【実施例】
【0177】
チップデザインおよび製造。Slipchipは、以下の変更を除いて、この出願に他に記述されたとおりのSlipChipのガラスエッチング製造を使用して製造した:この実施例において、〜45分のエッチングを使用して〜60μmの深さを得た。アクセス穴は、直径が0.030インチのダイヤモンドビットで穿孔した。エッチングされたガラス板の表面をMillipore水、続いてエタノールで洗浄して、シラン化またはフッ化エチレンプロピレン(FEP)コーティングの前に酸素プラズマ処理に供した。
【0178】
スピンコーティングFEP。FEP(TE−956 8、Dupont)の水性乳濁液は、最初に使用前にMillipore水で4倍希釈した。SlipChip装置をプラズマ洗浄後、溶液を、プラスチックピペットを使用することによって装置上に均一に散布した。スピンコーティングについては、回転速度を1500rpmにてセットし、かつプロセスを30秒間実施するか、またはスピン速度を2000rpmにてセットし、かつプロセスを30秒間実施した。一旦コーティングが終わったら、SlipChipを120℃オーブンへ移して、10分間インキュベートした。インキュベーションの後、SlipChipを10分間ホットプレート上で250℃にて焼成して、続いて温度を265℃に増やすと共にさらに10分間焼成した。焼いた後、SlipChipを1分間ホットプレート上で340℃にて焼結した。次いで、焼結Chipを室温に冷却した。
【0179】
SlipChipの構築。SlipChipは、FC−40下で組み立てた。底面プレートを、パターンを上に向けて、ペトリ皿のFC−40に最初に浸漬した。次いで、上部プレートを、パターンを下に向けて、底面プレートの上部に敷設した。2枚のプレートを、互い違いにこれらを移動することによって位置に整列させ、次いで4つのマイクロバインダークリップを使用することによって固定した。SlipChipは、表面上の余分のFC−40を取り除いたた後に、使用準備ができていた。
【0180】
接触角の測定。SlipChipのプレートを、最初にタンク内のフルオロカーボンに浸漬した。下を向けたプレートを、プレートとタンクの底面との間に間隙が生じるように、それぞれの末端上の2つのマイクロバインダークリップによって固定した。5μLの測定した水溶液を間隙にピペットで移し、周囲のフルオロカーボンにおけるその浮力によって水性液滴をプレートに接触した。次いで、基体に対する液滴の接触角を、光学接触角メーター(Rame-HartInstrument Co., Model 500)を使用することによって測定した。
【0181】
食品色素アッセイ。食品色素アッセイのために使用した全ての溶液は、使用前に0.45μmのPVDF(登録商標)注入器フィルターで濾過した。4つの食品色素(茶色、ピンク、赤色および青色、Ateco、GlenCove、NY)をこれらの保存液から〜10倍希釈して、16の試薬ダクトにピペット負荷した。それぞれのダクトに負荷するために、4μLの色素を、色素溶液が放出口から出てくるまで、ピペットを使用して入口を介して最初に押した。試薬を負荷した後に、SlipChipをすべらせて、試料のための連続流体経路を形成した。次いで、緑の色素を20倍希釈して、試料入口を介して負荷した。ピペットを使用することによって、4μLの色素を、全ての試料ダクトが完全に満たされるまで、Chipに負荷した。一旦試料が負荷されたら、SlipChipを再び滑らせて拡散によって溶液を混合した。
【0182】
混合比の定量化。負荷手順は、食品色素アッセイ法のためのものと同様であった。2つの溶液、蛍光溶液(44.8μM 10mM Tris中のAlexa−488、pH7.8)および緩衝液(10mM Tris、pH 7.8))を使用した。それぞれの経路が11の領域を含む最も外側の4本の流体経路を蛍光溶液を負荷して、残りの12本の流体経路を緩衝液を負荷した。また、蛍光溶液を試料として使用した。試薬のための領域および試料のための領域を合わせた後で、SlipChipを暗闇において1時間インキュベートして混合を完了させた。次いで、SlipChipを二度目にすべらせて、試薬のための領域を試料のためのものから分離した。蛍光溶液を含む最も外側の4本の流体経路は希釈せずに、強度測定を較正するための対照を提供した。
【0183】
混合比の定量化:蛍光の測定。Alexa488の蛍光強度が蛍光顕微鏡の作動範囲において濃度に線形に相関されることを確認するために、本発明者らは、SlipChipについての希釈曲線を作製した。第1に、1つの緩衝液(10mMTris、pH7.8)およびもとのAlexa488溶液(10mM TrispH 7.8中に44.8マイクロモル濃度)の1/4、1/2および1倍濃度の濃度の3つの溶液を含む4つの溶液を、予め組み立てた使用者が負荷するSlipChipの4本の分離された流体経路に負荷した。上部プレートを、全ての領域が分離されるように、底面プレートに対してすべらせた。次いで、底面プレート上の負荷した領域の蛍光強度を、10x0.4NAライカ対物レンズおよびHamamatsuORCAERカメラを備えたライカDMI6000顕微鏡(ライカMicrosystems)を使用することによって測定した。GFPフィルターを使用してAlexa488蛍光を収集した。4msの暴露時間を使用した。イメージは、Metamorphイメージング・システムバージョン6.3r1(UniversalImaging)を使用することによって取得して、解析した。蛍光シグナルの強度を抽出するために、あらゆる関心領域の中央において、100ピクセル×100ピクセルの領域を選択した。同じAlexa488濃度である領域に属する領域(それぞれの濃度について5領域)の平均積分強度を対応する濃度に対してプロットして較正曲線を得た。
【0184】
次いで、蛍光測定を、試料領域を使用することによって行った。本発明者らは、底面プレートにおける領域の蛍光強度を測定した。これにより、確実に蛍光強度を測定するための作動パラメーターがばらつかなくなった。蛍光顕微鏡のための同じ設定を、希釈曲線を作製する際に使用したこの実験においても使用した。次いで、測定からの強度を希釈曲線に基づいた濃度に変換した。顕微鏡を較正するために、GFPのための蛍光参照スライドの蛍光強度を記録して、バックグラウンド補正のために使用した。イメージは、Metamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(Universal Imaging)を使用することによって取得して、解析した。
【0185】
混合比の定量化:領域サイズの特性付け。ガラスのウエットエッチングは、等方性であると考えられ、エッチングの速度は、全ての方向で同じである。エッチング後の領域のサイズをStereoscopeがマイクロ定規によって較正したライカMZ16を使用することによって測定して、領域の容積をそれに応じて算出した。
【0186】
混合比の定量化:データ分析。強度測定を較正するために、バックグラウンド強度を最初に全ての蛍光イメージから減算した。次いで、それぞれの領域の強度をそれぞれの領域の中心に位置する100ピクセル×100ピクセル領域の積分強度から抽出した。それぞれの領域についての希釈率は、その領域の強度を希釈されなかった同一サイズの領域の強度で割ることによって得た。
【0187】
RC結晶化。ブラストクロリス・ビリディス(Blastochlorisviridis)からの光合成反応中心(RC)の試料を得た。負荷手順は、食品色素アッセイのためにものと同様であった。沈殿剤(40mMNaH
2PO
4/Na
2HPO
4中の3.2M(NH
4)
2SO
4、pH6.0)を7つの試薬ダクトに負荷して、タンパク質試料(0.07%(w/v)のLDAO、7%(w/v)の1,2,3−ヘプタントリオール、4.5%(w/v)のトリエチルアミンホスフェート(TEAP)、17mMNa
2HPO
4/NaH
2PO
4中の36mg/mL RC、pH 6.0)を試料ダクトに負荷した。次いで、試料を含むSlipChipを、暗闇における室温にて、ペトリ皿のFC−70中に貯蔵した。結晶の形成のために調べるために、試料を10日にわたってモニターした。
【0188】
S lipChipにおける類鼻疽菌(Burkholderiapseudomallei)からのグルタリル−CoAデヒドロゲナーゼの結晶化。タンパク質試料は、感染疾患のためのシアトル構造ゲノムセンター(SSGCID)から得た。Wizardスクリーンに基づいた手製のスクリーニングキットからの48個の沈殿剤(precipitant)を、3つのSlipChipsに、それぞれのChipに16個の沈殿剤で、負荷した;同じ負荷手順は、食品色素実験においても同じであった。次いで、それぞれのSlipChipを別々のペトリ皿のFC−70に浸漬した。ペトリ皿を室温にてインキュベートして、結果を2週間モニターした。結晶を含む領域のイメージは、ライカMZ16 StereoscopeにつないだSPOT Insightカメラ(Diagnostic Instruments,Inc., SterlingHeights, MI)によって取得した。
【0189】
SlipChipを使用しない、ウェルプレートにおける類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)からのグルタリル−CoAデヒドロゲナーゼの結晶化。一旦グルタリル−CoAデヒドロゲナーゼについての結晶化が確認されたら、実験を、マイクロバッチ法を使用するシッティングドロップウェルプレート(Hamptonresearch)にスケールアップした。SlipChipでのスクリーニング実験によって確認されたのと同じ混合比にて、タンパク質試料を沈殿剤と混合して、ウェルにおいて3μLの最終容積を得た。貯蔵器において、Millipore水を沈殿剤と混合して、ウェルと同じ沈殿剤濃度にした;最終容積は、600μLであった。それぞれの条件で1つの複製を有した。次いで、プレートをシールテープ(Hamptonresearch)で封止して、室温にてインキュベートした。結晶のイメージをライカMZ 16 StereoscopeにつなげたSPOT Insightカメラ(DiagnosticInstruments, Inc., Sterling Heights, MI)によって取得した。
【0190】
X線回折およびデータ処理。X線回折のための結晶は、ウェルプレート実験から得た。PEG−400を含んだ沈殿剤については、母液を凍結保護物質として使用して、PEG−400の濃度を25%(w/v)となるように変えた。その他の沈殿剤については、20%(v/v)のグリセロールを加えた母液を凍結保護物質として使用した。結晶を、最初に、ナイロンループを使用することによってもとのウェルから凍結保護物質を含むウェルへ移した。次いで、結晶を液体窒素中で凍結させた。X線回折アッセイは、AdvancedPhoton Source(Argonne National Laboratory)のGM/CA Catステーション23 ID−Dにて行った。X線データは、1.0332の波長を使用して100Kにて収集した。
【0191】
データは、HKL−2000を使用して処理して、解析した。
【0192】
グルタリル−CoAデヒドロゲナーゼのX線構造決定。グルタリル−CoAデヒドロゲナーゼの構造は、開始モデルとしてPDBid 3D6B構造およびCCP4セットのMOLREPプログラムを使用して分子置換によって解析した。PEG−400を含む条件において成長した結晶から収集されるデータを使用した。剛体、位置および温度因子の洗練をプログラムREFMAC5で最大の可能性のある標的を使用して行った。シグマA加重2Fobs−FcalcおよびFobs−Fcalcフーリエマップは、CCP4を使用して算出した。フーリエマップはをCOOTに示して、調べた。新たな溶媒分子の検索をCOOTの援助で行った。座標および構造因子は、ProteinData Bankにエントリーコード3II9(係属中)で寄託した。
【0193】
SlipChipの一定の態様において、マルチパラメータースクリーニングを、自由界面拡散およびマイクロバッチ法を組み合わせてナノリットルタンパク質結晶化について行うことができる。本発明の一定の態様において、SlipChipに基づいた自由界面拡散(FID)法および単一の装置においてマイクロバッチおよびFID結晶化法を同時に行うSlipChipに基づいた複合法を行うことができる。
【0194】
一つの態様において、FID SlipChipを、複数の試薬を、それぞれ複数の拡散平衡時間にてスクリーニングするようにデザインして、3つのSlipChipsを使用して合計480の実験について12μLのそれぞれのタンパク質を消費して、それぞれ5つの異なる平衡時間にて48の異なる試薬に対する2つのタンパク質、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのエノイル−CoAヒドラターゼおよびバベシア・ボビス(Babesia bovis)からのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化のための条件をスクリーニングするために使用した。複合SlipChipを、複数の試薬を、それぞれ複数の混合比および複数の平衡時間にてスクリーニングするようにデザインして、2つのタンパク質、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのエノイル−CoAヒドラターゼおよびバベシア・ボビス(Babesia bovis)からのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化のための条件をスクリーニングするために使用した。相互汚染を予防すると共に、FID安定のためにくびれたダクトに溶液を保持するために、SlipChipのプレートをナノ−スケール領域のパターンでエッチングした。このナノパターンを使用して、シラン処理されたガラスの表面上の水性溶液の接触角を増大させた。ナノパターニングは、Z.BurtonおよびB. Bhushan、Nano letters, 2005, vol. 5, no8, pp. 1607−1613において一般に記述されており、その全体が参照により援用される。複合SlipChipにより、良好な結晶化状態の数を増加し、別々のFIDおよびマイクロバッチスクリーニングよりもよい結晶化条件を同定した。結晶化実験を、SlipChipスクリーニングの間に同定された条件を使用してウェルプレートにおいてスケールアップして、1.95Å分解能にてジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼのタンパク質構造を得るるために、X線回折データを得た。この自由界面拡散アプローチは、微小溶液装置において勾配を準備するのに便利かつ高スループットの方法を提供し、細胞に基づいたアッセイのためにも使用することができる。
【0195】
SlipChipに基づいたアプローチは、単一の微小溶液装置において、タンパク質結晶化、マイクロバッチおよび自由界面拡散(FID)のために同時に2つの方法を行う使用することができる。現在、タンパク質結晶化には、チャレンジがある。タンパク質を結晶化するためには、必要とされる条件を決定するために広大な化学空間を探索しければならない。正しい沈殿剤、並びに正しいタンパク質および沈殿剤の濃度の検索は、より迅速なアッセイおよびより小さな試料サイズによって促進され、簡単で、迅速かつ制御可能な系は、新たなタンパク質構造の発見を前進させる。タンパク質を結晶化させるための特に魅力的な方法は、ナノリットル−スケールFIDであり、これは、タンパク質の濃度および沈殿剤の濃度の両方が拡散によって徐々に変わり、結晶核生成のためのより高い一過性過飽和レベルを提供し、かつ迅速な混合によって誘導される沈澱を排除するので、結晶化のための状態図を探索するためである。ナノリットル−スケールFIDは、結果的に結晶化のために効率的であるが、現在、これは弁に基づいた系で実施されるだけである。FIDは、典型的には、チップに基づいた、およびゲル鍼に基づいたアプローチを含むマイクロリットルスケールで実施される十分に確立されたカウンター拡散と力学的に非常に類似する。FIDにおける弁の使用は、外部制御設備を必要とすし、弁は、たいていPDMSで構成される。PDMS装置は、雰囲気および蒸発の制御を必要とするというさらなる問題を有する。FIDを実施するための弁のないアプローチにより、方法が単純化して、より広くそれを利用できるようになる。別の結晶化の方法は、タンパク質の結晶が形成する平衡化された条件と異なる経路を探索し、およびしたがって、異なる結晶化結果を生じる。これらの方法は、結晶化の動態を変化させ、したがって、タンパク質の結晶を形成するための異なる経路を探索するように改変することができ;しかし、異なる方法には、タンパク質溶液および沈殿剤溶液を組み合わせるための異なる技術を必要とする。1つ以上の結晶化の方法を使用することが望ましいものの、1つの実験において2つの技術を使用することは、技術的に困難である。
【0196】
本明細書において記述したSlipChip技術は、これらの困難を対象にする。これは、予め負荷された形式および使用者が負荷する形式の両方で証明された。いくつかの態様において、使用者が負荷する形式を使用して、SlipChipに基づいたFID技術、並びに1つの「複合」SlipChipにおける組み合わせたFIDおよびマイクロバッチ技術を証明することができる
。
【0197】
本発明者らは、FID法を組み込むようにSlipChipの態様をデザインした。このSlipChipは、5つの異なる平衡時間にて16の異なる沈殿剤に対して試料をスクリーニングするようにデザインした。それぞれの平衡時間を、単一のSlipChipにおいて160アッセイの総量について二組調査した。SlipChipは、それぞれ10の領域を含む沈殿剤のための16本の別々の流体経路および160の領域を含むタンパク質試料のための単一の流体経路を形成するように構成することができる。FID法を組み込むために、SlipChipをタンパク質領域および沈殿剤領域を接続するように「すべらせた」ときに、タンパク質試料のための連続した流体経路を形成したマイクロダクト(深さ21μmのダクト)を、タンパク質領域を沈殿剤領域に接続するくびれたダクトにした。タンパク質領域と沈殿剤領域との間の距離を徐々に増加させることにより、くびれの長さは、91μmから491μmに増え;ダクトの幅を減少させることにより、くびれの幅は、104μmから58μmに減少した。くびれダクトの長さをダクトの断面積で割ったものとして定義されるくびれの形状は、結果的に変化した。
【0198】
SlipChipは、結晶化のFID法を使用して16の異なる沈殿剤に対してタンパク質をスクリーニングするようにデザインした。複数の沈殿剤、並びにタンパク質をそれぞれの沈殿剤と混合するための複数の平衡時間を同じSlipChipでスクリーニングすることができる。上部プレートは、タンパク質のためのダクトおよび沈殿剤のためのダクトを含む。タンパク質のためのダクトは、タンパク質領域および沈殿剤領域を接続するくびれダクトになるだろうし、これらのダクトは、左から右に幅が漸減し、徐々に平衡時間が変わる。底面プレートは、タンパク質のための領域および沈殿剤のための領域を有する。タンパク質のための領域と沈殿剤のための領域との間の距離は、左から右に徐々に増加し、徐々に平衡時間が変わる。2枚のプレートが組み立てられたときに、タンパク質のための流体経路および沈殿剤のための流体経路が形成される。「すべらせた」後に、底面プレートからのタンパク質および沈殿剤領域は、上部プレートの細いダクトによって橋渡しされる。
【0199】
くびれの形状が平衡時間を制御し、本発明者らは、数学的シミュレーションと一致して、平衡時間がくびれ形状により線形に増加することを見いだした。完全に展開された拡散プロフィールで定常状態において生じる平衡時間は、これらのプロフィールを確立する時間とは異なり;後者の時間は、距離の二乗で変化する。FIDアッセイ法は、弁を必要とせず、かつピペットで取ること、およびすべらせることのみを含み、SlipChipにおいて容易にセットアップされた。このアプローチにおいて、タンパク質試料のためのダクトを、FIDアッセイ法をセットアップするために使用したため、ほとんど試料は無駄にならなかった。くびれは、沈殿剤またはタンパク質を含む領域と比較して細くなるようにデザインされていたので、くびれ形状を変えることによって生じる容積の変化は、結晶化アッセイの総容積と比較してごくわずかであった。くびれの容積は、結晶化試料の総容積のわずか4〜8%を構成した。本発明者らは、平衡時間を変えるとどのようにタンパク質結晶化に影響を及ぼすかを証明した。
【0200】
ダクトの形状を変えると、SlipChipにおける平衡時間が変わる。それぞれの条件は、異なる平衡時間を示し、2組行った。モデル蛍光色素(DTPA)を使用することによって、種々のくびれの外形について拡散プロフィールを得た。タンパク質のための領域における平均強度は、領域全体のラインスキャンによって測定した。拡散プロフィールは、くびれの外形に依存した。50%平衡時間およびくびれ形状は、線形に関連がある。50%平衡時間は、タンパク質領域における平均強度について、最大の平衡強度の半分に達するためにかかる時間として定義した;くびれ形状は、くびれの長さをくびれの断面積で割ったものにより定義した。最も短い平衡時間では、沈殿物のみが得られた。平衡時間が増加するほど、より少しの、より大きな結晶が得られた。
【0201】
本発明者らは、FID SlipChipを使用してブラストクロリス・ビリディス(Blastochloris viridis)からの光合成反応中心を結晶化させることによって、結晶化の動態に対する平衡時間の効果を最初に証明した。本発明者らは、平衡時間が増加するにつれて、タンパク質が沈殿から多くの小さな結晶により大きな少数の結晶に進行したことを証明した。次いで、本発明者らは、2つのタンパク質、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのエノイル−CoAヒドラターゼおよびバベシア・ボビス(Babesia bovis)からのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼのための結晶化条件をスクリーニングするためにFIDSlipChipを使用した。およそ12μLのそれぞれのタンパク質が、合計480件の実験のために48の沈殿剤を含むスクリーニングキットに対してスクリーニングするために消費された。これは、3つのSlipChipsで行われ、それぞれのSlipChipは、チップ当たり合計160の実験について、およびチップ当たり4μLのタンパク質を消費して、沈殿剤当たり二組の16の沈殿剤および5つの条件であった。本発明者らは、また同じ沈殿剤に対してマイクロバッチ法を使用して使用者が負荷するSlipChipの一定の態様を使用して両方のタンパク質をスクリーニングして、マイクロバッチ結果をFID結果と比較した。
【0202】
アッセイした2つのタンパク質は、異なる核生成の動態を示し:エノイル−CoAヒドラターゼは 迅速にに核になり、一方ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼは、ゆっくり核になる、。エノイル−CoAヒドラターゼについては、FIDは、核生成が最小限になり、沈澱だけがマイクロバッチにおいて観察される条件で結晶を生じる。FIDSlipChipを使用することによって、本発明者らは、いくつかの条件下でエノイル−CoAヒドラターゼの結晶を得た。ブラストクロリス・ビリディス(Blastochlorisviridis)からの光合成反応中心についてなど、両方法において結晶を生じる条件下で、FIDは、より少しの大きな結晶を生じ、一方マイクロバッチは、多くの小さな結晶を生じる。結晶が形成された場合のジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼアッセイ法については、わずかな結晶がそれぞれの試料において得られ、ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化は、核生成に限定されることを示した。1つの沈殿剤条件だけがFID法を使用して結晶を生成したが、3つの沈殿剤条件は、マイクロバッチ法において結晶を生じた。これは、異なる核生成動態をもつタンパク質は、異なる結晶化技術を必要とするだろうこと、および平行した複数の技術の使用により、タンパク質結晶を産生するために適した条件を同定する可能性が増加することを暗示する。
【0203】
SlipChipのもう一つの態様において、結晶化のための沈殿剤およびその濃度を同定することに加えて、2つの方法(FIDおよびマイクロバッチ)を同時にスクリーニングした。一定の態様において、タンパク質試料のための連続流体経路および異なる沈殿剤のための16の別々の流体経路を構成することができる。この態様において、マイクロバッチ実験のためにデザインされた領域およびFID実験のためにデザインされた領域は、それぞれの流体経路において、単一のタンパク質を、16の沈殿剤に対してそれぞれ複数の混合比および平衡時間にてスクリーニングすることができた。この態様において、FID領域は、チップ当たり合計176の実験、16の沈殿剤のそれぞれについて5つのマイクロバッチ実験および6つのFID実験について複数の混合比(1:2、1:1および2:1)を有する。
【0204】
複合SlipChipにおいて、沈殿剤、並びにタンパク質を混合するための複数の容積および複数の平衡時間を、マイクロバッチおよびFID法を使用して同じSlipChipでスクリーニングすることができる。上部プレートは、タンパク質のための領域、並びに沈殿剤(マイクロバッチ)のためのダクトおよびタンパク質および沈殿剤の両方(FID)のためのダクトを含む。底面プレートは、タンパク質のためのダクト、並びに沈殿剤(マイクロバッチ)のための領域およびタンパク質および沈殿剤の両方(FID)のための領域を有する。2枚のプレートが組み立てられたときに、タンパク質のための流体経路および沈殿剤のための流体経路がマイクロバッチおよびFID法のために領域を満たすように形成される。マイクロバッチでは、2つの領域が互いに整列され、FIDでは、2つの領域が狭いダクトによって接
続される。
【0205】
一定の態様において、望まれない相互汚染は、すべらせる工程の間に潜在的に生じ得る:溶液の薄膜をSlipChipの2枚のプレートの間に形成して、分離されるべきであるダクトおよび領域を接続することができる。望まれない相互汚染を最小限にするために、〜130°を超える潤滑剤フルオロカーボンにおける溶液とSlipChipのプレートとの間の接触角度が好ましく、その他の実験では、フッ素化エチレンプロピレンの薄層でプレートをスピン被覆することが好ましい。FID法の一定の態様において、くびれダクトにおける溶液は、このような高接触角において安定ではなく、界面エネルギーを最小限にするために分解する傾向がある。本発明者らは、SlipChipの表面を、それが領域内部およびくびれダクトの表面よりも疎水性になるようにパターン化することによって、この問題を解決した。そのために、本発明者らは、以前のエッチング工程から残ったコーティングを洗浄する前に、余分な微細エッチングの工程を導入した。これにより、パターン250nmの深さである10μm直径領域を作製した。ナノパターニングでないと、0.1%のN,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド(LDAO)試料溶液の平均接触角は、わずか112.2°であり、ナノパターニングでは、同じLDAO試料溶液の平均接触角は、134.2°であった。加えて、ナノパターニングは、すべらせる工程の間に溶液端に直接曝露されるガラスの表面領域を減少させた。小さな領域は、潤滑液をトラップして、溶液漏出を予防するためのバリアを生じた。
【0206】
ナノパターニングの性能は、ナノ−スケール領域サイズ、間隔およびエッチングされる深さを含むナノパターンの形状による影響を受けた。これらのパラメーターは、変えることができ、それぞれのナノパターニングの接触角を測定することができる。ナノ−スケール領域の深さおよび表面領域の両方が接触角に影響を及ぼすがずである。ナノパターニングでシラン処理したガラスは、典型的にはナノパターニングでないガラスよりも高い接触角を有し、接触角は、エッチングの深さとともに増加した。接触角は、ナノパターニングの深さが196nm〜3.81μmの範囲であった場合のガラス板について130°を超えた。3.81μmの深さでのナノパターンについては、最大接触角は、153.62°であった(RSD=1.01%、n=5、液滴準備の5分後に測定した)。接触角は、5分後に接触角を測定することによって観察すると、時間と共に減少した。減少の量は、ナノパターンの深さによる影響を受けた。200nm未満の深さでのナノパターンは、200nmよりも深かったナノパターンのものよりも迅速に接触角が減少した。また、複合SlipChipを使用して、別々のFIDおよびマイクロバッチ実験を使用して研究した同じ2つのタンパク質、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのエノイル−CoAヒドラターゼおよびバベシア・ボビス(Babesia bovis)からのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化のための条件をスクリーニングした。核生成および結晶成長への2つの経路が同時に調査されたので、複合アプローチは、関連した結晶化条件の検索をより効率的にしたし、その一方で、同じスクリーニングキットに対してそれぞれのタンパク質をスクリーニングするために、同じ小量のタンパク質(〜12μL)を消費した。複合SlipChipのマイクロバッチおよび自由界面拡散構成は、機能し、両方のタンパク質のための結晶化条件を同定した。複合SlipChipにおいて、別々のマイクロバッチおよびFIDスクリーニングによって同定される条件の大多数を、また同定した。エノイル−CoAヒドラターゼについては、個々のスクリーンのいずれにおいても同定されなかった2つの新たな条件がハイブリッドスクリーンによって手に入った。
【0207】
複合SlipChipを使用するタンパク質のための結晶化条件のスクリーニングは、マイクロバッチおよびFID法からの結果に適合した。全ての領域は、試薬41(45%(W/V)PEG−3000、0.1MのCHES、pH9.5)を含んだ。マイクロバッチ法を使用することによって、結晶が2:1(タンパク質:沈殿)の混合比にて形成した。FID法を使用することによって、結晶が1:2の混合比にて形成した。複合法により、多くの、またはエノイル−CoAヒドラターゼおよびジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの両方のためにマイクロバッチまたはFIDのいずれか単独よりも多くの結晶化ヒットを生じた。
【0208】
