【文献】
MORITA T. et al.,Effects of blood flow restriction on cerebral blood flow during a single arm-curl resistance exercis,International Journal of KAATSU Training Research,日本,2010年11月,Vol.6 No.1,9-12,ISSN 1349-4562
【文献】
誠整骨院 加圧トレーニング 2.上腕のトレーニング,2014年11月 5日,URL,http://makotoseikotuin.com/service1.html
【文献】
http://makotoseikotuin.com/service1.html,2014年11月 5日,URL,http://web.archive.org/web/*/http://makotoseikotuin.com/service1.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加圧運動工程を四回実施する際に、第四回目の前記加圧運動工程における前記負荷運動の実施回数を、第三回目の前記加圧運動工程における前記負荷運動の実施回数の1/2以下に設定する、請求項3又は4に記載の筋肉トレーニング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筋肉を増強させるためには、脳下垂体から通常時よりも多くの成長ホルモンを分泌させる必要があり、このためには、効率良く血中乳酸濃度を増大させる必要があることが近年の研究から明らかになっている。本願発明者は、前記した特許文献1に記載されたような従来の加圧筋力トレーニング方法を発展させるべく鋭意研究を重ねた結果、きわめて効率良く血中乳酸濃度を増大させて筋肉を増強させることができる方法を新たに見出した。
【0005】
なお、近年においては、複数の使用者からなるグループで加圧筋力トレーニング方法を一斉に実施したいという要請がある。しかし、加圧筋力トレーニング方法を実施するためには、加圧筋力トレーニング方法を熟知した指導者(インストラクタ)が使用者一人一人にベルトを巻き付け、使用者一人一人に適正加圧力を設定して付与する作業が必要となるため、複数の使用者に加圧筋力トレーニング方法を一斉に実施させることは困難であった。このため、複数の使用者からなるグループに加圧筋力トレーニング方法を一斉に実施させるためのシステムの構築が待望されていた。
【0006】
本発明は、きわめて効率良く筋肉を増強させることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る筋肉トレーニング方法は、使用者の四肢の少なくとも何れか一つにベルトを巻き付けて特定加圧力を付与することにより使用者の筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者に実施させる加圧運動工程と、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる運動休止工程と、を交互に繰り返すことにより使用者の筋肉をトレーニングする方法であって、特定重量を、使用者の最大筋力を発揮させるのに必要な最大重量よりも小さい値に設定するものである。
【0008】
かかる方法を採用すると、加圧運動工程において、使用者の四肢の少なくとも何れか一つに特定加圧力を付与することにより使用者の筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者に実施させることができる。この際、特定重量を、使用者の最大筋力を発揮させるのに必要な最大重量(使用者が一度しか負荷運動を行えない重量)よりも小さい値(例えば最大重量の20〜30%の値)に設定するため、使用者に過大な負荷がかかるのを防止し、怪我等を未然に防ぐことができる。加圧運動工程においては、特定加圧力の付与により使用者の筋肉の血流が適切に制限されるため、特定加圧力を付与していない状態よりも血中乳酸濃度を高めることができ、その結果、成長ホルモンの分泌を促進することができるので、比較的軽い負荷でも高い筋肉増強効果を得ることができる。また、運動休止工程においては、負荷運動を休止させても特定加圧力の付与による適切な血流制限を続行することができるので、見掛け上は運動を休止しているようでも実際は血中乳酸濃度が低下しない状態を意図的に作り出すことができ、その結果、高い筋肉増強効果を得ることができる。
【0009】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、特定重量を、最大重量の20〜30%に設定することが好ましい。
【0010】
通常の筋力トレーニングでは、最大重量の70〜80%の負荷を付与するための負荷運動を複数回使用者に実施させるのが一般的であるが、このような負荷を採用しても、使用者が感じる(肉体的・精神的)苦痛の割には血中乳酸濃度を効率良く高めることができないことが近年明らかとなっている。本願発明の発明者は、特定加圧力の付与による適切な血流制限と、比較的軽い負荷(最大重量の20〜30%の負荷)での負荷運動と、を組み合わせることにより、使用者の苦痛を軽減させながら効率良く血中乳酸濃度を高めることができることを発見した。
【0011】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、加圧運動工程を複数回実施する際に、第一回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を、第二回目以降の加圧運動工程における負荷運動の実施回数よりも多く設定することが好ましい。
【0012】
このように、第一回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を、第二回目以降の加圧運動工程における負荷運動の実施回数よりも多く設定することにより、本方法の実施当初からきわめて効率良く血中乳酸濃度を高めることができ、筋肉増強効果を一層高めることができる。
【0013】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、第一回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を20〜60回(好ましくは25〜30回)に設定し、第二回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を12〜15回(第一回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数の1/2以下)に設定することができる。また、加圧運動工程を三回以上実施する際には、第三回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を7〜8回(第二回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数の1/2以下)に設定することができ、さらに加圧運動工程を四回実施する際には、第四回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を2〜3回(第三回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数の1/2以下)に設定することができる。
【0014】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、加圧運動工程で使用者の腕にベルトを巻き付けて特定加圧力を付与する場合に、運動休止工程における負荷運動の休止時間を10〜20秒(例えば15秒)に設定することが好ましい。
【0015】
使用者の腕に特定加圧力を付与する場合に、負荷運動の休止時間を特定時間(10〜20秒)に設定することにより、より高い筋肉増強効果を得ることができる。使用者の腕に特定加圧力を付与する場合において、負荷運動の休止時間が10秒未満であると、使用者は運動を休止した気になれずその後の負荷運動への意欲が湧かなくなり、負荷運動の休止時間が20秒を超えると、血流制限状態が比較的長く続くことによりその後の負荷運動が肉体的に困難となるため、いずれも好ましくない。
【0016】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、加圧運動工程で使用者の脚にベルトを巻き付けて特定加圧力を付与する場合に、運動休止工程における負荷運動の休止時間を25〜35秒(例えば30秒)に設定することが好ましい。
【0017】
使用者の脚に特定加圧力を付与する場合に、負荷運動の休止時間を特定時間(25〜35秒)に設定することにより、より高い筋肉増強効果を得ることができる。使用者の脚に特定加圧力を付与する場合において、負荷運動の休止時間が25秒未満であると、使用者は運動を休止した気になれずその後の負荷運動への意欲が湧かなくなり、負荷運動の休止時間が35秒を超えると、血流制限状態が比較的長く続くことによりその後の負荷運動が肉体的に困難となるため、いずれも好ましくない。
【0018】
