(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、それによって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたって、本発明と関連した公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨に対して不要と判断される場合は、詳細な説明を省略する。以下、添付の図面を参照して、本発明に係る好ましい実施形態を詳細に説明する。図面において同じ参照符号は、同一または類似した構成要素を示すものと用いられる。
【0009】
図1は、直列型マルチレベルインバータの構成図である。
図1に示された直列型マルチレベルインバータ101は、2段の単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2で構成されているが、システム要求仕様によって単位セルの数は変更が可能である。各単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2は、独立した単相インバータ構造であり、
図1のように、多数の単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2を直列に連結することで高電圧を得ることができる。
【0010】
インバータ101は、例えば、線間電圧実効値(RMS)が600V以上である三相電源105を通して三相交流電源の供給を受ける。三相電源105により供給された三相交流電源は、位相変移変圧器(Phase Shift Transformer)103に入力される。変圧器103は、入力された三相交流電源を絶縁(isolation)させ、単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2の要求に合わせて電圧の位相(phase)及び大きさ(magnitude)を変換させる。また、変圧器103は、入力された三相交流電源の全高調波ひずみ(Total Harmonic Distortion、THD)を位相変移を通して向上させる。変圧器103は、一次巻線10及び互いに異なる位相を有する二次巻線11、12、13、14、15、16を含む。
【0011】
単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2は、変圧器103から出力される出力電圧を入力電源として用いて各相に該当する単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2の出力和で三相電動機102に入力される最終的な出力電圧を合成する。ここで、三相電動機102は、誘導電動機(induction machine)または同期電動機(synchronous machine)のような高圧の三相電動機であってよい。
【0012】
図1のように構成されたインバータ101は、三相、即ち、a相、b相、c相のいずれか一つの出力電圧を出力することとなる。例えば、a相の出力電圧は、直列連結された単位セルa1と単位セルa2の出力電圧の和であり、b相の出力電圧は、単位セルb1と単位セルb2の出力電圧の和であり、c相の出力電圧は、単位セルc1と単位セルc2の出力電圧の和である。
【0013】
このように合成されたインバータ101の出力電圧のそれぞれの相電圧(phase voltage)は、大きさは同一であるが、120度の位相差を有する。また、インバータ101を構成する単位セルの個数変化及び単位セルに対する互いに異なる制御を通して、電動機102に印加される出力電圧の全高調波ひずみと電圧変化率(dv/dt)を改善させることができる。
【0014】
図2は、
図1に示されたインバータ101に含まれている単位セルa1、b1、c1、a2、b2、c2のうち一つの単位セルの従来の技術に係る構成を示す。
図2を参照すると、単位セルは、整流部201、平滑化部202、出力電圧生成部203を含む。
【0015】
整流部201は、
図2のように、6個のダイオードで構成される。整流部201は、
図1に示された変圧器103から出力される三相電源の入力を受け、入力された三相電源を直流に整流する。
整流部201により整流された直流電源は、互いに直列に連結される2つのキャパシタ、即ち、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2に伝達される。第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2は、互いに同一のキャパシタンス値を有する。これにより、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2には、同じ大きさの電圧V
dcがそれぞれ充電される。
【0016】
出力電圧生成部203は、複数のダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8を含む。出力電圧生成部203を構成するダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8は、それぞれ対応するスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8と並列に連結される。制御部205は、制御信号を出力して、それぞれのスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8をオン(on)またはオフ(off)状態にスイッチングする。ここで、スイッチをオン状態にスイッチングすることは、スイッチを閉鎖(close)することを意味し、スイッチをオフ状態にスイッチングすることは、スイッチを開放(open)することを意味する。制御部205は、制御信号を通してスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8のオンまたはオフ動作を制御することでマルチレベルの出力電圧を生成し、生成された出力電圧を第1出力端子U及び第2出力端子Vを通して出力する。
【0017】
図2の第1出力端子U及び第2出力端子Vを通して出力される単位セルの出力電圧V
UVは、第1出力端子Uの極(pole)電圧V
U及び第2出力端子Vの極電圧V
Vの差により[数1]のように定められる。
【0019】
このとき、第1出力端子Uの極(pole)電圧V
U及び第2出力端子Vの極電圧V
Vは、制御部205によるスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8の相補的な(complimentary)オン/オフ状態により[表1]のように定められる。
【0021】
図3は、マルチレベルの出力電圧を形成するために単位セルに含まれている複数のダイオードを制御するための制御信号の波形及びそれによる出力電圧の大きさを示す。
図3に示された制御信号の波形は、IPD(In−Phase Disposition)変調技法によるものである。
