特許第6226977号(P6226977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226977補償光学システムの角度ずれ検出方法、補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226977
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】補償光学システムの角度ずれ検出方法、補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システム
(51)【国際特許分類】
   G01J 9/00 20060101AFI20171030BHJP
   G01M 11/02 20060101ALI20171030BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01J9/00
   G01M11/02 B
   G02F1/01 B
   G02F1/01 D
【請求項の数】16
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-521416(P2015-521416)
(86)(22)【出願日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2014064293
(87)【国際公開番号】WO2014196447
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-119851(P2013-119851)
(32)【優先日】2013年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】黄 洪欣
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/183341(WO,A1)
【文献】 Chenxi Huang,"Correlation matching method for high-precision position detection of optical vortex using Shack.Har,Optics Express,2012年11月,Vol. 20, Issue 24,pp. 26099-26109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00
G01M 11/02
G02F 1/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサとを備え、前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を算出する方法であって、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する前記変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により前記光強度分布を取得する光強度分布取得ステップと、
前記光強度分布取得ステップにおいて得られた前記光強度分布に含まれる、前記第1の領域に対応する前記集光スポットと前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの相対位置関係に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を求める角度算出ステップと、
を備える補償光学システムの角度ずれ検出方法。
【請求項2】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサとを備え、前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を算出する方法であって、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する前記変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第1の前記光強度分布を取得する第1の光強度分布取得ステップと、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており前記第1の領域とは別の領域である前記変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第2の前記光強度分布を取得する第2の光強度分布取得ステップと、
前記第1の光強度分布に含まれる前記第1の領域に対応する前記集光スポットと、前記第2の光強度分布に含まれる前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの相対位置関係に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を求める角度算出ステップと、
を備える補償光学システムの角度ずれ検出方法。
【請求項3】
前記角度算出ステップにより算出された前記角度ずれ量が小さくなるように、前記変調面及び前記波面センサのうち少なくとも一方の前記光像周りの角度を調整する調整ステップを更に備える請求項1または2に記載の補償光学システムの角度ずれ検出方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の領域が互いに隣接する領域である請求項1〜3のいずれか一項に記載の補償光学システムの角度ずれ検出方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の領域が互いに離間した領域である請求項1〜3のいずれか一項に記載の補償光学システムの角度ずれ検出方法。
【請求項6】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサとを備え、前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を検出する方法であって、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する前記変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により前記光強度分布を取得する光強度分布取得ステップと、
前記光強度分布取得ステップにおいて得られた前記光強度分布に含まれる、前記第1の領域に対応する前記集光スポットと前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの距離に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を求める倍率算出ステップと、
を備える補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項7】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサとを備え、前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を検出する方法であって、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する前記変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第1の前記光強度分布を取得する第1の光強度分布取得ステップと、
前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており前記第1の領域とは別の領域である前記変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第2の前記光強度分布を取得する第2の光強度分布取得ステップと、
前記第1の光強度分布に含まれる前記第1の領域に対応する前記集光スポットと、前記第2の光強度分布に含まれる前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの距離に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を求める倍率算出ステップと、
を備える補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項8】
前記倍率算出ステップにより算出された前記結像倍率が所定の結像倍率に近づくように、前記変調面と前記波面センサとの間に配置された導光光学系の倍率を調整する調整ステップを更に備える請求項6または7に記載の補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項9】
前記倍率算出ステップにより算出された前記結像倍率が所定の結像倍率に近づくように、前記変調面と前記波面センサとの光学距離を調整する調整ステップを更に備える請求項6または7に記載の補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項10】
前記倍率算出ステップにより算出された前記結像倍率に基づいて、波面歪みを補償するための前記位相パターンが表示される前記変調面上の領域の大きさを調整する調整ステップを更に備える請求項6または7に記載の補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の領域が互いに隣接する領域である請求項6〜10のいずれか一項に記載の補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の領域が互いに離間した領域である請求項6〜10のいずれか一項に記載の補償光学システムの結像倍率検出方法。
【請求項13】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、
複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサと、
前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する前記変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により前記光強度分布を取得し、該光強度分布に含まれる、前記第1の領域に対応する前記集光スポットと前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの相対位置関係に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を求める補償光学システム。
【請求項14】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、
複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサと、
前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する前記変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第1の前記光強度分布を取得し、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており前記第1の領域とは別の領域である前記変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第2の前記光強度分布を取得し、前記第1の光強度分布に含まれる前記第1の領域に対応する前記集光スポットと、前記第2の光強度分布に含まれる前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの相対位置関係に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの角度ずれ量を求める補償光学システム。
【請求項15】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、
複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサと、
前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する前記変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により前記光強度分布を取得し、該光強度分布に含まれる、前記第1の領域に対応する前記集光スポットと前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの距離に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を求める補償光学システム。