本発明に係る筋肉トレーニング方法において、特定加圧力を設定するための加圧力設定工程を備えることが好ましい。加圧力設定工程は、使用者の四肢の少なくとも何れか一つにベルトを巻き付け特定装着圧でベルトを装着する装着工程と、特定装着圧よりも高い加圧力を使用者に付与する加圧工程と、加圧工程で付与した加圧力を除去して特定装着圧まで戻す除圧工程と、含むことができる。そして、各加圧工程における加圧力の値を直前の加圧工程における加圧力の値よりも大きく設定しつつ加圧工程及び除圧工程を交互に複数回ずつ繰り返し実施し、加圧工程において使用者の手の平の色が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力を特定加圧力として設定することができる。
【0019】
かかる方法を採用すると、個人差や使用者の体調を考慮しつつ、使用者にとって適正な特定加圧力を安全に設定することができる。また、適正な特定加圧力を探る際に、低めの圧から徐々に設定圧を上げながら加圧と除圧とを繰り返すことにより、その過程で血管を強化することもできる。本願発明の発明者は、使用者の手の平が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力で特定の負荷運動を行うと最も筋肉増強効果のあがることを、長年の研究により見出した。本方法では、使用者の手の平が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力を特定加圧力として設定することにより、高い筋肉増強効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る筋肉トレーニングシステムは、ガス袋を有し、使用者の四肢の特定部分に巻き付けられた状態でガス袋内の気体の量に基づいた加圧力を特定部分に付与するように構成されるベルトと、ベルトのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することによりベルトが特定部分に付与する加圧力を制御するように構成される制御装置と、を備えるものであって、制御装置は、本発明に係る筋肉トレーニング方法における特定加圧力をベルトで特定部分に付与するようにベルトのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御する給排制御部を有し、給排制御部は、ベルトに装着可能な大きさを有する筐体に収納されているものである。
【0021】
かかる構成を採用すると、ベルトに装着可能な大きさを有する比較的小型の制御装置をベルトに装着し、制御装置の給排制御部でベルトのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することにより、特定加圧力をベルトで使用者の特定部分に付与することができる。そして、ベルトと制御装置からなるセットを複数用いることにより、複数の使用者に一斉に特定加圧力を付与することができるため、グループでの筋肉トレーニング(グループレッスン)を実現させることができる。
【0022】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、制御装置は、特定加圧力を記録する情報記録部を有することができ、給排制御部は、情報記録部から読み出した特定加圧力をベルトで特定部分に付与するようにベルトのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することができる。
【0023】
かかる構成を採用すると、使用者毎の特定加圧力を予め情報記録部に記録させておくことができ、情報記録部から読み出した特定加圧力を用いて気体の供給量及び排出量を制御することができる。従って、その場で特定加圧力を入力する手間を省くことができる。
【0024】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、制御装置は、外部装置で設定された特定加圧力を受信する情報受信部を有することができ、情報記録部は、情報受信部で受信した特定加圧力を記録することができる。
【0025】
かかる構成を採用すると、外部装置で設定された特定加圧力を情報受信部で受信し、受信した特定加圧力を情報記録部に記録させることができる。従って、特定加圧力の更新が容易となる。
【0026】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、制御装置は、特定加圧力を入力するための入力部を有することができ、情報記録部は、入力部で入力した特定加圧力を記録することができる。
【0027】
かかる構成を採用すると、特定加圧力を入力部で入力し、入力した特定加圧力を情報記録部に記録させることができる。従って、特定加圧力の更新が容易となる。
【0028】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、情報記録部を、筐体に対して着脱自在とすることができる。
【0029】
かかる構成を採用すると、情報記録部を筐体から取り外し、外部装置を用いて情報記録部に特定加圧力を書き込み、特定加圧力が書き込まれた情報記録部を筐体に取り付けることができる。従って、特定加圧力の更新が可能となる。
【0030】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、制御装置は、特定加圧力を入力するための入力部を有することができ、給排制御部は、入力部で入力された特定加圧力をベルトで特定部分に付与するようにベルトのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することができる。
【0031】
かかる構成を採用すると、特定加圧力を入力部で入力し、入力した特定加圧力を用いて気体の供給量及び排出量を制御することができる。従って、制御装置に情報記録部を設ける必要がないため、制御装置の構成を簡素化し、制御装置の低廉化を実現させることができる。また、制御装置に設けられた情報記録部に特定加圧力が予め記録されているような場合においても、使用者の体調等に応じて特定加圧力を臨機応変に変更することができる。
【0032】
本発明に係る筋肉トレーニングシステムにおいて、制御装置は、特定部分に所定の加圧力を付与する加圧動作と、加圧動作により特定部分に付与された加圧力を除去する除圧動作と、を交互に繰り返すようにベルトが特定部分に付与する加圧力の制御を行うことができ、複数回の加圧動作を実現させる際に、各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く設定することができる。
【0033】
かかる構成を採用すると、本発明に係る筋肉トレーニング方法の準備運動となる加除圧プログラムを、制御装置を用いて自動的に実施することができるため、インストラクタの作業負担を大幅に軽減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、きわめて効率良く筋肉を増強させることができる方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態に係る筋肉トレーニング方法を、「加圧トレーニング」と称することとする。
【0037】
<第一実施形態>
最初に、
図1〜
図8を用いて、本発明の第一実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)について説明する。まず、
図1〜
図5を用いて、本実施形態に係る加圧トレーニングで使用されるベルト1及び加除圧制御装置100について説明することとする。
図1は、ベルト1の外面(外側に露出する面)を表す図であり、
図2は、ベルト1の内面(筋肉側の面)を表す図であり、
図3は、ベルト1の側面図である。
【0038】
ベルト1は、使用者P(
図4)の四肢の少なくとも一つに巻き付けられて筋肉に加圧力を付与する帯状の部材であり、例えば伸縮性を有する素材(好ましくはネオプレンゴム)で構成されている。ベルト1が巻き付けられる部分としては、例えば、腕の付け根の近辺(
図4)又は脚の付け根の近辺のうち、外部から締付けを行うことで血流を止めることなく制限するのに適切な部分を採用することができる。
【0039】
ベルト1の外面(外側に露出する面)2には、
図1に示すように、面ファスナ10が設けられている。面ファスナ10は、筋肉に加圧力を付与した状態におけるベルト1のループ形状を維持するものである。面ファスナ10を設ける位置はベルト1の長さ等に応じて適宜設定することができる。ベルト1の内面3に面ファスナ10を設けてもよい。
【0040】
ベルト1の一方の端部1aには、連結部材20を介してバックル30が取り付けられている。バックル30は、ベルト1の巻付けの際にベルトの他方の端部1bを通してベルト1を折り返すためのものである。連結部材20は、ベルト1の一方の端部1aとバックル30とを連結するための部材であり、例えば人工皮革等の可撓性を有する素材で構成されている。
【0041】
ベルト1の内部には、図示されていないガス袋が設けられている。ガス袋は、気密性を有する素材で構成される。例えばマンシェットに用いられるゴム袋と同様の伸縮性を備えたゴムからガス袋を構成することができる。なお、ガス袋の素材はこれに限定されず、気密性を保てる素材を適宜選択すれば足りる。ガス袋の長さは、必ずしもそうする必要はないが、本実施形態では、ベルト1が巻き付けられる部分の外周の長さとほぼ同じくされている。ガス袋の幅寸法は、ベルト1が巻き付けられる部分に応じて適宜決定すればよい。
