特許第6226961号(P6226961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226961
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】撮像温度測定
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A61B6/03 377
   A61B6/03 333A
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-509539(P2015-509539)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公表番号】特表2015-517324(P2015-517324A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】IB2013053329
(87)【国際公開番号】WO2013164746
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】61/641,315
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(73)【特許権者】
【識別番号】508164688
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ, ナショナル インスティチューツ オブ ヘルス, オフィス オブ テクノロジー トランスファー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アビ−ジャウデ,ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】カドリー,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】カプーア,アンクール
(72)【発明者】
【氏名】ノールドフーク,ニコラース ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラダエッリ,アレッサンドロ グイド
(72)【発明者】
【氏名】カレルセン,バート
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ブラッドフォード ジョーンズ
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−300535(JP,A)
【文献】 特開2009−189740(JP,A)
【文献】 特開平09−168524(JP,A)
【文献】 特表2010−507437(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/050276(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02387963(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0046472(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0080350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00−6/14
A61B 8/00−8/15
A61B 13/00−18/18
A61F 2/01
A61N 7/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースラインコンピュータ断層撮影画像データと、その後に収集された間欠コンピュータ断層撮影画像データとに基づいて温度測定画像データを生成する温度測定画像生成部であり、前記温度測定画像データは、関心ボリューム又は関心領域内の温度変化を指し示すボクセル又はピクセルを含み、前記関心ボリューム又は関心領域が、前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データの収集と前記間欠コンピュータ断層撮影画像データの収集との間に加熱され、当該温度測定画像生成部は、ロンスキー変化ディテクタアルゴリズムを用いて前記温度測定画像データを生成する、温度測定画像生成部と、
被検体の前記関心ボリューム又は関心領域を表す画像データボクセル又はピクセルに関する温度マップを、前記温度測定画像データと、温度に対する値の変化の所定のルックアップテーブルと、に基づいて生成する温度マップ生成部と、
前記温度マップを前記関心ボリューム又は関心領域の画像データとともに視覚的に提示するディスプレイと、