本発明者らは、マイクロバッチSlipChipにおいて同定されたジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化のための3つの条件の1つをスケールアップした。選択した条件は、タンパク質試料を、20%(w/v)のPEG−8000、0.2MのNaClおよび0.1MのCHES(pH9.5)と0.33:0.57の混合比であった。認識されたヒットがより少ないことによって示されるように、ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼは、結晶化することがより困難であるので、本発明者らは、エノイル−CoAヒドラターゼの代わりにジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼをスケールアップした。沈殿剤、20%(w/v)のPEG−8000、0.2MのNaClおよび0.1MのCHES(pH9.5)では、選択した混合比にて最も定義された形状をもつ結晶を生じた。マイクロバッチ法結晶化試料をSlipChipsからウェルプレートへの移行させることは単純明快であり、本発明者らは、ケールアップアプローチから首尾よくス結晶を得た。本発明者らは、完全なX線回折データセットを収集して、1.95Åの解像度、スペース基P212121にて構造を決定した。構造は、Protein Dataバンク、PBDid:3KJRに寄託した。20%(w/v)のPEG−8000、0.1MのCHESpH 9.5を使用する条件における結晶カードにおいて微小溶液マイクロバッチを使用して結晶を得るために、同じタンパク質をSeattle StructuralGenomics Center for Infectious Disease (SSGCID)およびAccelerated Technologies Centerfor Gene to 3D Structure (ATCG3D)施設を使用して平行してスクリーンした。これらの結晶は、2.35Å構造、スペース基P1(PDBid3D6B)を得た。スクリーンは、スクリーンが完了し、結晶が得られた後まで、共有した結晶化に関するいずれの情報もなく二重盲検法で行った−−SlipChipおよび随伴するスケールアップアッセイでのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化のスクリーニングは、施設SSGCIDおよびATCG3Dにおけるスクリーニングによって得られた条件のいずれの知識もなく行った。同じPEGおよび緩衝液共有し、並びにSlipChipスクリーンにおけるNaClの存在のみが異なる類似の条件を独立して発見して構造を得た。本発明者らは、異なるスペース基で、より高い解像度の構造を得た。
【0209】
本発明者らは、タンパク質を結晶化させるためにSlipChipに基づいたFIDアプローチおよびマイクロバッチおよびFID結晶化技術を同時に使用するためにの複合SlipChipに基づいたアプローチを証明した。SlipChipの一定の態様は、自由界面拡散において160実験およびマイクロバッチおよび自由界面拡散の両方において176実験以上を準備するための単純かつ使いやすい方法を提供し、全てのアッセイは、単一のスリップで同時に準備することができる。それぞれの試料が必ずしも個々に制御される必要がないタンパク質結晶化などの適用については、弁が存在しないことにより、劇的にアッセイの実施および装置の製作が単純になる。SlipChipは、安価な成形技術および共通のプラスチックに適合するので、装置の製作は、SlipChipプラットフォームを使用することによってさらに単純化される。プラグに基づいた結晶化技術においてすでに証明されているより高度な技術は、SlipChipデザインと適合性である。複数の沈殿剤、混合比および平衡時間をスクリーニングすることに加えて、複合SlipChipにより、同じ装置におけるナノリットルスケールでの2つの異なるタンパク質結晶化技術の比較を可能になる。単一の装置を使用することによって、使用される界面化学および溶液が同じであり、他方を上回る一方の任意の利点を同定することができ、現実化することができる。マイクロバッチは、より大きな界面を介した迅速な混合に対応し、より迅速な核生成を生じる。自由界面拡散は、より小さな界面を介したより遅い混合に対応し、より遅い核生成に対応する。くびれ形状の制御により、マイクロバッチおよびFID法の隙間を埋める方法の連体が可能になる。相互拡散アプローチに基づいた結晶化は、力学的にFID法に類似する。結晶化のための相互拡散は、より小さなスケ
ールでのSlipChipで、および従来の方法におけるよりも多重化した形式で実施することができる。複合SlipChipは、多くのタンパク質をアッセイするためのプラットフォームおよびタンパク質結晶化のより重要な特徴についてより多くを学ぶ機会を提供する。
【0210】
結晶化条件が同定された後、X線回折に適した高品質の結晶は、結晶を特徴づけて、タンパク質構造を決定するために好ましい。X線回折のために十分にほど大きな結晶を生成するために、典型的には、〜10nlの最小試料容積が必要とされ、非常に小さな結晶さえ、たとえばシンクロトロンX線科学における最近の進展を使用して解析することができ、そしてSlipChipにおいて得られた結晶を構造的特性付けのために十分なほど大きくすることができる。結晶の抽出またはインサイチュー回折を含むSlipChipにおいて結晶の成長からのX線回折データを得るために、いくつかの選択肢がある。一定の態様において、SlipChipは、封止されず、したがって、2枚のプレートを分離することができ、ウェルに基づいたチップについてなされたように、結晶が抽出される。インサイチュー回折は、結晶化後の操作の間の結晶への損傷を予防することができ、スループットを増加させることができる。SlipChipは、PDMS、PMMAおよびシクロ−オレフィン−コポリマーなどのインサイチュー回折に適合性である材料で構築することができ、または必要に応じて、ガラスをエッチングして十分に細い壁をもつ領域を作製することができるので、インサイチューにおけるX線回折は、SlipChipにおいて行うことができる。
【0211】
SlipChipにおける一定の結晶成長では、高品質のX線回折データを生じない場合、結晶化実験を、SlipChipスクリーニングによって同定される条件を使用してスケールアップすることができる。マイクロバッチ実験は、ウェルプレートにおいて容易にスケールアップされる。もう一つの成功は、類鼻疽菌(Burkholderiapseudomallei)からのリボースリン酸ピロホスホキナーゼで同じストラテジーを使用して達成された。従来の蒸気拡散によって見いだされた条件(20%(w/v)のPEG−3350、0.2Mのギ酸マグネシウム、pH5.9)では、I222のスペース基において結晶を生じた。結晶構造は、2.3Å解像度(PDBid:3DAH)にて決定された。平行してSlipChipの態様を使用して、本発明者らは、P43212のスペース基において結晶を生じる異なる条件(11%(w/v)のPEG−8000、37mMクエン酸ナトリウム、pH5.5)を見いだした。本発明者らは、スケールアップによって生じ結晶でた1.83Åにてデータセットを得た。拡散プロフィールおよび動態は、繰り返し、かつより大きなスケールで思慮深く制御する必要があるので、その他の技術を使用することによって、FIDアプローチは、スケールアップすることがあまり容易にはなり得ない。本発明者がFIDSlipChipについて決定した予測可能な拡散プロフィールは、たとえばピコリットル−スケールおよび、たとえばマイクロリットル−スケールの両方までスケールアップされた計測可能なSlipChipsの合理的なデザインを可能にする。
【0212】
本明細書に記述された技術は、タンパク質結晶化を越えて多くの適用を有する。たとえば、超疎水性表面を作製するために使用されるナノメートルスケールエッチングは、表面をパターン化する技術に影響を与えるだろう。加えて、FID法のために使用される技術を拡張して、その他の実験において溶液を組み合わせるときに、平衡時間を制御することができる。この平衡の制御は、適用の範囲において、走化性を研究するときに、およびその他の細胞に基づいたアッセイにおいて、濃度勾配をセットアップするために有用であり得る。
【0213】
実施例
ナノパターニングをもつSlipChipの製作
本発明者らは、以下の修飾をもつ適用において他で記述したガラスエッチング製作手順を行った。空のガラスプレート(ソーダ石灰ガラス、厚み:0.7mm;クロミウム層:1025Å;AZフォトレジスト:1μm)を3in×1inとなるように最初に切断した。工程1:ガラスエッチング製作手順は、ガラスプレートの後方がPVCテープで封止された位置まで行った。次に、本発明者らは、ガラスプレートの端に第2のフォトマスクを整列させるために×マークを置いた;これらのマークは、また、エッチングを防ぐためにテープを巻いた。この実施例において、エッチング時間は、ガラスプレートへ深さ40μmであった領域に対して〜30分であった。プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥させた。工程2:ダクトおよび〜15分のエッチング時間のためのデザインを含むもう一つのフォトマスクを使用して、深さ20μmのダクトは、工程1と同じ手順を使用してガラスプレートにエッチングした。フォトマスクでガラスプレートを整列させるように注意した。この工程中、深さ40μmの領域は、さらにエッチングされて深さ60μmになった。プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。工程3:ダクトおよび領域をプレートにエッチングした後、プレートをナノパターニングフォトマスクで整列させ、工程1と同じ手順を行った。クロミウムコーティングを取り除いた後、ガラスプレートを50:25:37.5mmol/LHF/NH4F/HNO3エッチング溶液に浸漬して、室温(〜23℃)にて20分間エッチングし、表面上に〜250nmの深さのパターンを作製した。最後に、ガラスプレートをエタノールでリンスして未現像のフォトレジストを剥離し、クロミウム腐食液に浸漬してクロミウム層を除去した。次いで、ガラスをエタノールおよびMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。本明細書に記述された方法は、1つのガラス基体上にナノメートルまでの深さのデザインおよび種々のマイクロメートルまでの深さのデザインを組み込む。これは、また、その他のナノ流体/微小溶液適用のためのナノメートル/マイクロメートルのハイブリッドダクトを作製するために使用することができる。エッチングされたパターンは、VeecoDektak 150粗面計(
図S2)で測定した。ガラスプレートを洗浄して、酸素プラズマ処理に供し、次いで表面を前述したようにトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル1−1トリクロロシランで3時間真空乾燥器におけるシラン化によって疎水性にした。シラン化の後、ガラスプレートを30分間120℃オーブンにおいて焼き、FC−3283のタンクに浸漬することによってリンスして、60℃オーブンにおいて一晩乾燥した。
【0214】
FEPスピンコーティング
スピンコーティングFEPは、本出願において他に記述したとおりに行った。 ナノパターニングの接触角の測定 ガラスプレートを、ナノパターニングでのSlipChipの製作の工程3において記述したナノパターニングフォトマスクを使用することによってナノパターンでエッチングして、異なるナノ−スケール領域の深さをエッチング時間を制御することによって得た。全てのガラスは、接触角を測定する前にシラン処理して、洗浄した。ガラスプレートをガラスタンク内のフルオロカーボンに浸漬した。プレートを、パターン化された表面を下に向けて、それぞれの末端で2つの微小バインダークリップによって固定し、プレートとタンクの底面のと間に間隙を作製した。5μLの測定した水溶液を間隙の中へピペットで移し、0.1%のLDAOを含む水性液滴を周囲のフルオロカーボン(FC−40)におけるその浮力によってプレートに接触した。次いで、基体に対する液滴の接触角を、光学接触角メーターを使用することによって測定した(Rame-HartInstrument Co., Model 500)。接触角は、液滴がガラスプレートに接触後直ちに、および接触5分後に再び測定した。
【0215】
FID装置における食品色素アッセイ
FID装置は、ナノパターニングまたはFEPコーティングなしで記述の方法で作製した。装置の2枚のプレートは、FC−40下で組み立てた。生じる向きにおいて、全ての16の試薬および1つの試料のための流体ダクトを形成した。食品色素実験のために使用した全ての溶液は、使用前に0.45μmPVDF(登録商標)注入器フィルターで濾過した。4つの食品色素(黄色、ピンク、赤色および青色)をこれらの保存液から〜10倍希釈して、16の試薬ダクトにピペット負荷した。それぞれのダクトに負荷するために、4μLの色素を、色素溶液が放出口から出てくるまで、ピペットを使用して入口を介して最初に押した。試薬を負荷した後に、SlipChipをすべらせて、試料のための連続流体経路を形成した。緑の色素を20倍希釈して、タンパク質試料を模倣するために0.04%(w/v)のLDAOと混合した。次いで、緑の色素を試料入口を介して負荷した。ピペットを使用することによって、10μLの色素を、全ての試料ダクトが完全には満たされるまでChipに負荷した。一旦試料が負荷されたら、隣接する領域間の接続を絶つように、SlipChipをすべらせて、垂直のダクトがその下の試料領域および関連する試薬領域のための橋かけ拡散ダクトを形成した。経時的イメージ(3分の時間間隔)をPlanAPO 0.63×対物レンズを備えたライカMZ 16 Stereoscopeで取得した。
【0216】
FID装置における蛍光色素拡散アッセイ
FID装置は、ナノパターニングで上で記述した方法で作製した。SlipChipを構築して、食品色素実験について記述したように溶液を負荷した。PBS緩衝液(1×、pH7.4)中の250μM MPTSを2つの試薬ダクト内にへピペットで移すことによって負荷した。0.01%(w/v)のLDAO溶液を試料ダクトに負荷して、全ての試料領域を満たした。SlipChipをライカMZ16 Stereoscopeの下にすべらせ、5つの異なるダクト形状での20の自由界面拡散実験を形成した。FIDの開始時点をタイマーで記録した。装置を、5×0.4ライカ対物レンズおよびHamamatsuORCAERカメラを備えたライカDMI6000顕微鏡(Leica Microsystems)に迅速に移した。20msの露光時間でDAPIフィルターを使用して、MPTS蛍光を収集した。顕微鏡を較正するために、DAPIフィルターのための蛍光引用例スライドの蛍光強度を記録して、バックグラウンド補正のために使用した。イメージを、多次元取得機能を備えたMetamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(UniversalImaging)を使用することによって取得して、解析した。イメージは、10分毎に取得した。試料領域における平均強度を得るために、本発明者らは、それぞれの試料領域でラインスキャンを得た。ラインスキャンに沿った強度を平均して、平均強度を時間に対してプロットした。時間は、FID実験のセットアップとイメージングの開始との間の遅延を明らかにすることによって修正した。
【0217】
ハイブリッド装置における食品色素アッセイ
ハイブリッドSlipChipは、上で記述したナノパターニング法を使用することによって作製した。これは、FC−40下で組み立てた。生じる向きにおいて、全ての16の試薬および1つの試料のための流体ダクトを形成した。食品色素実験のために使用した全ての溶液は、使用前に0.45μmPVDF(登録商標)注入器フィルターで濾過した。4つの食品色素(黄色、ピンク、赤色および青色、Ateco、GlenCove、NY)をこれらの保存液から〜10倍希釈して、16の試薬ダクトにピペット負荷した。それぞれのダクトに負荷するために、4μLの色素を、色素溶液が放出口から出てくるまで、ピペットを使用して入口を介して最初に押した。緑の色素を20倍希釈して、タンパク質試料を模倣するために0.04%(w/v)のLDAOと混合した。次いで、緑の色素を試料入口を介して負荷した。ピペットを使用することによって、10μLの色素を、全ての試料ダクトが完全には満たされるまでChipに負荷した。一旦試料が負荷されたら、試薬領域がマイクロバッチセクションにおける試料領域と重複されたように、SlipChipをすべらせて、試薬領域をFIDセクションにおいてくびれ(すべらせる前に試料の流体経路を接続するダクト)によって試料領域に接続させた。
【0218】
マイクロバッチSlipChipでの結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのエノイル−CoAヒドラターゼの結晶化。
タンパク質試料をSeattleStructural Genomics Center for Infectious Disease (SSGCID)から得た。マイクロバッチSlipChipsは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)による表面被覆されたガラスエッチングによって作製し、潤滑剤フルオロカーボン、パーフルオロ−トリ−n−ブチルアミンおよびパーフルオロ−ジ−n−ブチルアミン(FC−40)の混合物の下で組み立てた。手製のスクリーニングキットからの48の沈殿剤は、3つの構築されたSlipChipsに、それぞれのChipに16の沈殿剤を負荷した。沈殿剤は、すべらせることによってタンパク質試料と合わせた。次いで、それぞれのSlipChipを別々のペトリ皿においてFC−70に浸漬した。ペトリ皿を23℃のインキュベーターに貯蔵さし、結果を2週間モニターした。結晶化試料を含む領域のイメージは、ライカMZ16StereoscopeにつなげたSPOTInsightカメラ(Diagnostic Instruments, Inc., SterlingHeights, MI)を使用して、2週にわたって取得した。
【0219】
FIDチップでのエノイル−CoAヒドラターゼの結晶化 タンパク質結晶化のためのFID SlipChipは、上で記述したナノパターニング法を使用することによって作製した。手製のスキャニングキットからの48の沈殿剤は、3つのSlipChipsに、それぞれのChipにおける16の沈殿剤を負荷した;負荷手順は、FIDChipの食品色素実験と同じであった。すべらせた後に、沈殿剤領域およびタンパク質領域を、タンパク質くびれによって対で接続してFID実験を開始した。次いで、それぞれのSlipChipを別々のペトリ皿のFC−70に浸漬した。ペトリ皿は、23℃インキュベーターに貯蔵して、結果を2週間モニターした。結晶を含む領域のイメージを2週にわたって取得した。
【0220】
ハイブリッドS lipChipでのエノイル−CoAヒドラターゼの結晶化。
タンパク質結晶化のためのハイブリッドSlipChipは、上で記述したナノパターニング法を使用することによって作製した。手製のスキャニングキットからの48の沈殿剤は、3つのハイブリッドSlipChipsに、それぞれのChipにおける16の沈殿剤を負荷された;負荷手順は、ハイブリッドChipの食品色素実験と同じであった。すべらせる工程の1の後、マイクロバッチおよびFID実験を始めた。次いで、それぞれのSlipChipを別々のペトリ皿のFC−70に浸漬した。ペトリ皿は、23℃インキュベーターにおいて貯蔵して、結果を2週間モニターした。結晶を含む領域のイメージを2週にわたって取得した。
【0221】
マイクロバッチSlipChipでのバベシア・ボビス(Babesiabovis)からジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化。
タンパク質試料は、SSGCIDから得た。マイクロバッチSlipChipsを使用するスキャニングアッセイ法は、エノイル−CoAヒドラターゼについて記述したのt同じ方法で行った。
【0222】
FIDチップでのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化
タンパク質試料は、SSGCIDから得た。FIDSlipChipsを使用するスキャニングアッセイ法は、エノイル−CoAヒドラターゼについて記述したのと同じ方法で行った。
【0223】
ハイブリッドSlipChipでのジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化 タンパク質試料は、SSGCIDから得た。ハイブリッドSlipChipsを使用するスキャニングアッセイ法は、エノイル−CoAヒドラターゼについて記述したのと同じ方法で行った。
【0224】
U V顕微鏡を使用するタンパク質結晶の視覚化
SlipChipsでの結晶化アッセイの全てにおいて得られた結晶が実際にタンパク質結晶であったことを確認するために、本発明者らは、UV顕微鏡(PRS−1000、KorimaInc., Carson、CA)を使用した。明視野イメージおよびUV光下のイメージの両方を取得した。結晶からのUVシグナルが検出されたときに、結晶をタンパク質結晶として確認して、対応する結晶化条件をヒットとして同定した。
【0225】
ウェルプレートにおけるジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化。
ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの結晶化は、類鼻疽菌(Burkholderiapseudomallei)からのグルタリル−CoAデヒドロゲナーゼについて記述したように、ウェルプレートにおいて行った。
【0226】
X線回折およびデータ処理
X線回折およびデータ処理は、本出願において他に記述したとおりに行った。
【0227】
ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼのX線構造決定。
ジヒドロ葉酸還元酵素/チミジル酸シンターゼの構造は、開始モデルとしてのPDBid 3I3R構造およびCCP4セットにおけるMOLREPプログラムを使用する分子置換によって解析した。PEG−400を含む条件において成長した結晶から収集されたデータを使用した。剛体、位置および温度因子の洗練をプログラムREFMAC5で最大の可能性のある標的を使用して行った。シグマA加重2Fobs−FcalcおよびFobs−Fcalcフーリエマップは、CCP4を使用して算出した。フーリエマップはをCOOTに示して、調べた。新たな溶媒分子の検索をCOOTの援助で行った。構造は、ProteinData Bank、PBDid:3KJRにおいて寄託した。
【0228】
混合比の定量化:領域サイズの特性付け
元の(エッチング前の)領域は、第1および第2の側と4および5番の側との間に2つの対向する直角をもつ六角形である。領域の容積は、式1に表してあり、式中W1は、領域の本来の幅(3および6番目の側の間の距離)であり、Lは、領域の本来の長さ(3および6番目の側の長さ)であり、rは、広がる距離であり、およびdは、エッチングの後の領域の深さである。
【数1】
【0229】
エッチングの後の領域のサイズは、マイクロ定規によって較正したライカMZ 16 Stereoscopeを使用することによって測定した。次いで、広がる距離rを式2を使用して算出した
、式中W2は、(W1と同じ軸に沿った)エッチングの後の領域の幅である。
【数2】
【0230】
本発明者らは、エッチング速度が全ての方向において同じであると仮定したので、領域の本来のパターンは、全ての方向において同じ距離に広がった。広がった距離rは、深さdと同じであるとみなした。したがって、領域の容積は、式1および2を組み合わせることによって算出することができる。
【数3】
SlipChipの領域は、W1が常に236μmであり、およびLが0、20、40、60、80、100、120、140、160、180および200μmとなるように変動するように計画することができる。六角形の角度は、90または135度である。深さ60μmである領域をエッチングすることにより、領域は、それぞれ4.0、4.4、4.8、5.2、5.6、6.0、6.4、6.8、7.2、7.6および8.0nLの容積で計画することができる。
【0231】
本発明の一定の態様において、SlipChipは、ビーズに基づいた免疫アッセイなどのビーズに基づいたアッセイを行うために使用することができる。一定の態様において、ビーズに基づいたSlipChip法は、多段階のすべらせること、ビーズをチップに負荷すること、領域においてビーズを扱うこと、層から層へのおよび次いで滑らせることにより、領域から領域へのビーズの移動を含むことができる。ビーズの洗浄は、前後にすべらせること、前方へすべらせること、および連続希釈を含む多くの機構によって行うことができる。親水性領域を、領域に液体の薄層を維持するために使用することができ、大きな容積で洗浄することができる少ない容積を作製することによって有効な段階希釈法のために使用することができ、並びに薄層において、および薄層の拡散の速度を上げるために使用することができる。非常に薄いナノ−スケール領域(例えば、約100nm、1μm、10μmの間)に、非常に迅速な免疫アッセイのための固定化抗体を含むことができる。このような免疫アッセイは、迅速解析のために、例えば副甲状腺ホルモンを検出するために、貴重であり得る。加えて、このような領域全体をすべらせることによる余剰材料の除去は、例えばMaerklSJ,Quake SR. "A Systems Approach to Measuring theBinding Energy Landscapesof Transcription Factors" Science, 2007, 315:233−23において記述された適用において、弱い結合を評価するために使用することができる。SlipChip免疫アッセイについては、ビーズが押さえつけられるか、または捕捉抗体が表面上に固定されるときに、液体を整列させた領域およびダクトに通して流すことによって、洗浄を直接行うことができる(相互汚染を減少させるために、連続してでなく、平行して全ての領域を洗浄することが好ましい)。
【0232】
細胞培養は、領域において維持し、増殖し、またはアッセイすることができる。領域に少なくとも1つの細胞があり得るし、解析は、例えば、免疫アッセイによって行うことができる。これには、細胞の分泌、溶解細胞、細胞の刺激および次いでたとえば、免疫アッセイによる、または試薬を添加するためにすべらせることによって刺激することを含む任意の方法によって結果を解析すること、および免疫アッセイを含む任意の方法によって解析することを含み得る。
【0233】
SlipChipは、例えば、ケミストロード(chemistrode)を含むその他の装置から得られ得る多くの試料を解析するために使用することができる。
【0234】
いくつかの態様において、多くの少ない容積の試料を、SlipChipにおいてビーズに基づいたELISAアッセイを使用して平行して解析することができる。少ない容積の試料の分析が重要である状況には、ケミストロードからの試料を解析することを含むが、限定されない。生物学的系の理解には、高い時間分解能で分子シグナルを送達して、捕獲し、および解釈するためのツールを含み得る。新しく開発されたケミストロードは、何百ナノリットル容積のプラグのアレイにおいて分子シグナルを記録し、これがその後に平行して複数の独立した技術によって解析されるすることによってこの満たされていない需要に対処する。ケミストロードは、高い感度、特異性およびスループットでプラグを記録するナノリットル容積を解析するための方法からの利益を得ることができる。免疫アッセイは、生物学的研究において高い特異性および感度で分子マーカーを検出するために最も頻繁に使用される技術の1つである。これらのnL−プラグのための免疫アッセイを開発することにより、ケミストロードの解析能力が増強する。少ない容積の試料を解析することが重要であるその他の状況は、診断法および臨床的研究を含むが、限定されない。たとえば、ある期間にわたって腫瘍を連続的にモニターするには、繰り返して少ない容積のサンプリングすること、およびこれらを解析することを必要とする。また、血液バンクに寄託された血液試料の不必要な枯渇を回避するために、試験は、少ない容積の解析を必要とする。少ない容積の試料を解析することが重要であるその他の状況は、単細胞解析、生組織からのナノ−フローサンプリング、たとえば、網膜(Lu,Miao−Jen, et al. Exp Diabetes Res. 2007;2007: 39765)、小さな試料(例えば、胚からの材料)を含むが、限定されない。一定の状況において、最も大きなボトルネックは、平行して多くの少ない容積を処理することである(試料を合わせること、ビーズで試料を分離すること、試薬を添加することなど)。連続的にナノリットル液滴を操作するための典型的な方法では、一つずつプラグを処理する。一定の態様については、プラグのインデクシングが重要なときには、エラーが蓄積しうるので、これはあまり好ましくない。アレイにナノリットル液滴を配置するための現在の装置の多くの例は、液滴を操作すること(試薬を添加すること、ビーズを扱うこと)ができない。デジタル微小溶液は、マイクロリットル容積で機能する。多くの微小溶液装置は、試料を導入するために層流に依存し:これらは、多くのデッドボリュームおよび/または吸着問題を有し得る。SlipChipの一定の態様は、複雑な機器を使用することなく平行して多くの多段階の反応をしっかりと扱うことができる。本発明者らは、平行して多くの少ない容積の試料を解析するためにビーズに基づいたELISAを行うSlipChipを使用する単純なアプローチを開発した。本発明者らは、多段階の滑りを組み込むようにSlipChipの一定の態様をデザインし、ビーズの負荷および洗浄を証明するための実験を行った。多段階のすべりにより、我々は一方の層からもう一方へ、次いで一方の領域からもう一つの領域ビーズを移すことができる。これらの態様において、ビーズは、2つの機構:段階希釈をともなうすべり、および前後のすべりによって洗浄することができる。親水性領域は、このSlipChipの領域に液体の薄層を維持する。親水性領域は、また、より多くの容積で洗浄することができるとできる少ない容積を作り出すことにより有効な段階希釈が可能になる。本発明者がSlipChipの一つの態様で達成した検出限界は、多くの分子マーカーの生理的濃度であるpM範囲まであった。
【0235】
SlipChipのある態様は、平行して48の免疫アッセイを行うことができるようにデザインされた。これは2つのセクション、セクションAおよびセクションBを含む。セクションAは、多くの少ない容積の試料を負荷するために使用される:このセクションのデザインは、異なる試料の供与源の異なる要求に適応するために可変である。ビーズに基づいたELISAを行うのを証明するために、装置は、それぞれ7領域の6群(1nL、深さ10μm)で造った。試料のための領域(床板)および試料のためのダクト(上部プレート)を整列させたとき、6本の別々の流体経路が形成され、それぞれの流体経路は、個々入口の中へピペットで移すことによって満たされる。それぞれの流体経路は、また、別々の溶液の放出口を含む。これらの実験において、6つの標準キャリブレーターを、6本の試料のための流体経路に負荷した。セクションBは、ビーズに基づいたELISAを行うために使用され:これは、装置のコアセクションである。これは、6列の48領域(9nL、深さ80μm)を含む。最初の列の領域は、捕捉抗体および酵素標識された検出抗体と結合された磁気ビーズを含む混液を負荷するために使用される。第2、3、4および5の列の領域は、洗浄緩衝液を負荷するために使用される。6列目の領域は、基体を含む溶液を負荷するために使用される。SlipChipの態様の上部層は、試料を負荷するための入口、放出口およびダクト、並びに種々の試薬のための入口、放出口および領域を含んでいてもよい。SlipChipの態様の底面層は、試料のための領域および試薬を負荷するためのダクトを含んでいてもよい。