【0042】
ガス袋には、ガス袋内部と連通する図示されていない接続口が設けられており、例えば、ゴムチューブなどの適当な管により構成される接続管200(
図5)を介して、加除圧制御装置100(
図5)と接続できるようになっている。後述するように、この接続口を通して、ガス袋の中に気体(本実施形態では空気)が送り込まれ、またはガス袋の中の気体が外部へ抜かれることになる。
【0043】
本実施形態においては、ベルト1を複数(より詳細には4つ)採用することとしている。ベルト1を4つとしているのは、筋肉トレーニングを行う者の両手、両足に対して加圧を行えるようにするためである。なお、ベルト1の数は必ずしも4つである必要はなく、一つ以上であれば幾つでも構わない。腕用のベルト1と脚用のベルト1は、必ずしも同数である必要はない。複数人に対して一度に加圧トレーニングを行う場合には、ベルト1は4つを超える場合がある。
【0044】
本実施形態におけるベルト1の長さは、加圧トレーニングを行う者のベルト1が巻き付けられる部分の外周の長さに応じて決定すればよい。ベルト1の長さは、巻き付けられる部分の外周の長さより長ければよい。本実施形態による腕用のベルト1の長さは、加圧トレーニングを行う者の腕の巻き付けられる部分の外周の長さが26cmであることを考慮して決定してあり、具体的には40cmとされている。また、脚用のベルト1の長さは、加圧トレーニングを行う者の脚の巻き付けられる部分の外周の長さが45cmであることを考慮して決定してあり、具体的には70cmとされている。
【0045】
本実施形態におけるベルト1の幅寸法は、ベルト1が巻き付けられる部分に応じて適宜決定すればよい。例えば、腕用のベルト1であれば幅寸法を2.5〜3cmの範囲内に設定することができ、脚用のベルト1であれば幅寸法を5〜6cmの範囲内に設定することができる。
【0046】
図4は、腕用のベルト1を使用者Pの腕の付け根に巻き付けて装着した状態を示す図である。腕用のベルト1を使用者Pの腕の付け根に装着する際には、まずベルト1を腕の付け根に巻き付けてループ形状を作り、
図4に示すように、ベルト1の一方の端部1aに取り付けられたバックル30にベルト1の他方の端部1bを通してベルト1を折り返し、バックル30に通したベルト1の他方の端部1bを把持しながらベルト1を締め付ける。そして、ベルト1の締め付けにより所定の加圧力を付与した状態で面ファスナ10を用いてベルト1のループ形状を維持する。これにより、所定の加圧力が所望の筋肉に付与された状態でベルト1が使用者Pの腕の付け根に装着されることとなる。
【0047】
図4に示すようにベルト1を使用者Pの腕の付け根に装着した状態でガス袋へ空気が送り込まれると、ベルト1が筋肉を締付け、加圧力を与えるのである。逆に、その状態でガス袋内の空気が抜かれれば、ベルト1が筋肉に与える加圧力が小さくなる。
【0048】
加除圧制御装置100は、ガス袋に気体を供給するとともに、ガス袋から気体を除去することのできるものであればよい。また、加除圧制御装置100は、ガス袋に気体を供給し、或いは気体を除去することについての制御を行う。ガス袋に気体を供給するとともに、ガス袋から気体を除去することのできるものであり、また、上述の自動的な制御を行えるようになっているのであれば、加除圧制御装置100の構成はどのようなものであってもよい。
【0049】
一例となる加除圧制御装置100の構成を概略的に示したのが、
図5である。
図5に示したように、加除圧制御装置100は、4つのポンプ110と、制御部120と、を備えている。なお、本実施形態では、加除圧制御装置100はケースを備えており、その内部にポンプ110及び制御部120を内蔵するようになっている。ケースの外側には、制御部120に接続される入力装置が設けられているが、その図示は省略する。
【0050】
4つのポンプ110は、4つのベルト1とそれぞれ対応付けられている。ポンプ110は、その周囲にある気体(本実施形態では、空気)を取り込み、これを、ポンプ接続口111を介して外部へ送る機能を備えている。ポンプ110は、また、弁112を備えており、弁112を開放することで、ポンプ110内部の気体を外部へ排出できるようになっている。4つのポンプ110はともに、ポンプ接続口111を備えており、これに接続された接続管200と、接続口111を介して、ベルト1に設けられたガス袋へと接続されている。ポンプ110が気体を送れば、ガス袋に気体が供給され、ポンプ110が弁112を開放すればガス袋から気体を除去することができる。なお、弁112は必ずしもポンプ110に設けられている必要はなく、ポンプ110からガス袋に至る経路のいずれかに設けられていれば足りる。
【0051】
ポンプ110には、また、図示していない圧力計が内蔵されており、それによりポンプ110内の気圧を測定できるようになっている。ポンプ110内の気圧は、当然にガス袋内の気圧に等しい。このガス袋内の気圧は、ベルト1が筋肉に与える加圧力に相当するものである。
【0052】
制御部120は、ポンプ110を制御するものである。制御部120は、圧力計で測定されたポンプ110内の気圧が所定の設定値になるように、弁112を閉じた状態でポンプ110を駆動させて空気をベルト1のガス袋へ送り、或いはポンプ110が備える弁112を開放してガス袋内の空気を抜くという制御を行う。つまり、制御部120は、弁112の開閉を含めたポンプ110の制御を行うものとなっている。加圧トレーニングの指導者(インストラクタ)が入力装置で入力操作を行って圧力を設定し制御部120を起動させることにより、制御部120がポンプ110を駆動制御し、ベルト1のガス袋内の気圧をその設定値に一致させることができる。
【0053】
次いで、
図6及び
図7のフローチャート並びに
図8のテーブル等を用いて、本実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)について説明する。
【0054】
本実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)は、
図6に示すように、使用者P(
図4)の四肢の少なくとも何れか一つにベルト1を巻き付けて特定加圧力を付与することにより使用者Pの筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに複数回実施させる加圧運動工程(S30等)と、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる運動休止工程(S40等)と、を交互に繰り返すことにより使用者Pの筋肉を増強させる方法である。以下、各工程について具体的に説明することとする。
【0055】
まず、加圧運動工程(S30等)を実施する前に、使用者Pの四肢の少なくとも何れか一つに付与される特定加圧力を設定する(加圧力設定工程:S10)。ここで、加圧力設定工程S10について、
図7のフローチャート及び
図8のテーブルを用いて詳細に説明する。
【0056】
加圧力設定工程10では、
図7に示すように、最初に、使用者Pの四肢の少なくとも何れか一つにベルト1を巻き付け、特定装着圧でベルト1を装着する(装着工程:S11)。特定装着圧は、使用者Pの年齢や運動経験等によって異ならせることが好ましい。例えば、
図8のテーブルに示すように、ベルト1を腕に装着する場合において、使用者Pが高齢者(70歳以上)である場合には特定装着圧を15〜20mmHgに設定し、使用者Pが中高年(50歳以上69歳以下)である場合には特定装着圧を20〜30mmHgに設定し、使用者Pが一般(49歳以下)である場合には特定装着圧を30〜30mmHgに設定することができる。また、ベルト1を脚に装着する場合において、使用者Pが運動経験豊富なアスリートである場合には、特定装着圧を50〜60mmHgに設定することができる。
【0057】
なお、装着工程S11では、インストラクタが加除圧制御装置100の入力装置を用いて特定装着圧を設定し、加除圧制御装置100の制御部120を起動させる。これにより、制御部120がポンプ110を駆動制御し、ガス袋内の気圧(ベルト1が筋肉に与える加圧力)をその特定装着圧に一致させることができる。
【0058】
装着工程S11に次いで、特定装着圧よりも高い加圧力を使用者Pに付与する(加圧工程:S12)。最初の加圧工程S12で付与する加圧力の値は、ベルト1を腕に装着する場合には特定装着圧よりも10mmHg程度高い値とするのが好ましい。また、ベルト1を脚に装着する場合には、特定装着圧よりも20mmHg程度高い値とするのが好ましい。加圧工程S12においても、インストラクタが加除圧制御装置100の入力装置を用いて加圧力の値を設定し、加除圧制御装置100の制御部120を起動させることにより、ベルト1が筋肉に与える加圧力をその設定値に一致させることができる。
【0059】
