(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6227058
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/04 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
B66B23/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-114108(P2016-114108)
(22)【出願日】2016年6月8日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃裕
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−227782(JP,A)
【文献】
特開昭50−132677(JP,A)
【文献】
特開2000−053353(JP,A)
【文献】
特開2012−106821(JP,A)
【文献】
特開平02−291389(JP,A)
【文献】
特開2004−345808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスと、
無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、
前記踏段を走行させる駆動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを回転させる主モータと、
前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、
前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、
前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、
前記主モータと前記ベルト駆動装置を制御する制御部と、
を有し、
前記手摺りベルトの裏面には、走行方向に沿ってラックが形成され、
前記ベルト駆動装置は、
前記裏面を上にして走行する前記手摺りベルトの走行方向に沿って回転軸が配され、かつ、前記手摺りベルトの前記ラックと螺合するウォームギアと、
前記ウォームギアを回転させるベルトモータと、
前記踏段の走行速度を検出する検出部と、
を有し、
前記制御部は、前記検出部が検出した前記踏段の前記走行速度に基づいて前記ベルトモータを回転させて、前記踏段と前記手摺りベルトとを同期して同じ速度で走行させ、
前記ウォームギアの下方に複数の押圧ローラが前記手摺りベルトの走行方向に沿って回転自在に配され、
前記各押圧ローラが前記手摺りベルトを前記ウォームギアに押圧する、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記ベルト駆動装置は、前記欄干、又は、前記トラス内部に設けられ、
前記手摺りベルトは、前記ベルト駆動装置の位置においては前記裏面が上を向いて走行している、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記ウォームギアが1本である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
複数本の前記ウォームギアが前記手摺りベルトの走行方向に沿って順番に設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記手摺りベルトの裏面には、帆布が設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記検出部は、前記駆動スプロケットの回転数を検出するセンサである、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記検出部は、前記主モータの回転数を検出する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記ラックの溝は、前記手摺りベルトの幅方向に沿って形成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記ラックの歯は、ゴム又は金属で形成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアには、踏段の左右両側に欄干が設けられ、この欄干の上を手摺りベルトが踏段と同期して走行している。この手摺りベルトを走行させるために、欄干又はトラス内部に手摺りベルトシーブ又は複数のベルト駆動輪が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−240684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手摺りベルトと踏段とが同期し同じ速度で移動する必要があるが、実際には手摺りベルトと踏段の速度には若干のずれが生じる。このずれが大きくなると乗客の転倒を招く恐れがあり危険であるため、法律によって踏段と手摺りベルトの走行速度の差については規定されている。しかし、この踏段と手摺りベルトの同期を、乗客の安全ためにより確実にする必要がある。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、踏段と手摺りベルトの同期をより確実にするための乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、トラスと、無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、前記踏段を走行させる駆動スプロケットと、前記駆動スプロケットを回転させる主モータと、前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、前記主モータと前記ベルト駆動装置を制御する制御部と、を有し、前記手摺りベルトの裏面には、走行方向に沿ってラックが形成され、前記ベルト駆動装置は、