【0236】
一定の態様において、SlipChipは、微細加工された2つのガラスの層で構成してもよい。上部層は、全て試料のためのの入口、放出口およびダクト、並びに試薬のための領域を含んでいてもよい。底面層は、試薬のための試料ダクトのための領域を含んでいてもよい。領域の負荷の改良のために、親水性領域を保持すると共に、装置の表面をシラン処理して疎水性にすることができる。領域は、親水性表面を維持するために、シラン化の間に保護することができる。相互汚染の潜在的供与源は、すべらせた後に分離されるべきである領域を接続するSlipChipの一定の態様の2枚のプレートの間の溶液の薄層の形成である。これは、溶液がSlipChipの表面を濡らすときに生じる。領域およびダクト内部以外のSlipChipの一定の態様の表面上のBSA含有溶液の湿潤を最小限にするために、ナノパターンを領域およびダクトの外側の表面上に作ることができる。ナノパターニングは、溶液と表面との間の接触角を上昇させて、表面の湿潤を予防する。
【0237】
一定の態様において、免疫アッセイを行うためにSlipChipの使用には、3つの一般的な工程(a)前負荷試薬、(b)負荷試料、および(c)アッセイを行うことを含む。一定の態様において、試薬は、8工程で事前に負荷してもよい:(1)列1の領域が試薬ダクトに接続されるように、SlipChipを構築する。(2)例えば、捕獲−抗体被覆超常磁性ビーズおよび酵素標識された検出抗体を含む試薬液をSlipChipに注入して、列1の領域を満たす。(3)チップをすべらせてダクトによって列2の領域を接続する。(4)フルオロカーボンを、ダクトを介して注入して、ダクトにおける任意の残りの溶液を除去する。(5)洗浄緩衝液を注入して、SlipChipのその列の領域を満たす。(6)チップをすべらせて、ダクトによって次の列の領域を接続する。(7)工程(4)、(5)および(6)を3回繰り返して、緩衝液で列3および4を満たす。(8)フルオロカーボンを、ダクトを介して注入して、任意の残りの溶液を除去し、酵素基体を注入して列6を満たす。
【0238】
一つの態様において、試料は、2工程を負荷される:(1)SlipChipをすべらせて、ダクトによって領域を接続する(これは、使用者にとってすぐ使用できる条件である)、(2)検体の溶液を、入口を介してピペットで取ることによって注入する。
【0239】
一定の態様において、アッセイは、5工程で行ってもよい:(1)SlipChipをすべらせて、検体および試薬液、例えば抗体およびビーズを合わせて、溶液をインキュベートして抗体サンドイッチを形成させる、(2)磁石を底面層の後部に対して持ち上げてビーズを底面プレートの領域に下げ、磁石が遠ざけられるにもかかわらず、ビーズが底面プレートの領域に残るように、アッセイ溶液および洗浄緩衝液を、SlipChipをゆっくりすべらせることによって合わせる、(3)工程(2)を3回繰り返す、(4)磁石を使用して底面プレートの領域にビーズを下げる、SlipChipをすべらせて、抗体−サンドイッチおよび基体を合わせる、(5)蛍光の増大を蛍光顕微鏡を使用してモニターする。蛍光を、当業者に公知の技術を使用して検体の濃度と相関させる。
【0240】
2つのセクション、AおよびBを含む一つの態様において、8工程を使用して、SlipChipに試薬を予め負荷してもよい。セクションBの列1の中で領域を、試薬ダクトによって接続することができる。捕獲−抗体被覆超常磁性ビーズおよび酵素標識された検出抗体を含む試薬液をSlipChipに注入して、セクションBの列1の領域を満たす。SlipChipをすべらせて、ダクトによってセクションBの列2の領域を接続することができる。フルオロカーボンを、ダクトを介して注入して、ダクトの任意の残りの溶液を除去することができる。洗浄緩衝液を注入して、SlipChipにおけるその列の領域を満たすことができる。SlipChipをすべらせて、ダクトによって次の列の領域を接続することができる。これらの工程を3回繰り返して、セクションBの列3、4および5を緩衝液で満たすことができる。フルオロカーボンを、ダクトを介して注入して、任意の残りの溶液を除去することができ、酵素基体を注入して、セクションBの列6を満たすことができる。2工程を使用して、試料をSlipChipのこの態様に負荷することができる:SlipChipをすべらせて、試料のためにダクトによってセクションAの領域を接続することができる。検体の溶液は、入口を介してピペットで取ることによって注入することができる。5工程を使用して免疫アッセイを行うことができる:SlipChipをすべらせて、検体と抗体およびビーズの試薬液とを合わせて、溶液をインキュベートして、抗体サンドイッチを形成させることができる。磁石を使用して、底面プレートの領域にビーズを下げることができ、SlipChipをすべらせて、アッセイ溶液および洗浄緩衝液を合わせることができる。工程は、必要に応じて繰り返することができる。磁石を使用して、底面プレートの領域にビーズを下げることができ、SlipChipをすべらせて、抗体−サンドイッチおよび基体を合わせることができる。蛍光の増大は、蛍光顕微鏡を使用してモニターすることができる。
【0241】
複数のアッセイを平行して行うことができるように、たとえば6列セクションの複数のセットを単一のSlipChip上に構築することができる、たとえば列1〜6を含む上記のものに類似の態様を作製することができることは、当業者に明らかだろう。そうすると、。
【0242】
その他の態様において、SlipChipを使用して多くの、たとえばナノリットル試料の同時分析を、インスリンビーズに基づいたELISAを使用することによって行ってもよい。これを証明するために、本発明者らは、補足抗体被覆超常磁性ビーズを含む溶液、アルカリホスファターゼ標識された抗インスリンモノクローナル抗体およびブロッキング緩衝液を第1のセクションの第1の領域に注入してサンドイッチ複合体を形成した。酵素標識された検出抗体を検出するために、本発明者らは、酵素アルカリホスファターゼ(ALP)による加水分解によって蛍光になる、酵素のための蛍光基体、フルオレセインジホスフェート(FDP)を使用した。本発明者らは、同じチップのセクションセクションの領域にインスリン(0pM、7pM、70pM、350pM、1050pMおよび2100pM)の6つの標準キャリブレーター溶液を注入した。それぞれの領域における蛍光強度を時間とともに測定した。本発明者らは、バックグラウンドシグナルの偏差の3倍として定義される検出限界は、約9pMであることを見いだした。
【0243】
インスリン免疫アッセイを、SlipChipで平行して複数の少ない試料で行ってもよい。インスリン免疫アッセイの異なる領域において、同じSlipChip上の複数の、たとえばナノリットル試料の蛍光強度を時間とともに測定してもよい。
【0244】
SlipChipの一定の態様において、超常磁性ビーズに基づいたアッセイを行ってもよい。本発明者らは、これらのビーズがすべらせる間に領域にとどまることをを証明した:ビーズは、2枚のプレートの間にトラップされず、<3%の喪失があった。一定の態様については、結果の精度を改善するためには、ビーズの保持が好ましい。溶液の混合を促進するために、ビーズを、可動磁石を使用して移動することができる。一定の態様については、これは、洗浄し、および領域から領域へビーズを移すための両方のために好ましい。磁石でビーズを動かすと、混合を増加させ、洗浄効率を上昇させるだろう。また、磁石を使用して、すべらせる前に底面領域にビーズを引くことができ、SlipChipの列から列へ移されたビーズの数を増加させる。残留する酵素標識された検出抗体は、洗浄緩衝液に拡散するだろうし、指数的に希釈して、最終的に到達されるごくわずかなレベルで、ビーズを洗浄することができる。一定の態様において、4サイクルの洗浄後、残留する試薬を、あらゆる洗浄サイクルにおいて完全に混合していると想定される104の因子によって希釈する。本発明者らは、一定の態様において、酵素標識された検出抗体のレベルがSlipChipにおける洗浄後に検出限界以下であったことを証明した。
【0245】
親水性領域をもつSlipChipの製作。本発明者らは、以下の修飾をもつこの出願において他に記述されたSlipChip手順のガラスにエッチング加工を使用した。空のガラスプレート(ソーダ石灰ガラス、厚み:0.7mm;クロミウム層:1025Å;AZフォトレジスト:1μm)を最初に2inX1inに切断した。フォトマスクをガラスプレートから取り除いた後、ガラスプレートを1分間0.5%のNaOH溶液中にそれを浸漬することによって現像した。また、この実施例では、ガラスプレートの正面上の一定の領域をPVCテープでテープして、薄い領域を形成した。ガラスプレートをPVCテープでテープした後、これをエッチング溶液に浸漬して、25℃の一定の温度の水浴シェーカーを使用してエッチング速度を制御した。エッチング時間(〜50分)を制御することにより、70μmの深さの領域およびダクトがガラスプレートにエッチングされた。プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。
【0246】
次に、薄い領域を保護するテープを取り外して、プレートを〜7分間エッチング溶液に浸漬した。深さ10μmの領域を、テープを取り外したガラスプレートにエッチングした。この工程の間、深さ70μmの領域およびダクトは、80μmの深さにさらにエッチングされた。プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。
【0247】
ダクトおよび領域がプレートにエッチングされた後で、ガラスプレートをエタノールでリンスして未現像のフォトレジストをはがした。次いで、プレートをOmniCoatで被覆して、200℃にて1分間焼いた。次に、プレートをSU82010の厚さ10μmの層で被覆して、プレートを、疎水性にさせたプレート上の領域を保護したフォトマスクで被覆した。UV光をガラスプレートの裏から照らした。フォトマスクによって曝露された領域において、UV光は、クロミウム層が除去されたプレートのみを通過し、現像後に領域におけるSU8のみが残った。領域におけるSU8が領域を保護して、これらが疎水性でになるのを防いだ。露出した表面上のOmniCoatを4分間CD−26に浸入することによって現像した。
【0248】
次に、S1813ポジティブなフォトレジストの層をプレートの上部に被覆して、1分間95℃にて焼いた。次いで、プレートをナノパターニングフォトマスクと共に整列させて、領域およびダクトにエッチングするために記述したのと同じ手順を行った。クロミウムコーティングを取り除いた後に、ガラスプレートを10倍希釈した上記のガラスエッチング溶液に浸漬して、室温にて10分間エッチングして(〜20℃)、表面上に〜300nmの深さのパターンを作製した。最後に、ガラスプレートをエタノールでリンスして、未現像のフォトレジストをはがして、クロミウム腐食液に浸漬して、クロミウム被覆を除去した。次いで、ガラスをエタノールおよびMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。
【0249】
エッチングされたパターンは、Veeco Dektak 150側面計で測定した。ガラスプレートを洗浄して、酸素プラズマ処理に供し、次いで表面を前述したようにトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル1−1トリクロロシランで3時間真空乾燥器におけるシラン化によって疎水性にした。シラン化の後、ガラスプレートを30分間120℃オーブンにおいて焼き、FC−3283のタンクに浸漬することによってリンスして、60℃オーブンにおいて一晩乾燥した。最後に、領域におけるSU8を、ガラスプレートをRemoverPGに80℃にて30分間浸漬することによって剥離した。
【0250】
SlipChipの構築。SlipChipは、FC−40下で組み立てた。底面プレートを、最初にパターンを上に向けて、ペトリ皿におけるFC−40に浸漬した。次いで、上部プレートを、パターンを下に向けて、底面プレートの上部に敷設した。2枚のプレートを、互い違いにこれらを移動することによって
図3aに示した位置に整列させ、次いで2つのマイクロバインダークリップを使用することによって固定した。SlipChipは、表面上の余分のFC−40を取り除いたた後に、使用準備ができていた。
【0251】
食品色素例証。全ての食品色素溶液は、使用前に0.45μmPVDF(登録商標)注入器フィルターで濾過した。常磁粒子に結合したマウスモノクローナル抗インスリンの溶液を遠心分離することによって6倍濃縮した。生じるビーズ懸濁液および2つの食用染料(オレンジ色および青色、Ateco、GlenCove、NY、これらの保存液から〜10倍希釈した)を試薬ダクトにピペットを負荷した。それぞれのダクトに負荷するために、2.5μLの色素を、色素溶液が放出口から出現するまで、ピペットを使用して入口を介して最初に押した。試薬を負荷した後に、SlipChipをすべらせて、試料のための連続流体経路を形成した。赤い色素を10倍希釈して、次いで試料入口を介して負荷した。ピペットを使用して、2.5μLの色素をChipの6本の流体試料経路のそれぞれに負荷した。
【0252】
インスリンビーズに基づいたELISA。負荷手順は、食品色素例証のためにものと同様であった。試薬領域を負荷して、6本の試料経路を6つの標準インスリン溶液を負荷した。抗体のための領域および試料のための領域を合わせられた後、SlipChipを37℃にて半時間インキュベートして反応を完了させた。次いで、SlipChipをすべらせ、アッセイを行った。
【0253】
領域のイメージを、ライカMZ 16 StereoscopeにつなげたSPOT Insightカメラ(Diagnostic Instruments,Inc.,Sterling Heights, MI)によって取得した。領域の蛍光強度は、20×0.4NAライカ対物レンズおよびHamamatsu ORCAERカメラを備えたライカDMI6000顕微鏡(LeicaMicrosystems)を使用することによって測定した。GFPフィルターを使用してフルオレセイン蛍光を収集した。イメージを、Metamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(UniversalImaging)を使用することによって取得して、解析した。イメージの最大強度は、最初に時間に対してプロットして、次いで、初期増加割合を抽出して、負の対照(検出抗体が添加されなかったことを除いては、アッセイは同じであった)の割合を減算して、初期比を対応する濃度に対してプロットし、較正曲線を得た。
【0254】
SlipChipの一定の態様において、免疫アッセイは、7工程で行うことができる:(A)ナノリットル−容積の検体溶液を、フルオロカーボン下で浸漬したSlipChipの底面層の領域に沈着させる。(B)SlipChipを構築して、捕獲−抗体被覆超常磁性ビーズおよび酵素標識された検出抗体を含む試薬液を底面プレートのダクトおよび上部プレートの領域によって形成される流体経路に注入する。(C)SlipChipをすべらせて、検体および試薬液を合わせて、磁石を使用して底面プレートの領域にビーズ沈降を落ち着かせる。溶液をインキュベートして抗体サンドイッチを形成させる。(D)SlipChipを(B)の配置にすべらせて、洗浄緩衝液を底面プレートのダクトおよび上部プレートの領域によって形成される流体経路に注入する。(E)SlipChipをすべらせて、洗浄緩衝液およびアッセイ溶液を合わせる。工程(D)および(E)はを繰り返して、ゆるく結合した酵素標識された検出抗体を除去する。(F)SlipChipをすべらせて、酵素の基体を底面プレートのダクトおよび上部プレートの領域によって形成される流体経路に注入する。(G)SlipChipを最終時にすべらせて、基体および抗体−サンドイッチを合わせる。検体の濃度を、蛍光の増大を測定することによってモニターする。蛍光の増大は、検体の濃度と相関する。SlipChipの態様においてビーズが負荷され、移され、および洗浄される1つの例において、ビーズをピペットで取ることによってSlipChipの領域に一様に負荷して、ビーズを、磁石をおよびすべりを使用することによって層間を移す。ビーズをすべらせる間、領域にとどまるだろう。ビーズは、溶液を混合することを促進する可動磁石を使用して移動することができる。一定の態様において、これは、効率的な洗浄のために好ましい。一定の態様において、一定の酵素反応など、反応混合物の均一性を改善するために、混合が好ましい。
【0255】
一つの例において、SlipChipにおいて超常磁性ビーズの操作は、以下を含む:ナノリットル−容積溶液を底面プレートに沈着して、SlipChipを構築し、溶液に懸濁したビーズをSlipChipに注入して、すべりおよび磁力を使用して底面プレートの領域にビーズ沈降を落ち着かせて、SlipChipをもと配置にそっと戻して、緩衝液をSlipChipに注入し、流体経路の任意の残留溶液を除去した。
【0256】
次に、実質的にSlipChipにおける全てのゆるく結合した検出抗体を除去するための超常磁性ビーズの洗浄の例を記述する。本発明者らは、最初に、底面プレートの領域13−24および37−48に酵素標識された検出抗体(アルカリホスファターゼ標識した抗インスリンモノクローナル抗体)の溶液を沈澱させた。対照として、本発明者らは、またウェル1−12および25−36において緩衝液溶液を沈澱させた。次いで、本発明者らは、ブロッキング緩衝液に懸濁した捕獲−抗体被覆超常磁性ビーズをSlipChipに注入した。本発明者らは、装置をすべらせて、検出抗体とビーズを合わせた。洗浄緩衝液を導入するために、本発明者らは、磁力を使用して底面プレートの領域にビーズを落ち着かせて、装置をすべらせた。洗浄緩衝液を注入した。次に、本発明者らは、装置をすべらせて、ビーズと洗浄緩衝液を合わせた。ビーズが底面プレートの領域において残ると共に、ゆるく結合した検出抗体は洗浄緩衝液に広まるだろう。洗浄工程を繰り返すことによって、残留する酵素標識された検出抗体を指数的に希釈して、最終的にはごくわずかなレベルに達した;この時点でビーズは洗浄されたと考えられた。一つの場合において、洗浄工程は、12回繰り返して、残留する検出抗体の量は、全ての洗浄するサイクルにおいて完全な混合と仮定される〜0.2%の開始濃度であった。残留する酵素標識された検出抗体を検出するために、本発明者らは、酵素アルカリホスファターゼ(ALP)によって加水分解時に蛍光にする酵素(フルオレセインジホスフェート(FDP))のための蛍光基体を使用した。本発明者らは、装置をすべらせて、FDPを注入した。最後に、本発明者らは、装置をすべらせて基体および領域における任意の残留する酵素標識された検出抗体を合わせた。それぞれの領域における蛍光強度を測定した。本発明者らは、蛍光強度が非常に弱いことを見いだして、ALP−抗体で沈着した領域および緩衝液で沈着した領域についても同じであった。蛍光強度は、また、緩衝液と混合した基体溶液の蛍光と同じであった。この結果は、酵素標識された検出抗体のレベルが洗浄しに検出限界以下にあることを示した。正の対照として、本発明者らは、洗浄工程を無視することによって洗浄なしの領域にFDPを添加した。ALP−抗体で沈着した領域は、強力な蛍光を示し、試薬および方法が残留するALP−抗体を検出するために有効だったことを示した。合わせると、これらの実験は、残留する検出抗体がSlipChipを前後にすべらせることで洗浄することによってビーズから実質的に除去することができる示す。
【0257】
SlipChipにおいて前にすべり込ませている方法を改変して、オンチップでの単一細胞の解析を組み込み、プラグに収集した試料を解析した。本発明者らは、オンチップを負荷した単一のβ−細胞からのインスリン分泌(ケミストロードによってサンプルをとったマウス島からのインスリン分泌)を測定するために前にすべらせる方法を使用した。最初に、本発明者らは、オンチップを負荷した単細胞の解析を行うことができるようにセクションAのデザインを改変した。このデザインでは、セクションAは、2列の領域(底面プレートに1つおよび上部プレートに1つ)を有し、セクションBは、前述したものと同じである。本発明者は、上部層上の領域の最初の列−これは、セクションAの領域の第2の列である、において単一のβ−細胞を負荷して、培養した。本発明者らは、底面層上の領域の列−セクションAの領域の最初の列にグルコース溶液を負荷した。このデザインは、β−細胞およびグルコース溶液を合わせるために1つのさらなるすべり工程を含んだ。β−細胞およびグルコース溶液を合わせた後、本発明者らは、セクションBを介して試料をすべらせて、上記の通りにインスリンビーズに基づいたELISAを行った。このデザインを使用して、単一の細胞から開始して領域において細胞の純粋培養を増殖させることができる。このデザインは、また、単一の細胞を刺激し、および解析するために使用することができる。細胞は、特定の試薬と接触させるためにすべらせることによって刺激することができ、細胞の分泌物または細胞可溶化液のいずれをも、免疫アッセイ(以前に記述したとおり)によって、またはその他の方法によって解析することができる。
【0258】
本発明者らは、また、ケミストロードによってサンプルをとった単一の島からのインスリン分泌の解析が可能なようにセクションAのデザインを改変した。このデザインでは、セクションAは、上部プレートに2列の領域を有する。第1の列は、ケミストロードを使用して捕獲したプラグを負荷され、第2の列は、緩衝液が予め負荷されている。セクションBの6本の列は、以前に記述したように、予め負荷される。本発明者らは、グルコースによって単一の島を刺激して、ケミストロードを使用したプラグにおけるインスリン放出のサンプルをとった。本例において、ケミストロードは、インスリン放出の一時的分解を示すプラグのアレイを生じた。SlipChipは、フルオロカーボン下で構築した。本発明者は、最初に2つの層を構築する前に上部層上の領域の第1の列に試料プラグを直接沈着させ、次いで上部層上の領域の第1の列が底面層のウェルの列と整列されるように、慎重に2つの層を整列させた。プラグがをSlipChipの領域上に直接沈着したので、このSlipChipデザインの上部列は、入口または放出口を含まなかった。本発明者らは、最初に試料をすべらせて、緩衝液にすべらせることによってこれを希釈した。次いで、本発明者らは、セクションBを介して希釈された試料をすべらせて、上記の通りにインスリンビーズに基づいたELISAを行った。
【0259】
SlipChipは、また非常に急速な免疫アッセイのための固定化抗体を含む非常に細い領域(たとえば、約100nm、1μmまたは10μm)でデザインすることができる。洗浄は、また能動的方法によって行うことができる:ビーズが磁場によって固定される場合、または捕捉抗体が領域の表面上に固定される場合、ビーズは、整列させた領域およびダクトを介して液体を流すことによって直接洗浄することができる。能動的な洗浄における相互汚染を回避するためには、領域を、連続する代わりに、平行して洗浄する。一定の態様において、口ダクトおよび出口ダクトに沿った圧力損失が洗浄した個々の液体経路に沿った圧力損失より小さい(たとえば、10倍)ように装置をデザインすることが好ましい。ナノ−スケール領域が洗浄されるとき、流動抵抗は、高くなる可能性が高く、この条件は、満たされる可能性が高い。洗浄液のための入口ダクトおよび出口ダクトは、細いダクトが他方のダクトの方に向いて、行き止まりであることができる。固定化抗体を含む領域をすべらせて、入口ダクトおよび出口ダクトを接続するように整列させたとき、洗浄液を領域に通過して、洗浄することができる。
【0260】
SlipChipの一定の態様は:SlipChipにおいて領域間でビーズを移すこと、および異なる試薬にこれらを曝露することによって、ビーズを使用して試料調製を実施することができ、試料精製および調製は、例えばKingfisherシステムにおいて行ったときに達成することができる。洗浄および濃縮は、また、多数の分野および効果によって増強することができ、電気的濃縮は、たとえば、ナノ孔またはダクトの近くで分子を濃縮するために電場を使用する。
【0261】
SlipChipの一定の態様は、例えば、PhilipsCorporationによって開発されたものを含む磁気免疫アッセイに適合性である。SlipChipの一定の態様は、後成的情報を得るために使用してもよい。たとえば、ヒストンのアセチル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化およびユビキチン様タンパク質による修飾を解析してもよく、SlipChipの一定の態様は、クロマチン免疫沈澱(ChIP)を行い、および解析し、単細胞に下げるために使用してもよい。
【0262】
SlipChipの一定の態様は、PCR実験を行うために使用することができる。少なくとも3つの異なるSlipChipに基づいたPCR例は:多重化PCR実験を行うための事前に負荷されたSlipChip、デジタルPCR実験のためにデザインSlipChip、並びにビーズ上に細菌をトラップし、およびPCRのためにSlipChipにビーズを負荷する手順を行う。
【0263】
SlipChipの一定の態様は、油領域の上部でのすべり、非フッ化油/ミネラル油の使用;
並びに/またはガラスの上の非フッ化シラン化、上部での油との乾燥試薬(たとえば、プライマー)の使用およびPCR混合液滴がプライマーに触れるようにPCR混合物を含む領域よりも浅い領域を含んでいてもよい。任意に試薬を有する油を含む領域上に水性溶液を含む領域をすべらせるとき、上部領域の内容物は、油を置き換わって、次いで底面に沈澱する試薬と反応することができる。いくつかの油は、領域に残って熱膨張の対照を提供し、いくつかの例において、油の総容積は、水性溶液の容積よりも大きくてもよい。多重化PCR装置の一定の態様は、また、より大きな正方形およびより小さな円を重ねることを含んでいてもよい。この形状は、2つの目標を達成し:これは、いくらかの油がより大きな正方形にトラップされるので、熱膨張のためのエラーを減少させ、かつこれは、底面領域において乾燥プライマーに触れるため、エラーを減少させる。
【0264】
SlipChipの一定の態様において、重なる卵形の領域がある。一定の態様において、卵形の領域(満たす方向に拡張した領域)は、強力な重複および負荷のための低い圧力損失を提供し、小さな距離をすべらせてこれらの間の重複をばらして、油領域とぼ重複を生じる。一定の態様において、卵形の領域は、液滴のより優れたイメージングのために液滴を中央に置くために使用することができる。
【0265】
SlipChipの一定の態様は、磁気ビーズを使用して細菌をトラップするために使用してもよい。血漿からの細菌をビーズに対してトラップし、SlipChipの一定の態様に負荷して、次いで、例えばPCR反応を使用して解析してもよい。
【0266】
本明細書に記述した装置および方法は、多数の適用のために使用することができる。特に、温度の変化を必要とする適用は、これらの装置を使用して行うことができる。適用は、PCRによるDNAおよびmRNAの解析を含むRT−PCRによるRNAの解析を含む。その他の適用は、酵素およびその他の分子の熱変質を必要とするプロセス、成分および反応の熱活性化または不活性化を必要とするプロセス、並びに非外界温度(例えば、多くの触媒作用反応)を必要とするプロセスを含む。
【0267】
SlipChipの一定の態様は、血液、尿、CSF、糞便、目、耳、生殖器路、下気道、鼻および咽喉からの試料を含むが、限定されないヒト、動物および環境の試料を含む多数の適用のために使用することができる。これらの適用は、HIVおよび肝炎などのウイルス感染のためのウイルス負荷の測定、ウイルスおよび細菌および真菌の突然変異、並びに薬物耐性の解析、ウイルスおよび細菌の同定のためのパネル、癌細胞およびこれらの突然変異の解析、遺伝的多様性、クローン進化、並びに薬物耐性を含む。関心対象の微生物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)、β溶血性連鎖球菌、肺炎球菌(Streptococcuspneumonia,)、腸球菌(Enterococcus)、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)リステリア菌(Listeriamonocytogenes)、インフルエンザ菌(HaeHaemophilus influenzae・mophilus)、緑膿菌(Pseudomonasaeruginosa)、カビ、放線菌属種(Actinomycessp.、レシチナーゼまたはリパーゼ陽性嫌気性グラム陽性生物およびバクテロイデスフラジリス群を含むが、限定されない。
【0268】
ウイルス検出は、ウイルス標的RNAまたはDNA配列を増幅し、および検出するための核酸を試験する技術(NAT)を含むが、限定されない多くの異なるアッセイを使用して、SlipChipで行うことができる。いくつかの態様において、HIV検出は、HIV標的配列を増幅し、
および検出するためのNAT技術を使用してslipchipの上で行うことができる。
【0269】
SlipChipの一定の態様のビーズまたは領域表面上に細胞を捕獲することは、癌診断法、出生前診断法および感染性疾患を含むが、限定されない適用のために関連した、細胞の解析および操作、たとえば多重PCR解析にとって魅力的である。
【0270】
一定の態様において、SlipChip装置は、以下の変更を除いて、この出願において他に記述されたSlipChpiのガラスエッチング製造を使用することによって組み立てた:この例において、〜45分のエッチングにより、〜60ミクロンの深さを得た。アクセス穴は、0.030インチの直径のダイヤモンドビットで穿孔した。エッチングされたガラス板の表面は、Millipore水、続いてエタノールで洗浄して、シラン化の前に酸素プラズマ処理に供した。ガラスを1時間気相におけるジクロロジメチルシラン(非フッ化シラン)を使用して、シラン処理した。次いで、ガラススライドをクロロホルム、アセトンおよびエタノールでリンスして、最後に窒素ガスで乾燥した。
【0271】
以下は、事前に負荷された多重化PCR SlipChipの一つの態様を記述する。PCR SlipChipの上部プレートは、長さ640μm、深さ70μmの四角の試料領域を含み、底面プレートは、試料のためのダクトおよび異なるPCRプライマーセットを含む事前に負荷された環状領域を含んだ。環状領域は、直径560μmおよび深さ30μmであった。底面プレートの領域には、最初に0.5μLのプライマー溶液(1μM)を負荷して、室温にて乾燥させた。次いで、底面プレートを、ペトリ皿を含む鉱油中に置いた。フッ化または非フッ化鉱油をPCRSlipChip実験に使用してもよい。油を含むペトリ皿に底面プレートを置くことにより、事前に負荷された乾燥プライマーの上部に油の層を形成した。プライマーを含む領域は、PCRマスター混合物を含む上部領域よりも深さおよび幅の両方が小さくなるようにデザインされていた。これにより、上部領域に負荷されるPCRマスター混合物を含む液滴を、プライマーの上部で油層を介して効率的に底面領域のプライマーに到達させることができる。次に、PCRSlipChipの上部プレートを底面プレートの上部に整列させ、その結果試料領域および試料ダクトが連続流体経路を形成するように整列させた。EvaGreen超混合物(Bio−rad)、1mg/mLBSA(Roche)およびDNA鋳型または水(対照セットのため)のいずれかを含むPCR混合物を、流体経路を通して流して流試料領域を負荷した。PCRSlipChipをすべらせて、四角の試料領域を環状のプライマー領域と共に整列させた。油の層が2つの領域の間にあったので、水性PCR混合物は、表面張力を減少させるために、領域内で液滴を形成した。PCR混合物がプライマー領域の底面上のプライマーに触れたとき、PCRプライマーは、反応混合物に溶解した。SlipChipをすべらせた後、サーモサイクリングを、インサイチューアダプタを備えたEppendorfmastercyclerを使用して行った。PCR読み出しは、試料領域の蛍光測定およびゲル電気泳動を使用することによって行った。
