【文献】
Kristian M Muller et al.,The first constant domain (CH1 and Cl) of an antibody used as heterodimerization domain for bispecific miniantibodies,FEBS Letters,1998年,vol. 422, No. 2,259-264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
前臨床試料および臨床試料中の二重特異性抗体/薬物のような多重特異性結合物の量を測定するためのインビトロの方法が、本明細書において報告される。
【0023】
試料マトリックスによる影響を最小限に抑え、かつ試料中の多重特異性結合物の量の免疫学的測定を設定および実施する際の柔軟性をより大きくするためには、試料中の多重特異性結合物が、多重特異性結合物の異なる結合特異性に結合する2種の抗イディオタイプ抗体を用いることによって検出されなければならないことが判明している。
【0024】
以下に、多重特異性結合物の態様としての多重特異性抗体を用いて、本明細書において報告される方法を例示する。
【0025】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定されるわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りにおいて抗体断片を含む、様々な抗体構造体を包含する。
【0026】
一定の態様において、多重特異性結合物は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一定の態様において、結合特異性の内の一方は、第1の抗原に対するものであり、他方は、異なる第2の抗原に対するものである。一定の態様において、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合してよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製することができる。1つの態様において、抗体は、第1の抗原および第2の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体である。1つの態様において、二重特異性抗体は、(i) 第1の抗原にまたは抗原上の第1のエピトープに特異的に結合する第1の結合特異性を有し、かつ(ii) 第2の抗原にまたは同じ抗原上の第2のエピトープに特異的に結合する第2の結合特異性を有する。1つの態様において、同じ抗原上の第2のエピトープは、重複しないエピトープである。
【0027】
多重特異性抗体は、WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、WO2009/080254、WO2010/112193、WO2010/115589、WO2010/136172、WO2010/145792、またはWO2010/145793において説明されている。
【0028】
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部分を含む、インタクト抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')
2;ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0029】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを意味する。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらの内のいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、およびIgA
2にさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0030】
「遊離型抗原」という用語は、ある抗体の結合特異性によって特異的に結合され得るが、現在はこの結合特異性に結合していない抗原を意味する。1つの態様において、遊離型抗原は、抗体に結合されていない抗原または抗体と複合体形成していない抗原である。
【0031】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列のFc領域および変種Fc領域を含む。1つの態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226またはPro230からカルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば存在しない場合もある。本明細書において別段の指定が無い限り、Fc領域中または定常領域中のアミノ酸残基の番号付与は、EU指標とも呼ばれるEU番号付与方式に従い、これは、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242において説明されている。
【0032】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。一般に、可変ドメインのFRは、4つのFRドメイン、すなわちFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、一般に、HVR配列およびFR配列はVH(またはVL)中に次の順序で現われる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0033】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生されるか、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を使用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的には除く。
【0034】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基およびヒトFRに由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を意味する。一定の態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに相当し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに相当する、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を任意で含んでよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を意味する。
【0035】
本明細書において使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または特徴的な構造の(structurally defined)ループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域を意味する。一般に、天然の4鎖抗体は6個のHVRを含む。3個はVH中にあり(H1、H2、H3)、3個はVL中にある(L1、L2、L3)。一般に、HVRは、超可変ループおよび/または「相補性決定領域」(CDR)に由来するアミノ酸残基を含み、後者は、配列の可変性が最も高く、かつ/または抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917)。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24〜34、L2のアミノ酸残基50〜56、L3のアミノ酸残基89〜97、H1のアミノ酸残基31〜35B、H2のアミノ酸残基50〜65、およびH3のアミノ酸残基95〜102に存在する(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242)。VH中のCDR1は例外として、一般に、CDRは、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。また、CDRは、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、短縮CDRまたはa-CDRと呼ばれるCDR領域内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31〜34、L2のアミノ酸残基50〜55、L3のアミノ酸残基89〜96、H1のアミノ酸残基31〜35B、H2のアミノ酸残基50〜58、およびH3のアミノ酸残基95〜102に存在する(Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633)。別段の定めが無い限り、本明細書において、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えばFR残基)は上記のKabat et al.に従って番号を付与する。
