内(範囲B)と判断する。
【0085】
これに対し、検出されたピーク数が1の場合、測定範囲外検出部26Aは、測定波長範囲の領域aにピークがある場合は短波長側のピーク波長が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、測定波長範囲の領域cにピークがある場合は長波長側のピーク波長が測定波長範囲外(範囲C)と判断する。
【0086】
このように、本実施形態では、測定範囲外検出部26Aは、2つの重複配置FBGの反射波長(2波長)の間隔を測定波長範囲の1/2以下に設定し(図3参照)、ピーク波長検出部25により検出されたピーク波長の個数が2の場合は測定波長範囲内と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で測定波長範囲の中間よりも長波長側の場合は長波長側の重複配置FBGの反射波長が測定波長範囲外と判断し、検出されたピーク波長の個数が1で測定波長範囲の中間よりも短波長側の場合は短波長側の重複配置FBGの反射波長が測定波長範囲外と判断する機能を有する。
【0087】
ピーク波長補正部27Aでは、例えば長波長側のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲Cでは測定されたピーク波長に反射波長間隔を加算して出力する。同様にして短波長側のピーク波長または両ピーク波長の中間に換算することもできる。
【0088】
また、測定された2つのピーク波長の平均値を算出して長波長側のピーク波長や短波長側のピーク波長や両ピーク波長の中間に換算しても良く、歪みの絶対値が小さい範囲Bの領域において、2つのピーク波長の平均化により測定精度が向上するという特徴を持つ。
【0089】
なお、図3は、2つの重複配置FBGの反射波長間隔が測定波長範囲の1/2の場合を図示したが、これに限られるものではなく、2つの重複配置FBGの反射波長間隔が測定波長範囲の1/2以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
【0090】
測定波長範囲をΔλmとし、2つの重複配置FBGの反射波長間隔をΔλsとすると、本実施形態に係る2つの重複配置FBGからの異なる2波長の反射光用いて被測定光ファイバ13Aの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数6】
で表される。
【0091】
よって、2つの重複配置FBGの反射波長間隔Δλsはなるべく大きい方が望ましく、Δλs=Δλm/2の場合、Δε=1.5Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大1.5倍の歪みを測定することができる。
【0092】
ここでは測定波長範囲が従来手法と同じ場合を図示したが、逆に歪み測定範囲を従来手法と同じにして、測定波長範囲を従来手法の2/3にすることもできる。測定波長範囲が狭くなると、レーザの波長掃引範囲も狭くすることができ、レーザの作製が容易になる。そして、レーザの掃引周波数を変えずに波長掃引範囲を狭くすると、波長掃引速度が遅くなりビート信号の周波数が低くなるので、受光器22の帯域やA/D変換器23のサンプリングレートを低くすることができ、装置が安価になる。または、波長掃引速度が遅くなると、ビート信号の周波数を高くすることなく測定距離範囲を長くすることができる。
【0093】
もし、波長掃引速度を変えずに波長掃引範囲を狭くすると、掃引周波数が高くなり測定の時間分解能が向上する。以下の実施形態においても同様に、本手法の効果を、歪み測定範囲の拡大、レーザの波長掃引範囲の縮小、ビート信号の周波数の低減、測定距離範囲の拡大、測定レートの向上に適宜割り振ることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るOFDR装置1Bにおいて、被測定光ファイバ13Bは、格子間隔が異なる3つの重複配置FBGを含む構成を有する。
【0095】
図4は、第2の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、格子間隔の異なる3つの重複配置FBGが重ねて書き込まれている場合の被測定光ファイバ13Bの歪みとピーク波長の変化量との関係特性をベースとしている。
【0096】
図4に示すように、3つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Bを用いた場合、被測定光ファイバ13Bからの反射光は、3つの重複配置FBGにそれぞれ対応する異なる波長を有する3つのピークが存在する。
【0097】
図4において、3つの重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1,λ2,λ3とする。両端の重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ3が測定波長範囲と等しく、隣接する反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3が異なる値に設定されている。被測定光ファイバ13Bを用いた場合、該被測定光ファイバ13Bからの反射光には図4のように波長の異なる3つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Bに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記3つのピーク波長が変化する。
【0098】
図4に示すグラフにおいて、横軸で表わされる歪み測定可能範囲に関しては4つの領域に区切られ歪み範囲A,B,C,Dが規定されている。縦軸で表わされる測定波長範囲に関しては、両端の重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ3に等しい測定波長範囲が2つの領域に区切られてaおよびdの領域が規定されるとともに、隣接する重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3のそれぞれ対応する波長間隔bおよびcが規定されている。
【0099】
上記3波長について歪み範囲A,B,C,Dと測定波長範囲の領域a,d、および波長間隔b,cを規定して上記3波長の重複配置FBGからの反射光を観察すると、図4に示すように、歪み範囲Aの領域では、λ2とλ3が測定波長範囲外でλ1のみが測定される。歪み範囲Bの領域では、λ3が測定波長範囲外でλ1とλ2が測定される。歪み範囲Cの領域では、λ1が測定波長範囲外でλ2とλ3が測定される。歪み範囲Dの領域では、λ1とλ2が測定波長範囲外でλ3のみが測定される。
【0100】
本実施形態に係るOFDR装置1Bにおいて、測定範囲外検出部26Bは、図4のグラフに示された関係特性および領域区分(歪み範囲A,B,C,D、測定波長範囲の領域a,d、および波長間隔b,c)が設定された検出条件データDsbを保持している。
【0101】
これにより、測定範囲外検出部26Bは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsbを参照して、ピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク数が1の場合は測定波長範囲の領域aにピークがある場合はλ2とλ3が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、測定波長範囲の領域dにピークがある場合はλ1とλ2が測定波長範囲外(範囲D)と判断する。
【0102】
また、検出されたピーク数が2の場合、測定範囲外検出部26Bは、ピーク波長の間隔がλ1−λ2の場合(波長間隔b参照)はλ3が測定波長範囲外(範囲B)と判断し、ピーク波長の間隔がλ2−λ3の場合(波長間隔c参照)はλ1が測定波長範囲外(範囲C)と判断する。実際にはピーク波長の測定誤差があるため、λ1−λ2とλ2−λ3の中間の波長間隔で弁別する。
【0103】
ピーク波長補正部27Bでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲Cでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ2を加算して出力し、範囲Dでは測定されたピーク波長にλ1−λ3を加算して出力する。同様にしてλ2やλ3や(λ1+λ3)/2に換算することもできる。
【0104】
また、測定された2つのピーク波長の平均値を算出して(λ1+λ3)/2に換算しても良く、歪みの絶対値が小さい範囲Bおよび範囲Cの領域において、2つのピーク波長の平均化により測定精度が向上するという特徴を持つ。
【0105】
図4では、λ1−λ3が測定波長範囲と等しい場合を図示したが、これに限られるものではなく、λ1−λ3が測定波長範囲以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
【0106】
本実施形態に係る3つの重複配置FBGからの異なる3波長の反射光の間隔を変えて被測定光ファイバ13Bの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数7】
で表される。
【0107】
よって、反射波長間隔λ1−λ3はなるべく大きい方が望ましく、λ1−λ3=Δλmの場合、Δε=2Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大2 倍の歪みを測定することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るOFDR装置1Cにおいて、被測定光ファイバ13Cは、格子間隔が異なる4つの重複配置FBGを含む構成を有する。
