【実施例1】
【0015】
[掻取式加熱撹拌釜の全体構成]
図1〜
図4は、本発明の参考例を示す。
図1は、掻取式加熱撹拌釜を示し一部を切り欠いた正面図である。
図2は、掻取式加熱撹拌釜を示し一部を省略した平面図である。
図3は、掻取式加熱撹拌釜を示す側面図である。
図4は、掻取式加熱撹拌釜の撹拌ユニットを示す斜視図である。
【0016】
本発明の掻取式加熱撹拌装置を理解する前提として、加熱容器を傾斜させない参考例の構造の掻取式加熱撹拌釜1を説明し、その後掻取式加熱撹拌装置の一例である実施例1の掻取式加熱撹拌釜の説明を行なう。
【0017】
参考例の掻取式加熱撹拌釜1は、流動性のある被撹拌物の加熱撹拌に用いられ、特に流動性の悪い被撹拌物、例えば含水粉体や餡等の粉体や固体又は粘性の高い物質或いは塑性流動する物質等の加熱撹拌に用いられるものである。ただし、流動性の良い被撹拌物に適用することも可能である。
【0018】
図1〜
図3のように、掻取式加熱撹拌釜1は、加熱容器3と、撹拌ユニット5と、駆動部である駆動モータ7と、制御ボックス9と、油圧ユニット11と、配管ユニット12とを支持フレーム15に支持することによって構成されている。
【0019】
前記支持フレーム15は、蓋収容部17が一体に設けられ、脚部19によってフロア21上に配置されている。脚部19は、例えばロードセル等で構成された重量センサ23が介設されており、加熱容器3、撹拌ユニット5、駆動モータ7、制御ボックス9、油圧ユニット11、蓋収容部17等を含めた支持フレーム15上の全重量を検出する構成となっている。この重量測定によって、加熱容器3内の食材の加熱調理による水分蒸発量等を演算し、掻取式加熱撹拌釜1の自動加熱撹拌等を行わせることが可能となっている。
【0020】
前記加熱容器3は、横置きの円筒部25上にホッパー部27を設けたものである。加熱容器3は、支持フレーム15に回転可能に支持され、
図3の二点鎖線のように、油圧ユニット11の油圧シリンダ29によって傾動回転される。加熱容器3は、上端開口から食材等の被撹拌物が投入され、前記傾動により上端開口から加熱撹拌後の被撹拌物を排出することができるようになっている。前記上端開口には、着脱可能に割蓋31が設けられている。また、下部外周には、加熱及び冷却用の流体ジャケット33を備えている。
【0021】
前記円筒部25の軸心部には、回転軸35が回転自在に支持されている。回転軸35は、駆動モータ7によって回転駆動されるようになっている。回転軸35には、所定間隔で撹拌ユニット5が取り付けられ、回転駆動によって加熱容器3内の被撹拌物を撹拌可能としている。
【0022】
前記各撹拌ユニット5は、支持部としてのアーム37と、該アーム37の先端に設けられた掻取羽根39とを備えている。
【0023】
前記アーム37は、基端側に設けられたクランプ部43によって回転軸35に対して支持されている。アーム37の先端には、掻取羽根39の取付用のブラケット部45が設けられている。ブラケット部45は、前記回転軸35の軸心に対しθの角度を持って設定されている。
図4における参考例では、設定角度θ=約30°となっている。ただし、設定角度θは任意である。
【0024】
前記駆動モータ7は、回転軸35に連動連結されている。駆動モータ7は、制御ボックス9によって制御され、所定の周期毎に正転及び正転とは逆回転の反転を繰り返すようになっている。
【0025】
前記制御ボックス9は、駆動モータ7の動作の他、加熱容器3の流体ジャケット33への蒸気の供給、油圧ユニット11の動作等を制御する。
【0026】
[実施例の構造]
図5〜
図9は、実施例1を示す。
図5は、掻取式加熱撹拌釜の概略を示す概略要部断面図である。
図6は、撹拌ユニットの取り付けを正転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。
図7は、撹拌ユニットの取り付けを反転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。
図8は、撹拌ユニットの正面図である。
図9は、撹拌ユニットの揺動範囲の調整を示し、(A)は、固定状態示す説明図、(B)は、揺動範囲を大きくした設定状態を示す説明図である。なお、
図8、
図9では、アーム先端のクランプ部を省略している。また、基本的な構造は、参考例と同様であり、対応する構造部分に同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
本発明の掻取式加熱撹拌装置の一例である実施例1の掻取式加熱撹拌釜1は、加熱容器3が傾斜配置され、掻取羽根39が、回転方向前後へ一定範囲で揺動可能に支持された点が参考例の構造に対して異なっている。
