(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227009
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車両ホイールに組み込まれる油圧モータ
(51)【国際特許分類】
F03C 1/047 20060101AFI20171030BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20171030BHJP
B60B 35/16 20060101ALI20171030BHJP
F16C 35/07 20060101ALI20171030BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20171030BHJP
B60B 27/00 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
F03C1/047
B60K7/00
B60B35/16 Z
F16C35/07
F16C19/36
!B60B27/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-554212(P2015-554212)
(86)(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公表番号】特表2016-513195(P2016-513195A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014051786
(87)【国際公開番号】WO2014118270
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】13153240.0
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515198555
【氏名又は名称】エフピーティー インダストリアル ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエレ コラチト
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド クルティ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ メッルーゾ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジョ ロッシア
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0194619(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02359277(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/047
B60B 35/16
B60K 7/00
F16C 19/36
F16C 35/07
B60B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ホイールに組み込まれる油圧モータ(1)であって、
連接スタブ軸(100)によって支持される円筒の対称性を有し、それ自体の伸展軸(X)と前記油圧モータの伸展軸(X)を規定するハブ(200)と、
前記連接スタブ軸(100)と回転可能に一体で、環状形状を有し、放射状ピストンを備える、モータ本体(12)と、
ハブ(200)と一体の、前記放射状ピストンが作用する、成形リング(13)と、
油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)とを備え、
前記油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)が前記ハブ(100)の中に収容されており、
さらに、前記油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)が、前記連接スタブ軸(100)に対して回転可能に固定された第一部(16)と回転可能に移動可能な第二部(15)とを備え、前記第一部(16)が、前記連接スタブ軸(100)の自由端(101)に向かってテーパになった外部表面を有する環状形状を有する、
モータ。
【請求項2】
前記オイル・ディストリビュータが、全体的に環状形状を有し、前記連接スタブ軸(100)にスプライン結合されるのに適している、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第二部(15)が、前記第一部の前記外部表面に相補的な内部表面を有する環状形状を有し、その結果、前記第一部(16)にスプライン結合されている、請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