【0109】
図5は、第3の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、格子間隔の異なる4つの重複配置FBGが重ねて書き込まれている場合の被測定光ファイバ13Cの歪みとピーク波長の変化量との関係特性をベースとしている。
【0110】
図5に示すように、4つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Cを用いた場合、被測定光ファイバ13Cからの反射光は、4つの重複配置FBGにそれぞれ対応する異なる波長を有する4つのピークが存在する。図5において、4つの重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1,λ2,λ3,λ4とする。両端の重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ4が測定波長範囲の3/2と等しく、隣接する反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とλ3−λ4がそれぞれ異なる値に設定されている。
【0111】
被測定光ファイバ13Cを用いた場合、そこからの反射光には図5のように波長の異なる4つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Cに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記4つのピーク波長が変化する。
【0112】
図5に示すグラフにおいて、横軸で表わされる歪み測定可能範囲に関して6つの領域(歪み範囲)A,B,C,D,E,Fが規定されている。縦軸で表わされる測定波長範囲に関しては、測定波長範囲が3つの領域に区切られて領域a,d,fが規定されるとともに、隣接する重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とλ3−λ4のそれぞれ対応する波長間隔b、c、eが規定されている。
【0113】
上記4波長について歪み範囲A,B,C,D,E,Fと測定波長範囲の領域a,d,f、および波長間隔b、c,eを規定して上記4波長の重複配置FBGからの反射光を観察すると、図5に示すように、歪み範囲Aの領域では、λ2とλ3とλ4が測定波長範囲外でλ1のみが測定される。
【0114】
歪み範囲Bの領域では、λ3とλ4が測定波長範囲外でλ1とλ2が測定される。歪み範囲Cの領域では、λ1とλ4が測定波長範囲外でλ2とλ3が測定される。歪み範囲Dの領域では、λ1とλ2とλ4が測定波長範囲外でλ3のみが測定される。歪み範囲Eの領域では、λ1とλ2が測定波長範囲外でλ3とλ4が測定される。歪み範囲Fの領域では、λ1とλ2とλ3とが測定波長範囲外でλ4のみが測定される。
【0115】
本実施形態に係るOFDR装置1Cにおいて、測定範囲外検出部26Cは、図5のグラフに示された関係特性および領域区分(歪み範囲A〜F、および測定波長範囲のa,d,fの領域、および波長間隔b,c,eの設定がなされた検出条件データDscを保持している。
【0116】
これにより、測定範囲外検出部26Cは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDscを参照して、ピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク数が1の場合は測定波長範囲の領域aにピークがある場合はλ2とλ3とλ4が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、測定波長範囲の領域dにピークがある場合はλ1とλ2とλ4が測定波長範囲外(範囲D)と判断し、測定波長範囲の領域fにピークがある場合はλ1とλ2とλ3が測定波長範囲外(範囲F)と判断する。
【0117】
また、検出されたピーク数が2の場合、測定範囲外検出部26Cは、ピーク波長の間隔がλ1−λ2の場合(波長間隔b参照)はλ3とλ4が測定波長範囲外(範囲B)と判断し、ピーク波長の間隔がλ2−λ3の場合(波長間隔c参照)はλ1とλ4が測定波長範囲外(範囲C)と判断し、ピーク波長の間隔がλ3−λ4の場合(波長間隔e参照)はλ1とλ2が測定波長範囲外(範囲E)と判断する。
【0118】
ピーク波長補正部27Cでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲Cでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ2を加算して出力し、範囲Dでは測定されたピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Eでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Fでは測定されたピーク波長にλ1−λ4を加算して出力する。
【0119】
同様にして、λ2やλ3やλ4や(λ1+λ4)/2に換算することもできる。また、測定された2つのピーク波長の平均値を算出してλ1やλ2やλ3やλ4や(λ1+λ4)/2に換算しても良い。
【0120】
図5は、λ1−λ4が測定波長範囲の3/2倍と等しい場合を図示したが、これに限られるものではなく、λ1−λ4が測定波長範囲の3/2倍以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
【0121】
本実施形態に係る4つの重複配置FBGからの異なる4波長の反射光の間隔を変えて被測定光ファイバ13Cの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数8】
で表される。
【0122】
よって、反射波長間隔λ1−λ4はなるべく大きい方が望ましく、λ1−λ4=1.5Δλmの場合、Δε=2.5Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大2.5倍の歪みを測定することができる。
【0123】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係るOFDR装置1Dにおいて、被測定光ファイバ13Dは、格子間隔が異なる5つの重複配置FBGが重ねて書き込まれた構造を有する。
【0124】
図6は、第4の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフであり、5つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Dの歪みとピーク波長の変化量との関係特性がベースとなっている。
【0125】
図6に示すように、5つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Dを用いた場合、被測定光ファイバ13Dからの反射光には、5つの重複配置FBGにそれぞれ対応する異なる波長を有する5つのピークが存在する。図6において、5つの重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1,λ2,λ3,λ4,λ5とする。両端の重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ5が測定波長範囲の2倍であり、隣接する反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とλ3−λ4とλ4−λ5がそれぞれ異なる値に設定されている。
【0126】
上述した被測定光ファイバ13Dを用いた場合、該被測定光ファイバ13Dからの反射光には図6に示すように波長の異なる5つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Dに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記5つのピーク波長が変化する。
【0127】
5波長の重複配置FBGを有する被測定光ファイバ13Dを用いた、本実施形態においては、図6において、横軸で表わされる歪み測定可能範囲に関して7つの領域(歪み範囲)A,B,C,D,E,F,Gを規定するとともに、縦軸で表わされる測定波長範囲に関して、測定波長範囲を3つの領域a,d,gに区分けし、かつ、隣接する重複配置FBGの反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とλ3−λ4とλ4−λ5にそれぞれ対応する波長間隔b,c,e,fを規定する。
【0128】
そのうえで、上記5波長の重複配置FBGを用いた被測定光ファイバ13Dからの反射光を観察すると、図6に示すように、歪み範囲Aの領域では、λ2とλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ1のみが測定される。歪み範囲Bの領域では、λ3とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ1とλ2が測定される。歪み範囲Cの領域では、λ1とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ2とλ3が測定される。歪み範囲Dの領域では、λ1とλ2とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ3のみが測定される。歪み範囲Eの領域では、λ1とλ2とλ5が測定波長範囲外でλ3とλ4が測定される。歪み範囲Fの領域では、λ1とλ2とλ3が測定波長範囲外でλ4とλ5が測定される。歪み範囲Gの領域では、λ1とλ2とλ3とλ4が測定波長範囲外でλ5のみが測定される。