次いで、加圧工程S12において使用者Pの手の平(又は足の甲)の色が赤色乃至赤褐色になったか否かを判定する(判定工程:S13)。判定工程S13において使用者Pの手の平(足の甲)の色が未だピンク色であるような場合には、加圧工程S12で付与した加圧力を除去して特定装着圧まで戻し(除圧工程:S14)、加圧力の設定値を上昇させた上で(設定圧上昇工程:S15)、加圧工程S12を再度実施する。設定圧上昇工程S15で上昇させる加圧力は、ベルト1を腕に装着する場合には10mmHg程度とし、ベルト1を脚に装着する場合には20mmHg程度とするのが好ましい。除圧工程S14においては、インストラクタが加除圧制御装置100の入力装置を用いて制御部120に除圧を行うための制御を行わせることにより、除圧を行うことができる。設定圧上昇工程S15においては、インストラクタが加除圧制御装置100の入力装置を用いて加圧力の値を設定し、加除圧制御装置100の制御部120を起動させることにより、ベルト1が筋肉に与える加圧力をその設定値に一致させることができる。
【0060】
その後、判定工程S13において使用者Pの手の平(足の甲)の色が赤色乃至赤褐色になるまで加圧工程S12、除圧工程S14及び設定圧上昇工程S15を複数回ずつ繰り返し実施し、判定工程S13において使用者Pの手の平(足の甲)の色が赤色乃至赤褐色になった場合には、そのときの加圧力を特定加圧力として設定する(設定工程:S16)。
【0061】
これらの工程群を経て設定される特定加圧力は、
図8のテーブルに示されている「適正圧」の範囲内にほぼ収まることが本願発明の発明者の研究により明らかになっている。例えば、ベルト1を腕に装着する場合において使用者Pが高齢者(70歳以上)である場合には、上記工程群を経て設定される特定加圧力は40〜60mmHgの範囲内にほぼ収まる。但し、使用者Pの体調等によって特定加圧力は変化するため、
図8に示された値に左右されることなく、あくまでも判定工程S13による判定(使用者Pの手の平の色が赤色乃至赤褐色になったか否か)を経て特定加圧力を設定することとする。
【0062】
なお、本願発明の発明者は、使用者Pの手の平(足の甲)が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力で加圧トレーニングを行うと最も筋肉増強効果があがることを、長年の研究により見出した。また、本願発明の発明者は、使用者Pの手の平がピンク色になったときの加圧力は特定加圧力よりも低い値であり、使用者Pの手の平が紫色になったときは止血寸前の状態であり、使用者Pの手の平が白色になったときは止血状態であって速やかに除圧を行う必要があることも発見した。さらに、本願発明の発明者は、このような手の平の色による特定加圧力判定方法が使用者Pの人種に関係なく有効であることも発見している。
【0063】
使用者Pの手の平の色の判定は、インストラクタの目視確認によって行うことができる。また、使用者Pの手の平の色を認識する装置(画像処理装置等)を使用して使用者Pの手の平の色を判定してもよい。
【0064】
加圧力設定工程S10を経て使用者Pの特定加圧力を設定した後に、
図6に示すように、使用者Pの四肢の少なくとも何れか一つにベルト1を巻き付けて装着する(ベルト装着工程:S20)。そして、加圧力設定工程S10で設定した特定加圧力を使用者Pに付与することにより使用者Pの筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに実施させる(第一加圧運動工程:S30)。第一加圧運動工程S30においては、インストラクタが加除圧制御装置100の入力装置を用いて特定加圧力を設定し、加除圧制御装置100の制御部120を起動させることにより、ベルト1が筋肉に与える加圧力をその設定した特定加圧力に一致させることができる。
【0065】
負荷運動としては、例えば腕の場合には、片腕に持ったダンベルD(
図4)を挙げるダンベルカール運動や、横臥姿勢のまま両手でバーベルを挙げるベンチプレス運動等を採用することができる。使用者Pの筋肉に付与される特定重量(例えば負荷運動がダンベルカール運動の場合はダンベルの重量)は、使用者Pの最大筋力を発揮させるのに必要な最大重量(使用者Pが一度しか負荷運動を行えない重量)よりも小さい値に設定される。特に、特定重量を最大重量の20〜30%の値に設定することが好ましい。
【0066】
第一加圧運動工程S30における負荷運動の実施回数(例えば負荷運動がダンベルカール運動の場合はダンベルを挙げる回数)は、20〜60回に設定されるのが好ましく、25〜30回に設定されるのがさらに好ましい。第一加圧運動工程S30における負荷運動の実施回数は、後述する第二加圧運動工程S50以降の負荷運動の実施回数よりも多く設定される。
【0067】
第一加圧運動工程S30は、血中乳酸濃度を高くする環境を作り出すための予備運動を行う工程である。使用者Pが非アスリート(運動経験が比較的少ない者)である場合には、特定加圧力が付与された状態で負荷運動を25〜30回程度行わせることにより、充分に血中乳酸濃度を高めることができることを本願発明の発明者は見出した。一方、使用者Pが運動経験の豊富なアスリートである場合には、特定加圧力が付与された状態で負荷運動を比較的多く実施しないと血中乳酸濃度を充分に高められない場合がある。このようなアスリートには、負荷運動を例えば40〜60回行わせるようにする。
【0068】
第一加圧運動工程S30を経た後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる(第一運動休止工程:S40)。第一加圧運動工程S30において腕に特定加圧力を付与する場合には、第一運動休止工程S40における負荷運動の休止時間を10〜20秒(例えば15秒)に設定するのが好ましい。一方、第一加圧運動工程S30において脚に特定加圧力を付与する場合には、第一運動休止工程S40における負荷運動の休止時間を25〜35秒(例えば30秒)に設定するのが好ましい。
【0069】
第一運動休止工程S40を経た後、第一加圧運動工程S30と同様に特定加圧力を使用者Pに付与しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに実施させる(第二加圧運動工程:S50)。第二加圧運動工程S50における負荷運動の実施回数は、第一加圧運動工程S30における負荷運動の実施回数の1/2以下(例えば12〜15回)に設定されるのが好ましい。第二加圧運動工程S50を経た後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる(第二運動休止工程:S60)。第二運動休止工程S60における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同様に設定される。
【0070】
第二運動休止工程S60を経た後、第一加圧運動工程S30と同様に特定加圧力を使用者Pに付与しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに実施させる(第三加圧運動工程:S70)。第三加圧運動工程S70における負荷運動の実施回数は、第二加圧運動工程S50における負荷運動の実施回数の1/2以下(例えば7〜8回)に設定されるのが好ましい。第三加圧運動工程S70を経た後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる(第三運動休止工程:S80)。第三運動休止工程S80における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同様に設定される。
【0071】
第三運動休止工程S80を経た後、第一加圧運動工程S30と同様に特定加圧力を使用者Pに付与しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに実施させる(第四加圧運動工程:S90)。第四加圧運動工程S90における負荷運動の実施回数は、第三加圧運動工程S70における負荷運動の実施回数の1/2以下(例えば2〜3回)に設定されるのが好ましい。第四加圧運動工程S90を経た後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる(第四運動休止工程:S100)。第四運動休止工程S100における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同様に設定される。この後、使用者Pからベルト1を取外し(ベルト取外工程:S110)、加圧トレーニングを終了する。
【0072】
以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法においては、加圧運動工程(S30、S50、S70、S90)において、使用者Pの四肢の少なくとも何れか一つに特定加圧力を付与することにより使用者Pの筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者Pの筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者Pに実施させることができる。この際、特定重量を、使用者Pの最大筋力を発揮させるのに必要な最大重量よりも小さい値に設定するため、使用者Pに過大な負荷がかかるのを防止し、怪我等を未然に防ぐことができる。加圧運動工程(S30、S50、S70、S90)においては、特定加圧力の付与により使用者Pの筋肉の血流が適切に制限されるため、特定加圧力を付与していない状態よりも血中乳酸濃度を高めることができ、その結果、成長ホルモンの分泌を促進することができるので、比較的軽い負荷でも高い筋肉増強効果を得ることができる。また、運動休止工程(S40、S60、S80、S100)においては、負荷運動を休止させても特定加圧力の付与による適切な血流制限を続行することができるので、見掛け上は運動を休止しているようでも実際は血中乳酸濃度が低下しない状態を意図的に作り出すことができ、その結果、高い筋肉増強効果を得ることができる。