【請求項16】
変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、
複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びに前記レンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており前記空間光変調器から変調後の前記光像を受ける波面センサと、
前記光強度分布から得られる前記光像の波面形状に基づいて前記空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する前記変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第1の前記光強度分布を取得し、前記複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており前記第1の領域とは別の領域である前記変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、前記第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、前記光検出素子により第2の前記光強度分布を取得し、前記第1の光強度分布に含まれる前記第1の領域に対応する前記集光スポットと、前記第2の光強度分布に含まれる前記第2の領域に対応する前記集光スポットとの距離に基づいて、前記変調面と前記波面センサとの間の結像倍率を求める補償光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、補償光学システムの角度ずれ検出方法、補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び2には、位相計測法により補償光学システムを調整する方法が記載されている。位相計測法は、既知の位相分布を空間光変調器に表示させた上で、この位相分布を波面センサによって計測し、その計測結果と既知の位相分布とを対照することにより、変調面上の座標と検出面上の座標とを相互に対応付ける方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Abdul Awwal, et al., “Characterization and Operation of a Liquid Crystal Adaptive OpticsPhoropter”, Proceedings of SPIE, Volume 5169, pp104-122 (2003)
【非特許文献2】Jason Porter, Hope Queener, Julianna Lin, Karen Thorn, and AbdulAwwal “Adaptive Optics for Vision Science”, Wiley Interscience, Charpter 18, pp496-499 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補償光学技術は、波面センサを用いて光学的な収差(波面歪み)を計測し、その結果を基に波面変調素子(空間光変調器)を制御することで動的に収差を除去する技術である。この補償光学技術によって、結像特性や集光度、画像のSN比、計測精度を向上させることができる。従来、補償光学技術は、主として天体望遠鏡や大型レーザ装置に使われていた。近年になって、補償光学技術は、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡、光干渉断層装置、レーザ顕微鏡などにも応用されつつある。このような補償光学技術を用いたイメージングは、従来にない高い分解能での観察を可能にする。例えば、眼の奥(眼底)を観察する眼底イメージング装置に補償光学技術を適用することによって、眼球による収差が除去され、例えば視細胞、神経繊維、毛細血管といった眼底の微細構造を鮮明に描出することができる。眼疾患だけでなく、循環器系疾病の早期診断にも応用することができる。
【0005】
補償光学システムでは、光の波長以下(例えばサブマイクロレベル)の精度で波面を制御する。故に、波面センサや空間光変調器の組立精度や、光学部品及びその固定部品の製造誤差などに起因して、空間光変調器の変調面と波面センサとの間で、光軸周りの角度ずれや結像倍率の変動を生じることがある。このような角度ずれや結像倍率の変動が生じると、空間光変調器における制御点の位置と、波面センサにおける計測点の位置との対応関係が不正確となり、補償光学の精度に影響を及ぼしてしまう。従って、変調面と波面センサとの相対角度および結像倍率を調整するために、変調面と波面センサとの間の角度ずれおよび結像倍率を容易に検出し得ることが望まれる。また、例えば空間光変調器の変調面と波面センサとの間の光学倍率が可変であるような場合にも、変調面と波面センサとの間の結像倍率を容易に検出し得ることが望まれる。
【0006】
本発明の一側面は、空間光変調器の変調面と波面センサとの間での光軸周りの角度ずれを容易に検出することができる補償光学システムの角度ずれ検出方法及び補償光学システムを提供することを目的とする。また、本発明の一側面は、空間光変調器の変調面と波面センサとの間の結像倍率を容易に検出することができる補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る補償光学システムの角度ずれ検出方法は、変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びにレンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており空間光変調器から変調後の光像を受ける波面センサとを備え、光強度分布から得られる光像の波面形状に基づいて空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、変調面と波面センサとの角度ずれ量を算出する方法である。
【0008】
そして、第1の角度ずれ検出方法は、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により光強度分布を取得する光強度分布取得ステップと、光強度分布取得ステップにおいて得られた光強度分布に含まれる、第1の領域に対応する集光スポットと第2の領域に対応する集光スポットとを結ぶ直線の傾きに基づいて、変調面と波面センサとの角度ずれ量を求める角度算出ステップとを備える。
【0009】
また、第2の角度ずれ検出方法は、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第1の光強度分布を取得する第1の光強度分布取得ステップと、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており第1の領域とは別の領域である変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第2の光強度分布を取得する第2の光強度分布取得ステップと、第1の光強度分布に含まれる第1の領域に対応する集光スポットと、第2の光強度分布に含まれる第2の領域に対応する集光スポットとを結ぶ直線の傾きに基づいて、変調面と波面センサとの角度ずれ量を求める角度算出ステップとを備える。
【0010】
上記第1及び第2の角度ずれ検出方法は、角度算出ステップにより算出された角度ずれ量が小さくなるように、変調面及び波面センサのうち少なくとも一方の光像周りの角度を調整する調整ステップを更に備えてもよい。
【0011】
また、上記第1及び第2の角度ずれ検出方法では、第1及び第2の領域が互いに隣接する領域であってもよく、或いは、第1及び第2の領域が互いに離間した領域であってもよい。
【0012】
本発明の一側面に係る補償光学システムの結像倍率検出方法は、変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びにレンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており空間光変調器から変調後の光像を受ける波面センサとを備え、光強度分布から得られる光像の波面形状に基づいて空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムにおいて、変調面と波面センサとの間の結像倍率を算出する方法である。
【0013】
そして、第1の結像倍率検出方法は、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により光強度分布を取得する光強度分布取得ステップと、光強度分布取得ステップにおいて得られた光強度分布に含まれる、第1の領域に対応する集光スポットと第2の領域に対応する集光スポットとの距離に基づいて、変調面と波面センサとの間の結像倍率を求める倍率算出ステップとを備える。
【0014】
また、第2の結像倍率検出方法は、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第1の光強度分布を取得する第1の光強度分布取得ステップと、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており第1の領域とは別の領域である変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第2の光強度分布を取得する第2の光強度分布取得ステップと、第1の光強度分布に含まれる第1の領域に対応する集光スポットと、第2の光強度分布に含まれる第2の領域に対応する集光スポットとの距離に基づいて、変調面と波面センサとの間の結像倍率を求める倍率算出ステップとを備える。
【0015】
上記第1及び第2の結像倍率検出方法は、倍率算出ステップにより算出された結像倍率が所定の結像倍率に近づくように、変調面と波面センサとの間に配置された導光光学系の倍率を調整する調整ステップを更に備えてもよい。
【0016】
また、上記第1及び第2の結像倍率検出方法は、倍率算出ステップにより算出された結像倍率が所定の結像倍率に近づくように、変調面と波面センサとの光学距離を調整する調整ステップを更に備えてもよい。
【0017】
また、上記第1及び第2の結像倍率検出方法は、倍率算出ステップにより算出された結像倍率に基づいて、波面歪みを補償するための位相パターンが表示される変調面上の領域の大きさを調整する調整ステップを更に備えてもよい。
【0018】
また、上記第1及び第2の結像倍率検出方法では、第1及び第2の領域が互いに隣接する領域であってもよく、或いは、第1及び第2の領域が互いに離間した領域であってもよい。
【0019】
また、本発明の一側面に係る補償光学システムは、変調面に入射した光像の位相を空間的に変調する空間光変調器と、複数のレンズが二次元状に配列されたレンズアレイ、並びにレンズアレイによって形成された集光スポットを含む光強度分布を検出する光検出素子を有しており空間光変調器から変調後の光像を受ける波面センサと、光強度分布から得られる光像の波面形状に基づいて空間光変調器に表示される位相パターンを制御することにより波面歪みを補償する制御部とを備える。
【0020】
そして、第1の補償光学システムは、制御部が、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により光強度分布を取得し、該光強度分布に含まれる、第1の領域に対応する集光スポットと第2の領域に対応する集光スポットとを結ぶ直線の傾きに基づいて、変調面と波面センサとの角度ずれ量を求める。
【0021】
また、第2の補償光学システムは、制御部が、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第1の光強度分布を取得し、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており第1の領域とは別の領域である変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第2の光強度分布を取得し、第1の光強度分布に含まれる第1の領域に対応する集光スポットと、第2の光強度分布に含まれる第2の領域に対応する集光スポットとを結ぶ直線の傾きに基づいて、変調面と波面センサとの角度ずれ量を求める。
【0022】
また、第3の補償光学システムは、制御部が、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに各々対応する変調面上の第1及び第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1及び第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により光強度分布を取得し、該光強度分布に含まれる、第1の領域に対応する集光スポットと第2の領域に対応する集光スポットとの距離に基づいて、変調面と波面センサとの間の結像倍率を求める。