【0129】
本実施形態に係るOFDR装置1Dにおいて、測定範囲外検出部26Dは、図6に示す被測定光ファイバ13Dの歪みとピーク波長の変化量との関係特性と、歪み範囲A〜Gおよび測定波長範囲の領域a,d,g、および波長間隔b,c,e,fを関連付けた検出条件データDsdを保持している。
【0130】
これにより、OFDR装置1Dにおいて、測定範囲外検出部26Dは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsdを参照して、ピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出し、検出されたピーク数が1の場合は測定波長範囲の領域aにピークがある場合はλ2とλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、測定波長範囲の領域dにピークがある場合はλ1とλ2とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲D)と判断し、測定波長範囲の領域gにピークがある場合はλ1とλ2とλ3とλ4が測定波長範囲外(範囲G)と判断する。
【0131】
また、検出されたピーク数が2の場合、測定範囲外検出部26Dは、ピーク波長の間隔がλ1−λ2の場合(波長間隔b参照)はλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲B)と判断し、ピーク波長の間隔がλ2−λ3の場合(波長間隔c参照)はλ1とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲C)と判断し、ピーク波長の間隔がλ3−λ4の場合(波長間隔e参照)はλ1とλ2とλ5が測定波長範囲外(範囲E)と判断し、ピーク波長の間隔がλ4−λ5の場合(波長間隔f参照)はλ1とλ2とλ3が測定波長範囲外(範囲F)と判断する。
【0132】
ピーク波長補正部27Dでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲Cでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ2を加算して出力し、範囲Dでは測定されたピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Eでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Fでは測定された3つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ4を加算して出力し、範囲Gでは測定されたピーク波長にλ1−λ5を加算して出力する。
【0133】
同様にして、λ2やλ3やλ4やλ5や(λ1+λ5)/2に換算することもできる。また、測定された2つのピーク波長の平均値を算出してλ1やλ2やλ3やλ4やλ5や(λ1+λ5)/2に換算しても良い。
【0134】
図6は、λ1−λ5が測定波長範囲の2倍と等しい場合を図示したが、これに限られるものではなく、λ1−λ5が測定波長範囲の2倍以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
【0135】
本実施形態に係る5つの重複配置FBGからの異なる5波長の反射光の間隔を変えて被測定光ファイバ13Dの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数9】
で表される。
【0136】
よって、反射波長間隔λ1−λ5はなるべく大きい方が望ましく、λ1−λ5=2Δλmの場合、Δε=3Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大3倍の歪みを測定することができる。
【0137】
同様にして重複配置FBGの数をさらに増やすことにより、更に歪み測定可能範囲を広げることができる。重複配置FBGの数をn個とすると、重複配置FBGの反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差は測定波長範囲の(n−1)/2倍以下となり、従来手法と比べて同じ測定波長範囲で最大(n+1)/2倍の歪みを測定することができる。
【0138】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、重複配置FBGの反射率(強度)をそれぞれ異なる値にすることにより、測定されたピーク波長がどの反射波長に対応するかを識別し、測定波長範囲外かどうかを検出するものである。これを実現するために、本実施形態に係るOFDR装置1Eにおいて、被測定光ファイバ13Eは、格子間隔および反射率が異なる複数の重複配置FBGが重ねて書き込まれた構造を有する。
【0139】
図7は、第5の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、格子間隔および反射率が異なる3つの重複配置FBGが重ねて書き込まれている被測定光ファイバ13Eの歪みとピーク波長の変化量およびその反射率との関係特性をベースとしている。
【0140】
図7において、各重複配置FBGの反射波長は等間隔とし、長波長側から順にλ1,λ2,λ3とする。両端の反射波長の間隔λ1−λ3が測定波長範囲の2倍と等しく、隣接する反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とが同じ値に設定されている。また、各重複配置FBGの相対反射率を長波長側から順に0、−3、−6デシベル(dB)とする。なお、反射率の表現に関し、図7では、太線は高い反射率を表わし、細線は低い反射率を表わしている。
【0141】
上述した格子間隔および反射率が異なる3つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Eを用いた場合、被測定光ファイバ13Eからの反射光には図7に示すように3つの重複配置FBGにそれぞれ対応する異なる波長および反射率を有する3つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Eに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら3つのピーク波長が変化する。
【0142】
被測定光ファイバ13Eを用いた、本実施形態においては、図7において、横軸で表わされる歪み測定可能範囲に関して3つの領域(歪み範囲)A,B,Cを規定するとともに、縦軸で表わされる測定波長範囲に関して、1つの領域を規定する。
【0143】
そのうえで、上記の反射率が異なる3波長の重複配置FBGを用いた被測定光ファイバ13Eからの反射光を観察すると、図7に示すように、歪み範囲Aの領域では、λ2とλ3が測定波長範囲外でλ1のみが測定される。歪み範囲Bの領域では、λ1とλ3が測定波長範囲外でλ2のみが測定される。歪み範囲Cの領域では、λ1とλ2が測定波長範囲外でλ3のみが測定される。
【0144】
本実施形態に係るOFDR装置1Eおいて、測定範囲外検出部26Eは、図7に示す被測定光ファイバ13Eの歪みとピーク波長の変化量および反射率(ピーク強度)との関係特性と、歪み範囲A〜Cおよび測定波長範囲を関連付けた検出条件データDseを保持している。
【0145】
これにより、OFDR装置1Eにおいて、測定範囲外検出部26Eは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDseを参照して、ピーク波長検出部25により検出された1つの重複配置FBGの反射光のピーク波長の反射率を弁別して反射率が0dBとみなされる場合はλ2とλ3が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、反射率が−3dBとみなされる場合はλ1とλ3が測定波長範囲外(範囲B)と判断し、反射率が−6dBとみなされる場合はλ1とλ2が測定波長範囲外(範囲C)と判断する。
【0146】
ピーク波長補正部27Eでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定されたピーク波長にλ1−λ2を加算して出力し、範囲Cでは測定されたピーク波長にλ1−λ3を加算して出力する。同様にして、λ2やλ3や(λ1+λ3)/2に換算することもできる。ここでは各重複配置FBGの相対反射率を長波長側から順に0,−3,−6dBとしたが、歪みが小さい領域(範囲B)において測定誤差が小さくなるように各重複配置FBGの相対反射率を長波長側から順に−3,0,−6dBのようにしても良い。
【0147】
図7においては、λ1−λ3が測定波長範囲の2倍と等しい場合を図示したが、これに限られるものではなく、λ1−λ3が測定波長の2倍以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
【0148】
本実施形態に係る3つの重複配置FBGからの異なる3波長の反射率を用いて被測定光ファイバ13Eの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数10】
で表される。
【0149】
よって、反射波長間隔λ1−λ3はなるべく大きい方が望ましく、λ1−λ3=2Δλmの場合、Δε=3Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大3倍の歪みを測定することができる。
【0150】
重複配置FBGの反射率を変える方法は重複配置FBGの数が3以外の場合にも同様に適用することができる。重複配置FBGの数をn個とすると、重複配置FBGの反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差は測定波長範囲の(n−1)倍以下となり、従来手法と比べて同じ測定波長範囲で最大n倍の歪みを測定することができる。