を有するコンピューティング装置。
【請求項2】
前記温度変化は、介入手順による加熱に対応し、視覚的に提示される前記温度マップは、前記介入手順が完了したかを指し示す、請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項3】
視覚的に提示される前記温度マップは、介入手順マージンが適切であるかを指し示す、請求項2に記載のコンピューティング装置。
【請求項4】
前記温度測定画像生成部は、前記ロンスキー変化ディテクタアルゴリズムを用いて、前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データと前記その後に収集された間欠コンピュータ断層撮影画像データとの間で温度差を検出する、請求項1乃至3の何れかに記載のコンピューティング装置。
【請求項5】
前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データ及び前記間欠コンピュータ断層撮影画像データは、低い、あるいは高い解像度の画像データを含み、前記温度測定画像生成部は、低い、あるいは高い画像データ解像度アルゴリズムを用いて前記温度測定画像データを生成する、請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項6】
前記ロンスキー変化ディテクタアルゴリズムは、画像のベクトルモデルと、ベクトル間の一次従属性又は独立性のうちの少なくとも一方を指し示すものとを含み、前記温度測定画像生成部は、前記画像データを、ベクトルの集合体、ベクトルの長さの変化又はベクトルの向きの変化としてモデル化する、請求項4又は5に記載のコンピューティング装置。
【請求項7】
前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データと前記間欠コンピュータ断層撮影画像データとを受信してレジストレーションする画像レジストレーション部であり、レジストレーションされた画像データに基づいて前記温度測定画像生成部が前記温度測定画像データを生成する、画像レジストレーション部、
を更に有する請求項4乃至6の何れかに記載のコンピューティング装置。
【請求項8】
前記画像レジストレーション部は、デフォーマブルレジストレーションアルゴリズムを用いて、前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データと前記間欠コンピュータ断層撮影画像データとをレジストレーションする、請求項7に記載のコンピューティング装置。
【請求項9】
前記デフォーマブルレジストレーションアルゴリズムは、前記ベースラインコンピュータ断層撮影画像データ及び前記間欠コンピュータ断層撮影画像データを取得するための収集の間の前記関心ボリューム又は関心領域の動きを補償する、請求項8に記載のコンピューティング装置。
【請求項10】
前記関心ボリューム又は関心領域は、治療されるべき組織内に位置する介入装置針の周りに定められたマージンを含む、請求項1乃至9の何れかに記載のコンピューティング装置。
【請求項11】
前記温度マップは、前記関心ボリューム又は関心領域の異なる領域間の相対的な温度差を指し示す所定のグレースケールを用いて表示される、請求項1乃至10の何れかに記載のコンピューティング装置。
【請求項12】
前記温度マップは、灰色レベルを対応する温度値にマッピングする凡例を含む、請求項11に記載のコンピューティング装置。
【請求項13】
前記温度マップは、前記関心ボリューム又は関心領域の異なる領域間の相対的な温度差を指し示す所定のカラーマップを用いて表示される、請求項1乃至10の何れかに記載のコンピューティング装置。
【請求項14】
前記温度マップは、色を対応する温度値にマッピングする凡例を含む、請求項13に記載のコンピューティング装置。
【請求項15】
コンピューティング装置の作動方法であって、
前記コンピューティング装置のプロセッサが、ベースラインコンピュータ断層撮影画像データと、その後に関心ボリューム又は関心領域が加熱された後に収集された間欠コンピュータ断層撮影画像データとに基づいて温度測定画像データを生成し、前記温度測定画像データは、前記関心ボリューム又は関心領域内の温度変化を指し示すボクセル又はピクセルを含み、前記温度測定画像データを生成することは、ロンスキー変化ディテクタアルゴリズムを用いて前記温度測定画像データを生成し、且つ
前記プロセッサが、被検体の前記関心ボリューム又は関心領域を表す画像データボクセル又はピクセルに関する温度マップを、前記温度測定画像データと、温度に対するボクセル値又はピクセル値の変化の所定のルックアップテーブルと、に基づいて生成する、