【0023】
また、第4の補償光学システムは、制御部が、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応する変調面上の第1の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第1の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第1の光強度分布を取得し、複数のレンズのうちの一若しくは互いに隣接する二以上のレンズに対応しており第1の領域とは別の領域である変調面上の第2の領域に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン及び空間的に非線形な位相パターンのうち一方を表示させ、第2の領域を囲む領域に他方を表示させた状態で、光検出素子により第2の光強度分布を取得し、第1の光強度分布に含まれる第1の領域に対応する集光スポットと、第2の光強度分布に含まれる第2の領域に対応する集光スポットとの距離に基づいて、変調面と波面センサとの間の結像倍率を求める。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面に係る補償光学システムの角度ずれ検出方法及び補償光学システムによれば、空間光変調器の変調面と波面センサとの間での光軸周りの角度ずれを容易に検出することができる。また、本発明の一側面に係る補償光学システムの結像倍率検出方法及び補償光学システムによれば、空間光変調器の変調面と波面センサとの間の結像倍率を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る補償光学システムの構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態の波面センサの構成を概略的に示す断面図であって、光像の光軸に沿った断面を示している。
図3】波面センサが備えるレンズアレイを光像の光軸方向から見た図である。
図4】波面センサが備えるイメージセンサを光像の光軸方向から見た図である。
図5】一実施形態の空間光変調器の一例として、LCOS型の空間光変調器を概略的に示す断面図であって、光像の光軸に沿った断面を示している。
図6】空間光変調器の変調面の正面図である。
図7】一実施形態における調整方法の原理を説明するための概念図である。
図8】変調面に表示される特殊な位相パターンを概念的に示す図である。
図9】波面センサのイメージセンサによって検出される光強度分布データ(シャックハルトマングラム)を概念的に示す図である。
図10】変調面とレンズアレイとの相対関係を概念的に示す図である。
図11】変調面と波面センサとの間の角度ずれに起因する、光強度分布データの集光スポットの位置変化の様子を表す図である。
図12】空間的に非線形な位相パターンの例として、位相の大きさの分布が不規則であるランダム分布を示す図である。
図13】空間的に非線形な位相パターンの例として、集光スポットを拡径するデフォーカス分布を示す図である。
図14】空間的に非線形な位相パターンの例として、光像に大きな球面収差を生じさせる分布を示す図である。
図15】空間的に非線形な位相パターンの例として、光像に高次収差を含む収差を生じさせる分布を示す図である。
図16】複数の領域毎に共通の位相分布(例えばデフォーカス分布)が配置された位相パターンを例示している。
図17】複数の領域毎に異なる位相分布(例えば高次収差を含む収差を生じさせる位相分布)が配置された位相パターンを例示している。
図18】少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンの例として、変調面の全面に亘って位相値が略均一な位相分布を示す図である。
図19】制御部の内部構成の一例を示すブロック図である。
図20】第1実施形態に係る角度ずれ検出方法および補償光学システムの動作を示すフローチャートである。
図21】第2実施形態に係る角度ずれ検出方法および制御部の動作を示すフローチャートである。
図22】第1変形例の位相パターンを概念的に示す図である。
図23】第1変形例の別の位相パターンを概念的に示す図である。
図24】第3実施形態において変調面に表示される、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンを概念的に示す図である。
図25】(a)変調面上の各領域とレンズアレイとの相対関係を概念的に示す図であって、変調面と波面センサとの間に角度ずれがない場合、且つ変調面と波面センサとの間に位置ずれがない場合を示している。(b)(a)に示された場合における、光強度分布データを示す図である。
図26】(a)変調面上の各領域とレンズアレイとの相対関係を概念的に示す図であって、変調面と波面センサとの間に角度ずれ(ずれ量θ)が生じた場合を示している。(b)(a)に示された場合における、光強度分布データを示す図である。
図27】(a)変調面上の各領域とレンズアレイとの相対関係を概念的に示す図であって、変調面と波面センサとの間に角度ずれ(ずれ量θ)に加えて、光像の光軸に垂直な面内で位置ずれが生じた場合を示している。(b)(a)に示された場合における、光強度分布データを示す図である。
図28】第3実施形態による角度ずれ検出方法および制御部の動作を示すフローチャートである。
図29】第4実施形態に係る結像倍率検出方法および制御部の動作を示すフローチャートである。
図30】第5実施形態に係る結像倍率検出方法および制御部の動作を示すフローチャートである。
図31】第1及び第2の領域の配置例を示す図である。
図32】第1及び第2の領域の配置例を示す図である。
図33】第1の方向(例えば行方向)において位相値が傾斜しており、第1の方向と交差する第2の方向(例えば列方向)において位相値が略均一である位相分布を示す図である。
図34】第1の方向(例えば行方向)及び第2の方向(例えば列方向)の双方において位相値が傾斜している位相分布を示す図である。
図35】少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンの例として、第1の方向における位相分布がシリンドリカルレンズ効果を有し、第2の方向において位相値が略均一である位相分布を示す図である。
図36】少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンの例として、第1の方向における位相分布が回折格子を構成し、第2の方向において位相値が略均一である位相分布を示す図である。
図37】重ね合わせによって得られる合成パターンの例を示す図である。
図38】レンズアレイの変形例を示す図である。
図39】第1及び第2の領域の大きさを可変とする場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一側面に係る補償光学システムの角度ずれ検出方法、補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明において、「位相分布」とは、二次元に分布する位相値を指し、「位相パターン」とは、位相分布(二次元の位相値)を、ある基準を基にコード化したものを指し、「位相プロファイル」とは、位相分布における或る方向(線)に沿った位相値の分布を指すものとする。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態に係る補償光学システム10の構成を概略的に示す図である。補償光学システム10は、例えば眼科検査装置、レーザ加工装置、顕微鏡装置、または補償光学装置などに組み込まれる。この補償光学システム10は、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)11、波面センサ12、制御部13、ビームスプリッタ14、リレーレンズ15及び16、並びに制御回路部17を備えている。
【0028】
空間光変調器11は、位相パターンを表示する変調面11aに光像Laを受け、光像Laの波面形状を変調して出力する。空間光変調器11に入射する光像Laは、例えばレーザ光源やスーパールミネッセントダイオード(SLD)から発する光、或いは、光が照射された観察物から発生した反射光、散乱光、蛍光等である。波面センサ12は、空間光変調器11から到達した光像Laの波面形状(典型的には光学系の収差によって現れ、波面の歪み、すなわち基準波面からの波面のずれを表す)に関する情報を含むデータS1を制御部13に提供する。制御部13は、波面センサ12から得られたデータS1に基づいて、空間光変調器11に適切な位相パターンを表示させるための制御信号S2を生成する。一例では、制御部13は、波面センサ12からデータS1を入力する入力部、データS1から収差を算出する収差算出部、空間光変調器11に表示させる位相パターンを算出する位相パターン算出部、及び算出した位相パターンに応じて制御信号S2を生成する信号生成部を含む。制御回路部17は、制御部13から制御信号S2を受けて、この制御信号S2に基づく電圧V1を空間光変調器11の複数の電極に与える。
【0029】
ビームスプリッタ14は、波面センサ12と空間光変調器11との間に配置され、光像Laを分岐する。ビームスプリッタ14は偏光方向非依存型、偏光方向依存型、或いは、波長依存型(ダイクロイックミラー)のビームスプリッタのいずれでもよい。ビームスプリッタ14によって分岐された一方の光像Laは、例えばCCDや光電子増倍管、アバランシェ・フォトダイオードといった光検出素子18に送られる。光検出素子18は、例えば走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope;SLO)、光断層撮影装置(Optical Coherence Tomography;OCT)、眼底カメラ、顕微鏡、望遠鏡等に組み込まれたものである。また、ビームスプリッタ14によって分岐された他方の光像Laは、波面センサ12に入射する。
【0030】
リレーレンズ15及び16は、空間光変調器11と波面センサ12との間において光軸方向に並んで配置される。これらのリレーレンズ15,16によって、空間光変調器11と波面センサ12とが、互いに光学的な共役関係に保たれる。なお、空間光変調器11と波面センサ12との間には、光学結像レンズ及び/又は偏向ミラーなどが更に配置されてもよい。
【0031】
図2は、本実施形態の波面センサ12の構成を概略的に示す断面図であって、光像Laの光軸に沿った断面を示している。図3は、波面センサ12が備えるレンズアレイ120を光像Laの光軸方向から見た図である。図4は、波面センサ12が備えるイメージセンサ(光検出素子)122を光像Laの光軸方向から見た図である。
【0032】
波面センサ12には干渉型と非干渉型とがあるが、本実施形態では、波面センサ12として、レンズアレイ120及びイメージセンサ122を有する非干渉型のシャックハルトマン型波面センサを用いる。このような非干渉型の波面センサを用いると、干渉型の波面センサを用いる場合と比較して、耐震性が優れており、また、波面センサの構成及び計測データの演算処理を簡易にできる利点がある。
【0033】
図3に示されるように、レンズアレイ120は、N個(Nは4以上の整数)のレンズ124を有する。N個のレンズ124は、例えばNa行Nb列(Na,Nbは2以上の整数)の二次元格子状に配置されている。
【0034】
また、図2に示されるイメージセンサ122は、レンズアレイ120を構成するN個のレンズ124の後焦点面と重なる位置に受光面122aを有しており、N個のレンズ124によって形成されるN個の集光スポットPを含む光強度分布を検出する。図4に示されるように、イメージセンサ122は、Ma行Mb列(Ma,Mbは2以上の整数)の二次元格子状に配列された複数の画素122bを含んで構成されている。イメージセンサ122の画素122bの配列ピッチは、基準位置からの集光像位置のずれの大きさを高い精度で検出できるように、レンズ124の配列ピッチよりも十分に小さくなっている。
【0035】
後述する制御部13では、イメージセンサ122によって検出された光強度分布に基づいて、光像Laの波面形状(位相勾配の分布)が計測される。すなわち、レンズ124による集光スポットPの位置と基準位置とのずれの大きさは、レンズ124に入射する光像Laの局所的な波面の傾きに比例する。したがって、基準位置からの集光スポットPの位置ずれの大きさをレンズ124毎に算出し、この集光スポットPの位置ずれに基づいて、光像Laの波面形状を計測することができる。
【0036】
