(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる有機酸である請求項1又は2に記載の分散体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る分散体は、後述する式(1)で表される有機リン化合物及び/又は式(2)で表される有機硫黄化合物を含むことを特徴とする。金属酸化物粒子、有機酸、及びこれら有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を含む分散体は、分散体を調製して1週間を超えたとしても、分散体がゲル化することがない。これにより分散体の長期保存が可能となるため、これらの分散体を原料として各種製品を製造する際にロスが少なくなり、極めて経済的である。しかも、このように金属酸化物粒子と、有機酸、及び特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を含む分散体は、各種分散媒との相溶性にも優れるため、従来と較べ格段に適用範囲を広げることができる。
【0023】
本発明に係る分散体は、特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物と、平均一次粒子径が50nm以下の金属酸化物粒子と、有機酸と、分散媒とを含む。以下、分散体を構成する各組成について詳述する。
【0024】
<本発明にて採用される有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物>
本発明では、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加することにより、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物が金属酸化物粒子の表面を覆い、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物が有する水酸基が粒子の分散性や該粒子を含む分散体の貯蔵安定性を改善することにより、金属酸化物微粒子を含む分散体の分散性が向上しているものと考えられる。
【0025】
1)本発明にて採用される有機リン化合物
前記有機リン化合物としては、下記式(1):
【0027】
[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。また、cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は、下記式(a1)で表される置換基に下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種を含む置換基を表す。なお下記(a2)で表される連結基の連結順は特に限定されず、同じ単位が繰り返すブロック構造を有していてもよく、異なる複数の単位が無秩序に結合するランダム構造であってもよく、また、下記構造を有するのであれば他の連結基を有することも可能である。またAが、下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)のいずれか一つの酸素原子側でリン原子と結合する。
【0029】
(式中、R
1は、炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【0031】
(式中、R
2、R
3、R
4は炭素数1〜18の2価の炭化水素基、又は、炭素数6〜30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R
2、R
3、R
4を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1〜200、p=1〜200、q=1〜200、r=1〜200である。)]で表される有機リン化合物が挙げられる。
【0032】
オキソ酸部位はa〜cの値に応じて種々列挙できるが、本発明では、有機リン化合物としては、例えば、下記式:
【0034】
(式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。Aは前記に同じである。)であるリン酸化合物又はリン酸エステル、下記式:
【0036】
(式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。Aは前記に同じ。)である亜リン酸化合物又は亜リン酸エステル、下記式:
【0038】
(式中、Aは前記に同じ。)であるホスホン酸化合物又はホスホン酸エステルが好ましく用いられる。中でも、分散体の貯蔵安定性をより向上できることから、有機リン化合物としてはリン酸エステルが好ましい。
【0039】
前記置換基Aに関し、R
1における炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、iso−プロピル基など)、ブチル基(n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基など)、ペンチル基(n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基など)、ヘキシル基(n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基など)、ヘプチル基(n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基など)、オクチル基(n−オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3−エチル−2−メチルペンチル基、2−エチル−3−メチルペンチル基、2,2,3,3−テトラメチルブチル基など)、ノニル基(n−ノニル基、メチルオクチル基、ジメチルヘプチル基、3−エチルヘプチル基、4−エチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、3,3−ジエチルペンチル基など)、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、等の直鎖又は分岐のアルキル基;ビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)、ペンテニル基(1,1−ジメチルアリル基など)、ノネニル基、デセニル基、オクタデセニル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノイル基、リノレイル基、等の直鎖又は分岐のアルケニル基;が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1〜25がより好ましく、更に好ましくは1〜18であり、特に好ましくは1〜12である。上記例示の中でも好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルケニル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、iso−プロピル基など)、ブチル基(n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基など)、オクチル基(n−オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基など)、デシル基、ビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)であり、最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、デシル基、1−メチルビニル基である。
またこれら炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基の水素原子は、後述する炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基で置換されていてもよい。前記飽和又は不飽和炭化水素基の置換基として用いられる炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が好ましく、より好ましくはフェニル基である。炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基で置換された炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基としては、例えば、下記の置換基が挙げられる(*は隣接する酸素原子との結合部位を示す)。
【0041】
R
1に係る(メタ)アクリロイル基とは、CH
2=C(CH
3)−CO−*で表されるメタクリロイル基、及びCH
2=CH−CO−*で表されるアクリロイル基の総称である。
【0042】
R
1における炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基は、1〜5環(より好ましくは1〜3環)を有することが好ましく、2環以上の場合は縮環していてもよい。なお2環以上の場合、少なくとも1つの環は芳香環である。また芳香環が2つ以上の場合、これらは縮環している場合の他、シグマボンドによって直接結合していてもよい。
こうした芳香族含有炭化水素基を具体的に例示すると、フェニル基、ナフチル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニレル基等が挙げられ、フェニル基又はナフチル基が好ましく、より好ましくはフェニル基である。またこれら芳香族含有炭化水素基(アリール基など)の水素原子は、前述した炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
前記芳香族含有炭化水素基の置換基として用いられる炭素数1〜50のアルキル基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜25のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜15のアルキル基であり、特に好ましくはノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基である。
また前記芳香族含有炭化水素基の置換基として用いられる炭素数1〜50のアルケニル基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルケニル基であり、更に好ましくはビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)である。
また前記芳香族含有炭化水素基の置換基として用いられる炭素数7〜50のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基(例えば、1−フェネチル基、2−フェネチル基)、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。中でも、より好ましくはベンジル基、フェネチル基であり、更に好ましくはフェネチル基であり、特に好ましくは2−フェネチル基である。
炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基としては、下記のものが例示できる。
【0045】
またp、q、rはそれぞれ前記(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1〜200、p=1〜200、q=1〜200、r=1〜200である。p、q、rは、それぞれ1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。また、p+q+rは、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。
【0046】
前記R
2、R