ことを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、概して撮像温度測定(イメージングサーモメトリ)に関し、特に、治療される組織の温度監視に関心がある介入手順との関連でコンピュータ断層撮影(CT)に適用して説明される。以下はまた、例えばx線、フルオロスコピー(蛍光透視)及び/又はその他の撮像など、そのような介入手順とともに使用されるその他の撮像にも適している。
【背景技術】
【0002】
アブレーションのような一部の介入手順の1つの限界は、焼灼不足又は不適切な安全マージンに起因する高い再発率である。また、隣接する健常組織を損傷してしまい得るものである過剰な焼灼によって、何らかの合併症が発生する。リアルタイムの温度監視は、そのような問題を軽減することの助けとなり得るとともに、焼灼不足、過剰治療、及び隣接組織への潜在的ダメージを防止するための反復的な介入手順計画調整を可能にし得る。
【0003】
アブレーション及び/又はその他の手順中に、組織における温度変化を監視するために、磁気共鳴(MR)撮像を使用することができる。MR撮像では、温度の変化は、磁場内のプロトンの共鳴周波数に、線形比例した変化を生じさせ、故に、温度変化は、“プロトン共鳴周波数シフト(PRFS)”と呼ばれる位相感度を有するパルスシーケンスを用いて検出可能である。PRFSでは、2つの異なる時点で2つの画像が取得され、それらの間の位相差を用いて各ピクセルでの温度差が計算される。PRFS撮像は、画像ピクセルの密度に等しい密度でのボリュームの温度サンプリングをもたらす。このデータは、プランニング(計画作成)及び送達並びに処置後の組織損傷の調査に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アブレーションは典型的に、超音波又はCTによるガイダンス(誘導)を用いて実行されており、限られたMR適合機器及び/又はMRスキャナアクセスのせいで、MRガイダンスが使用されるのは稀である。残念ながら、現状でリアルタイム温度監視はCTでは不可能であり、また、製造者によって提供される所定の焼灼ゾーンは、組織特性、腫瘍組織の異質性、熱同期、又は患者動作を考慮に入れていない。患者の特徴、腫瘍の組織構造及び位置、並びにアブレーションに使用されるエネルギーの種類を含む数多くの要因が、焼灼ゾーンに影響する。また、計算モデルは、重たい数学計算に頼っており、時間を消費するものになり得る。
【0005】
ここに記載される態様は、上述及びその他の問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、コンピューティング装置は、被検体の関心ボリューム又は関心領域を表す画像データボクセル又はピクセルに関する温度マップを、関心ボリューム又は関心領域内の温度変化を指し示すボクセル又はピクセルを含んだ温度測定画像データと、温度に対するボクセル値又はピクセル値の変化の所定のルックアップテーブルと、に基づいて生成する温度マップ生成部と、温度マップを関心ボリューム又は関心領域の画像データとともに視覚的に提示するディスプレイとを含む。
【0007】
他の一態様において、方法は、被検体の関心ボリューム又は関心領域を表す画像データボクセル又はピクセルに関する温度マップを、関心ボリューム又は関心領域内の温度変化を指し示すボクセル又はピクセルを含んだ温度測定画像データと、温度に対するボクセル値又はピクセル値の変化の所定のルックアップテーブルと、に基づいて生成することを含む。
【0008】
他の一態様において、コンピュータ読み取り可能記憶媒体がコンピュータ読み取り可能命令でエンコードされる。該コンピュータ読み取り可能命令は、プロセッサによって実行されるときに該プロセッサに、介入手順中の被検体の関心ボリューム又は関心領域を表す画像データボクセル又はピクセルに関する温度マップを、関心ボリューム又は関心領域内の温度変化を指し示すボクセル又はピクセルを含んだ温度測定画像データと、温度に対するボクセル値又はピクセル値の変化の所定のルックアップテーブルと、に基づいて生成させて表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、様々な構成要素及びその配置、並びに様々なステップ及びその編成の形態を取り得る。図面は、単に好適実施形態を例示するためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1】撮像システムの一例を、撮像データを用いた介入手順の関心組織のリアルタイム温度監視用に構成されたコンピューティング装置とともに模式的に示す図である。
図2】ボクセル又はピクセルの値の変化とボクセル又はピクセルが表す組織の温度との間の関係を例示する図である。