【0073】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法においては、加圧運動工程(S30、S50、S70、S90)で採用する特定重量を、最大重量の20〜30%に設定しているため、より高い筋肉増強効果を得ることができる。通常の筋力トレーニングでは、最大重量の70〜80%の負荷を付与するための負荷運動を複数回使用者Pに実施させるのが一般的であるが、このような負荷を採用しても、使用者Pが感じる(肉体的・精神的)苦痛の割には血中乳酸濃度を効率良く高めることができないことが近年明らかとなっている。本願発明の発明者は、特定加圧力の付与による適切な血流制限と、比較的軽い負荷(最大重量の20〜30%の負荷)での負荷運動と、を組み合わせることにより、使用者Pの苦痛を軽減させながら効率良く血中乳酸濃度を高めることができることができることを発見したものである。
【0074】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法においては、第一加圧運動工程S30における負荷運動の実施回数を、第二加圧運動工程S50における負荷運動の実施回数よりも多く設定している。これにより、本方法の実施当初からきわめて効率良く血中乳酸濃度を高めることができ、筋肉増強効果を一層高めることができる。
【0075】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法においては、使用者Pの腕に特定加圧力を付与する場合に、負荷運動の休止時間を特定時間(10〜20秒)に設定することにより、より高い筋肉増強効果を得ることができる。腕に特定加圧力を付与する場合において、負荷運動の休止時間が10秒未満であると、使用者Pは運動を休止した気になれずその後の負荷運動への意欲が湧かなくなり、負荷運動の休止時間が20秒を超えると、血流制限状態が比較的長く続くことによりその後の負荷運動が肉体的に困難となるため、いずれも好ましくない。また、使用者Pの脚に特定加圧力を付与する場合に、負荷運動の休止時間を特定時間(25〜35秒)に設定することにより、より高い筋肉増強効果を得ることができる。脚に特定加圧力を付与する場合において、負荷運動の休止時間が25秒未満であると、使用者Pは運動を休止した気になれずその後の負荷運動への意欲が湧かなくなり、負荷運動の休止時間が35秒を超えると、血流制限状態が比較的長く続くことによりその後の負荷運動が肉体的に困難となるため、いずれも好ましくない。
【0076】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法においては、個人差や使用者Pの体調を考慮しつつ、使用者Pにとって適正な特定加圧力を安全に設定することができる。また、適正な特定加圧力を探る際に、低めの圧から徐々に設定圧を上げながら加圧と除圧とを繰り返すことにより、その過程で血管を強化することもできる。本願発明の発明者は、使用者Pの手の平が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力で特定の負荷運動を行うと最も筋肉増強効果のあがることを、長年の研究により見出した。本方法では、使用者Pの手の平が赤色乃至赤褐色になったときの加圧力を特定加圧力として設定することにより、高い筋肉増強効果を得ることができる。
【0077】
<第二実施形態>
次に、
図9〜
図24を用いて、本発明の第二実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)について説明する。本実施形態に係る加圧トレーニングは、第一実施形態で使用した加除圧制御装置100とは異なる装置(装着式制御装置100Aを含む筋肉トレーニングシステム)を用いて実施されるものである。本実施形態においては、当該システムの構成を中心に説明することとし、第一実施形態と共通する構成については、第一実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0078】
まず、
図9〜
図11を用いて、本実施形態に係る加圧トレーニングで使用される筋肉トレーニングシステムの構成について説明することとする。本実施形態における筋肉トレーニングシステムは、ベルト1Aと、装着式制御装置100Aと、を備えている。
図9は、ベルト1Aの外面(外側に露出する面)を表す図である。本実施形態におけるベルト1Aは、第一実施形態におけるベルト1と同様に、使用者の四肢の少なくとも一つに巻き付けられて筋肉に加圧力を付与する帯状の部材であり、その内部には、図示されていないガス袋が設けられている。ベルト1A及びガス袋を構成する材料やベルト1A及びガス袋の幅・長さは第一実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0079】
ベルト1Aの外面には、第一実施形態におけるベルト1と同様に、面ファスナ10が設けられている。また、ベルト1Aの一方の端部1aには、連結部材20Aを介してバックル30が取り付けられている。バックル30は、第一実施形態におけるものと同様である。連結部材20Aは、ベルト1Aの一方の端部1aとバックル30とを連結するための部材であり、第一実施形態と同様に例えば人工皮革等の可撓性を有する素材で構成することができる。本実施形態における連結部材20Aには、
図9に示すように、装着式制御装置100Aを装着させる装着部21Aが設けられており、装着部21Aには、装着式制御装置100Aの接続口111A(
図10(B))に接続されるベルト側接続口22Aが設けられている。ベルト側接続口22Aはガス袋内部に連通しており、後述するように、このベルト側接続口22Aを通して、ガス袋の中に気体(本実施形態では空気)が送り込まれ、またはガス袋の中の気体が外部へ抜かれることになる。
【0080】
例えば腕用のベルト1Aを使用者の腕の付け根に装着する際には、第一実施形態(
図4)と同様に、まずベルト1Aを腕の付け根(特定部分)に巻き付けてループ形状を作り、ベルト1Aの一方の端部1aに取り付けられたバックル30にベルト1の他方の端部1bを通してベルト1Aを折り返し、バックル30に通したベルト1Aの他方の端部1bを把持しながらベルト1Aを締め付ける。そして、ベルト1Aの締め付けにより所定の加圧力を付与した状態で面ファスナ10を用いてベルト1Aのループ形状を維持する。これにより、所定の加圧力が所望の筋肉に付与された状態でベルト1Aが使用者の腕の付け根に装着されることとなる。ベルト1Aを使用者の腕の付け根(特定部分)に装着した状態でガス袋へ空気が送り込まれると、ベルト1Aが筋肉を締付け、加圧力を与えるのである。逆に、その状態でガス袋内の空気が抜かれれば、ベルト1Aが筋肉に与える加圧力が小さくなる。
【0081】
装着式制御装置100Aは、第一実施形態における加除圧制御装置100と同様に、ベルト1Aに設けられたガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することにより、ベルト1Aが使用者の特定部分に付与する加圧力を制御するように構成されるものである。
図10(A)は、本実施形態における装着式制御装置100Aを表側(表示部116A側)から見た場合の斜視図であり、(B)は装着式制御装置100Aを裏側(接続口111A側)から見た場合の斜視図である。また、
図11は、本実施形態における装着式制御装置100Aの機能的構成を示すブロック図である。
【0082】
装着式制御装置100Aは、
図11に示すように、本実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)における特定加圧力をベルト1Aで特定部分に付与するようにベルト1Aのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御する給排制御部(ポンプ110A及び制御部120A)を有している。ポンプ110A及び制御部120Aは、
図10に示すような略直方体状を呈する筐体101Aに収納されている。筐体101Aは、ベルト1Aの装着部21Aに装着可能な大きさ(例えば縦7〜8cm、横約4〜5cm、厚さ約2〜3cm)を有している。なお、筐体101Aの形状は直方体に限られるものではなく、ベルト1Aに装着可能な他の形状を採用することもできる。
【0083】
装着式制御装置100Aのポンプ110Aは、第一実施形態におけるポンプ110と同様に、その周囲にある気体(本実施形態では空気)を取り込み、これを、接続口111Aを介して外部へ送る機能を備えている。ポンプ110Aは、また、弁112Aを備えており、弁112Aを開放することで、ポンプ110A内部の気体を外部へ排出できるようになっている。ポンプ110Aは接続口111A(
図10(B))を有しており、これに接続されるベルト側接続口22A(
