特許第6227035号(P6227035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227035情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227035
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20171030BHJP
   G01C 21/30 20060101ALI20171030BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20171030BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20171030BHJP
【FI】
   G08G1/00 A
   G01C21/30
   G09B29/10 A
   G06Q10/04 310
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-54209(P2016-54209)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-167944(P2017-167944A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2016年12月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100174986
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康旨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 安昭
(72)【発明者】
【氏名】阿南 美帆
(72)【発明者】
【氏名】入山 高光
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−165604(JP,A)
【文献】 特開2008−249539(JP,A)
【文献】 特開2006−350953(JP,A)
【文献】 特開2004−171482(JP,A)
【文献】 特開2011−100298(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/167701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 − 29/10
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションシステムにおいて、地図情報における要素であって複数の項目を含む諸元情報が対応付けられた要素に対して車両の位置が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報と、車両において発生した事故に関する事故情報とを取得する取得部と、
前記事故情報に対応するマップマッチング情報を抽出し、抽出した要素の諸元情報に基づいて、前記複数の項目のそれぞれが事故に与える影響度を導出し、前記諸元情報と事故との相関関係を分析する分析部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記諸元情報の複数の項目ごとに事故の発生回数をカウントし、前記カウントした数に対する統計的処理によって、前記複数の項目のそれぞれが事故に与える影響度を導出する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記車両に搭載され又は前記車両に乗車した利用者が保持する装置であって、前記ナビゲーションシステムの少なくとも一部を構成する装置から、前記装置において前記地図情報における要素に対して車両の位置が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報を取得する、
請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記車両に搭載され又は前記車両に乗車した利用者が保持する装置であって、前記ナビゲーションシステムの少なくとも一部を構成する装置によって取得された車両の位置を、前記装置から取得し、前記車両の位置と地図情報とを比較して、前記地図情報における要素に対して車両の位置を対応付けるマップマッチング部を更に備え、
前記取得部は、前記マップマッチング部から前記マップマッチング情報を取得する、
請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記要素の諸元情報は、車線数、勾配、曲率、他の要素との接続形態、信号の有無、陸橋の有無のうち複数を前記項目として含む、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記マップマッチング情報を周期的に取得して記憶部に記憶させ、
前記分析部は、前記事故情報に対応する前記マップマッチング情報のうち、前記事故情報に含まれる時刻以前の所定期間の情報に基づいて、前記要素の諸元情報と、事故との相関関係を分析する、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記分析部は、前記事故の発生時における環境条件と、前記要素の諸元情報と、事故との相関関係を分析する、
請求項1から6のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記環境条件は、曜日、時間帯、季節、日柄、天候、交通量、社会指標のうち一部または全部を含む、
請求項記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記分析部による分析結果に基づいて、保険条件を決定する保険条件決定部を更に備える、
