特許第6227030号(P6227030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227030
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】クロノグラフ機構
(51)【国際特許分類】
   G04F 7/08 20060101AFI20171030BHJP
   G04B 1/10 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G04F7/08 Z
   G04B1/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-28581(P2016-28581)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-156815(P2016-156815A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】15156070.3
(32)【優先日】2015年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ツァウク
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ロンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ルショー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フィリップ・ロシャ
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−114202(JP,A)
【文献】 特開昭60−218092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/08
G04B 1/10 − 14
G04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノグラフ機構であって、
このクロノグラフ機構は、当該クロノグラフ機構用の駆動力源であるエネルギーアキュムレーター(1)と、当該クロノグラフ機構用の調整システム(4)と、及び前記エネルギーアキュムレーター(1)を分カウンター(5)を介して前記調整システム(4)に接続する歯車列とを有し、
前記エネルギーアキュムレーター(1)は、細長材ばねで形成されており、
前記細長材ばねによって伝えられるトルクを調整するように構成する前記歯車列を駆動する手段を有し、そして
前記歯車列を駆動する手段は、ラック(24)を有し、このラック(24)の一端(24a)は、前記細長材ばねと連係するように構成し、このラック(24)の他端(24b)は、前記歯車列と連係するように構成し、
前記ラック(24)は、一方向の回転によって前記歯車列を駆動するようにマウントされている、
ことを特徴とするクロノグラフ機構。
【請求項2】
前記歯車列は、第1の歯付きセクター(7)を有する分カウンター(5)を有し、
前記ラック(24)は、前記第1の歯付きセクター(7)と連係するように構成する歯を有し、
前記分カウンター(5)の前記第1の歯付きセクター(7)と、前記ラックの前記歯(24)とは、同心ではない
ことを特徴とする請求項に記載のクロノグラフ機構。
【請求項3】
前記ラック(24)は、前記一方の回転方向とは反対方向に回転するようにマウントされ、これによって、前記分カウンター(5)をゼロにリセットし、同時に、前記細長材ばねを巻く
ことを特徴とする請求項に記載のクロノグラフ機構。
【請求項4】
前記細長材ばねによって伝えられる前記トルクを調整するデバイスを有する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のクロノグラフ機構。
【請求項5】
前記トルクを調整するデパイスは、調整可能なエキセントリック機構(26)を有する
ことを特徴とする請求項に記載のクロノグラフ機構。
【請求項6】
前記エネルギーアキュムレーター(1)を巻き、同時に、分をゼロにリセットするように構成する、前記エネルギーアキュムレーター(1)を巻き分をゼロにリセットする機構を有する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のクロノグラフ機構。
【請求項7】
カウントが開始するときに前記調整システム(4)を解放するように構成する、カウントを開始する機構を有する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のクロノグラフ機構。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載のクロノグラフ機構を有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的な測時技術の分野に関する。具体的には、本発明は、自身用のエネルギーアキュムレーターと、自身用の調整システムと、及び前記エネルギーアキュムレーターを前記調整システムに接続する歯車列とを有する自律的クロノグラフ機構に関する。本発明は、さらに、このようなクロノグラフ機構を有する計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