【0272】
サーモサイクリングの間、領域の水性溶液は、温度の増大のために、容積が膨張した。一定の態様において、四角の領域のみでSlipChipを使用するときは、水性溶液を、リスクを冒して四角の領域を満たして、温度の増大の後に、水性溶液を領域から漏出させて、材料の喪失およびモニターできない濃度の変化を生じさせることができる。油を含むより小さな環状領域を、水性溶液を含む四角の領域と接触させたとき、水性溶液は、領域内で液滴を形成して、サーモサイクリングの間に膨張のための部屋を提供する。2つの領域の中心に一貫したサイズの単一の液滴を形成するためには、一定の形状およびサイズの底面領域が好ましい。一貫したサイズの液滴により、液滴内の試薬の濃度の変異が最小限になる。
【0273】
本発明者らは、鋳型なしの2列の対照領域および5pg/μLの黄色ブドウ球菌(S. aureus)gDNAを含む2列の領域を有するためのPCR SlipChipのこの態様において、実験を始めた。鋳型を含む領域だけが増幅を示したので、本発明者らは、SlipChipにおいて混入が生じないことを見いだした。鋳型を含む全ての領域は、増幅を示し、PCR SlipChipの頑丈さを検証した。鋳型を含む領域は、サーモサイクリング後にDNAの存在がなかったこと、および鋳型のみを含む領域は、1つのDNA試料を含んだことを、蛍光強度測定およびゲル電気泳動が示した。
【0274】
定量的データ解析では、PCR SlipChipにおける混入を確認しなかった。SlipChipにおける混入または相互汚染がなかったことをさらに検証するために、我々は、プライマーセットをnuc遺伝子(黄色ブドウ球菌(S.aureus)から)およびmecA遺伝子(MRSAから)に交替させ、2つの異なるプライマーセットを底面チップに事前に負荷した。5pg/μLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)ゲノムDNAを上記の通りにチップに注入した。nuc遺伝子は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ゲノムDNAにおいてのみ存在し、一方で、mecA遺伝子は、MRSAにおいてのみ存在するので、nuc遺伝子のためのプライマーを負荷した領域のみが蛍光の増大を示して、mecA遺伝子を含むその他の領域は、蛍光を示さなかった。蛍光強度のラインスキャンは、鋳型のない領域が有意な蛍光を示さなかったことを定量的に示した。
【0275】
一定の態様において、サーモサイクリングは、サーモサイクラーにPCR SlipChip全体を置き、装置を囲んでいる外界温度を上下させることによって行われる。PCRSlipChipの異なる態様において、サーモサイクリングは、装置内で行われる。ここで、サーモサイクラーは、装置内の安定した温度分布に置き換えられて、領域をある温度から次へと物理的に移動させる。水性液滴は、前述したように水性溶液を含む領域を油を含む領域と合わせるためのすべりによって最初に形成される。SlipChipの一定の態様は、形成される水性液滴を溶液の損失なしにすべりによって移動することができるように、デザインされる。次いで、これらの液滴を、特定された期間の間、特定の温度にて維持したSlipChipの領域にすべらせる。SlipChipの一定の態様内の温度分布は、例えば、P2iコーティング下でIRヒーターまたは熱電装置を使用することによって生成することができる。これらの「ホットスポット」および「コールドスポット」のサイズは、個々の領域を収容するのに十分なほど小さくなること、または領域の列またはアレイを収容するのに十分なほど大きくすることができる。たとえば、回転装置により、冷えた装置の半分から熱い装置の半分に領域を移動することができる。装置内の複数の温度点の存在を使用して、PCRSlipChip装置の一定の態様にもう一つの次元:アニーリング温度を付加ことができる。異なるプライマーは、異なるアニーリング温度を有するので、より広範囲のプライマーをこの装置でスクリーニングすることができる。
【0276】
以下は、デジタルPCR SlipChipの一つの態様を記述する。SlipChipの一つの態様は、1,280の領域を含み、それぞれの領域は、約5nLの容積であり、かつ上で記述した写真平板およびウェット化学エッチング技術を使用して製造した。この態様は、卵型のダクトまたは領域を含んだ;2枚のプレートを寸法400μm×200μmおよび深さ50μmの重なった卵形の領域にパターン化した。2枚のプレートは、また200μmの直径および50μmの深さの寸法の環状領域にパターン化した。重なっている卵形の領域を使用することによって、装置における圧力損失が小さくなり、簡単にピペットで取ることによって満たすことができた。SlipChipを短い距離すべらせることによって、卵形の領域が分離されて、油の層を含む環状領域の上部を覆った。デジタルPCRのためには、プライマーを環状領域に事前に負荷する代わりに、PCR混合物に添加した。卵形の領域は、デ卵形の領域の幅が環状領域の直径と同じであるようにザインした。本デザインにより、液滴を領域の中央に置くことが可能になり、より優れたイメージングを可能にした。本デザインでは、また一貫したサイズの液滴を生じ、したがって、一貫した試薬の濃度で液滴を生じた。本デザインは、先に述べたPCRSlipChipと同様に、領域内で油によって囲まれた水性液滴を生じ、サーモサイクリングの間に部屋を熱膨張させた。
【0277】
デジタルPCR SlipChipの一定の態様では、100fg/10μL程度の低濃度にて鋳型DNAを検出することができた。
【0278】
デジタルPCRの動的範囲は、例えば大きな、および小さな領域の組み合わせを使用することによって増加することができる。たとえば、2,000領域を含む装置において、1,000領域が1nLの溶液を含み、1,000領域が10nLの溶液を含む場合、より大きな動的範囲および統計においてより高い信頼性を得るだろう。最善の動的範囲および最高の信頼区間を与える領域サイズの分布は、予測することができる。
【0279】
デジタルPCR SlipChipの一定の態様において、複数の領域サイズを、回転性デザインを使用してデザインすることができる。大きな領域は、より低密度にて外側に置くことができ、小さな領域は、より高密度にて内部に置くことができる。SlipChipのこの態様は、回転してすべらせるので、大きな領域は、小さな領域を超えて移動するだろうし、全ての領域は、同時に底面プレート上のこれらの対応する領域をそれぞれ接触させるだろう。
【0280】
SlipChipの一定の態様において、細菌のトラップは、磁気ビーズを使用して行うことができる。本発明者らは、ヒトのプールされた血漿(HPP)からMRSAを捕獲するために磁気ビーズ(BugTrap version C)を使用した。HPPには、1×10
7cfu/mLのMRSAの終濃度に対してMRSAをスパイクした。次いで、100μLのこの溶液を室温にて20分間BugTrapビーズと共にインキュベートした。ビーズはをプルダウンして、1×PBS緩衝液で5回洗浄した。次いで、ビーズをEvaGreen PCRスーパーミックス、1mg/mLBSA、プライマーと混合して、熱サイクリングのためにSlipChipに注入した。ここで使用したSlipChip デザインは、多重PCR実験に関するものと同じであった。
【0281】
本明細書において記述される技術は、多くの個々の細胞、ウイルス、粒子、分子およびその他の目的の平行分析のために使用してもよい。たとえば、SlipChipの一定の態様は、遺伝子構造、表現型、潜在的治療および治療の組み合わせに対する反応を含む反応の動態の多様性、並びに不均一性を決定するために癌細胞の集団でこのような測定を行うために使用してもよい。SlipChipは、例えば、放射線治療、産業事故または戦争もしくはテロリズムの行為により生じる放射線損傷のマーカーについて細胞および組織、たとえば血液細胞を評価するために使用することができる。この解析は、人が受けた放射線量を見積もるために使用してもよく、このような知識を、適切な対策、たとえば放射線療法の用量の調整、キレート化療法の投与もしくは非放射性同位元素の摂取またはさらなる方法を得るために使用してもよい。これらのマーカーは、例えば、二本鎖DNA破壊のマーカーであることができる。タンパク質、mRNA、miRNAマーカーおよび小さな分子を、一般的なマーカーおよび器官特異的なマーカーの両方に使用してもよい。このようなマーカーの1つの例は、HistoneH2AXのリン酸化である。マーカーは、例えば、酵素アッセイを介して、免疫アッセイ、電気泳動、ウエスタンブロッティングを介して、RNAレベルの解析を含む核酸増幅技術および方法の組み合わせを介して、SlipChipで解析することができる。単細胞レベルにて行われる測定は、局所的に受けた用量から、さらに循環細胞から全体的に受けた放射線の用量を区別するために、さらなる有益な情報を提供するだろう。たとえば、全体のダメージは、ダメージを受けた細胞によって示されるダメージの類似のレベルまたはダメージの単一のピーク分布を導くことができるだろうし、その一方で、局部的なダメージは、細胞によって示されるダメージのレベルまたは損傷の二またはより多くの二峰性分布の変異を導くことができる。個々のウイルスからの遺伝子材料の増幅、続くこれらの耐性パターンを決定するためのウイルスの遺伝子タイピングによって、例えばHIVおよび肝炎感染症のために好ましい耐性表現型の早期発見が可能になる。
【0282】
本明細書において記述される技術は、プラグに基づいた、および/または液滴に基づいた微小溶液システムおよびその他の技術を含む多相流技術に組み込んでもよい。SlipChipの一定の態様は、ケミストロードまたは他によって生成されたプラグなどの、直接SlipChip上に生成されるされる、または外部で生成される容積を含む混ざらない液体によって囲まれ、およびSlipChipに導入された液滴、プラグおよびその他の液体容積のアレイの解析に適する。
【0283】
この出願は、多数の異なる分離技術および試料型に組み込むことができる、分離のために使用されるSlipChip装置を記述する。これは、米国仮出願61/162,922においてすでに記述された能力(例えば、00102、00104、00122、および00188節を参照されたい)のより詳細な説明である。SlipChipは、上のFIDタンパク質結晶化のために使用されるSlipChipkについて記述したとおりに組み立てた。
【0284】
一定の態様において、SlipChipは、拡散に基づいた分離のために使用してもよい。多くの医療診断法は、疾患を診断するために血漿などの単離された透明な体液に依存するが、透明な体液を産生するには、たいてい高価な遠心機、時間および労力を必要とする。SlipChipは、赤血球が本来の領域に保持されると共に、全血における小さな分子重量タンパク質、核酸およびウイルスを、緩衝液を含む領域に拡散させるようにデザインすることができる。この分離は、拡散係数の相違に基づいている。たとえば、5分では、B型肝炎ウイルスは、600μm放散することができが、赤血球は、4μm放散することができるだけである。たとえば、本発明者らは、全血を5μM/L8−メトキシピレン−1,3,6トリスルホン酸(MPTS)と混合し、かつ混合物を10μL血液試料をピペットで取ることによって左の領域に負荷するSlipChipをデザインした。1×PBS緩衝液を右の領域に負荷した。装置をすべらせて緩衝液領域と血液領域を接続した。MPTSは、30分で緩衝液領域に拡散したが、一方、血球は、移動しなかった。
【0285】
このSlipChip デザインでは、分離を誘導するために、ダクトまたは領域において分離培地を利用することができる。少なくとも1つの領域/ダクトは、分離培地を含むことができる。領域に組み込むことができる分離培地の例は、ゲル(たとえば、シリカゲルまたはポリアクリルアミドゲル)、緩衝液、重合体フィルターおよび膜、結合薬、クロマトグラフィー培地、生細胞の表面、タンパク質を伴う、および伴わない生物学的膜(すなわち脂質二重層)、粒子のアレイおよびナノ粒子を含むが、限定されない。あるいは、分離培地は、装置の表面上にあることができる。たとえば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および等電点電気泳動をSlipChipで実施することができる。分離は、また拡散、並びに外部の場および環境によって駆動することができる。分離を誘導する場および環境の例は、磁場、電界、光学的な分野、重力場、化学的勾配、温度傾度、能動輸送および剪断力を含む。場は、オンチップで組み込まれたエレメントによって、または外部で生成されてもよい。たとえば、電極を、SlipChipの領域および/もしくはダクトまたはその他の領域に組み込むことができ、またはSlipChipの入口および出口を経て外部から適用することができる。SlipChipへの電極の組込みにより、電気泳動のためにダクトにゲルを置くことによって試料の前処置なく分離をするために電気泳動を使用することができる。場は、SlipChipをある位置から別の位置にすべらせることによって、スイッチオン/オフすること、または強度を調整することができる。分離は、また適用された場に関して目的の特性を改変するタグによって可能にすることができる。たとえば、磁化率、電気泳動移動度および拡散係数を、関心対象の目的をもう一つの目的に組み合わせることによって改変することができる。表層改変された磁気ビーズを利用して特異的細菌を結合し、続いて磁場によって分離することができるSlipChipは、薬物、並びにこれらの代謝産物および複合体などの小分子、ホルモン、環境汚染物、抗生物質、ニコチンおよびその代謝産物、乱用薬物、ストレスホルモン、慢性および急性ストレスと関連するその他の分子を分離し、並びに検出するために使用することができる。これらの分離方法は、また、細胞の分離および生物学的液体からの細胞の単離のために使用することができる。関心対象のこのような細胞は、循環腫瘍細胞、血液中の胎児細胞、幹細胞、細菌および真菌細胞、T細胞およびB細胞およびその他の特異的マーカーを発現する細胞の部分母集団を含む。これらの細胞は、血液、尿、脳脊髄液、組織液、裂け目液体、羊水、骨髄および組織生検から単離することができる。たとえば、分離は、神経組織疾患に関与するタンパク質およびペプチドの凝集状態および翻訳後修飾を決定するために有用であろう。
【0286】
このSlipChipは、また細胞および生物などの、独立して移動することができる対照を研究するために使用することができる。化学走性(能動輸送)、熱走性および磁気走性を、SlipChip内に化学的、熱的および磁気的勾配をセットアップすることによって研究することができる。たとえば、化学走性は、血液中の細菌と白血球とを単離するために使用することができる。
【0287】
分離は、SlipChipの全てのその他の能力と共に組み込むことができる。たとえば、種々の画分に混合物を分離するためにすべらせた後に、SlipChipを二度目にすべらせて、ウエスタンブロッティングのために抗体を送達する際など、検出を視覚化するために試薬を導入することができる。また、細胞におけるリン酸化およびグリコシル化レベルの検出は、診断および薬物発見にとって重要である。免疫染色と分離を組み合わせることにより、リン酸化およびグリコシル化の検出のために魅力的であり、SlipChipを単細胞レベルに下げてリン酸化およびグリコシル化のこのような測定を実施するために使用してもよい。一連のスリップを使用して、単一の細胞を単離して、それを溶解させて、分離を行って、抗体で分離された画分を染色して、検出アッセイを行うことができる。最初の分離の後、複数の場を単一の工程または複数の工程で組み合わせて、一次元、二次元またはより高次元の分離を行うことができる。たとえば、分離は、タンパク質結晶化と組み合わせてもよい。結晶化の間の継続分離によって、結晶化の間のタンパク質の種々の凝集状態を分離することができる。この分離により、高い品質および純度の結晶を得ることができる。
【0288】
SlipChipの一定の態様において、強力な本質的な混合は、渦磁場によって行うことができる。その全体が参照により援用されるMartin, Shea−Rohwer,Phys Rev E StatNonlinSoft Matter Phys. 2009 Jul;80(1 Pt 2):016312を参照されたい。「渦」磁場は、球状磁性粒子の懸濁液に適用することができ、これにより、液体容積の全体にわたって強力な、均一な混合を生じる。マイクロチャネル内で層流の撹拌は、チャネル内部で交流磁場をフェリ磁性ビーズに適用することによって行うことができる。その全体が参照により援用されるRidaand Gijs Anal Chem. 2004 Nov 1;76(21):6239−46を参照されたい。空間的に均一なの回転磁界に曝露したマイクロスケール磁気棒を使用する撹拌棒ストラテジーを使用することができる。使用することができる永久構造物は、標準的なマグネチックスターラによって駆動される製造された磁気ロッドを含む。マイクロ鎖に結合されるビーズは、また混合するために使用することができる。混合は、単純な回転場にビーズを曝露することによって達成することができる。ビーズは、液体内に適度な混合レベルを提供することができる。渦磁場を生じる永久磁石(およびマグネチックスターラ)は、準備が簡単なため、一定の態様のために好ましい。超音波混合、「泡ミキサー」並びに交流誘電泳動を含む電場によって駆動される混合および流れを含む、微小溶液装置において一般に使用されるその他の混合の方法をSlipChipで使用することができる。
【0289】
マグネチックスターラおよび強力な永久磁石を使用する例。
【0290】
1ミクロンの磁気ビーズを含む微小溶液装置を、回動する強力な磁石から1−1.5 cm離して置いて、4つの強力な磁石をほぼ同じ距離にて上部に付加した。強力な混合が〜6nL領域で生じた。上部の磁石または下の回動磁石なしでは、強力な混合が止まる。理論によって拘束されないが、渦磁場が生じたと考えられる。
【0291】
緩衝チャンバーを、本明細書において記述した装置のいずれかにおいて使用することができる。これらは、好ましくは、領域およびダクトのセットの入口、上流により近い。これらは試料の一部をトラップすることができ、例えば小量の試料がSlipChip内のあまりに遠くに押し込まれたときに、行き過ぎを防止することができる。緩衝チャンバーは、能動的置換装置(ピペットなど)を負荷するときに好ましい。
【0292】
FID結晶化を行う使用されるSlipChipsにおいて、同じ装置上で領域を接続する異なるサイズのダクト(例えば、長さ、幅および深さの少なくとも1つが異なる)は、異なる領域にわたって複数の拡散プロフィールを生成するために使用することができる。
【0293】
SlipChipの一定の態様については、重複した領域および/またはダクトのセット内の領域および/またはダクトの間に様々な程度の重複を有することが好ましい。
【0294】
FID結晶化を含む一定の反応を行うために使用されるSlipChipsにおいて、複数のダクトを単一の領域に接続して、同じ領域に接続された複数の濃度勾配を作製することができる。
【0295】
SlipChipは、複数の反応のタイプを行うようにデザインすることができる。たとえば、装置は、同じ装置でFID結晶化およびマイクロバッチ結晶化を実施するように構成することができる。いくつかの態様において、分岐供給ダクトが、異なる反応のために使用される装置の領域の間の試料に対して使用される。
【0296】
FID結晶化を実施するために上で記述した装置と類似のSlipChipsをその他の、実験のタイプのために使用することができる。たとえば、細胞−遊走または細胞分極アッセイをこのような装置において実施することができる。装置をすべらせて少なくとも2つの領域を
接続して勾配を生じさせ、これに沿って細胞が上または下に移動することができ、またはこれに反応して細胞が分極しうる。複数の領域を接続して複合体勾配および対勾配を確立することができる。加えて、このような装置は、共培養して細胞間相互作用をモニターするために使用することができる。
【0297】
多くの場および力を、1つの領域からもう一つの領域へ容積を移すために使用することができる。領域間で容積の転送を可能にすることができる場の例は、表面張力、磁場、電界、重力場、温度傾度および剪断力を含む。一定の態様において、SlipChipが、単一容積への複数の液体の容積を測り、および移すために使用することができる。SlipChipは、異なる容積の試料を単一の容積に移し、および混入するように、種々の容積の領域でデザインすることができる。単一容積へ異なる容積の試料を移し、および混合する能力は、乾燥試薬を再水和するための一般的な方法として使用することができ、関連したアッセイによって行うことができる。これは、アッセイにおける試薬の一方向転送のために、PCRおよび熱膨張を必要とするその他の適用のために、タンパク質結晶化実験、血液凝固、アッセイおよび反応において、「ドロップスポットアレイ」と同様のトラップされた液滴のアレイに試薬を添加するために、例えば以下刊行物に記述されたようなその他のアレイに使用することができる:Schmitz,C. H. J.; Rowat, A. C.; Koster, S.; Weitz, D. A., LabChip2009, 9, 44−49; Shim,J. U.; Olguin, L. F.; Whyte, G.;Scott, D.; Babtie,A.;Abell, C.; Huck, W. T. S.;Hollfelder, F., J. Am. Chem.Soc. 2009, 131, 15251−15256、これらは、本明細書において参照により援用される。異なる形状、サイズ、並びにSlipChipの領域およびプレートの表面修飾を利用して、領域に液滴を移して、区分することができる。液滴形状および容積は、領域形状および領域容積によって制限されるので、領域は、完全に満たされた、より大きい領域内にトラップされた小さな液滴である領域、および液滴よりわずかに大きいだけである領域に含まれる液滴を含む異なった程度に満たすることができる。異なるサイズの領域および異なった満たす程度を使用して、SlipChipの一定の態様において容積を移して、合わせることができる。
【0298】
SlipChipにおいて容積を移すために領域および液滴サイズのこれらの組み合わせを使用する方法の一つの例は、以下を含む:すべらせて、1つの物質で完全に満たされた1つの領域を第2の物質で構成された液滴を含むより大きな領域と重ねることができる。これらの2つの領域が接触するとき、拳領域の液体がより大きなものの液滴と結合して、表面張力を最小限にするようにより大きな領域に残る。
【0299】
異なる形状を使用して、領域より小さい液滴をトラップすることができる。たとえば、傾斜する領域を、液滴を閉じこめるために使用することができ、または3層SlipChipを、中間層に液滴を閉じこめるために使用することができる。これらのデザインは、正確に液滴の位置を定めるために使用することができ、すべらせと共に、液滴が漏れるのを回避するために使用することができる。加えて、これらは、またオフチップ解析のために液滴を抽出するために開けることを必要とする装置のために非常に有用である。
【0300】
SlipChipは、また液滴における混合を誘導するために使用することができる。一定の態様において、領域が完全に満たされない場合、領域における溶液の間の潤滑液およびSlipChipの2枚のプレートの間の潤滑液のさらなる層がある。SlipChipは、すべるので、2枚のプレートの動作により、潤滑液の動作によって伝達される液滴の混合を誘導することができる。非線形または不可逆的なすべらせるパターンを、混合を増強するために使用することができる。
【0301】
一定の態様において、完全に満たされない領域において、溶液とSlipChipの他のプレートの表面との間の潤滑液のさらなる層の存在は、相互汚染を防止することができる。溶液とSlipChipの外装プレートとの間のさらなるバリアは、表面修飾によって溶液の接触角を調整することに加えて、またはそれに代わるものとして、SlipChipの表面上に残留物が残ったままになる可能性を減少させるだろう。
【0302】
領域の表面修飾は、領域におけるポジショニングおよび物質移動を制御するために使用することができる。たとえば、領域の底面は、水性溶液によって優先して濡れるだろうため、底面に液滴をトラップするだろう親水性底面表面で領域を作製することができる。もう一つの例において、水性溶液が領域を濡らすだろうように、全域を親水性で作製することができる。異なる溶液は、同じサイズ領域において異なる形状および表面湾曲(界面エネルギー)を有し得る。表面修飾は、また1つの領域からもう一方まで溶液を移すために
使用することができる。たとえば、2つの領域を、親水性ブリッジで接続して完全に満たされない1つの領域を完全であるもう一方に接続することができる。表面張力および拡散を使用することによって、物質を1つの領域からもう一方まで輸送することができる。
【0303】
第1の領域(例えば、メーターで測っている領域)から第2の領域(例えば、反応器領域)へ液体の容積を移す1つの機構は、第1の領域および第2の領域が、第1の領域内部の液体の容積が第2の領域内部の液体の容積より高い表面張力を有するような形状を有するときである。たとえば、第1の領域が第2の領域より浅く、かつより小さなときに、この条件を満たすことができる。使用者は、ダクトおよび次いでスリップを使用して第1の領域および第2の領域が重なるように、第1の領域を負荷することができる。第1の領域の液滴は、表面張力のため、より大きい領域に入るのを好む。このアプローチは、例えば事前に負荷された乾燥試薬を再水和するために適用することができる。このアプローチは、また同じ容積内で複数の試薬を合わせるために使用することができ;例えば、2、3、4、5またはより多くの試薬を、すでに添加された試薬の損失なしに、連続して同じ容積に添加することができる。
【0304】
表面張力を使用して液滴を移す別の例において、反応領域の表面が親水性であり、その一方でSlipChip装置の残りの表面が疎水性であるように修飾することができる。親水性の反応領域および疎水性の測定領域を使用するとき、測定領域によって移される水性溶液が反応領域の親水性表面を優先して濡らすであろうように、領域の相対的なサイズは重要でない。たとえば、大小の完全に満たされる疎水性領域、並びに部分的に満たされる疎水性領域を、反応領域を満たすために使用することができる。
【0305】
多くの組み合わせの高効率スクリーニングのための多重化SlipChipは、多段階を移行させるストラテジーに基づいて開発された。装置は、それぞれの領域が溶液の異なる組み合わせを有する反応マトリックスをセットアップするために使用することができる。より多くの工程が行って、垂直および水平方向において第三および第四の試薬を導入することができる。たとえば、このようなN×Nデザインを使用して、乾燥試薬を再水和し、試料を添加し、試薬を(たとえば垂直方向において)添加し、次いで試薬の別のセットを(たとえば水平方向において)添加することができる。装置は、また、異なる容積の領域によってデザインして、多重化スクリーニングにさらなる次元を追加すことができる。装置は、上述した表面張力に基づいた容積移行の機構を利用することができる。
【0306】
第一の領域から第二の領域まで溶液を移行するために使用することができるその他の機構を記述する。液体の密度差は、液滴を浮かせ、またはより大きな領域に液滴を沈着させるために使用することができる。磁気ビーズが第一の領域における液滴に添加される場合、磁石を、第二の領域に液滴を移動させるために使用することができる。また、SlipChipの一定の態様上に電極を組み込み、荷電された溶液または粒子を含む液滴を移動させることができる。第二の領域を第一の溶液で満たした後に、後ろにすべらせ、かつ第二の領域を別の溶液で満たし、次いで2つの領域を再び重ねて異なる溶液の測定された容積を組み
合わせるようにすべらせることができる。溶液は、また、満たしている間にインキュベートすることができる。使用者は、溶液の数および反応領域に満たされるそれぞれの溶液の容積を調節することができる。たとえば、異なる容積を有する小さな領域のアレイは、反応領域中の異なる溶液の正確な容積を測定するために使用することができる。
【0307】
反応領域の容積がその中で測定される液滴の容積より大きい場合には、熱膨張のための余地がある。これは、温度が増加する適用に有用であり(たとえば、PCRのための熱サイクリングのような)、その理由は、熱膨張が生じるときに、溶液が溢流しないであろうからである。反応領域が、これと測定領域を接触するときに満たされている場合、測定領域における溶液は、反応領域における溶液と混じるであろう。測定領域がすべって離れるとき、これは混合溶液の測定された容積を輸送するであろう。2つの溶液の優れた混合を確実にするために、混合技術をSlipChipに組み込むことができる。
【0308】
測定するための、および混合するためにより大きな領域に溶液を移行するための、小さな領域を使用するSlipChipの態様を記述する。この装置は、10個の列を含み、それぞれの列は20個のより大きな領域、20個のより小さな領域およびダクトを含み、かつそれぞれの列は異なる溶液で満たすことができる。より大きな領域(サイズ620μm×240μm、深さ60μm、容積6.8nL)およびダクト(幅300μm、深さ60μm)が底部プレートにあり、またより小さな領域(幅620μm×120μm、深さ35μm、容積2nL)が上部プレートにある。SlipChip装置は、フルオロカーボン下で組み立てた。フルオロカーボン油は、領域、ダクトおよび2枚のプレートの間の間隙を満たした。赤の食品色素溶液を、より小さな領域およびダクトによって形成される流体経路に満たした。装置は、すべらせて、より小さな領域をより大きな領域と整列させた。水性溶液の表面張力のため、溶液は、より小さな領域からより大きな領域に移行した。装置は、その最初の位置へとすべって戻り、より小さな領域およびダクトを通過する連続流体経路を形成して、青の食品色素溶液をより小さな領域に満たした。装置を再びすべらせて、より小さな領域をより大きな領域と整列させ、より大きな領域において赤および青の食品色素が組み合わせられて混合した。異なる食品色素溶液を満たす間に、流体経路を水およびFC40で洗浄して、汚染を減少させた。
【0309】