【0036】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を意味する。すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、存在し得る変種抗体を除いて、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。例えば、天然に存在する変異を含むか、またはモノクローナル抗体調製物を作製する間に発生するこのような変種は通常、少量で存在する。様々な決定基(エピトープ)を対象とする様々な抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法によって抗体を作製することを要すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用するためのモノクローナル抗体は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含むトランスジェニック動物を使用する方法を含む、様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法は、本明細書において説明される。
【0037】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体が抗原に結合するのに関与している抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを意味する。一般に、天然抗体の重鎖および軽鎖(それぞれVHおよびVL)の可変ドメインは、4つの保存されているフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を各ドメインが含む、類似した構造を有する (例えば、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照されたい)。1つのVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして、単離することができる(例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照されたい)。
【0038】
「抗イディオタイプ抗体」という用語は、親抗体の結合部位のような結合特異性に特異的に結合する、すなわち、例えば親抗体の抗原結合部位に対する、抗体を意味する。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、親抗体のCDRの内の1つまたは複数に特異的に結合する。1つの態様において、親抗体は治療的抗体である。1つの態様において、親抗体は多重特異性抗体である。1つの態様において、親抗体は二重特異性抗体である。
【0039】
次の場合、2つのエピトープは重複している:問題のエピトープの濃度を20〜50nM、エピトープ重複を検出すべき抗体の濃度を100nMとした、固定された抗体および可溶性抗原(逆もまた同様)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ法によって、50%またはそれ以上、1つの態様においては75%またはそれ以上のシグナル低下が検出された場合。あるいは、同じ抗原に結合する2種の抗体のエピトープ重複を競合試験系の助けを借りて判定する方法を使用することもできる。この目的のために、例えば、組換え抗原エピトープを発現する細胞を使用する細胞ベースの酵素免疫測定法(ELISA)の助けを借りて、エピトープ重複を検出すべき抗体が、固定された抗原への結合を得るために他の抗体と競合するかが試験される。この目的のために、固定された抗原は、標識された形態の抗体および過剰量のエピトープ重複を判定すべき抗体と共にインキュベートされる。結合された標識を検出することによって、エピトープ重複を容易に確認することができる。公知の抗体を基準として(referred to the known antibody)、同濃度において70%を超える、1つの態様においては80%を超えるシグナル低下、または高濃度(1つの事例では10
5倍過剰のエピトープ重複を判定すべき抗体を用いる)において80%を超える置換(displacement)、1つの態様においては90%を超える置換が測定される場合、エピトープの同一性または重複が存在し、両方の抗体が、同じ抗原上の同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する。
【0040】
様々なイムノアッセイ法の原理は、例えば、Hage, D.S. (Anal. Chem. 71 (1999) 294R-304R)によって説明されている。Lu, B., et al. (Analyst 121 (1996) 29R-32R)によって、イムノアッセイ法において使用するための抗体の方向付けられた固定が報告されている。アビジン-ビオチンを媒介としたイムノアッセイ法は、例えば、Wilchek, M., and Bayer, E.A., in Methods Enzymol. 184 (1990) 467-469によって報告されている。
【0041】
モノクローナル抗体およびそれらの定常ドメインは、結合パートナー、例えば、表面(surface)、タンパク質、ポリマー(例えば、PEG、セルロース、もしくはポリスチロール)、酵素、または結合対のメンバーに結合するためのいくつかの反応性側鎖をタンパク質として含む。抗体の化学的反応性基は、例えば、アミノ基(リジン、α-アミノ基)、チオール基(シスチン(cystin)、システイン、およびメチオニン(methionin))、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、ならびに糖アルコール基である。このような方法は、例えば、Aslam M., and Dent, A., in "Bioconjugation", MacMillan Ref. Ltd. 1999, pp. 50-100によって説明されている。
【0042】
タンパク質の最も一般的な反応性基の内の1つは、アミノ酸リジンの脂肪族ε-アミンである。一般に、ほぼすべての抗体が、豊富なリジンを含んでいる。リジンのアミンは、pH8.0より上でかなり良い求核剤であり(pK