図9)を介して、ベルト1Aに設けられたガス袋へと接続される。ポンプ110Aが気体を送ればガス袋に気体が供給され、ポンプ110Aが弁112Aを開放すればガス袋から気体を除去することができる。なお、弁112Aは必ずしもポンプ110Aに設けられている必要はなく、ポンプ110Aからガス袋に至る経路のいずれかに設けられていれば足りる。また、ポンプ110Aには、図示していない圧力計が内蔵されており、それによりポンプ110A内の気圧を測定できるようになっている。ポンプ110A内の気圧は、当然にガス袋内の気圧に等しい。このガス袋内の気圧は、ベルト1Aが筋肉に与える加圧力に相当するものである。
【0084】
装着式制御装置100Aの制御部120Aは、ポンプ110Aを制御するものである。制御部120Aは、圧力計で測定されたポンプ110A内の気圧が所定の設定値になるように、弁112Aを閉じた状態でポンプ110Aを駆動させて空気をベルト1Aのガス袋へ送り、或いはポンプ110Aが備える弁112Aを開放してガス袋内の空気を抜くという制御を行う。つまり、制御部120Aは、弁112Aの開閉を含めたポンプ110Aの制御を行うものとなっている。
【0085】
また、装着式制御装置100Aは、
図11に示すように、各種情報を記録するための情報記録部113Aを有している。情報記録部113Aは、使用者毎の特定加圧力等の各種情報を記録することができ、また、記録した情報を消去することができるように構成されている。制御部120Aは、情報記録部113Aから読み出した特定加圧力をベルト1Aで特定部分に付与するようにベルト1Aのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することができる。
【0086】
本実施形態においては、情報記録部113Aとして、筐体101Aに対して着脱自在なメモリカードを採用している。情報記録部113Aとしてのメモリカードを筐体101Aから取外し、図示していない外部装置(親機)を用いてメモリカードに特定加圧力を書き込み、特定加圧力が書き込まれたメモリカードを筐体101Aに取り付けることができる。従って、特定加圧力を随時更新することが可能となる。
【0087】
また、装着式制御装置100Aは、
図11に示すように、各種情報の送受信を行うための情報送受信部114Aを有している。情報送受信部114Aは、図示していない外部装置で設定された特定加圧力等の各種情報を受信したり、加圧トレーニングの実施履歴等の各種情報を外部装置に送信したりするように構成されている。情報記録部113Aは、情報送受信部114Aで受信した特定加圧力等の各種情報を記録することができる。
【0088】
また、装着式制御装置100Aは、
図11に示すように、各種情報の入力を行うための操作入力部115Aを有している。操作入力部115Aは、各種動作指令を入力したり、特定加圧力等の各種情報を入力したりするためのものである。情報記録部113Aは、操作入力部115Aで入力した特定加圧力等の各種情報を記録することができる。また、制御部120Aは、操作入力部115Aで入力された特定加圧力をベルト1Aで特定部分に付与するようにベルト1Aのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することができる。
【0089】
また、装着式制御装置100Aは、
図11に示すように、各種情報を視覚的に表示(出力)するための表示部116Aを有している。表示部116Aは、操作入力部115Aによって入力された特定加圧力等の各種情報を表示するためのものである。本実施形態においては、表示部116Aとして、
図10(A)に示すように筐体101Aの一表面に表示される表示画面を採用している。この表示画面は、操作入力部115Aとしても機能するタッチパネルとされている。なお、各種情報を視覚的に表示するための表示部116Aに代えて(又は表示部116Aとともに)、各種情報を音声で出力するための音声出力部を設けてもよい。また、各種動作指令を音声で入力することができる操作入力部115Aを採用することもできる。
【0090】
また、装着式制御装置100Aは、特定部分に所定の加圧力を付与する加圧動作と、加圧動作により特定部分に付与された加圧力を除去する除圧動作と、を交互に繰り返すようにベルト1Aが特定部分に付与する加圧力の制御を行うように構成されている。具体的には、装着式制御装置100Aの制御部120Aは、所定の動作指令が入力されると、ポンプ110Aを駆動制御してガス袋に気体を供給したり(加圧動作)、弁112Aを開放してガス袋から気体を除去したり(除圧動作)することができる。また、装着式制御装置100Aは、複数回の加圧動作を実現させる際に、各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く設定するように構成されている。
【0091】
次いで、
図12〜
図24を用いて、本実施形態に係る筋肉トレーニングシステムを用いた筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)について説明する。
【0092】
本実施形態に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)は、第一実施形態と同様に、使用者の四肢の少なくとも何れか一つにベルト1Aを巻き付けて特定加圧力を付与することにより使用者の筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、使用者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を使用者に複数回実施させる加圧運動工程(
図12、S30A等)と、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させる運動休止工程(
図12、S40A等)と、を交互に繰り返すことにより使用者の筋肉を増強させる方法である。以下、各工程について具体的に説明することとする。
【0093】
まず、加圧運動工程(
図12、S30A等)を実施する前に、加圧トレーニングのインストラクタは、使用者の四肢の少なくとも何れか一つに付与される特定加圧力を設定する(加圧力設定工程:S10A)。本実施形態における加圧力設定工程S10Aでは、第一実施形態における加圧力設定工程S10(
図7)と同様の工程等を採用して、予め使用者毎に特定加圧力を設定しておくこととする。
【0094】
加圧力設定工程S10Aに次いで、インストラクタは、使用者の四肢の少なくとも何れか一つにベルト1Aを巻き付けて装着するとともに、ベルト1Aの装着部21Aに装着式制御装置100Aを装着する(
図12、システム装着工程:S20A)。システム装着工程S20Aにおいては、ベルト1Aのベルト側接続口22Aに、装着式制御装置100Aの接続口111Aを接続する。また、システム装着工程S20Aにおいて、インストラクタは、例えば第一実施形態の
図8に示すような適切な装着圧でベルト1Aが使用者に装着されているか否かを確認し、装着圧が適切でない場合には、装着圧を適切な値に設定するとともに、加圧力設定工程S10Aで設定した特定加圧力を装着式制御装置100Aに入力する。以下、
図13〜
図16を用いて、装着圧の確認・設定及び特定加圧力の入力の手順について説明する。
【0095】
図13は、装着式制御装置100Aの表示部116Aに表示されたメニュー画面を示すものである。操作入力部115A(タッチパネル)としても機能するこのメニュー画面には、「加圧力入力」、「加除圧プログラムスタート」、「加圧トレーニングスタート」及び「パスコード変更」と各々名付けられた操作入力用のボタンが表示されており、これらのうち「加圧力入力」ボタンを押圧操作すると、
図14に示す装着圧確認画面が表示される。
図14の画面における「装着圧確認」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、「実際の装着圧」と表示されたモニタフレームの内部に、ベルト1Aの現在の装着圧(装着式制御装置100Aの圧力計で計測された値)が表示される。
図14に示す例では、左腕の実際の装着圧が10mmHgと表示され、右腕の実際の装着圧が12mmHgと表示されている。表示された実際の装着圧が適切な値よりも低い場合には、インストラクタはベルト1Aを締め直し、適切な値まで装着圧を上昇させる。一方、表示された実際の装着圧が適切な値よりも高い場合には、インストラクタは、
図14の画面における「リリース」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作して装着式制御装置100Aの弁112Aを開放して空気を抜くことにより、適切な値まで装着圧を下降させる。
【0096】
上記手順を経て装着圧を適切な値に設定した後、
図14の画面における「加圧力入力」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図15に示すパスコード入力画面が表示される。インストラクタが、自身に割り当てられたパスコードを、
図15の画面に表示されたテンキーを押圧操作して入力すると、
図16に示す加圧力入力画面が表示される。
図16の画面には、「腕」、「脚、」「左」、「右」と各々名付けられた操作入力用のボタンが表示されており、インストラクタは、これらを適宜選択して押圧操作することにより、入力対象となる部位(例えば右腕)を選択することができる。そして、インストラクタは、