いくつかの態様において、SlipChipは、代謝プロファイリングのために使用することができる。全ての人々は、異なって薬物を代謝する。個人的代謝を決定することは、遺伝学により可能であるが、高価であり、また組み合わせの相互作用を取扱おうとするときには課題に直面する。肝酵素を誘導し、かつ阻害し得るため、さらなる課題が存在する。機能試験は、したがって有用である。代謝プロファイリングのためのSlipChipに基づいた装置は、オフィスにおいて、または家庭にて使用することができる。また、喫煙停止を最適化するためにニコチン代謝産物を特徴づける必要がある。SlipChipは、研究室から離れて使用することができるので、これは、このために有用である。これは、たとえば、異なる用量を有するニコチンパッチの中から選択することを助けるために、薄層クロマトグラフィー能力を備えたSlipChipをドラッグストアにて使用することができる。剪断駆動クロマトグラフィーは、SlipChip上の薄層クロマトグラフィーを改善するために使用することができる。検出および定量化は、たとえば、携帯電話または視覚的検出装置を使用して、このような装置において実施することができる。
【0310】
物質代謝を測定するためのSlipChipは、たとえば、薬物の濃度または薬物とその1つもしくは複数の代謝産物との間の比率を決定するために単純な装置が必要である状況、または投薬することが重要である状況において有用である。唾液における物質の濃度を測定することは好ましい。唾液の供与源に関係なく唾液中に分配する物質の濃度を測定することは好ましい。このような装置は、また、診断することよりもむしろモニタリングが重要であり、たとえば長期の期間、患者が1つまたは複数の薬物をすでに取得しており、かついくつかの代謝酵素が阻害されていてもよい状況において有用であることができる。このような場合において、過量服用することを回避するために長期にわたって1つまたは複数の薬物の代謝をモニターすることは、有用である。この種の装置は、また、副作用を最小限にし、かつ結果を改善するための第I相、第II相もしくは第III相の薬理試験の間、または食品における農薬を検出するために有用である。薄層クロマトグラフィーまたはその他の技術による二次元の分離を、濃縮および分離を改善するために使用することができる(たとえば、1次元において試料を濃縮し、次いで、異なる溶媒相を使用して、その他の次元において分離することができる)。
【0311】
いくつかの態様において、代謝プロファイリングのためのSlipChipは、相互汚染させることなく多段階にすべらせること、オンチップ段階希釈、および親水性領域を作り出すための装置のパターニングをすることができるように、不連続な架橋ダクトを含むことができる。
【0312】
SlipChipは、多数のアプローチおよび技術に適用可能であり、個別化された医療を可能にする。適用は、診断のために患者試料を試験することおよび薬物開発および治療モニタリングを含む。
【0313】
SlipChipは、血液、尿、唾液およびその他の試料の解析によるものを含む患者の腎臓機能を評価するために使用してもよい。これは、クレアチニンの解析、並びに好中球ゼラチナーゼに関連するリポカリン(NGAL)、シスタチンCおよびその他のマーカーなどのその他のマーカーの解析を含む。マーカーは、免疫アッセイ、酵素アッセイおよびこの出願の他の場所に記述されたようなその他のアッセイを使用して解析することができる。
【0314】
SlipChipは、酵素アッセイ試験および免疫アッセイ試験を含む肝臓機能を評価するために使用することができる。標的は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパルテートトランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、ベータヘキソサミニダーゼ(β−HEX)、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)、5'ヌクレオチダーゼ(5'NTD)を含む。凝結試験(例えばINR)、血清グルコース、総および直接ビリルビン(BIL)、血清アルブミンなどのさらなる試験は、この出願において記述される方法を使用して、SlipChipで実施することができる。
【0315】
以上のことから、多数の変化および変異が本発明の精神および範囲から逸脱することなく遂行し得ることは、認められるであろう。本明細書において例証される特異的態様についての限定が意図されず、または推定されるべきでないことを理解すべきである。添付する特許請求の範囲によって、特許請求の範囲に入るような全てのかかる変型をカバーすることが意図されていることは当然である。
【0316】
一定の態様において、SlipChipは、段階希釈によって濃度プロファイルを作製するために使用することができる。段階希釈は、免疫アッセイ、細胞培養アッセイおよび酵素アッセイの動態を決定することを含む適用について、最も共通かつ基本的な研究室技術の1つのである。いくつかの微小溶液法が、希釈液を作り出すために存在し、層流の単純な拡散による混合、複数の流れを分割し、また組み合わせる多段階の流体デバイダーおよび所望の終濃度と比例した流速である複数の流れの混合を含む。しかし、多くの微小溶液装置は、連続した流れに頼っており、これは、大きなデッドボリューム、吸着、圧力損失制限およびその他の制限を受ける。一定の態様において、SlipChipは、平行して複雑な機器を使用することなく、多重化された多段階反応を確実に扱うことが可能である。本発明者らは、段階希釈を実施するためにSlipChipを使用する単純なアプローチを開発した。本発明者らは、多段階にすべらせること、および領域サイズを調整することによって調節される複数の混合比を組み込むように、SlipChipをデザインした。この方法は、多くの試料を平行して扱うことができ、一定の態様において、少ない容積の試料(各領域についてナノリットル)を必要とすることができ、定量的な多重化アッセイに有用である。一つの態様において、段階希釈SlipChipは、8個の段階希釈工程を平行して実施するようにデザインされている。これは、2つの部分を含む:試料を含む浅い領域の列および希釈のための緩衝溶液で満たされた深い領域のアレイ。段階希釈を実施するためにSlipChipの使用には、一定の態様において、3つの一般的な工程:(a)緩衝液を負荷する工程、(b)試料を負荷する工程、および(c)多段階ですべり、希釈する工程を含む。たとえばピペットで移すことによってSlipChipを満たした後に、チップの2枚のプレートをすべらせ、ダクトを領域から分離する。ダクトが領域から分離されるにつれて、これらは、すべる経路の外にもまた移動する。試料を含む領域が緩衝液を含む領域と接触して試料が希釈される。混合比または希釈係数は、領域容積の比率によって決定される。さらなるすべる工程が同じ原理によって作動し、したがって、段階希釈が実施される。1つの例において、段階希釈SlipChipは、微小加工されたガラスの2つの層により構成された:上部層は、全ての入口および出
口、試料のためのダクト並びに緩衝溶液のための領域を含む。全ての領域は、深さ76μmであり、ダクトは、深さ30μmである。底部層は、試料のための深さ10μmの領域および緩衝溶液のための深さ30μmのダクトを含む。装置の表面は、親水性となるようにシラン処理され、一方で深さ10μmの疎水性の領域を保持する。本発明者らは、相対的に薄く、深さ10μmの領域を使用し、領域の中および外において拡散時間を減少させた。本発明者らは、領域を親水性にさせて、親水性領域の中で水滴の形状(および容積)を調節して、また浅い領域からの脱湿を防止した。深さ10μmの領域は、シラン処理の間一時的にマスキングし、親水性表面を維持した。蛍光色素は、このSlipChipを使用して希釈を定量化するために使用した。4回すべらせる工程の後、〜10
4倍希釈が観察された。
【0317】
親水性領域を有するSlipChipの製造については、本発明者は、以下の変形とともに、この出願における他の場所に記述したSlipChip手順におけるガラスエッチングに従った。空のガラスプレート(ソーダ石灰ガラス、厚さ:0.7mm;クロミウム層:1025Å;AZ1500フォトレジスト:1μm)は、まず3in×1inとなるように切断した。
【0318】
フォトマスクをガラスプレートから取り除いた後、ガラスプレートを2分間0.5%のNaOH溶液に浸漬することによって現像した。ガラスプレートをテープで巻いてエッチング溶液に浸漬した後、エッチング速度を調節するために25℃の恒温水浴シェーカーを使用した。エッチング時間(〜30分)を調節することによって、深さ46μmである領域をガラスプレートにエッチングした。領域の深さは、拡大することなしに一定のエッチング深さが通過したことを示す特別にデザインされた構造を使用して検証した。この構造は、エッチングされる距離の2倍と等しい幅である正方形のアレイからなる。正方形は、最初はクロムでカバーされている。所望のエッチング深さに達した後、クロムを取り除き、肉眼で見ることができる明らかなコントラスト差を生成する。プレートを取り出し、Millipore水で徹底的にリンスして、窒素ガスで乾燥した。ダクトについてのデザインを含む別のフォトマスク、および〜20分のエッチング時間を使用することによって、深さ30μmのダクトをガラスプレートにエッチングした。プレートは、徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。本発明者らは、同じプロトコルを使用して、底部プレートにおいて深さ10μmの領域および深さ30μmのダクトを作製した。
【0319】
ガラスプレートをエタノールでリンスして未現像のフォトレジストをはがした後、ガラスプレートをピラニア洗浄し(1部分が30%過酸化水素、3つの部分が硫酸)、Millipore水で2回洗浄し、次いで、220℃ホットプレートの上で2時間を超えて脱水した。プレートを室温まで冷却し、OmniCoat(MicroChem、USA)でスピンコートし、200℃にて1分間焼いた。プレートを室温まで冷却して、SU82025の厚さ20μmの層でスピンコートした。次に、プレートを、疎水性にさせたプレート上の領域を保護したフォトマスクで被覆した。UV光をガラスプレートの裏から照らして、既存のクロムマスクの利点を取得した。フォトマスクによって曝露された領域において、UV光は、クロミウム層が取り除かれたプレートのみを通過し、現像後に領域におけるSU8のみが残った。領域におけるSU8が領域を保護して、これらが疎水性でになるのを防いだ。露出した表面上のOmniCoatを30秒間MF−319に浸漬することによって現像し、2分間Millipore水でリンスした。
【0320】
最後に、ガラスプレートをクロミウムエッチャントに浸漬して、クロミウム層を取り除いた。次いで、ガラスをエタノールおよびMillipore水でリンスして、120℃オーブンで一晩焼くことによって乾燥した。
【0321】
ガラスプレートを洗浄して、100秒間300mTorrにて空気プラズマ処理に供し、次いで、表面を前述したようにトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシランで5時間真空乾燥器においてシラン処理することによって疎水性を付与した。シラン処理の後、ガラスプレートを(この順序で)、3×20mlの無水トルエン、3×30mlの無水エタノール、3×30mlのエタノール/H
2O(50%:50%、v:v)および3×30mlのMillipore水によってリンスした。プレートを15分間120℃オーブンにおいて焼いた。最後に、領域におけるSU8を30分間80℃にてRemoverPGにガラスプレートを浸漬することによって取り除いた。プレートはをクロロホルム、アセトンで、および次いでエタノールでリンスして、窒素でブローして乾燥させた。
【0322】
SlipChipは、FC−40下で組み立てた。まず、底部プレートを、パターンを上に向けて、ペトリ皿のFC−40に浸漬した。次いで、上部プレート2お、パターンを上に向けて、底部プレートの上部の上に重ねた。〜3分後、次いで、上部プレートを、SlipChipを組み立てるときに気泡をトラップすることを防止するために慎重に反転させた。必要な場合、気泡は、真空乾燥器内にチップを急いで置くことによって取り除くことができる。2枚のプレートは、これらを互いに相対的に移動することによって整列させ、次いで4つのマイクロバインダークリップを使用することによって固定した。SlipChipは、負荷のプロセスの間、FC−40中で保持した。
【0323】
全ての蛍光色素溶液は、使用前に0.22μmPVDF(登録商標)シリンジフィルタ(Millipore)で濾過した。PBS緩衝液(1×、pH7.4)中のAlexaFluor488ヒドラジド(1.6mM、Invitrogen)を試料ダクトの中にピペットで移すことによって負荷した。1×P BS緩衝液を緩衝液ダクトの中に負荷した。SlipChipをLeicaMZ 16立体鏡下ですべらせて、まず単離された液滴を形成した。次いで、試料領域を連続して緩衝液領域と合わせた。各すべる工程の後、本発明者らは、3分間待って蛍光色素を拡散させた。4回のすべる工程の後、装置を20×0.7NALeica対物レンズおよびHamamatsu ORCAERカメラを備えたLeica DMI6000顕微鏡(Leica Microsystems)に急いで移した。30msの曝露時間でL5フィルターを使用して、AlexaFluor 488蛍光を収集した。イメージは、Metamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(Universal Imaging)を使用することによって取得し、かつ解析した。顕微鏡を較正するために、L5フィルターのための蛍光参照スライドの蛍光強度を記録して、バックグラウンド補正のために使用した。PBS緩衝液における80nM、160nM、400nMおよび800nMのAlexaFluor488ヒドラジド溶液を使用して、4回のすべる工程の後に較正曲線を得て蛍光色素の濃度を決定した。領域の深さはVee co Dektak 150側面計で測定して、領域の容積はエッチングが等方性であるという仮定により算出した。
【0324】
SlipChipの一定の態様は、また、限定されないが、IC50、EC50およびその他の濃度曲線(たとえばCP4 50など)を決定することを含むその他の多段階反応を実施するために使用することができる。DMSO化合物ライブラリーの段階希釈を介してIC50アッセイを実施して、100%DMSOまたはDMSO/水の混合液における2×10
7の希釈液を達成することができ、また各希釈液によりアッセイを実施して、関心対照の化合物のIC50を確認することができる。SlipChipは、ライブラリーの希釈液を作製して、生成された希釈ライブラリーに対して多重化様式においてその後のスクリーニングを実施するための理想的なプラットフォームである。SlipChipで実施することができるその他の多段階反応は、酵素動態を測定すること、および段階希釈によってPCRにより濃度を定量化すること(リアルタイムPCRと組み合わせて、またはエンドポイントPCRを使用して)を含む。たとえば、使用者は、PCRによってHIVウイルスの負荷試験を実施することができる。使用者は、連続的に広い動的範囲において未知の試料を希釈することができ、HIVウイルスがボアソン分布に従うという仮定によりPCR結果から濃度を抽出することができる。SlipChipで実施することができるその他の多段階反応は、関心対照の物質であって次いで試験生物またはヒト被験者に投与される(オンチップまたはオフチップ)物質の段階希釈を使用して、薬物および毒素の両方の感受性試験をすること、並びに特に未知の初濃度を有する試料からの、まれな細胞または分子の単離を含む:高密度細胞集団/高濃度混合物において、まれな細胞または分子を見いだすことは困難であろう。段階希釈は、初濃度が未知であるとき、確率的制限のために必要な濃度を得るのに便利な方法(またはデジタルPCRなど)を提供する。SlipChipで実施することができる多段階反応は、段階希釈および逆算を通して急いで見積もることができる細菌培養密度(または溶液における粒子の濃度)を含む。抗体価および段階希釈を決定することは、非特異的結合を排除するか、またはそれを偽陽性として同定することが可能な1つの方法である。
【0325】
本発明の一定の態様において、ハイスループットのナノリットルデジタルPCRをSlipChipで実施することができる。SlipChipは、相互汚染がないことが示されており、これは、タンパク質結晶化および免疫アッセイを実施することによって以前に確認されている。本発明者らは、また、SlipChipがハイスループットの多重化PCRに適用することができることを証明した。本発明者らは、SlipChipプラットフォームを使用してデジタルPCRを実施した。一定の態様において、ピペットを介して試料を導入した後、1回のすべらせる工程によって、千個を超えるナノリットルコンパートメントを同時に形成することができる。低濃度の核酸を装置に負荷したとき、コンパートメント当たりの核酸を1コピーより少なくすることができる。この場合において、エンドポイント蛍光の「イエスまたはノー」のデジタル読み出しを使用して、各コンパートメントにおける核酸の存在を検出することができ、最初の試料における核酸の濃度を算出することができる。このようなデジタルPCRSlipChipを使用して、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)ゲノムDNAを増幅した。これは、RT−P CRを介してHIVからRNAを増幅するためにもまた使用した。デジタルPCRSlipChipは、核酸の定量化、細胞異種性の研究、胎児期の疾患の診断法およびポイントオブケア装置の改善に対して新たなストラテジーを提供する。等温反応および視覚的読み出しを組み合わせたとき、PCRSlipChipプラットフォームは資源が限られた状況における診断のための強力なツールである。
【0326】
流体の容積を操作することは、現代の研究室の実施の基礎である。これは、新たな生物マーカーおよび薬物から新たな材料およびプロセスまでの研究および開発において重要である。これは、診断、食品および水の安全性並びにバイオ防御における解析科学の重要な部分である。これらの領域において、SlipChip技術は、有用であり得る。SlipChipsは、多くの流体容積を平行して操作するために複雑なプログラムをコードするようにデザインすることができる。SlipChipは、一定の態様において、互いに相対的に移動することができる2枚のプレートを備える。プログラムは、プレートにインプリントされる領域のパターンとして、各SlipChipにコードされる。各領域は、それが対向するプレート上の領域と重なるまで、単離されたままである。コードされたプログラムは、互いに相対的に2つのプレートを移動し、またはすべらせることによって果たされる。プレートが移動するにつれて、2枚のプレートの領域は、正確に定義された順序において接触したり離れたりし、一時的な流体経路を作り出したり壊したりして、試薬を接触したり離れたりさせる。1つまたは複数の試料を、このような流体経路を介して導入することができる。プログラムは、使用者によって一時的な経路の中に負荷される、またはSlipChip上に予め負荷される試薬のいずれかと試料を接触させることによって果たされる。非常に複雑なプログラムは、使用者にとって非常に容易に、何千もの領域上で果たすることができる。容積が少ないほど、試料および試薬はより貴重であり、相互作用する試料および試薬の数がより多いほど、また操作がより複雑であるほど、SlipChipはより有益である。SlipChipは、新たな流体技術のフレーミング開発である7つのまだ満たされていない必要を満たした:これは、小型化し、滑らかにし、およびピコリットルからナノリットル、マイクロリットルの容積まで正確に計測可能にすることができる。SlipChipは、単純に大きなスケール上ですることができない実験、たとえばヒト細胞および微生物細胞の両方について個々の細胞を調べること、または分子を計数することを可能にする。SlipChipは、試薬および試料の消費を最小限にし、特に高価な試薬、まれな試料(生検試料、まれな細胞、貯蔵された試料)、毒性、放射性および生物災害廃棄物に関して、廃棄物を減少させる。SlipChipの一定の態様は、小型化された形式において平行して容易に実施される何千もの実験を有する、多重化実験を可能にする。SlipChipは、個々の細胞または遺伝子型の特性における多様性を検出するために必要とされるような、「1つの試料、1つのアッセイ、多くの回数」を可能にする。例としては、生検および循環腫瘍細胞を解析することによって癌を診断すること、HIVにおけるまれな、および薬剤耐性の遺伝子型を解析すること、並びに脳卒中を診断する方法を現すことを含む。SlipChipの一定の態様は、QuestDiagnosticsなどの中心的実験
によってされているような、大規模に単純化された「1つのアッセイ、多くの試料」の試験を可能にする。SlipChipの一定の態様は、複雑な条件の診断のために必要なマルチパラメーター診断のような、「1つの試料、多くのアッセイ」を可能にする。SlipChipの一定の態様は、生物マーカーの発見および検証のために必要とされる「多くの試料、多くのアッセイ」実験を可能にする。SlipChipは、速度に対する需要を満たす:結果に対する試験時間をカットする。単一細胞レベルにて解析を実施し、かつ細胞培養についての要求を取り除くことによって、SlipChipの一定の態様は、敗血症並びに食品、水および環境の安全性の診断に重要な微生物学的試験を促進する。単純化されたプラットフォームを提供することによって、SlipChipの一定の態様は、急性状態(脳卒中および心臓発作など)の診断に重要な、使用場所に携帯可能な装置を可能にする。SlipChipの一定の態様は、「デジタル」形式における単一の分子レベルに至るまでの感度に対する需要を満たす。核酸およびタンパク質について、1回にて分子1つを検出することは、感度のいい検出のために、および定量化のために、魅力的である。SlipChipは、少ない容積で(検出化学が働くのに十分高い濃度で各分子を取得するために)、および多段階の操作において(たとえば異種性の免疫アッセイのために)、何千もの実験(正確な数を取得するために)を必要とするこのような「デジタル」形式のための理想的なプラットフォームである。この能力は、個々の癌細胞における遺伝子コピー数を計数することから、心臓発作および外傷性脳損傷(TBI)を診断することまで、広範囲の意味を有する。SlipChipは、手作業を最小限にし、エラーを減少させ、再現性を増大させ、処理能を増大させ、整備された研究室、ポイントオブケア、および資源が乏しい状況において必須である。これは、マイクロスケール上の複雑な予めプログラムされた多段階の手順を可能にし、遺伝的な試験に必要とされるような試料調製およびプロセシングを含む。これは使用者によって負荷され、または工場にて予め負荷されてボード上で貯蔵される試薬を支持し、取扱いを最小限にする。予め負荷された試薬を有するSlipChipは、「液相マイクロアレイ」として機能し、ちょうど遺伝子チップがDNAハイブリダイゼーションアッセイに革命をもたらしたように、多重化された溶液−
相アッセイに革命をもたらす潜在性を有する。これは、ベンチトップでの発見研究、ポイントオブケアおよび家庭での試験、並びに資源が乏しい環境のために必要とされるように、これらの複雑な手順を研究室の外で実施することができる。SlipChipプラットフォームは、全ての共通の実験方法を支援する。たとえば、これは、広範な適用に必要とされる、PCRおよびその他の核酸試験、免疫アッセイおよびビーズの取扱い、酵素アッセイおよび細胞に基づいたアッセイを支援する。これは、共通に使用される読み出し機構(光学的、磁気的および電気的)を支援する。これは、たとえば、単純なテフロン(登録商標)およびガラス装置を有し、化学に比類なく適する。SlipChipの一定の態様は、コストを減少させる。一定の態様は、弁を必要とせず、標準的なプラスチック技術によって単純に製造される。プラットフォームは、設備なしで、または最小限の設備しか必要とせずに作動するために、単純であることができる。低コストおよび単純性の組み合わせは、チップを走らせるために複雑な機器(ロボット工学、ポンプ、アクチュエータ)を必要とし得る、また組み込まれた弁を有する複雑なチップを必要とし得る、チップ技術におけるその他の微小溶液実験より優れたSlipChipを作製する。SlipChipは、資本集約的であり、かつ蒸発および精度の問題のために少ない容積範囲でのSlipChipの性能に適合することができない、ロボットワークステーションより優れている。
【0327】
SlipChipの一定の態様は、一度に多くの単一細胞/単一粒子/単一試料/単一分子において使用することができる。これらは、また、維持、混乱および解析についての関連した流体工学と共に、3D組織モデルのために使用することができる。
【0328】
SlipChipは、学術的、薬学的、診断の区域において使用することができ、試薬および設備を提供する。SlipChipの一定の態様は、小型化および標準的な研究室プロトコルの簡略化、核酸DNA/RNAの濃度の測定(「デジタルPCR」)、タンパク質結晶化および単一細胞解析における独特の能力を可能にする。SlipChipは、また、SlipChipsにおいてこれらをパッケージすることによって、化合物のライブラリーを販売する企業に対し、価値をもたらすことができる。現在では、これらのライブラリーは、スクリーニングセンターに対してのみに販売することができ、試験することは高価である。たとえば、10,000倍少ない各化合物を、SlipChip上に負荷して試験することができる。SlipChipは、試薬を試験する使用者のために障害を減少させることができる;試薬製剤のパネルを有する予め負荷されているSlipChipsは、使用者に分配され、使用者は製剤のうちどちらがこれらの適用のために最適かについて迅速におよび効率的に試験して、より大きな量においてその製剤を命じることができる(おそらくまたSlipChipsの上で)。SlipChipの一定の態様は、また、高度に簡略化されたアプローチを必要とする法医学における遺伝的な試験のために使用することができる。
【0329】
SlipChipが有用であり得るその他の領域は、食品、水および環境の安全性を含む。現在の細菌検出方法は、試験の前に一晩培養を必要とする。SlipChipの一定の態様は、培養なしで〜1時間で答えを提供することができ、この費用のかかるタイムラグを克服する。SlipChipの一定の態様は、現場での試験を可能にし、離れた場所(たとえば宇宙任務、農村地帯)のために重要である。これは、また、家畜診断/農業試験のために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、家庭における既存の診断的試験、ポイントオブケアおよび臨床的試験を小型化し、かつ促進することが可能である。技術の単純性は、これをポイントオブケア、家庭および軍事利用のために魅力的にさせる;高性能は、同じプラットフォームを中心的実験機器のために魅力的にさせ、臨床的実験およびポイントオブケア技術のために使用される現在の異種のプラットフォームを承認するために必要なFDAコストにおける費用を節約する。SlipChipの一定の態様は、まさに米国では100,000人を超える人々の死因である敗血症において、微生物学的試験の促進のために使用することができる。これらの死の多くは、より多くの迅速診断によって予防可能である。診断法は、MRSAおよび薬剤耐性HIV遺伝子型におけるような、遺伝的な試験および薬物耐性のためのスクリーニング、薬物耐性のための表現型試験、凝血異常のための試験および関連する試験並びに血液凝結のモニタリング、細胞に基づいた免疫学的診断/アレルギープロファイリング、発展途上世界(たとえばHIV、マラリア、TBなど)のための診断法、器官機能および治療をモニターするための家庭およびポイントオブケア診断法、特に高価な生物製剤を用いるもの、薬物治療および薬物代謝をモニターするための一般的な代謝性試験を含み、安全性および有効性を確実にする。これらは、消費者および、潜在的に、臨床的試行をモニターする薬物開発者にとって重要である。ワーファリンはよく知られた例であるが、もっと多くのものがある。SlipChipは、また、新たな診断法アプローチのために使用することができ、これは限定されないが、癌、胎児期および脳卒中診断法におけるような単一細胞解析を介して新たな生物マーカーを発見すること;アルツハイマー病および癌におけるような多重化解析を使用して生物マーカーの新たなパネルを発見すること(おそらくパルスチェイス診断法のためのケミストロードと結合させて);を含み、これは、これらの生物マーカーの臨床的研究および検証を可能にすることができ、ポイントオブケアでの診断法および臨床的形式におけるこれらの生物マーカーの使用を可能にすることができる。これは、また、精神障害を患う患者について適当な精神状態を維持するために使用することができ、たとえば、家庭での試験、リモートモニタリング、患者のネットワークおよびその他の非伝統的アプローチのためのものを含む。SlipChipは、また、新たな治療的なアプローチのために使用することができ、限定されないが、生物マーカー発見および検証を薬物発見に組み込むこと、並びに診断法および複雑な組織培養モデルを組み込まれた解析に組み込むことを含む。
【0330】
SlipChipは、また、医学的治療を提供するよりはむしろ、対応の仕方を変更するための、または人々が選択することを助けるるための試験として使用することができる。たとえば、ニコチンパッチおよびその他の喫煙停止製品が、処方箋なしで利用可能である。ニコチンの代謝速度が、喫煙停止の成功率に強く影響を及ぼし、かつその人が買うべきであるパッチの種類を導くであろうことはよく知られている。このような試験をSlipChipで実施することができ、喫煙をやめようとしている人々に販売することができ、人々を低−中間−高ニコチン代謝する人の3つのクラスに分類して、適切な喫煙停止製品を示唆する。試験は、毎日行われ、パッチを投薬することを示唆して、スムーズな停止体験を提供する。キットは、このような試験を喫煙停止製品と共に含むことができる。SlipChip試験は、また、性能を最適化することができる:適当な試験の案内により、水和および脱水のレベル、食事、カフェインおよびその他の合法的物質、運動レベルを全てモニターし、および/または変更して、最高の性能を達成することができる。このような試験は、性能が所与の時間の問題であるもの:競争的スポーツ選手、軍隊、学生、スポーツ熱心な人および時間が貴重なため午後の一時的休みを浪費できない人々によって使用することができる。「ストレスチップ」は、一般的な集団における急性および慢性ストレスのマーカーについて解析するために使用することができる。ストレスを管理することは、おそらく生活満足度を改善する最も重要な道の1つのである。このような試験は、彼らの個々の生活スタイルにより即時のフィードバックを提供して、ストレスに関連する健康状態の潜在性を減少させるであろう。これは、慢性炎または心血管状態の発症を待って、次いで妨げるよりも、それほど高価でない。雇用者、軍隊および当局、並びに保険業者にとって、これは、ヒト資源を評価し、かつ管理するために貴重である。「常用SlipChip」は、パネルまたはパネルの組み合わせを実施するために使用することができ、アルコールの消費と関連する肝臓障害、喫煙と関連するニコチンおよびその代謝産物レベル、代謝および摂食障害と関連する血中グルコースおよびグリコシル化ヘモグロビンのレベル、カフェインおよびその代謝産物のレベル、並びに薬物乱用のレベルについて試験する。「乳児チップ」、「有機チップ」および「慢性チップ」は、初めての親、健康熱狂者または最も情報およびモニタリングを率先的に望むであろう慢性状態のために高リスクにある人々の情報適格性を満たすためのさらなる適用である。携帯電話の読み出しを有する単純なSlipChipにとって、たとえばGoogleまたはMicrosoftと協力することは、人々がこれらの試験の結果をまとめ、そして任意にそれらを食事、運動および対応の仕方を反映するブログと連結する方法として、魅力的である。健康な人々は、これらのGoogleHealthサービスを使用して、驚くほど豊富な情報を採掘することができ、これを、試験を改善するために、並びに広告および新たな製品を提供するために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、疾患を治療することに加えて、健康および性能を維持するために使用することができる。単純な試験プラットフォームを介して、性能と連結され(健康状態にあるような短期および長期の両方)、かつ各人に個別化される、試験可能な唾液マーカーを解析することは、社会の生活の質および生産性を改善することができる。