【0028】
図5のように、実施例1の加熱容器3の断面構造そのものは、参考例と同様に、断面円弧状の底部3aと底部3aに連続する直状の上壁部3bとからなっている。底部3aは、掻取羽根39が掻取摺動する。この加熱容器3は、角度αで傾斜設定されている。
【0029】
掻取羽根39は、回転方向前後へ一定範囲で揺動可能に支持され、被攪拌物の液面F上では、掻取羽根39が正転方向aの前方の上壁部3b側へ回転移動すると、掻取羽根39が正転方向aの前方へ揺動し、前方の上壁部3bに対して羽根先61aの旋回半径を縮小する。
【0030】
かかる揺動構造についてさらに説明する。
【0031】
図6、
図7のように、ブラケット部45は、アーム37の軸方向に沿って延設されている。ブラケット部45は、基部45aと壁部45bと突片部45cとを備えている。
【0032】
基部45aは、アーム37の先端に結合されている。ブラケット部45は、アーム37に含まれる構成であり、支持部を構成する。壁部45bは、その受け面45baが反転方向bに向いている。突片部45cは、回転軸35の軸方向で対向する一対が受け面45baの両側に配置され、壁部45bから突出している。突片部45cの突出方向は、反転方向bとなっている。なお、
図6、
図7では、一方の突片部45cが見えている。
【0033】
掻取羽根39は、加熱容器3の内周面57において正転方向aに対し、後傾となるように傾斜配置されている。つまり、掻取羽根39は、正転時に加熱容器3の内周面57に接する羽根先61aが先行して内周面57を移動するように傾斜設定されている。
【0034】
図6〜
図8のように、掻取羽根39は、補助板58を前面に配して羽根支持板59の先端部59aに羽根部61をボルト結合したものである。従って、本実施例において掻取羽根39は、補助板58及び羽根部61と羽根支持板59とからなっている。羽根部61及び羽根支持板59を樹脂と金属との二色成型により一体に形成することも可能である。この場合、補助板58を省略することもできる。
【0035】
羽根支持板59の先端部59aは、ナックル部59bに対し、正転方向aに先行するように傾斜設定されている。
【0036】
羽部部61は、正転方向aの前面から見て略矩形状に形成され、掻取羽根39の先端である羽根先61aは、加熱容器3の内周面57を設定状態で掻き取れるように
図8の前面から見て若干の円弧状に形成されている。
【0037】
羽根支持板59は、ナックル部59bがブラケット部45の突片部45c間に配置されている。羽根支持板59のナックル部59bは、突片部45cに対し結合ピン65により着脱自在に結合されている。従って、掻取羽根39は、アーム37に対して結合ピン65により回転自在となっている。
【0038】
結合ピン65は、一端に頭部65aが形成され、他端にロック部65bが回転可能に結合されている。ロック部65bは、作業者が、手により、或いは工具を介してを摩擦力に抗して回転させ、結合ピン65に対し直状にすることができる。
【0039】
結合に際しては、ロック部65bを、結合ピン65に対し直状にした状態で、羽根支持板59のナックル部59b及びブラケット部45の突片部45cの孔を貫通させる。貫通後にロック部65bを回転させて
図7のようなロック状態にすることができる。ロック部65bの回転の戻りは、例えば軸周りの摩擦力により規制される。
【0040】
羽根支持板59のナックル部59bには、対向面59baが設けられている。対向面59baは、前記ブラケット部45の壁部45bの受け面45baに対向するようになっている。この対向は、平行な対向、傾斜した対向の何れも含まれる。
【0041】
前記ストッパー41は、アーム37のブラケット部45と掻取羽根39との間に備えられている。
【0042】
このストッパー41とブラケット45の壁部45b及び羽根支持板59のナックル部59bとにより掻取羽根39を一定範囲で揺動可能とする。
【0043】
つまり、掻取羽根39は、先端の羽根先61aが加熱容器3の内周面57に押し付けられた位置から離間する方向へ一定範囲で揺動可能となる。
【0044】
ストッパー41は、ボルト41aを備えている。ボルト41の螺合位置の調整で前記一定範囲を調整可能とする。
【0045】
本実施例では、このボルト41aに対し補助のボルト41bを備えている。ボルト41a、41bは、ナックル部59bにおいて結合ピン65を挟むように配置され、ナックル部59bに螺合している。一対のボルト41a、41bは、ナックル部59bの対向面59baに直交するように設定されている。
【0046】