集光像位置のずれの大きさを計算する為に用いられる基準位置としては、複数のレンズ124それぞれの光軸と、イメージセンサ122の受光面122aとが交わる位置とすることができる。この位置は、平行平面波を各レンズ124に垂直入射させて得られる集光像を用いて、重心計算により容易に求められる。
【0037】
空間光変調器11は、光源若しくは観察対象物からの光像Laを受け、その光像Laの波面を変調して出力する素子である。具体的には、空間光変調器11は、二次元格子状に配列された複数の画素(制御点)を有しており、制御部13から提供される制御信号S2に応じて各画素の変調量(例えば位相変調量)を変化させる。空間光変調器11には、例えば、LCOS−SLM(Liquid Crystal On Silicon Spatial Light Modulator)、PPM(ProgramablePhase Modulator)、LCD(Liquid Crystal Display)、微小電気機械素子(Micro Electro Mechanical Systems;MEMS)、或いは液晶表示素子と光アドレス式液晶空間光変調器とが結合されて成る電気アドレス式の空間光変調器、といったものがある。なお、図1には反射型の空間光変調器11が示されているが、空間光変調器11は透過型であってもよい。
【0038】
図5は、本実施形態の空間光変調器11の一例として、LCOS型の空間光変調器を概略的に示す断面図であって、光像Laの光軸に沿った断面を示している。この空間光変調器11は、透明基板111、シリコン基板112、複数の画素電極113、液晶部(変調部)114、透明電極115、配向膜116a及び116b、誘電体ミラー117、並びにスペーサ118を備えている。
【0039】
透明基板111は、光像Laを透過する材料からなり、シリコン基板112の主面に沿って配置される。複数の画素電極113は、シリコン基板112の主面上において二次元格子状に配列され、空間光変調器11の各画素を構成する。透明電極115は、複数の画素電極113と対向する透明基板111の面上に配置される。液晶部114は、複数の画素電極113と透明電極115との間に配置される。配向膜116aは液晶部114と透明電極115との間に配置され、配向膜116bは液晶部114と複数の画素電極113との間に配置される。誘電体ミラー117は配向膜116bと複数の画素電極113との間に配置される。誘電体ミラー117は、透明基板111から入射して液晶部114を透過した光像Laを反射して、再び透明基板111から出射させる。
【0040】
また、空間光変調器11は、複数の画素電極113と透明電極115との間に印加される電圧を制御する画素電極回路(アクティブマトリクス駆動回路)119を更に備えている。画素電極回路119から何れかの画素電極113に電圧が印加されると、該画素電極113と透明電極115との間に生じた電界の大きさに応じて、該画素電極113上の液晶部114の屈折率が変化する。したがって、液晶部114の当該部分を透過する光像Laの光路長が変化し、ひいては、光像Laの位相が変化する。そして、複数の画素電極113に様々な大きさの電圧を印加することによって、位相変調量の空間的の分布を電気的に書き込むことができ、必要に応じて様々な波面形状を実現することができる。
【0041】
図6は、空間光変調器11の変調面11aの正面図である。図6に示されるように、変調面11aは、Pa行Pb列(Pa,Pbは2以上の整数)の二次元格子状に配列された複数の画素11bを含んで構成されている。なお、複数の画素11bそれぞれは、複数の画素電極113それぞれによって構成される。
【0042】
再び図1を参照する。この補償光学システム10では、まず、図示しない光源若しくは観察対象物からの光像Laが、ほぼ平行な光として空間光変調器11に入射する。そして、空間光変調器11によって変調された光像Laは、リレーレンズ15及び16を経てビームスプリッタ14に入射し、2つの光像に分岐される。分岐後の一方の光像Laは、波面センサ12に入射する。そして、波面センサ12において光像Laの波面形状(例えば位相分布)を含むデータS1が生成され、データS1は制御部13に提供される。制御部13は、波面センサ12からのデータS1に基づいて、必要に応じて光像Laの波面形状(位相分布)を算出し、光像Laの波面歪みを適切に補償するための位相パターンを含む制御信号S2を空間光変調器11へ出力する。その後、空間光変調器11によって補償された歪みのない光像Laは、ビームスプリッタ14により分岐され、図示しない光学系を経て光検出素子18に入射し、撮像される。
【0043】
ここで、空間光変調器11の変調面11a、および波面センサ12の検出面における座標系を次のように設定する。すなわち、空間光変調器11の変調面11aに平行であり且つ互いに直交する二方向を該変調面11aにおけるx軸方向およびy軸方向とし、波面センサ12の検出面に対して平行であり且つ互いに直交する二方向を該検出面におけるx軸方向およびy軸方向とする。但し、空間光変調器11の変調面11aにおけるx軸と、波面センサ12の検出面におけるx軸とは互いに逆向きであり、空間光変調器11の変調面11aにおけるy軸と、波面センサ12の検出面におけるy軸とは互いに逆向きである。また、空間光変調器11の変調面11aの中心を変調面11aにおける座標系の原点とし、変調面11aの中心を波面センサ12の検出面に写像して得られる点を検出面における座標系の原点とする。
【0044】
このとき、空間光変調器11の変調面11a上の位置(Xs,Ys)における波面の位相は、波面センサ12の検出面上の位置(Xc,Yc)における波面の位相に一対一で写像されることとなり、変調面11aと検出面との間に光軸周りの角度ずれがない場合、これらの関係は次式(1)で表される。
【数1】
但し、Mはリレーレンズ15,16の倍率である。なお、数式(1)に含まれる倍率Mは、既知であることが多い。
【0045】
しかしながら、運搬時や設置場所での振動、或いは、波面センサや空間光変調器を保持する部材の熱による変形などに起因して、変調面11aと波面センサ12の検出面との間で、光軸周りの角度ずれを生じることがある。本実施形態に係る補償光学システムの角度ずれ調整方法では、調整のための特殊な位相パターンを空間光変調器11に表示させ、波面センサ12においてその位相パターンにより生じる特徴を検出することで、波面センサ12と変調面11aとの間の角度ずれ量を取得する。そして、必要に応じ、その角度ずれ量に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度調整を行う。
【0046】
以下、変調面11aと波面センサ12との間の角度ずれ量の検出方法について詳細に説明する。なお、この検出方法は、図1に示された制御部13の記憶領域13aの内部にプログラムとして記憶され、制御部13がこのプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0047】
図7は、本実施形態による検出方法の原理を説明するための概念図である。図7には、空間光変調器11の変調面11a及び波面センサ12(レンズアレイ120及びイメージセンサ122)に加えて、リレーレンズ15及び16、変調面11aへ入射される光像の波面W1、変調面11aから出射される光像の波面W2、波面センサ12に入射される光像の波面W3が示されている。空間光変調器11からは、入射波面W1に、空間光変調器11に表示されている位相パターンに応じた波面が加えられた波面W2が出射される。波面センサ12には、リレーレンズ15及び16を含む共役光学系を経た波面W3が入射される。また、図7には、一つのレンズ124に対応する変調面11a上の領域から出射して、該レンズ124に達する光像Laが示されている。
【0048】
ここで、図8は、変調面11aに表示される特殊な位相パターンを概念的に示す図である。図8に示されるように、一つのレンズ124に対応する大きさを有する変調面11a上の第1の領域B1と、第1の領域B1から離間しており他の一つのレンズ124に対応する大きさを有する変調面11a上の第2の領域B2とに、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを表示させる。第1の位相パターンは、例えば略均一な位相分布、少なくとも一方向に傾斜した位相分布等を含むことによって実現される。または、第1の位相パターンは、或る第1の方向においてシリンドリカルレンズ効果を有し、該第1の方向と交差する第2の方向において略均一である位相分布、若しくは第1の方向において回折格子を構成し、該第1の方向と交差(例えば、直交)する第2の方向において略均一である位相分布を含むことによって実現される。
【0049】
また、これと同時に、変調面11a上の第1の領域B1および第2の領域B2を囲む領域B3に、空間的に非線形な第2の位相パターン(例えば、位相の大きさの分布が不規則であるランダム分布や、集光スポットを拡径するデフォーカス分布など)を表示させる。すると、出射波面W2のうち領域B3に相当する部分の波面が乱れる(図7の部分A1)。そして、この波面の乱れは、波面センサ12への入射波面W3のうち、領域B3に対応するレンズ124に入射する部分にも生じることとなる(図7の部分A2)。これにより、当該レンズ124によって形成されていた集光スポットPが拡散し、集光スポットPが形成されないか、或いは、スポットの最大輝度が低減したものか、スポット径が拡がったものとなる。すなわち、領域B3に対応する集光スポットは、明瞭さが低下したものしか形成できない。
【0050】
一方、波面W2,W3における第1及び第2の領域B1,B2に相当する部分(図7の部分A3,A4)では、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンによって、該少なくとも一方向において波面が乱されることなくレンズ124に入射する。したがって、当該レンズ124によって集光スポットPが明瞭に形成される。
【0051】
図9は、波面センサ12のイメージセンサ122によって検出される光強度分布データ(シャックハルトマングラム)を概念的に示す図である。図9(a)は、領域B1,B2において少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンが表示され、領域B3において空間的に非線形な位相パターンが表示されている場合の光強度分布データD1を示している。図9(b)は、比較のため、全ての領域において線形性を有する位相パターンが表示されている場合の光強度分布データD2を示している。
【0052】
図9(b)に示されるように、全ての領域において線形性を有する位相パターンが表示されている場合には、N個のレンズ124に対応するN個の集光スポットPが光強度分布データに含まれる。これに対し、図9(a)に示されるように、領域B1,B2において少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンが表示され、領域B3において空間的に非線形な位相パターンが表示されている場合には、領域B1,B2に各々対応する2個の集光スポットPは光強度分布データに含まれるが、領域B3に対応する集光スポットは、形成されないか、或いは、スポットの最大輝度が低減したものか、スポット径が拡がったものとなる。すなわち、領域B3に対応する集光スポットは、明瞭さが低下したものしか形成できない。
【0053】
ここで、図10は、変調面11aとレンズアレイ120との相対関係を概念的に示す図である。図10(a)は、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれがない場合、すなわち変調面11aの配列方向とレンズ124(図中に破線で表示)の配列方向とが揃っている場合を示している。この場合、変調面11aにおけるN個の領域11c(図中に太線で表示)が、N個のレンズ124にそれぞれ対応する。なお、各領域11cには複数の画素11bが含まれている。
【0054】
これに対し、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれが生じると、図10(b)に示されるように、変調面11aのN個の領域11cと、N個のレンズ124との相対位置にずれが生じる。そして、角度ずれの中心から離れた領域11cからの光像Laは、該領域11cに対応するレンズ124とは異なる他のレンズ124に入射することとなる。
【0055】
図9(a)に示された光強度分布データD1は、このような角度ずれによって、次のように変化する。図11は、変調面11aと波面センサ12との間の角度ずれに起因する、光強度分布データD1の集光スポットPの位置変化の様子を表す図である。変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれがない場合には、領域B1,B2にそれぞれ対応する2つの集光スポットP1が、所定の位置に形成される。しかし、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれが生じていると、図11に示されるように、領域B1,B2にそれぞれ対応する2つの集光スポットP2は、上記の集光スポットP1とは異なる位置に形成される。