図16の画面において「上」、「下」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作することにより、入力対象となる部位毎に特定加圧力を入力する。
図16に示す例では、左腕及び左腕の特定加圧力がともに150mmHgと入力されている。ある対象部位の特定加圧力の入力を終えたら、
図16の画面において「決定」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作して、次の対象部位の特定加圧力の入力を行う。そして、全ての対象部位の特定加圧力の入力を終えたら、
図16の画面において「終了」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作して、特定加圧力の入力を終了する。
図16の「終了」ボタンが押圧操作されると、
図13のメニュー画面が表示される。入力された特定加圧力は、装着式制御装置100Aの情報記録部113Aに記録され、後述する加圧運動工程で使用されることとなる。
【0097】
ベルト・装置装着工程S20Aに次いで、加圧トレーニングの準備運動となる「加除圧プログラム」を実施する(
図12、加除圧実施工程:S25A)。以下、
図13及び
図17〜
図21を用いて、加除圧実施工程S25Aの実施手順について説明する。
【0098】
まず、
図13のメニュー画面における「加除圧プログラムスタート」ボタンを押圧操作し、
図17に示す装着圧確認画面を表示する。
図17の装着圧確認画面では、
図14の画面と同様に、「装着圧確認」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、「実際の装着圧」と表示されたモニタフレームの内部に、ベルト1Aの現在の装着圧が表示されるようになっている。
図17の画面における「加除圧プログラムスタート」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図18に示すサブメニュー画面が表示される。インストラクタが、
図18の画面において「腕用加除圧プログラムスタート」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図19に示す腕用の特定加圧力入力画面が表示される。インストラクタは、
図19の画面における「左」、「右」ボタンを適宜選択して押圧操作することにより、入力対象となる部位(例えば右腕)を選択することができる。そして、インストラクタは、
図19の画面に表示されたテンキーを押圧操作することにより入力対象となる部位毎に特定加圧力を入力する。入力された特定加圧力は、
図19の「特定加圧力」と表示されたモニタフレームの内部に表示される。その後、インストラクタが、
図19の画面において「スタート」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図20に示す腕用の加除圧プログラム画面が表示される。
【0099】
図20に示す腕用の加除圧プログラム画面が表示されると、装着式制御装置100Aの制御部120Aは、加圧と除圧を交互に複数回繰り返すようにポンプ110A及び弁112Aを制御する。例えば、使用者の腕の特定加圧力が150mmHgと入力された場合には、制御部120Aは、第一回目の加圧力を自動的に70mmHgに設定した状態で一定時間(例えば10〜20秒)加圧を行い、その後加圧力を除去して装着圧まで戻す(ステップ1)。その後、制御部120Aは、第二回目の加圧力を80mmHgに設定した状態で一定時間加圧を行い、その後加圧力を除去して装着圧まで戻す(ステップ2)。制御部120Aは、このように10mmHgずつ加圧力を上昇させながら、加除圧を第八回目まで繰り返す(ステップ3〜8)。第八回目の加圧力は、入力された特定加圧力(150mmHg)と同一となる。制御部120Aは、第八回目の加圧を終えたら自動的に
図21に示す終了画面を表示させて、使用者及びインストラクタに加除圧プログラムの終了を知らせる。脚用の加除圧プログラムについても同様に実施することができる。
【0100】
加除圧実施工程S25Aに続いて、加圧運動工程(
図12、S30A等)と、運動休止工程(
図12、S40A等)と、を交互に繰り返し実施する。本実施形態における加圧運動工程(S30A、S50A、S70A、S90A)及び運動休止工程(S40A、S60A、S80A、S100A)は、第一実施形態における加圧運動工程(S30、S50、S70、S90)及び運動休止工程(S40、S60、S80、S100)と各々実質的に同様であるので、詳細な説明を省略する。本実施形態においては、これら加圧運動工程及び運動休止工程を実施する際に装着式制御装置100Aの表示部116Aに表示される情報について、
図13及び
図22〜
図24を用いて説明する。
【0101】
まず、
図13のメニュー画面における「加圧トレーニングスタート」ボタンを押圧操作し、
図22に示す装着圧確認画面を表示する。
図22の装着圧確認画面では、
図14の画面と同様に、「装着圧確認」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、「実際の装着圧」と表示されたモニタフレームの内部に、ベルト1Aの現在の装着圧が表示されるようになっている。
図22の画面における「加圧トレーニングスタート」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図23に示すサブメニュー画面が表示される。インストラクタが、
図23の画面において「腕用加圧トレーニングスタート」と名付けられた操作入力用のボタンを押圧操作すると、
図24に示す腕用の加圧モニタ画面が表示される。
図24の画面において「特定加圧力」と表示されたモニタフレームの内部には、システム装着工程S20Aで入力された特定加圧力が表示される。一方、「実際の加圧力」と表示されたモニタフレームの内部には、加圧運動工程及び運動休止工程で実際に付与されている加圧力が表示される。インストラクタは、この加圧モニタ画面に表示された情報に基づいて、加圧運動工程及び運動休止工程で正常に加圧が行われているかどうかを確認することができる。脚用の加圧運動工程及び運動休止工程についても同様にモニタリングすることができる。この後、使用者からベルト1A及び装着式制御装置100Aを取外し(システム取外工程:S110A)、加圧トレーニングを終了する。
【0102】
以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニング方法によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニングシステムにおいては、比較的小型の装着式制御装置100Aをベルト1Aに装着し、装着式制御装置100Aの給排制御部(ポンプ110A及び制御部120A)でベルト1Aのガス袋に対する気体の供給量及び排出量を制御することにより、特定加圧力をベルト1Aで使用者の特定部分に付与することができる。そして、ベルト1Aと装着式制御装置100Aのセットを複数用いることにより、複数の使用者に一斉に特定加圧力を付与することができるため、グループでの筋肉トレーニング(グループレッスン)を実現させることができる。
【0104】
また、以上説明した実施形態に係る筋肉トレーニングシステムにおいては、使用者毎の特定加圧力を操作入力部115Aで入力し、入力した特定加圧力を情報記録部113Aに記録させ、情報記録部113Aから読み出した特定加圧力を用いて気体の供給量及び排出量を制御することができる。また、特定加圧力を操作入力部115Aで入力し、入力した特定加圧力を用いて気体の供給量及び排出量を制御することもできるため、情報記録部113Aに特定加圧力が予め記録されているような場合においても、使用者の体調等に応じて特定加圧力を臨機応変に変更することができる。また、本実施形態に係る筋肉トレーニングシステムにおいては、加圧トレーニングの準備運動となる加除圧プログラムを、装着式制御装置100Aを用いて自動的に実施することができるため、インストラクタの作業負担を大幅に軽減することができる。
【0105】
なお、以上の各実施形態においては、加圧運動工程及び運動休止工程を四回ずつ実施した例を示したが、加圧運動工程及び運動休止工程の実施回数はこれに限られるものではない。例えば、加圧運動工程及び運動休止工程を三回(又は五回)実施することもできる。この際にも、第一回目の加圧運動工程における負荷運動の実施回数を、第二回目以降の加圧運動工程の負荷運動の実施回数よりも多く設定するようにする。
【0106】
<実施例>
次に、
図25を用いて、本発明の実施例について説明する。
【0107】
本実施例においては、12人の被験者(男性6名、女性6名)にそれぞれ、本発明に係る筋肉トレーニング方法(加圧トレーニング)と、通常の筋肉トレーニング方法(以下、「通常トレーニング」という)と、の双方を実施させ、双方のトレーニング中に各被験者の上腕三頭筋及び胸筋の周囲長を筋電図で測定して平均値を取得し、加圧トレーニングと通常トレーニングとによってどの程度筋肉増大効果が異なるかを比較した。
【0108】