【0151】
また、重複配置FBGの反射波長の間隔を変える方法と重複配置FBGの反射率を変える方法を併用して、より多くの反射波長数に対応したり、冗長化により測定波長範囲外の検出をより確実に行うことができる。
【0152】
(第6の実施形態)
第5の実施形態では、測定されたピーク波長の強度(ピーク強度)によって範囲A〜Cを判断している。しかし、被測定光ファイバ13Eの曲げが大きい場合は、曲げによって損失が発生しピーク強度が低下する場合があり、ピーク強度による範囲A〜Cの判断に誤りが発生する場合がある。このような場合は、測定波長範囲内で複数のピークを測定しそれらの強度差によって範囲を判断する方が望ましい。
【0153】
第6の実施形態では、重複配置FBGの反射率(強度)をそれぞれ異なる値とし、隣接する重複配置FBGの反射率の差から、測定されたピーク波長がどの反射波長に対応するかを識別し、測定波長範囲外かどうかを検出するものである。これを実現するために、第5の実施形態に係るOFDR装置1Fにおいて、被測定光ファイバ13Fは、格子間隔および反射率が異なる複数の重複配置FBGが重ねて書き込まれた構造を有する。また、測定範囲外検出部26Fは、歪み範囲を各重複配置FBGのピーク波長の反射率差を使って検出するための検出条件データDsfを保持している。
【0154】
図8は、第6の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、特に、格子間隔および反射率が異なる5つの重複配置FBGが重ねて書き込まれている被測定光ファイバ13Fの歪みとピーク波長の変化量およびその反射率との関係特性をベースとしている。
【0155】
図8において、各重複配置FBGの反射波長は等間隔とし、長波長側から順にλ1,λ2,λ3,λ4,λ5とする。両端の反射波長の間隔λ1−λ5が測定波長範囲の2倍と等しく、隣接する反射波長の間隔λ1−λ2とλ2−λ3とλ3−λ4とλ4−λ5とが全て同じ値に設定されている。また、各重複配置FBGの相対反射率を長波長側から順に0、−3、0、−6、0dBとする。なお、反射率の表現に関し、図7では、太線は高い反射率を表わし、細線は低い反射率を表わしている。
【0156】
上述した格子間隔および反射率が異なる5つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Fを用いた場合、被測定光ファイバ13Fからの反射光には図8に示すように5つの重複配置FBGにそれぞれ対応する異なる波長および反射率を有する5つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Fに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら5つのピーク波長が変化する。
【0157】
被測定光ファイバ13Fを用いた、本実施形態においては、図8において、横軸で表わされる歪み測定可能範囲に関して6つの領域(歪み範囲)A,B,C,D,E,Fを規定するとともに、縦軸で表わされる測定波長範囲に関しては、2つの領域a、fを規定し、かつ、隣接する重複配置FBGの反射波長の反射率差−3、+3、−6、+6dBを規定する。
【0158】
そのうえで、上記5つの重複配置FBGを用いた被測定光ファイバ13Fからの反射光を観察すると、図8に示すように、歪み範囲Aの領域では、λ2とλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ1のみが測定される。歪み範囲Bの領域では、λ3とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ1とλ2が測定される。歪み範囲Cの領域では、λ1とλ4とλ5が測定波長範囲外でλ2とλ3が測定される。歪み範囲Dの領域では、λ1とλ2とλ5が測定波長範囲外でλ3とλ4が測定される。歪み範囲Eの領域では、λ1とλ2とλ3が測定波長範囲外でλ4とλ5が測定される。歪み範囲Fの領域では、λ1とλ2とλ3とλ4が測定波長範囲外でλ5のみが測定される。
【0159】
本実施形態に係るOFDR装置1Fにおいて、測定範囲外検出部26Fは、図8に示す被測定光ファイバ13Fの歪みとピーク波長の変化量との関係特性と、歪み範囲A〜F、測定波長範囲の領域aおよびf、隣接する重複配置FBGのピーク波長の反射率差が関連付けられた検出条件データDsfを保持している。
【0160】
これにより、本実施形態に係るOFDR装置1Fにおいて、測定範囲外検出部26Fは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsfを参照して、ピーク波長検出部25により検出されたピーク波長の個数をまず検出する。ここで、検出されたピークの数が1の場合、測定範囲外検出部26Fは、測定波長範囲の領域aにピークがある場合はλ2とλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲A)と判断し、測定波長範囲の領域fにピークがある場合はλ1とλ2とλ3とλ4が測定波長範囲外(範囲F)と判断する。
【0161】
また、検出されたピークの数が2の場合、測定範囲外検出部26Fは、長波長側のピークの強度に対する短波長側のピークの強度が−3dBの場合はλ3とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲B)と判断し、長波長側のピークの強度に対する短波長側のピークの強度が+3dBの場合はλ1とλ4とλ5が測定波長範囲外(範囲C)と判断し、長波長側のピークの強度に対する短波長側のピークの強度が−6dBの場合はλ1とλ2とλ5が測定波長範囲外(範囲D)と判断し、長波長側のピークの強度に対する短波長側のピークの強度が+6dBの場合はλ1とλ2とλ3が測定波長範囲外(範囲E)と判断する。
【0162】
ピーク波長補正部27Fでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲Bでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲Cでは測定された2つのピーク波長のうち短波長側(強度が大きい)のピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Dでは測定された2つのピーク波長のうち長波長側(強度が大きい)のピーク波長にλ1−λ3を加算して出力し、範囲Eでは測定された2つのピーク波長のうち短波長側(強度が大きい)のピーク波長にλ1−λ5を加算して出力し、範囲Fでは測定されたピーク波長にλ1−λ5を加算して出力する。2つのピーク波長が測定された場合は、どちらのピーク波長を用いて換算しても良いが、強度が大きい方のピーク波長を用いる方が波長測定精度の点で望ましい。
【0163】
同様にして、λ2やλ3やλ4やλ5や(λ1+λ5)/2に換算することもできる。また、測定された2つのピーク波長の平均値を算出してλ1やλ2やλ3やλ4やλ5や(λ1+λ5)/2に換算しても良い。
【0164】
図8は、λ1−λ5が測定波長範囲の2倍と等しい場合を図示したが、これに限られるものではなく、λ1−λ5が測定波長範囲の2倍以下であれば測定波長範囲外の検出が可能である。
本実施形態に係る5つの重複配置FBGからの異なる5波長の反射光の反射率差を用いて被測定光ファイバ13Fの歪みを測定する方法によれば、歪み測定可能範囲Δεは、
【数11】
で表される。
【0165】
よって、反射波長間隔λ1−λ5はなるべく大きい方が望ましく、λ1−λ5=2Δλmの場合、Δε=3Δλm/aとなり、従来手法(図18)と比べて同じ測定波長範囲で最大3倍の歪みを測定することができる。
【0166】
本実施形態に係る重複配置FBGの反射率を変える測定方法は、反射波長数が5以外の場合、すなわち5つ以外の重複配置FBGを用いる構成においても同様に適用することができる。重複配置FBGの数をn個とすると、各重複配置FBGの反射波長のうちの最長の反射波長と最短の反射波長との差は測定波長範囲の(n−1)/2倍以下となり、従来手法と比べて同じ測定波長範囲で最大(n+1)/2倍の歪みを測定することができる。また、重複配置FBGの反射波長の間隔を変える測定方法と重複配置FBGの反射率差を変える測定方法を併用して、より多くの反射波長数に対応することができ、冗長化により測定波長範囲外の検出をより確実にすることもできる。
【0167】
重複配置FBGの反射波長数をどこまで増やすことができるかは、重複配置FBGの反射波長間隔を狭くしても分離して検出できるかによって決まり、スペクトログラムの波長分解能に依存する。重複配置FBGの反射波長の間隔を変える測定方法では最小の反射波長間隔によって重複配置FBGの反射波長数が決まるため、重複配置FBGの反射率または反射率差を変える測定方法の方が反射波長間隔が一定で反射波長数を増やしやすいという特徴を有する。
【0168】
(第7の実施形態)
第2〜第4の実施形態に係る重複配置FBGの波長間隔を変える方法、第5の実施形態に係る重複配置FBGの反射率を変える方法、第6の実施形態に係る重複配置FBGの反射率差を変える方法では、歪み測定可能範囲を更に広げるためにはそれぞれ波長間隔、反射率、反射率差の多値度を上げる必要があり、測定データからの弁別が難しくなる。そこで、多値度を上げずに歪み測定可能範囲を更に広げる方法として、疑似ランダムパターンを用いる方法を以下に説明する。
【0169】