前記裏面を上にして走行する前記手摺りベルトの走行方向に沿って回転軸が配され、かつ、前記手摺りベルトの前記ラックと螺合するウォームギアと、前記ウォームギアを回転させるベルトモータと、前記踏段の走行速度を検出する検出部と、を有し、前記制御部は、前記検出部が検出した前記踏段の前記走行速度に基づいて前記ベルトモータを回転させて、前記踏段と前記手摺りベルトとを同期して同じ速度で走行させ
、前記ウォームギアの下方に複数の押圧ローラが前記手摺りベルトの走行方向に沿って回転自在に配され、前記各押圧ローラが前記手摺りベルトを前記ウォームギアに押圧する、乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1のエスカレータの側面から見た説明図。
【
図3】ウォームギアと手摺りベルトと押圧ローラの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の乗客コンベアについてエスカレータ10に適用した場合図面を参照してを説明する。
【0009】
実施形態1のエスカレータ10について
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0010】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1に基づいて説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0011】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0012】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24が設けられている。この駆動装置18は、主モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、主モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキ21(
図5に図示)とを有している。駆動チェーン22により左右一対の駆動スプロケット24,24が回転する。上階側の機械室14内部には、主モータ20やディスクブレーキ21などを制御する制御部50が設けられている。
【0013】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の駆動スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30が等間隔で取り付けられている。踏段30の前輪301は、駆動スプロケット24の凹部に係合し、主モータ20により駆動スプロケット24が回転すると踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の案内レールを走行し、後輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0014】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0015】
欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0016】
左右一対の手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内にそれぞれ侵入し、各手摺りベルト38は、ベルト駆動装置70によって駆動し、その後にスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部4
8から正面スカートガード42外に表れる。ベルト駆動装置70については、後から詳しく説明する。
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0017】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
エスカレータ10には、安全装置66が設けられている。安全装置66としては、スカートガード44に設けられたスカートガード挟まれ検出装置、インレット部46,48に設けられたインレット挟まれ検出装置、案内レール25に設けられた踏段浮き上がり検出装置、踏段チェーン切断検出装置、非常停止ボタンなどである。スカートガード挟まれ検出装置とは、スカートガード44と踏段30の間に異物(例えば、服や荷物)が挟まれたことを検出する装置であり、インレット挟まれ検出装置とは、手摺りベルト38が引き込まれるインレット部46又はインレット部48に異物(例えば、乗客の手や荷物)が同時に引き込まれたときに検出する装置である。
【0019】
(2)ベルト駆動装置70
次に、ベルト駆動装置70の構造について
図2〜
図5に基づいて説明する。なお、ベルト駆動装置70は、左右一対の手摺りベルト38にそれぞれ設けられている。
【0020】
手摺りベルト38は、
図3と
図4に示すように、ゴム又はウレタン製であって断面C字型であり、中央の平らな部分と、その平らな部分の左右両側からそれぞれ湾曲するように延びた湾曲部とからなる。
【0021】
手摺りベルト38の裏面には、帆布90が接着されている。また、手摺りベルト38の裏面中央部には、その長手方向(走行方向)にラック92が設けられている。このラック92は、複数の溝94と凸部96とが幅方向に交互に形成されている。このラック92は、硬質ゴムによって形成されている。なお、帰路の手摺りベルト38は裏面を上にして走行する。
【0022】
ベルト駆動装置70は、欄干36の下部に配され、
図2に示すように、1個のウォームギア72と、ウォームギア72の下方に配された2個の押圧ローラ74,74を有する。走行する帰路の手摺りベルト38は、裏面を上にしてウォームギア72と2個の押圧ローラ74,74との間を走行する。
【0023】