<加圧トレーニング>
まず、本実施例における加圧トレーニングについて説明する。本実施例においては、加圧トレーニングを行う際に、ネオプレンゴムから構成されるベルト1(長さ70cm、幅3.0cm)を備える腕用のベルト1を採用した。ガス袋(長さ25cm、幅3.0cm)としては市販のゴム袋を採用し、面ファスナ10としては市販のマジックテープ(登録商標)を採用し、接続管200としては市販のゴムチューブを採用した。また、加除圧制御装置100(ポンプ110及び制御装置120)としては、タクミ電子社製の製品(商品名:「加圧マスター」)を採用することとした。
【0109】
本実施例においては、まず、各被験者の特定加圧力を設定した(加圧力設定工程S10)。加圧力設定工程S10においては、各被験者の腕の付け根にベルト1を巻き付け60mmHgの装着圧でベルト1を装着し(装着工程S11)、その装着圧よりも20mmHg高い加圧力を各被験者に30秒間付与し(加圧工程S12)、その後除圧し(除圧工程S14)、装着圧を10秒間維持した後、加圧力の設定値を20mmHgだけ上昇させた上で(設定圧上昇工程S15)、加圧工程S12を再度実施し、これらの工程を各被験者の手の平の色が赤色乃至赤褐色になるまで繰り返し実施した。
【0110】
次いで、各被験者の腕の付け根にベルト1を巻き付けて装着し(ベルト装着工程S20)、加圧力設定工程S10で設定した特定加圧力を各被験者に付与することにより各被験者の筋肉の血流を止めることなく制限しつつ、各被験者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を各被験者に実施させた(第一加圧運動工程S30)。本実施例においては、負荷運動として、横臥姿勢のまま両手でバーベルを挙げるベンチプレス運動を採用した。各被験者の筋肉に付与される特定重量(バーベルの重量)は、予め測定した各被験者の最大重量(各被験者が一度しかバーベルを挙げることができない重量)の30%の値に設定した。また、本願発明の発明者の研究によれば、特定加圧力を付与した状態での負荷運動を25〜30回程度行うと各被験者の血中乳酸濃度は充分に高まることがわかっているため、本実施例においては、第一加圧運動工程S30における負荷運動の目標実施回数(バーベルを挙げる回数)を30回に設定した。なお、
図25(A)及び
図25(B)の横軸に示した回数(30回)は12人の被験者の平均値であり、実際の実施回数は被験者毎に異なる(30回を超えて実施できた被験者もいれば、30回未満しか実施できなかった被験者もいる)。
【0111】
第一加圧運動工程S30に次いで、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させた(第一運動休止工程S40)。本実施例においては、第一運動休止工程S40における負荷運動の休止時間を30秒に設定した。
【0112】
第一運動休止工程S40に次いで、特定加圧力を各被験者に付与しつつ、各被験者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を各被験者に実施させた(第二加圧運動工程S50)。第二加圧運動工程S50における負荷運動の目標実施回数は、第一加圧運動工程S30における負荷運動の目標実施回数の1/2(15回)に設定した。
図25(A)及び
図25(B)の横軸に示した回数(15回)は12人の被験者の平均値であり、実際の実施回数は被験者毎に異なる。その後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させた(第二運動休止工程S60)。第二運動休止工程S60における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同一(30秒)に設定した。
【0113】
第二運動休止工程S60に次いで、特定加圧力を各被験者に付与しつつ、各被験者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を各被験者に実施させた(第三加圧運動工程S70)。第三加圧運動工程S70における負荷運動の目標実施回数は、第二加圧運動工程S50における負荷運動の目標実施回数の1/2以下(7回)に設定した。
図25(A)及び
図25(B)の横軸に示した回数(7回)は12人の被験者の平均値であり、実際の実施回数は被験者毎に異なる。その後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させた(第三運動休止工程S80)。第三運動休止工程S80における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同一(30秒)に設定した。
【0114】
第三運動休止工程S80に次いで、特定加圧力を各被験者に付与しつつ、各被験者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を各被験者に実施させた(第四加圧運動工程S90)。第四加圧運動工程S90における負荷運動の目標実施回数は、第三加圧運動工程S70における負荷運動の目標実施回数の1/2以下(3回)に設定した。
図25(A)及び
図25(B)の横軸に示した回数(3回)は12人の被験者の平均値であり、実際の実施回数は被験者毎に異なる。その後、特定加圧力の付与を続行したまま負荷運動の実施を休止させた(第四運動休止工程S100)。第四運動休止工程S100における負荷運動の休止時間は、第一運動休止工程S40と同一(30秒)に設定した。この後、各被験者からベルト1を取外し(ベルト取外工程S110)、加圧トレーニングを終了した。
【0115】
<通常トレーニング>
次に、本実施例における通常トレーニングについて説明する。本実施例において、加圧トレーニングと通常トレーニングとの相違点は、加圧トレーニングでは各被験者にベルト1を用いて特定加圧力を付与しているのに対し、通常トレーニングでは各被験者に特定加圧力を付与していないことである。
【0116】
通常トレーニングにおいては、まず、各被験者に特定加圧力を付与することなく、各被験者の筋肉に特定重量の負荷を付与するための負荷運動を各被験者に実施させた(第一運動工程)。負荷運動としては、加圧トレーニングと同様のベンチプレス運動を採用した。各被験者の筋肉に付与される特定重量(バーベルの重量)も加圧トレーニングと同様に最大重量の30%の値に設定し、負荷運動の実施回数(バーベルを挙げる回数)も加圧トレーニングと同様に30回に設定した。次いで、負荷運動の実施を休止させた(第一運動休止工程)。第一運動休止工程における負荷運動の休止時間も、加圧トレーニングと同様に30秒に設定した。
【0117】
第一運動休止工程に次いで、各被験者に特定加圧力を付与することなく、第二回目の負荷運動を各被験者に実施させた(第二運動工程)。第二運動工程における負荷運動の実施回数は、加圧トレーニングの第二加圧運動工程S50と同様に15回に設定した。その後、負荷運動の実施を休止させた(第二運動休止工程)。第二運動休止工程における負荷運動の休止時間も30秒に設定した。
【0118】
第二運動休止工程に次いで、各被験者に特定加圧力を付与することなく、第三回目の負荷運動を各被験者に実施させた(第三運動工程)。第三運動工程における負荷運動の実施回数は、加圧トレーニングの第三加圧運動工程S70と同様に7回に設定した。その後、負荷運動の実施を休止させた(第三運動休止工程)。第三運動休止工程における負荷運動の休止時間も30秒に設定した。
【0119】
第三運動休止工程に次いで、各被験者に特定加圧力を付与することなく、第四回目の負荷運動を各被験者に実施させた(第四運動工程)。第四運動工程における負荷運動の実施回数は、加圧トレーニングの第四加圧運動工程S90と同様に3回に設定した。その後、負荷運動の実施を休止させた(第四運動休止工程)。第四運動休止工程における負荷運動の休止時間も30秒に設定した。この後、各被験者からベルト1を取外し(ベルト取外工程)、通常トレーニングを終了した。
【0120】
図25(A)は、双方のトレーニングの各運動工程実施時に各被験者の「上腕三頭筋」の周囲長の平均値を測定した結果を示すグラフであり、
図25(B)は、双方のトレーニングの各運動工程実施時に各被験者の「胸筋」の周囲長の平均値を測定した結果を示すグラフである。
図25(A)及び
図25(B)において、横軸は時間(各運動工程)を、縦軸は測定周囲長(最大周囲長(最大重量付与時の周囲長)に対する割合)の平均値を、各々示している。
【0121】
加圧トレーニングを行った場合には、通常トレーニングを行った場合と比較して、上腕三頭筋及び胸筋の周囲長が有意に増加していることが
図25(A)及び
図25(B)から明らかである。例えば、加圧トレーニングの第四加圧運動工程S90(特定加圧力を付与した状態で負荷運動を3回実施した工程)と、通常トレーニングの第四運動工程(特定加圧力なしで負荷運動を3回実施した工程)と、を比較すると、加圧トレーニングにおいては上腕三頭筋及び胸筋の双方の周囲長が最大周囲長の60〜70%に到達しているのに対し、通常トレーニングにおいてはこれら双方の周囲長が最大周囲長の50%程度に到達しているのにすぎない。
【0122】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。