【0331】
一定の態様において、Sl ipChipは、モデルシステムとして分子酸素によるメタンの酸化を使用することにより、遺伝的なアルゴリズム(GA)を実施して新たな均質な触媒を発見するために使用することができる。本発明者によって証明される1つの例において、GAのパラメーターは、触媒である、末端オキシダントとしての分子酸素を使用することが可能な助触媒および触媒系を調整することができるリガンドである。GAは、何百もの反応を行って高適応度の触媒系を発見し、かつ最適化することを必要とし、微小溶液工学は、これらの多数の反応を平行して行うことを可能にした。微小溶液工学の小さなスケールおよび容積は、有意な安全性の利益を提供する。微小溶液系は、触媒を含むプラグの多様なアレイを形成し、高圧にて、気体試薬を導入し、平行して反応を行い、インサイチューの指標系を使用して触媒活性を検出するための方法を含んだ。白金(II)は、活性触媒として同定され、鉄(II)およびポリオキソ金属酸塩H
5PMo
10V
2O
40(POM−V2)は、活性な助触媒として同定された。Pt/Fe系は、NMR実験を使用してさらに最適化され、かつ特徴づけられた。最適化の後、およそ50の回転回数が、メタノールおよびギ酸のおよそ同等の生産と共に達成された。Pt/Fe系は、全ての触媒回路で鉄の適合性を証明した。このGAが導かれた進化のアプローチは、触媒における発見を有意に促進する潜在性、および化学的空間の探査が好ましいその他の領域を有する。Kreutz,et al., J Am Chem Soc. 2010 Mar 10;132(9):3128−32は、参照によってその全体が組み込まれる。
【0332】
一定の態様において、SlipChipプラットフォームは、機器なしの試料負荷および小さな試料容積でデジタルPCRを実施するために使用することができる。1つの例において、PCRマスター混合物をピペットで移すことによってSlipChipに導入した。流体経路を重なった細長い領域によって形成して、単純なすべりによって壊して、同時に1280個の反応コンパートメント(それぞれ2.6nL)を作製した。熱サイクルの後、エンドポイント蛍光強度を、核酸の存在を検出するために使用した。SlipChip上のデジタルPCRは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)ゲノムDNAを使用して検証した。PCRマスター混合物における鋳型が希釈されたとき、ポジティブ領域の画分は比例して減少し、統計分布によって期待した通りであった。実験の間に相互汚染は観察されなかった。デジタル逆転写PCR(RT−PCR)は、また、HIVから増幅するRNAによってSlipChipで証明された。SlipChipは、PCRおよびRT−PCRを使用することにより核酸を計数すること、並びに単一の細胞解析、胎児期の診断およびポイントオブケア診断を実施することが容易にできるストラテジーを提供する。等温PCRおよび視覚的読み出しについて、SlipChip上のデジタルPCRは、機器なしであるようにデザインすることができ、資源が限定された領域における研究および診断のために広く適用することができる。
【0333】
デジタルPCRの背後にある概念は、1分子またはそれ未満をコンパートメントの中に置くことによって核酸の分子を分離することである。コンパートメントの数が増加し、かつコンパートメントのサイズが減少するにつれて、各コンパートメントに単一の分子をトラップする確率は増加する。単一の分子レベルにて、少ない容積内に分子を閉じ込めることは、また、相対的濃度を増加させ、したがって感度を増加させる。ポジティブ領域の数を計数することができ、試料における標的分子の合計を算出することができる。
【0334】
デジタルPCRは、以前にマルチウェルプレートで証明されており、多数のグループが微小溶液形式においてこの方法をどのように実施するかを示した。弁調節される微小溶液チップは、種々の適用、たとえば細胞解析および胎児期診断のために、デジタルPCRを適応させた;しかし、この方法はまだ、弁の「開く/閉じる」状態を正確に調節するために、複雑な多層ソフトリソグラフィー加工プロセスおよび電気的な通気システムを必要とする。デジタルPCRのための別の系は、単一コピーPCRおよびRT−PCRのために微小溶液装置におけるピコリットル液滴を使用する。微小溶液のT字形を使用することによって多数のピコリットル液滴を生成させることができるが、この方法は、均一サイズの液滴を形成させるために、正確に流速を調節するための高精度のポンプを必要とする。エマルジョンPCR、微小液滴および作り出されたナノリットル液滴は、また、潜在的にデジタルPCRに使用されるが、これらの系は、少ない容積の液滴を発生させるために機械的撹拌またはポンプを必要とする。ハイスループットナノリットル容積のqPCRのための微小溶液チャンバーは、また、デジタルPCRのために適応することができるが、これはまだ機械的な負荷および手動封止操作を必要とする。現在まで、デジタルPCRは、いまだ、ハイエンドの使用者に制限されている。デジタルPCRを研究室または資源が限られた状況におけるルーチン手順にさせるための、単純で安価なプラットフォームにはいまだ応じられていない需要がある。本発明者らは、このようなSlipChipプラットフォームに基づいた系を証明した。SlipChipは、その固有の単純性のため、デジタルPCRのための有利なプラットフォームである。全ての試料は、単純にピペットで移すことによって負荷することができる。SlipChipは、タンパク質結晶化および免疫アッセイの状況において多くの少ない容積における多段階プロセスを扱うことができる。多重化PCRは、SlipChipにおいて首尾よく証明された:予め負荷された異なるプライマーが、試料をスクリーニングして病原体の存在を同定するために使用されたときに、相互汚染が見られず、またSlipChipのデザインは、熱サイクルの間、水性PCR溶液の熱膨張のための余地を可能にするように変更された。SlipChipは、また、何千個ものナノリットル領域に試料を分配することによってデジタルPCRを実施することが可能なことを示した。
【0335】
実施例。特に明記しない限り、市販の供与源から購入される全ての溶媒および塩を受け取ったままで使用した。SsoFastEvaGreen Supermix(2×)は、Bio−Radory(Hercules、CA)から購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)は、Roche Diagnostics(In dianapolis、IN)から購入した。全てのプライマーは、IntegratedDNA Technologies(Coralville、IA)に注文した。鉱油(DNase、RNase、Proteaseフリー)およびDEPC処理されたヌクレアーゼフリーの水は、FisherScientific(Hanover Park、IL)から購入した。ジクロロジメチルシランは、Sigma−Aldrich(St. Louis、MO)から購入した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)ゲノムDNA(ATCC番号6538D−5)は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から購入した。クロミウムおよびフォトレジストで被覆されているソーダ石灰ガラスプレートは、TelicCompany(Valencia、CA)から購入した。多種多様な食品着色料(赤の食品色素)は、August ThomsenCorp(Glen Cove、NY)から購入した。PCRチューブおよびバリアピペットチップは、MolecularBioProducts(San Diego、CA)から購入した。小さなバインダークリップ(クリップサイズ3/4”)は、Officemax(Itasca、IL)から購入した。マスターサイクラーおよびインサイチューアダプタは、Eppendorf(Hamburg、Germany)から購入した。テフロン(登録商標)管(O.D.250μm、I.D.200μm)は、Zeus(Orangeburg、SC)から購入した。テフロン(登録商標)管(I.D.370μm)は、Weico Wire & Cable(Edgewood、NY)から得た。フォトマスクは、CAD/ArtServices, Inc.(Bandon、OR)から得た。非晶質ダイヤモンドで被覆したビットは、HarveyTool(カッター直径0.030インチ、Rowley、MA)から得た。
【0336】
SlipChipを加工するための手順は、以下の変更と共に、本明細書の他の場所に記述されるSlipChip手順のガラスエッチング加工に基づいた。クロミウムおよびフォトレジストで被覆されているソーダ石灰ガラスプレートをSlipChipの領域(環状の、および細長い)のデザインを含むフォトマスクと共に整列させて、40秒間UV光に曝露した。露光したフォトレジストおよびクロミウム層を取り除いた後に、ガラスプレートを40℃にて35分間ガラスエッチング溶液に浸漬して、深さ50μmの領域を生じた。
【0337】
エッチングされた領域のパターンを有するガラスプレートをMillipore水およびエタノールで徹底的に洗浄して、窒素ガスで乾燥した。ガラスプレートを100秒間プラズマクリーナーにおいて酸化して、即時に50μLジクロロジメチルシランと共にデシケーター内に置いた。次いで、気相シラン処理のために真空を1時間適用した。シラン処理したガラスプレートは、クロロホルム、アセトンおよびエタノールでリンスして、次いで窒素ガスで乾燥した。再利用するために、ガラスプレートをピラニア酸(3:1の硫酸:過酸化水素)で洗浄し、上述したように再びシラン処理することができる。
【0338】
鉱油は、使用する前に濾過し、かつ脱気した。SlipChipは、鉱油下で組み立てた。まず底部プレートを、パターン化された側を上に向けて、ペトリ皿の油に浸漬した。次いで、上部プレートを、パターン化された側を下に向けて、底部プレートの上部に重ねた。2枚のプレートを整列させ、バインダークリップを使用して固定した。
【0339】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)において見いだされるnuc遺伝子のための2つのプライマー配列は、以前に公開されたものから選択した:5'−GCGATTGATGGTGATACGGTT−3'(プライマー1
;配列番号1)および5'−AGCCAAGCCTTGACGAACTAAAGC−3'(プライマー2
;配列番号2)。反応マスター混合物は、10μLの2×SsoFastEvaGreenSupermix、0.5μLのプライマー1(10μmol/L)、0.5μLのプライマー2(10μmol/L)、2μLの10mg/mLBSA溶液、5μLのRNaseフリー水および2μLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)gDNA溶液からなっていた。黄色ブドウ球菌(S.aureus)gDN A溶液は、1×BSA溶液(0.01mg/mL)を使用して連続希釈し、最終的な鋳型濃度の範囲:10ng/μL、1ng/μL、100pg/μL、10pg/μL、1pg/μLおよび100fg/μLを与えた。増幅は、PCR熱サイクリングマシン(Eppendorf)を使用して実施した。DNAを増幅するために、94℃にて2分の初期化工程を使用して、酵素を活性化した。次に、増幅の全35サイクルは、以下のように実施した:94℃にて1分のDNA変性工程、55℃にて30秒のプライマーアニーリング工程、および72℃にて30秒のDNA伸長工程。最後のサイクルの後、最終的な延長工程は、72℃にて5分間実施した。次いで、PCR産物は、イメージングの前に4℃にてサイクラーにおいて貯蔵した。
【0340】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)gDNA(GenBankアクセッション番号NC_009632)には、合計2,900,000塩基対がある。算出を単純化するために、塩基対当たりの平均分子量を660と概算した。したがって、1ngの黄色ブドウ球菌(S.aureus)gDNAは、3.15×10
5コピーを有する。各コンパートメントにおける反応溶液の容積は2.6nLであり、かつ装置の領域の合計は1280個であった。したがって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)g DNAの開始濃度が1ng/μLであるとき、各領域は、平均944コピーを含んだ。
【0341】
明視野イメージは、Leica立体鏡によって取得した。全ての蛍光イメージは、室温にて、5×/0.15NA対物レンズおよびL5フィルターをを備えたLeicaDMI 6000 Bエピ蛍光顕微鏡に搭載されるデジタルカメラ(C4742、Hamamatsu Photonics、Japan)を使用することによって取得した。全ての蛍光イメージは、標準的な蛍光スライドで得られたバックグラウンドイメージによって修正し、次いでMetaMorphソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して共に綴じた。強度レベルは、全てのイメージについて同じ値であるように調整した。
【0342】
装置のデザインは、領域の密度を上昇させるために対称形であった。上部および底部プレートの両方に、油で満たされた環状領域のアレイをデザインして、上部および底部プレートの両方において細長い領域を重ねることを使用して、試料を導入した。すべることにより、単離されたコンパートメントが作り出されて、均一サイズの水性液滴が各個々のコンパートメントにおいて生じた。このSlipChipは、ダクトを含有さなかった;その代わりに、各プレートは、合計1,280個の反応コンパートメントについて、細長い領域および環状の領域の列を含んだ。細長い領域は、長さ400μm、幅200μm、かつ深さ50μmであり、また環状領域は、直径200μm、かつ深さ50μmであった。最初の配置において、上部および底部プレートにおける細長い領域を重ねて連続流体経路を形成した。ダクトによって接続される領域の代わりに重ねた細長い領域を使用することによって、装置における圧力損失が小さくなり、多くの領域が単純にピペットで移すことによって満たすることができ、3.4μL試料を装置全体を満たした。上部プレートを底部プレートに対して相対的に短い距離にてすべらせることによって、細長い領域を分離して、それぞれを潤滑液(鉱油)の層を含む環状領域の上部に集めた。デジタルPCRについては、プライマーは、環状領域に予め負荷する代わりに、PCR混合物に添加した。細長い領域は、その細長い領域の幅が環状領域の直径と同じであるようにデザインした。このデザインの利点は、以下を含む:(1)このデザインは、液滴を領域内に集めることを可能にして、より優れたイメージングを可能にする。(2)このデザインは、また、一貫した容積(〜2.6nL)の液滴を生成する、(3)このデザインは、先に述べた多重化PCRSlipChipのように、領域の中で油によって囲まれた水性液滴を作り出し、熱サイクルの間の熱膨張のための余地を可能にする。
【0343】
熱サイクルの間、潤滑液および水性PCR混合物は、3つの材料の異なる熱膨張係数のために、SlipChipのガラス材料よりも膨張する。同じサイズおよび形状の重複した領域を有するSlipChipの一定の態様を使用するとき、水性溶液は領域を完全に満たすであろう。熱サイクルのために必要な温度上昇の間、水性溶液は膨張して領域から漏れ得、材料の喪失および試薬の濃度の変化という結果となる。多重化PCRSlipChipについては、この問題は、水性PCR混合物を含む正方形の領域を、油を含む環状領域と重ねて、油に懸濁された液滴を生成して、正方形の領域に集めることによって解決された。デジタルPCRについては、本発明者らは、潤滑液で満たされた環状領域上に集まった、水性PCR混合物を含む細長い領域を使用することによって同じ結果を達成した。
【0344】
本発明者らは、10fg/μLの黄色ブドウ球菌(S. aureus)gDNAを有するSlipChipでデジタルPCRを証明した。この濃度では、平均して100個の領域当たり1コピー未満のgDNAがあって、gDNAの単一コピーのPCR増幅を達成した。熱サイクルの前後のデジタルPCRSlipChipのラインスキャンは、単一のDNA鋳型を含む領域についての蛍光強度が有意に増大する一方で、DNA鋳型のない領域についての蛍光強度が増大しないことを示す。DNA鋳型を含む領域に隣接した空の領域についての蛍光強度が変化しなかったので、このラインスキャンは、また、SlipChipにおける相互汚染がなかったことを検証した。
【0345】
本発明者らは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)からのゲノムDNAの5つの濃度を使用して、この装置の性能を定量化した。デジタルPCR SlipChipは、1fg/μLの低さの濃度にて鋳型DNAを検出することができた。本発明者らは、領域の合計の1/3未満がシグナルの増幅を示したときに、単一コピーの標的DNA増幅が達成されたことを決定した。DNA鋳型の期待される濃度は、領域当たりのコピー数(cpw)として示され、最初のDNA保存液の濃度はNanoDrop(ThermoScientific)によって分光測光法で測定した。cpwを算出するための詳細な方法は、本明細書の他の場所に示される。PCRマスター混合物におけるDNA鋳型を希釈するにつれて、ポジティブ領域の画分は比例して減少した。鋳型DNAを含まない対照試料がいかなるポジティブな結果をも与えなかったので、本発明者らは相互汚染の証拠を全く見なかった。
【0346】
本発明者らは、各濃度について実験を繰り返して(n≧3)、較正曲線を作成して、ポジティブなPCR結果および領域当たりの鋳型の期待されるコピー数を示す領域の画分を関連させた。ボアソン分布を仮定して、期待されるポジティブ領域の画分を算出した。ポジティブ領域の画分は、ボアソン分布からの期待値よりわずかに低かった;これは、試料調製の間の非特異的吸収によって引き起こされ得る。本発明者らは、HIVから精製されたRNAでウイルス負荷を定量化するデジタルPCRSlipChipを使用して、逆転写PCR(RT−PCR)を実施した。これらにより、SlipChipが標準的な熱サイクリングPCR技術を使用して試料に存在する核酸の量を定量化することが可能であることを証明した。SlipChipは、3.4μL試料をそれぞれ〜2.6nLの1,280個の液滴に分離するようにデザインされた1,280個の領域を含み、単一コピーレベルにて鋳型DNAを検出することが可能であった。この装置を使用して検出することができる濃度の上限は、SlipChip上の領域数を増大させることによって増大させることができ、装置の感度は、領域容積を減少させることによって改善することができる。本発明者らは、1.5インチ×1インチの寸法である単一のSlipChip上に、最大16,384個のピコリットル容積の領域を組み込んだ。デジタルPCR SlipChipsは、また、タンパク質結晶化実験および多重化PCRのためにデザインされたSlipChipsにおいてと同様に、同じチップ上の複数の試料をスクリーニングするように作製することができる。多重化デジタルPCRSlipChipは、領域数を増加させ、かつ環状領域に異なる乾燥プライマーセットを予め負荷するようにマイクロアレイ技術を使用することによって、干渉なしで、1つの実験において複数の標的を計数するように作製することができる。デジタルPCRSlipChipデザインに対するその他の改善は、LAMPまたはNASBAなどの非熱サイクリング法を組み込むこと、および大小の領域の組み合わせを使用することによってデジタルPCRSlipChipの動態範囲を増大させることを含む。たとえば、2,000個の領域を含む装置において、1,000個の領域が1nLの溶液を含み、かつ1,000個の領域が10nLの溶液を含む場合、より大きな動態範囲および統計におけるより高い信頼度を得るであろう。最善の動態範囲および最高の信頼区間を与える領域サイズの分布は、予測することができる。さらなる改善は、Taqman系および分子ビーコンなどの、リアルタイムPCRおよびマルチカラープローブを組み込むことを含む(当該技術分野において公知の適切なイメージング装置を使用して)。マルチカラープローブを使用して、単一の細胞の中での多重遺伝子検出のためにデジタルPCRを適用して、異種性を研究し、および内部のポジティブ対照を組み込む方法を提供することができる。SlipChipは、核酸(DNA/RNA)抽出および「試料は中に、結果は外に」の適用のためにデジタルPCRの前に同じチップ上での精製を実施するように作製することができる。
【0347】
SlipChip上のデジタルPCRの別の適用は、突然変異体と野生型の鋳型DNAとの間を区別することなどの、多量の正常細胞の存在下でのまれな細胞の検出である。従来の技術では、正常細胞の大きな集団の干渉のために、突然変異体の派閥を定量化することは困難である。SlipChip上のデジタルPCRは、少ない容積の領域にこれらを閉じ込めることによって、まれな細胞の画分を増大させるための強くかつ簡単な方法である。
【0348】
このプラットフォームは、広く利用可能なデジタルPCRを作製し、非常に単純な実験に基づいた核酸の定量化を提供する。SlipChipは、胎児期の診断を実施するために容易に利用できる方法を提供する。この装置は、また、突然変異の検出、遺伝子発現のモニタリングおよび異種性の解析などの単一の細胞解析のために、並びに特に資源が限られた状況における安価な診断のために使用することができる。非熱サイクリング法、核酸精製方法および単純な読み出しをデジタルPCRSlipChipに組み込まれることができる。
【0349】
一定の態様において、ナノリットル多重化PCRアレイをSlipChipで実施することができる。1つの例において、ハイスループットナノリットル多重化PCRを実施するためにSlipChipプラットフォームを使用した。多重化PCRのためにSlipChipプラットフォームを使用する利点は、乾燥プライマーのアレイを予め負荷する能力、機器なしでの試料負荷、小さな試料容積およびハイスループット潜在性を含む。SlipChipは、反応コンパートメント当たり1対のプライマーを予め負荷するように、かつ反応コンパートメント当たり30ナノリットル未満の試料について最高384対の異なるプライマーをスクリーニングするようにデザインした。本発明者らは、多重化PCRのためのSlipChipにおいて40領域および384領域の両方のデザインを使用した。両方のプラットフォームで相互汚染がないことが見いだされ、エンドポイント蛍光検出を読み出しのために使用した。複数の試料を、また、同時に同じSlipChipでスクリーニングすることができる。多重化PCRを、血液感染症において共通に存在する16個の細菌および真菌種を同定するために、20個の異なるプライマーセットにより384領域SlipChipで実施した。SlipChipは、別々の実験において5つの異なる細菌または真菌種を正確に同定することができた。
【0350】
その導入から、多重化PCRは、癌細胞の遺伝的な解析、遺伝的多様性およびクローン進化のモニタリング、並びにウイルス、細菌、真菌および寄生虫によって引き起こされる感染症の同定を含む多くの領域において首尾よく適用されてきた。多重化PCRを実施するための従来法は、複数のプライマーを負荷して、1つの反応コンパートメントにおいて複数の標的鋳型を増幅するものである。このアプローチのスループットは、一般に、乏しい感度または特異性および異なる標的の一様でない増幅率、並びに異なるプライマーの干渉および検出のために必要とされる蛍光プローブ数のため、コンパートメント当たり10個未満の標的に制限される。多重化PCRは、また、PCRマイクロアレイで実施することができるが、この方法は、通常多量の試薬および試料を必要とする。別の従来のストラテジーは、それぞれが異なる標的のためのプライマーセットを有する多くの小型化されたコンパートメントを使用することであるが、このアプローチは、少ない容積の液体の取扱いおよび機器コストにおける限界によって妨げられる。
【0351】
微小溶液技術は、限定されないが小さな反応容積、ハイスループット潜在性および携帯性を含む、従来のP CRプラットフォームを超えるより多くの利点を有することが証明された。多数のグループが、PCRについて「Lab−on−a−Chip」微小溶液プラットフォームを開発し、微小液滴に基づいたPCRが単一コピー核酸検出について証明されてきた。しかし、大部分の微小溶液PCR系は、いまだ複雑な組み立てが必要であり、また流量を調節するためにポンプまたは精巧な弁に頼る。ポンプなしでの簡単な負荷、小さな反応容積およびハイスループット潜在性を有する微小溶液プラットフォームは、多重化PCRについていまだ応じられていない需要である。
【0352】
SlipChipは、マイクロリットル溶液を、ポンプまたは負荷機械を要求することなく高精度で何百ものナノリットルコンパートメントに効率的に分配することができる。SlipChipの重要な特色は、相互汚染なく複数の試薬を予め負荷し、かつ貯蔵することを可能にすることである。本発明者らは、SlipChipsを作製して、ハイスループットの多重化PCRを実施した。プライマーセットのアレイは、手動での沈着を使用してSlipChipの領域に直接沈着させ、室温にて乾燥することを可能にした。インクジェット、マイクロジェット沈着およびスポットする技術などのマイクロアレイ加工方法は、また、SlipChip上にプライマーのアレイを組み立てるするために適用することができる。ここで、本発明者らは、384個の同時のPCR反応を実施して、エンドポイント蛍光検出により単一の10μL試料において最高384個の異なる鋳型を同定することが可能なSlipChipを記述する。このSlipChipは、使用者が単純にピペットで移すことにより容易にセットアップすることができ、PCR反応は、ポンプまたはその他の機器に頼ることなしにすべらせることによって開始する。
【0353】
実施例。特に明記しない限り、市販の供与源から購入される全ての溶媒および塩を受け取ったままで使用した。全てのプライマーは、Integrated DNATechnologies(Coralville、IA)に注文した。プライマー配列は、本明細書の他の場所においてリストされる。ウシ血清アルブミン(BSA)は、RocheDiagnostics(Indianapolis、IN)から購入した。SsoFast EvaGreen Supermix(2×)は、Bio−RadLaboratories(Hercules、CA)から購入した。鉱油(DNase、RNase、Proteaseフリー)、アガー、100bp PCR DNAラダーおよびDEPC処理されたヌクレアーゼフリーの水は、FisherScientific(Hanover Park、IL)から得た。ジクロロジメチルシランは、S igma−Aldrich(St. Louis、MO)から購入した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)ゲノムDNA(ATCC番号6538D−5)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)(ATCC 10231)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)(ATCC 25923)、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA、ATCC 43300)、大腸菌(Escherichiacoli)(ATCC 39391)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC 27853)は、American TypeCultureCollection(Manassas、VA)から購入した。YMブロスおよびLBブロスは、Becton,Dickinson andCompany(Sparks、MD)から購入した。クロミウムおよびフォトレジストで被覆されているソーダ石灰ガラスプレートは、Telic Company(Valencia、CA)から購入した。多種多様な食品着色料(緑色、赤色および青色の食品色素)は、AugustThomsenCorp(Glen Cove、NY)から購入した。バリアピペットチップおよびPCRチューブは、Molecular BioProducts(San Diego、CA)から購入した。小さなバインダークリップ(クリップサイズ3/4”)は、Officemax(Itasca、IL)から得た。マスターサイクラーおよびインサイチューアダプタは、Eppendorf(Hamburg、Germany)から購入した。テフロン(登録商標)管(I.D.370μm)はWeicoWire& Cable(Edg ewood、NY)から得、テフロン(登録商標)管(O.D. 250 μm、I.D.200μm)はZeus(Orangeburg、SC)から購入した。フォトマスクは、CAD/ArtServices, Inc.(Bandon、OR)から購入した。赤い量子ドット(QDs)、Qdot 655 ITKおよびpBadHis Bプラスミドのためのキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。緑のQDsは、OceanNanotech(Springdale、AR)から得た。MinElutePCR精製キットは、Qiagen(Valencia、CA)から得た。
【0354】
ガラスからSlipChipを製造するための手順は、以下の変更と共に、本明細書の他の場所に詳細に記述したSlipChip手順のガラスエッチング製造に基づいた。ガラスプレートを領域およびダクトのデザインを含むフォトマスクと共に整列させて、40秒間UV光に曝露した。40領域デザインおよび384領域デザインの両方についての上部スライドは、深さ70μmとなるようにエッチングされた正方形の領域を含んだ。40個の領域デザインおよび384個の領域デザインの両方についての底部スライドは、深さ30μmとなるようにエッチングされた環状領域を含んだ。貫通孔は、溶液のための入口として、上部プレートにおいて穿孔した。40領域デザインについての単一のコンパートメント(重複している一対の正方形および環状領域)の最終容積は、約25.9nLであり、また384領域デザインについては約7.1nLであった。