a=9.18)、したがって、様々な試薬と容易かつきちんと(cleanly)反応して、安定な結合を形成する。アミン反応性の試薬は、リジンおよびタンパク質のα-アミノ基と主に反応する。反応性エステル、特にN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)エステルは、アミン基の修飾のために最も一般的に使用される試薬の1つである。水性環境における反応のための最適pHは、pH8.0〜9.0である。イソチオシアナートは、アミン修飾試薬であり、タンパク質とチオ尿素結合を形成する。これらは、(最適には、pH9.0〜9.5で)水溶液中のタンパク質アミンと反応する。アルデヒドは、穏やかな水性条件下で脂肪族および芳香族のアミン、ヒドラジン、およびヒドラジドと反応して、イミン中間体(シッフ塩基)を形成する。シッフ塩基は、穏やかな還元剤または強力な還元剤(水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムなど)を用いて選択的に還元して、安定なアルキルアミン結合を誘導することができる。アミンを修飾するのに使用されている他の試薬は、酸無水物である。例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)は、2つのアミン反応性無水物基を含む、二官能性キレート剤である。これは、タンパク質のN末端基およびε-アミン基と反応してアミド結合を形成することができる。無水物環が開いて、配位化合物中の金属にしっかりと結合できる多価の金属キレート化アーム(metal-chelating arm)を作り出す。
【0043】
抗体中の別の一般的な反応性基は、硫黄含有アミノ酸シスチンおよびその還元生成物システイン(またはハーフシスチン)に由来するチオール残基である。システインは、アミンよりも求核性が高く、通常、タンパク質中の最も反応性の高い官能基である、遊離チオール基を含む。通常、チオールは中性pHにおいて反応性であり、したがって、アミンの存在下で選択的に他の分子と結合し得る。遊離スルフヒドリル基は比較的よく反応するため、これらの基を有するタンパク質はしばしば、それらがジスルフィド基またはジスルフィド結合として酸化された形態で存在する。このようなタンパク質では、反応性の遊離チオールを生じさせるために、ジチオスレイトール(DTT)のような試薬を用いてジスルフィド結合を還元することが必要とされる。チオール反応性試薬は、タンパク質上のチオール基に結合して、チオエーテル結合生成物を形成するものである。これらの試薬は、微酸性〜中性pHで迅速に反応し、したがって、アミン基の存在下で選択的に反応させることができる。反応性アミノ基を介して複数のスルフヒドリル基を導入する効率的な方法を提供するためにトラウト試薬(Traut's reagent)(2-イミノチオラン)、スクシンイミジル (アセチルチオ)アセタート(SATA)、およびスルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド] ヘキサノアート (スルホ-LC-SPDP)などのいくつかのチオール化架橋試薬を使用することが、文献で報告されている。ハロアセチル誘導体、例えばヨードアセトアミドは、チオエーテル結合を形成し、これらもまた、チオール改変用の試薬である。さらなる有用な試薬はマレイミドである。マレイミドとチオール反応性試薬との反応は、ヨードアセトアミドと本質的に同じである。マレイミドは、微酸性から中性pHで迅速に反応する。
【0044】
抗体中の別の一般的な反応性基は、カルボン酸である。タンパク質は、C末端位に、ならびにアスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖内にカルボン酸基を含む。カルボン酸の水中での反応性は比較的低いため、タンパク質および他の生体分子を選択的に改変するためにこれらの基を使用することは、通常、困難である。これを行う場合、通常は、水溶性カルボジイミドの使用によってカルボン酸基を反応性エステルに変換し、アミン、ヒドラジド、またはヒドラジンなどの求核試薬と反応させる。より高塩基性のリジンのε−アミンの存在下で活性化カルボン酸と選択的に反応させて安定なアミド結合を形成させるために、アミン含有試薬は弱塩基性であるべきである。pHを8.0より高くに上げると、タンパク質の架橋が起こり得る。
【0045】
過ヨウ素酸ナトリウムは、抗体に結合した炭水化物部分内の糖のアルコール部分を酸化してアルデヒドにするために使用することができる。各アルデヒド基は、カルボン酸について説明したように、アミン、ヒドラジド、またはヒドラジンと反応させることができる。炭水化物部分は抗体の結晶化可能な断片(Fc)領域に主に存在するため、抗原結合部位から離れた炭水化物を部位特異的に改変することによって連結を実現することができる。シッフ塩基中間体が形成され、水溶性還元剤のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(穏やかで選択的)または水素化ホウ素ナトリウム(強力)を用いてこの中間体を還元することによって、アルキルアミンに還元することができる。
【0046】
「試料」という用語は、生物または元は生物であったものに由来する任意の量の物質を含むが、それに限定されるわけではない。このような生物には、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、および他の動物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの包埋(embedment)において、試料は、サル、特にカニクイザル、もしくはウサギ、またはマウスもしくはラットから取得される。このような物質には、1つの態様において個体由来の全血、血清、または血漿が含まれ、これらは臨床ルーチンにおいて最も広く使用される試料源であるが、それらに限定されるわけではない。
【0047】
「固相」という用語は、非流動性物質を意味し、ポリマー、金属(常磁性粒子、強磁性粒子)、ガラス、およびセラミックなどの材料から作製された粒子 (微粒子およびビーズを含む);シリカ、アルミナ、およびポリマーゲルなどのゲル物質;ポリマー、金属、ガラス、および/またはセラミック製であり得るキャピラリー;ゼオライトおよび他の多孔性物質;電極;マイクロタイタープレート;ソリッドストリップ(solid strip);ならびにキュベット、チューブ、または他の分光計用試料容器が含まれる。「固相」が、試料中のある物質と相互作用すると意図される少なくとも1つの部分をその表面に含むという点で、固相構成要素は、不活性な固体表面と区別される。固相は、チューブ、ストリップ、キュベット、もしくはマイクロタイタープレートなどの静止構成要素であってよく、またはビーズおよび微粒子などの非静止構成要素であってよい。タンパク質および他の物質の非共有結合または共有結合のいずれかを可能にする様々な微粒子が、使用され得る。このような粒子には、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリラート)などのポリマー粒子;金ナノ粒子および金コロイドなどの金粒子;ならびにシリカ、ガラス、および金属酸化物粒子などのセラミック粒子が含まれる。例えば、Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features, 70 (1998) 322A-327AまたはButler, J.E., Methods 22 (2000) 4-23を参照されたい。
【0048】
1つの態様において、検出可能な標識は、色素原(蛍光基または発光基および色素)、酵素、NMR-活性基、金属粒子、またはジゴキシゲニン(digoxygenin)のようなハプテンから選択される。また、検出可能な標識は、光で活性化され得る架橋基、例えばアジド基またはアジリン基であってもよい。1つの態様において、電気化学発光に基づいて検出できる金属キレートもまた、シグナルを発する基であり、ルテニウムキレート、例えばルテニウム(ピスピリジル)
32+キレートが特に好ましい。適切なルテニウム標識基は、例えば、EP0580979、WO90/05301、WO90/11511、およびWO 92/14138において説明されている。
【0049】
「治療的多重特異性結合物」という用語は、ヒトにおける使用を目的とする多重特異性結合物を意味する。1つの態様において、多重特異性結合物は多重特異性抗体である。1つの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。1つの態様において、多重特異性抗体または二重特異性抗体は、モノクローナル抗体である。1つの態様において、多重特異性抗体または二重特異性抗体は、ヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である。
【0050】
