【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、上述の方法において、クリーニングステップが、クリーニング電極を被加工物の接合表面上に配置し、該クリーニング電極と接合表面との間にクリーニングアークを発生させるようにすることにより達成される。
また、本発明の目的は、上述の接合装置において、接合装置は、クリーニング電極を保持するためのクリーニング電極保持装置を有し、該クリーニング電極保持装置は第2の軸に沿って位置合わせされ、クリーニング電極保持装置により保持されるクリーニング電極は、電源に接続可能であるようにすることにより達成される。
【0010】
従って、本発明の基本的概念は、クリーニングアークを用いてクリーニング工程を実施するが、該クリーニング工程は、後に接合されるべき締結要素を用いて行うのではなく、特にこの目的のために設けられたクリーニング電極を用いて行うことにある。
クリーニングアークは、電子が被加工物から放出されて、適用可能な場合、クリーニング電極の表面上に堆積されるような極性にすることができる。
【0011】
締結要素は、予めクリーニングされた状態で使用可能にすることができる。従って、ひとたびクリーニングステップを実行すると、被加工物の接合表面がクリーニング電極を用いてクリーニングアークによりクリーニングされ、かつ締結要素の接合表面に堆積物がない状態でスタッド接合工程を実行することができ、クリーニングされた表面に対して最適化された接合工程を実行することができる。
【0012】
クリーニング電極は、被加工物と同じ材料及び/又は後に接合する締結要素と同じ材料から作製された電極とすることができる。しかし、クリーニング電極は、タングステン等の古典的電極材料から作製された電極とすることもできる。被加工物に面するクリーニング電極の表面は、締結要素の接合表面より小さくすることができる、締結要素の接合表面と同じ大きさにすること又はこれより大きくすることもできる。
【0013】
締結要素は、ナット及びシート部品(例えば、いわゆるWeldfast(登録商標)溶接として知られるもの等)とすることができる。しかし、特に好ましい様式において、締結要素は、シャンクと、同じ材料のシャンクに接続されたフランジ区画とを有する接合スタッドである。フランク区画の底面は、接合表面として設けられる。接合表面は、鈍角の円錐形表面として設けられる。
【0014】
本明細書における接合するという用語は、特に、接合するつまり溶接する表面(締結要素の接合表面及び被加工物の接合表面)が、両方とも溶融し、これらが一緒に接合された際に、溶融全体が混合されて、ひとたび冷却するとポジティブロック接続を与える溶融部全体を形成する、溶接動作を指す。
しかし、一般的に、接合するという用語は、溶接表面の1つのみが溶融する方法を指すこともある。本明細書における準備するという用語は、例えばはんだ付け又は接着剤の適用の際に生じるような、温度の上昇も含むと理解されたい。従って、接合するという用語は、コンポーネントが添加物無しで又は有りで接続されるという事実を含む。
【0015】
被加工物及び締結要素の好ましい材料は、主としてアルミニウムであるが、鋼材とすることもできる。本例における被加工物は、1mmを下回るか又はこれと等しいシート厚を有する。
本例におけるクリーニングステップは、いかなる極性の変更もなしに実施されることが好ましい。また、好ましくは続く溶接ステップも、いかなる極性の変更もなしに実施することが好ましい。しかし、クリーニングステップの極性と溶接ステップの極性は、異なっていてもよい。クリーニングステップと溶接ステップとの間に、例えば10msより長く3sより短い、特に25msより長く2sより短い、好ましくは40msより長く1.5sより短い、短い中断時間を設けることができる。
【0016】
全体的に見れば、好ましい変形において、底部溶け込みのリスク又はアルミニウムシートの裏面へのひび割れ無しに、アルミニウムスタッドを、薄いアルミニウムシートの上に溶接することができる。許容可能なシート厚は、2.00mm未満、特に0.9mm未満とすることもでき、好ましくは0.5mmより厚くすることができる。
【0017】
本発明による接合装置において、溶接アークを発生させるため及びクリーニングアークを発生させるために、異なる電源を設けることができる。しかし、締結要素保持装置内に保持される締結要素及びクリーニング電極保持装置内に保持されるクリーニング電極は、同一電源に接続されること、特に並列に接続されることが好ましい。