疑似ランダムパターン(Pseudo Random Binary Sequence、またはPseudo Random Bit Sequence; PRBS)は、周期の長いビットパターンとして従来から知られている。図9は、PRBSを生成するPRBS生成回路の構成例を示すブロック図である。
【0170】
図9に示すPRBS生成回路30は、3つのレジスタ31,32,33と、レジスタ31の出力とレジスタ33の出力を加算してその加算結果をレジスタ31に入力する1ビット加算器34を備えて構成される。レジスタ31,32,33は、3ビットのシフトレジスタを構成し、1ビット加算器34は排他的論理和(XOR)ゲートで構成されている。PRBS生成回路30は、少なくとも1つのビットが1であるデータをシフトレジスタの初期値として設定し、レジスタ31,32,33の順にシフトすることにより疑似ランダムパターンを出力する構成となっている。
【0171】
図9に示した3段のPRBS発生回路30では、1周期が0011101の7ビット周期のパターンが繰返し出力される(001110100111010011101・・・)。PRBS発生回路30の構成によれば、3ビットのデータがあれば7ビット周期のPRBSパターン中のどの位置かが一意に分かる。例えば100という3ビットのデータはPRBSパターン001110100の一番右の位置にのみ存在する。
【0172】
シフトレジスタとXORゲートを用いたPRBS生成回路については、3段以外の段数を有するものも知られている。また、この種のPRBS生成回路は、シフトレジスタとXORゲートを用いたハードウエア構成のものばかりでなく、ソフトウエア演算によってPRBSパターンを生成するものによっても実現できる。一般にm段のPRBSは2m−1の周期を持ち、mビットのデータがあれば2m−1ビット周期のPRBSパターンのうちのどの位置かが分かる。
【0173】
表1は、PRBSパターンの段数の周期の関係を示している。表1に示すように、PRBSパターンの段数の段数が増えるほど(2m−1)/mが増加し、比較的少ないビット数のデータで長い周期のうちの位置が分かることが理解できる。表1ではm=10までの例を示したが、更に多段のPRBSも存在することは言うまでもない。本実施形態は、上述したPRBSパターンに基づいて重複配置FBGの波長を変えることにより歪み測定可能範囲を広げるものである。
【表1】
【0174】
図10は、第7の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、被測定光ファイバ13Gが格子間隔が異なる9つの重複配置FBGを含む構成であることを前提とし、この被測定光ファイバ13Gの歪みと9つの重複配置FBGに対応するピーク波長の変化量との関係特性がベースとなっている。さらに図10においては、上述したPRBSパターンにより波長を変える処理に係るΔλ1,Δλs,0,+1,−1等のパラメータも設定されている。
【0175】
図10において、格子間隔が異なる9つの重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1〜λ9とする。このうちλ1、λ2、λ6、λ8、λ9が等間隔の波長位置に合わせて設定され、λ3、λ4、λ5、λ7が等間隔の波長位置よりも短波長にシフトされている。式で表すと、
【数12】
となる。
【0176】
ここで、Δλsは等間隔の波長位置の間隔、Δλ1は等間隔の波長位置からのシフト量であり、Δλ1<Δλsである。biはPRBSのi番目のビットを表す。つまり、等間隔の波長位置に設定されている重複配置FBGを0、等間隔の波長位置よりも短波長に設定されている重複配置FBGを1とみなすと、λ1〜λ9が3段のPRBSパターン001110100になっている。ここでは、PRBSパターンに従って等間隔の波長位置に設定または等間隔の波長位置よりも短波長側にシフトしたが、等間隔の波長位置よりも長波長側にシフトしても良く、PRBSパターンに従って等間隔の波長位置からのシフト量を変えるようにしても良い。変形例として、同じ3段のPRBSでも異なる位相のパターンにしても良い。
【0177】
上述したように、9つの重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Gを用いると、被測定光ファイバ13Gからの反射光には、図10に示すように波長の異なる9つのピークが存在し、被測定光ファイバ13Gに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記9つのピーク波長が変化する。
【0178】
このように変化するピーク波長を対象とする本実施形態に係る光周波数領域反射測定原理について説明する。図10において、被測定光ファイバ13Gの歪みの量を示す横軸方向にそれぞれ適宜な幅の範囲A〜Kを設定するとともに、ピーク波長の値を示す縦軸方向に、測定波長範囲を対象に領域a,b,j,kを設定し、さらにPRBSパターンに基づいてピーク波長の波長を変えるルール(0、+1、−1)を設定することにより以下の測定が可能となる。
【0179】
すなわち、図10に示す設定に基づいた本実施形態においては、歪み範囲Aの領域では、λ1のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Bの領域では、λ1とλ2が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲C〜Iの領域では、少なくとも3つのピーク波長が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Jの領域では、λ8とλ9が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Kの領域では、λ9のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。
【0180】
したがって、本実施形態に係るOFDR装置1Gにおいて、測定範囲外検出部26Gは、図10に示す関係特性、領域区分(歪み範囲A〜K)、測定波長範囲の領域a,b,j,k、およびPRBSパターンに基づいて波長を変えるルール等を含む検出条件データDsgを保持することにより、以下の測定波長範囲外検出処理を行うことができる。
【0181】
すなわち、上記測定波長範囲外検出処理に際し、測定範囲外検出部26Gは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsgを参照して、まずピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出する。
【0182】
次いで、測定範囲外検出部26Gは、検出されたピーク数が1の場合、測定波長範囲の領域aにピークがある場合は範囲Aと判断し、測定波長範囲の領域kにピークがある場合は範囲Kと判断する。ピーク数が2の場合は、長波長側のピークが測定波長範囲の領域bにある場合は範囲Bと判断し、長波長側のピークが測定波長範囲の領域jにある場合は範囲Jと判断する。
【0183】
また、ピーク数が3以上の場合、測定範囲外検出部26Gは、測定された短波長側の2つのピーク間隔Δλxが前述した等間隔の波長間隔(Δλs−Δλ1/2≦Δλx≦Δλs+Δλ1/2)か、前述した等間隔より広い波長間隔(Δλx>Δλs+Δλ1/2)か、前述した等間隔より狭い波長間隔(Δλx<Δλs−Δλ1/2)かを弁別してそれぞれ0,+1,−1に変換する。
【0184】
また、測定範囲外検出部26Gは、PRBSパターンは段数分0が続くことは無いので2つのピーク間隔が(0,0)の場合は111に変換し、ピーク間隔が+1の場合は01に変換し、ピーク間隔が−1の場合は10に変換し、ピーク間隔が0の場合は隣接するビットと同じ値に変換する。即ち、2つのピーク間隔が(0,+1)の場合は001に変換し、(+1,0)の場合は011に変換し、(0,0)の場合は111に変換し、(0,−1)の場合は110に変換し、(−1,+1)の場合は101に変換し、(+1,−1)の場合は010に変換し、(−1,0)の場合は100に変換する。
【0185】
次いで、測定範囲外検出部26Gは、3ビットのパターンが001の場合は範囲Cと判断し、011の場合は範囲Dと判断し、111の場合は範囲Eと判断し、110の場合は範囲Fと判断し、101の場合は範囲Gと判断し、010の場合は範囲Hと判断し、100の場合は範囲Iと判断する。このように、3段PRBSの特性により3ビットのパターンからC〜Iの7つの範囲を判断することができる。以上により範囲A〜Kのいずれかを判断することができる。
【0186】
ピーク波長補正部27Gでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲B,Cでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲D〜Iでは測定されたピーク波長のうち短波長側から3つ目のピーク波長にλ1−λ2,λ1−λ3,・・・,λ1−λ7を加算して出力し、範囲J,Kでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ8,λ1−λ9を加算して出力する。
【0187】
同様にして、λ2〜λ9や(λ1+λ9)/2に換算することもできる。ここではPRBSの段数に等しい数のピーク波長を測定したが、PRBSの段数より多くの数のピーク波長を測定して範囲の判定をより確実にすることもできる。また、測定された複数のピーク波長の平均値を算出することにより、歪みの絶対値が小さい領域の測定精度が向上するようにすることもできる。そして、PRBSの段数を増やすとPRBSの周期が長くなり、Δλs−Δλ1,Δλs,Δλs+Δλ1の3値のピーク波長間隔を用いて更に歪み測定可能範囲を大きくすることができる。