「実験動物」という用語は、飼育動物および家畜、ならびに高等霊長類を含むが、ヒトを除く、任意の哺乳動物を意味する。1つの態様において、本明細書において報告される方法は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ならびにキツネザル、サル、マーモセット、および類人猿のような霊長類を含む群より選択される実験動物から得られた試料を用いて実施される。実験動物が小型類人猿である場合、人類に最も近い近縁種、大型類人猿、特に、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、およびオランウータンの群は除外される。
【0051】
「全ての治療的多重特異性結合物」という用語は、治療的多重特異性結合物が活性(すなわち、1つまたは複数の結合相手と依然として反応性である)か、不活性であるか、かつ/または結合相手と複合体を形成しているかを問わず、実験動物の試料中に存在する任意の治療的多重特異性結合物を意味する。
【0052】
「活性な治療的多重特異性結合物」という用語は、1つまたは複数のその結合相手に依然として結合することができる、実験動物の試料中に存在する治療的多重特異性結合物を意味する。
【0053】
「結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物」という用語は、少なくとも1つの結合特異性がその結合相手に特異的に結合している、実験動物の試料中に存在する治療的多重特異性結合物を意味する。
【0054】
試料中の多重特異性結合物の量を測定するための免疫学的測定方法が、本明細書において報告される。
【0055】
免疫学的測定は、捕捉分子、トレーサー分子、および検出分子を用いた架橋アッセイ法として実施される。
【0056】
1つの態様において、捕捉分子は固相に結合される。捕捉分子は、多重特異性結合物の結合相手(例えば、二重特異性抗体の抗原の内の1つ)、多重特異性結合物の一般的な複合体形成物質(complexing agent)(例えば、完全長抗体の場合のFc受容体、もしくは完全長抗体の場合の抗Fc領域抗体)、または多重特異性結合物が結合対の第2の相手で誘導体化されている場合には結合対の第1の相手、または多重特異性結合物の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体のいずれかであることができる。
【0057】
トレーサー分子は、多重特異性結合物の結合相手(例えば、二重特異性抗体の抗原の内の1つ、ただし、1つの抗原が捕捉分子として使用されている場合には、別の抗原がトレーサー分子として使用されなければならない)、多重特異性結合物の一般的な複合体形成物質(例えば、完全長抗体の場合のFc受容体(ただし、この分子が捕捉分子として既に使用されていないことを条件とする)もしくは完全長抗体の場合の抗Fc領域抗体(ただし、同じ種類の抗体が捕捉分子としても使用されている場合は、この抗体が別のエピトープに結合することを条件とする))、または多重特異性結合物が結合対の第2の相手で誘導体化されている場合には結合相手の第1の相手(ただし、別の結合対が、捕捉分子を固定するのに使用されるものとして使用されることを条件とする)、または多重特異性結合物の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体(ただし、捕捉分子として使用される抗イディオタイプ抗体とは異なる結合特異性にこれが結合することを条件とする)のいずれかであることができる。
【0058】
試料中の多重特異性結合物の量を測定するためには、多重特異性結合物の異なる結合特異性に結合する抗イディオタイプ抗体を捕捉分子およびトレーサー分子として使用することが有利であることが現在判明している。
【0059】
試料中の多重特異性抗体の免疫学的測定において抗イディオタイプ抗体を捕捉分子およびトレーサー分子として使用することによって、この方法は、多重特異性結合物の抗原を捕捉分子およびトレーサー分子として使用する方法と比べて、i) より確固としたものとなり/試料マトリックス中の物質に関して受ける干渉が少なくなり、ii) 必要とする試料希釈の程度が低くなり、iii) より迅速に実施されることができ、iv)捕捉抗体および/またはトレーサー抗体の標識化/誘導体化/固定化に関する柔軟性が高くなる。
【0060】
試料中、特に実験動物から得られた試料を含む血清またはヒト血漿中の多重特異性結合物の量の免疫学的測定は、多重特異性結合物の抗原が補足分子およびトレーサー分子として使われる場合、試料マトリックスの影響を強く受けることが判明している。
【0061】
試料が実験動物から得られ、その中で例えば薬物動態試験が実施される場合、試料は、多重特異性結合物のほかに、実験動物に由来する他の密接に関連した成分も含むと考えられる。例えば、試料が、実験動物の血液から得られた血清である場合、その試料は、多重特異性結合物の結合相手(例えば、受容体分子または切断(shed)受容体分子の可溶性リガンド)(例えば、多重特異性抗体の抗原)、多重特異性結合物より多い量または少ない量の、異なるサブクラスの免疫グロブリン、非特異的複合体形成分子などの内の1種または複数種も含むと考えられる。これらの分子はどれも、免疫学的測定方法に干渉し得る。
【0062】
例えば、二重特異性抗体の場合、試料は、二重特異性抗体のほかに、二重特異性抗体の抗原の一方または両方も含む。この結果、遊離の二重特異性抗体、1つの抗原と複合体を形成した二重特異性抗体、2つの抗原と複合体を形成した二重特異性抗体、および他の血清成分またはヒト血漿成分と非特異的に複合体を形成した前述の各分子の混合物が存在することになる。遊離の二重特異性抗体は、上記に概説した捕捉分子およびトレーサー分子の実現可能な任意の組合せを用いて検出することができる。抗原と複合体を形成した抗体もまた、主に(principally)、上記の組合せのいずれかを用いて検出され得るが、抗原と複合体を形成した抗体は複合体を形成していない形態と平衡状態にあるため、二重特異性抗体の一部が、試料中に存在する抗体の総量から除かれる(withdrawn)ので、方法の感度は低下すると考えられる。抗原と複合体を形成した抗体の量は非常に変わりやすく、したがって、非常に変わりやすい様式でアッセイ法にも影響する。延長したインキュベーション時間を用いることによって、少なくともある程度、これを相殺することができるが、その一方で、インキュベーション時間の延長はアッセイ法の遂行を遅くする。
【0063】
実験動物から得られた血清試料または血漿試料中の二重特異性抗体の量の免疫学的測定方法の感度は、二重特異性抗体の異なる結合特異性のCDRに特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を捕捉分子およびトレーサー分子として使用することによって改善できることが、現在判明している。とりわけ、結合平衡を移動させるためにインキュベーション時間を延長する必要がないので、測定を実施するのに必要とされる時間もまた短縮され得る。さらに、抗原との複合体形成にかかわらず二重特異性抗体が捕捉されることができ、したがって、必要とされる捕捉分子の量が少なくなるため、固体表面上に必要とされる捕捉分子の量/捕捉分子の密度も低減され得る。
【0064】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を以下の順序で含む、実験動物から得られた試料中の治療的多重特異性結合物、1つの態様においては多重特異性抗体、特に二重特異性抗体の量または濃度を測定するための方法である:
a)多重特異性結合物の第1の結合特異性に特異的に結合する第1の抗イディオタイプ抗体と共に試料をインキュベートする段階、
b)第1の結合特異性とは異なる多重特異性結合物の第2の結合特異性に特異的に結合する第2の抗イディオタイプ抗体と共に試料をインキュベートする段階、および
c)段階b)で形成された複合体と治療的多重特異性結合物の量または濃度との相関関係を明らかにする段階。
【0065】
1つの態様において、多重特異性結合物は多重特異性抗体である。
【0066】
1つの態様において、多重特異性結合物は二重特異性抗体である。
【0067】