これらボルト41a、41bは、ロックナット67によりナックル部59bに対する螺合位置が固定されるようになっている。ナックル部59bに対するボルト41a、41bの螺合位置調整により各ボルト41a、41b先端の対向面59baに対する突出位置を設定することができる。
【0047】
図9(A)のように、ナックル部59bの対向面59baをブラケット部45の壁部45bの受け面45baに対し平行に対向させ、双方のボルト41a、41bの先端を受け面45baに当接させるようにナックル部59bに対するボルト41a、41bの螺合位置を調節することでブラケット部45に対する掻取羽根39の揺動位置をこの位置で固定することができる。
【0048】
従って、ストッパーであるボルト41aと補助のボルト41bとにより掻取羽根39を支持部であるアーム37に対し固定可能となっている。
【0049】
ブラケット部45に対する掻取羽根39の揺動位置の固定は、対向面59baが受け面45baに対して任意に傾斜した位置で行なわせることもできる。但し、その分のボルト41a、41bの長さ設定が必要となる。
【0050】
図9(A)の状態から
図9(B)のように、ボルト41aの先端を対向面59baから退避させると、掻取羽根39を結合ピン65の回りで一定範囲の揺動を可能とする。
【0051】
この一定範囲の揺動は、
図6の正転時において掻取羽根39の羽根先61aが加熱容器3の内周面57に押し付けられた位置から羽根支持板59の対向面59baがブラケット部45の壁部45b下端に当接する位置までである。
【0052】
図7のように、羽根支持板59の対向面59baがブラケット部45の壁部45b下端に当接した位置で、加熱容器3の内周面57と掻取羽根39の羽根先61aとの間に、隙間Sが形成される。
【0053】
この揺動範囲、つまり隙間Sは、ボルト41aの螺合位置の調整により変更することができる。ボルト41aを受け面45ba側に突出させると、羽根支持板59の対向面59baよりも先にボルト41aが受け面45baに突き当たる。ボルト41aが受け面45ba側に突き出る程度により隙間Sを減少させるように設定することができる。
【0054】
ボルト41bの螺合位置の調節で、正転時に掻取羽根39が加熱容器3の内周面57に近接するように回転するとき、ボルト41bが壁部45bの受け面45baに当接し、
隙間Sの最小値を選択的に調節設定することができる。また、掻取羽根39の羽根先61aが、加熱容器3の内周面57に押し付けられるときの押し付け力を設定することができる。
【0055】
[掻取式加熱撹拌釜の作用]
本実施例では、被撹拌物として水分を含有した粘性の高い餡製造用材料を用いている。
【0056】
材料を加熱撹拌する際には、予め加熱容器3の割蓋31を取り外し、割蓋31を蓋収容部17に収容しておく。そして、開口した加熱容器3の上方開口から材料を投入する。このとき、重量センサ23により投入材料の投入重量が検出される。この重量検出に際しては、取り外した割蓋31も含めて検出されており、割蓋31装着後に、加熱撹拌中の重量検出制御に際し、割蓋31の脱着を考慮した演算をする必要がなく、制御ソフトを簡単にすることができる。また、配管ユニット12は、フレキシブルパイプ32による支持フレーム15側に対し独立して接地されているため、重量センサ23による重量検出に際して配管ユニット12の重量の影響を受けることが抑制され、正確な検出を行わせることができる。
【0057】
材料投入後は、割蓋31を加熱容器3の上方開口に再び装着し、予めインストールされたプログラムで制御ボックス9により駆動モータ7を自動的に駆動制御する。かかる制御によって、撹拌ユニット5を所定の周期毎に正転及び反転させる。例えば正転を3回転行わせた後、反転を3回転行わせ、水分蒸発により材料が目的重量となるまでこれを繰り返す。ただし、正転及び反転の回転数は材料、煮詰まり状態、混合状態などに応じて任意に設定することができ、例えば正転を2回転行わせた後、反転を2回転行わせることも可能である。
【0058】
なお、実施例1では、掻取羽根39が正転及び反転を繰り返す構造で説明するが、本発明において、掻取羽根39の反転は必須ではなく、掻取羽根39を反転させない構造の掻取式加熱撹拌釜1でもよい。
【0059】
但し、実施例1の構造は、反転においても後述のように作用効果があり、これを含めて説明する。
【0060】
正転及び反転を所定周期毎に繰り返すと、逆方向の回転力によって材料が撹拌ユニット5と供回りするのを抑制又は解消することができ、材料を流動させることができる。
【0061】
図6の正転時(正転方向a)には、撹拌ユニット5の掻取羽根39によって材料の掻き取りを行うことができる。
【0062】