図3】関心ボリューム又は関心領域上に温度マップを重ね合わせたベースライン画像を例示する図である。
図4】介入手順中に組織温度を監視する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例えばコーンビームCT及び/又は従来CTデータなどのベースラインCTデータ及び間欠CTデータ、及び/又はx線データ若しくはフルオロスコピーデータに基づいて、例えばRF、レーザ、マイクロ波、HIFUなどによるアブレーション及び/又は薬剤送達など、針に基づく介入手順用に、対象物又は被検体内の関心ボリューム又は関心領域に関する温度マップの生成及び提示を行う手法を説明する。概して、温度マップは、リアルタイムで(すなわち、アブレーション又は薬剤送達が実行されているときに)生成・提示され、それにより、介入手順を行う者が、焼灼不足(ひいては、その焼灼を仕上げるための補助焼灼)や過剰焼灼を抑制すること、及び適切な安全マージンを確保することを可能にする。さらに、これは、関心ボリューム又は関心領域内の温度を測定するための熱電対の挿入に関連した感染症及び/又は出血の危険性を軽減する。また、この手法は、患者の動作(例えば、呼吸などによる)及び低解像度の画像データを補償する。
【0011】
図1は、撮像システム100を模式的に例示している。簡潔さ及び明瞭さのため、以下では、CアームCTスキャナとの関連でこの手法を説明する。しかしながら、撮像システム100は、これに代えて、従来からのCTスキャナ又はx線イメージャであってもよい。このスキャナは静止部分102を含んでおり、静止部分102は、天井、壁、床、検査室内の概して静止した装置、検査室の中及び外へと容易に輸送されることが可能な、ホイール若しくはそれに類するものを備えた可搬式装置、等々に取り付けられることができる。Cアーム104が、連結部106を介して旋回可能に静止部分102に結合され、所定の弧(例えば、少なくとも180°)にわたって旋回するように構成される。Cアーム104は、スキャンの前、最中及び/又は後に旋回されることができる。
【0012】
Cアーム104の一端に放射線源108が結合され、Cアーム104の他端に感放射線検出器アレイ110が結合されている。放射線源108は検出器アレイ110から離隔されており、これらの間に検査領域112が形成される。1つの好適な検出器アレイ110は、例えばフラットパネル検出器又はそれに類するものなどの2次元(2D)検出器アレイを含む。検出器アレイ110は、放射線を検出したことに応答して信号を生成する。線源108又は検出器110の少なくとも一方はまた、例えば、互いの方へ、且つ/或いはCアーム104に沿ったスリーブ(軸ざや)内でずらされて、Cアーム104とは独立に移動し得る。放射線源108/検出器アレイ110を用いて、コーンビームCTデータ、フルオロスコピーデータ、及び/又はその他の画像データを収集することができる。
【0013】
被検体サポート114が、検査領域112内の被検体を支持する。再構成部117が、検出器アレイ110によって出力された信号を再構成して、ボリューム画像データを生成する。コンソール119が、検査領域112に対して特定の角度方向までCアーム104を旋回させること、線源108を活性化して放射線を放射すること、検出器アレイ110を動作させて放射線を検出すること、並びに別の装置と情報の受信及び/又は伝達を行うことを含め、撮像システム100を制御する。
【0014】
介入装置を保持する装置サポート118と、装置サポート118ひいてはそれによって支持された介入装置を位置付けるためのアーム120と、被検体サポート114に取り外し可能に取り付けられてアーム120を支持するベース(基部)122とが、介入装置ホルダー116に含まれている。アーム120は、手動手段及び/又は電子的手段により移動可能とし得る。装置サポート118によって支持されて、例えばアブレーション装置などの介入装置124が示されている。介入装置コントローラ126が、介入装置124を制御し、例えば、介入装置124をオンに切り替えたりオフに切り替えたりする。図示した実施形態において、介入装置コントローラ126は、例えばジョイスティックなど、被検体サポート114に取り付けられて介入装置124を制御する手で作動される制御具を含んでいる。他の一例において、例えばフットペダルなど、足で作動される制御具が、介入装置124を制御するために使用されてもよい。
【0015】