1つの態様において、結合特異性は、抗体重鎖可変ドメインとその同種の抗体軽鎖可変ドメインとのペアである。
【0068】
1つの態様において、多重特異性結合物の1つまたは複数の結合特異性の結合相手は、抗原である。1つの態様において、抗原は、それぞれの結合特異性について互いとは無関係に、可溶性抗原および膜結合型抗原より選択される。1つの態様において、抗原は、それぞれの結合特異性について互いとは無関係に、受容体リガンドおよび細胞表面受容体より選択される。
【0069】
1つの態様において、方法は、イムノアッセイ法である。1つの態様において、イムノアッセイ法は、サンドイッチイムノアッセイ法である。
【0070】
1つの態様において、結合相手への多重特異性結合物の結合は、抗体のアミノ酸骨格のN末端基および/もしくはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基、および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学的結合によって実施される。
【0071】
1つの態様において、捕捉抗イディオタイプ抗体は、特異的結合対を介して固定される。1つの態様において、捕捉抗イディオタイプ抗体はビオチンに連結され、固定されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して固定化が行われる。
【0072】
1つの態様において、トレーサー抗イディオタイプ抗体は、特異的結合対を介して検出可能な標識に連結される。1つの態様において、トレーサー抗イディオタイプ抗体は、ジゴキシゲニンに連結され、検出可能な標識への連結は、ジゴキシゲニンに対する抗体を介して行われる。
【0073】
1つの態様において、実験動物は、マーモセットおよびタマリン、旧世界ザル、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル、テナガザルおよび小型類人猿、典型的キツネザル(true lemur)の科のメンバー、ならびにそれらの交雑種を含む群より選択される。
【0074】
1つの態様において、治療的抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。1つの態様において、ヒト抗体またはヒト化抗体は、モノクローナル抗体である。1つの態様において、全ての治療的抗体が検出され、別の態様において、活性な治療的抗体が検出され、1つの態様において、その抗原に結合している治療的抗体が検出される。
【0075】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、常磁性ビーズに連結されている。
【0076】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、固相に連結されている。
【0077】
実験動物における治療的多重特異性結合物の適用に関係する様々な局面が、前臨床試験の間に評価されなければならない場合がある。ある種の設定において、試料中に存在する治療的多重特異性結合物の総量を解析することが妥当である場合があり、または試料中の治療的多重特異性結合物の特定の断片、試料中の治療的多重特異性結合物の特定の改変、試料中の1つもしくは複数のその結合相手に結合した試料中の治療的多重特異性結合物の濃度、もしくは1つもしくは複数のその結合相手に依然として結合できる試料中の治療的多重特異性結合物の画分を解析することが重要である場合がある。1つの態様において、本明細書において報告される方法は、全ての治療的多重特異性結合物、または活性な治療的多重特異性結合物、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物をそれぞれ検出するためのものである。
【0078】
全ての、活性な、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物は、本明細書において報告される方法において直接的に検出され得る。
【0079】
さらに、任意の「不活性な」治療的多重特異性結合物を間接的に評価することも可能である。このような不活性な治療的多重特異性結合物は、例えば、その抗原の1つもしくは両方に結合した治療的二重特異性抗体、または交差反応性抗原に結合した治療的二重特異性抗体、または治療的二重特異性抗体に対する自己抗体によって妨害された治療的二重特異性抗体であり得る。全ての多重特異性結合物の総量が、活性な多重特異性結合物および結合相手と複合体を形成した多重特異性結合物の合計を超える場合、対応するその結合相手に結合していない不活性な多重特異性結合物を含む、多重特異性結合物の別の画分が存在していると考えられる。
【0080】
例えば、全ての、活性な、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物を解析するために、様々なアッセイ系がすぐ使える。
【0081】
例えば、全ての多重特異性結合物は、いわゆる競合イムノアッセイ系またはいわゆるサンドイッチ型アッセイ系において検出され得る。
【0082】
このようなアッセイ法は、洗浄段階なしで(均一系イムノアッセイ法)または洗浄段階をともなって(不均一系イムノアッセイ法)、実施され得る。
【0083】
1つの態様において、全ての治療的多重特異性結合物の量は、サンドイッチ型イムノアッセイ法において検出され、ここで、このようなサンドイッチアッセイ法の両側で抗イディオタイプ抗体が使用され、それら2種の抗イディオタイプ抗体は、多重特異性結合物の異なる結合特異性に特異的に結合する。このようなサンドイッチの片側で使用される抗イディオタイプ抗体は、固相に結合されるか、結合することができるのに対し(しばしば、捕捉抗イディオタイプ抗体と呼ばれる)、このようなサンドイッチの反対側の抗イディオタイプ抗体は、直接的検出または間接的検出が容易になるように標識されている(いわゆるトレーサー抗イディオタイプ抗体)。このようなサンドイッチアッセイ法手順で結合されるトレーサー抗イディオタイプ抗体の量は、調査される試料中の治療的多重特異性結合物の量と直接的に相関している。
【0084】
当技術分野(例えばUS 2003/0068664)において、活性な治療的抗体の検出を可能にするアッセイ系は公知である。このような系は、固相への抗原の結合、結合されたこの抗原への治療的抗体の結合、および抗原を介して固相に結合された治療的抗体の検出を必要とする。
【0085】
試料中の活性な多重特異性結合物の検出は、簡便な最新技術の手順によって実現され得る。しかし、全ての治療的多重特異性結合物の検出またはその結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物の画分の検出はかなり複雑であり、まったく異なるアッセイ法の構成を必要とし、特に、異なるアッセイ法のそれぞれに対して特別仕様でつくられた試薬を必要とする。本明細書において報告される方法を用いると、互いに類似物である、試験系中の活性な治療的多重特異性結合物、全ての治療的多重特異性結合物、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物の画分を評価することが可能である。全ての、活性な、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物のこの種の相対的評価は、まさにその本質によって、治療的多重特異性結合物のこれらの様々な画分の間で定量的比較がなされた後で利点を有するはずである。
【0086】
1つの態様において、サンドイッチ型アッセイ形式は、活性な治療的多重特異性結合物を検出するために設定される。1つの態様において、治療的多重特異性結合物の1つの結合特異性に結合する抗イディオタイプ抗体が捕捉抗イディオタイプ抗体として使用され、このようなサンドイッチアッセイ法の検出側は、多重特異性結合物の他の各結合特異性によって特異的に結合される、標識された形態の抗原を利用するか、あるいは、多重特異性結合物の他の各結合特異性によって特異的に結合される抗原の結合後に、治療的多重特異性結合物によって認識されるエピトープに結合もせず競合もしない第2の抗体を利用し、この第2の抗体は、特異的に検出可能であるか、かつ/または直接的検出もしくは間接的検出が容易になるような様式で標識されている。