すなわち、掻取羽根39は、反転方向b側へ後傾しているため、正転方向aにおいて、掻取羽根39の羽部部61の下面と加熱容器3の内周面57との間の掻き取り作用のための角度が鋭角をなしながら摺動回転する。
【0063】
このため、掻取羽根39は、材料を加熱容器3の内周面57から離反させるように掻き取り案内流動させる。従って、材料は、加熱容器3の内周面57で加熱された部分とその内側の加熱されていない部分とが混合されて全体として加熱撹拌が行われる。
【0064】
また、正転時には、材料の抵抗によって掻取羽根39の羽部部61の羽根先61aが加熱容器3の内周面57に押し付けられるため、掻き取りを確実に行わせることができる。
【0065】
図6のように、正転時には、ブラケット部45の壁部45b下端と羽根支持板59の対向面59baとの間に隙間Gが形成される。
【0066】
図5で前記したように、加熱容器3が傾斜して配置されている構造であるため、上壁部3bの部分3baが材料の液面F上に露出する。
【0067】
一方で、材料の液面F上では、掻取羽根39が正転方向aの前方の上壁部3b側へ回転移動すると、重力が慣性力に勝る位置で掻取羽根39が正転方向aの前方側へ揺動し、前方の上壁部3bに対して羽根先の旋回半径を縮小する。
【0068】
この旋回半径の縮小により回転方向前方で直状の上壁部3bの部分3baから羽根先61aが離れて旋回移動することになる。
【0069】
このため、羽根先61aが回転移動により近接する上壁部3bの部分3baに材料の付着移動が起こり難くなり、加熱容器3の部分3baの内面においても材料が堆積することを防止又は抑制できる。
【0070】
加熱容器3の部分3baは、加熱容器3が傾斜していなければ、液面F下に有るものの、加熱容器3が傾斜して液面F上に露出する。このため、部分3baの温度が上昇し、材料が付着堆積し易くなる。
【0071】
これに対し、実施例では、上記のように部分3baから羽根先61aを離すことで羽根先61aからの材料の付着移動を防止又は抑制するようにしたものである。
【0072】
なお、部分3baは、液面Fに近接し、液面Fの動きにより濡れることもあるが、液面F下のように、熱容量の大きな材料全体に常時触れているわけではないので、この意味で材料が付着、堆積し易いものである。
【0073】
掻取羽根39が部分baを通り過ぎ材料の液面Fに進入すると、掻取羽根39が材料の抵抗によって揺動を戻し、羽部部61の羽根先61aが加熱容器3の内周面57に押し付けられるため、掻き取りを確実に行わせることができる。
【0074】
なお、
図7の反転時には、撹拌ユニット5の掻取羽根39によって材料の押し付けを行うことができる。
【0075】
すなわち、掻取羽根39は、背面が材料から抵抗を受け、結合ピン65の回りに回転する。この回転は、
図6の隙間Gが無くなるまで行なわれ、
図7のように羽根支持板59の対向面59baがブラケット部45の壁部45b下端に当接して位置決められる。
【0076】
この反転時の揺動位置では、羽部部61の羽根先61aと加熱容器3の内周面57との間に隙間Sが形成される。
【0077】
反転方向bでは、加熱容器3の内周面57上の材料が掻取羽根39と内周面57との間の楔状の形状によってガイドされ、加熱容器3の内周面57側に向けて案内流動される。
【0078】
流動した材料は、掻取羽根39によってガイドされながら隙間Sに到達し、隙間Sにおいて羽部部61の羽根先61aと加熱容器3の内周面57との間に入り込み加熱容器3の内周面57に対して押し付けられる。
【0079】
隙間Sに応じて材料が加熱容器3の内周面57に膜状又は層状に確実に塗り付けられる。
【0080】
被撹拌物を掻取羽根39で加熱容器3の内周面57に塗りつける操作により、被撹拌物中に含まれるダマ状の物質を圧壊させることができる。このダマ状の物質の圧壊効果は、隙間Sを調節することで変えることができる。
【0081】
塗り付けられた材料は、正転掻き取り時に内周面57上に残留した材料に上塗りされた状態となる。この結果、残留材料には、上塗材料から水分移動が行われると共に上塗材料への熱移動が起こり、過熱が防止される。
【0082】
従って、残留材料は、水分移動と熱移動とにより焦げ付きを防止される。残留材料は、水分移動により膨軟状態となっており、次の正転時に容易に掻き取られる。
【0083】
なお、反転時に被攪拌物である材料の内周面57への塗り付けは、基本的に膜状又は層状になるが、内周面57上に残留した材料への水分移動があれば、塗り付けは、必ずしも膜状又は層状に限るものではない。従って、羽部部61の形状変更による隙間Sの形状も自由な設定が可能である。
【0084】