3、R
4は炭素数1〜18の2価の炭化水素基、又は、炭素数6〜30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、sec−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、シクロペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、2−メチルペンチレン基、3−メチルペンチレン基、2,2−ジメチルブチレン基、2,3−ジメチルブチレン基、ヘプチレン基、2−メチルヘキシレン基、3−メチルヘキシレン基、2,2−ジメチルペンチレン基、2,3−ジメチルペンチレン基、2,4−ジメチルペンチレン基、3−エチルペンチレン基、2,2,3−トリメチルブチレン基、オクチレン基、メチルヘプチレン基、ジメチルヘキシレン基、3−エチルヘキシレン基、トリメチルペンチレン基、3−エチル−2−メチルペンチレン基、2−エチル−3−メチルペンチレン基、2,2,3,3−テトラメチルブチレン基、ノニレン基、メチルオクチレン基、ジメチルヘプチレン基、3−エチルヘプチレン基、4−エチルヘプチレン基、トリメチルヘキシレン基、3,3−ジエチルペンチレン基、デシレン基、イソデシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、イソオクタデシレン基、等の直鎖又は分岐又は環構造含有のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は1〜8がより好ましく、更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、sec−ブチレン基であり、特に好ましくはエチレン基、iso−プロピレン基である。
【0047】
また、前記R
2、R
3、R
4は1〜5環(より好ましくは1〜3環)を有することも好ましく、2環以上の場合は縮環していてもよい。具体的に例示すると、フェニル基、ナフチル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニレル基等が挙げられる。また芳香族含有炭化水素基の水素原子は、前述した炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。芳香族含有炭化水素基の炭素数は6〜18が好ましく、更に好ましくは6〜8であり、特に好ましくはスチレン基である。
【0048】
前記R
2、R
3、R
4を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。前記エーテル基としては、(メタ)アクリロイル基、R
1の欄で詳述した各種炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、若しくは炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基の結合部位に、エーテル結合(−O−)が存在する各種置換基が挙げられる。
中でも前記エーテル基としては、*−O−C
nH
2n-1(式中、nは1〜18の整数である)が好ましい。
【0049】
本発明においては、置換基Aは、(a2)で示される単位の中でも、−[R
2−O]
p−については下記式(a3):
【0051】
(式中、p
1、p
2、p
3、p
4、p
5はpと同義である。)で表される連結基の少なくとも1種の連結基を含むことが好ましく、
−[CO−R
3−COO]
q−については下記式(a4):
【0053】
(式中、q
1、q
2、q
3、q
4はqと同義である。)で表される連結基の少なくとも1種の連結基を含むことが好ましく、
−[R
4−COO]
r−については下記式(a5):
【0055】
(式中、r
1、r
2はrと同義である。)で表される連結基の少なくとも1種の連結基を含むことが好ましい。
【0058】
(式中、p
1、p
2は前記に同じ)で示される連結基のいずれか、又は両方を含むことが分散性・入手性の関連から特に好ましい。p
1、p
2は、それぞれ1〜200が好ましく、より好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜30である。またp
1+p
2は、1〜200が好ましく、より好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜30である。
【0059】
前述した有機リン化合物としては、例えば、ニューコール1000−FCP(日本乳化剤社製)、アントックスEHD−400(日本乳化剤社製)、Phoslexシリーズ(SC有機化学社製)、ライトアクリレートP−1A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートP−1M(共栄社化学社製)、TEGO(登録商標) Dispers651、655、656(エボニック社製)、DISPERBYK−110、111、180(ビックケミー・ジャパン社製)、KAYAMERPM−2、KAYAMERPM−21(日本化薬社製)等の市販のリン酸エステルを適宜用いることができる。
【0060】
中でも好ましい有機リン化合物としては、例えば、下記式:
【0062】
(上記式中、p
1、p
2は、それぞれ1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30であり、より好ましくは4〜15である。またp
1+p
2は、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。)で表される化合物及びこれらと同じ置換基Aを有するリン酸ジエステルや、下記式:
【0064】
[上記式中、aは1又は2であり、Aが下記式で表される置換基群:
【0066】
(上記式中、p
1、p
2、p
5は、それぞれ1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30であり、より好ましくは4〜15である。またp
1+p
2+p
5は、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。r、r
2は1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜20である。R
4は前記に同じ。*はリン原子との結合部位を示す。)]より選択される少なくとも1つ以上の置換基を有するリン酸モノエステル又はリン酸ジエステル等の化合物や、下記式:
【0068】
[上記式中、aは1又は2であり、Aが下記式で表される置換基群:
【0070】
(上記式中、p
1は1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。)で表される化合物(例えば、下記式:
【0072】
(上記式中、p
1は1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜30である。)で表される化合物)や、下記式:
【0074】
で表される各種リン酸化合物又はリン酸エステルが例示できる。
【0075】
なお本発明では、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルなどのように構造が異なる2種以上の有機リン化合物又はその塩を、それぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0076】
2)本発明にて採用される有機硫黄化合物
本発明にて採用される有機硫黄化合物としては、下記式(2):
【0078】
[Bは下記式(b1)で表される置換基、又は、下記式(b1)で表される置換基に下記式(b2)で表される連結基の少なくとも1種を含む置換基を表す。なおBが下記式(b2)で表される連結基を有する場合には、下記式(b2)は酸素原子側で硫黄原子と結合する。
【0080】
(式中、R
5は、炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【0082】
(式中、R
6、R
7、R
8は炭素数1〜18の2価の炭化水素基、又は、炭素数6〜30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R
6、R
7、R
8を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。p、q、rはそれぞれ(b1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1〜200、p=1〜200、q=1〜200、r=1〜200である。)]で表される化合物が好ましく用いられる。
【0083】
式(b1)中、R
5は、R
1の欄で詳述した炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基と同様のものから選択できる。R
1と同様に、炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基の水素原子は、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基で置換されていてもよく、芳香族含有炭化水素基(アリール基など)の水素原子は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
中でもR
5としては、炭素数1〜50の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜50の直鎖又は分岐のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、もしくは炭素数6〜20の芳香族含有炭化水素基が好ましく、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜30の直鎖又は分岐のアルケニル基、もしくは炭素数6〜20の芳香族含有炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜25の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜25の直鎖又は分岐のアルケニル基、もしくは炭素数6〜10の芳香族含有炭化水素基が更に好ましい。特に好ましいR
5は、ビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)、置換されていてもよいフェニル基であり、より好ましくはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、下記式で例示される置換基である。
【0085】
また、p、q、rはそれぞれ(b1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+rは1〜100が好ましく、p=1〜50、q=1〜50、r=1〜50である。また、tは0が好ましい。またR
6、R
7、R
8については前記R
2、R
3、R
4とそれぞれ同じ構造が好ましい。
【0088】
(式中、p
1、p
2は前記に同じ)で示される連結基のいずれか、又は両方を含むことが分散性・入手性の関連から特に好ましい。p
1、p
2は、それぞれ1〜200が好ましく、より好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜30である。またp
1+p
2は、1〜200が好ましく、より好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜30である。
【0089】
このような有機硫黄化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、及び下記式で表される各種有機硫黄化合物等が挙げられる。
【0091】
(式中、p
1は前記に同じであり、Rは任意の置換基である。)