ウォームギア72は、雄ネジ形状を成し、手摺りベルト38の走行方向と平行に回転軸が配され、かつ、帰路の手摺りベルトの上方に位置し、ウォームギア72と手摺りベルト38のラック92の溝94とが螺合する。ウォームギア72の一端部には、ベルトモータ76が設けられ、他端部にはウォームギア72を回転自在に支持する軸受け80が設けられている。
【0024】
支持板78の下部に1枚の押圧板86が押圧部88,88を用いて設けられている。押圧板86の両端部には、2個の押圧ローラ74,74がそれぞれ取り付けられている。これら押圧ローラ74,74の取り付け位置は、ウォームギア72の両端部にそれぞれ対応している。押圧部88,88は、押圧板86の両側に設けられ、コイル状のバネによって押圧板86を上方に押圧する。
【0025】
ベルトモータ76の回転によりウォームギア72が回転すると、ウォームギア72と螺合している手摺りベルト38のラック92が移動して、手摺りベルト38が走行する。このとき、一対の押圧部88,88が押圧板86を上方に押圧することにより、2個の押圧ローラ74が手摺りベルト38をウォームギア72に押圧して、螺合が外れないようにしている。
【0026】
(3)エスカレータ10の駆動回路96
次に、エスカレータ10の駆動回路96について
図5に基づいて説明する。主モータ20は、インバータ回路68によって、起動、停止、回転数がインバータ制御されている。制御部50は、このインバータ回路68に対し制御信号を出力して、主モータ20を制御する。また、ディスクブレーキ21が接続され、主モータ20の停止時にこのディスクブレーキ21を動作させる。
【0027】
また、制御部50には、上階側の操作盤52、スピーカ54、下階側の操作盤56、スピーカ58及び安全装置66が接続されている。
【0028】
さらに、制御部50には、手摺りベルト38を駆動するベルトモータ76と、駆動スプロケット24の回転数を検出する検出部82が接続されている。この検出部82は、例えば光センサよりなる。
【0029】
(4)ベルト駆動装置70の動作状態
次に、ベルト駆動装置70の動作状態について説明する。
【0030】
制御部50が、操作盤52又は操作盤56からの操作により主モータ20を回転させ、踏段30を走行させようとする。このとき、駆動スプロケット24が回転を始め、その回転数を検出部82が検出する。
【0031】
制御部50は、検出部82が検出した回転数に基づいてベルトモータ76を同期して回転させる。ベルトモータ76が回転すると、ウォームギア72が回転し、それと共にラック92が走行を始め、手摺りベルト38が踏段30と同期して同じ速度で走行する。
【0032】
(5)効果
本実施形態によれば、検出部82が駆動スプロケット24の回転数を直接検出し、それに基づいてベルトモータ76を同期して回転させて手摺りベルト38のラック92を走行させるため、踏段30と手摺りベルト38が同じ速度で同期して走行する。
【0033】
また、手摺りベルト38のラック92とウォームギア72が噛み合ってラック92が移動するため、手摺りベルト38が滑ったりすることがなく、確実に同じ走行速度で走行する。
【0034】
次に、
図6に基づいて実施形態2のエスカレータ10について説明する。実施形態1と本実施形態の異なる点は、ウォームギア72の個数にあり、本実施形態では、ウォームギア72を2個設ける。
【0035】
実施形態1のようにウォームギア72が1個の場合には、階高、すなわち、踏段30の走行距離が長いエスカレータ10において手摺りベルト38の駆動力が不足する場合がある。そのため、手摺りベルト38の走行方向に沿ってウォームギア72を2個順番に設け、それぞれをベルトモータ76で回転させることにより、より強い駆動力を得て手摺りベルト38を走行させる。
【0036】
これにより、階高のエスカレータ10であっても、踏段30と同期して手摺りベルト38を踏段30と同じ速度で走行できる。
【0037】
本実施形態では、2個のウォームギア72を設けたが、これに代えて3個以上のウォームギア72を設けて、より強い駆動力を得るようにしてもよい。
【0038】
上記実施形態では、押圧ローラ74を2個設けたが、これに代えて2個以上の押圧ローラ74を設けて、ウォームギア72に手摺りベルト38をより強く均等に押圧してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では検出部82が、駆動スプロケット24の回転数を光センサで設けたが、これに代えてリミットスイッチなどで検出してもよい。また、主モータ20の回転速度をインバータ回路68からの駆動電流などで検出して、ベルトモータ76を制御してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、手摺りベルト38の裏面に設けたラック92は硬質ゴムであったが、これに代えて凸部96のみ金属製であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0042】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。A挿入
【符号の説明】
【0043】
10・・・エスカレータ、20・・・モータ、24・・・駆動スプロケット、30・・・踏段、38・・・手摺りベルト、50・・・制御部、70・・・ベルト駆動装置、72・・・ウォームギア、74・・・押圧ローラ、76・・・ベルトモータ、82・・・検出部、92・・・ラック
【要約】
【課題】踏段と手摺りベルトの同期をより確実にするための乗客コンベアを提供する。
【解決手段】手摺りベルト38を駆動させるベルト駆動装置70は、手摺りベルト38の走行方向に沿って回転軸が配され、かつ、手摺りベルト38の裏面に設けられたラック90と螺合するウォームギア72と、ウォームギア72を回転させるベルトモータ76と、踏段30の走行速度を検出する検出部82とを有し、制御部50は、検出部82が検出した踏段30の走行速度に基づいてベルトモータ76を回転させて、踏段30と手摺りベルト38を同期して走行させる。
【選択図】
図2