クロノグラフ機構を2つの種類に分類することができる。すなわち、
− 計時器の時方輪列に関連して実装されるクロノグラフ機構の種類と、
− 自身用の基礎的な時間ムーブメントを有する計時器にあり、自分の時方輪列を備えた独立したクロノグラフ機構の種類とである。
【0003】
独立したクロノグラフ機構の種類については、エネルギーを蓄積することができ、それを可能な限り最も一定のトルクとして再分配することができる付加的なバレル又は別の弾性手段によってエネルギーを供給することができる。
【0004】
しかし、付加的なバレルの使用には、時間とクロノグラフのために2重のムーブメントをデザイナーが設けることを必要としている。この2重のムーブメントは、一般に、2重のムーブメントを収容するための非常に大きな部品を必要としてしまう。これでは、魅力的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、独立又は自律的なクロノグラフ機構を有する既知の計時器の様々な課題を克服することを目的とする。
【0006】
より詳細には、本発明は、よりコンパクトなクロノグラフ機構を提供することを目的とする。
【0007】
より詳細には、本発明は、よりコンパクトなエネルギーアキュムレーターを有するクロノグラフ機構を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、可能なかぎり一定なトルクを伝えることができるエネルギーアキュムレーターを有するクロノグラフ機構を提供することを別の目的とする。
【0009】
本発明は、伝えられたトルクを調整することができるエネルギーアキュムレーターを有するクロノグラフ機構を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、自身用のエネルギーアキュムレーターと、自身用の調整システムと、及びエネルギーアキュムレーターを調整システムに接続する歯車列とを有する自律的クロノグラフ機構に関する。
【0011】
本発明によると、エネルギーアキュムレーターは、細長材ばねで形成される。
【0012】
したがって、エネルギーアキュムレーターは、伝統的に用いられているエネルギーアキュムレーターよりも小さなスペースしか占めない。このことによって、体積が小さい自律的クロノグラフ機構を有する計時器を設計することが可能になる。
【0013】
好ましくは、クロノグラフ機構は、細長材ばねによって伝えられるトルクを調整するように構成する歯車列を駆動する手段を有することができる。
【0014】
特に好ましい変種実施形態によると、前記歯車列駆動手段は、ラックを有し、このラックの一端は、細長材ばねと連係するように構成し、このラックの他端は、歯車列と連係するように構成し、前記ラックは、歯車列を駆動するように一方の回転方向に回転するようにマウントされる。
【0015】
好ましいことに、前記歯車列は、第1の歯付きセクターを有する分カウンターを有することができ、前記ラックは、第1の歯付きセクターと連係するように構成する歯を有することができ、前記分カウンターの第1の歯付きセクター及びラックの歯は、同心ではない。
【0016】
好ましいことに、同心ではない歯/歯付きセクターのシステムは、細長材ばねによって伝えられたトルクの一定ではない問題を修正することができる。
【0017】
好ましくは、前記ラックを、反対の回転方向に回転するようにマウントして、これによって、分カウンターをゼロにリセットし、同時に、細長材ばねを巻く。
【0018】
好ましいことに、当該クロノグラフ機構は、細長材ばねによって伝えられるトルクを調整するデバイスを有することができる。
【0019】
好ましいことに、前記トルク調整デパイスは、調整可能なエキセントリック機構を有することができる。
【0020】
好ましくは、クロノグラフ機構は、エネルギーアキュムレーターを巻き、同時に、分をゼロにリセットするように構成する、エネルギーアキュムレーターを巻き分をゼロにリセットする機構を有することができる。
【0021】
好ましいことに、当該クロノグラフ機構は、カウントが開始したときに前記調整システムを解放するように構成するカウントを開始する機構を有することができる。
【0022】
本発明は、さらに、上記のクロノグラフ機構を有する計時器に関する。
【0023】
本発明の特定の実施形態についての以下の説明(例示的であってこれに限定されない)を添付の図面とともに読むことで、本発明の他の特徴及び利点を、より明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】最初に始動する前の本発明に係るクロノグラフ機構の斜視図である。
図2】本発明に係るクロノグラフ機構、細長材ばね巻き及びゼロリセット機構の下面図(裏蓋側)である。
図3】安静位置の細長材ばね及びトルクを調整する手段の上面図(表盤側)である。
図4】巻かれている位置の細長材ばね及びトルクを調整する手段の上面図(表盤側)である。
図5】本発明に係るクロノグラフ機構及びそのカウントを開始する機構の下面図(裏蓋側)である。