請求項1から8のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記保険条件決定部は、走行した経路に基づいて保険条件が決定されるタイプの保険について、保険条件を決定する、
請求項記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記保険条件決定部により決定された保険条件に基づいて、保険料負担の少ない経路を生成する経路生成部を更に備える、
請求項9または10記載の情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータが、
ナビゲーションシステムにおいて、地図情報における要素であって複数の項目を含む諸元情報が対応付けられた要素に対して車両の位置が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報と、車両において発生した事故に関する事故情報とを取得し、
前記事故情報に対応するマップマッチング情報を抽出し、
前記抽出した要素の諸元情報に基づいて、前記複数の項目のそれぞれが事故に与える影響度を導出し、前記諸元情報と事故との相関関係を分析する、
情報処理方法。
【請求項13】
コンピュータに、
ナビゲーションシステムにおいて、地図情報における要素であって複数の項目を含む諸元情報が対応付けられた要素に対して車両の位置が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報と、車両において発生した事故に関する事故情報とを取得させ、
前記事故情報に対応するマップマッチング情報を抽出させ、
前記抽出した要素の諸元情報に基づいて、前記複数の項目のそれぞれが事故に与える影響度を導出し、前記諸元情報と事故との相関関係を分析させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、事故発生地点の道路特徴と、走行中の車両の進行方向における道路特徴との比較、および当該車両の速度、交差する道路における平均速度などに基づいて、当該車両に警告を発するか否かを決定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−165604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、実際に事故が発生した箇所と類似の道路特徴を有する箇所を走行する場合に警告を発するものに過ぎず、その道路特徴が本当に事故を誘発しやすいものであるかどうかについての分析はなされていない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、地図情報における要素の諸元情報と事故との相関関係を分析することで、種々の用途に役立てることができる情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ナビゲーションシステムにおいて、地図情報における要素に対して車両の位置が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報と、車両において発生した事故に関する事故情報とを取得する取得部と、前記事故情報に対応するマップマッチング情報を抽出し、抽出した要素の諸元情報と、事故との相関関係を分析する分析部と、を備える情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、地図情報における要素の諸元情報と事故との相関関係を分析することで、種々の用途に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成図である。
図2】地図情報120の内容の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムにおいて実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
図4】マップマッチング情報230の内容の一例を示す図である。
図5】事故情報240の内容の一例を示す図である。
図6】分析部220による処理の一例を説明するための図である。
図7】分析部220による処理の一例を説明するための図である。
図8】分析部220により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】経路探索部110による処理を説明するための図である。
図10】走行経路の一例を示す図である。
図11】第3実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成図である。
図12】第3実施形態に係る情報処理装置を含むシステムにおいて実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
図13】端末装置TM、並びにナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、および保険会社サーバ300のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成図である。実施形態の情報処理装置は、一以上のプロセッサにより実現される。実施形態の情報処理装置は、分析サーバ200を少なくとも含み、ナビゲーションサーバ100および/または保険会社サーバ300の一部を含んでもよい。また、分析サーバ200は、ナビゲーション100または保険会社サーバ300に統合されてもよく、ナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、および保険会社サーバ300が統合されて情報処理装置を構成してもよい。図1では1台の車両Vhおよび端末装置TMのみ示しているが、複数の端末装置TMがネットワークNWに接続されてよい。
【0011】