電源は、電流及び/又は電圧に関して、広範な境界内で調整可能であるように設けられることが好ましい。また、極性変更は、電源装置を用いて行えることが好ましい。
【0018】
本発明による接合装置は、単に1つの付加的なクリーニング電極保持装置を接合ヘッド(及び、電源への対応する電気接続の場所)に設ける必要があるだけである費用対効果の高い方法で設けることができる。また、原則的に、例えばCO
2スノークリーニング及び/又はレーザクリーニングをはじめとする、高価で時間のかかる方法で被加工物をクリーニングする必要はない。従って、本発明による接合方法は、好ましくは、そのような型式のクリーニング工程を上流に設けることなく実行できる。スタッド溶接方法は、リフト点火溶接方法として、締結要素を初めに被加工物上に動かないように配置し、次にパイロットアークを生成し、次に締結要素を被加工物上に持ち上げてアークを発生させることが好ましい。原則的に、溶接アークを発生させるために、電流強度を上昇させる。被加工物及び締結要素が一緒に接合されたら、溶接アークは短絡され、電源を遮断して、溶融部全体を固化させることができる。
【0019】
代案として、本発明による方法を、いわゆる先端点火溶接方法と組み合わせて、締結要素の先端を被加工物上に動かないように配置し、高電流を印加し、先端を蒸発させると同時に、締結要素と被加工物との間に形成された空間に溶接アークを発生させて、実行することもできる。
【0020】
クリーニング電極は、この目的のために特に提供される電極とすることができる。しかし、クリーニング電極は、後に被加工物に接合されるので、締結要素により形成されることが特に好ましい。これは、様々な部品を減らせることを意味する。また、かかる型式の締結要素を締結要素保持装置に挿入するのと同じ方法で、締結要素をクリーニング電極保持装置に挿入することも可能である。クリーニングステップの後、クリーニング電極として使用した締結要素は、もはや被加工物に溶接されるべき締結要素としては使用しないことが好ましい。クリーニング電極として使用した締結要素は、1回又は複数回の使用後廃棄することが好ましい。
その結果、本発明の目的は、完全に達成される。
【0021】
本発明による方法において、クリーニング電極を被加工物上に動かないように配置し、電極クリーニング電流を印加し、その後クリーニング電極を被加工物から持ち上げてクリーニングアークを発生させることにより、クリーニングアークを発生させることが特に好ましい。
変形においては、結果として、クリーニングアークは、リフト点火を用いるスタッド溶接工程に類似した方法で実行される。従って、クリーニングアークを発生させるために、既存の工具コンポーネント及び工程を用いることができる。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態によれば、当該クリーニングステップ後又は複数のクリーニングステップ後に、クリーニング電極をパージすることが好ましい。
パージングは、例えばブラシ等など、機械的方法で行うことができる。
ツール搬送体をクリーニング位置から溶接位置に移動させる際、クリーニング電極は、ブラシ等の機械的パージ装置を通り過ぎて自動的に動かされることが特に好ましい。
【0023】
さらに別の好ましい実施形態によると、当該クリーニングステップ又は複数のクリーニングステップ後に、クリーニング電極が交換されることが好ましい。
機械的パージングを行っても、クリーニング電極の表面が次第に「目詰まり」することは避けられないので、1回又は数回のクリーニングステップ後に、又は機械的パージングの実行が可能でない場合にも、クリーニング電極を交換することが有利である。
【0024】
従って、本発明の1つの態様は、本発明による形式の接合方法及び/又は接合装置におけるクリーニング装置としての締結要素の使用でもある。
さらに別の好ましい実施形態によると、溶接アークとクリーニングアークとは、異なる極性で発生する。
ここで、クリーニングアークを発生させるためには、負極を被加工物に適用し、正極を締結要素に適用することが好ましい。これにより、クリーニングアーク発生中、電子が被加工物から放出され、温度がクリーニング用に上昇し、その結果、加湿物質を確実に燃焼することができる。
【0025】
また、本発明による方法において、全体的に、締結要素とクリーニング電極が共通のツール搬送体上に配置され、該ツール搬送体は、クリーニングステップ後、クリーニング位置から接合位置に移動されることが好ましい。