前記反転時には、正転時に使用されなかった掻取羽根39の背面を使用して材料の押し付け作用をさせるため、材料が掻取羽根39背面を滑るようにして隙間S側へ移動し、この部分への材料の付着滞留を抑制することができる。
【0085】
また、正転と反転とによって反転時に運動方向が逆方向となって材料に逆方向の回転力を加えるため、撹拌ユニット5のアーム37や回転軸35等と材料が供回りすることを防止でき、且つ付着した材料も流動させて付着滞留を抑制することができる。
【0086】
駆動モータ7が撹拌ユニット5を正転及び反転させることによって、被撹拌物が撹拌ユニット5と供回りすることを抑制し、混合効率の低下を確実に抑制することができる。
【0087】
[実施例の効果]
本実施例では、粘性の高い被撹拌物を加熱容器3に収容し、加熱しながら先端に掻取羽根39を有した撹拌ユニット5を駆動モータ7によって回転駆動させ、被撹拌物の加熱撹拌を行うことができる。加熱撹拌時には、材料の液面F上で、掻取羽根39が正転方向aの前方の上壁部3b側へ回転移動すると、掻取羽根39が正転方向aの前方へ揺動し、前方の上壁部3bに対して羽根先の旋回半径を縮小する。この旋回半径の縮小により回転方向前方で直状の上壁部3bの部分3baから羽根先61aが離れることになる。
【0088】
このため、羽根先61aが回転移動により近接する上壁部3bの部分3baに材料の付着移動が起こり難くなり、加熱容器3の部分3baの内面においても材料が堆積することを防止又は抑制できる。
【0089】
そして、掻取式加熱撹拌釜1は、前記反転によって加熱容器3の内周面57に被撹拌物を膜状又は層状に塗り付けることができる。このため、正転掻き取り時に加熱容器3の内周面57に付着残留した被撹拌物に対し、水分のより多い被撹拌物を上塗りして混合することができる。従って、残留した被撹拌物による焦げ付きを確実に抑制することができる。
【0090】
なお、正転及び反転を行うことによって、加熱撹拌時に掻取羽根39の表面、背面の双方を使用し掻取羽根39への被撹拌物の付着滞留を抑制することができる。従って、掻取羽根39に付着滞留した被撹拌物が加熱撹拌の進行によって変質することを確実に抑制することができる。
【0091】
正転と反転とで逆方向の回転力を加えるため、撹拌ユニット5のアーム37や回転軸35等と被撹拌物が供回りすることを抑制できる。従って、被撹拌物の混合不良を抑制することができる。また、正転と反転とで、アーム37や回転軸35等に付着した被撹拌物も流動させることができ、付着滞留を抑制することができる。従って、アーム37や回転軸35等に付着滞留した被撹拌物が加熱撹拌の進行によって混合不足又は変質(濃縮・乾燥等)することを確実に抑制することができる。
【0092】
本実施例では、掻取羽根39が加熱容器3の内周面57に対して正転方向aに対し反転方向後方へ後傾となるように傾斜配置されているため、反転時に加熱容器3の内周面57側へ向けて確実に流動させ、加熱容器3の内周面57に対して被撹拌物をより確実に膜状又は層状に塗り付けることができる。
【0093】
掻取羽根39が回転方向前後へ一定範囲で揺動可能に支持されているため、反転時に掻取羽根39が加熱容器3から離反するように揺動し、加熱容器3の内周面57に対して被撹拌物をより確実に膜状又は層状に塗り付けることができる。
【0094】
駆動モータ7によって回転駆動される回転軸35に支持されたアーム37先端に、撹拌ユニット5を結合ピン65によって回転自在に結合し、且つボルト41aにより掻取羽根39の揺動範囲(隙間S)を設定することができる。
【0095】
従って、材料の種類、例えば粘性の高い、低いなどの種類に応じて反転時の隙間Sを適性に設定し、膜状又は層状の塗り付けを的確におこなわせることができる。つまり、必要に応じて粘性の高い材料でも、隙間Sを狭くすることも可能であり、逆に広く設定することもできる。
【0096】
被撹拌物を掻取羽根39で加熱容器3の内周面57に塗りつける操作は、被撹拌物中に含まれるダマ状の物質を圧壊させる効果があり、被攪拌物の膜厚又は層厚を設定する隙間Sを調節することで実現できる。
【0097】
一対のボルト41a、41bにより掻取羽根39をアーム37に対し揺動を固定することもできる。
【0098】
このため、材料によっては、隙間Sを設定せず、或いは固定された隙間Sで正転、反転させることも可能である。
【0099】
掻取羽根39の清掃に際しては、作業者が、手により、或いは工具を介して結合ピン65のロック部65bを摩擦力に抗して回転させ、結合ピン65に対し直状にする。直状となった結合ピン65は、頭部65aを持ち、容易に引き抜くことができる。
【0100】