端末装置TM、ナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、および保険会社サーバ300は、ネットワークNWを介して通信する。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線などのうち一部または全部を含む。
【0012】
端末装置TMは、車両Vhに乗車する利用者によって使用される。端末装置TMは、スマートフォンなどの携帯電話やタブレット端末などである。端末装置TMは、ナビゲーションサーバ100と連携するナビアプリが起動されることで、ナビゲーションシステムの一部を構成するナビゲーション装置として機能する。端末装置TMは、車両Vhに搭載されたナビゲーション装置(据え置き型の車載装置)であってもよい。以下、端末装置TMは携帯電話やタブレット端末などであるものとして説明する。
【0013】
端末装置TMは、GPS(Global Positioning System)受信機などの位置測位装置、ネットワークNWに接続するための通信装置、三軸式の加速度センサ、タッチパネルなどの入出力装置、スピーカ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する。位置測位装置は、衛星から受信した電波に基づく測位を行って、端末装置TMの位置(すなわち車両Vhの位置)を特定する。また、端末装置TMは、通信装置が接続した無線基地局の位置から端末装置TMの位置を推定してもよい。
【0014】
端末装置TMは、位置測位装置などによって特定された端末装置TMの位置を定期的に(例えば数[sec]おきに)ナビゲーションサーバ100に送信する。また、端末装置TMは、利用者により設定された目的地をナビゲーションサーバ100に送信して経路を取得する。
【0015】
ナビゲーションサーバ100は、経路探索部110を備える。経路探索部110は、例えば、ナビゲーションサーバ110のプロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよいし、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(コントローラ)によって実現されてもよい。経路探索部110は、端末装置TMからのリクエストに応じて経路探索を行い、経路情報を端末装置TMに送信する。また、ナビゲーションサーバ100の記憶部には、地図情報120が記憶される。地図情報120は、例えば、リンクの集合で道路を表現した情報である。図2は、地図情報120の内容の一例を示す図である。地図情報120は、道路を表現したリンクの識別情報であるリンクIDに対して、車線数、勾配、曲率、接続リンク、信号の有無、陸橋の有無などの諸元情報が対応付けられた情報である。
【0016】
ナビゲーションサーバ100は、地図情報120から、端末装置TMから受信した端末装置TMの位置を中心とした領域の地図情報(部分地図情報)を抽出し、端末装置TMに送信する。
【0017】
端末装置TMは、ナビゲーションサーバ100から受信した情報に対してマップマッチング処理を行う。マップマッチング処理は、地図情報(部分地図情報である場合も含む)に含まれる要素(例えばリンク)のうち、どの要素に沿って端末TMが移動しているか(すなわち車両Vhがどのリンクを走行しているか)を判定する処理であり、地図情報に含まれるリンク以外の要素(例えばポリゴンなど)をマッチング対象に含めてもよいし、地図情報がマッチング対象以外の要素を含んでもよい。典型的に、リンクを対象とする場合、マップマッチング処理によって、端末TMの位置(車両Vhの位置)が、いずれかのリンクに対応付けられる。マップマッチング処理は、例えば、端末TMの位置に最も近い位置にあるリンクを選択することを基本として、種々の要素を加味して行われる。端末装置TMは、ナビゲーションサーバ100から受信した部分地図情報と、マップマッチング処理の結果とに基づいて、ナビゲーション画面を生成し、音声案内と共に表示する。
【0018】
分析サーバ200は、情報取得部210と、分析部220とを備える。情報取得部210および分析部220のそれぞれは、例えば、分析サーバ200のプロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよいし、LSIやASIC、FPGAなどのハードウェア(コントローラ)によって実現されてもよい。また、分析サーバ200は、記憶部にマップマッチング情報230と、事故情報240とを記憶させる。
【0019】
情報取得部210は、端末装置TMにおいて行われたマップマッチング処理の結果を示す情報(マップマッチング情報)を、NWを介して定期的に取得し、マップマッチング情報230として記憶部に記憶させる。マップマッチング結果は、ナビゲーションサーバ100を介して取得されてもよい。
【0020】
また、情報取得部210は、車両Vhにおいて発生した事故に関する事故情報を取得し、記憶部に記憶させる。事故情報は、例えば、以下に例示する手法によって取得される。(1)保険加入者であるユーザからの書面や電話などの窓口への報告を基に、人間の担当者や人工知能などの主体が事故情報を生成する。(2)所定期間において端末装置TMの加速度センサにより計測された加速度の積分値が閾値を超えた場合に、端末装置TMは、事故が発生した旨の情報をナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、保険会社サーバ300のいずれかに送信する。(3)端末装置TMが車両Vhの制御装置と通信することで、エアバッグの作動状態などを取得し、事故が発生した旨の情報をナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、保険会社サーバ300のいずれかに送信する。(4)端末装置TMにおいて実行されるナビアプリの緊急通報機能によって、保険会社サーバ300などを介して事故情報が分析サーバ200に通知される。