図3を参照すると、単位セルの両極に対する指令電圧V
m1とV
m2は、周波数と大きさは同一であり、180度の位相差を有する。また、搬送波V
cr1とV
cr2は、周波数と大きさは同一であるが、オフセット(offset)値が異なる。
【0022】
図3のように指令電圧及び搬送波が生成するとき、制御部205は、搬送波V
cr1と指令電圧V
m1及びV
m2が交差する地点でスイッチS1、S5とスイッチS3、S7に対する制御信号を発生させ、搬送波V
cr2と指令電圧V
m1及びV
m2が交差する地点でスイッチS2、S6とスイッチS4、S8に対する制御信号を発生させる。
【0023】
このような制御信号の生成により、
図2の単位セルは、[表1]のような3レベル(V
dc、0、−V
dc)の極電圧を利用して、
図3の下段に示されたように、5レベル(2V
dc、V
dc、0、−V
dc、−2V
dc)の出力電圧V
UVを生成することができる。
【0024】
一方、
図2のような単位セルで異常が発生し、単位セルの正常な電圧出力が不可能である場合、従来は、
図2のようなバイパススイッチ204を通して単位セルの電圧出力を遮断する。即ち、単位セルの異常発生が検出されると、制御部205は、バイパス信号をバイパススイッチ204に印加し、これによって、バイパススイッチ204は、第1出力端子U及び第2出力端子Vを短絡させることで、単位セルの出力電圧は0Vとなる。このようなバイパススイッチ204の動作により単位セルの電圧出力は遮断される。また、アーム短絡(arm short)を防止するためにバイパスされた単位セルのダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8に対応するそれぞれのスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8はオフされる。
【0025】
このように、従来の技術に係るインバータは、単位セルの異常発生時、単位セルの電圧出力を遮断するために、単位セル別に別途のバイパススイッチを備えなければならない。しかし、このように単位セル別にバイパススイッチを備えるようになる場合、MC(Magnetic Conductor)のような素子で構成されるバイパススイッチの配置により、単位セルの体積が増加することとなる。従って、配置されるバイパススイッチの個数だけインバータの生産コストが増加する問題点がある。
【0026】
本発明は、このような問題点を解決するために導出されたものであって、
図2のようなバイパススイッチを備えなくても、単位セルの異常発生時、バイパス動作を具現することのできるマルチレベルインバータに関する。
図4は、本発明の一実施形態に係る単位セルの構成図である。参考までに、本発明の一実施形態に係る単位セルは、
図2に示されたような整流部201を含むことができる。しかし、説明の便宜のために、
図4においては、整流部の構成が省略される。
【0027】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る単位セルは、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第1乃至第8ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、第1乃至第8スイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、制御部401を含む。
【0028】
図4において、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の連結点41と第1出力端子Uとの間には、第1スイッチS1及び第2スイッチS2が配置される。第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、互いに直列に連結される。
【0029】
また、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の連結点42と第2出力端子Vとの間には、第3スイッチS3及び第4スイッチS4が配置される。第3スイッチS3及び第4スイッチS4は、互いに直列に連結される。
また、第5スイッチS5及び第6スイッチS6は、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2と並列に連結される。第5スイッチS5及び第6スイッチS6は、互いに直列に連結される。
【0030】
また、第7スイッチS7及び第8スイッチS8は、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2と並列に連結される。第7スイッチS7及び第8スイッチS8は、互いに直列に連結される。
【0031】
また、
図4に示されたように、第5スイッチS5及び第7スイッチS7は、直流端電圧キャパシタの正(+)の極と連結され、第6スイッチS6及び第8スイッチS8は、直流端キャパシタの負(−)の極と連結される。
【0032】
図4に示された第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第1乃至第8ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、第1乃至第8スイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8の機能、及び制御部401の制御信号による出力電圧の生成過程は、
図2に示された従来の単位セルと同一である。ただ、
図2に示された従来の単位セルとは異なり、
図4に示された本発明の一実施形態に係る単位セルは、バイパススイッチを備えていない。
【0033】
本発明の一実施形態において、制御部401は、予め定められたバイパスモードのいずれか一つによって複数のダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8それぞれと並列に配置される第1乃至第8スイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8をオンまたはオフ状態にスイッチングすることで、第1出力端子U及び第2出力端子Vによる出力電圧の出力を遮断することができる。
【0034】
以下においては、
図5乃至
図7を通して、本発明の一実施形態に係る第1乃至第3バイパスモードについて説明する。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態において、第1バイパスモードによる単位セルのバイパス動作を示す。
本発明の一実施形態に係る第1バイパスモードにおいて、制御部401は、