第1の油圧オイル管(16.1)が、径方向の伸展部を有し、前記ディストリビュータ(16)の前記第一部の中に作られ、第2の油圧オイル管(15.1)が、少なくとも一部分が軸方向の伸展部を有し、前記ディストリビュータ(15)の前記第二部の中に作られている、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
推力チャンバ(1516)が、前記油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)の前記2つの部品(15、16)の互いに対応する前記相補的な表面によって画成されている、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記連接スタブ軸(100)と前記ハブ(200)の間に配置された第1のベアリング(18)および第2のベアリング(20)をさらに備え、前記ベアリングが、スペーサ手段(19、202、203)によって互いに隔置され、前記第1のベアリング(18)が、前記油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)と直接接触しており、その結果、前記ディストリビュータの軸方向の移動が、前記ベアリング(18、20)の軸方向の移動を引き起こす、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記第1のベアリング(18)が、前記油圧オイル・ディストリビュータ(15〜16)の前記第一部(15、16)のみと直接接触している、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記連接スタブ軸(100)の前記自由端(101)に通される単一のリングナット(11)をさらに備え、前記リングナット(11)が、モータ本体(12)、ディストリビュータ(15〜16)、第1のベアリング(18)、スペーサ(19)、第2のベアリング(20)を順にブロックし、その結果、前記単一のリングナットが、前記機関の組み立てと、前記ブロックされる構成部品の位置の調節を可能にする、請求項6または7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ディストリビュータ(15〜16)が、油圧オイルを閉じ込める環状ガスケット(17)のための台座を画成している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項10】
前記台座が、前記連接スタブ軸(100)に対して回転可能に固定される前記ディストリビュータの前記第一部(16)によって画成されている、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記連接スタブ軸が、それにスプライン結合される前記構成部品(11、12、15〜16)のうちの1つの軸方向の摺動を制限するための少なくともストッパ表面(103)を備える、請求項5〜8のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の油圧モータが収容されるホイールの地上車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ホイールに直接組み込まれる油圧モータ、より詳細にはラジアルピストン油圧モータの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータはしばしば土工機械で使用される。近年、高加速トルクが必要な特定の状況で熱機関を補助するために、このようなモータが商用車両にも使用されている。
【0003】
ラジアル油圧機関は、その回転を引き起こす成形プロファイルの圧迫を行うように、円形のクラウン上に配された放射状に動作可能な複数のピストンを有することを特徴とする。このようなプロファイルは、リング、いわゆる成形リングの内部表面に作られる。この成形リングはホイールと一体的になっている。
【0004】
ホイール・ハブに直接挿入される複数の油圧モータが当技術分野で知られている。それらには複数の問題がある。まず、放射状のピストンを作動させるのに必要なオイル・ディストリビュータの固定部品は通常、連接スタブ軸の端の上方に、すなわち連接スタブ軸に対して同軸に取り付けられる。これにより、その固定部品がハブの外形から突出し、したがって歩道およびその他の物体に当たりがちになることがうかがえる。
【0005】
別の問題は、ハブの別の部分に油圧オイルを閉じ込めるということである。
【0006】
当技術分野で知られている装置によると、連接スタブ軸とハブの間に配置され、連接スタブ軸の自由端に対して最も外部にあるベアリングは、ハブの、油圧オイルを閉じ込める領域の内部にある。したがって、このようなベアリングは、潤滑グリースまたはオイルの中で機能する代わりに、物理化学的特性が潤滑グリースまたはオイルと明らかに異なる油圧オイル内で機能する必要がある。
【0007】