【0092】
有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物は、塩であってもよく、該塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;第四級アンモニウム塩;等が挙げられる。
【0093】
特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物は、屈折率の観点から多量に含まれないことが好ましく、例えば、分散体100質量%中、合計で0.01〜10質量%含まれていることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%であり、更に好ましくは0.7〜3質量%である。前記範囲を下回ると、貯蔵安定性やモノマー相溶性向上の効果が十分に発揮できない虞がある。
【0094】
また、特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物は、金属酸化物粒子100質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、光学用途においては、例えば、0.05〜20質量%加えられていることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、更に好ましくは1〜5質量%である。特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物が前記範囲内であれば、金属酸化物粒子を凝集させることなく、優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
【0095】
特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加するタイミングは特に限定されるものではないが、例えば、(i)乾燥した金属酸化物粒子、分散媒、並びに、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を全て仕込むことにより有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を添加する方法や、(ii)予め金属酸化物粒子を分散媒に分散させている液と、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を接触させることにより有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を添加する方法等が挙げられる。
【0096】
特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加する際の温度は特に限定されるものではなく、0〜80℃程度が好ましく、20〜60℃程度がより好ましい。また特定の化学構造を有する有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加する際の圧力も特に限定されず、0.9〜1.1atm程度の常圧下が好ましい。
【0097】
<金属酸化物粒子>
本発明における金属酸化物粒子は、市販品や表面無修飾のものでもよく、また用途に応じて表面を修飾することも可能である。金属酸化物粒子を形成する金属としては、例えばTi、Al、Zr、In、Zn、Sn、La、Y、Ce、Mg、Ba、Ca等が挙げられ、高屈折率の金属酸化物を提供できるという観点からはTi、Al、Zr、Zn、Sn及びCeよりなる群から選択される少なくとも1種(特にZr)が好ましい。金属酸化物としては、単一金属の酸化物であってもよいし、2種以上の酸化物の固溶体であってもよいし、或いは複合酸化物であってもよい。単一金属酸化物には、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化マグネシウム(MgO)が含まれる。2種以上の酸化物の固溶体としては、ITO、ATO等が挙げられる。複合酸化物は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO
3)、灰チタン石(CaTiO
3)、スピネル(MgAl
2O
4)等である。
【0098】
X線回折解析により算出される金属酸化物粒子の結晶子径は、20nm以下であることが好ましい。このようにすることによって、該金属酸化物粒子を含有する組成物の透明率を向上できる。該結晶子径は、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。該結晶子径の下限は、通常1nm程度である。
【0099】
また、金属酸化物粒子の結晶構造としては、例えば立方晶、正方晶、単斜晶などが挙げられる。特に結晶構造全体の50%以上が正方晶であることが好ましい。正方晶の割合が多いほど屈折率を向上できるため好ましい。単斜晶に対する正方晶の割合(正方晶/単斜晶)は、例えば、0.8以上であり、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。また正方晶単独とすることも可能である。
【0100】
金属酸化物粒子の形状としては球状、粒状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状等が挙げられる。溶媒への分散性等を考慮すると、前記形状としては、球状、粒状、柱状等が好ましい。
【0101】
表面が修飾された金属酸化物粒子(以下、被覆型金属酸化物粒子と称する場合がある)を採用する場合には、公知の方法により市販の金属酸化物粒子に各種表面修飾剤により表面修飾をすることが可能である。また後述する水熱合成によって被覆型金属酸化物粒子前駆体から被覆型金属酸化物粒子を合成することも可能である。
【0102】
市販の被覆型金属酸化物粒子を用い、各種表面修飾剤により表面修飾を行う場合には、有機酸、シランカップリング剤、界面活性剤、チタンカップリング剤が好ましく採用される。表面修飾剤に有機酸を採用する場合には後述の有機酸が好ましく採用され、有機酸は組成物の成分と表面修飾剤の両方の機能を達成することができ、好適な実施態様の一つである。また、シランカップリング剤を採用する場合については後述にて詳細に説明する。
【0103】
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が好適に用いられ、陰イオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸エステルスルフォン酸ナトリウム等の脂肪酸系、アルキルリン酸エステルナトリウム等のリン酸系、アルファオレインスルフォン酸ナトリウム等のオレフィン系、アルキル硫酸ナトリウム等のアルコール系、アルキルベンゼン系等が、陽イオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が、両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸系、フォスフォベタイン等のリン酸エステル系が、非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0104】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0105】
<有機酸>
本発明では、前述した金属酸化物粒子の分散性を高めるために、有機酸が含有される。好ましくは金属酸化物粒子の表面が有機酸で被覆された態様にて組成物中に含有される。有機酸としては、カルボキシル基を有するカルボン酸化合物が好ましく用いられる。カルボン酸化合物は金属酸化物粒子に化学結合するか、或いは水素原子やカチオン性原子と共にカルボン酸やその塩を形成して金属酸化物粒子に付着するため、本発明において「被覆」とは、カルボン酸化合物が金属酸化物に化学的に結合した状態、カルボン酸化合物が金属酸化物に物理的に付着した状態の両方を包含する。
【0106】
前記カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基(以下、特定置換基と称する場合がある)を有するカルボン酸、炭素数4〜20の直鎖状カルボン酸(直鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは直鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、分枝鎖状カルボン酸(分岐鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、環状カルボン酸(脂環式カルボン酸、好ましくは不飽和二重結合を有さない脂環式カルボン酸等)、又は芳香族カルボン酸等の1つ以上(好ましくは1つ)のカルボン酸基を有する炭化水素類が好ましく採用される。
【0107】
このようなカルボン酸化合物を具体的に例示すると、(メタ)アクリル酸類(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、3−アクリロイルオキシプロピオン酸等の(メタ)アクリロイロキシC
1-6アルキルカルボン酸等);C
3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロイロキシC
1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸等)、C
5-10脂環式ジカルボン酸の(メタ)アクリロイロキシC
1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等)、C
8-14芳香族ジカルボン酸の(メタ)アクリロイロキシC
1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸等)等のエステル基を有するカルボン酸;酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸;等が挙げられる。
【0108】
中でも、前記カルボン酸化合物としては、少なくとも、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基(以下、特定置換基と称する場合がある)を有するカルボン酸を用いることが好ましい(以下、(メタ)アクリル酸類、及び特定置換基を有するカルボン酸を総称して「第1のカルボン酸化合物」と称する場合がある。)
【0109】
本発明では、有機酸としてカルボン酸化合物を2種以上用いることがより好ましい態様である。特に、前述した第1のカルボン酸化合物に加え、直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸、環状カルボン酸、又は芳香族カルボン酸等の1つ以上(好ましくは1つ)のカルボン酸基を有する炭化水素類(これらを総称して「第2のカルボン酸化合物」と称する場合がある)を併用することが好ましい。すなわち、金属酸化物粒子が、第1のカルボン酸化合物と、第2のカルボン酸化合物の両方が含まれ、好ましくは金属酸化物粒子に被覆されていることが最良の実施態様である。
【0110】
金属酸化物粒子および有機酸で被覆された金属酸化物粒子の製造方法については後述するが、例えば、金属酸化物粒子の分散液に各カルボン酸化合物を添加してもよいが、好ましくは第1のカルボン酸化合物で被覆する前に、第2のカルボン酸化合物で金属酸化物粒子を被覆しておき、次いで第1のカルボン酸化合物と反応させる方法が挙げられる。この方法では、第2のカルボン酸化合物の一部が前記第1のカルボン酸化合物に置換されるため、第1及び第2のカルボン酸化合物で被覆された金属酸化物粒子が得られる。このような方法で得られた被覆型金属酸化物粒子は、各種媒体への分散性が極めて良好なものとなり、様々な用途への応用が可能となる。特にレジストに代表される精密微細構造を形成する用途には際立って有用であり、分散ムラや現像残渣の改善が可能となる等の効果が期待できる。