このとき、従来のように掻取羽根39にコイルばねの付勢力が働いていないので、結合ピン65を容易に引き抜くことができ、ブラケット部45から掻取羽根39を極めて容易に取り外すことができる。
【0101】
掻取羽根39の取り外しにより、掻取羽根39やブラケット部45等の清掃を行い、その後、前記とは逆の手順により結合ピン65を用い、コイルばねの影響を受けること なくブラケット部45に掻取羽根39を極めて容易に取り付けることができる。
【0102】
掻取式加熱撹拌釜1を搬送するときは、
図9(A)などのように掻取羽根39を固定させ、搬送中のがたつきを防止し、掻取羽根39周りの損傷を防ぐこともできる。
【0103】
掻取羽根39の揺動範囲の調節、搖動の固定、隙間Sの最小値の設定は、例えば、結合ピン65回りの構造を利用して形成することもできる。
【0104】
掻取羽根の正転、反転の切替は、予め制御ボックス9にインストールされたプログラムに基づき、制御ボックス9が駆動モータ7を自動制御する形態、或いは手動のスイッチを備え、制御ボックス9を手動のスイッチにより切替制御することなど、任意に選択することができる。
【0105】
ボルト41a、41bの一方を羽根支持板59のナックル部59bに設け、他方をブラケット部45の壁部45bに設けることができる。ボルト41a、41bの双方をブラケット部45の壁部45bに設けることもできる。
【0106】
また、自動制御及び手動制御の双方を備える形態にすることもできる。
【0107】
Fを被攪拌物の液面としているが、Fを構成する被攪拌物の表面は、ある程度粘性を有するものも含まれ、Fは、被攪拌物の自由表面を意味する。
【実施例3】
【0117】
図12は、撹拌ユニットを正転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。なお、
図12では、
図8、
図9と同様に、アーム先端のクランプ部を省略している。また、実施例1と基本的な構成は同様であり、同一又は対応する構成部分については、同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0118】
図12のように、実施例3の撹拌ユニット5は、実施例1と同様に、
図1〜
図5の掻取押付式加熱撹拌釜1(掻取押付式加熱撹拌装置)に取り付けて用いられる。
【0119】
つまり、
図6のように、正転により受ける被撹拌物の抵抗によって羽根部61の先端61aが加熱容器3の内周面に押し付けられ、
図7のように、反転により被撹拌物の抵抗によって羽根部61の先端61aが一定範囲の揺動で加熱容器3の内周面に対して離間し被撹拌物を加熱容器3の内周面に塗り付けるものである。
【0120】
撹拌ユニット5は、実施例1同様の構造に形成され、クランプ部43及びブラケット部45を備えたアーム37(支持部)と、アーム37に回転自在に結合された掻取羽根39とからなっている。
【0121】
本実施例3の撹拌ユニット5は、一定範囲の揺動を設定するストッパー69を、実施例1のストッパー42に代えて備えている。
【0122】
ストッパー69は、スペーサーブロック71を備えている。スペーサーブロック71は、金属、樹脂、セラミック、硬質ゴム、弾性を有したゴムなどにより矩形の平板状に形成され、スペーサー取付部73に収容して取り付けられ、ブラケット部45の壁部45bと共に掻取羽根39の一定範囲の揺動を設定するストッパー69を構成する。
【0123】
スペーサー取付部73は、羽根支持板59の対向面59baとブラケット部45の受け面45baとの間に形成され、結合ピン65の軸方向でナックル部59bの左右両側に位置する突片部45cがスペーサー取付部73を囲んでいる。羽根支持板59のナックル部59bには、突部59cが突設されている。突部59cは、正転方向への回転時に、ブラケット部45の受け面45baに当接し、スペーサーブロック71とブラケット部45の壁部45bとの間にクリアランスを形成する。
【0124】
回転軸35の正転時に突部59cがブラケット部45の受け面45baに当接すると、羽根支持板59の対向面59baは、結合ピン65側が羽根部61側に対して後方となるように傾斜して設定されている。羽根支持板59の先端部59aは、対向面59baに対し正転方向へさらに傾斜している。先端部59aに取り付けられている羽根部61の上縁は、一定の平坦な厚みがあり、対向面59baの下端に位置し、スペーサーブロック71の下縁を支持している。羽根部61の上縁の平坦面と羽根支持板59の対向面59baとは、鋭角を成し、対向面59baに沿って配置されたスペーサーブロック71の下縁を安定して保持できるようになっている。
【0125】