コンピューティング機器又は装置128が、例えば撮像システム100及び/又は1つ以上のその他の撮像システムによって生成された撮像データなどの、撮像データを処理する。画像データは、例えば、針の配置後若しくは別の位置への針の再配置後、且つ針が介入手順に使用される前の、針の位置を確認するためのスキャンからの画像データといった、ベースライン(基準)画像データを含む。画像データはまた、例えば、治療される組織及びその周囲の組織の温度など、針に基づく介入手順の進捗を監視するためなどの、針に基づく介入手順中の1つ以上の異なる時点で収集される1つ以上のスキャンからの画像データといった、間欠(インターミッテント)画像データを含む。ベースライン画像データ及び間欠画像データから、コンピューティング装置128は、所定の関心ボリューム又は関心領域に関する温度マップを生成する。更に詳細に後述するように、この温度マップは、動きを補償しながらのリアルタイム温度監視を可能にし、例えば熱電対などの専用装置を使用(これは、手順を長引かせ、合併症(例えば、追加の針による)のリスクを高め、且つ単一の箇所の温度しか提供しない)することなく、治療されている組織の熱分布を指し示す。
【0016】
介入手順を行う者がベースライン、インターミッテント、温度マップ、及び/又はその他の情報に基づいて介入手順計画を計画且つ/或いは変更することを、治療計画部(プランナ)146が可能にする。非限定的な例として、介入手順者は、適切な針の配置、完全なるアブレーション、及び健常組織へのダメージの軽減を確保するために、ベースライン画像データ及び温度マップを使用することができる。例えば、このデータから、介入手順者は、針の配置が適切であるか、それとも移動される必要があるかや、アブレーションを継続すべきか、それとも停止すべきかを、治療される組織及び/又は周囲組織の温度に基づいて決定することができる。介入手順者が治療対象組織に対して介入針を挿入して配置することをガイドする画像データを、治療誘導部(ナビゲータ)148が視覚的に提示する。
【0017】
図示した実施形態において、コンピューティング装置128は、必要に応じての推薦部(リコメンダ)150を含んでいる。推薦部150は、一例において、生成された温度マップに関するガイダンスを、ディスプレイ145、音声、及び/又はその他を介してユーザに提供する。非限定的な一例において、このガイダンスは、更なる熱が必要であるかを示し、場合により、熱投与量が満足に送達されることを確保することになる経路を提示する。別の非限定的な一例として、このガイダンスは、熱手順計画が満足される場合に、計画を“リアルタイム”に更新するために使用されることが可能なデータを提供し、それにより治療の進捗が追跡される。
【0018】
図示した実施形態において、コンピューティング装置128は、介入装置特定部130、関心ボリューム/領域特定部132、画像レジストレーション部134及びレジストレーションアルゴリズム136、温度測定(サーモメトリ)画像データ生成部138及び温度測定(サーモメトリ)アルゴリズム140、並びに、温度マップ生成部142及び値変化−温度ルックアップテーブル144を含んでいる。コンピューティング装置128は、コンポーネント130、132、134、138又は142のうちの1つ以上を実行するよう、例えば物理的メモリ又はその他の非一時的記憶媒体などのコンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納された少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能命令を実行する少なくとも1つのプロセッサを含んでいる。プロセッサはまた、搬送波、信号又はその他の一時的な媒体によって担持される1つ以上のコンピュータ読み取り可能命令を実行し得る。
【0019】
介入装置特定部130は、この例において、ベースライン画像データ内及び間欠画像データ内で介入装置針の先端を特定する。一例において、介入装置特定部130は、自動的な関心対象物特定アルゴリズムを用いて先端を特定する。他の一例において、介入装置特定部130は、ユーザ入力に基づいて先端を特定し、例えば、ユーザによって特定された先端の周縁や、ユーザによって位置付け及び大きさ調整が為された所定の幾何学形状などを用いて先端を特定する。自動手法、半自動手法、及び手動手法の結果は、権限あるユーザによって確認され、変更されることができる。
【0020】
関心ボリューム/領域特定部132は、ベースライン画像データ内及び間欠画像データ内の特定された焼灼針先端(又は焼灼ゾーン)について、関心ボリューム又は関心領域を特定する。一例において、関心ボリューム/領域特定部132は、例えば特定された先端領域の外側の所定のマージンに基づくものといった、自動関心領域アルゴリズムを用いて、関心ボリューム又は関心領域を特定する。他の一例において、関心領域特定部132は、例えば特定された先端領域の外側のユーザ特定された領域といった、ユーザ入力に基づいて領域を特定する。予め決定された製造者ゾーンもまた、関心ボリューム又は関心領域を特定することを支援するために使用されることができる。自動手法、半自動手法、及び手動手法の結果は、権限あるユーザによって確認され、変更されることができる。