【0111】
第1のカルボン酸化合物は、(メタ)アクリル酸であるか、又は特定置換基を1種以上有していればよく、同種もしくは異種の特定置換基を複数有してもよく、さらに特定置換基以外の置換基を有してもよい。特定置換基は、エステル基、エーテル基、アミド基が入手性の観点から好ましく、更に好ましくはエステル基、エーテル基である。1分子中に特定置換基は1つ以上有していればよく、上限は特に限定されないが、被覆型金属酸化物粒子製造の際のハンドリングから20個以下が好ましい。より好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下である。
【0112】
第1のカルボン酸化合物は市販品を用いてもよいし、公知の合成方法により合成することも可能である。たとえば、各種アルコール化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりエステル化合物(ハーフエステル化合物等)を得る方法、エポキシ化合物又はグリジシル化合物と二塩基酸の反応によりエステル化合物(ハーフエステル化合物等)を得る方法、アミン化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりアミド化合物を得る方法、チオール化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりチオエステル化合物を得る方法等が代表的に例示できる。
【0113】
第1のカルボン酸化合物のカルボキシル基のα炭素は2級炭素、3級炭素、4級炭素、又は芳香族炭素の何れであってもよい。また第1のカルボン酸化合物のカルボキシル基は1つでも複数でもよいが、被覆型金属酸化物粒子製造の際に粒子間架橋が起こるのを回避するためには、3つ以下が好ましく、2つがより好ましく、1つであることが最も好ましい。
【0114】
このような第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物との交換容易性の観点から、第1のカルボン酸化合物のpKa(pKa
1)と第2のカルボン酸化合物のpKa(pKa
2)との差(pKa
1−pKa
2)は、好ましくは−0.1以下、より好ましくは−0.2以下、更に好ましくは−0.3以下である。第1のカルボン酸化合物のpKaは、具体的には、4.8以下が好ましく、4.7以下がより好ましく、更に好ましくは4.6以下である。第1のカルボン酸化合物のpKaの下限は特に限定されないが、例えば、2.0程度、特に3.0程度であってもよい。また第2のカルボン酸化合物のpKaは、例えば、4.0〜6.0程度、好ましくは4.2〜5.5程度、さらに好ましくは4.5〜5.0程度である。カルボン酸化合物のpKaは計算化学ソフトACD/pKa version10.01(Advanced Chemistry Development. Inc社製)により算出される値を採用できる。
【0115】
またカルボン酸化合物は重合性二重結合(特に重合性炭素−炭素二重結合)を有することが好ましい。金属酸化物粒子が有機酸で被覆されている場合には金属酸化物粒子表面に重合性二重結合を有することにより、他の配合成分と共重合が可能となるため硬化時の凝集やブリードアウトといった問題を生じることなく、硬化物においても良好な分散状態を維持することが可能である。なお、重合性二重結合は第1のカルボン酸化合物で有してもよく、第2のカルボン酸化合物で有してもよい。第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の両方が重合性二重結合を有してもよいが、好ましくは第1のカルボン酸化合物が重合性二重結合を有し、第2のカルボン酸化合物が重合性二重結合を有さない態様である。また第1又は第2のカルボン酸化合物を2種以上用いる場合には、それらのうち少なくとも1種で重合性二重結合を有すればよい。
【0116】
中でも、第1のカルボン酸化合物としては、アクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸が好ましく用いられ、特に好ましくは2−アクリロイロキシエチルコハク酸である。また、第2のカルボン酸化合物としては、分枝鎖状カルボン酸が好適であり、特に2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸が好ましく用いられる。分枝鎖状カルボン酸とすることによって、金属酸化物粒子の凝集を効率的に抑制することが可能となる。
【0117】
前記第1のカルボン酸化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1のカルボン酸化合物の割合は、金属酸化物粒子100質量部に対して、第1のカルボン酸化合物が0.1質量部以上であることが好ましい。このようにすることによって、製造時又は製品中での金属酸化物粒子の溶媒等への分散性を向上できる。第1のカルボン酸化合物の量は、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。添加量が多いと、単位体積当たりに含有される金属酸化物粒子の量が少なくなるため、好ましくない。そこで第1のカルボン酸化合物の量は、通常30質量部以下であり、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下である。さらには、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、特に好ましくは15質量部以上であってもよい。
【0118】
前記第2のカルボン酸化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。金属酸化物粒子と第2のカルボン酸化合物の割合は、金属酸化物粒子100質量部に対して、第2のカルボン酸化合物が0.1質量部以上であることが好ましい。このようにすることによって、製造時又は製品中での金属酸化物粒子の溶媒等への分散性を向上できる。第2のカルボン酸化合物の量は、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。添加量が多いと、単位体積当たりに含有される金属酸化物粒子の量が少なくなるため、好ましくない。そこで第2のカルボン酸化合物の量は、通常30質量部以下であり、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下である。さらには、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下であってもよい。
【0119】
金属酸化物粒子に、第1のカルボン酸化合物と、第2のカルボン酸化合物の両方を添加するとき、第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の添加量の質量比は、第1のカルボン酸化合物/第2のカルボン酸化合物として、1/99〜99/1が好ましく、より好ましくは50/50〜99/1、さらに好ましくは60/40〜97/3、特に好ましくは65/35〜90/10であってもよい。このような範囲に添加量を調整することにより、親水性・疎水性等多種の媒体との親和性が向上し、分散性が向上する。
【0120】
またカルボン酸化合物の添加量は、添加後の金属酸化物粒子組成物100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上であり、また40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。さらには、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であってもよい。なお、金属酸化物粒子を、第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の両方を添加するときは、カルボン酸化合物の添加量は、前記第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の合計添加量として読み替えるものとする。
【0121】
<被覆型金属酸化物粒子>
次に、特に好ましい実施態様である被覆型金属酸化物粒子を採用した場合について説明する。本発明で用いる被覆型金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面が有機酸等により被覆されているため、媒体に分散しやすい性質を有している。
以下、本発明の被覆型金属酸化物粒子の代表的な製造方法について説明するが、各工程は適宜変更しても構わない。なお、以下では金属酸化物粒子が第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の両方で被覆されている被覆型金属酸化物粒子の製造方法について詳述するが、被覆型金属酸化物粒子が第2のカルボン酸化合物でのみ被覆されている場合は、下記の第2のカルボン酸化合物で被覆された粒子(被覆型金属酸化物粒子前駆体)を調製する工程のみを実施すればよい。また第1のカルボン酸化合物でのみ被覆されている場合は、第2のカルボン酸化合物を用いない以外は下記と同じ製造方法を実施するか、第2のカルボン酸化合物の第1のカルボン酸化合物による下記の置換を第2のカルボン酸化合物が無くなるまで実施すればよい。
【0122】
被覆型金属酸化物粒子前駆体は、まず初めに第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型金属酸化物粒子前駆体を調製し、次いでこの被覆型金属酸化物粒子前駆体の表面を被覆する第2のカルボン酸化合物を、第1のカルボン酸化合物で置換することで製造できる。
【0123】
まず、被覆型金属酸化物粒子前駆体の調製について説明する。被覆型金属酸化物粒子前駆体は、水存在下、金属成分と第2のカルボン酸化合物とを水熱合成を行なうことで得られる。
【0124】
前記金属成分は、水熱反応により金属酸化物を生成する化合物に含まれている限り特に限定されない。金属成分を含む化合物としては、種々の金属酸化物粒子前駆体が挙げられ、例えば各種金属の水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、アルコキシド等が含まれ、さらには各種金属と第2のカルボン酸化合物の塩であってもよい。例えばジルコニウムでの例では、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニル、オキシ酢酸ジルコニル、オキシ硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オレイン酸酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸酸化ジルコニウム、ラウリン酸酸化ジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキサイド等が挙げられる。また、チタンでの例では、水酸化チタン、塩化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ酢酸チタン、オキシ硝酸チタン、硫酸チタン、オクタン酸チタン、オレイン酸酸化チタン、酢酸チタン、ステアリン酸酸化チタン、ラウリン酸酸化チタン、テトラブトキシチタン(例えば、テトラ−n−ブトキシチタン)等のチタンアルコキサイド等を用いる場合に好適な方法である。
【0125】
金属酸化物粒子前駆体を形成する金属は、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、Ti、Zrを含むことがより好ましく、Zrが更に好ましい。
【0126】