【0021】
分析部220は、事故情報に対応するマップマッチング情報を抽出し、抽出したリンクの諸元情報と、事故との相関関係を分析する。これについては後述する。
【0022】
保険会社サーバ300は、例えば保険会社によって運営される。保険会社サーバ300は、保険条件決定部310を備える。保険条件決定部310は、例えば、保険会社サーバ300のプロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよいし、LSIやASIC、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよい。
【0023】
保険条件決定部310は、車両Vhに対し、或いは車両Vhを運転する利用者ごとに保険条件を決定する。本実施形態において保険会社サーバ300を運営する保険会社の提供する保険は、走行した経路の長さ(走行距離)に応じて保険条件が決定される保険であり、走行距離100[km]ごとに100円といったように保険料が決定される。そして、この保険の保険条件は、(A)車両Vhが走行した経路に応じて、事後的に保険条件が決定される、或いは(B)一定期間において車両Vhが走行した経路に応じて、次の期間における保険条件が決定される。保険条件には、保険料の他、免責額、保険金の支払いに伴う保険料の変動量(等級の変動量)、その他の種々の条件が含まれる。走行した経路の情報は、ナビアプリとナビゲーションサーバ100を介して取得されてもよいし、端末装置TMにおいて保険会社の提供するアプリが実行されることで、端末装置TMの位置測位装置が特定した位置が保険会社サーバ300に送信されることで取得されてもよい。また、走行した経路の情報は、車載装置である端末装置TMから取得されてもよい。
【0024】
ナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、および保険会社サーバ300(以下、「各サーバ」)の記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどにより実現される。また、記憶部は、各サーバが保有する記憶装置に限らず、NAS(Network Attached Storage)などの外部記憶装置により実現されてもよい。
【0025】
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムにおいて実行される処理の流れを示すシーケンス図である。まず、端末装置TMにおいてナビアプリが起動し、利用者による目的地の設定を受け付ける(S1)。端末装置TMは、位置測位装置によって特定された端末装置TMの位置(以下、「自装置の位置」)および目的地をナビゲーションサーバ100に送信する(S2)。ナビゲーションサーバ100では、位置および目的地と、地図情報120とを用いて経路探索を行う(S3)。ナビゲーションサーバ100は、探索結果としての経路と、端末装置TMの位置を中心とした領域の部分地図情報とを端末装置TMに送信する(S4)。
【0026】
端末装置TMは、自装置の位置と部分地図情報に含まれるリンクとに対してマップマッチング処理を行い、マップマッチング処理の結果(以下、「マップマッチング結果」)と、部分地図情報とに基づいてナビゲーション画面を生成し、音声情報と共に表示する(S5)。
【0027】
端末装置TMは、定期的に、自装置の位置およびマップマッチング結果をナビゲーションサーバ100に送信する(S6)。ナビゲーションサーバ100は、マップマッチング結果を分析サーバ200に送信する(S7)。分析サーバ200は、受信したマップマッチング結果を記憶部に記憶させる(S8)。前述したように、ナビゲーションサーバ100と分析サーバ200は統合されて「ナビゲーション/分析サーバ」として機能してよく、この場合、ナビゲーション/分析サーバが、端末装置TMから受信したマップマッチング結果を記憶部に記憶させる。ナビゲーションサーバ100は、位置に対応する部分地図情報を端末装置TMに送信する(S9)。こうしてS5〜S9の処理が繰り返し実行される。
【0028】
あるタイミングで端末装置TMにより事故が検知されると(S10)、端末装置TMは、上記例示した手法によって事故情報を直接的にまたは間接的に分析サーバ200に送信する(S11)。分析サーバ200は、事故情報を記憶部に記憶させる(S12)。
【0029】
図3のような態様でマップマッチング情報230および事故情報240が収集されると、分析部220は、マップマッチング情報230から事故情報240に対応する情報を抽出する。図4は、マップマッチング情報230の内容の一例を示す図である。図示するように、マップマッチング情報230は、例えば、利用者の識別情報である利用者IDごとに、マップマッチング処理の結果として導出されたリンクIDと、ナビゲーションサーバ100または分析サーバ200における受信時刻(または端末装置TMにおいてマップマッチングがなされた時刻)とが対応付けられた情報である。利用者IDは、ナビアプリの購入時などに予めナビゲーションサーバ100に登録されている。
【0030】
一方、図5は、事故情報240の内容の一例を示す図である。図示するように、事故情報240は、例えば、利用者IDに対して、事故が発生したリンクのリンクIDと、発生時刻(または報告時刻)とが対応付けられた情報である。
【0031】
分析部220は、例えば、マップマッチング情報230から事故情報240の1レコードに含まれる利用者IDと一致する情報を選択し、更に、事故の発生時刻を基準として、それ以前の所定期間(例えば5分間程度)の情報を抽出する。レコードとは、1回の事故に対応する情報である。図4において、「抽出対象」となっているものが、図5に示す事故情報240から抽出される情報である。なお、事故が発生したリンクのリンクIDが取得できている場合、利用者IDは必須でない。
【0032】