【0087】
1つの態様において、結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物は、多重特異性結合物の1つの結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を捕捉抗イディオタイプ抗体として使用するサンドイッチ型アッセイ形式で検出される。検出の際、治療的多重特異性結合物のエピトープと競合しないエピトープにおいて多重特異性結合物の異なる結合特異性によって特異的に結合される結合相手に結合する第2の抗体が使用される。1つの態様において、前記第2の抗体は、直接的検出または間接的検出が容易になるような様式で標識されている。
【0088】
直接的検出の場合、標識基は、色素、化学発光基のような発光性標識基、例えば、アクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、または蛍光色素、例えば、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニン、およびそれらの誘導体など任意の公知の検出可能マーカー基より選択され得る。標識基の他の例は、ルテニウム錯体またはユーロピウム錯体などの発光性金属錯体、例えばELISAまたはCEDIA(Cloned Enzyme Donor Immunoassay)のために使用されるような酵素、および放射性同位体である。1つの態様において、電気化学発光に基づいて検出できる金属キレートもまた、検出可能な標識として使用されるシグナル発生基であり、ルテニウムキレートが特に好ましい。1つの態様において、標識基はルテニウム(ビスピリジル)
32+キレートである。
【0089】
間接的検出系は、例えば、検出試薬を含み、例えば、トレーサー抗イディオタイプ抗体は、バイオアフィン(bioaffine)結合対の第1の相手で標識されている。適切な結合対の例は、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンまたはビオチン類似体(例えば、アミノビオチン、イミノビオチン、もしくはデスチオビオチン)/アビジンまたはストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸または核酸類似体/相補的核酸、および受容体/リガンド、例えば、ステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンである。1つの態様において、第1の結合対メンバーは、ハプテン、抗原、およびホルモンを含む。1つの態様において、ハプテンは、ジゴキシゲニン、テオフィリン、カルボラン、およびビオチン、ならびにそれらの類似体を含む群より選択される。このような結合対の第2の相手、例えば、抗体、ストレプトアビジンなどは、通常、例えば前述の標識によって、直接的検出を可能にするために標識される。
【0090】
イムノアッセイ法は、当業者には周知である。このようなアッセイ法を実施するための方法ならびに実際の応用および手順は、関連する教科書に要約されている。関連する教科書の例は、Tijssen, P., Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates in "Practice and theory of enzyme immunoassays" (1990) 221-278, Eds. R. H. Burdon and v. P. H. Knippenberg, Elsevier, Amsterdam)ならびに免疫学的検出方法を扱っている"Methods in Enzymology", Eds. S. P. Colowick, N. O. Caplan and S. P., Academic Press)の様々な巻、特に、70、73、74、84、92 、および121巻である。
【0091】
上記の免疫学的検出方法のいずれにおいても、使用される試薬の結合を可能にする、例えば、対応する抗原への抗体の結合を可能にする試薬条件が選択される。当業者は、複合体という用語を用いることによって、このような結合事象の結果に言及する。本発明によるアッセイ方法において形成される複合体は、最新技術の手順によって、試料中の治療的多重特異性結合物の対応する濃度と相関付けられる。使用される検出試薬によって、この相関付けの段階の結果、全ての、活性な、または結合相手と複合体を形成した治療的多重特異性結合物の濃度が得られる。
【0092】
異なるアッセイ法においてまったく同一の試薬、すなわち抗イディオタイプ抗体を使用するので、得られる値を互いに容易に比較することができ、それらの比さえ評価することができる。1つの態様において、本発明は、活性な治療的多重特異性結合物と全ての治療的多重特異性結合物の比に関する。この比は、治療的多重特異性結合物の有効性の指標としておそらく役立つ。
【0093】
1つの局面において、以下の段階を含む、試料中の多重特異性結合物の量を免疫学的に測定するための方法が、本明細書において報告される:
(i) 多重特異性結合物の第1の結合特異性に特異的に結合する第1の抗イディオタイプ抗体と、
(ii) 該多重特異性結合物と
の間で形成される複合体の量を、多重特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる該多重特異性結合物の第2の結合特異性に特異的に結合する第2の抗イディオタイプ抗体と共にその複合体をインキュベートすることによって測定し、
それによって、試料中の該多重特異性結合物の量を測定する段階。
【0094】
1つの態様において、多重特異性結合物の量の測定は、ブリッジングイムノアッセイ法による。1つの態様において、イムノアッセイ法は、捕捉抗体およびトレーサー抗体を含み、捕捉(capture)は固相に連結されており、トレーサー抗体は検出可能な標識に連結されている。1つの態様において、捕捉抗体およびトレーサー抗体は両方とも、多重特異性結合物の異なる結合特異性に結合する抗イディオタイプ抗体である。
【0095】
1つの態様において、捕捉抗体は固相に連結されている。
【0096】
1つの態様において、トレーサー抗体は、検出可能な標識を含む。
【0097】
本明細書において報告される方法において有用な抗イディオタイプ捕捉抗体は、固相に連結され得る。1つの態様において、連結は、抗体のアミノ酸骨格のN末端基および/もしくはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基、および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学的結合によって実施される。1つの態様において、抗イディオタイプ捕捉抗体は、固相に連結された少なくとも2つの抗体の混合物であり、ここで該固相に連結された少なくとも2つの抗体は、固相に連結されている部位が異なる。例えば、固相に連結された少なくとも2つの抗体の混合物は、抗体のアミノ酸骨格のアミノ酸を介して固相に連結された該抗体、および、抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介して固相に連結された該抗体を含み得る。また、例えば、固相に連結された少なくとも2つの抗体の混合物は、それらのアミノ酸骨格の異なるアミノ酸残基を介して固相に連結された抗体を含んでもよい。「異なるアミノ酸残基」という表現は、例えば、リジンおよびアスパラギン酸もしくはチロシンおよびグルタミン酸など2つの異なる種類のアミノ酸、または抗体のアミノ酸配列における位置が異なる、アミノ酸骨格の2つのアミノ酸残基のいずれかを意味する。後者の場合、アミノ酸は、同じ種類のものでも、異なる種類のものでもよい。「抗体部位が異なる」という表現は、部位の種類が異なること、例えば、アミノ酸基もしくは糖アルコール基、または例えば抗体が固相に連結されている位置の、アミノ酸骨格のアミノ酸の番号が異なることのいずれかを意味する。逆もまた同様に、同じことが、本明細書において報告される方法において有用なトレーサー抗体に当てはまる。
【0098】