図5のように、第5ダイオードD5に対応する第5スイッチS5及び第7ダイオードD7に対応する第7スイッチS7だけをオン状態にスイッチングし、残りのダイオードD1〜D4、D6、D8に対応するスイッチS1〜S4、S6、S8をオフ状態にスイッチングする。これにより、電流は、正(+)の方向であるとき、矢印(実線)のような方向に流れ、負(−)の方向であるとき、矢印(点線)のような方向に流れることとなり、単位セルの電圧出力が遮断される。このような第1バイパスモードは、第5ダイオードD5、第7ダイオードD7、第5スイッチS5、第7スイッチS7が正常に動作する時に実行され得る。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態において、第2バイパスモードによる単位セルのバイパス動作を示す。
本発明の一実施形態に係る第2バイパスモードにおいて、制御部401は、
図6のように、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4に対応する第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4だけをオン状態にスイッチングし、残りのダイオードD5〜D8に対応するスイッチS5〜S8をオフ状態にスイッチングする。これにより、電流は、正(+)の方向であるとき、矢印(実線)のような方向に流れ、負(−)の方向であるとき、矢印(点線)のような方向に流れることとなり、単位セルの電圧出力が遮断される。このような第2バイパスモードは、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4が正常に動作する時に実行され得る。
図7は、本発明の一実施形態において、第3バイパスモードによる単位セルのバイパス動作を示す。
【0037】
本発明の一実施形態に係る第3バイパスモードにおいて、制御部401は、
図7のように、第6ダイオードD6に対応する第6スイッチS6及び第8ダイオードD8に対応する第8スイッチS8だけをオン状態にスイッチングし、残りのダイオードD1〜D5、D7をオフ状態にスイッチングする。これにより、電流は、正(+)の方向であるとき、矢印(実線)のような方向に流れ、負(−)の方向であるとき、矢印(点線)のような方向に流れることとなり、単位セルの電圧出力が遮断される。このような第3バイパスモードは、第6ダイオードD6、第8ダイオードD8、第6スイッチS6、第8スイッチS8が正常に動作する時に実行され得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、制御部401は、第1乃至第8ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8及び第1乃至第8スイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8の少なくとも一つの異常発生の有無を検出することができる。仮に、第1乃至第8ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8及び第1乃至第8スイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8の少なくとも一つに異常が発生したことを検出したら、制御部401は、異常が発生したダイオードまたはスイッチの種類によって単位セルに適用されるバイパスモードを決定し、決定されたバイパスモードによって予め定められたスイッチをオン状態にスイッチングし、残りのスイッチはオフ状態にスイッチングすることで、第1出力端子U及び第2出力端子Vによる出力電圧の大きさを0Vとする。
【0039】
本発明の一実施形態において、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第1バイパスモードまたは第3バイパスモードによって予め定められたスイッチだけをオン状態にスイッチングして、第1出力端子U及び第2出力端子Vによる電圧出力を遮断する。
【0040】
また、本発明の一実施形態において、第5ダイオードD5、第7ダイオードD7、第5スイッチS5、第7スイッチS7のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第2バイパスモードまたは第3バイパスモードによって予め定められたスイッチだけをオン状態にスイッチングして、第1出力端子U及び第2出力端子Vによる電圧出力を遮断する。
【0041】
また、本発明の一実施形態において、第6ダイオードD6、第8ダイオードD8、第6スイッチS6、第8スイッチS8のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第1バイパスモードまたは第2バイパスモードによって予め定められたスイッチだけをオン状態にスイッチングして、第1出力端子U及び第2出力端子Vによる電圧出力を遮断する。
【0042】
図8は、本発明の一実施形態に係る制御部の単位セル制御過程を示すフローチャートである。
図8を参照すると、制御部401は、先ず、インバータの単位セルに含まれている複数のダイオードまたは複数のダイオードそれぞれに対応するスイッチの異常の有無を検出する(802)。仮に、複数のダイオード及び複数のダイオードそれぞれに対応するスイッチのうち少なくとも一つの異常発生が検出されたら、制御部401は、異常が発生したダイオードまたはスイッチの種類によって適用されるバイパスモードを決定する(804)。
【0043】
仮に、第5ダイオードD5、第7ダイオードD7、第5スイッチS5、第7スイッチS7を除く残りのダイオードD1〜D4、D6、D8及びスイッチS1〜S4、S6、S8のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第1バイパスモードを適用して単位セルの電圧出力を遮断する(806)。
【0044】
仮に、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4を除く残りのダイオードD5〜D8及びスイッチS5〜S8のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第2バイパスモードを適用して単位セルの電圧出力を遮断する(808)。
【0045】
仮に、第6ダイオードD6、第8ダイオードD8、第6スイッチS6、第8スイッチS8を除く残りのダイオードD1〜D5、D7及びスイッチS1〜S5、S7のうち少なくとも一つに異常が発生した場合、制御部401は、第3バイパスモードを適用して単位セルの電圧出力を遮断する(810)。
【0046】
このように、本発明においては、マルチレベルインバータに含まれるスイッチまたはキャパシタのいずれか一つに異常が発生した場合、第1乃至第3バイパスモードによるバイパス動作を通して単位セルの焼損を防止することができる。
【0047】
前述した本発明は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、本発明の技術的思想を外れない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるので、前述した実施形態及び添付の図面により限定されるものではない。