図6】本発明に係るクロノグラフ機構及びその止め機構の下面図(裏蓋側)である。
図7】連結解除デパイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、クロノグラフ機構は、エネルギーアキュムレーター1と、時方輪列2と、エスケープシステム3と、及びバランス4aとバランスばね4bを有する調整システム4とを有し、時方輪列2は、エネルギーアキュムレーター1をエスケープシステム3及び調整システム4に接続している。したがって、自身用のクロノグラフムーブメントを有するクロノグラフ機構は、自律的であり、ないし独立しており、このようなクロノグラフ機構を、自身用の計時ムーブメントを有する計時器において用いることができる。
【0026】
本発明によると、エネルギーアキュムレーター1は、Aにてフレームに固定される細長材ばねで形成されている。
【0027】
時方輪列2は、分カウンター及び秒カウンターを有し、これによって、クロノグラフカウンター列をも形成している。時方輪列又はクロノグラフのカウンター列は、以下において、一般的に「歯車列」と呼ぶ。より詳細には、歯車列は、分カウンター5及び秒カウンター6を有する。下で詳細に説明するように、分カウンター5は、分車セットを有し、これは、エネルギーアキュムレーター1と連係するように構成する第1の歯付きセクター7と、及び歯車列と連係するように構成する第2の歯付きセクター8とを有する。第1及び第2の歯付きセクター7、8は、分カウンター5のアーバー10に恒久的に固定マウントされる。これによって、これらは、回転時にアーバー10と絶えず一体的にされている。特定のトルクを超えると歯付きセクター7、8の一方からアーバー10を角度的に連結解除することができるような摩擦連結はない。アーバー10は、表盤側で見えるように構成する針のような第1の分インジケータメンバー(図示せず)を一体的に支えている。指標のような第2の分インジケータメンバー12が、裏蓋側で見えるように、第2の歯付きセクター8によって支えられている。秒カウンター6は、秒車セットを有し、これは、分カウンター5と連係するように構成する秒ピニオン14と、及び調整システム4と連係するように構成する秒車16とを有する。秒車セットのアーバー18は、針のような秒インジケータメンバー(図示せず)を一体的に支えている。秒車セットとそのアーバー18の間には摩擦連結があり、これによって、特定のトルクを超えるとこれらの2つのメンバーの独立した角運動が可能になる。
【0028】
クロノグラフ機構は、さらに、ゼロリセット機構を有し、これは、分をゼロにリセットする機構及び秒をゼロにリセットする機構を有する。秒をゼロにリセットする機構は、秒車セットのアーバー18と一体的な心臓形部品20を備えたシステムと、及びリセット用押し部品22(図2を参照)によって制御されるハンマー(図示せず)とを実装している伝統的なリセット機構である。
【0029】
分をゼロにリセットする機構は、ラック24を有し、これは、下で説明するように、一端24aがエネルギーアキュムレーター1と連係しており、他端24bには分車セットの第1の歯付きセクター7と連係するように構成する歯が設けられているように構成している。ラック24は、Bにてフレーム上で回転するようにマウントされ、クロノグラフ機構が稼働しているときに、分ゼロリセット及びエネルギーアキュムレーター巻きの機能を確実にするように一方の方向に回転し、歯車列、より詳細には、カウント時に分カウンター、を駆動する機能を確実にするように反対方向に回転するように構成する。したがって、ラック24は、歯車列駆動手段と分ゼロリセット機構だけでなく、細長材ばね1を巻く機構を形成している。
【0030】
歯車列駆動手段としての機能を確実にするように、細長材ばね1がそのエネルギーを解放して緩んで巻かれていない位置へ戻るときに、ラック24の端24aは、細長材ばね1の自由端1aによって発動され、ラック24を回転するように構成する。
【0031】
細長材ばねによって伝えられるトルクを調整するために、ラック24の端24bに設けられた歯と、分カウンター5の第1の歯付きセクター7どうしは、同心ではない。同心ではない歯車系を使用することによって、細長材ばねによって伝えられる非定値のトルクを修正し、結果的には、トルクを平滑化して、クロノグラフが一定の振幅と速さを達成することができる。
【0032】
細長材ばねによって伝えられるトルクを調整するために、クロノグラフ機構は、トルク調整デパイスを有する。図3及び4を参照すると、このトルク調整デパイスは、エキセントリックカム26を有し、これは、キーによって製造業者が調整することができる。カム26は、自由端1aの反対側で、点Aを越えた細長材ばね1の端1bの近傍に配置されている。細長材ばね1の組み立て時に、図3に示すように端1bに接していないようにカム26が配置される。伝えられるトルクを調整するために、カム26は、細長材ばね1の端1bに接するように、図4に示す矢印aの方向に回転する。これによって、端1Bを矢印bの方向に点Aを中心として多かれ少なかれ回転させて、巻かれている位置にある細長材ばね1の張りを調整する。そして、このアセンブリーは、ねじによって固定される。
【0033】