【0188】
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、上述したPRBSパターンに基づいて重複配置FBGの波長間隔を変えることにより歪み測定可能範囲を広げるものである。
【0189】
図11は、第8の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、被測定光ファイバ13Hが格子間隔の異なる10個の重複配置FBGを含む構成を前提とし、この被測定光ファイバ13Hの歪みと10個の重複配置FBGに対応するピーク波長の変化量との関係特性がベースとなっている。さらに図11には、上述したPRBSパターンにより波長間隔を変える処理に係るΔλ0,Δλ1,0,1等のパラメータも示されている。
【0190】
図11において、格子間隔が異なる10個の重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1〜λ10とする。隣接する反射波長の間隔λ1−λ2,λ2−λ3,・・・,λ9−λ10が、Δλ0またはΔλ1に設定され、Δλ0≠Δλ1である。式で表すと、
【数13】
となる。
【0191】
ここで、bはPRBSのi番目のビットを表す。つまり、波長間隔Δλ0を0、Δλ1を1とみなすと、そのパターンがPRBSになっている。ここでは、例として3段のPRBSで001110100のパターンを図示している。なお、変形例としては、同じ3段のPRBSでも異なる位相のパターンにしても良い。
【0192】
上述したように、10個の重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Hを用いると、被測定光ファイバ13Hからの反射光には、図11に示すように波長の異なる10個のピークが存在し、被測定光ファイバ13Hに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記10個のピーク波長が変化する。
【0193】
このように変化するピーク波長を対象とする本実施形態に係る光周波数領域反射測定原理について説明する。図11において、被測定光ファイバ13Hの歪みの量を示す横軸方向にそれぞれ適宜な幅で範囲A〜Mを設定するとともに、ピーク波長の値を示す縦軸方向に、測定波長範囲を対象に領域a,b,c,l,m,kを設定し、さらにPRBSパターンに基づいてピーク波長の波長間隔を変えるルール(0,1)を考慮することによって以下の測定が可能となる。
【0194】
すなわち、図11に示す設定に基づいた本実施形態においては、歪み範囲Aの領域では、λ1のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Bの領域では、λ1とλ2が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Cの領域では、λ1,λ2,λ3が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲D〜Jの領域では、少なくとも4つのピーク波長が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Kの領域では、λ8,λ9,λ10が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Lの領域では、λ9とλ10が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Mの領域では、λ10のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。
【0195】
したがって、本実施形態に係るOFDR装置1Hにおいて、測定範囲外検出部26Hは、図11に示す関係特性、領域区分(歪み範囲A〜M)、測定波長範囲の領域a,b,c,l,m,k、およびPRBSパターンに基づいて波長間隔を変えるルール等を含む検出条件データDshを保持することにより、以下の測定波長範囲外検出処理を行うことができる。
【0196】
すなわち、上記測定波長範囲外検出処理に際し、測定範囲外検出部26Hは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDshを参照して、まずピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出する。
【0197】
次いで、測定範囲外検出部26Hは、検出されたピーク数が1の場合、測定波長範囲の領域aにピークがある場合は範囲Aと判断し、測定波長範囲の領域mにピークがある場合は範囲Mと判断する。ピーク数が2の場合は、長波長側のピークが測定波長範囲bの領域にある場合は範囲Bと判断し、長波長側のピークが測定波長範囲の領域lにある場合は範囲Lと判断する。ピーク数が3の場合は、長波長側のピークが測定波長範囲の領域cにある場合は範囲Cと判断し、長波長側のピークが測定波長範囲の領域kにある場合は範囲Kと判断する。
【0198】
また、測定範囲外検出部26Hは、ピーク数が4以上の場合は、短波長側の3つのピーク間隔がΔλ0かΔλ1かを弁別(λi−λi+1>(Δλ0+Δλ1)/2が成り立つか否かを弁別)して0または1に変換し、そのパターンが001の場合は範囲Dと判断し、011の場合は範囲Eと判断し、111の場合は範囲Fと判断し、110の場合は範囲Gと判断し、101の場合は範囲Hと判断し、010の場合は範囲Iと判断し、100の場合は範Jと判断する。このように、3段PRBSの特性により3つのピーク間隔のパターンからD〜Jの7つの範囲を判断することができる。以上により範囲A〜Mのいずれかを判断することができる。
【0199】
ピーク波長補正部27Hでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲B,C,Dでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲E〜Jでは測定されたピーク波長のうち短波長側から4つ目のピーク波長にλ1−λ2,λ1−λ3,・・・,λ1−λ7を加算して出力し、範囲K〜Mでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ8,λ1−λ9,λ1−λ10を加算して出力する。同様にしてλ2〜λ10や(λ1+λ10)/2に換算することもできる。
【0200】
ここではPRBSの段数に等しい数のピーク波長間隔を測定したが、PRBSの段数より多くの数のピーク波長間隔を測定して範囲の判定をより確実にすることもできる。また、測定された複数のピーク波長の平均値を算出することにより、歪みの絶対値が小さい領域の測定精度が向上するようにすることもできる。そして、PRBSの段数を増やすとPRBSの周期が長くなり、Δλ0とΔλ1の2値のピーク波長間隔を用いて更に歪み測定可能範囲を大きくすることができる。
【0201】
(第9の実施形態)
PRBSを用いた方法においても、反射波長の間隔の代わりに重複配置FBGの反射率を変えるようにすることも可能である。第9の実施形態では、PRBSパターンに基づいて重複配置FBGの反射率を変えることにより歪み測定可能範囲を広げるものである。
【0202】
図12は、第9の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、被測定光ファイバ13Iが格子間隔の異なる9個の重複配置FBGを含む構成を前提とし、被測定光ファイバ13Iの歪みと9個の重複配置FBGに対応するピーク波長の変化量との関係特性がベースとなっている。さらに図12においては、上述したPRBSパターンにより反射率を変える処理に係る各ピーク波長の反射率(r1〜r9)や、+3、0,−3等のパラメータも設定されている。
【0203】
図12において、格子間隔が異なる9個の重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1〜λ9とし、これら反射波長の相対反射率を長波長側からr1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9(単位はdB)とする。式で表すと、
【数14】
となる。
【0204】
ここで、bはPRBSのi番目のビットを表し、R0>R1とする。相対反射率r1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9は、例えば図12のように0,0,−3,−3,−3,0,−3,0,0dBに設定されている。相対反射率0dBを0、−3dBを1とみなすと、そのパターンがPRBSになっている。ここでは、例として3段のPRBSで001110100のパターンを図示している。同じ3段のPRBSでも異なる位相のパターンにしても良い。
【0205】
上述したように、9個の重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Iを用いると、被測定光ファイバ13Iからの反射光には、図12に示すように波長の異なる9個のピークが存在し、被測定光ファイバ13Iに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記9個のピーク波長が変化する。
【0206】
このように変化するピーク波長を対象とする本実施形態に係る光周波数領域反射測定原理について説明する。図12において、被測定光ファイバ13Iの歪みの量を示す横軸方向にそれぞれ適宜な幅で範囲A〜Kを設定するとともに、ピーク波長の値を示す縦軸方向に、測定波長範囲を対象に領域a,b,j,kを設定し、さらにPRBSパターンに基づいてピーク波長の反射率を変えるルール(−3,0、+3)を考慮することによって以下の測定が可能となる。