【0355】
エッチングされた領域を有するガラススライドをMillipore水およびエタノールで徹底的にリンスして、次いで窒素ガスで乾燥した。ガラススライドを100秒間プラズマクリーナーにおいて酸化して、次いで直ちにデシケーターに移した。50μLジクロロジメチルシランをデシケーター中に注入し、次いで真空を適用して、1時間気相シラン処理を実施した。シラン処理したガラススライドをクロロホルム、アセトンおよびエタノールで洗浄して、次いで窒素ガスで乾燥した。シラン処理したガラススライドを1日以内にPCR実験に使用した。パターン化したガラススライドをピラニア溶液(3:1の硫酸:過酸化水素)で洗浄して、上述したように再びシラン処理した後に再利用することができる。
【0356】
4 0領域SlipChipデザインについて、各プライマーの濃度は、0.05μMであった。プライマー溶液を50μLHamiltonガラスシリンジに接続されるテフロン(登録商標)管(200μmID)に流した。プライマー溶液の0.1μLの容積をHarvardシリンジポンプによって調節し、環状領域に沈着させた。溶液を室温にて乾燥させて、予め負荷されているSlipChipを1日以内に実験に使用した。
【0357】
384領域SlipChipデザインについて、各プライマーの濃度は、0.1μMであった。全てのプライマー配列を表1に記述してある。プライマー溶液の0.02μLの容積を底部プレート上の環状領域に沈着させた。溶液を室温にて乾燥させて、予め負荷されているSlipChipを1日以内に使用した。
【表1-1】
【表1-2】
【0358】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichiacoli)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、対数期まで6〜8時間LBブロスにおいて培養した。カンジダアルビカンスは、8時間YMブロスにおいて培養した。細胞を収集して、1×PBS緩衝液で洗浄した。細胞数を顕微鏡下で計数して、濃度がおよそ1×10
7cfu/mLとなるように規準化した。病原体の終濃度は、PCRマスター混合物と混合した後に1×10
6cfu/mLであった。
【0359】
SlipChipを鉱油下で組み立てて、実験前に濾過して、脱気した。まず、底部プレートを、パターン化された側を上に向けて、ペトリ皿の油に浸漬した。次いで、上部プレートを、パターン化された側を下に向けて、底部プレートの上部に重ねた。2枚のプレートを整列させて、バインダークリップを使用して固定した。
【0360】
熱膨張は、GFPフィルタセットおよび11.2 ColorMosaicカメラ(Diagnostic Instruments Inc., MI)を備えた蛍光立体顕微鏡、MZFLIII(Leica、Germany)を使用して研究した。この立体顕微鏡により、両方が青色光で励起される、赤色および緑色の量子ドットを同時に観察することが可能になった。SlipChipの2枚のプレート間の間隙は、緑色の蛍光量子ドット(QDs)で染色された鉱油で満たした。油を染色するために、トルエン中の最初の1%QDs溶液を0.22ミクロン微小遠心分離Amiconフィルター(Millipore,MA)を通して濾過して、10分間超音波浴(Fisher Scientific、NJ)において超音波で破壊した。鉱油中の10% QDs溶液を、装置を満たす前に、徹底的にボルテクスして、真空下にて少なくとも10分間保った。
【0361】
染色された鉱油は、SlipChipのスライドの間に沈着した;過剰な油を組み立てた装置を連続してクロロホルム、アセトンおよびエタノールでリンスすることによって取り除いた。SlipChip領域を、領域およびダクトによって作り出される流体経路を通して赤色のQDsの水性溶液を注入することによって満たした。赤色QDs655 ITKを、1mM EDTAおよび50mM NaClを含む10mM Tris−HCl緩衝液、pH 8.0において1:10で希釈した。SlipChipをマスターサイクラー上の立体鏡下に置いて、複数の加熱サイクルを実施して、水性熱膨張を観察した。
【0362】
40領域SlipChipにおける反応について、反応マスター混合物は、10μLの2×SsoFast EvaGreen SuperMix、2μLの10mg/mLBSA溶液、6μLのRNaseフリー水および2μLの1ng/μL黄色ブドウ球菌(S.aureus)gDNAからなっていた(対照実験のためには、2μLのRNaseフリー水で置き換える)。gDNA鋳型の終濃度は、100pg/uLであった。384領域SlipChipにおける反応については、HisBプラスミド(pBad鋳型)から増幅したdsDNAの331bpの長さの小片をPCR対照反応のための鋳型として使用した(プライマー1:GCGTCACACTTT GCT ATG CC
(配列番号45);プライマー2:GCT TCT GCG TTC TGA TTT AAT CTG
(配列番号46))。pBad鋳型は、MinElutePCRPurification Kit(Qiagen)を使用して精製した。384領域SlipChipのための反応マスター混合物は、10μLの2×SsoFastEvaGreenSuperMix、2μLの10mg/mLBSA溶液、1μLの100pg/μL pBad鋳型、2μLの細胞懸濁液のおよび5μLのRNaseフリー水からなっていた。PCRマスター混合物をピペットで移すことによってSlipChipに注入した。上部プレート上の正方形の領域を、底部プレート上の環状領域を覆うように移動した。次いで、SlipChipを熱サイクリングのためにマスターサイクラー(Eppendorf)のインサイチューアダプタ上に置いた。94℃にて15分の初期工程を使用して細胞を溶解させて、反応のために酵素を活性化した。次に、合計35サイクルの増幅を以下のように実施した:94℃にて1分のDNA変性工程、55℃にて30秒のプライマーアニーリング工程、および72℃にて30秒のDNA伸長工程。最後のサイクルの後、DNA伸長工程を72℃にて5分間実施した。次いで、SlipChipをイメージングの前に4℃にてサイクラーにおいて保った。
【0363】
明視野イメージは、Leica立体鏡を使用することによって取得した。全ての蛍光イメージは、室温にて5×/0.15 NA対物レンズおよびL5フィルターをを備えたLeicaDMI 6000 Bエピ蛍光顕微鏡を使用して取得した。蛍光イメージの強度レベルは、全てのイメージについて同じ値であるように調整した。全ての蛍光イメージを標準的な蛍光スライドで得られたバックグラウンドイメージによって修正した。蛍光イメージは、MetaMorphソフトウェア(MolecularDevices、Sunnyvale、CA)を使用して共に綴じられた。
【0364】
本発明者らは、40個の領域および2つの異なる試料のための2つの入口を含むデザインであるSlipChipでPCRを実施した。この装置は、各試料について最大20個の異なるプライマーセットで2つの異なる試料を同時にスクリーニングするために使用することができる。上部プレートは、流体入口、正方形の領域(辺の長さ640μm、深さ70μm)および矩形領域(長さ570μm、幅230μm、深さ70μm)を含んだ。底部プレートは、環状領域(直径560μm、深さ30μm)および試料の導入のためのダクト(幅150μm、深さ30μm)を含んだ。異なるプライマーセットを底部の環状領域に予め負荷して、室温下で乾燥させた。次いで、上部および底部プレートを鉱油下で水に入れて、組み立ててて、連続流体経路を形成した。PCRマスター混合物は、SsoFastEvaGreen Supermix、1mg/mL BSAおよび鋳型(または対照実験について水)を含む溶液であり、ピペットで移すことによってSlipChipに導入した。この形状において、試料液は、すべらせる前でさえ、別々の容積において自発的に壊れた。別々の容積へのこの連続的な流れの崩壊は、確率的制限およびデジタルPCRなどの、区画化が必要とされる適用のために使用することができる。試料の注入の直後に、上部プレートを、正方形の領域を底部プレート上の環状領域に重なるようにすべらせて、環状領域に予め負荷された乾燥したプライマーを正方形の領域から導入した試料に溶解した。上部プレート上の矩形領域を、また、底部プレート上のダクトの中央と整列させた。水性溶液は、表面張力のために領域内で環状の液滴を形成して、各コンパートメントにおける溶液の容積は、AutoCADソフトウェアを使用することによって25.9nLであることが見積も
られた。
【0365】
本発明者らは、SlipChipの慎重なデザインによって、熱サイクリングの間の熱膨張の問題に対処した。SlipChip(ガラス)の材料、潤滑液(鉱油)および試料(水性PCR混合物)は、異なる熱膨張係数を有する。鉱油および水性混合物は、SlipChipの温度がアニーリング温度(55℃)から解離温度(95℃)に増大するときに、ガラスよりも膨張するであろうことが知られている。このSlipChipの独特のデザインは、領域形状を使用することによって領域内に水性溶液を保持した。ジクロロジメチルシランをSlipChipの表面に疎水性を付与するために適用した。本発明者らは、熱サイクリングの間の流体移動を研究するために、赤色量子ドットを含む水性溶液および緑色量子ドットを含む鉱油を使用した。正方形の領域だけを有するSlipChipを使用したときには、水性溶液は、正方形の領域を満たした。温度が増大した後、水性溶液は領域から漏れて、材料の喪失および濃度の予測不可能な変化を生じた。本発明者らは、底部プレートにおいて油を含むより小さな環状領域が、上部プレートにおける水性溶液を含む正方形の領域と接触したときに、水性溶液は、表面張力のために疎水性領域中で鉱油によって囲まれた液滴を形成して、熱サイクリングの間の膨張のための余地を提供するであろうことを見いだした。温度が増大したとき、水性溶液が膨張して反応コンパートメントを満たし、鉱油が膨張してSlipChipにおける上部プレートと底部プレートとの間の間隙を通って移動し、緩衝材料として役立った。このデザインなしでは、一定の態様において、熱サイクリングの間に漏出が観察された。本発明者らは、底部領域の形状およびサイズを、2つの領域の中心に一貫したサイズの単一の液滴を形成するために使用することができることを決定した。形成される液滴が一貫したサイズであることにより、液滴の中の試薬の濃度が全ての液滴において同じままであることを確実にした。上部プレート上の矩形領域は、底部プレート上のダクトに重なって、ダクトにおける残りの溶液の熱膨張の問題に対処する。
【0366】
本発明者らは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ゲノムDNAにおけるnuc遺伝子を増幅することによって、SlipChipの態様においてPCRを実施した。黄色ブドウ球菌(S.aureus)nuc遺伝子のためのプライマーは、S lipChipの底部プレートの環状領域に予め負荷して、室温下で乾燥させた。PCRマスター混合物は、EvaGreen超混合物、100pg/μL黄色ブドウ球菌(S.aureus)ゲノムDNA(gDNA)および1mg/mLBSAを含んでおり、ダクトに注入して2列の領域を満たした。2つのその他の列の領域は、同じ水性PCR混合物で満たしたが、RNaseフリー水によってgDNA鋳型と置き換えた。上部プレートにおける正方形の領域および底部プレートにおける環状領域は、SlipChipの2つのプレートを互いに相対的にすべらせることによって重ねた。SlipChipをPCR増幅のためのインサイチューアダプタの平面上の熱サイクラーの中に置いた。本発明者らは、鋳型を含む領域だけが増幅を示したので、SlipChipにおける異なる列の間で相互汚染が生じなかったことを示した。蛍光強度は、熱サイクリングの後、gDNAを含む領域のみにおいて有意に増加して、鋳型を含む全ての20個の領域が増幅を示し、PCRSlipChipの頑丈さを検証した。熱サイクリングの後、SlipChip内の溶液は外に流して収集して、ゲル電気泳動実験を実施した。ゲルのイメージは、首尾よいオンチップ増幅および増幅産物(〜270bp)の正確なサイズを示した。
【0367】
次に、本発明者らは、チップ上に、あるいは同じ列において、黄色ブドウ球菌(S. aureus)におけるnuc遺伝子およびメチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)(MRSA)におけるmecAについてのプライマーセットを予め負荷して、100pg/μLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)ゲノムDNAを含むPCRマスター混合物をSlipChip中に注入することによって、隣接する領域の間の相互汚染を試験した(プライマーセットは、表1において見いだすことができる)。nuc遺伝子は黄色ブドウ球菌(S.aureus)において共通に存在するがmecAは存在しないため、nuc遺伝子についてのプライマーが予め負荷された全ての10個の領域は、熱サイクリングの後に蛍光強度の有意な増大を示し、mecA遺伝子についてのプライマーで負荷された領域のいずれもが蛍光強度を増大させなかった。上の結果を組み合わせて、本発明者らは、各領域が単離された反応条件であり、領域間の連絡がないことを証明した。
【0368】
さらにまた、本発明者らは、最高384個の異なるプライマーセットで予め負荷することができる384個の領域を含むSlipChipをハイスループット多重化PCRに適用することができることを証明した。本発明者らは、SlipChip上に予め負荷された20個の異なるプライマーセットを使用することによって、血液感染症に共通に存在する16個の異なる病原体のためにこのプラットフォームをデザインした。プライマー配列は、以前の刊行物から選択し、またPCRマスター混合物は、およそ10
6cfu/mLの終濃度にて細胞と合わせた。これは、それぞれの個々の領域におけるターゲットされた細胞の存在を保証した。本発明者らは、SlipChip上のPCRが単一の分子を検出することができることを証明した。SlipChipは、28個の独立した領域で作製され、各病原体についてのプライマーセットはイメージングの便利さのために4×4マトリックスとして予め負荷した。pBad鋳型のためのプライマーをポジティブな内部対照としてSlipChipの端の2つの領域の縦列に予め負荷した。精製したpBad331bp鋳型(終濃度1pg/uL)を、負荷する前にPCRマスター混合物に添加した。pBadのためのプライマーを含む領域の隣の2つの縦列は、漏出についてのネガティブ対照として空のままにした。
【0369】
適切なプライマーで予め負荷した領域のみが蛍光シグナルの有意な増大を示したので、SlipChipは、細胞をしっかりと同定することができた。ポジティブ対照のための領域は、蛍光シグナルの増大を示し、ネガティブ対照のための領域は、示さなかった。SlipChipは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、MRSA、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、緑膿菌(P. aeruginosa)および大腸菌(E. coli)を正確に同定することができた。本発明者らは、SlipChip上のハイスループット多重化PCRを証明した。一定の態様において、SlipChipは、プライマーセットの予め加工されたアレイによる多重化PCRのために、384個のナノリットル−スケール反応を実施することができる。PCR SlipChipは、単純にピペットで移すことによって負荷することができ、いかなる複雑な注入方法の要求をも回避する。本発明者らは、PCRSlipChipの態様が、同じSlipChip上の16個の異なる病原体について1つの試料をスクリーニングすることができ、また、検出可能な相互汚染が存在しないことを示した。本発明者らは、また、2つの異なる試料を導入し、単一の予め負荷されているSlipChipで同時に試験することができることを証明した。多重化PCRSlipChipは、LAMP、RPAまたはNASBAなどの非熱サイクリング核酸増幅法での、および/またはより多くの条件を単一の実験においてスクリーニングすることを可能にするための多数の領域での使用のために、複数の試料を同時にスクリーニングするための多数の入口と共にデザインすることができる。PCRSlipChipsは、現在のPCRマイクロアレイ技術によって確立されたプライマーセットを使用するが、非常に小さなサイズおよび反応容積であるように作製することができる。また、プライマーを予め負荷するため、およびSlipChipsを製造するために
、現在のマイクロアレイプリンティング技術を適応することができる。
【0370】
1つの実験において多数の異なる種類を区別することに加えて、SlipChipの一定の態様は、たとえば、多重化リアルタイムPCRのためにリアルタイムイメージング技術を組み込むこと、または多重化デジタルPCRを実施するための1つの実験において全ての単位複製配列の数を計数することを可能にするために、各プライマーセットに対して多数の領域を使用することによって定量的結果を提供することが可能である。
【0371】
特異的遺伝子をスクリーニングするために多重化PCRに使用することに加えて、SlipChipの一定の態様をさらなる適用のために使用することができる。SlipChip上の多重化PCRおよびその他の核酸増幅化学反応をシーケンシング、たとえばターゲットシーケンシングのための濃縮法の前のハイスループットDNA増幅のために使用することができ、これは現在ではウェルプレートにおいて液滴に基づいた方法によって実施することができる(たとえば以下に記述されたように、Microdroplet−basedPCR enrichment for large−scale targeted sequencing Tewhey, R.et al., Nat.Biotechnol. 2009,27, 1025−1031)。SlipChip上のPCRは、また、ゲノム疾患、遺伝的突然変異および食品または水の汚染の検出のために使用することができる。現在のプラットフォームは、また、たとえばRNAウイルス検出、遺伝子発現の研究および細胞異種性の調査について、RNA増幅のための逆転写PCRを実施するために適応することができる。
【0372】
SlipChipは、ガラスまたはプラスチックなどの安価な材料から製造することができ、一定の態様において、複雑な設備または専門的な知識を必要とせずに作動する。乾燥試薬がSlipChip上に予め負荷されるとき、これはまた輸送および貯蔵が容易である。等温増幅法および単純な読み出しを組み込むことができる。
【0373】
SlipChipは、また、多重化およびハイスループット能を有する試薬の予め加工されたアレイを要求するその他の適用、たとえば、タンパク質結晶化、免疫アッセイ、DNAハイブリダイゼーション、DNA−タンパク質相互作用およびクロマチン免疫沈澱(ChIP)において、使用することができる。
【0374】
一定の態様において、コンビナトリアル生物触媒法をSlipChipで実施することができる。コンビナトリアル生物触媒法は、有機化学におけるコンビナトリアル合成と概念的に類似する。コンビナトリアル生物触媒法は、酵素を介した生物触媒反応を連続して組み合わせることによって、単一のリード化合物から誘導体の多様なライブラリーを提供することができる。コンビナトリアル生物触媒法は、異なる基体または異なる酵素の並列配列において莫大な数の酵素産物の産生を可能にする。多官能基(たとえば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アシル基、アミン基など)を持つリード化合物は、適用される可能性ある分子である。コンビナトリアル生物触媒法は、経時的な混合および反応の多くの工程を要求する。リード化合物の量が非常に少なく、かつ高価である場合、96、384または1,536ウェルプレートでさえ、必要とされ得る何千もの反応のためにあまりに多くの容積を必要とし得る。加えて、利用可能な量が限られるため、合成された誘導体を試験する際に制限され得る。標準的なマルチウェルプレートでの生成物の解析は、濃度および容積の両方の点で困難であり得る。Slipchipの一定の態様は、複雑な装置なしで、適切な閉じ込められた容積および十分な数の反応中心を提供することができる。Slipchipは、ハイスループットの薬物発見/薬物スクリーニングのための魅力的な解決法である。コンビナトリアル生物触媒法の可能性ある適用は、生物触媒作用(酵素スクリーニング、酵素進化、反応条件の最適化)、生物工学(システム開発、ロボット工学、工業化)、バイオプロセスエンジニアリング(反応系最適化、下流プロセス、スケールアップ、商業化)、医薬品化学(新規の薬物候補、誘導体化、ADME毒性試験)、食品化学および工学(天然着色料、抗酸化剤、食品添加物)、農芸化学(機能的乳製品、乳化剤)並びに環境化学(天然殺虫剤)を含む。
【0375】
本発明の一定の態様において、ハイスループット酵素スクリーニングをSlipChipにおいて実施することができる。酵素をスクリーニングすることは、世界的に莫大な研究/産業分野である。研究者は、典型的にはこれらの酵素候補を認定された化学的ライブラリーに適用する。典型的には、ロボット工学および手作業が使用されるが、酵素試料の量は、典型的には限定要因である。コンビナトリアル生物触媒法(上を参照されたい)におけるものと同様の問題が生じる。多様な化学的ライブラリーを異なる基質と共にSlipchipにおいて提供することができる。標的基質としての化学的ライブラリーは、好ましくは広範な官能基をカバーし、並びに試験される特定の酵素に対する標的特異的な焦点を有する。Slipchipは、適切な量の反応物を有する異なる範囲の化学的ライブラリーを含むことができる。次いで、使用者は、装置に少量の酵素溶液を流して、Slipchipにおける各領域を解析することができる。たとえば、誰かが推定上のリパーゼ/エステラーゼ試料を有する場合、Slipchipは、加水分解について試験する種々の化学的ライブラリーを含む(たとえば、C2エステル、C3エステル、C4エステル、...C14エステル、C16エステル...、などを含むことができる)。ハイスループット酵素スクリーニングの可能な適用は、限定されないが、立体特異性、位置特異性、疎水性、加水分解および/または逆加水分解反応性、pH範囲、ハイパー熱安定酵素のための温度領域、ハイパー圧力安定酵素のための圧力範囲、イオン性の強度範囲、並びに高塩条件のための寛容性を決定することを含む。
【0376】
一定の態様において、SlipChipを、新規の酵素をスクリーニングするための酵素試験のために使用することができる。一旦可能性ある酵素が微生物から単離されたら、基質特異性、反応性、選択性および安定性を評価するために96ウェルプレートにおける酵素反応を走らせることは典型的である。この解析については、典型的には酵素を化学的ライブラリーに対して試験する。予め負荷されたチップは、酵素試料のための単純な試験スクリーニングキットとして使用するための複数の基質を含むものを提供することができる。
【0377】
本発明の一定の態様において、SlipChipを試料収集、濃度および調製(SCCP)の複雑性を減少させるプラットフォームとして使用することができ;尿から痰の範囲の粘度を有する関連試料を診断によって処理し;低濃度の検体を捕獲するために大きなミリリットルスケール試料容積を処理して、それらを簡単な検出のために小さなナノリットルスケール容積に濃縮することを、全て広範囲の増幅、検出および成分の読み出しと適合性の様式において可能にする。
【0378】
SlipChipプラットフォームは、資源が限られた状況における健康管理および診断技術が直面するいくつかの重要な課題を克服する。診断アッセイは、試料調製から増幅、検出および読み出しまで、複雑な工程の順序を要求する。これらの工程は、これらが高度に熟練した技術者または複雑な自動化を要求するので、資源が限られた状況において実施するのが困難である。困難性は、高感度(エラーおよび汚染のための余地がほとんどない)、定量化(複雑なプロトコルおよび設備)および多重化(プロセスは、複数の検体について複数回繰り返されなければならない)を要求するアッセイについて、さらに増加する。SlipChipプラットフォームは、試料収集、濃度および調製から増幅、検出および読み出しまで、完全な診断装置に必要な全ての工程をコードすることができる。
【0379】
SlipChipプラットフォームは、試料調製を容易にすることができ、新たなアッセイ技術をポイントオブケア(POC)適用に開放することができる。たとえば、これは、(i)血液、痰、尿または排泄物などの診断的に関連する試料の小さな、または大きな容積(高感度を可能にする)を受け入れること;(ii)多くの試料調製工程を通してこれらを操作して関心対照の分子を単離すること;および(iii)増幅または検出成分によって直接的に使用することができるより少ない容積にこれらを濃縮することができる。
【0380】
一定の態様において、SlipChipは、生の試料入口からの診断に関連する生物マーカーの迅速で単純な抽出のために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、以下を含むが限定されない現在の有意な満たされない需要の多くの領域に対処するために使用することができる:(1)HIVウイルス負荷の定量化のためのウイルスRNAの単離のための全血および血漿の試料調製(たとえば、抗レトロウイルス療法をモニタリングするために、および乳児を診断するために);(2)肺炎を生じさせる病原体からのRNAおよびDNA核酸の両方の単離のための痰の試料調製(たとえば、抗生物質治療が投与されるべきときを決定するために)。
【0381】
広範囲にわたる薬物耐性を防止するための、資源が限られた状況における治療の間のHIVウイルス負荷の定量的モニタリングは、世界的なHIV/AIDSケアに対する主要なバリアとして確認されている。生後数週間を超える乳児におけるHIV感染症の診断は、ウイルス負荷を定量化することによって実施することができ、早期のHIV感染症の診断およびHIV抗レトロウイルス薬物治療の投与が大幅に乳児死亡率を減少させるため、資源が限られた状況において好ましい。
【0382】
現在のところ、利用可能であり、資源が限られた状況において使用することができるHIVウイルス負荷の定量化プラットフォームはない;ウイルス負荷の集中化した試験は、一般に適していない。既存の集中化したウイルス負荷アッセイは、有意な技術的専門知識および計測手段を要求する。資源が限られた状況において複雑な機器を取り付けることは一般にできず、試料を集中化した研究室に輸送することは、また、問題を含むことが判明した。乾燥血液スポット(DBS、濾紙の上で乾燥させた全血の巣ポト)は、これらの状況における試料輸送のための唯一の現実的な選択肢である。DBSから定量的にウイルスRNAを単離する技術的問題に加えて、試験の結果が処置可能であることができるように、結果が遅滞なく得られなければならないため、このアプローチは移動するクリニックのために適切でない。その上、DBSの使用は、精巧な設備および技術的な専門知識を想定する定量的RNA試験をなおも要求する。
【0383】
一定の態様において、SlipChipは、自己充足的な形式で多段階の試料プロセシングを実施することによって、資源が限られた状況におけるHIVウイルス負荷の定量的および感度のよい測定のために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、たとえば、100〜200μlの全血または血漿を受け入れて、30%より高い収率で、20〜50μlにおいて、デジタルSlipChipで実施されるその後の等温増幅に十分な品質で精製したウイルスRNAまたは別の増幅成分を生成することができる。
【0384】
肺炎などの急性下気道炎(ALRIs)の原因の正確な診断は、毎年何十万もの命を救うことができ、好ましくは細菌およびウイルスの同時的な多重化検出、並びに高レベル(細菌感染に対応する)から低レベル(細菌コロニー形成に対応する)を区別するための定量化を含む。開発途上国において、ALRIs、特に肺炎は、正確性、低コスト、容易に利用可能な診断ツールの不足によって生じる不適当な治療のために、5歳未満の子供における主要な死因である(>2,000,000/年)。不十分な診断能力は、また、抗生物質の濫用を導き、薬剤耐性株の出現を前進させる。細菌感染、特に肺炎連鎖球菌(Streptococcuspneumoniae)およびインフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)タイプbは、抗生物質で容易に治療することができ、ウイルスまたはその他の原因から区別されなければならない。主要な課題は、上気道のコロニー形成から細菌感染を区別することであり、単純な定性的なイエス/ノー試験は有効でない。診断は、たとえば16個の共通の細菌およびウイルスの病原体について、痰の定量的多重化試験を実施することによって劇的に改善することができる。たとえば、その他の病原体の有意なレベルの非存在における肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細菌の中間レベルは、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)感染を示す可能性が高く、その一方で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の非常に高レベルの存在における肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細菌の中間レベルは、より可能性が高い原因としてRSV感染を示すであろう。
【0385】
一定の態様において、SlipChipは、30%より高い収率で、デジタルSlipChip上の下流の定量的および感度のよい検出のために5〜10倍を超えて増大した濃度で、痰から肺炎を生じさせる病原体のRNAおよびDNAまたは別の成分を単離するために使用することができる。
【0386】
SlipChipの一定の態様は、mLからnLまでの容積の複雑な操作を実施するようにプログラムすることができる。これらは、たとえば2枚のプレートを単純にすべらせることによって、何百または何千ものナノリットル容積を平行して容易に処理するために使用することができる。本発明者らは、より大きな容積をこのプラットフォームの中に組み込むことができることを証明した(たとえば、200μLの全血)。このマルチスケール能力は、有用である。たとえば、500/mLのHIVウイルス負荷にて50のHIVウイルスを捕獲するために、少なくとも100μLの血漿を扱うことを必要とし、その一方で、試料をより少ない容積に濃縮することは、プロセシングの間の喪失を減少させて、増幅および定量化により適切な出力を提供する(たとえばデジタルPCRSlipChipを使用して)。105倍までの段階希釈および希釈による洗浄をSlipChipで証明した。ビーズの定量的取扱いをpM範囲におけるnL容積免疫アッセイにおいて証明し、数千のタンパク質分子を扱って検出した。局部的な加熱および冷却を、熱または冷却を発生する試薬をプログラミングして要求された工程にて組み合わせることによって、単純な化学反応を介してSlipChipの中にプログラムすることができる。温度調節は、また、電気的および熱電性の加熱および冷却を含む外部または内部のオンチップ手段、並びにPCR反応を行うために使用される多数のアプローチを介して達成することができる。これらの特色は、少なくとも30%の収率で、10倍の濃度で、標的核酸の信頼できる単離のために使用することができ、また収率と濃度との間のトレードオフを最適化することができる。