クロノグラフ機構は、カウントを開始する時に調整システムを解放するように構成しているカウントを開始する機構によって始動されるまでは、停止状態のままである。図5を参照すると、カウント開始機構は、第1のレバー28を有し、これは、「開始」の押しボタン30によって制御され、ジャンパーばね31を備える。第1のレバー28は、第2のレバー32を制御する。これは、フレーム上のCにて回転するようにマウントされており、バランス止めレバー34を支えている。このバランス止めレバー34の自由端34aは、くちばし部を有し、これは、バランス車と連係し、クロノグラフ機構が始動するまでバランス車をロックするように構成する。第2のレバー32は、さらに、回転してクロノグラフの状態を示す指標36を支えている。
【0034】
図2を参照すると、分ゼロリセット及び細長材ばね巻き機構は、分ゼロリセット機能及びラック24の細長材ばね1を巻く機能を同時に実行することができるようにするために、ゼロリセット押しボタン22によって発動されるレバー40を有する。レバー40は、第1のレバー42の端42aと連係するくちばし部40aを有し、第1のレバー42の他端は、第2のレバー44と連係している。この第2のレバー44は、アーム44aを有し、これは、ラック24の端24aを押し、Bにてラック24を回転させるように構成している。回転時に、ラック24の端24aが、細長材ばね1を押して、細長材ばねを動かし巻き、一方、ラック24の他端24bが、分カウンター5をリセットさせる方向に第1の歯付きセクター7を回転させる。したがって、細長材ばね1は、分カウンター5のリセット機能によって巻き戻される。他の特定の巻き動作は必要ではない。
【0035】
クロノグラフ機構止め機能を確実にするために、バランス4aとクロノグラフ機構インジケータメンバーを止めて読み取りやタイムアウトを可能にするように構成する止め機構が設けられる。このために、ゼロリセットボタン22は、クロノグラフ機構止めボタンでもある。図6を参照すると、ボタン22によって制御されるレバー40は、レバー32と一体的なピン43を介してレバー32とも連係している。このピン43は、レバー41に設けられた長穴45内を動く。レバー40の回転によって、レバー32が回転して、これによって、バランス止めレバー34をバランス4aがロックされている位置に戻し、ゼロリセットせずにクロノグラフ機構を止める。
【0036】
レバー41は、鼻部41aを有し、これは、レバー42と連係し、ゼロリセット機能が発動されていないときにレバー42の端42aをレバー40のくちばし部40aから離し続けるように構成している。レバー32の回転によって、ピン43が動き、レバー41が回転する。この構成は、クロノグラフ止め機能の終わりにおいて、レバー41が十分に回転して、レバー42を解放し、レバー42の端42aと、レバー40のくちばし部48とがロックされるように、レバー42がレバー40に当たる。
【0037】
したがって、押しボタン22に対する第1の押圧によって、クロノグラフ機構が止まり、同じ押しボタン22に対する第2の押圧によって、カウンターがゼロにリセットされ、細長材ばねが巻き戻る。
【0038】
分カウンター5がゼロにリセットされたときに秒車セットを隔離するために、歯車列は、分カウンター5と秒カウンター6の間に連結解除デパイスを有し、これは、クロノグラフ機構が稼働している時のカウント時に、分車セットと秒車セットを運動学的に接続し、分がゼロにリセットされたときに、秒車セットを分車セットから連結解除するように構成する。この連結解除デパイスは、単方向性機構を有し、これは、カウント時には、分カウンター5を介して秒カウンター6を駆動する駆動回転方向となり、クロノグラフ機構がゼロにリセットされたときには自由な回転方向となる。変種の実施形態(図示せず)によると、この単方向性機構は、ラチェット車であることができる。
【0039】
図1、5及び7に詳細に示した別の実施形態によると、連結解除デパイスは、駆動車セットを有し、これは、分カウンター5の第2の歯付きセクター8と連係するドライブピニオン46と、駆動車48と、及び駆動車アーバー52と同軸にアーバー52を中心に回転するように運動可能にマウントされるように構成している惑星車ホルダー50とを有する。惑星車ホルダー50は、秒カウンター6の秒ピニオン14と連係している。惑星車ホルダー50は、自由回転するようにマウントされた5つの規則的に分布する惑星車54を支えている。これらの惑星車54は、駆動車セットの駆動車48と連係するように構成している。
【0040】
惑星車54は、単方向性の歯を有し、また、非対称の歯形を有し、これによって、カウント時に一方の方向に回転するときに駆動車48とロックしており、分がゼロにリセットされ細長材ばね1が巻かれて駆動車48が反対方向に回転するときに、自由に回転するように構成している。
【0041】
したがって、惑星車54によって、カウント時に駆動車を介して惑星車ホルダー50を駆動することができ、これによって、カウント時に分カウンター5を介して調整システム4までの範囲で歯車列を駆動し、分がゼロにリセットされ細長材ばね1が巻かれているときに、惑星車ホルダー50を自由に回転させ、これによって、秒車セットを分車セットから連結解除する。これは、単方向性機構の別の変種を形成する。このような連結解除デパイスを、細長材ばね/ラックシステムとは独立して、任意の種類のエネルギーアキュムレーター及び駆動手段とともに使用することができる。具体的には、好ましいことに、このような連結解除デパイスを、フュージをムーブメントに巻き付けるために用いることができる。