これは、本発明による方法は、構造上の僅かな支出で実施できることを意味する。
従って、本発明による接合装置において、締結要素保持装置及びクリーニング電極保持装置が共通のツール搬送体上に取り付けられることは有利である。
【0026】
これに関して、被加工物駆動装置を用いて、ツール搬送体は、接合ヘッド上を第1の軸が接合軸と位置合わせされる接合位置に移動可能であり、かつ、第2の軸が接合軸と位置合わせされるクリーニング位置に移動可能であることが有利である。
ここで、接合ヘッドは、例えばロボットにより案内され、ツール搬送体は、接合ヘッド上を好適な方法で移動可能であり、接合位置からクリーニング位置へ及びその逆の動きを行うことができる。接合位置からクリーニング位置へ及びその逆のツール搬送体の動きも、ロボット自体により実行することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ツール搬送体はまた、例えば締結要素を締結要素保持装置へ、及び/又はクリーニング電極保持装置へ挿入できる移送位置など、さらに別の位置に接近することもできる。
好ましい実施形態によると、ツール搬送体は、回転式駆動装置として設けられる。
ここで、回転軸は、第1の軸及び第2の軸と直角に位置合わせされる。これに代わるものとして、回転式駆動装置の回転軸は、第1の軸及び第2の軸と平行に位置合わせすることができる。前者においては、第1の軸及び第2の軸は平行に配置されないことが好ましいが、後者においては、第1の軸及び第2の軸は互いに平行に配置されることが好ましい。
【0028】
代替的実施形態によると、ツール搬送体は、移動駆動装置として設けられる。
この場合は、締結要素保持装置及びクリーニング電極保持装置は、例えば、長手方向駆動装置としてクリーニング位置と接合位置との間を行ったり来たり移動することができる、ある形式の摺動体上に配置することができる。
上述の全ての実施形態において、ツール搬送体駆動装置が、ツール搬送体を、締結要素を締結要素保持装置に挿入できる又は接合ヘッドから締結要素保持装置に移送させることができる移送位置へ動かすこともできるように、ツール搬送体駆動装置を設けることが可能である。
【0029】
これは、例えば、前面にシャンクを有する締結要素を締結要素保持装置の出口側に挿入することにより、締結要素保持装置への締結要素の供給を自動的に行えることを意味する。すなわち、自動化した供給を「後ろ側から」(つまり、ツール搬送体を向いたそれぞれの保持装置の側を介して)実行する必要がないように、締結要素保持装置(及び/又はクリーニング電極保持装置)の設計を単純化できることを意味する。
【0030】
一般的に、クリーニング電極をツール搬送体に堅固に締結することができる。クリーニングアークを発生させるためのクリーニング電極の動きは、ロボット自体により実行することができる。
しかし、クリーニング電極保持装置は、さらに別の駆動装置を用いて第2の軸に沿って移動可能であることが特に好ましい。
この実施形態において、クリーニングアークは、クリーニング電極を初めに被加工物上に動かないように配置し、次にクリーニング電流を印加すると同時に、被加工物から持ち上げてクリーニングアークを発生させるリフト点火方法により発生させることができる。
【0031】
さらに別の駆動装置は、別個の駆動装置として設けることができる。しかし、いくつかの変形において、締結要素保持装置を動かすための駆動装置は、クリーニング電極保持装置を動かすために使用することもできる。
また、一般的に、第1の軸及び第2の軸を、互いに平行に位置合わせすることができる。
しかし、好ましい変形において、第1の軸及び第2の軸は、180°より小さいか又はこれと等しい角度、好ましくは90°より小さいか又はこれと等しい角度、及び0°より大きいか又はこれと等しい角度、好ましくは15°より大きいか又はこれと等しい角度で、互いに位置合わせされる。
角度は、45°より小さいか又はこれと等しいことが特に好ましい。
この実施形態において、ツール搬送体駆動装置は、回転式駆動装置として設け、その回転軸は第1及び第2の軸を横切るように延びることが好ましい。
【0032】
上述の特徴及び以下にこれから説明する特徴は、それぞれ特定される組み合わせのみでなく、本発明の枠組みから逸脱することなく、他の組み合わせで又は単独でも使用可能であることは明らかである。
本発明の例示的実施形態を図面に示し、以下の説明で詳細に説明する。