方法の1つの態様において、イムノアッセイ法は、捕捉抗体、トレーサー抗体、および検出抗体を含み、ここで捕捉抗体は、ストレプトアビジンを介して固相に連結されている、多重特異性結合物の第1の結合特異性に特異的に結合するビオチン標識抗イディオタイプ抗体であり、トレーサー抗体は、多重特異性結合物の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する、ジゴキシゲニンに連結されている抗イディオタイプ抗体であり、検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結されている、ジゴキシゲニンに対する抗体である。
【0099】
1つの態様において、方法は、以下の段階を含む:
-多重特異性結合物を含む試料を、多重特異性結合物の第1の結合特異性に特異的に結合する第1の抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする段階であって、第1の抗イディオタイプ抗体と多重特異性結合物との複合体が形成される、段階、
-抗イディオタイプ捕捉抗体と多重特異性結合物との複合体を、第1の抗イディオタイプ抗体が結合する結合特異性と同一ではない、すなわち異なる、多重特異性結合物の第2の結合特異性に特異的に結合する第2の抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする段階であって、第1の抗イディオタイプ抗体と多重特異性結合物と第2の抗イディオタイプ抗体との複合体が形成される段階、および
-前段階で形成された複合体の量を測定する段階。
【0100】
1つの態様において、多重特異性結合物の量の測定は、検量線を用いることによる。
【0101】
1つの態様において、第2の抗イディオタイプ抗体は、検出可能な標識に連結されている。
【0102】
1つの態様において、多重特異性結合物の量の測定は、固定された検出可能な標識の量を測定することによる。
【0103】
1つの態様において、多重特異性結合物は二重特異性結合物である。1つの態様において、二重特異性結合物は二重特異性抗体である。
【0104】
以下の実施例および添付の図面は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の精神から逸脱することなく、説明される手順に修正を加え得ることが理解される。
【実施例】
【0105】
実施例1
試料中の二重特異性抗体の量を測定するための一般的方法
多重特異性結合物/二重特異性抗体の濃度は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定した。
【0106】
マウスの血清試料または血漿試料および眼ライセート(eye lysates)中の二重特異性抗体を定量する場合、二重特異性抗体の二重特異性の完全性を確認するために、二重特異性抗体の異なる結合特異性に対するビオチン標識モノクローナル抗イディオタイプ抗体およびジゴキシゲニン標識モノクローナル抗イディオタイプ抗体を捕捉抗体および検出抗体として用いた固相逐次的サンドイッチイムノアッセイ法を実施した。この設定においては、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体に対して、ビオチン標識抗イディオタイプ捕捉抗体がVEGF結合部位に特異的に結合し、一方、ジゴキシゲニン標識抗イディオタイプ検出抗体がANG2結合部位に特異的に結合する。ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート(SA-MTP)の固相上に結合された捕捉抗体、二重特異性抗体、および検出抗体の免疫複合体を、抗ジゴキシゲニン抗体に連結された西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて検出した。結合していない材料をSA-MTPから洗浄し、ABTS基質を添加した後、得られたシグナルは、SA-MTPの固相に結合された二重特異性抗体の量に比例していた。並行して解析された検量用試料を基準として試料の測定シグナルを濃度に変換することによって、定量を実施した。
【0107】
二重特異性抗VEGF/ANG2抗体を検出するための設定
第1の段階で、MTP振盪機において500rpmで1時間、100μl/ウェルのビオチン標識抗イディオタイプ捕捉抗体溶液(抗VEGF抗体に対する抗体M-2.45.51-Bi)(濃度1μg/ml)でSA-MTPをコーティングする。その間に、検量用試料、QC試料、および試料を調製した。検量用試料およびQC試料は、2%血清マトリックスに希釈した。検量用試料の直線範囲内にシグナルが入るまで、試料を希釈した。
【0108】
SA-MTPを抗イディオタイプ捕捉抗体でコーティングした後、300μl/ウェルの洗浄用緩衝液でプレートを3回洗浄した。続いて、100μl/ウェルの検量用試料、QC試料、および試料をSA-MTP上にピペットで分注し、500rpmで1時間インキュベートした。
【0109】
次に、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体を、そのVEGF結合部位を用いて、抗イディオタイプ抗VEGF抗体捕捉抗体を介してSA-MTPの固相に結合させた。インキュベーション後、プレートを洗浄することによって、未結合の分析物を除去した。その後、100μl/ウェルの抗イディオタイプ検出抗体(抗ANG2抗体に対する抗体M-2.6.81-Dig)(濃度250ng/ml)をSA-MTPのウェルに添加した。その後、500rpmで1時間、振盪機上でプレートをインキュベートした。洗浄後、100μl/ウェルの第2の検出抗体(ポリクローナル抗ジゴキシゲニン抗体-Fab-POD結合体)(濃度50mU/ml)をSA-MTPのウェルに添加し、500rpmで1時間、プレートをインキュベートした。過剰な第2の検出抗体を除去するための最終洗浄段階の後、100μl/ウェルの基質(ABTS)を添加した。抗体-POD結合体は、ABTS(登録商標)基質の呈色反応を触媒する。次いで、ELISAリーダーによって波長405nmでのシグナルを測定した(参照波長:490nm([405/490]nm))。
【0110】
実施例2
ヒトFcRnに関してトランスジェニックなFcRnマウスにおいて二重特異性抗体を薬物動態学的に特徴付けするための、実施例1によるアッセイ法の使用
生存中の段階
この研究は、マウスFcRnを欠損しておりヒトFcRnに関してヘミ接合性トランスジェニックである雌のC57BL/6Jマウス(遺伝背景的(background))(huFcRn、276-/tg系統)を含んだ。
【0111】
パート1
2μl/動物の適切な溶液(すなわち、化合物21μg/動物(変異I253A、H310A、およびH435A(KabatのEU指標による番号付与)を含まない抗VEGF/ANG2抗体、使用された抗体およびアミノ酸配列に関するさらなる詳細についてはEP 12176299.1を参照されたい)または化合物23.6μg/動物(変異I253A、H310A、およびH435A(KabatのEU指標による番号付与)を含む抗VEGF/ANG2抗体)を、すべてのマウスの右眼の硝子体内に一回注入した。
【0112】
マウスを、それぞれ動物6匹を含む2グループに割り当てた。各二重特異性抗体の適用後、グループ1からは2時間、24時間、および96時間の時点に、グループ2からは7時間、48時間、および168時間の時点に、血液試料を採取した。
【0113】
マウス右眼の硝子体中への注入は、World Precision Instruments, Inc., Berlin, Germany社製のナノリットル注入用のNanoFil Microsyringe系を用いることによって実施した。2.5%イソフルランでマウスを麻酔し、マウスの眼を見えるようにするために、倍率40倍でリングライト付きのLeica MZFL 3顕微鏡をLeica KL 2500 LCD照明装置(lightning)と共に用いた。続いて、35ゲージの針を用いて、化合物2μlを注入した。
【0114】
血清中の化合物レベルを測定するために、各動物の反対側の眼の眼球後静脈叢から血液を採取した。