前記第2のカルボン酸化合物は直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸、環状カルボン酸、芳香族カルボン酸が挙げられるが特に限定されない。例えばヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸;2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸、ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸などの分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸などを挙げることができる。
【0127】
本発明では、金属成分と第2のカルボン酸化合物とを水熱反応することによって第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型金属酸化物粒子前駆体を製造することができるが、
(i)第2のカルボン酸化合物と金属酸化物粒子前駆体との塩
(ii)第2のカルボン酸化合物の金属塩、および
(iii)第2のカルボン酸化合物及び金属酸化物粒子前駆体
から選ばれる少なくとも1種以上を水熱反応することが好ましい。
【0128】
以下、前記金属酸化物粒子前駆体として、各種金属のオキシ塩化物等の塩化物やオキシ硝酸物等の硝酸塩等の、水溶性で腐食性の高い金属酸化物粒子前駆体を原料として用いるときに好適である前記(i)の場合について、詳述する。
尚、塩とは、カルボン酸と金属酸化物粒子前駆体との量論比で構成される単種類の化合物だけでなく、複合塩や、未反応のカルボン酸又は金属酸化物粒子前駆体が存在する組成物であってもよい。
【0129】
前記(i)において、第2のカルボン酸化合物と金属酸化物粒子前駆体との塩とは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属により中和度が0.1〜0.8の範囲に中和された第2のカルボン酸化合物由来のカルボン酸塩含有組成物と金属酸化物粒子前駆体とを反応させて得られた、第2のカルボン酸化合物と金属との塩であることが好ましい。
【0130】
前記中和度は0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.7がより好ましい。0.1未満では第2のカルボン酸化合物の溶解性が低いために前記塩が十分に形成できないことがあり、また0.8を超えると金属の水酸化物と推測される多量の白色沈殿が生成して被覆型金属酸化物粒子の収率が低下する場合がある。前記カルボン酸塩含有組成物を得るために用いるアルカリ金属及びアルカリ土類金属はいずれであってもよいが、水溶性の高いカルボン酸塩を形成する金属が好ましく、アルカリ金属、特にナトリウム及びカリウムが好適である。
【0131】
前記カルボン酸塩含有組成物と前記金属酸化物粒子前駆体との割合は、金属酸化物粒子前駆体1モルに対してカルボキシル基が1モル〜20モルであることが好ましく、1.2〜18モルがより好ましく、1.5〜15モルがさらに好ましい。
前記カルボン酸塩含有組成物と前記金属酸化物粒子前駆体とを反応させるには、水溶液同士を混合させるのが好ましい。反応温度は水溶液を保持できる温度であれば特に問わないが、室温から100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
【0132】
前記カルボン酸塩含有組成物と前記金属酸化物粒子前駆体とを反応させて得られた前記塩は、そのまま水熱反応に供しても良いが、不溶性の副生物を濾過等により取り除いておくのが好ましい。
【0133】
次に(ii)の場合について、詳細に説明する。
(ii)の実施形態では、事前に調製した第2のカルボン酸化合物の金属塩を用いるものである。上記の様な煩雑な工程を経ることなく、水熱反応に供することが出来る利点がある。但し、容易に入手できる化合物が限られているため、目的とする有機基で被覆された金属酸化物粒子が得られないことがある。金属は特に限定されないが、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0134】
(ii)の実施形態で用いることが出来る金属塩としては、2−エチルヘキサン酸チタン、3,3−ジメチル酪酸チタン、オクタン酸チタン、オレイン酸酸化チタン、ステアリン酸酸化チタン、ラウリン酸酸化チタン、オクタン酸アルミニウム、オクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オレイン酸酸化ジルコニウム、ステアリン酸酸化ジルコニウム、ラウリン酸酸化ジルコニウム、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、オクタン酸セリウム等を例示することが出来る。
金属塩の純度が低い場合には、精製を施してから用いることもあるが、市販品又は事前に調製した塩をそのまま水熱反応に供することが出来る。
【0135】
次に前記(iii)の場合について、詳細に説明する。
前記(iii)では、前記金属酸化物粒子前駆体として、例えば各種金属の水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、アルコキシド等が挙げられる。例えばジルコニウムでの例では、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニル、オキシ酢酸ジルコニル、オキシ硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、オレイン酸酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸酸化ジルコニウム、ラウリン酸酸化ジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキサイド等を用いる場合に好適な方法である。また、チタンでの例では、水酸化チタン、塩化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ酢酸チタン、オキシ硝酸チタン、硫酸チタン、オクタン酸チタン、オレイン酸酸化チタン、酢酸チタン、ステアリン酸酸化チタン、ラウリン酸酸化チタン、テトラブトキシチタン(例えば、テトラ−n−ブトキシチタン)等のチタンアルコキサイド等を用いる場合に好適な方法である。
前記第2のカルボン酸化合物については、前記(i)と同じである。
【0136】
前記金属酸化物粒子前駆体と前記第2のカルボン酸化合物とを、好ましくは水存在下で混合する。この時に、加熱や減圧下で行うことにより、アンモニアや酢酸等の前記金属酸化物粒子前駆体に含まれる低沸点の化合物を系外へ追い出しておくと、次工程の水熱反応での圧上昇が抑えられるので、好適である。尚、後述の有機溶媒を添加した溶液中で前記反応を行ってもよい。
【0137】
続いて、水熱反応について説明する。
前記(i)〜(iii)のいずれかを水熱反応に供することで金属酸化物粒子組成物が得られる。前記(i)〜(iii)だけでは、粘度が高く水熱反応が効率的に進行しない場合には、該(i)〜(iii)に対して良好な溶解性を示す有機溶媒を添加すると良い。
【0138】
前記有機溶媒としては、炭化水素、ケトン、エーテル、アルコール等を用いることが出来る。水熱反応時に気化する溶媒では十分に反応が進行しない恐れがあるので、常圧下での沸点が120℃以上の有機溶媒が好ましく、180℃以上がより好ましく、210℃以上が更に好ましい。具体的には、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、メタントリメチロール、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が例示され、ドデカン、テトラデカンが好ましい。
【0139】
前記有機溶媒を添加したことにより2層に分離した場合には、界面活性剤等を添加して均一相状態や懸濁乳化状態にしてもよいが、通常は2層のまま水熱反応に供することが出来る。
前記組成物は原料に由来する十分な量の水を含有している場合もあるが、原料中に含まれる水分が無い又は少ない場合には、水熱反応に供する前に水分を添加しておく必要がある。
【0140】
水熱反応の系内に存在する水分量は、系内に存在する金属酸化物粒子前駆体のモル数に対する水のモル数(水のモル数/金属酸化物粒子前駆体のモル数)で4/1〜100/1が好ましく、8/1〜50/1がより好ましい。4/1未満では水熱反応に長時間を要したり、得られた前記ナノ粒子の粒径が大きくなったりすることがある。一方、100/1超では、系内に存在する金属酸化物粒子前駆体が少ないため生産性が低下する以外は特に問題は無い。
【0141】
水熱反応は、2MPaG以下の圧力で行うのが好ましい。2MPaG以上でも反応は進行するが、反応装置が高価になるため工業的には好ましくない。一方、圧力が低すぎると反応の進行が遅くなり、また長時間の反応により前記ナノ粒子の粒径が大きくなったり、金属酸化物が複数の結晶系を持ったりすることがある為、0.1MPaG以上の圧力下で行うのが好ましく、0.2MPaG以上で行うのがより好ましい。
【0142】
反応温度は反応容器内の圧力が適正な範囲に保たれるように調整するのが好ましいが、前記組成物中に含まれる水の飽和蒸気圧を考慮すると、200℃以下で行うのが好ましく、180℃以下がより好ましい。反応温度が低いと反応に長時間を要することがあるので、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0143】
反応容器の空間部を窒素などの不活性ガスで置換すると、前記有機カルボン酸や添加した有機溶媒の酸化等による副反応が抑制されるので好ましい。尚、加熱前に加圧状態にすると、十分な反応温度に到達する前に高圧になってしまうので、加熱前に常圧以上に加圧するのは好ましくない。
【0144】
反応時間は、反応温度や圧力と収率の関係から適切値を定めればよく、通常は0.1〜50時間であり、1〜20時間がより好ましい。50時間を超えて加熱しても収率の向上は少なく、前記金属酸化物粒子の粒径が大きくなったり、含有されている金属酸化物が複数の結晶系を持つ場合がある。
【0145】
前記水熱反応により、通常、第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型金属酸化物粒子前駆体が容器下部に沈殿生成する。被覆型金属酸化物粒子前駆体は水熱反応で生成したカーボンなどの副生物や被覆型金属酸化物粒子前駆体の凝集体等を除去するための精製を施すことが出来る。例えば、沈殿生成物をろ別した後、トルエン等の溶媒に溶解させて、不溶物をろ別してから減圧濃縮などによりトルエン等の溶媒を除去することで被覆型金属酸化物粒子前駆体が得られる。
【0146】
前記水熱反応時には塩基性化合物を用いることが好ましい。塩基性化合物は水に溶解させた時に塩基性を示すものであれば良く、ブレンステッド塩基やルイス塩基等形態は特に問わず、無機化合物、有機化合物いずれでも良い。中でも、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び1級から3級のアミンから選ばれる少なくとも1種以上の塩基性化合物であることが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、カルボン酸のアルカリ金属塩、有機アミン化合物がより好ましく、特にアルカリ金属の水酸化物、有機アミン化合物が好ましい。塩基性化合物が存在することによって、生成する被覆型金属酸化物粒子前駆体の収率が向上する。さらに、広範な種類のカルボン酸を原料として利用可能となり、従来方法では製造が難しかった種類の有機基で被覆された被覆型金属酸化物粒子前駆体が得られる。
前記塩基性化合物の量は、該工程で用いられる金属酸化物粒子前駆体1モルに対して0.03モル以上1.5モル以下であることが好ましい。前記範囲の塩基性化合物を添加することで、被覆型金属酸化物粒子前駆体の収率がより向上する。
【0147】