【0056】
そして、2つの集光スポットP2の相対位置関係は、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量により一義的に定まる。具体的には、2つの集光スポットP1を結ぶ線分L1と、2つの集光スポットP2を結ぶ線分L2との成す角θは、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量と一致する。このことから、光強度分布データD1に含まれる、領域B1に対応する集光スポットPと領域B2に対応する集光スポットPとの相対位置関係を調べることにより、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量θを知ることができる。なお、角度ずれ量θは、次の数式(2)によって算出される。
【数2】
【0057】
ここで、図8の領域B3に表示される「空間的に非線形な第2の位相パターン」の例を示す。図12図15は、このような位相パターンの例を示す図であって、位相の大きさが明暗によって示されており、最も暗い部分の位相は0(rad)であり、最も明るい部分の位相は2π(rad)である。
【0058】
図12は、位相の大きさの分布が不規則であるランダム分布を示している。なお、図12には、行方向および列方向のそれぞれの一箇所における位相変調量のグラフが併せて例示されている。このような位相パターンが領域B3に表示されると、当該部分の光像Laが拡散し、明瞭な集光スポットPが形成されなくなる。図13は、集光スポットPを拡径するデフォーカス分布を示している。図13にも、行方向および列方向のそれぞれの一箇所における位相変調量のグラフが併せて例示されている。このような位相パターンが領域B3に表示されると、当該部分の光像Laが集光されず逆に拡大されるので、明瞭な集光スポットPが形成されなくなる。図14は、光像Laに大きな球面収差を生じさせる分布を示している。図15は、光像Laに大きな高次収差を生じさせる分布を示している。図14図15に示された位相パターンが領域B3に表示された場合にも、明瞭な集光スポットPが形成されなくなる。空間的に非線形な第2の位相パターンは、これらの分布のうち少なくとも一つを含んでもよく、或いは、これらの分布のうち少なくとも一つと、線形な位相パターンとを重ね合わせた合成パターンを含んでもよい。
【0059】
また、領域B3に表示される非線形な位相パターンは、領域B3を分割して成る複数の領域毎に共通の位相分布を含んでもよく、また、領域B3を分割して成る複数の領域毎に異なる位相分布を含んでもよい。図16は、領域B3を分割して成る複数の領域毎に共通の位相分布(例えばデフォーカス分布)が配置された位相パターンを例示している。また、図17は、領域B3を分割して成る複数の領域毎に異なる位相分布(例えば高次収差を含む収差を生じさせる位相分布)が配置された位相パターンを例示している。
【0060】
図8の領域B1,B2に表示される「少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターン」は、例えば変調面11aの全面に亘って位相値が略均一な位相分布によって実現される。図18は、そのような位相パターンを示す図であって、図12図17と同様に、位相の大きさが明暗によって示されている。図18に示されたような位相パターンが領域B1,B2に表示されると、当該部分の光像Laの波面は平坦となるので、レンズ124によって明瞭な集光スポットPが形成される。
【0061】
図19は、本実施形態の制御部13の内部構成の一例を示すブロック図である。制御部13は、パターン作成部13bと、計算処理部13cとを含んで構成されることができる。なお、パターン作成部13b及び計算処理部13cは、図1に示された制御部13の記憶領域13aの内部にプログラムとして記憶され、制御部13がこのプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0062】
パターン作成部13bは、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターン、すなわち領域B1〜B3を含む位相パターンを作成する。なお、この位相パターンは、パターン作成部13bから制御信号S2として制御回路部17に送られる。
【0063】
ここで、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPは例えば次の数式(3)によって表される。
【数3】
但し、aは或る定数であり、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンの一例である。また、rand()はランダム関数であり、空間的に非線形な第2の位相パターンの一例である。(n,m)は、変調面11a上の画素単位での座標を表す。ROIは、領域B1,B2を表す記号として定義される。
【0064】
前述したように、本実施形態における領域B1,B2は、各々一つのレンズ124に対応する大きさを有する。レンズアレイ120において、複数のレンズ124が図3に示されたように二次元格子状に配列されている場合、領域B1,B2の形状は正方形となる。したがって、先の数式(3)は、次の数式(4)のように変形可能である。
【数4】
但し、(xc,yc)は領域B1の中心座標であり、(xc,yc)は領域B2の中心座標であり、wは領域B1,B2の一辺の画素数であり、a’は定数aと同一の定数か、或いは異なる定数である。なお、変調面11aにおける画素11bの配列ピッチをslmPITCHとし、レンズアレイ120におけるレンズ124の配列ピッチをmlaPITCHとし、変調面11aとレンズアレイ120のレンズ面との間の光学系の結像倍率をMとすると、領域B1,B2の一辺の画素数wは次の数式(5)によって表される。
【数5】
言い換えれば、複数のレンズ124の配列方向における領域B1,B2の幅(=w×slmPITCH)は、複数のレンズ124の配列ピッチmlaPITCHの(1/M)倍である。
【0065】
計算処理部13cは、上述した位相パターンPが変調面11aに各々表示されているときに、波面センサ12から出力される光強度分布データS1を取得する。計算処理部13cは、光強度分布データS1に含まれる各集光スポットPの重心位置を、後述するアルゴリズムに従って算出する。そして、計算処理部13cは、領域B1に対応する集光スポットPの重心位置と、領域B2に対応する集光スポットPの重心位置とに基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量を算出する。
【0066】
以上に説明した、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量の検出を含む、補償光学システム10の動作について図20を参照しつつ説明する。図20は、本実施形態の補償光学システム10の動作および角度ずれ検出方法を示すフローチャートである。なお、図1に示された制御部13の記憶領域13aの内部にこの角度ずれ検出方法が補償光学システム用プログラムとして記憶され、制御部13がこのプログラムを読み出して実行する。
【0067】
補償光学システム10では、まず、制御部13の初期処理が行われる(ステップS11)。この初期処理ステップS11では、例えば計算処理に必要なメモリ領域の確保や、パラメータの初期設定などが行われる。また、このステップS11では、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPの初期化処理として、領域B1,B2の中心を、変調面11aの任意の画素に指定してもよい。
【0068】
次に、制御部13は、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPを作成し、変調面11aに表示させる(ステップS12)。このステップS12では、レンズアレイ120の複数のレンズ124のうち2つのレンズ124にそれぞれ対応する変調面11a上の領域B1及びB2に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン(例えば図18を参照)を表示させ、領域B1及びB2を囲む領域B3に、空間的に非線形な位相パターン(例えば図12図15を参照)を表示させる。
【0069】
続いて、制御部13は、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により光強度分布データ(以下、この光強度分布データをDとする)を取得する(ステップS13、光強度分布取得ステップ)。
【0070】
続いて、制御部13は、光強度分布データDに含まれる2つの集光スポットPの重心を計算することによって、各集光スポットPの位置座標を特定する(ステップS14)。集光スポットPの位置座標(xp,yp)は、次の数式(6)によって表される。なお、Aijは光強度分布データDの座標(i,j)における光強度であり、R0は、イメージセンサ122において集光スポットPが存在し得る計算対象領域である。
【数6】
なお、重心計算前に、光強度分布データDにおいて、閾値やノイズ低減などの処理を行ってもよい。
【0071】
続いて、制御部13は、ステップS14により算出された2つの集光スポットPの位置座標の相対関係に基づいて、図11に示された原理により、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量を算出する(ステップS15、角度算出ステップ)。
【0072】
その後、制御部13は、ステップS15により算出された角度ずれ量が小さくなるように、変調面11a及び波面センサ12のうち少なくとも一方の光像La周りの角度を調整してもよい(ステップS16、調整ステップ)。この調整は、例えば、空間光変調器11の取り付け角度、および波面センサ12の取り付け角度のうち一方若しくは双方を調整することにより行われる。また、通常は、この角度調整によって領域B1,B2と2つの集光スポットPとの対応関係が無くなるので、上記ステップS12〜S16を繰り返し行ってもよい。ステップS15において算出される角度ずれ量がほぼゼロになれば、角度調整が完了する。
【0073】
以上に説明した、本実施形態による補償光学システム10の角度ずれ検出方法、および補償光学システム10によって得られる効果について説明する。本実施形態では、光強度分布取得ステップS13において、空間光変調器11の領域B1,B2に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンを表示させ、領域B1及びB2を囲む領域B3に、空間的に非線形な位相パターンを表示させた状態で、波面センサ12のイメージセンサ122により光強度分布データDを取得する。この光強度分布データDでは、領域B1,B2に対応する集光スポットPが形成されるが、これらの集光スポットPの相対位置関係は、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量に応じて変動する。したがって、領域B1,B2に対応する集光スポットPの相対位置関係に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量を検出することができる。
【0074】
また、本実施形態では、角度ずれ量の検出のための特別な部品や構造を必要とせず、制御部13の動作のみによって角度ずれ量を容易に且つ短時間で検出することができる。なお、前述した非特許文献2に記載された方法では、位相パターンの構造が複雑であり、その作成は容易ではない。これに対し、本実施形態では、単純な位相パターンから成る領域B1〜B3を位相パターンPが含めばよく、位相パターンの構造が簡易であり、制御部13による位相パターンの作成も容易である。また、非特許文献2に記載された方法では、波面センサ12から出力された光強度分布データに基づいて、全体的な波面形状を算出する必要がある。これに対し、本実施形態では光強度分布データの一部のみに基づいて角度ずれ量の検出を行うことができるので、計算処理が容易となる。
【0075】
以上に述べたように、本実施形態の角度ずれ検出方法および補償光学システム10によれば、変調面11aと波面センサ12との間での光軸周りの角度ずれ量を容易に検出し、角度調整を行うことができる。
【0076】
なお、本実施形態では波面部分A4(図7を参照)の大きさがレンズ124の径と一致するように、領域B1,B2の大きさを設定している(数式(5)を参照)。しかしながら、領域B1,B2の大きさはこれに限られず、例えば波面部分A4の一辺の長さがレンズ124の径のn倍(nは自然数)となるように設定されてもよい。この場合、変調面11aにおける画素11bの配列ピッチをslmPITCHとし、レンズアレイ120におけるレンズ124の配列ピッチをmlaPITCHとし、変調面11aとレンズアレイ120のレンズ面との間の光学系の結像倍率をMとすると、領域B1,B2の一辺の画素数wは次の数式(7)によって表される。