【0115】
室温で1時間後の血液から、4℃で3分間の遠心分離(9,300×g)によって、少なくとも50μLの血清試料を得た。遠心分離後、血清試料を直接凍結し、解析するまで-80℃で凍結して保存した。
【0116】
グループ1の動物の処置された眼を、処置後96時間目に摘出(isolated)し、グループ2の動物の処置された眼を、処置後168時間目に摘出した。
【0117】
試料は、解析するまで-80℃で凍結して保存する。
【0118】
パート2
200μl/動物の適切な溶液(すなわち、化合物21μg/動物(変異I253A、H310A、およびH435A(KabatのEU指標による番号付与)を含まない抗VEGF/ANG2抗体)または化合物23.6μg/動物(変異I253A、H310A、およびH435A(KabatのEU指標による番号付与)を含む抗VEGF/ANG2抗体)を、すべてのマウスの尾静脈に一回静脈内注入した。
【0119】
マウスを、それぞれ動物5匹を含む2グループに割り当てた。各二重特異性抗体の適用後、グループ1からは1時間、24時間、および96時間の時点に、グループ2からは7時間、48時間、および168時間の時点に、血液試料を採取した。
【0120】
血清中の化合物レベルを測定するために、各動物の眼球後静脈叢から血液を採取した。
【0121】
室温で1時間後の血液から、4℃で3分間の遠心分離(9,300×g)によって、少なくとも50μLの血清試料を得た。遠心分離後、血清試料を直接凍結し、解析するまで-80℃で凍結して保存した。
【0122】
全眼ライセート(whole eye lysate )(マウス)の調製
眼ライセートは、実験用動物の眼全体を物理化学的に分解することによって得た。機械的破壊のために、底が円錐形の1.5ml容マイクロバイアルに各眼を移した。凍結および解凍後、細胞洗浄用緩衝液1mlで眼を一度洗浄した(Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit、カタログ番号171-304011)。次の段階で、新しく調製した細胞溶解緩衝液500μl を添加し、1.5ml組織粉砕ペッスル(Kimble Chase、1.5mlペッスル、製品番号749521-1500)を用いて、眼を粉砕した。次いで、この混合物を5回凍結および解凍し、再び粉砕した。残存組織からライセートを分離するために、試料を4,500gで4分間遠心分離した。遠心分離後、上清を採取し、定量ELISAでさらに解析するまで-20℃で保存した。
【0123】
解析
試料中の二重特異性抗体の量の測定を、実施例1に従って実施した。
【0124】
薬物動態学的評価
薬物動態パラメーターは、薬物動態評価プログラムWinNonlin(商標)(Pharsight)、バージョン5.2.1を用いて非コンパートメント解析によって算出した。
【0125】
結果
A)血清濃度
血清濃度に関する結果を表1〜2に示す。
【0126】
(表1)変異I253A、H310A、およびH435Aを含まない抗VEGF/ANG2抗体の硝子体内適用および静脈内適用後の血清濃度の比較
【0127】
(表2)変異I253A、H310A、およびH435Aを含む抗VEGF/ANG2抗体の硝子体内適用および静脈内適用後の血清濃度の比較
【0128】
B)左眼および右眼の眼ライセート中の濃度
眼ライセート中の濃度に関する結果を表3〜4に示す。
【0129】
(表3a)右眼に硝子体内適用した後の、眼ライセート中の変異I253A、H310A、およびH435Aを含まない抗VEGF/ANG2抗体の濃度
【0130】
(表3b)静脈内内適用した後の、眼ライセート中の変異I253A、H310A、およびH435Aを含まない抗VEGF/ANG2抗体の濃度
【0131】
(表4a)右眼に硝子体内適用した後の、眼ライセート中の変異I253A、H310A、およびH435Aを含む抗VEGF/ANG2抗体の濃度
【0132】
(表4b)静脈内内適用した後の、眼ライセート中の変異I253A、H310A、およびH435Aを含む抗VEGF/ANG2抗体の濃度
【0133】
実施例3
二重特異性抗体の薬物動態学的特徴付けのためのアッセイ法
10%ヒトEDTA/血漿中に抗VEGF/ANG2抗体を含む同じ試料セットを、抗原に基づくELISA(A)および抗イディオタイプ抗体に基づくELISA(B)を用いて解析した。
【0134】
抗VEGF/ANG2抗体を検出するための、抗原に基づくELISA
第1の段階で、組換えヒトアンジオポエチン2(ANG2)をMaxisorbマイクロタイタープレートに1時間、直接コーティングした。並行して、ジゴキシゲニン標識組換えヒトVEGFを、未知の量の抗VEGF/ANG2抗体または標準試料をそれぞれ含む試料と共にプレインキュベートした。ジゴキシゲニン標識VEGFとプレインキュベーションする前に、試料を10倍に希釈した。マイクロタイタープレートのコーティングおよび洗浄後、抗VEGF/ANG2抗体およびジゴキシゲニン標識VEGFのプレインキュベートされた溶液をマイクロタイタープレートにピペットで分注し、さらに1時間インキュベートした。プレインキュベーション溶液に由来する、ジゴキシゲニン標識VEGFに結合された抗VEGF/ANG2抗体は、固定されたANG2に結合された。洗浄段階をもう1度行った後、HRP標識(horseradish peroxidase-labeled)ポリクローナル抗ジゴキシゲニン抗体をプレートに添加し、さらに1時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄し、ABTS基質溶液を添加して呈色反応を開始させた(
図2を参照されたい)。
【0135】
抗VEGF/ANG2抗体を検出するための、抗イディオタイプ抗体に基づくELISA
第1の段階で、ビオチン標識抗イディオタイプ捕捉抗体溶液(抗VEGF抗体に対する抗体(M-2.45.51-BI))でSA-MTP(streptavidin-coated micro titer plate)をコーティングした。その間に、検量用試料、対照試料(QC試料)、および試料を調製した。検量用試料およびQC試料は、10%カニクイザル血漿マトリックスに希釈した。検量用試料の直線範囲内にシグナルが入るまで、試料を希釈した。
【0136】
SA-MTPを抗イディオタイプ捕捉抗体でコーティングした後、プレートを3回洗浄した。続いて、QC試料および試料をSA-MTP上にピペットで分注し、500rpmで1時間インキュベートした。
【0137】
二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、SA-MTPの固相に対して、抗イディオタイプ抗VEGF抗体捕捉抗体に対するそのVEGF結合部位を介して存在した。インキュベーション後、プレートを洗浄することによって、未結合の分析物を除去した。その後、抗イディオタイプ検出抗体(抗ANG2抗体に対する抗体(M-2.6.81-DIG)、0.5μg/ml)をSA-MTPのウェルに添加した。その後、500rpmで1時間、振盪機上でプレートをインキュベートした。洗浄後、第2の検出抗体(ポリクローナル抗ジゴキシゲニン抗体-Fab-POD結合体(POD=peroxidase))をSA-MTPのウェルに添加し、500rpmで1時間、プレートをインキュベートした。過剰な第2の検出抗体を除去するための最終洗浄段階の後、基質(ABTS)を添加した。抗体-POD結合体は、ABTS(登録商標)基質の呈色反応を触媒する。次いで、ELISAリーダーによって波長405nmでのシグナルを測定した(参照波長:490nm([405/490]nm))。10%ヒト血漿に溶かした0.1〜30ng/mlの較正用標準物のODシグナルを405nmで測定した。
【0138】
(表5)抗VEGF/ANG2抗体の検出に関するアッセイ法(A)およびアッセイ法(B)の比較
【0139】
異なるアッセイ法(A)および(B)を用いて得られた検量線を
図3に示す。
【0140】
図4から、抗イディオタイプ抗体に基づくアッセイ法が、5%、10%、および20%ヒト血清の存在下で類似した結果となるのに対し、抗原に基づくアッセイ法はより大きな差異(deviation)を示すことを認めることができる。