【0021】
画像レジストレーション部134は、剛体レジストレーションアルゴリズム及び/又は弾性(非剛体)レジストレーションアルゴリズムを含む複数のレジストレーションアルゴリズム136のうちの1つ以上に基づいて、ベースライン画像データと間欠画像データとをレジストレーションする。好適なレジストレーションアルゴリズムの一例は、ベースライン収集と間欠収集との間での例えば呼吸及び/又はその他の動きなどの動きを補償するデフォーマブル画像レジストレーションである。以下、そのようなアルゴリズムの非限定的な一例を説明する。
【0022】
領域Ω(ボリュームレジストレーションの場合、Ω∈R)上で規定されたベースライン画像I及び間欠画像Iを所与として、これらの画像が、Ω上の全てのxについて、式1:
【0023】
【数1】
に示されるように関連付けられる。これは、幾何学的なB−スプライン変形Tと、対応し合う点の間の外観変化を説明する非線形性hとを含んでいる。変形Tは、式2:
【0024】
【数2】
に示されるように、制御点の疎らなグリッドΩ’⊂Ω(|Ω’|≪|Ω|)上で見積もられることができる。ただし、Δは制御点xの変位ベクトルである。制御点を移動させることは、その周りでの画像の局所的な変形を生じさせ、重み関数ρが、Ω内の点の変位に対するΩ’内の制御点の寄与の大きさを調整する。
【0025】
変形場が、式3:
【0026】
【数3】
に示されるような目標画像と変形されたソース画像との間の点に関する類似性の尺度を最小化することによって発見される。ただし、dは何らかの類似度関数である。変形グリッド上での折り畳みを回避するため、Tについての平滑化の項が追加され、式4:
【0027】
【数4】
が与えられる。一解法において、式3は、割当問題として以下のように課され得る:L={u,・・・,u}を、変形空間Θ={Δ,・・・,Δ}を量子化したものに対応するラベルの離散集合であるとする。グリッドノードx∈Ω’へのラベル割当てu∈Lは、対応するベクトルΔupだけノードを変位させることに関連付けられる。
【0028】
特定の離散的なラベル付けu:Ω’→Lに関連する変形場は:
【0029】
【数5】
である。式3は、故に、式5:
【0030】
【数6】
に示されるように、ラベル付けに関する離散的なマルコフ確率場(Markov random field;MRF)の最適化として課されることができる。ただし、Vは、局所的な非類似性の尺度を表すシングルトンポテンシャル関数であり、Vpqは対(ペア)のポテンシャル関数である。得られるMRFを最適化するため、式5のMRFエネルギーが最小化されるように、各ノードに最適なラベルが割り当てられる。この目的で、線形計画法の双対理論から引き出された原理を基礎とする離散最適化法を用いることで、非常に広範なクラスのNP困難なMRFについて、ほぼ最適な解を効率的に得ることができる。
【0031】
やはり、上述のレジストレーション例は、説明目的で提示されたものであって、限定的なものでなく、その他のレジストレーションアルゴリズムもここに企図される。
【0032】
温度測定画像データ生成部138は、複数の温度測定アルゴリズム140のうちの1つ以上に基づいて、レジストレーションされたベースライン画像データ及び間欠画像データから温度測定画像データを生成する。好適な温度測定アルゴリズム140の一例は、ベースライン画像データと間欠画像データとの間の差を検出するロンスキー変化ディテクタであり、温度差はこれらの画像データ間の全体的な差のうちの一成分である。低信号対雑音比画像データ内の変化を検出するロンスキー変化ディテクタの一例が、Durucan等の“Change detection and background extraction by linear algebra”、Proceedings of the IEEE、第89巻、第1368−1381頁、2001年にて議論されている。
【0033】
一般に、ロンスキー変化ディテクタは、1)画像のベクトルモデル、及び2)ベクトル間の一次従属性/独立性の概念に基づく。画像をベクトルの集合体としてモデル化することにより、(当初の変化されていない状態に対する)それらの長さ又は向きにおける変化を活用することができる。数学的に、これは、それぞれ一次従属性及び一次独立性の概念に対応する。或るベクトルが別のベクトルに一次従属しているかに関する決定が、変化があったか否かを決定することを可能にする。ベクトルの一次従属性又は独立性を決定するための1つの評価基準はロンスキー行列式である。