次に、被覆型金属酸化物粒子前駆体の置換工程について説明する。前記水熱反応で得られた被覆型金属酸化物粒子前駆体の第2のカルボン酸化合物を第1のカルボン酸化合物で置換することによって本発明の被覆型金属酸化物粒子が得られる。この置換は、具体的には、被覆型金属酸化物粒子前駆体と第1のカルボン酸化合物とを含む混合物(特に混合液)を撹拌することによって行う。第1のカルボン酸化合物と被覆型金属酸化物粒子前駆体の質量比は特に制限されないが、第1のカルボン酸化合物/被覆型金属酸化物粒子前駆体として、5/100〜200/100が好ましい。5/100より少ない場合には第1のカルボン酸化合物の導入量が不十分となり、分散性が不十分となる恐れがあり、200/100よりも多い場合には被覆型金属酸化物粒子への導入量が飽和してしまい非効率となる恐れがある。より好ましくは10/100〜150/100である。
【0148】
前記混合液の調製に使用する溶媒は前記水熱反応時の溶媒をそのまま用いても良く、他の溶媒を用いてもよい。溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の変性エーテル類(好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性エーテル類、さらに好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性アルキレングリコール類);ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等の油類を挙げることができる。この様な溶媒中で被覆型金属酸化物粒子を調製すると、得られる被覆型金属酸化物粒子は、組成物中での親和性がより向上し、分散ムラをより高度に防止できる。
【0149】
撹拌温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、更に好ましくは20〜50℃であり、混合液中の被覆型金属酸化物粒子前駆体の濃度は5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。またボールミル等を用いて無溶媒やより高濃度での処理も可能である。反応時間は10分〜5時間が好ましく、より好ましくは20分〜2時間である。
【0150】
溶媒中で被覆型金属酸化物粒子を調製する場合、被覆型金属酸化物粒子は、溶媒中に溶解していることが好ましい。この場合、適当な貧溶媒(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒)を加えることで、被覆型金属酸化物粒子を析出させてもよい。析出物は適当な固液分離法(濾過法、遠心分離法など)によって溶媒と分離できる。一方、被覆型金属酸化物粒子が溶媒に溶解している場合も、濃縮などによって溶媒と分離できる。
【0151】
上記方法により得られた本発明の被覆型金属酸化物粒子は洗浄することが好ましい。洗浄することにより副生成物や未反応の第1のカルボン酸化合物や置換された第2のカルボン酸化合物が組成物中から除去され、後記の各種用途に用いたときに悪影響を及ぼすことがなくなる。洗浄溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。
【0152】
<シランカップリング剤処理>
また本発明者らが検討したところによると、金属酸化物粒子が、シランカップリング剤で表面処理されていると、初期透過率をさらに改善できるだけでなく、透過率の維持期間をさらに長くできる。そのため、本発明では、金属酸化物粒子が、シランカップリング剤で表面処理されていることがより好ましい態様である。
【0153】
このようなシランカップリング剤としては、加水分解性基−Si−OR
9(なお、R
9はメチル基又はエチル基)を有する化合物が好ましい。このようなシランカップリング剤としては、官能基を有するシランカップリング剤や、アルコキシシラン等が例示できる。
【0154】
官能基を有するシランカップリング剤としては、下記式(3):
[X−(CH
2)
m]
4-n−Si−(OR
9)
n …(3)
(式中、Xは官能基、R
9は前記に同じ、mは0〜4の整数、nは1〜3の整数を表す。)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0155】
Xとしては、ビニル基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基等が挙げられる。シランカップリング剤を具体的に例示すると、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の官能基Xがビニル基であるシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン等の官能基Xがアミノ基であるシランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の官能基Xが(メタ)アクリロキシ基であるシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の官能基Xがメルカプト基であるシランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の官能基Xがグリシドキシ基であるシランカップリング剤;等が挙げられる。
【0156】
また、アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキル基がアルコキシシランのケイ素原子に直接結合しているアルキル基含有アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等の芳香環がアルコキシシランのケイ素原子に直接結合しているアリール基含有アルコキシシラン;等が挙げられる。
【0157】
シランカップリング剤としては、中でも官能基Xが(メタ)アクリロキシ基であるシランカップリング剤及びアルキル基含有アルコキシシランが好ましく、特に好ましくは、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランである。
【0158】
前記シランカップリング剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の量(被覆量)は、金属酸化物粒子全体100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、更に好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは4質量部以上である。なおシランカップリング剤の量が多いと、コスト上昇とともに、金属酸化物が酸化ジルコニウムの場合、金属酸化物粒子の屈折率を下げてしまうため、シランカップリング剤の量は、金属酸化物粒子100質量部に対して、通常30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは12質量部以下である。
【0159】
またシランカップリング剤で金属酸化物粒子を被覆するとき、前述した有機酸との質量比は、シランカップリング剤/有機酸(2種以上の有機酸で被覆するときは、その合計量)が、0.1〜2.0が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5であり、更に好ましくは0.3〜0.95である。シランカップリング剤の量が前記範囲内であれば、金属酸化物粒子の分散性向上効果が十分に発揮される。
【0160】
また、金属酸化物粒子を、有機酸とシランカップリング剤の両方で被覆するとき、シランカップリング剤による被覆を実施するタイミングは特に限定されるものではないが、例えば前記水熱反応で得られた被覆型金属酸化物粒子前駆体と、シランカップリング剤とを混合し、得られた混合物を65〜100℃の条件で0.5〜2h程度反応させて得られた分散液を、置換工程の原料となる「被覆型金属酸化物粒子前駆体と第1のカルボン酸化合物とを含む混合物(混合液)」として用いるとよい。
【0161】
前述した被覆成分(場合により有機酸、必要によりシランカップリング剤)で被覆された被覆型金属酸化物粒子の粒子径は、各種電子顕微鏡観察から得られた画像を処理することによって、得られる平均粒子径によって評価することができる。該平均粒子径(平均一次粒子径)は、50nm以下が好ましい。このようにすることによって、被覆型金属酸化物粒子を含有する組成物の透明率を向上できる。平均一次粒子径は、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは20nm以下である。平均一次粒子径の下限は、通常1nm程度(特に5nm程度)である。前記平均粒子径は、金属酸化物粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等で拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その算術平均を求めることで決定できる。
【0162】
金属酸化物粒子の濃度は特に限定されるものではないが、通常、分散体100質量%中20〜90質量%であり、分散体の有用性及び粒子の分散性を考慮すると、50〜80質量%が好ましい。
【0163】
<分散体>
本発明の分散体で用いる溶媒は、本発明の被覆型金属酸化物粒子が高い分散性を示すものを用いればよい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル等の変性エーテル類(好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性エーテル類、さらに好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性アルキレングリコール類);ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等の油類を挙げることができる。これらのうち1種を選択して使用することもできるし、2種以上を選択し混合して用いることもできる。取扱性の面から、常圧での沸点が40℃以上、250℃以下程度の溶媒が好適である。後述するレジスト用途では、ケトン類、変性エーテル類等が好適であり、より好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチルであり、更に好ましくはメチルエチルケトン又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0164】
本発明の分散体では、モノマー(単官能単量体及び/又は架橋性単量体)との相溶性が高いため、モノマーを分散媒とすることもできる。
【0165】
単官能単量体は、重合可能な炭素−炭素二重結合を1つだけ有する化合物であればよく、(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体等が挙げられる。上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アラルキル;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これら例示の単官能単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0166】
架橋性単量体は、単官能単量体が有する炭素−炭素二重結合と共重合可能な炭素−炭素二重結合を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のネオペンチルグリコールポリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等の多官能スチレン系単量体;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリルエステル系単量体、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また本発明の分散体は、ポリマー(樹脂)を含む樹脂組成物であってもよく、ポリマーとモノマーを両方含むものであっても良い。