【0207】
すなわち、図12に示す設定に基づいた本実施形態においては、歪み範囲Aの領域では、λ1のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Bの領域では、λ1とλ2が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲C〜Iの領域では、3つのピーク波長が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Jの領域では、λ8とλ9が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Kの領域では、λ9のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。
【0208】
したがって、本実施形態に係るOFDR装置1Iにおいて、測定範囲外検出部26Iは、図12に示す関係特性、領域区分(歪み範囲A〜K)、測定波長範囲の領域a,b,j,k、およびPRBSパターンに基づいて反射率(ピーク強度)を変えるルール等を含む検出条件データDsiを保持することにより、以下の測定波長範囲外検出処理を行うことができる。
【0209】
すなわち、上記測定波長範囲外検出処理に際し、測定範囲外検出部26Iは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsiを参照して、まずピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出する。
【0210】
次いで、測定範囲外検出部26Iは、検出されたピーク数が1の場合は、測定波長範囲の領域aにピークがある場合は範囲Aと判断し、測定波長範囲の領域kにピークがある場合は範囲Kと判断する。ピーク数が2の場合は、長波長側のピークが測定波長範囲の領域bにある場合は範囲Bと判断し、長波長側のピークが測定波長範囲の領域jにある場合は範囲Jと判断する。
【0211】
ピーク数が3の場合、測定範囲外検出部26Iは、3つのピーク強度から重複配置FBGの反射率を推定する。ピーク強度の絶対値によって重複配置FBGの反射率を推定することもできるが、被測定光ファイバ13Iの曲げによって損失が発生しピーク強度が低下する場合があるため、ピーク強度の差(dB単位での差)を検出する方が望ましい。
【0212】
上記推定処理において、測定範囲外検出部26Iは、2つのピーク強度差Δrxがゼロ((R1−R0)/2≦Δrx≦(R0−R1)/2)か、正(Δrx>(R0−R1)/2)か、負(Δrx<(R1−R0)/2)かを弁別してそれぞれ0,+3,−3に変換する。PRBSは段数分0が連続することは無いので、2つのピーク強度差が(0,0)の場合は111に変換し、ピーク強度差が−3の場合は01に変換し、ピーク強度差が+3の場合は10に変換し、ピーク強度差が0の場合は隣接するビットと同じ値に変換する。
【0213】
即ち、測定範囲外検出部26Iは、2つのピーク強度差が(0,−3)の場合は001に変換し、(−3,0)の場合は011に変換し、(0,0)の場合は111に変換し、(0,+3)の場合は110に変換し、(+3,−3)の場合は101に変換し、(−3,+3)の場合は010に変換し、(+3,0)の場合は100に変換する。
【0214】
次いで、測定範囲外検出部26Iは、3ビットのパターンが001の場合は範囲Cと判断し、011の場合は範囲Dと判断し、111の場合は範囲Eと判断し、110の場合は範囲Fと判断し、101の場合は範囲Gと判断し、010の場合は範囲Hと判断し、100の場合は範囲Iと判断する。このようにして3段PRBSの特性により3つの反射率のパターンからC〜Iの7つの範囲を識別することができる。以上により範囲A〜Kのいずれかを判断することができる。
【0215】
ピーク波長補正部27Iでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲B,Cでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲D〜Jでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ2,λ1−λ3,・・・,λ1−λ8を加算して出力し、範囲Kでは測定されたピーク波長にλ1−λ9を加算して出力する。
【0216】
同様にしてλ2〜λ9や(λ1+λ9)/2に換算することもできる。また、反射率の高いピーク波長を採用したり、測定された複数のピーク波長の平均値を算出したり、反射率に応じて重みをつけて複数のピーク波長の平均値を算出したりすることにより、測定精度を向上させることもできる。そして、PRBSの段数を増やすとPRBSの周期が長くなり、R1−R0と0とR0−R1の3値の反射率差を用いて更に歪み測定可能範囲を大きくすることができる。
【0217】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、PRBSパターンに基づいて重複配置FBGの反射率差を変えることにより歪み測定可能範囲を広げるものである。
【0218】
図13は、第10の実施形態に係る測定波長範囲外検出条件を示すグラフである。このグラフは、被測定光ファイバ13Jが格子間隔が異なる例えば10個の重複配置FBGを含む構成を前提とし、被測定光ファイバ13Jの歪みと10個の重複配置FBGに対応するピーク波長の変化量との関係特性をベースとしている。さらに図13には、上述したPRBSパターンにより反射率差を変える処理に係る各ピーク波長の反射率(r1〜r10)およびこれらの反射率差に関するパラメータも示されている。
【0219】
図13において、格子間隔が異なる10個の重複配置FBGの反射波長を長波長側から順にλ1〜λ10とし、これら反射波長の相対反射率を長波長側からr1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9,r10(単位はdB)とする。また、隣接する反射波長の反射率差がΔR0またはΔR1に設定される。式で表すと、
【数15】
となる。
【0220】
ここで、bはPRBSのi番目のビットを表し、ΔR0>R1とする。また、例えば図13のように、各重複配置FBGの相対反射率r1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9,r10を、−6,−3,0,−3,−6,−9,−6,−9,−6,−3dBとすると、隣接する反射波長の反射率差は+3,+3,−3,−3,−3,+3,−3,+3,+3dBとなり、反射率差+3dBを0、−3dBを1に対応させると001110100の3段のPRBSパターンになっている。同じ3段のPRBSでも異なる位相のパターンにしても良い。
【0221】
上述したように、10個の重複配置FBGを含む被測定光ファイバ13Jを用いると、被測定光ファイバ13Jからの反射光には、図13に示すように波長の異なる10個のピークが存在し、被測定光ファイバ13Jに歪みが加わるとピーク波長の間隔をほぼ保ちながら上記10個のピーク波長が変化する。
【0222】
このように変化するピーク波長を対象とする本実施形態に係る光周波数領域反射測定原理について説明する。図13において、被測定光ファイバ13Jの歪みの量を示す横軸方向にそれぞれ適宜な幅で範囲A〜Mを設定するとともに、ピーク波長の値を示す縦軸方向に、測定波長範囲を対象に領域a,b,c,k,l,mを設定し、さらにPRBSパターンに基づいてピーク波長の反射率差を変えるルール(+3,−3,r1〜r10)を考慮することによって以下の測定が可能となる。
【0223】
すなわち、図13に示す設定に基づいた本実施形態においては、歪み範囲Aの領域では、λ1のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Bの領域では、λ1とλ2が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Cの領域では、λ1とλ2とλ3が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲D〜Jの領域では、4つのピーク波長が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Kの領域では、λ8とλ9とλ10が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Lの領域では、λ9とλ10が測定され、それ以外は測定波長範囲外である。歪み範囲Mの領域では、λ10のみが測定され、それ以外は測定波長範囲外である。
【0224】
したがって、本実施形態に係るOFDR装置1Jにおいて、測定範囲外検出部26Jは、図13に示す関係特性、領域区分(歪み範囲A〜M)、測定波長範囲の領域a,b,c,k,l,m、およびPRBSパターンに基づいて反射率差を変えるルール等を含む検出条件データDsjを保持することにより、以下の測定波長範囲外検出処理を行うことができる。
【0225】
すなわち、上記測定波長範囲外検出処理に際し、測定範囲外検出部26Jは、ピーク波長検出部25の出力を取込むと、上記検出条件データDsjを参照して、まずピーク波長検出部25により検出された重複配置FBGの反射光のピーク波長の個数を検出する。
【0226】
次いで、測定範囲外検出部26Jは、検出されたピーク数が1の場合は、測定波長範囲の領域aにピークがある場合は範囲Aと判断し、測定波長範囲の領域mにピークがある場合は範囲Mと判断する。ピーク数が2の場合は、長波長側のピークが測定波長範囲の領域bにある場合は範囲Bと判断し、長波長側のピークが測定波長範囲の領域lにある場合は範囲Lと判断する。ピーク数が3の場合は、最も長波長側のピークが測定波長範囲の領域cにある場合は範囲Cと判断し、最も長波長側のピークが測定波長範囲の領域kにある場合は範囲Kと判断する。