周知の方式のさらなる問題は、ハブを連接スタブ軸に連結するためと、油圧モータを連接スタブ軸に連結するためとに、個別の固定手段が設けられることに関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、上述の全ての欠点を克服すること、車両ホイールに組み込まれる油圧モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、ディストリビュータは環状の形状を有し、ハブの内部に入るように、連接スタブ軸にスプライン結合される。第1の利点は、ディストリビュータはハブの内部にあるが、ハブから突出しないことにある。
【0010】
本発明の他の態様によると、ディストリビュータの固定部品が、連接スタブ軸の自由端に向かってテーパになった外部側方表面を有し、ディストリビュータの可動部品もまた、その固定部品の外部側方表面と相補的な内部側方表面を有する環状の形状を有する。その結果、可動部品は、ディストリビュータの固定部品にスプライン結合され、連接スタブ軸にはスプライン結合されない。つまり、ディストリビュータの可動部品は、完全にディストリビュータの固定部品によって支持される。
【0011】
これにより、ディストリビュータの軸方向の障害物を制限することが可能になるので有利である。さらにそれにより、ディストリビュータの可動部品に引き起こされる軸方向の力を、ディストリビュータの固定部品上に放出することが可能になり、したがって、カップ・ベアリングを用いてディストリビュータを支持する必要がなくなる。
【0012】
本発明の他の態様によると、連接スタブ軸にスプライン結合されるディストリビュータの固定部品は、油圧オイルを閉じ込めるための環状のガスケットを収容するための環状のハウジングを画成する。
【0013】
本発明の他の態様によると、単一の共用連結部によって、すなわちスタブ軸の自由端に通されるリングナットによって、ハブと油圧モータの両方が連接スタブ軸に連結される。
【0014】
本発明の他の態様によると、ハブと連接スタブ軸の間に配置されるベアリングの位置の調節は、単一の連結手段と、好ましくはディストリビュータの固定部品と連接スタブ軸の間にあるビート境界とによって行われる。
【0015】
本発明の目的は、請求項1に記載の、車両ホイールに組み込まれる油圧モータである。
【0016】
少なくとも車両ホイールに組み込まれる上述の油圧モータを備える地上車両も、本発明の目的である。
【0017】
特許請求の範囲は、この説明の不可分な一部分をなす。
【0018】
本発明の目的および利点は、その実施形態(およびその代替実施形態)の以下の詳細な説明と、本明細書に添付の図面から明らかになるであろうが、これらは例示に過ぎず、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による油圧モータの好ましい実施形態の、連接スタブ軸に対して軸方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各図では、同じ参照番号/文字は、同じ要素または構成部品を示している。
【0021】
図1に、本発明による油圧モータ1の連接スタブ軸100に対して軸方向の断面に沿った図が示されている。連接スタブ軸は油圧モータ1の伸展軸Xを規定する。
【0022】
モータの構成部品の大部分がハブの中に含まれていることは明らかである。
【0023】
連接スタブ軸100の自由端101は、油圧モータ1の最も外側の部分になるが、タイヤのリム(図示せず)が連結されるハブ200のストッパ表面201を考慮すると、ホイールの内部に完全に含まれる。
【0024】
ハブの形状は円筒の対称性を有する。好ましくは、そのハブの形状は、連接スタブ軸100の連接部102の近傍で円筒形状を有し、自由端101の方、すなわち
図1で見ると右方に向かってベル状に広がる傾向を有する。
【0025】
モータ本体12は、成形リング13に作用する複数の放射状ピストン(図示せず)を組み込んだトーラスである。モータ本体は連接スタブ軸100と回転可能に一体になっている一方、成形リング13はハブ200と一体になっている。
【0026】
油圧オイル・ディストリビュータは、連接スタブ軸に対して回転可能に固定される部品16と回転する部品15を備える。説明のために、以下では、それらをそれぞれ、固定部品、可動部品と称する。
【0027】
固定部品と可動部品は両方とも軸方向に移動可能である。
【0028】
固定部品16は、連接スタブ軸の自由端101に向かってテーパになった外部表面を有する環状形状を有し、連接スタブ軸にスプライン結合される。ディストリビュータの可動部品15も環状形状を有し、この環状形状は、好ましくは円筒形の外部表面と、上記固定部品の外部表面に相補的な内部表面を有する。したがって、ディストリビュータの可動部品15は、それに対して環状になっている固定部品16に嵌合する。これら2つの部品の境界に油圧オイルが通過することから、その2つの部品を離して広げる軸方向の推力を決定づけるにはこの嵌合で十分である。
【0029】