本発明によって樹脂組成物を構成する場合、分散媒であるポリマーは例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド類;ポリイミド類;ポリウレタン類;ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィン類;PET、PBT、PENなどのポリエステル類;ポリ塩化ビニル類;ポリ塩化ビニリデン類;ポリ酢酸ビニル類;ポリスチレン類;(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ABS樹脂;フッ素樹脂;フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂などのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂などを挙げることができる。また、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系樹脂などの軟質樹脂や硬質樹脂、なども挙げられる。上記した中で、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、(メタ)アクリル樹脂系ポリマー、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂がより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0167】
また、本発明に係る分散体には、本発明の効果を損なわない範囲において、被覆型金属酸化物粒子、特定の有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物以外の、他に添加成分が配合されてもよい。かかる添加成分としては、例えば、界面活性剤、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、内部離型剤、カップリング剤、反応性希釈剤、可塑剤、安定化剤、難燃助剤、架橋剤、低収縮剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、揺変化剤、増粘剤等を挙げることができる。これらの添加成分は、被覆型金属酸化物粒子、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物、及び分散媒の合計100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、更に好ましくは0〜3質量部である。
【0168】
<好ましい用途>
本発明の被覆型金属酸化物粒子を含む分散体は、その顕著な分散性・保存安定性から、分散体を成型又は硬化した物品等に代表される各種用途への展開が可能となる。高分散性を要する用途としては、例えば、レジスト用途、光学用途、塗布用途、接着用途が挙げられ、光学レンズ、光学フィルム用粘着剤、光学フィルム用接着剤、ナノインプリント用樹脂組成物、マイクロレンズアレイ、透明電極に使用する反射防止層、反射防止フィルムや反射防止剤、光学レンズの表面コート、有機EL光取り出し層、各種ハードコート材、TFT用平坦化膜、カラーフィルター用オーバーコート、反射防止フィルム等の各種保護膜および、光学フィルター、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、カラーフィルター用フォトスペーサー、タッチパネル用保護膜等の光学材料に好適に用いられる。特に本発明の被覆型金属酸化物粒子は顕著な分散性に加え、高屈折率、高硬度、高安定性を有するため、光学レンズ、光学レンズの表面コート、各種ハードコート材、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、タッチパネル用保護膜に使用することが好ましい。
【0169】
さらに本発明の被覆型金属酸化物粒子は光学用途以外に、その高い誘電率を生かして半導体のゲート絶縁膜やDRAM等のメモリー用キャパシタ絶縁膜への適用が可能である。このような高誘電率な絶縁膜を得る方法として、有機金属前駆体を用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法等の気相成長法で蒸着後、酸化処理する方法が知られている。所望の高誘電率の金属酸化物を得るには600℃以上の高温処理を必要とするが、その影響により、ピニング現象を始めとする半導体層の動作不安定化をもたらす現象が生じる。本発明の被覆型金属酸化物粒子は高温処理が不要で、生成時点ですでに高い誘電率を有し、数nmの単一粒子であることから今後の半導体微細化に対応できる積層化が可能であると同時に、高温処理不要なことからプラスチック基板上での半導体製造への適用も可能である。
【0170】
本願は、2014年1月24日に出願された日本国特許出願第2014−011636号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年1月24日に出願された日本国特許出願第2014−011636号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0171】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0172】
実施例で開示される物性及び特性は、以下の方法により測定した。
【0173】
(1)結晶構造の解析
酸化ジルコニウム粒子の結晶構造は、X線回折装置(リガク社製、RINT−TTRIII)を用いて解析した。測定条件は以下の通りである。
X線源:CuKα(0.154nm)
X線出力設定:50kV、300mA
サンプリング幅:0.0200°
スキャンスピード:10.0000°/min
測定範囲:10〜75°
測定温度:25℃
【0174】
(2)正方晶、単斜晶の割合の定量
X線回折装置(リガク社製、RINT−TTRIII)を用いて算出される値を元に、計算ソフト(リガク社製、PDXL)を用いて参照強度比法(RIP法)により定量した(ピークの帰属も計算ソフトの指定に従った)。
【0175】
(3)X線回折解析による結晶子径算出
酸化ジルコニウム粒子の結晶子径は、X線回折装置(リガク社製、RINT−TTRIII)によって解析及び算出される30°のピークの半値幅を元に、計算ソフト(リガク社製、PDXL)を用いて算出した。
【0176】
(4)電子顕微鏡による平均一次粒子径の測定
被覆型酸化ジルコニウム粒子の平均一次粒子径は、超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)で観察することによって測定した。倍率15万倍で被覆型酸化ジルコニウム粒子を観察し、任意の100個の粒子について、各粒子の長軸方向の長さを測定し、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0177】
(5)重量(質量)減少率の測定
TG−DTA(熱重量−示差熱分析)装置により、空気雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分で被覆型酸化ジルコニウム粒子を昇温し、該粒子の重量(質量)減少率を測定した。この重量(質量)減少率により、金属酸化物粒子を被覆しているカルボキシレート化合物の割合、及び金属酸化物の割合を知ることができる。
【0178】
(6)
1H−NMRの測定
被覆酸化ジルコニウム粒子を重クロロホルムに分散させて測定試料とし、Variann社製「Unity Plus」(共鳴周波数:400MHz、積算回数:16回)を用いて測定した。下記の化学シフト(テトラメチルシラン基準)のピークの積分比に基づき、各化合物のモル比を決定した。
i)2−エチルヘキサン酸(1.0−0.5ppm:6H)
ii)2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレート(1.0−0.5ppm:6H)
iii)2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(6.7−5.7ppm:3H、4.5−4.0ppm:4H)
iv)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(6.5−5.5ppm:2H、4.5−4.0ppm:2H、4.0−3.5ppm:9H、1.0−0.5ppm:2H)
【0179】
(7)蛍光X線分析
蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII リガク社製)を用いて、被覆型酸化ジルコニウム粒子中のZr含有量、Si含有量を測定した。
【0180】
(8)透明性評価
膜厚100ミクロンのPETフィルム(商品名:コスモシャインAS4300、東洋紡社製)上に、後で詳述する組成物をバーコーター#20で塗工を行い、80℃×5分乾燥後、高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の紫外線を照射することにより硬化させ、硬化物を得た(乾燥膜厚:5ミクロン)。作製した硬化物の、厚み方向のヘイズを濁度計(日本電色工業社製 NDH5000)を用いて測定した。
○:1%以下、△:1%〜50%、×:50%以上
【0181】
(9)貯蔵安定性評価
後で詳述する分散液の40℃での透過率の経時変化について濁度計(日本電色工業社製 NDH5000)を用いて測定した。なお、貯蔵安定性の評価項目として、以下の指標を用いた。
「初期透過率」とは、分散液調製直後の透過率(初期値)に関する評価項目である。
◎:初期値が60%以上、○初期値が50%以上60%未満
「透過率維持率」とは、分散液を経時変化させたときの、分散液の透過率変化を示す指標である。分散液調製直後の透過率(初期値)をL
0、分散液を調製して2週間後の透過率をL
2weekとしたとき、透過率維持率は以下の計算式で求められる。
透過率維持率(%)={(L
0−L
2week)/L
0}×100
◎:透過率維持率が5%以下、○:透過率維持率が5%超え、△:1週間後にはゲル化していないが2週間後にゲル化している、×:1週間後にゲル化している
【0182】
製造例1
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートで被覆された被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子)の製造
2−エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(782g、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一希元素化学工業社製)に純水(268g)を混合した。得られた混合液を、攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、混合液を180℃まで加熱し、該温度で16時間保持(オートクレーブ内圧力は0.94MPa)して反応させ、酸化ジルコニウム粒子を生成した。続いて、反応後の混合液を取り出し、底部に溜まった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に、乾燥した。乾燥後の前記沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。さらに、濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO
2粒子)を回収した。
【0183】
得られた被覆型ZrO
2粒子の結晶構造を確認したところ、正方晶と単斜晶に帰属される回折線が検出され、回折線の強度から、正方晶と単斜晶の割合は54/46で、その粒子径(結晶子径)は5nmであった。