【数7】
言い換えれば、複数のレンズ124の配列方向における領域B1,B2の幅(=w×slmPITCH)は、複数のレンズ124の配列ピッチmlaPITCHの(n/M)倍であることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
上述した第1実施形態では、光強度分布取得ステップS13において、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを領域B1及びB2に表示させた状態で、光強度分布データDを取得している。しかしながら、領域B1及びB2に表示される第1の位相パターンは必ずしも同時に表示される必要はなく、上記実施形態は以下のような変形が可能である。
【0078】
図21は、第2実施形態に係る角度ずれ検出方法および制御部13の動作を示すフローチャートである。本実施形態と上記第1実施形態との相違点は、図20に示されたステップS12及びS13に代えて、ステップS21〜24を備える点である。なお、他のステップについては上記第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0079】
ステップS21では、制御部13が、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPを作成し、変調面11aに表示させる。図22は、本変形例の位相パターンPを概念的に示す図である。図22に示されるように、位相パターンPでは、変調面11a上の第1の領域B1に、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターン(例えば図18を参照)を表示させる。また、これと同時に、変調面11a上の第1の領域B1を囲む領域B4に、空間的に非線形な第2の位相パターン(例えば図12図15を参照)を表示させる。
【0080】
続いて、ステップS22では、制御部13が、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により第1の光強度分布データ(以下、この光強度分布データをDとする)を取得する(第1の光強度分布取得ステップ)。この第1の光強度分布データDには、領域B1に対応する集光スポットPが含まれる。
【0081】
続いて、ステップS23では、制御部13が、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPを作成し、変調面11aに表示させる。図23は、本変形例の位相パターンPを概念的に示す図である。図23に示されるように、位相パターンPでは、変調面11a上の第2の領域B2に、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターン(例えば図18を参照)を表示させる。また、これと同時に、変調面11a上の第2の領域B2を囲む領域B5に、空間的に非線形な第2の位相パターン(例えば図12図15を参照)を表示させる。
【0082】
続いて、ステップS24では、制御部13が、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により第2の光強度分布データ(以下、この光強度分布データをDとする)を取得する(第2の光強度分布取得ステップ)。この第2の光強度分布データDには、領域B2に対応する集光スポットPが含まれる。
【0083】
その後、制御部13は、ステップS21〜S24によって得られた2つの光強度分布データD及びDにそれぞれ含まれる集光スポットPの位置座標を特定し(ステップS14)、その相対位置関係に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量を算出する(角度算出ステップS15)。なお、本実施形態においても、制御部13は、ステップS15により算出された角度ずれ量が小さくなるように、変調面11a及び波面センサ12のうち少なくとも一方の光像La周りの角度を調整してもよい(調整ステップS16)。
【0084】
本実施形態のように、第1の領域B1に対応する集光スポットPを含む第1の光強度分布データDと、第2の領域B2に対応する集光スポットPを含む第2の光強度分布データDとを順に取得し、これらの光強度分布データD,Dから2つの集光スポットPの相対位置関係を求めても良い。このような方法であっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第3の実施の形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを2つの領域B1及びB2に表示し、これらに対応する集光スポットPの相対位置関係に基づいて角度ずれ量を求めている。本発明の一側面に係る角度ずれ検出方法および補償光学システム10は、以下に説明する方法であっても角度ずれ量を求めることができる。なお、制御部13の動作を除く補償光学システム10の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0086】
図24は、本実施形態において変調面11aに表示される、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPを概念的に示す図である。図24に示されるように、この位相パターンPは、或る方向に一列に配置された、互いに隣接する3つの領域B6〜B8を含んでいる。また、この位相パターンPは、領域B6〜B8を囲む領域B9を含んでいる。なお、各領域B6〜B8の一辺の長さは、前述した第1及び第2の実施形態の領域B1,B2と同様である。
【0087】
図25(a)は、領域B6〜B8とレンズアレイ120との相対関係を概念的に示す図であって、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれがない場合、且つ変調面11aと波面センサ12との間に位置ずれがない場合を示している。また、図25(b)は、図25(a)に示された場合における、光強度分布データDを示す図である。なお、これらの図において、矢印Anは変調面11aの行方向を示し、矢印Amは変調面11aの列方向を示す。図25(b)に示されるように、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれ及び位置ずれがない場合には、光強度分布データDにおいて、各領域B6〜B8に対応する集光スポットPが明瞭に現れる。なお、本実施形態の図において、明瞭な集光スポットPは黒丸で示される。
【0088】
これに対し、図26(a)は、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれ(ずれ量θ)が生じた場合を示している。この場合、図26(b)に示されるように、光強度分布データDでは、回転中心に位置する領域B7に対応する集光スポットPの明瞭さは変わらないが、その上下に位置する領域B6,B8に対応する集光スポットPの明瞭さが低下する。また、領域B6,B8に対応するレンズ124に対して角度ずれの方向に隣接するレンズ124にも光が入射するため、これらのレンズ124によって微弱な集光スポットPが形成される。なお、本実施形態の図において、明瞭さが若干低下した集光スポットPは白丸で示され、微弱な集光スポットPは破線で示される。従って、これらの集光スポットPの相対位置関係および明瞭さに基づいて、変調面11aと波面センサ12との間の角度ずれ量θを検出することができる。
【0089】
更に、図27(a)は、変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれ(ずれ量θ)に加えて、光像Laの光軸に垂直な面内で位置ずれが生じた場合を示している。この場合、図27(b)に示されるように、中央の領域B7も所定の位置からずれるため、領域B7に対応する集光スポットPの明瞭さも低下する。また、領域B6〜B8の位置ずれの方向に存在するレンズ124にも光が入射するため、それらのレンズ124によって複数の微弱な集光スポットPが形成される。このような光強度分布データDに基づいて変調面11aと波面センサ12との相対位置の調整を行い、その後に、変調面11aと波面センサ12との間の角度調整を行うことができる。
【0090】
図28は、本実施形態による角度ずれ検出方法および制御部13の動作を示すフローチャートである。なお、図1に示された制御部13の記憶領域13aの内部にこの角度ずれ検出方法が補償光学システム用プログラムとして記憶され、制御部13がこのプログラムを読み出して実行する。
【0091】
補償光学システム10では、まず、制御部13の初期処理が行われる(ステップS31)。なお、このステップS31の詳細は、前述した第1実施形態のステップS11と同様である。
【0092】
次に、制御部13は、角度ずれ量の検出のための特殊な位相パターンPを作成し、変調面11aに表示させる(ステップS32)。このステップS32では、レンズアレイ120の複数のレンズ124のうち一列に並ぶ3つのレンズ124にそれぞれ対応する変調面11a上の領域B6〜B8に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターン(例えば図18を参照)を表示させ、領域B6〜B8を囲む領域B9に、空間的に非線形な位相パターン(例えば図12図15を参照)を表示させる。
【0093】
続いて、制御部13は、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により光強度分布データDを取得する(ステップS33)。通常、このときは変調面11aと波面センサ12との間に角度ずれ及び位置ずれの双方が生じているので、光強度分布データD図27(b)のようになる。そして、制御部13は、光強度分布データDの領域B6〜B8のいずれか(例えば、中央の領域B7)に対応する集光スポットPが明瞭になるように、変調面11aと波面センサ12との位置ずれを調整する(ステップS34)。なお、この位置ずれの調整は、波面センサ12の取り付け位置と、空間光変調器11の取り付け位置との相対関係の調整により行われる。或いは、位相パターンPを表示する際に変調面11a上に想定される位置座標と、波面センサ12との相対位置関係の調整により行われてもよい。
【0094】
続いて、制御部13は、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により光強度分布データDを取得する(ステップS35、光強度分布取得ステップ)。前述したステップS34において変調面11aと波面センサ12との位置ずれが既に調整されているので、このときの光強度分布データD図26(b)のようになる。そして、制御部13は、光強度分布データDに含まれる、領域B6に対応する複数の集光スポットPの位置座標および明瞭さと、領域B8に対応する複数の集光スポットPの位置座標および明瞭さとの相対関係に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量θを求める(ステップS36、角度算出ステップ)。
【0095】
続いて、制御部13は、ステップS36において得られた角度ずれ量θが小さくなるように、変調面11a及び波面センサ12のうち少なくとも一方の光像La周りの角度を調整する(ステップS37、調整ステップ)。言い換えれば、領域B6,B8に各々対応する2つの集光スポットPの明瞭さが増し、領域B6,B8に対応する各集光スポットPと隣合う微弱な集光スポットPが更に小さくなるように、これらの角度を調整する。この調整は、例えば、空間光変調器11の取り付け角度、および波面センサ12の取り付け角度のうち一方若しくは双方を調整することにより行われる。
【0096】
通常は、ステップS37の角度調整によって変調面11aと波面センサ12との間に位置ずれが生じる。従って、上記ステップS33〜S37を所定の終了条件を満たすまで繰り返し行う(ステップS38)。或いは、位相パターンPを表示する際に変調面11a上に想定される位置座標を調整する場合は、上記ステップS32〜S37を所定の終了条件を満たすまで繰り返し行う(ステップS38)。変調面11aと波面センサ12との位置ずれ及び角度ずれがほぼゼロになれば(図25(b)を参照)、調整が完了する。
【0097】