本発明の他の代替実施形態によると、ディストリビュータの可動部品に作用する軸方向の各力は、以下の理由で釣り合っている。油圧オイルの通過中に、可動部品をモータ本体12から遠ざける傾向を有する反力が生じる。この反力に等しいまたはそれを上回る強さを有する逆向きの力が、上記で示したように、ディストリビュータの固定部品と可動部品の間の境界におけるオイルによって引き起こされる。したがって一種の流体軸受が、ディストリビュータの固定部品と可動部品の間に生成される。ディストリビュータの固定部品は、スタブ軸にスプライン結合され、その結果軸方向に摺動でき、したがってベアリング群(18、19および20)全体を圧縮する。この解決策により、回転要素の支持に適したベアリングを設けないようにできる。というのは、可動部品15は、軸方向の反力を、回転可能に固定されたディストリビュータの固定部品16に放出するからである。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態によると、ディストリビュータの固定部品16と回転部品15を離して広げる軸方向の推力を増大させるために、この2つの部品の間の境界に、チャンバ1516が設けられる。特に、好ましくは矩形の軸方向の断面を有するそのようなチャンバにより、管15.1および16.1におけるオイルの通過が常に確保される。
【0031】
チャンバ1516の表面は、上述の軸方向の推力を変更するために、適切に寸法決めされうる。
【0032】
固定部品の管16.1は、モータの軸方向の対称性に対して放射状でありうる。ディストリビュータの可動部品に作られる管15.1は、固定部品の管からオイルを収集して、そのオイルを図の右の方にモータ本体12まで送る。したがって、これらの管は、径方向に顕著な第1の部分と、軸方向に顕著な第2の部分を有する。
【0033】
ディストリビュータの可動部品15は、本体15とハブの間にあるスプラインまたはキーによって、成形リング13およびハブ200と回転可能に一体的になる。
【0034】
ディストリビュータの固定部品16の環状部分は、環状のガスケットを収容するための台座を備え、このガスケットは、内部がディストリビュータの固定部品に、外部がハブ200に嵌合する。このような位置にガスケットを有することによって、ハブの、周知のように高度な腐食性を有する油圧オイルが達する部分を、閉じ込めることが可能になる。
【0035】
図面の左の方に移動すると、ハブ200とスタブ軸100の間に、第1のベアリング18(外部ベアリングとも呼ばれる)、第2のベアリング20(内部ベアリングとも呼ばれる)、追加の環状ガスケット21が、順に収容されている。これらの要素は全て、内部が連接スタブ軸に、外部がハブに嵌合する。
【0036】
上記ベアリングの相互位置は、連接スタブ軸100に嵌合されたスペーサ19と、おそらくはハブの内部表面に作られたストッパ歯202および203とによって、規定される。かかるストッパ歯は、ベアリング同士の間にスペーサを画成する。つまり、外部ベアリング18の軸方向内向きの、つまり図の左の方への移動により、それと同じ内部ベアリング19の平行移動が引き起こされる。これは、ハブ200の相互干渉とスペーサ19の相互干渉とにより所望の予荷重が得られるからである。
【0037】
ディストリビュータの固定部品16は、第1のベアリング18と直接接触しており、したがって第1のベアリングの上述の軸方向の移動は、ディストリビュータの固定部品16との相互作用によって決定されうる。
【0038】
同様に、ディストリビュータ15〜16がモータ本体12と直接接触しているので、ディストリビュータの軸方向の移動は、モータ本体12との相互作用によって決定されうる。したがって、モータ本体12に作用する連接スタブ軸の自由端101に通される単一のリングナット11が、ディストリビュータ15〜16と、ベアリング18と、スペーサ19およびハブ200と、ベアリング20とに作用する。
【0039】
ここに示した解決策のおかげで、単一の連結要素が、上記機関の組み立てを可能にするだけでなく、ベアリング18および20の位置の調節も可能にすることが明らかである。
【0040】
注目すべき点は、単一のリングナット11を除いて連結要素はこれ以上設けられないことから、径方向の障害物が制限されるということである。
【0041】
ディストリビュータの固定部品16が、連接スタブ軸上で軸方向に摺動しうることも分かるであろう。つまり、固定部品16は、その左側にある構成部品、すなわちベアリングおよびそのスペーサに対してストッパの働きをしない。リング11だけがストッパの働きをする。ディストリビュータのモータ本体12や固定部品16などの、連接スタブ軸に対して回転可能に固定される部品は、スプライン形状またはその回転をブロックする他の手段を備えうる。
【0042】
上述の説明から、当技術分野の技術者が、さらなる構造の詳細を説明する必要なく、本発明を実施することが可能になる。様々な好ましい実施形態で説明した要素および特徴は、この出願の範囲から逸脱することなしに組み合わせうる。
【符号の説明】
【0043】
1 油圧モータ
11 リングナット
12 モータ本体
13 成形リング
15 油圧オイル・ディストリビュータの可動部品
15.1 管
16 油圧オイル・ディストリビュータの固定部品
16.1 管
1516 チャンバ
18 第1のベアリング
19 スペーサ
20 第2のベアリング
21 環状ガスケット
100 連接スタブ軸
101 連接スタブ軸の自由端
102 連接スタブ軸の連接部
200 ハブ
201 ハブのストッパ表面
202 ストッパ歯
203 ストッパ歯