【0034】
一例として、中心ピクセルの周りに規定されたサポートされる領域(ブロックとしても参照する)を考える。この中心ピクセルのそれぞれの側のピクセル数wが、ブロックの幅の半分として定義される。サポートされる領域のウィンドウ幅は2w+1である。3×3の画像ブロック(w=1)のベクトル化(vec(I)と表記する)は、式6:
【0035】
【数7】
に示されるように表されることができる。
【0036】
画像内のブロックのベクトルを使用することは、そのベクトルが別のベクトルに一次従属であるか否かの可能性に基づいて、変化が存在するかに関する決定を我々が行うことを可能にする。上述の式6のベクトル化の定義は、3Dデータに拡張されることができる。例えば、w=1の3×3×3画像ブロックは、式7:
【0037】
【数8】
に示されるようにベクトル化されることができる。ただし、i∀k∈[−1,1]は、3D画像シリーズ内のk番目のスライスである。
【0038】
(2つのベクトルI1及びI2としてモデル化される)2つの画像間の変化を検出するためのロンスキーモデルは、式8:
【0039】
【数9】
に示される。ただし、x及びyは、それぞれ、ベクトルI及びJ内の対応し合う成分である。nは、サポートされる領域のサイズである。W≠0である場合、ピクセルiの位置に変化が生じており、それ以外の場合は変化が存在しない。実際には、Wは、関数f≡x/yの一次導関数の和の負数を計算する。この値は、成分の比率が増大するに連れて増大することになる。この値に対する変化は、何れかの個別のピクセル単独というより、複数ピクセルのブロックの寄与に起因することになる。
【0040】
やはり、温度測定画像データを生成するための上述の手法は、説明目的で提示されたものであって、限定的なものでなく、例えば二乗差の和などのその他の手法もここに企図される。
【0041】
温度マップ生成部142は、温度測定画像と値変化−温度ルックアップテーブル144(これは、温度測定画像データと温度との間のマッピングを提供する)とに基づいて、関心領域又は関心ボリュームに関するピクセル毎又はボクセル毎のサーマルマップ又は温度マップ(例えば、関心ボリュームを中心とした2D画像の積み重ね(スタック))を生成する。値変化−温度ルックアップテーブル144を生成するために、例えば寒天ゲルや水などの均質なファントム、解剖学的ファントム、及び/又はその他のファントムが、基準温度(例えば、室温又は37℃)と、1つ以上のその他の所定あるいは既知の、より高い温度(例えば、42℃から82℃)とでスキャンされる。
【0042】
m=2又は4として、
【0043】
【数10】
のように、最小二乗法、カイ二乗法、及び/又はその他の手法を用いて、一次モデルや三次モデルなどを温度及び温度測定画像の平均値にフィッティングすることができる。ここで、nはデータ点の個数であり、pはモデルのパラメータであり、この結果は、最良のフィットの場合に最小化され得る。一次モデル及び三次モデルのパラメータ数mは、それぞれ、2及び4である。この校正を逆にしたものがルックアップテーブル144として格納される。
【0044】
図2は、値変化−温度ルックアップテーブル144の一例を示している。図2において、y軸202は温度測定画像値の平均値を表し、x軸204は温度を表している。この例においては、5つの異なる温度で収集された5つのデータ206、208、210、212及び214に基づいてカーブが生成されている。第1のカーブ216は、データ206−214への一次フィッティングに相当し、第2のカーブ218は、データ206−214への三次フィッティングに相当する。カーブ216又は218が、ルックアップテーブル144、多項式、及び/又はその他として保存され得る。
【0045】
コンピューティング装置128は、ディスプレイ145により、ベースライン画像及び温度マップを提示する。これの一例が、図3に関連して示されており、図3は、2D温度マップ又はそれに対応する(3D温度マップのうちの)マップ部分304が、特定された針先上に重ねられた、2Dベースライン画像302、又はボリューム画像データからの2Dベースライン画像302を示している。温度マップ部分304の一方の軸306が一方向に沿ったピクセル又はボクセルを表すとともに、温度マップ部分304の他方の軸308が別の一方向に沿ったピクセル又はボクセルを表しており、その結果、温度マップ部分304は、関心領域又は関心ボリュームのピクセル又はボクセルの2Dアレイを表しており。
【0046】