そして、分析部220は、上記のように抽出したリンクの諸元情報と、事故との相関関係を分析する。相関関係の分析手法としては、種々の手法を採用することができる。例えば、分析部220は、リンクの諸元情報の内容ごとに事故の発生回数をカウントし、各諸元情報について、どのような内容であれば事故に影響を与えやすいのかを分析する。
【0033】
図6および図7は、分析部220による処理の一例を説明するための図である。図6に示すように、分析部220は、例えば、諸元情報の各項目の内容ごとに、事故の発生回数をカウントする。また、図7に示すように、分析部220は、諸元情報の各項目ごとに、内容に応じた事故に対する影響度(リスクパラメータ)を導出する。影響度は、相関係数を求める手法など、任意の統計的手法を適用して求めることができる。なお、図6では、接続リンクを「接続リンク数」に変換して処理を行うものとしたが、三叉路、交差点、五叉路といった「接続形態」に変換して処理を行ってもよい。
【0034】
そして、分析部220は、ある与えられたリンクに対して、その諸元情報の各項目に対応する影響度を加算して、事故リスクを導出する。例えば、諸元情報が「車線数:1、勾配:無し、曲率:0.005、接続リンク数:2、信号:無し、陸橋:無し」であるリンクについては、(+2)+(−2)+(+1)+(+1)+(+1)+(0)=3と事故リスクを導出する。なお、上記では影響度がゼロを含み、負値を取り得るものとしたが、影響度がゼロでない正の値をとる場合、影響度を乗算することで事故リスクを導出してもよい。
【0035】
図8は、分析部220により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、集計期間(1週間、1か月、1年など)ごとに実行される。
【0036】
まず、分析部220は、事故情報240から一つのレコードを選択する(S21)。次に、分析部220は、マップマッチング結果230から、選択したレコードに対応するリンクを抽出する(S22)。「レコードに対応するリンク」とは、前述したように、マップマッチング結果230において、事故の発生時刻を基準として、それ以前の所定期間(例えば5分間程度)のリンクである。次に、分析部220は、抽出したリンクの諸元情報の各項目にポイントを加算する(S23)。そして、分析部220は、全ての事故情報240のレコードを選択したか否かを判定する(S24)。全ての事故情報240のレコードを選択していない場合、S20に戻り、次のレコードを選択する。全ての事故情報240のレコードを選択した場合、分析部220は、諸元情報の項目ごとの影響度を算出する(S25)。
【0037】
なお、上記のような手法に代えて、分析部220は、諸元情報の項目の組み合わせごとに事故の発生回数をカウントし、同様に事故への影響度を求めてもよい。
【0038】
分析サーバ200による分析結果は、例えば、リンクの諸元情報の項目ごとに影響度を求めた情報として、ナビゲーションサーバ100および/または保険会社サーバ300に提供される。
【0039】
ナビゲーションサーバ100の経路探索部110は、経路探索を行う際に、事故への影響度の低いリンクを優先的に選択する。図9は、経路探索部110による処理を説明するための図である。図示するように、経路探索部110は、端末装置TMの位置から目的地までの経路が複数考えられる場合、各経路に含まれるリンクの事故への影響度を合計し、事故への影響度の合計値が低い経路を選択する。図9の例では、経路探索部110は、経路(2)を優先的に選択する。この際に、経路探索部110は、リンクの事故への影響度の合計値だけでなく、所要時間や合計走行距離などの他の要素を考慮して総合的に経路を選択してもよい。例えば、経路探索部110は、事故への影響度の合計値と、所要時間その他の情報とに対して重み(負の値でもよい)を付与し、加重和を求めることで最もスコアの高い経路を選択してもよい。
【0040】
保険会社サーバ300の保険条件決定部310は、端末装置TMなどから走行経路の情報を取得すると、走行経路に含まれるリンクごとの事故への影響度に基づいて保険条件を決定する。ここでは、説明を簡易にするために、保険料を決定することについてのみ説明する。図10は、走行経路の一例を示す図である。走行経路の出発地点と到着地点の間にリンク(1)〜リンク(n)が存在するものとする。この場合、保険条件決定部310は、例えば式(1)に基づいて保険料Pを決定する。式中、L(k)はリンク(k)の距離であり、E(k)は、リンク(k)の事故への影響度であり、f{E(k)}は、E(k)が高くなる程、値が高くなる関数である。
P=Σk=1[L(k)×f{E(k)}] …(1)
【0041】
以上説明した第1実施形態によれば、分析装置200が、ナビゲーションシステムにおいて、地図情報120におけるリンクに対して車両Vhの位置(端末TMの位置)が対応付けられた結果を示すマップマッチング情報230と、車両において発生した事故に関する事故情報240とを取得し、マップマッチング情報230から事故情報240の各レコードに対応するリンクを抽出し、抽出したリンクの諸元情報と、事故との相関関係を分析することにより、種々の用途に役立てることができる。
【0042】
また、第1実施形態によれば、ナビゲーションサーバ100が、事故への影響度が低い経路を探索することで、安全運転に寄与することができる。また、保険会社サーバ300が前述したように保険条件を決定する場合、利用者にとって有利な保険条件を実現することができる。
【0043】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の分析装置200の情報取得部210は、マップマッチング結果230と事故情報240の少なくとも一方に付随して、環境条件を取得する。環境条件とは、曜日、時間帯、季節、日柄(正月の三が日、ゴールデンウィークなど)、天候、交通量、社会指標(為替レート、株価、GDPなど)のうち一部または全部を含むものである。分析装置200は、これらの情報を、内蔵する時計機能や、天候情報の提供サーバ、交通情報の提供サーバ、或いは経済情報の提供サーバ(いずれも不図示)などから取得する。そして、情報取得部210は、マップマッチング結果230と事故情報240の少なくとも一方に環境条件を対応付けて記憶部に記憶させる。