【0227】
また、測定範囲外検出部26Jは、ピーク数が4の場合は、波長が隣接するピーク強度の差から重複配置FBGの反射率を推定する。ピーク強度の絶対値によって重複配置FBGの反射率を推定することもできるが、被測定光ファイバ13Jの曲げによって損失が発生しピーク強度が低下する場合があるため、ピーク強度の差(dB単位での差)を検出する方が望ましい。
【0228】
具体的に、測定範囲外検出部26Jは、3つのピーク強度差ΔrxがΔR0かΔR1かを弁別(Δrx>(ΔR0+ΔR1)/2が成り立つか否かを弁別)して0または1に変換し、そのパターンが001の場合は範囲Dと判断し、011の場合は範囲Eと判断し、111の場合は範囲Fと判断し、110の場合は範囲Gと判断し、101の場合は範囲Hと判断し、010の場合は範囲Iと判断し、100の場合は範囲Jと判断する。このようにして3段PRBSの特性により3つの反射率差のパターンからD〜Jの7つの範囲を識別することができる。以上により範囲A〜Mのいずれかを判断することができる。
【0229】
ピーク波長補正部27Jでは、例えばλ1のピーク波長に換算する場合、範囲Aでは測定されたピーク波長をそのまま出力し、範囲B〜Dでは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長を出力し、範囲E〜Lは測定されたピーク波長のうち長波長側のピーク波長にλ1−λ2,λ1−λ3,・・・,λ1−λ9を加算して出力し、範囲Mでは測定されたピーク波長にλ1−λ10を加算して出力する。
【0230】
同様にして、λ2〜λ10や(λ1+λ10)/2に換算することもできる。また、反射率の高いピーク波長を採用したり、測定された複数のピーク波長の平均値を算出したり、反射率に応じて重みをつけて複数のピーク波長の平均値を算出したりすることにより、測定精度を向上させることもできる。そして、PRBSの段数を増やすとPRBSの周期が長くなり、ΔR0とΔR1の2値の反射率差を用いて更に歪み測定可能範囲を大きくすることができる。
【0231】
なお、本実施形態のように反射率差をPRBSパターンにする方法の他、第7、8および9の実施形態で述べた反射波長、反射波長間隔、反射率差をそれぞれPRBSパターンにする方法のいずれに関しても、PRBSは3段に限られるものではなく、段数を増やすことによりPRBSパターンの周期が長くなり周期÷段数も大きくなるので、測定波長範囲をあまり広くすることなく歪み測定可能範囲を大幅に広くすることができる。
【0232】
また、必ずしもPRBSの周期の全部を使用する必要は無く、PRBSの周期の一部分のみを必要に応じて使用しても良い。PRBSの段数をどこまで増やすことができるかは、重複配置FBGの反射波長間隔を狭くしても分離して検出できるかによって決まり、スペクトログラムの波長分解能に依存する。重複配置FBGの反射波長または反射波長の間隔を変える方法では、最小の反射波長間隔によって重複配置FBGの反射波長数が決まるため、重複配置FBGの反射率または反射率差を変える方法の方が反射波長間隔が一定でPRBSの段数を増やしやすいという特徴を有する。
【0233】
また、上記の各実施形態においては、歪み測定可能範囲の両端付近の反射波長の数が少ない領域についても反射波長を検出して、歪みを測定するようにしているが、反射波長の数が少ない領域は使用せず、ピーク数を検出する処理を省略することもできる。反射波長の数が少ない領域を使用しない場合はその分歪み測定可能範囲が狭くなるが、PRBSを用いた方法では前述のようにPRBS段数を増やすことによりPRBSパターンの周期を長くして容易に歪み測定可能範囲を広くすることができる。
【0234】
また、図1に示すOFDR装置1では、光合成分波器12を、掃引光源11からの出力光を2つに分岐し、その後に被測定光ファイバ13からの反射光と基準光用光ファイバ14で反射された掃引光源11からの出力光の一部を入力して合波する光カプラで構成した例を挙げているが、この種の光合成分波機構は前述した光カプラに限られるものではない。
【0235】
図14は、本発明の変形例に係るOFDR装置1Kの構成を示すブロック図である。このOFDR装置1Kは、図1に示したOFDR装置1の光合成分波器12と受光器22を、それぞれ光合成分波器12Kとバランス受光器22Kに置き換えたものであり、それ以外の構成はOFDR装置1と同様である。
【0236】
図14に示すように、OFDR装置1Kにおいて、光合分波部12Kは、第1の光カプラ121と、光サーキュレータ122と、第2の光カプラ123から構成されている。第1の光カプラ121と第2の光カプラ123の間の光路中には遅延ファイバ141が設けられている。また、反射波長検出部20Kには、被測定光ファイバ13からの反射光と遅延ファイバ141を通した掃引光源11からの出力光との合波出力を受光するバランス受光器22Kが設けられている。
【0237】
OFDR装置1Kにおいて、掃引光源11の出力光は、光合分波部12Kの第1の光カプラ121で2つに分岐され、一方は光サーキュレータ122の第1端子に入力された後、光サーキュレータ122の第2端子から出力され、被測定光ファイバ13に導かれる。被測定光ファイバ13からの反射光は、光サーキュレータ122の第2端子に入力された後、光サーキュレータ122の第3端子から出力される。
【0238】
被測定光ファイバ13からの反射光と、第1の光カプラ121で分岐された光の他方(基準光)が第2の光カプラ123に入力されて合波され干渉する。第1の光カプラ121で分岐されて第2の光カプラ123で合波されるまでの基準光の経路長は、第1の光カプラ121で分岐され被測定光ファイバ13の近端で反射して第2の光カプラ123で合波されるまでの経路長以下、または第1の光カプラ121で分岐され被測定光ファイバ13の遠端で反射して第2の光カプラ123で合波されるまでの経路長以上になるように、遅延ファイバ141が挿入されている。
【0239】
光カプラ123から出力される2つの光は、干渉する光の位相が互いに逆位相となる。これらの2つの光をバランス受光器22Kに入力して被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の干渉によるビート信号を検出する。バランス受信によって、干渉によるビート信号は振幅が2倍になり、2つの光に含まれる同相の雑音はキャンセルされ、ランダムな雑音は振幅が√2倍になるので、信号対雑音比が改善する。
【0240】
被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の偏波が直交して干渉信号が得られなくなる事態を避けるために、被測定光ファイバ13側または基準光側の少なくとも一方に図示しない偏波コントローラを挿入して偏波を調整する、もしくは被測定光ファイバからの反射光の互いに直交する2つの偏波成分をそれぞれ検出する偏波ダイバーシティ受信を用いる場合がある。
【0241】
OFDR装置1Kの反射波長検出部20KにおけるA/D変換器23以降の構成は、図1と同じである。OFDR装置1Kも、OFDR装置1の構成(図1参照)と同様、被測定光ファイバ13からの反射光と基準光の干渉によるビート信号を検出するものであり、同様にビート信号のスペクトログラムを算出した後、第1〜第10の実施形態(図3図13参照)に示したOFDR方法を適用することが可能である。
【0242】
また、本発明の各実施形態で用いる被測定光ファイバ13に含まれる重複配置FBG131a,131b,・・・は、自光ファイバの歪みだけでなく温度の変化に応じてそれぞれのピーク波長が間隔をほぼ保ちながら変化する性質を有する。
【0243】
このため、本発明の変形例に係るOFDR装置1〜1Kおよび方法においては、反射波長が異なり、自光ファイバの温度変化に応じてそれぞれのピーク波長が間隔をほぼ保ちながら変化する複数の重複した重複配置FBG131a,131b,・・・を含む被測定光ファイバ13を採用し、測定範囲外検出部26が、被測定光ファイバ13の温度変化に対する重複した各重複配置FBG131a,131b,・・・のピーク波長の変化の特性を示し、この特性中、ピーク波長の軸方向に所定の測定波長範囲が設定され、温度変化の軸方向に連続する複数の温度変化範囲が設定された検出条件データ(Ds)に基づき、ピーク波長検出部25により検出された測定波長範囲内の重複配置FBGの反射波長から被測定光ファイバ13の微小距離区間毎の温度が含まれる温度変化範囲を検出し、測定範囲外検出部26による温度変化範囲および測定波長範囲内の重複配置FBGの反射波長の検出結果に基づいて被測定光ファイバ13の温度分布を測定することも可能である。
【0244】
その他、本発明は、特許請求の範囲に記載した範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0245】
1,1K OFDR装置
11 掃引光源
12,12K 光合分波部
13 被測定光ファイバ
131,132,133 FBG(ファイバブラッグ回折格子)
131a,131b 重複配置FBG
132a,132b 重複配置FBG
133a,133b 重複配置FBG
14 基準光用光ファイバ
14a 反射膜(反射面)
20,20K 反射波長検出部
21 掃引波長範囲設定部
22 受光器
22K バランス受光器
23 A/D変換器
24 スペクトログラム算出部
25 ピーク波長検出部
26 測定範囲外検出部
27 ピーク波長補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18