スペーサーブロック71は、固定されていないが、スペーサーブロック71の下縁が、対向面59ba及び羽根部61の上縁で支持されている。スペーサーブロック71の幅方向の両縁は、ブラケット部45の突片部45cによるスペーサーブロック71両側への近接対向により保持されている。且つ正転方向への回転時に、スペーサーブロック71とブラケット部45の壁部45bとの間のクリアランスにおいてスペーサーブロック71が動いてもスペーサーブロック71の下縁が羽根部61の上縁から外れない寸法関係に設定されている。
【0126】
そして、正転時は、突部59cが、ブラケット部45の受け面45baに当接し、スペーサーブロック71とブラケット部45の壁部45bとの間にクリアランスを形成し、反転時は、被撹拌物からの抵抗により掻取羽根39が結合ピン65周りに回転してスペーサーブロック71がブラケット部45の壁部45bに当接してクリアランスがなくなる。
【0127】
従って、掻取羽根39の一定範囲の揺動がストッパー69により設定され、実施例1と同様な正転、反転動作を行わせ、同様な作用効果を奏することができる。
【0128】
また、実施例2では、スペーサーブロック71として厚みの異なる複数種類を用意し、スペーサーブロック71を適宜交換することでクリアランスを調整し、掻取羽根39の一定範囲の揺動を変更することができる。
【0129】
このような変更により加熱容器3の内周面57との間の隙間S(
図7)の設定を的確に行わせることができる。
【0130】
[変形例]
図13は、実施例3の変形例を示す。
図13は、撹拌ユニットを正転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。なお、
図13では、
図8、
図9と同様に、アーム先端のクランプ部を省略している。また、実施例3の変形例は、
図12の実施例2と基本的な構成は同様であり、同一構成部分については、同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0131】
図13のように、本実施例3の変形例は、スペーサーブロック71を羽根支持板59の対向面59baに溶着或いは接着した。スペーサーブロック71の上縁は、突部59cの下面に突き当たっている。
【0132】
スペーサーブロック71を羽根支持板59の対向面59baに固定するに際しては、厚みの異なるスペーサーブロック71を複数種用意し、スペーサーブロック71を対向面59baに固定せずに配置してクリアランスを調整して掻取羽根39の一定範囲の揺動を規定し、加熱容器3の内周面57との間の隙間S(
図7)の設定を的確に行わせることができる。
【0133】
隙間Sの設定後は、スペーサーブロック71を羽根支持板59の対向面59baに溶着或いは接着などにより固定する。
【0134】
スペーサーブロック71は、対向面59baに固定するため、ブラケット部45の壁部45bに当接する部分にのみ存在すればよく、大きさを小さく形成することもできる。
【0135】
但し、スペーサーブロック71は、対向面59baに固定する前に隙間Sの設定を確認するとき、スペーサーブロック71の下縁を羽根部61の上縁に乗せた状態で壁部45bに当接し得る大きさであるとスペーサーブロック71から手を放しても隙間Sの設定確認を行わせることができる。
【0136】
スペーサーブロック71の厚みの種類による掻取羽根39の一定範囲の揺動の変更は、厚みの異なるスペーサーブロック71を対向面59baに固定した複数種類の掻取羽根39を用意し、この掻取羽根39をスペーサーブロック71の厚みを選んで交換することで隙間Sの設定を行わせることもできる。
【0137】
そして、本実施例3の変形例でも、
図12の実施例3と同様な作用効果を奏することができる。
【0138】
なお、スペーサーブロック71は、掻取羽根39側ではなくブラケット部45側に設け、或いは掻取羽根39側及びブラケット部45側の双方に設けることもできる。ブラケット部45側に設けるスペーサーブロックは、ブラケット部45の壁部45bの下端に固定する突片部として構成し、対向面59baに対する突出の程度を種々設定する構造にすることもできる。
【実施例4】
【0139】
図14は、撹拌ユニットを正転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。なお、
図14では、
図8、
図9と同様に、アーム先端のクランプ部を省略している。また、実施例3と基本的な構成は同様であり、同一又は対応する構成部分については、同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0140】
図14のように、実施例4の撹拌ユニット5は、実施例3が前提とする実施例1と同様に、