【0044】
そして、分析装置200の分析部220は、環境条件ごとに、リンクの諸元情報の各項目について事故への影響度を分析する。分析部220は、例えば、図6で説明したカウント処理や統計的処理を、環境条件ごとに行うことで、環境条件ごとの事故への影響度を導出することができる。その導出結果は、例えば、図7に示す結果を環境条件ごとに求めたものとなる。
【0045】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態に比して、より精密な分析を行うことができる。すなわち、「日曜日の夜間、このタイプのリンクは事故のリスクが高い」といった結果を導出することができる。
【0046】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、マップマッチング情報230の取得形態が第1実施形態と異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0047】
図11は、第3実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成図である。第3実施形態に係るナビゲーションサーバ100Aは、マップマッチング部130を備える。マップマッチング部130は、第1実施形態において端末装置TMが実行するものとして説明したマップマッチング処理を実行する。第1実施形態では、端末装置TMがナビゲーションサーバ100から受信した部分地図情報に対してマップマッチング処理を行うのに対し、第3実施形態では、ナビゲーションサーバ100が、端末装置TMから受信した位置と地図情報120とに基づいてマップマッチング処理を行う。
【0048】
図12は、第3実施形態に係る情報処理装置を含むシステムにおいて実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
【0049】
まず、端末装置TMにおいてナビアプリが起動し、利用者による目的地の設定を受け付ける(S31)。端末装置TMは、位置測位装置によって特定された端末装置TMの位置(以下、「自装置の位置」)および目的地をナビゲーションサーバ100に送信する(S32)。ナビゲーションサーバ100では、位置および目的地と、地図情報120とを用いて経路探索を行うと共に、初期マップマッチング処理を行う(S33)。初期マップマッチング処理とは、経路探索の依頼と共に受信した位置に基づいて行われるマップマッチング処理である。ナビゲーションサーバ100は、探索結果としての経路と、端末装置TMの位置を中心とした領域の部分地図情報と、初期マップマッチング処理の結果を端末装置TMに送信する(S34)。
【0050】
端末装置TMは、受信した情報に基づいてナビゲーション画面を生成し、音声情報と共に表示する(S35)。
【0051】
端末装置TMは、定期的に、自装置の位置をナビゲーションサーバ100に送信する(S36)。ナビゲーションサーバ100は、受信した位置と地図情報120とに基づいてマップマッチング処理を行う(S37)。そして、ナビゲーションサーバ100は、受信した位置に対応する部分地図情報と、マップマッチング結果を端末装置TMに送信すると共に(S38)、マップマッチング結果を分析サーバ200に送信する(S39)。分析サーバ200は、受信したマップマッチング結果を記憶部に記憶させる(S40)。こうしてS35〜S40の処理が繰り返し実行される。事故が検知された場合の処理(S41〜S43)については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
<ハードウェア構成>
図13は、端末装置TM、並びにナビゲーションサーバ100、分析サーバ200、および保険会社サーバ300のハードウェア構成の一例を示す図である。本図は、端末装置TMがスマートフォンなどの携帯電話である例を示している。端末装置TMは、例えば、CPU401、RAM402、ROM403、並びにフラッシュメモリなどの二次記憶装置404、タッチパネル405、および無線通信モジュール406が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。ナビアプリは、ネットワークNWを介してダウンロードされ、二次記憶装置404に格納される。
【0054】
各サーバは、例えば、NIC501、CPU502、RAM503、ROM504、フラッシュメモリやHDDなどの二次記憶装置505、およびドライブ装置506が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。ドライブ装置506には、光ディスクなどの可搬型記憶媒体が装着される。二次記憶装置505、またはドライブ装置506に装着された可搬型記憶媒体に記憶されたプログラムがDMAコントローラ(不図示)などによってRAM503に展開され、CPU502によって実行されることで、各サーバの機能部が実現される。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、端末装置TMが事故を検知して事故情報を分析サーバ200へ送信することは必須ではない。
【符号の説明】
【0056】
100…ナビゲーションサーバ
110…経路探索部
120…地図情報
130…マップマッチング部
200…分析サーバ
210…情報取得部
220…分析部
230…マップマッチング情報
240…事故情報
300…保険会社サーバ
310…保険条件決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13