以上に説明した、本実施形態による補償光学システム10の角度ずれ検出方法、および補償光学システム10によって得られる効果について説明する。本実施形態では、光強度分布取得ステップS35において、空間光変調器11の領域B6〜B8に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンを表示させ、領域B6〜B8を囲む領域B9に、空間的に非線形な位相パターンを表示させた状態で、波面センサ12のイメージセンサ122により光強度分布データDを取得する。この光強度分布データDでは、領域B6〜B8に対応する集光スポットPが形成されるが、これらの集光スポットP(特に、領域B6,B8に対応する集光スポットP)の相対位置関係は、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量に応じて変動する。したがって、領域B6〜B8に対応する集光スポットPの相対位置関係に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量を検出することができる。また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、角度ずれ量の検出のための特別な部品や構造を必要とせず、制御部13の動作のみによって角度ずれ量を容易に且つ短時間で検出することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、光強度分布取得ステップS35において、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを領域B6〜B8に表示させた状態で、光強度分布データDを取得している。しかしながら、領域B6〜B8に表示される第1の位相パターンは必ずしも同時に表示される必要はなく、第2実施形態のように、領域B6〜B8に第1の位相パターンを順に表示しつつ光強度分布データを取得し、得られた3つの光強度分布データに基づいてステップS36の処理を行っても良い。
【0099】
(第4の実施の形態)
前述した第1〜第3の実施の形態は、いずれも変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量に関するものである。本実施形態では、第1〜第3の実施の形態と共通する方法及び動作を含む、補償光学システム10の結像倍率検出方法および補償光学システム10について説明する。なお、本実施形態において、制御部13の動作を除く補償光学システム10の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0100】
図29は、本実施形態に係る結像倍率検出方法および制御部13の動作を示すフローチャートである。なお、図1に示された制御部13の記憶領域13aの内部にこの結像倍率検出方法が補償光学システム用プログラムとして記憶され、制御部13がこのプログラムを読み出して実行する。
【0101】
補償光学システム10では、まず、制御部13の初期処理が行われる(ステップS41)。なお、このステップS41の詳細は、前述した第1実施形態のステップS11と同様である。
【0102】
次に、制御部13は、結像倍率の検出のための特殊な位相パターンP図8を参照)を作成し、変調面11aに表示させる(ステップS42)。なお、位相パターンPの詳細は、第1実施形態と同様である。その後、制御部13は、上記の位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により光強度分布データDを取得する(ステップS43、光強度分布取得ステップ)。
【0103】
続いて、制御部13は、光強度分布データDに含まれる2つの集光スポットPの重心を計算することによって、各集光スポットPの位置座標(xp,yp)を特定する(ステップS44)。なお、集光スポットPの位置座標(xp,yp)の算出方法は、前述した第1実施形態のステップS14と同様である。ここでは、領域B1に対応する集光スポットPの位置座標を(xp,yp)とし、領域B2に対応する集光スポットPの位置座標を(xp,yp)とする。
【0104】
続いて、制御部13は、領域B1に対応する集光スポットPの位置座標(xp,yp)と、領域B2に対応する集光スポットPの位置座標(xp,yp)との距離に基づいて、変調面11aと波面センサ12との間の結像倍率Mを算出する(ステップS45、倍率算出ステップ)。ここで、位置座標(xp,yp)と位置座標(xp,yp)との距離をH1とし、領域B1の中心位置(xc,yc)と領域B2の中心位置(xc,yc)との距離をH2としたとき、結像倍率Mは、比(H1/H2)によって求められる。換言すれば、結像倍率Mは、次の数式(8)によって求められる。
【数8】
【0105】
その後、ステップS45により算出された結像倍率Mに基づいて、種々の調整を行う(ステップS46)。例えば、ステップS45により算出された結像倍率Mが所定の結像倍率に近づくように、変調面11aと波面センサ12との間に配置された導光光学系(例えば図1に示されたレンズ15,16)の倍率を調整することができる。このような調整は、導光光学系が、結像倍率Mが可変であるズームレンズ等によって構成される場合に適用できる。また、結像倍率Mが所定の結像倍率からずれている場合、変調面11aと波面センサ12との光軸方向の相対位置がずれている可能性があるため、例えば、ステップS45により算出された結像倍率Mが所定の結像倍率に近づくように、変調面11aと波面センサ12との光学距離を調整することができる。また、例えば、ステップS45により算出された結像倍率Mに基づいて、変調面11aにおいて波面歪み補償用の位相パターンが表示される領域の大きさを調整することもできる。
【0106】
以上に説明した、本実施形態による補償光学システム10の結像倍率検出方法、および補償光学システム10によって得られる効果について説明する。本実施形態では、光強度分布取得ステップS43において、空間光変調器11の領域B1,B2に、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンを表示させ、領域B1及びB2を囲む領域B3に、空間的に非線形な位相パターンを表示させた状態で、波面センサ12のイメージセンサ122により光強度分布データDを取得する。この光強度分布データDでは、領域B1,B2に対応する集光スポットPが形成されるが、これらの集光スポットPの距離は、変調面11aと波面センサ12との間の結像倍率Mに応じて変動する。したがって、領域B1,B2に対応する集光スポットP間の距離に基づいて、変調面11aと波面センサ12との間の結像倍率Mを検出することができる。また、本実施形態では、結像倍率Mの検出のための特別な部品や構造を必要とせず、制御部13の動作のみによって結像倍率Mを容易に且つ短時間で検出することができる。
【0107】
(第5の実施形態)
上述した第4実施形態では、光強度分布取得ステップS43において、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを領域B1及びB2に表示させた状態で、光強度分布データDを取得している。しかしながら、結像倍率検出方法においても第2実施形態と同様に、領域B1及びB2に表示される第1の位相パターンは必ずしも同時に表示される必要はない。
【0108】
図30は、第5実施形態に係る結像倍率検出方法および制御部13の動作を示すフローチャートである。本実施形態と上記第4実施形態との相違点は、図29に示されたステップS42及びS43に代えて、ステップS51〜54を備える点である。なお、他のステップについては上記第4実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0109】
ステップS51では、制御部13が、結像倍率の検出のための特殊な位相パターンP図22を参照)を作成し、変調面11aに表示させる。なお、位相パターンPの詳細は、第2実施形態と同様である。その後、ステップS52では、制御部13が、位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により第1の光強度分布データDを取得する(第1の光強度分布取得ステップ)。この第1の光強度分布データDには、領域B1に対応する集光スポットPが含まれる。
【0110】
続いて、ステップS53では、制御部13が、結像倍率の検出のための特殊な位相パターンP図23を参照)を作成し、変調面11aに表示させる。なお、位相パターンPの詳細は、第2実施形態と同様である。その後、ステップS54では、制御部13が、位相パターンPを表示させた状態で、イメージセンサ122により第2の光強度分布データDを取得する(第2の光強度分布取得ステップ)。この第2の光強度分布データDには、領域B2に対応する集光スポットPが含まれる。
【0111】
その後、制御部13は、ステップS51〜S54によって得られた2つの光強度分布データD及びDにそれぞれ含まれる集光スポットPの位置座標を特定し(ステップS44)、それらの距離に基づいて、変調面11aと波面センサ12との結像倍率Mを算出する(倍率算出ステップS45)。その後、ステップS46における種々の調整を行う。
【0112】
本実施形態のように、第1の領域B1に対応する集光スポットPを含む第1の光強度分布データDと、第2の領域B2に対応する集光スポットPを含む第2の光強度分布データDとを順に取得し、これらの光強度分布データD,Dから2つの集光スポットP間の距離を求めても良い。このような方法であっても、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
(第1の変形例)
上述した各実施形態では、第3実施形態を除き、第1の領域B1と第2の領域B2とが互いに離間した領域である場合を示したが、例えば図31(a)及び図31(b)に示されるように、第1の領域B1と第2の領域B2とは、行方向若しくは列方向に互いに隣接する領域であってもよい。或いは、例えば図32に示されるように、第1の領域B1と第2の領域B2とは、対角方向に互いに隣接する領域であってもよい。これらのように領域B1,B2が配置された場合であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、領域B1,B2が互いに離間している場合には、各々に対応する集光スポットPが互いに重なるおそれが少ない。従って、線形性を有する第1の位相パターンの形状によっては、領域B1,B2が互いに離間していてもよい。
【0114】
(第2の変形例)
上記各実施形態では、少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンを領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)に表示し、空間的に非線形な第2の位相パターンを領域B3〜B5(若しくは領域B9)に表示している。しかしながら、少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンを領域B3〜B5(若しくは領域B9)に表示し、空間的に非線形な位相パターンを領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)に表示した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、前述した数式(3)は、次のように書き換えられる。
【数9】
【0115】
本変形例では、領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)に対応する集光スポットPが不明瞭となり、その周囲の領域B3〜B5(若しくは領域B9)に対応する集光スポットPが明瞭となる。この場合、領域B1(若しくは領域B6)の周囲に形成された集光スポットPの位置座標と、領域B2(若しくは領域B8)の周囲に形成された集光スポットPの位置座標との相対関係(若しくは距離)に基づいて、変調面11aと波面センサ12との角度ずれ量(若しくは結像倍率M)を算出することができる。
【0116】
本変形例によれば、上記実施形態と同様に、変調面11aと波面センサ12との間での光軸周りの角度ずれ量(若しくは結像倍率M)を容易に検出することができる。また、線形性を有する位相パターンを領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)以外の全領域に表示できるので、該位相パターンを波面歪み補償用の位相パターンとすることによって、補償光学の実行中に並行して角度ずれ量(若しくは結像倍率M)の検出を行うことが可能となる。
【0117】
(第3の変形例)
上記各実施形態では、領域B1,B2若しくはB6〜B8(第2変形例では領域B3〜B5若しくはB9)に表示される少なくとも一方向に線形性を有する第1の位相パターンの例として、定数aで表される略均一な分布を例示した。しかしながら、第1の位相パターンは、少なくとも一方向に傾斜した(線形的に変化する)位相分布であってもよい。なお、このような位相パターンを含む位相パターンPは、次の数式(10)により表される。
【数10】