【0042】
本発明に係るクロノグラフ機構は、以下のように動作する。
【0043】
クロノグラフの動作に必要なエネルギーは、クロノグラフがゼロにリセットされている時に、具体的には、分がゼロにリセットされている時に、ユーザーによって提供される。このような場合は、細長材ばね1が巻かれる時と同時に発生する。これを達成するために、ユーザーは、ゼロリセット及び巻きボタン22を押す。図2に示すように、ボタン22が矢印aの方向に押されると、矢印bの方向にレバー40が回転し、このことによって、第1のレバー42が矢印cの方向に動く。これによって、第2のレバー44及びそのアーム44aが矢印dの方向に傾く。傾くにつれて、アーム44aは、ラック24の端24aを矢印eの方向に押す。これによって、ラック24がBにて回転する。Bにおけるラックの回転によって、まず、細長材ばね1がAにて回転し、これによって、ラック24の端24aが細長材ばね1の自由端1aを押すことに起因して、細長材ばね1が巻かれ、また、歯24bによって矢印fの方向に駆動されて、分カウンター5の第1の歯付きセクター7が回転する。第2の歯付きセクター8と分カウンターのアーバー10が第1のセクター7と一体的であるので、これらは、同じ角度駆動され、分インジケータメンバー、特に、指標12を、ゼロにリセットする。この回転中に、分カウンター5の第2の歯付きセクター8が駆動車46、48と噛み合うが、惑星車54の非対称の歯に起因して、駆動車48の回転は、惑星車54に又は惑星車ホルダー50に影響を与えない。これは、自由に回転する。したがって、秒車セット及び歯車列の残りは、分がゼロにリセットされているときに、この連結解除デパイスによって隔離される。
【0044】
ゼロリセット及び巻きボタン22が押されると、秒カウンターも既知の手法でゼロにリセットされる。
【0045】
このゼロリセット及び巻きステップ時に、クロノグラフの動作に必要なエネルギーが細長材ばね1に格納される。この細長材ばね1は、屈曲してはたらく。
【0046】
そして、ユーザーは、「開始」ボタン30を押すことによってカウントを開始する。図5に示すように、このことによって、矢印aの方向にレバー28が傾き、これによって、矢印bの方向にレバー32が傾き、バランス止めレバー34の端34aがバランスから解放されて調整システム4を解放する。ここで、カウントを開始することができる。端1aがラック24の端24aを押す細長片ばね1によってエネルギーが解放される。この細長片ばね1は、分ゼロリセット及び巻き方向とは反対方向にBにラック24を回転させる。回転するにしたがって、歯24bは、第1の歯付きセクター7を駆動し、したがって、分ゼロリセット及び巻き方向と反対方向に第2の歯付きセクター8を駆動する。分インジケータメンバーは、毎分1目盛の速さで回り始める。この構成において、分カウンター5の第2の歯付きセクター8が、駆動車46、48と噛み合うが、惑星車54の非対称の歯のおかげで、駆動車48の回転が惑星車ホルダー50を回転させるように惑星車54がロックされる。これによって、次に、秒カウンター6が、細長材ばね1によって伝えられるトルクを他の歯車列要素に伝達させる。秒インジケータメンバーは、秒を示すように回転し始める。
【0047】
読み取り又はタイムアウトのための押しボタン22に対する第1の押しによって、バランス及びインジケータメンバーを止めることができる。図6に示すように、ボタン22に対する矢印aの方向の第1の押しによって、レバー42が矢印bの方向に回転する。このことは、レバー32及び41を矢印cの方向に動かし、バランス4aの方にバランス止めレバー34を戻して、バランス4aをロックする。中間的な読み取り又はタイムアウトのためにインジケータメンバーは止められる。また、レバー41は矢印dの方向にも回転し、レバー42を解放する。このレバー42はレバー40に当たり、ゼロリセットのためのその位置を占める。「開始」ボタン30に対する再度の押しによって、ゼロリセットなしで、上記のように、クロノグラフ機構を再開させる。ボタン22に対する別の第1の押しによって、上記のようにクロノグラフ機構が止まる。このボタン22に対する第2の押しによって、クロノグラフをゼロにリセットし、既に上に説明したように、細長片ばねを巻き戻す。
【0048】
本発明に係るクロノグラフ機構は、適切に動作するために必要な十分に一定なトルクを有し、既知のクロノグラフ機構よりもコンパクトである。ゼロリセット機構、具体的には、分をゼロにリセットする機構も、エネルギーアキュムレーターを巻く機能を行い、これによって、特定の巻き機構の必要性がなくなる。
【符号の説明】
【0049】
1 エネルギーアキュムレーター
2 調整システム
3 分カウンター
7 第1の歯付きセクター
24 ラック
26 調整可能なエキセントリック機構
24a、24b 端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7