【0184】
電子顕微鏡により測定して得られた被覆型ZrO
2粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、12nmであった。また、得られた被覆型ZrO
2粒子を、赤外吸収スペクトルによって分析したところ、C−H由来の吸収と、COOH由来の吸収が確認できた。当該吸収は、被覆型酸化ジルコニウム粒子に被覆されている2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに起因するものと考えられる。
【0185】
さらに上記した「(5)質量減少率の測定」に従って測定した被覆型ZrO
2粒子の質量減少率は、12質量%だった。従って、被覆型酸化ジルコニウム粒子を被覆する2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートは、被覆型酸化ジルコニウム粒子全体の12質量%であることが分かった。
【0186】
製造例2
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子1)の製造
製造例1にて得られた被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)と2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(1.5g)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(12g、以下「PGMEA」と称する)中で均一分散するまで撹拌混合した。次いで、n−ヘキサン(36g)を添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させ、白濁液から凝集粒子を濾紙により分離した。その後、分離した凝集粒子をn−ヘキサン(36g)中に添加、10分撹拌後、凝集粒子を濾紙により分離し、得られた粒子を室温で真空乾燥することで、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO
2粒子1)を調製した。
得られた被覆型ZrO
2粒子1を重クロロホルムに分散させて測定試料とし、
1H−NMRによる分析を行なった。その結果、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートの存在モル比率が24:76であることがわかった。
【0187】
さらに上記した「(5)質量減少率の測定」に従って測定した被覆型ZrO
2粒子1の質量減少率は、18質量%だった。従って、被覆型酸化ジルコニウム粒子を被覆する2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレート、及び2−アクリロイルオキシエチルサクシネートは、被覆型酸化ジルコニウム粒子全体の18質量%であることが分かった。
【0188】
実施例1
製造例2で得られた被覆型ZrO
2粒子1(7g)、メチルエチルケトン(3g)、DISPERBYK−111(ビッグケミー・ジャパン社製、0.14g)を配合し、均一撹拌することで、無機酸化物微粒子含有溶液を得た。
【0189】
比較例1
製造例2で得られた被覆型ZrO
2粒子1(7g)、メチルエチルケトン(3g)を配合し、均一撹拌することで、比較無機酸化物微粒子含有溶液を得た。
【0190】
製造例3
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子2)の製造
上記製造例1で得られた被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)を、メチルイソブチルケトン(40g)に分散させて白濁スラリーを調製した。当該溶液に表面処理剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(2.0g、信越化学工業社製、KBM−503)、水(0.9g)を添加し、80℃で1時間加熱還流することで透明分散溶液を得た。次いで、50℃まで降温し、その後2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(1.8g)を添加して30分撹拌混合した。次いでn−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で加熱乾燥し、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO
2粒子2)を調製した。
得られた被覆型ZrO
2粒子2のTG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、17質量%の減少率となった。このことから被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子の有機分量が17質量%であることが確認された。
また、当該ナノ粒子を蛍光X線分析装置により分析し、Zr、Si含有量を測定することで3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン量は被覆型酸化ジルコニウムに対し8質量%であることがわかった。
得られた被覆型ZrO
2粒子2を重クロロホルムに分散させて測定試料とし、
1H−NMRによる分析を行なった。その結果、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートの存在モル比率が27:35:38であることがわかった。
上記、TG−DTA、蛍光X線分析、
1H−NMRによる分析結果から勘案して2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートは被覆型酸化ジルコニウム粒子全体(100質量%)の、それぞれ3質量%、8質量%、7質量%であることがわかった。
【0191】
実施例2
製造例3で得られた被覆型ZrO
2粒子2(7g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(3g)、DISPERBYK−111(0.14g)を配合し、均一撹拌することで、無機酸化物微粒子含有溶液2を得た。
【0192】
比較例2
製造例3で得られた被覆型ZrO
2粒子2(7g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(3g)を配合し、均一撹拌することで、比較無機酸化物微粒子含有溶液2を得た。
【0193】
実施例3〜15、比較例3
分散体を構成する各成分の種類及び添加量を表に示すように変更した。表中に示す各成分は以下の通りである。また表中、有機リン化合物/有機硫黄化合物、シランカップリング剤及び有機酸の添加量は、ZrO
2粒子に対する質量比(%)で示す。
〔有機リン化合物/有機硫黄化合物〕
【0194】
【化32】
【0195】
尚、上記表において、各化合物の詳細は以下の通りである。なお、有機リン化合物BYK−111、TEGO655、PM−21、A−208、A−8、EHD−400、1000−FCPはいずれも、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物であり、表にはこのうち主成分の化合物を示す。
BYK−111:DISPERBYK−111(式中polyester鎖の構造は非公開である。ビックケミー・ジャパン社製)
TEGO655:TEGO(登録商標) Dispers655(エボニック社製)
PM−21:KAYAMERPM−21(日本化薬社製)
NF−08:ハイテノールNF−08(式中nの数は非公開である。第一工業製薬社製)を塩酸で処理したもの
SR−10:アデカリアソープSR−10(式中Rの構造は非公開である。ADEKA社製)を塩酸で処理したもの
SR−30:アデカリアソープSR−30(式中Rの構造は非公開である。ADEKA社製)を塩酸で処理したもの
A−208:PhoslexA−208(SC有機化学社製)
A−8:PhoslexA−8(SC有機化学社製)
EHD−400:アントックスEHD−400(日本乳化剤社製)
1000−FCP:ニューコール1000−FCP(日本乳化剤社製)
DBS:Dodecylbenzenesulfonic Acid(TCI社製)
【0196】
〔シランカップリング剤〕
メタクリル:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−503)
n−デシル:n−デシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−3103)
〔有機酸〕
HOA−MS:2−アクリロイルオキシエチルサクシネート
CEA:カルボキシエチルアクリレート
〔分散媒〕
MEK:メチルエチルケトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0197】
<モノマーとの相溶性評価>
実施例1〜15で得られた無機酸化物微粒子含有溶液、比較例1〜3で得られた比較無機酸化物微粒子含有溶液それぞれについて、茶色褐色ガラス瓶に当該溶液10.0gに表1記載のモノマー7.0g、メチルエチルケトン18.0g、Irgacure184(光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.2gを仕込み、均一になるまで撹拌を行い、無機酸化物微粒子含有組成物を得た。
得られた無機酸化物微粒子含有組成物について(8)透明性評価を行った結果を表1〜2に示す。なお、用いたモノマーは以下の通りである。
【0198】
3PO−TMPTA:プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:SR492 サートマー社製)
3EO−TMPTA:エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:SR454 サートマー社製)
1,6−HXDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
DTMPTEA:ジメチロールプロパンテトラアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
VEEA:2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート
【0199】
表に示すように、相溶性を示さなかったモノマーであっても、被覆型酸化ジルコニウム粒子を含む分散体に、有機リン化合物を加えることにより、モノマーとの相溶性が改善されていることが分かる。
【0200】
<貯蔵安定性評価>
実施例1〜15で得られた無機酸化物微粒子含有溶液、比較例1〜3で得られた比較無機酸化物微粒子含有溶液それぞれについての40℃における貯蔵安定性試験結果を表1〜2及び
図1に記す。
【0201】
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートで表面処理された被覆型酸化ジルコニウム粒子を用いた実施例1と比較例1を対比すると、被覆型酸化ジルコニウム粒子が有機リン化合物を含む場合、初期透過率が58%から69%にまで約11%も向上する。また、透過率維持率も×から△へと改善され、1週間を超えてもゲル化せずに使用できることが分かる。
【0202】
また実施例2〜15では、被覆型酸化ジルコニウム粒子を、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートに加え、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤でも表面処理したことにより、透過率は3週間経過後も初期値よりやや劣るか、もしくはこれと同程度の値を示した。この結果は実施例1に比べ、透過率維持率が格段に改善されている点で驚くべきものである。
【0203】
【表1】
【0204】
【表2】