図1〜
図4の掻取押付式加熱撹拌釜1(掻取押付式加熱撹拌装置)に取り付けて用いられる。
【0141】
つまり、
図6のように、正転により受ける被撹拌物の抵抗によって羽根部61の先端61aが加熱容器3の内周面に押し付けられ、
図7のように、反転により被撹拌物の抵抗によって羽根部61の先端61aが一定範囲の揺動で加熱容器3の内周面に対して離間し被撹拌物を加熱容器3の内周面に塗り付けるものである。
【0142】
撹拌ユニット5は、実施例2同様の構造に形成され、クランプ部43及びブラケット部45を備えたアーム37(支持部)と、アーム37に回転自在に結合された掻取羽根39とからなり、一定範囲の揺動を設定するストッパー69を備えている。
【0143】
ストッパー69は、スペーサーブロック71を備えている。スペーサーブロック71は、金属、樹脂、セラミック、硬質ゴム、弾性を有したゴムなどにより矩形の平板状に形成され、スペーサー取付部73に収容して取り付けられ、ブラケット部45の壁部45bと共に掻取羽根39の一定範囲の揺動を設定するストッパー69を構成する。
【0144】
スペーサーブロック71の形状は、実施例2と異なっており、差込凸部71aが段付き状に薄く形成されている。ナックル部59bの突部59cと結合ピン65との間には、差込凹部59dが形成され、スペーサーブロック71の差込凸部71aが差し込まれている。
【0145】
スペーサーブロック71の下縁部は、実施例2の
図9と同様に支持されている。つまり、羽根部61の上縁の平坦面61bと羽根支持板59の対向面59baとは、鋭角を成し、対向面59baに沿って配置されたスペーサーブロック71の下縁を安定して保持する。
【0146】
スペーサーブロック71の配置は、羽根支持板59の羽根取付部59aに対し羽根部61を取り付ける前に行なわれる。スペーサーブロック71を対向面59baの下方から対向面59baに沿って上方へ移動させ、差込凸部71aを差込凹部59dに差し込む。次いで、羽根部61を羽根取付部59aに締結固定し、羽根部61の上縁の平坦面61bと羽根支持板59の対向面59baとの間にスペーサーブロック71の下縁部を配置させる。
【0147】
従って、掻取羽根39の一定範囲の揺動がストッパー69及び突部59cにより設定され、実施例1と同様な正転、反転動作を行わせ、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【0148】
また、スペーサーブロック71を備えた構造として、実施例2と同様な作用効果を奏することができる。
【0149】
さらに、本実施例3のスペーサーブロック71は、羽根支持板59に対して着脱ができながら組み付け状態での固定を行わせることができる。
【0150】
[変形例]
図15は、実施例4の変形例を示す。
図15は、撹拌ユニットを正転状態で示す一部を断面にした要部拡大側面図である。なお、
図15では、
図8、
図9と同様に、アーム先端のクランプ部を省略している。また、実施例4の変形例は、
図14の実施例4と基本的な構成は同様であり、同一構成部分については、同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0151】
図15のように、本実施例4の変形例は、スペーサーブロック71の差込凸部71aが段付き状に薄く形成され、この差込凸部71aが羽根部61と対向面59baとの間の差込凹部59dに保持される。
【0152】
対向面59baは、羽根取付部59aの表面に対して凹状に形成され、ナックル部59b側に突当面59bbを有している。突当面59bbは、対向面59baに直交し、羽根部61の上縁の平坦面61bに対向している。
【0153】
スペーサーブロック71の厚みは、突当面59bbと同高さであり、スペーサーブロック71の表面がナックル部59bの面59bcに角度を持って連続している。スペーサーブロック71は、一側面が突当面59bbに突き当てられ、他側面が羽根部61の平坦面61bに対向する。
【0154】
なお、スペーサーブロック71の表面と羽根部61表面とを面一にすることもできる。
【0155】
スペーサーブロック71の配置は、羽根支持板59の羽根取付部59aに対し羽根部61を取り付ける前に行なわれる。スペーサーブロック71を対向面59baに配置し、次いで、羽根部61を羽根取付部59aに締結固定する。この締結固定により羽根部61の上縁部と対向面59baとの間に差込凹部59dを形成してスペーサーブロック71の差込凸部71aを押さえる。
【0156】
従って、本実施例4の変形例においても、
図14の実施例4と同様な作用効果を奏することができる。