但し、n及びmは領域B1,B2(ROI)の中心画素であり、a、b、及びcは定数である。
【0118】
図33は、第1の方向(例えば行方向)において位相値が傾斜しており、第1の方向と交差する第2の方向(例えば列方向)において位相値が略均一である位相分布を示している。これは、上記の数式(10)においてb≠0且つc=0とした場合のROIにおける位相分布である。また、図34は、第1の方向(例えば行方向)及び第2の方向(例えば列方向)の双方において位相値が傾斜している位相分布を示している。これは、上記の数式(10)においてb≠0且つc≠0とした場合のROIにおける位相分布である。なお、図33及び図34には、行方向および列方向のそれぞれ一箇所における位相変調量のグラフが併せて示されている。これらの位相パターンが領域B1,B2若しくはB6〜B8に表示されると、当該部分の光像Laの波面は平坦となるので、レンズ124によって明瞭な集光スポットPが形成される。従って、上記各実施形態および各変形例と同様に、集光スポットPの相対位置関係若しくは距離に基づいて、角度ずれ量若しくは結像倍率Mの検出を行うことができる。
【0119】
但し、本変形例では、集光スポットPの重心位置が、第1の位相パターンの傾斜分だけずれることとなる。従って、角度ずれ量若しくは結像倍率Mの検出する際には、この重心位置のずれを加味した上で上記各実施形態と同様の演算を行うことができる。なお、集光スポットPの重心位置のずれ量は、波面センサ12の構成パラメータと、係数b及びcとに基づいて一義的に決定される。また、集光スポットPの重心位置から上記ずれ量を差し引くことにより、本来の重心位置を得ることができるので、上記各実施形態と同様の手順により角度ずれ量若しくは結像倍率Mの検出を行うことが可能である。
【0120】
(第4の変形例)
領域B1,B2若しくはB6〜B8(第2変形例では領域B3〜B5若しくはB9)に表示される第1の位相パターンは、図35に示されるような、第1の方向における位相分布が2次関数を有し、第2の方向において位相値が略均一であるような位相分布(すなわち、第1の方向にシリンドリカルレンズ効果を有する位相分布)であってもよい。なお、このような位相分布を含む位相パターンPは、次の数式(11)により表される。
【数11】
上記の数式(11)において、nとmは領域B1(ROI(n,m))、及びnとmは領域B2(ROI(n,m))の中心画素であり、a、b、a及びbは定数である。
【0121】
図35に示される位相パターンが変調面11aに表示されると、波面センサ12では、第1の方向に伸長し、第2の方向に集束された集光スポットPが形成される。これにより、形成される集光スポットPの第2の方向の位置を得ることができる。続いて、第1の方向と第2の方向とを相互に入れ替えた位相分布(すなわち、第2の方向にシリンドリカルレンズ効果を有する位相分布)の位相パターンPが変調面11aに表示されると、集光スポットPの第1の方向の位置が求められる。従って、図35のような少なくとも一方向に線形性を有する位相パターンを用いることにより、上記の実施例および変形例1〜3と同様に、角度ずれ量や結像倍率の検出ができる。或いは、シリンドリカルレンズ効果を有する位相分布を含む位相パターンPを、次の数式(12)により作成することもできる。
【数12】
数式(12)により表される位相パターンPは、数式(11)により表される位相パターンと異なり、領域B1では第1の方向における位相分布が2次関数を有し、領域B2では第2の方向における位相分布が2次関数を有する。数式(12)により表される位相パターンPを変調面11aに表示すると、領域B1に対応する集光スポットP、すなわち第1の方向に伸長し第2の方向に集束した集光スポットPに基づいて、第2の方向の位置が求められる。また、領域B2に対応する集光スポットP、すなわち第2の方向に伸長し第1の方向に集束された集光スポットPに基づいて、第1の方向の位置が求められる。続いて、領域B1,B2の位相分布を相互に入れ替えた位相分布(すなわち、領域B1では第2の方向における位相分布が2次関数を有し、領域B2では第1の方向における位相分布が2次関数を有する位相分布)を含む位相パターンPが変調面11aに表示されると、領域B1に対応する第2の方向に伸長する集光スポットPに基づいて第1の方向の位置が求められ、領域B2に対応する第1の方向に伸長する集光スポットPに基づいて第2の方向の位置が求められる。そして、領域B1及びB2に対応する各集光スポットPの位置を用いて、上記実施形態および各変形例と同様に、角度ずれ量や結像倍率の検出ができる。
【0122】
(第5の変形例)
領域B1,B2若しくはB6〜B8(第2変形例では領域B3〜B5若しくはB9)に表示される第1の位相パターンは、図36に示されるような、第1の方向における位相分布が回折格子を構成し、第2の方向において位相値が略均一であるような位相分布であってもよい。図36に示される位相パターンが変調面11aに表示されると、波面センサ12では、第1の方向に分離され、第2の方向に集束された複数の集光スポットPが形成される。従って、集光スポットPの第2の方向の位置が求められる。続いて、回折格子の方向を90°回転させた位相分布を領域B1,B2に含む位相パターンを用いて、集光スポットPの第1の方向の位置が求められる。そして、領域B1とB2に対応する集光スポットPの位置を用いて、上記の実施形態及び各変形例と同様に、角度ずれ量や結像倍率の検出ができる。
【0123】
(第6の変形例)
領域B1,B2若しくはB6〜B8(第2変形例では領域B3〜B5若しくはB9)に表示される第1の位相パターンは、第1実施形態および第3〜5変形例に示された位相分布を互いに重ね合わせた合成パターンを含んでもよい。図37は、そのような重ね合わせによって得られる合成パターンの例を示す図である。図37(a)に示される位相パターンは図35に示されたものであり、図37(b)に示される位相パターンは、図33に示された位相パターンを90°回転させたものである。そして、図37(c)に示される位相パターンは、これらを重ね合わせた合成パターンであって、第1の方向における位相分布が2次関数を有し、第2の方向における位相分布が線形関数を有する位相パターンである。図37(c)に示された合成パターンが変調面11aに表示されると、波面センサ12では、第1の方向に伸長し、第2の方向に集束された集光スポットPが形成される。従って、形成される集光スポットPの第2の方向の位置が求められる。なお、求められた第2の方向の位置には、図37(b)のような傾斜位相分布によって、ずれ量が含まれる。このずれ量を差し引くことにより、本来の第2の方向の重心位置を得ることができる。続いて、37(c)に示された位相パターンを90度回転したものを表示することにより、第1の方向の重心位置を得ることができる。そして、領域B1,B2に対応する集光スポットPの位置を用いて、上記の実施形態および各変形例と同様に、角度ずれ量や結像倍率の検出ができる。
【0124】
(第7の変形例)
上記各実施形態および各変形例では、領域B3〜B5(第2変形例では領域B9)に表示される空間的に非線形な第2の位相パターンの例として、ランダム分布(図12)及びデフォーカス分布(図13)を例示した。第2の位相パターンはこれらに限られず、明瞭な集光スポットPが形成されないような位相分布を有していればよい。このような位相分布としては、例えばFresnel Zone Plate(FZP)型の位相パターンが挙げられる。FZP型位相パターンは、入射された略均一な位相値を有する光像Laを集光或いは発散させる作用を有する。従って、FZP型位相パターンにより集光或いは発散された光像Laがレンズ124に入射すると、集光スポットPの光軸方向の位置が、レンズ124の焦点面(すなわちイメージセンサ122の表面)からずれる。このため、イメージセンサ122の表面では、ぼけた点像が形成される。
【0125】
このようなFZP型位相パターンを含む位相パターンPは、次の数式(13)により表される。
【数13】
但し、aは定数であり、bは十分に大きい定数である。(n,m)は領域B3〜B5の中心画素である。なお、bが十分に大きいことにより、レンズ124により形成される集光スポットPをレンズ124の焦点面(イメージセンサ122の表面)から十分に離すことができる。
【0126】
(第8の変形例)
上記各実施形態および各変形例では、波面センサ12のレンズアレイ120として、図3に示されたように、複数のレンズ124が二次元格子状に配列された形態を例示している。しかしながら、波面センサ12のレンズアレイはこのような形態に限られない。例えば、図38に示されるように、レンズアレイ120は、正六角形の複数のレンズ128が隙間無く並んだハニカム構造を有していてもよい。なお、この場合、領域B1,B2若しくはB6〜B8は、六角形に設定されてもよい。
【0127】
また、空間光変調器としては、正六角形の複数の画素が隙間無く並んでいるようなものを用いても良い。また、上述した実施形態は、液晶を用いた空間光変調器を例に説明したが、液晶以外の電気光効果を有する材料を用いた空間光変調器や、画素が微小ミラーで形成されている空間光変調器、あるいは膜ミラーをアクチュエーターで変形させる可変鏡などを用いても良い。
【0128】
本発明の一側面に係る補償光学システムの角度ずれ検出方法、補償光学システムの結像倍率検出方法、及び補償光学システムは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態および各変形例では、領域B1,B2若しくはB6〜B8の大きさを予め設定して角度ずれ量等の検出を行っているが、領域B1,B2若しくはB6〜B8の大きさは可変であってもよい。図39は、領域B1,B2の大きさを可変とする場合の一例を示している。図39(a)に示される例では、領域B1,B2の大きさを比較的大きく設定しておき、得られた光強度分布データに基づいて、適切な大きさ(例えば、レンズ124の径に対応する大きさ)に縮小している。また、図39(b)に示される例では、領域B1,B2の大きさを比較的小さく設定しておき、得られた光強度分布データに基づいて、適切な大きさ(例えば、レンズ124の径に対応する大きさ)に拡大している。このように、領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)の大きさを可変とすることにより、適切な大きさの領域B1,B2(若しくは領域B6〜B8)を設定し、角度ずれ量や結像倍率の検出を更に精度良く行うことができる。また、領域B1及びB2に表示される位相パターンは、必ず同一のものでなくてもよい。例えば、領域B1には、例えば図35のようなシリンドリカル効果を有する位相パターンを表示させ、領域B2には図36のような回折格子の構造を有する位相パターンを表示させてもよい。
【0129】
また、上記実施形態および各変形例では、補償光学システムが一つの空間光変調器を備えている場合について示されているが、補償光学システムは、光学的に結合された複数の空間光変調器を備えてもよい。その複数の空間光変調器が直列に結合される場合、一つの空間光変調器に位相パターンP(若しくはP)を表示し、他の空間光変調器には例えば略均一な位相パターンを表示させておくことにより、該一つの空間光変調器と波面センサとの角度ずれ量や結像倍率の検出を行うことができる。また、複数の空間光変調器が並列に結合される場合、一つの空間光変調器に位相パターンP(若しくはP)を表示させ、他の空間光変調器には例えば略均一な位相パターンを表示させておくか、或いは、他の空間光変調器に入射する前若しくは後の光像を遮蔽することにより、該一つの空間光変調器と波面センサとの角度ずれ量や結像倍率の検出を行うことができる。そして、そのような作業を複数の空間光変調器それぞれについて行うことにより、全ての空間光変調器と波面センサとの角度ずれ量や結像倍率の検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の一側面に係る補償光学システムの角度ずれ検出方法及び補償光学システムによれば、空間光変調器の変調面と波面センサとの間での光軸周りの角度ずれを容易に検出することができる。また、本発明の一側面に係る補償光学システムの結像倍率検出方法及び補償光学システムによれば、空間光変調器の変調面と波面センサとの間の結像倍率を容易に検出することができる。
【符号の説明】
【0131】
10…補償光学システム、11…空間光変調器、11a…変調面、12…波面センサ、13…制御部、14…ビームスプリッタ、15,16…リレーレンズ、17…制御回路部、18…光検出素子、120…レンズアレイ、122…イメージセンサ、122a…受光面、122b…画素、124…レンズ、B1…第1の領域、B2…第2の領域、D1,D2,D〜D…光強度分布データ、La…光像、P…集光スポット、P〜P…位相パターン。
図1
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