この例においては、グレースケールを用いて温度が表されており、白色は、加熱前の関心領域又は関心ボリュームのベースライン温度を表し、黒色は、関心ある所定の最高温度を表し、それらの間の灰色レベルは、温度の上昇とともに明るい側から暗い側へと遷移している。一変形例において、関心ある所定の最高温度を表すために白色が用いられ、加熱前の関心領域又は関心ボリュームのベースライン温度を表すために黒色が用いられてもよい。他の一変形例において、グレースケールに代えてカラーが用いられてもよい。
【0047】
図示した例において、針先の周囲の第1の領域310は、より遠く針先から離れた第2の領域312より熱く、このことが、異なる色合いの灰色によって視覚的に示されている。必要に応じての図形的な凡例(グラフィカルキー)314が視覚的に提示されてもよく、特定の温度に対応し且つ/或いは特定の上側温度T318と下側温度T320との間の所定の温度増分に対応する目盛を用いて、且つ/或いはその他の手法を用いて、階調レベルが温度値に対してマッピングされる。
【0048】
描写される3Dボリュームには、これに加えて、あるいは代えて、3Dボリューム(ボリューム全体又はその一部)が、特定された針先の周りの関心ボリュームに3D温度マップ(マップ全体又はその一部)を重ねて表示されてもよい。必要に応じて、3D温度マップは、所望の焼灼される3Dゾーンを表示する所定の治療計画に重ねられ得る。これに加えて、あるいは代えて、例えばアキシャル面、サジタル面、コロナル面、曲面、斜面などにおける1つ以上の2Dスライスが、3D温度マップのうちの対応する部分とともに表示される。
【0049】
必要に応じて、ベースライン画像及び温度マップに加えて、あるいは代えて、間欠画像データ、温度測定画像データ、及び/又はその他のデータのうちの1つ以上も表示される。
【0050】
図4は、非限定的な一方法を示している。
【0051】
認識されるように、ここに記載される方法における動作の順序は限定的なものではない。従って、その他の順序もここに企図される。さらに、1つ以上の動作が削除されてもよく、且つ/或いは1つ以上の追加の動作が含められてもよい。
【0052】
ステップ402にて、ベースラインスキャンが実行されて、ベースライン画像データが生成される。ここで説明したように、アブレーション手順の場合、このスキャンは、治療される組織に対する介入装置針の最初の配置後又はその後の再配置後のスキャンに相当し得る。
【0053】
ステップ404にて、ベースライン画像データ内で介入装置針が特定される。
【0054】
ステップ406にて、ベースライン画像内で、介入装置針の周りの関心ボリューム又は関心領域が定められ。
【0055】
ステップ408にて、介入手順中に、間欠スキャンが実行され、間欠画像データが生成される。
【0056】
ステップ410にて、間欠画像データ内で介入装置針が特定される。
【0057】
ステップ412にて、間欠画像データ内の介入装置針の周りでも関心ボリューム又は関心領域が定められる。
【0058】
ステップ414にて、ベースライン画像データと間欠画像データとがレジストレーションされる。ここで説明したように、好適なレジストレーションアルゴリズムは、被検体の動きを補償するデフォーマブルレジストレーションを含む。
【0059】
ステップ416にて、レジストレーションされたベースライン画像データ及び間欠画像データに基づいて、温度測定画像データが生成される。ここで説明したように、好適なアルゴリズムは、ロンスキー変化ディテクタアルゴリズムを含む。
【0060】
ステップ418にて、温度測定画像データと、ボクセル又はピクセルの値の変化と温度との間のマッピングとに基づいて、関心ボリューム又は関心領域に関する温度マップが生成される。
【0061】
ステップ420にて、少なくともベースライン画像及び温度マップが、表示モニタを介して視覚的に提示される。必要に応じて、ベースライン画像及び温度マップに加えて、あるいは代えて、間欠画像データ、温度測定画像データ、及び/又はその他のデータのうちの1つ以上も表示される。
【0062】
ステップ422にて、必要に応じて、温度マップを用いて介入手順計画が調整される。
【0063】
以上の事項のうちの少なくとも一部は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体にエンコードあるいはエンベッドされて、コンピュータプロセッサによって実行されるときに該プロセッサに上述の動作を実行させるコンピュータ読み取り可能命令によって実装される。加えて、あるいは代えて、それらのコンピュータ読み取り可能命令のうちの少なくとも一部は、信号、搬送波、又はその他の一時的な媒体によって担持される。
【0064】
好適実施形態を参照して本発明を説明した。以上の詳細な説明を読んで理解した者は変更及び変形に想到し得る。本発明は、添付の請求項の範囲又はその均等範囲に入る限り、全てのそのような変更及び変形を含むと解されるものである。
図1
図2
図3
図4