【0387】
一定の態様において、SlipChipは、下流のHIVウイルス負荷解析のために、全血または血漿からHIV RNAを抽出するようにコードすることができる。SlipChipは、500−10
6/mLのHIVウイルス負荷を有する100〜200μLの血漿(オンチップまたはオフチップで調製される)を使用して、ウイルスRNAを10〜30μLの溶液中に30%より高い収率で単離することができる。この出力は、mL当たり500−106コピーの動態範囲でウイルス負荷を測定するデジタルSlipChipに十分であり、また95%の信頼度でエラーが3倍少ない。単離されたHIVRNAの品質および量は、リアルタイムRT−PCRによって定量化することができる。
【0388】
一定の態様において、SlipChipは、肺炎を生じさせる病原体の同定および定量化のために痰からRNAおよびDNAを抽出するようにコードすることができる。これらは、たとえば、30%より高い収率におけるRNAおよびDNA単離のための200〜500μLの痰を扱うことができ、これを、たとえば、増幅にすぐに使える20−50μLの溶液に濃縮する。SlipChip上の高度に平行したプロセシングは、以下を含む任意の増強を可能にする:(i)同時に同じ試料からのDNAおよびRNAの平行した精製、並びに(ii)単一の患者から同じ装置上で処理された複数の痰試料によって少なくとも1つの高品質の試料を保証し、または複数の患者からのものによってスループットを増大させる。これらの特色は、増幅、読み出しおよび組み込みのためのSlipChip成分と組み合わせられ、HIVウイルス負荷の定量化および肺炎病原体の多重化定量的解析を含む緊急のグローバルな診断的問題に対する解決法を提供する。痰試料プロセシングプロトコルは、TBの分子診断のための結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)からのDNAの単離および薬剤耐性株の同定に容易に適応可能であることができ、排泄物からの核酸の単離に展開可能である。HIVプロトコルは、マラリアの診断のために、血液からマラリア原虫(Plasmodium)DNAの単離に適応可能である。
【0389】
一定の態様において、SlipChipは、広範囲の既存の、および将来の増幅化学成分に適合する様式において、シグナル増幅を提供し、かつ検出を改善するために使用することができる。
【0390】
一定の態様において、SlipChipは、「確率的制限」の原理を実施するためにSlipChipプラットフォームの利点を活用することによって、劇的にシグナル増幅および検出化学反応を増強するために使用することができる。たとえば、SlipChipは、以下のために使用することができる(i)既存の技術の感度を単一の分子または単一細胞レベルに増大させる;(ii)特異性を増大させ、かつ干渉およびバックグラウンド反応を減少させる;(iii)大きな動態範囲を超えて強く定量化する;iv)多重化実験を実施する。
【0391】
一定の態様において、SlipChipは、コンポーネント製造者が、資源が限られた状況における診断的適用のための増幅化学反応成分の頑丈さ、定量化、感度および特異性を可能にするように使用することができる、開放プラットフォームとして使用することができる。SlipChipは、以下を含むがこれに限られない、現在の有意な満たされない需要における多くの領域に対処するために使用することができる:(1)HIVウイルス負荷の定量化(たとえば、抗レトロウイルス療法をモニターするために、および乳児を診断するために)、および(2)肺炎を生じさせる細菌およびウイルス病原体の多重化定量的検出(たとえば、抗生物質の治療が投与されるべきときを決定するために)。
【0392】
一定の態様において、SlipChipは、たとえば、抗レトロウイルス療法をモニターするために、および乳児を診断するために、HIVウイルス負荷の定量化のために使用することができる。一定の態様において、SlipChipは、エンドポイント読み出しで、単純で定性的な増幅化学反応を「デジタル」形式に変換することによって、HIVウイルス負荷の高度に定量的および感度のよい測定のために使用することができ、これは、時には「デジタルSlipChip」として本明細書に参照される。
【0393】
一定の態様において、SlipChipは、肺炎の原因を診断するための多重化病原体検出のために使用することができる。現在では、肺炎病原体の定量的多重化診断には、資源が限られた状況下で満たされない需要がある。単一の検体試験は、等温技術によって行うことができるが、これらの価値は定量化および多重化の非存在下において限定される。多重化定量的検出は、リアルタイムPCRによって遂行することができるが、これはポイントオブケア、資源が限られた状況において有用でなかった。一定の態様において、SlipChipは、多重化、およびエンドポイント読み出しでの増幅化学反応の「デジタル」形式への変換を組み合わせることによって、肺炎病原体の定量的および感度のよい検出のために使用することができる。
【0394】
一定の態様において、SlipChipは、以下のために使用することができる(i)単一の分子または単一の細胞レベルに対する既存の技術における感度の増加;(ii)干渉およびバックグラウンド反応の減少;(iii)大きな動態範囲を超える強い定量化;(iv)実際に無制限の多重化適用。SlipChipの一定の態様は、2枚のプレートの領域の配列、特に流体容積を操作するための任意のプログラムとして、コードすることができる。
【0395】
一定の態様において、SlipChipは、多重容積の確率的制限のために使用することができる。SlipChipは、増幅の前に試料を、たとえば「デジタル」形式で何百または何千もの異なるサイズの少ない容積(領域当たり0個に対して1個または複数の検体分子)に分割することができる。小さな領域への分子の閉じ込めは、(i)分子濃度を増大させ、(ii)これらの分子を干渉分子から単離し、(iii)同じチップ上で同時に使用される複数の容積によって提供される大きな動態範囲で、最大可能性を見積もることによって、エンドポイント読み出しからの定量化を可能にする。
【0396】
SlipChipは、市販のストック試薬を使用するデジタルPCRおよびデジタル等温リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)の両方の増幅技術に適合性である。検体の定量化のために、限定されないがループ媒介された等温増幅(LAMP)および核酸配列に基づいた増幅(NASBA)を含む多くのその他の等温技術を実施することができる(干渉の存在下においてさえ)。
【0397】
一定の態様において、Sli pChipは、多重容積の確率的制限を使用するHIVウイルス負荷の解析のために、500−10
6/mLの動態範囲を有することができる。一定の態様において、SlipChipは、回転する多重容積デジタルSlipChipとしてデザインすることができる。このデザインは、たとえば0.37nL〜250nLの範囲にわたる容積を有する何百もの領域を有することができ、また95%の信頼度で3倍の変化において、500−10
6コピー/mLの動態範囲でHIVウイルスRNAを定量化することができる。本発明者らは、HIVRNAをデジタルS lipChipプラットフォーム上で検出することができることを確認した。
【0398】
一定の態様において、SlipChipは、肺炎に関わる16個の病原体の痰試料における検出および定量化のために使用することができる。一定の態様において、SlipChipは、16個の病原体についての等温増幅化学反応のために予め負荷された試薬を含むことができる(RNAウイルスの検出のための任意のさらなる逆転写工程による)。本発明者らは、384の網状の一様な領域SlipChipプラットフォーム上に予め負荷されている試薬を使用して、病原体の多重化検出を証明した。提唱されたチップの異なる領域は、装置の動態範囲を適切な範囲、たとえば:10
2〜10
5/mLの範囲のCMV、HRVおよびその他の病原体の感受性の検出のためのより大きな領域を有する外側領域、並びに10
2〜10
6/mLの範囲の肺炎球菌(S.pneumonia)およびインフルエンザ菌(H. influenzae)タイプbなどのコロニー形成する病原体の検出および定量化のためのより小さな領域を有する内側領域に調整するために使用することができる。SlipChipの試料調製、視覚的読み出しおよび組み込みの潜在能力は、緊急のグローバルな診断の必要がある2つの領域−HIVウイルス負荷の定量化および肺炎病原体の多重化定量的解析に対し、解決法を提供する可能性を有する。結核の診断をSlipChip上の確率的制限によって実施することができ、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)の生理応答を増幅するであろうし、薬物耐性の迅速な検出および表現型試験を可能にするであろう。AIDS患者におけるCD4カウントの定量化は、多重容積の確率的制限を使用して効率
的に実施することができる。
【0399】
一定の態様において、SlipChipは、読み出しおよびシグナル伝達のために使用することができる。一定の態様において、SlipChipは、多重化増幅および検出成分技術からの出力、たとえば病原体の検出中に生成される1000個の別々の増幅された核酸生成物を受け入れることができ、目による、または単純な携帯電話カメラを使用することによる解析および解釈のための読み出しに、これらを変換することができる。SlipChipは、SlipChipプラットフォームの利点を活用することによって信号プロセシングおよび読み出しを増強して、多段階および多重化プロセシングを実施することができ、任意の診断試験のための視覚的な読み出しを発生させる。一定の態様において、SlipChipは、以下のために使用することができる(i)使用者の専門知識に依存することなく、技術的に複雑なプロセシングをすること;(ii)POCにおいて現在利用可能なものよりも多様な、増幅、プロセシングおよび検出化学反応へアクセスし、診断的ツールボックスを拡大すること;(iii)基本的施設なしでの定量化可能な視覚的読み出し。
【0400】
一定の態様において、Sli pChipは、資源が限られた状況において現在の有意な満たされない需要がある2つの領域における診断についての迅速な視覚的解析のために使用することができる:1)HIVウイルス負荷の定量化(たとえば、抗レトロウイルス療法をモニターするために、および乳児を診断するために)、並びに2)肺炎を生じさせる細菌およびウイルス病原体の多重化定量的検出(たとえば、抗生物質の治療が投与されるべきときを決定するために)。
【0401】
一定の態様において、SlipChipは、基本的施設なしで領域におけるHIVウイルス負荷を決定するための多重化された視覚的読み出しのために使用することができる。一定の態様において、SlipChipは、自己が含有された形式において多段階プロセシングを実施し、かつ容易に解釈するための視覚的読み出しを発生させることによって、適切な基本的施設なしで領域におけるHIVウイルス負荷の定量的および感度のよい測定のために使用することができる。これは、SlipChipで実施される核酸増幅技術(NAT)の生成物または別の増幅成分を受け入れることができ、また、それを視覚的読み出しに変換して、より即時の治療計画が効果を発することを可能にすることができる。
【0402】
一定の態様において、SlipChipは、肺炎の原因を決定するための多重化視覚的検出および解析に使用することができる。
【0403】
一定の態様において、SlipChipは、(i)たとえば、デジタルSlipChipからの増幅された核酸を含む何千もの混合物または別の成分を受け取る、および(ii)それぞれから定量的視覚的読み出しを生成するためにこれらの混合物の多段階プロセシングを行うために使用することができる。その他の技術は、いまだこれらの需要を満たすことができておらず、これらは、デジタルSlipChipによって提供されるHIVウイルス負荷試験または肺炎パネルなどの定量的な、高度に多重化された「デジタル」試験の視覚的読み出しに変換されることが好ましい。SlipChipの一定の態様は、2枚のプレート内の領域の配列、特に流体容積を操作するための任意のプログラムとしてコードすることができる。SlipChipの一定の態様は、検出、増幅および視覚的読み出しの複数の工程を介して複数の容積を処理することができる。
【0404】
一定の態様において、SlipChipは、たとえば何千もの領域、たとえば各領域における等温増幅された核酸を有する0.3〜300nLの容積を受け入れることができ、多段階プロセスによって各領域からの視覚的読み出しを生成することができる。一定の態様において、1以上の吸光度を有する250μm×250μmより大きな領域は、SlipChip上で容易に目で見える。より高濃度の核酸を有するより大きな領域については、金またはセレン粒子のハイブリダイゼーション捕獲による直接検出を使用することができる。より低濃度を有するより小さな領域については、使用者は、試料をより大きな領域に移して、さらなる増幅化学反応を実施することができる。増幅化学反応は、視覚的検出を提供するように変更することができ、またこのような変更は、横方向の流れの読み出しについてすでに十分に確立されている。SlipChipの一定の態様は、使用者の技術的な専門知識を必要とせずに、すべりによって予め負荷された試薬を使用して、好ましくは含まれている工程(たとえば、ビーズおよび表面上の分子の捕獲、磁気的操作、任意の希釈による洗浄)の全てを支援することができる。一定の態様において、SlipChipは、LAMPおよびRPA並びにその他の等温増幅技術のために使用することができる。
【0405】
実施例。1つのRPA実験については、TwistAmp BasicキットをTwistDx(Cambridge、United Kingdom)から購入した。20μl再水和緩衝液および8μl対照1×プライマー/プローブミックスの混合物の添加によって、RPAスーパーミックスを、RPA酵素および試薬を含む単一のチューブから調製した(凍結乾燥させたBasic反応ペレット)。ポジティブ対照溶液を、5μlポジティブ対照鋳型(10コピー/μl)を14μlのRPAスーパーミックスと混合することによって調製し、その一方で、ネガティブ対照溶液として5μl水を14μlのRPAスーパーミックスに添加した。
【0406】
50nl酢酸マグネシウム(9.3mM)溶液をHarvardシリンジポンプによって調節される50μL Hamiltonガラスシリンジにつながったテフロン(登録商標)管(200μmID)を通して40領域SlipChipの底部プレート上の各環状領域に沈着した。溶液そ10分間室温下で乾燥させた。
【0407】
SlipChipは、脱気された鉱油下で組み立てた。まず、底部プレートを、パターン化された側を上に向けて、ペトリ皿における油に浸漬した。次いで、上部プレートを、パターン化された側を下に向けて、底部プレートの上部の上に重ねた。2枚のプレートを整列させて、バインダークリップを使用して固定した。
【0408】
ネガティブ対照溶液(5μl)をピペットで移すことによって1つの入口を通して上部の2本の列に注入し、その一方で、ポジティブ対照溶液(5μl)を別々の入口を通して底部の2本の列に負荷した。流体経路をすべらせることによって壊して、上部プレートを移動して、底部プレート上に予め負荷されている乾燥した酢酸マグネシウムを含む環状領域と重ねた。各領域における反応混合物の容積は、17mMの予測されたMgアセテート濃度を有する27nLであった。SlipChipを直ちに39℃インキュベーターに置いて、蛍光強度をLeicaDMI 6000 Bエピ蛍光顕微鏡を使用して取得した。蛍光イメージは、すべらせた後、および39℃にて20分インキュベートした後に直ちに5×/0.15 NA対物レンズおよびL5フィルターを使用して取得した。
【0409】
実験1は、乾燥した酢酸マグネシウムを用いて上述したように実施した。しかし、酢酸マグネシウム溶液を代わりにSlipChipに、次いで水相に負荷して、次いですべらせて、RPAスーパーミックスと混合させて反応を開始させることができる。実験2では、酢酸マグネシウム溶液をRPAスーパーミックスと予め混合した。280mM酢酸マグネシウム溶液1μlを19μlネガティブ対照溶液に添加して、この溶液を40領域SlipChipの上部2本の列に注入した。280mM酢酸マグネシウムの別の溶液1μlを19μlポジティブ対照溶液に添加して、この溶液を、別々の入口を通して底部の2本の列に負荷した。流体経路をすべらせることによって壊して、上部プレートを移動して、鉱油を含む環状領域と重ねた。SlipChipを直ちに39℃インキュベーターに置kて、蛍光強度を、LeicaDMI 6000 Bエピ蛍光顕微鏡を使用することによって取得した。蛍光イメージは、すべらせた後、および39℃にて20分インキュベートした後に直ちに5×/0.15NA対物レンズおよびL5フィルターを使用することによって取得した。実験1において、40個の領域のうちポジティブ対照溶液に対応するわずか2つが点灯した。実験2において、40個の領域のうちポジティブ対照溶液に対応する3つが点灯した。両方の実験において、ネガティブ対照溶液の全てに対応する領域は、暗いままであった。
【0410】
SlipChipは、広範囲の視覚的検出化学反応と適合性である。SlipChipの一定の態様での多段階プロセシングは、横方向の流れ装置「ディップスティック」においてすでに確立されている標準的な視覚化化学反応を利用することができ(たとえば、米国特許出願第12/425121号を参照され、その全体が本明細書に参照により援用される)、または新たな化学反応を可能にすることができる。銀(I)イオンの自触媒的還元は、金ナノ粒子(AuNPs)の表面上で開始され、非常に高程度の増幅を提供し、視覚的に観察可能な銀沈着を迅速に精製する。5pM検体(〜165,000分子)にて55nL容積におけるSlipChip実験において、この化学反応は、バックグラウンドから明らかに識別可能な可視シグナルを生成した。シグナルは、10分以内に発生した。SlipChipで実施することができるさらなる化学反応は、限定されないが、直接のラベル捕獲、NBTおよびBCIPから視覚的生成物を発生させるアルカリホスファターゼ(AP)並びに重合に基づいた増幅を含む。
【0411】
一定の態様において、SlipChipは、たとえば500−106の動態範囲でSlipChipでのHIVウイルス負荷の視覚的定量化のために使用することができる。SlipChipにおけるHIVRNAからのRPA生成物またはその他の増幅成分は、SlipChipでさらなる工程を介して処理して、たとえばHIVウイルス負荷の直接的な視覚的解析のためのハイブリダイゼーション、精製、および視覚的シグナル産生を実施することができる。
【0412】
一定の態様において、SlipChipは、たとえば、肺炎に関わる16個の病原体の検出および定量化を視覚化するために使用することができる。ハイブリダイゼーションおよび視覚的増幅のためのさらなる領域は、二層装置の中または多層装置の中のいずれかに組み込まれて、密度を増大させることができる。SlipChipは、多重化された多段階の読み出しが必要であるその他の領域において使用することができる。これは、限定されないが、核酸の増幅(たとえば、マラリア原虫またはSTDの同定および診断において)、多重化免疫アッセイ(たとえば、持続的な下痢またはSTDの原因である病原体の同定において)に頼るその他の診断的必要、並びに迅速な視覚的検出および結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)細菌を計数することを含む。
【0413】
一定の態様において、ExaVir Load(CavidiAB)などのウイルス負荷を決定するELISAに基づいた方法をSlipChipにおいて実施することができる。ExaVirLoadは、逆転写酵素活性の定量化に基づいてウイルス負荷を決定し、これは任意のHIVタイプまたはOおよびNグループを含むサブタイプを測定することができる。残念なことに、ExavirLoadおよび類似のアッセイは、ゆっくりであり、かつ定量的でない。このようなアッセイは、低ウイルス負荷にてDNAの検出可能な量を得るために、DNA合成のための長いインキュベーション時間を要求する。しかし、アッセイが確率的制限およびデジタル読み出しを使用してSlipChipの一定の態様において実施される場合、局部的な高濃度がより短いインキュベーション時間を可能にする。たとえば、ExaVirLoadの測定範囲は、最高600,000/mLである。これは、インキュベーション時間(典型的には、1日)においてウェルの底部上にアンカーされる全ての鋳型を飽和させる合成されたDNAによって決定される。たとえば10nLの容積および100μmの深さを有するSlipChip領域において、ウェルにおける1つのビロン(viron)は100,000/mLであるが、領域は96ウェルプレートにおけるウェルと比較して約〜1/300しかない。鋳型を消費する速度がビロン(viron)の濃度に依存すると想定すると、SlipChipにおける鋳型を飽和させるために、〜1/50の時間、すなわち、典型的にはおよそ1時間しか必要としないであろう。
【0414】
ラジカル開始/重合増幅などのその他の方法を、増幅を増大させるためにExaVir Loadと組み合わせて実施することができる。閾値を確立するための阻害剤として少量のラジカル連鎖停止剤を添加することによって、増幅をさらに増強することができる。これは、要求される洗浄工程の数を減少させる。
【0415】
一定の態様において、SlipChipは、段積み可能であることができる。段積み可能なSlipChipは、限定されないが以下を含む現在の有意な満たされない需要がある多くの領域において使用することができる:(1)HIVウイルス負荷の定量化(たとえば、抗レトロウイルス療法をモニターするために、および乳児を診断するために)、および(2)たとえば肺炎を生じさせる、細菌およびウイルス病原体の多重化定量的検出(たとえば、抗生物質の治療が投与されるべきときを決定するために)。段積み可能なSlipChipは、HIVウイルス負荷の定量化のために、完全な血液−答え診断的解決法のために使用することができる。一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、異なるSlipChip技術を組み込むことによってHIVウイルス負荷の定量的および感度のよい測定、たとえば:(i)血液からHIVウイルスRNAを単離するための試料調製および濃縮についてのSlipChip、(ii)等温増幅およびRNA分子を計数することによってウイルス負荷を定量化するためのデジタルSlipChip、並びに(iii)増幅された核酸を、目によって、またはたとえば携帯電話カメラで検出可能な読み出しに変換するためのSlipChipのために使用することができる。
【0416】
一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、たとえば肺炎の原因の診断のための多重化病原体検出について使用することができる。一定の態様において、段積み可能なSlipchipは、たとえば:(i)肺炎の原因であるRNAおよびDNA病原体を痰から単離するための試料調製および濃縮についてのSlipChip、(ii)たとえば肺炎の原因である16個の病原体における、パネルからの多重化同定および核酸の定量化についてのデジタルSlipChip、(iii)増幅された核酸を、目によって、またはたとえば携帯電話カメラで検出可能な視覚的読み出しに変換するためのSlipChipを含む、異なるSlipChip技術を組み込むことによってポイントオブケアにて肺炎病原体の定量的および感度のよい検出のために使用することができる。
【0417】
一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、それ自身の中の複数のS lipChipコンポーネントの組み込み、またはその他の化学反応およびハードウェアコンポーネントとの組み込みのために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、2枚のプレートの領域の配列、特に流体容積を操作するための任意のプログラムとして、コードすることができる。これらは、試料濃縮および調製、核酸の同定および定量化のための多重化増幅、並びに増幅された核酸の、視覚的な、またはたとえば携帯電話の読み出しへの変換のために使用することができる。段積み可能なSlipChipは、これらのコンポーネントを互いに、または他のものによって開発されたその他のコンポーネントと共に組み込むことによって、完全な診断試験のために使用することができる。段積み可能なSlipChipsのための多くの組み込みの方法があり、限定されないが以下を含む:限定される数の入力/出力を交換するための予め作られたコンポーネントチップを段積みすること、および何百または何千もの入力/出力を交換する完全なSlipChipコンポーネントを作り出すために複数の段積みされた層を製造すること。段積み可能なSlipChipは、すべること、ビーズをトラップすることを調節し、またスタックを通して流体移動を調節することができ、キャピラリーおよび圧力駆動される流れを含む。段積み可能なSlipChipの個々の層をすべらせることは、スタックを通して流体経路を作り出し、かつ壊すことができるので、単純な芯または圧力源でさえ、スタックを通して流体の高度に調節された再構成可能な移動を引き起こすことができる。
【0418】
一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、予め作られているコンポーネントSlipChipsにわずかな入出力を組み込むために使用することができる。一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、濃縮するSlipChipにデジタルSlipChipを組み込むために使用することができる。スタックのコンポーネント間の単一の連絡は、HIVウイルス負荷測定に十分であることができ、また少数の連絡(たとえば、RNAおよびDNA調製モジュールからの溶液を別々に扱うために)は、たとえば肺炎病原体からの核酸を同定し、かつ定量化するために十分であることができる。入出力配置の基準が確立されさえすれば、コンポーネントを個々に最適化し、次いで容易に組み込むことができるため、このアプローチは魅力的である。
【0419】
一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、SlipChip層の直接の組み込みのために使用することができる。このアプローチは、コンポーネントSlipChipsのレイアウトを取得し、また1つの層の領域から別の層の領域への直接的な試料の移動を可能にするスタックに、これらを組み込む。このアプローチは、何百または何千もの試料容積を扱うコンポーネントの組み込みのために貴重であり、たとえば核酸を増幅するためのデジタルSlipChipおよび各容積の多段階プロセシングを実施して視覚的読み出しを作り出すための読み出しSlipChipである。これは、また、診断装置の必要に依存して、単一のデジタルSlipChip層が、読み出しSlipChipsのいくつかの異なるタイプのいずれか1つを組み込むことができるように、装置全体の有意な簡略化を提供する。一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、500−106/mLの動態範囲でHIVウイルス負荷を測定するための完全な試験を可能にする。一定の態様において、段積み可能なSlipChipは、痰試料における、たとえば16個の肺炎病原体の検出および定量化のために使用することができる。
【0420】
一定の態様において、SlipChipは、外傷脳損傷(TBI)生物マーカーの分子を計数するためのカスケードの増幅のために使用することができる。TBIは、軍隊における主要な健康問題である。軽度のTBI(mTBI)は、それが大多数の場合を包含するように特別な重要性であり、診断することがより難しく、また長期の障害という結果になり得る。現在の診断技術、磁気共鳴映像法およびコンピュータ断層撮影は、戦場状況において非実用的であり、またコストおよび低感度によって限定される。満たされない需要は、ポイントオブケア(POC)にて診断し、かつTBIのために適切な治療を開始することである。
【0421】
生物マーカーは、TBIを診断するために使用することができるが、以下を改善する必要がある:(1)検出、および特に、血液における生物マーカーのパネルの低(pM)レベルの定量化(生物マーカーのレベルにおける絶対レベルおよび時間依存的変化の両方が、TBIの適当な評価のために必要であるため、定量化は重要である。)、並びに(2)アッセイを実施し、かつ読み込む余分の設備のない、携帯可能な軽量装置における機能。定性的な結果は、公知の計量棒タイプ装置から得ることができるが、定量化は別々のリーダーを要求し、また信頼することができない。低濃度での定量化は、血液または尿および潜在的に均一な唾液における生物マーカーの検出を可能にし、それらは、現在の「金本位」脳脊髄液よりも、現場状況において収集するためにより単純であり、かつより安全である。
【0422】
アッセイ開発は、2つの対向する要求:増幅および定量化を有する。低い出発濃度および強力で容易に検出可能なシグナルの必要性は、非常に高い程度の増幅を要求する。しかし、このような増幅は、定量化することが一般に困難であり、またあまりに感度がよく、少量の偽干渉でさえ、増幅カスケードを誘発し、エラーおよび偽陽性を導く。この課題は、「確率的制限」および化学的増幅を組み合わせることによって、たとえばナノリットル、ピコリットルまたはフェムトリットル容積の何千もの領域における単一の分子検出によって、対処することができる。単一の分子を計数するための「デジタル」アプローチは、PCR(デジタルPCR)による核酸のためのルーチンであり、酵素について証明されている。これらのアプローチは、「確率的制限」を使用する:試料は、たとえば何百もしくは数千の少ない容積、または領域に分離されるので、統計学的に、各領域は標的検体のゼロまたは1分子を含む。確率的制限は、いくつかの利点を有し、以下を含む:(1)強力で定性的なイエス/ノー増幅化学反応は、ポジティブ領域を計数することによって定量的結果を導く;(2)人為的結果、たとえば増幅における偽の開始または阻害は、個々の領域に制限される;(3)単一の分子の有効な濃度がより少ない容積においてより高いので、アッセイの感度および特異性が増加し(シグナルが増加する)、また干渉分子は統計学的に除外される(ノイズが減少する)。増幅が開始され(たとえば、PCRにおける熱サイクリングによって)、ポジティブな領域数は、ポアソン統計によって修正され、試料における分子数に対応する。デジタル生物マーカー検出のための単一の分子免疫アッセイのために、「確率的制限」および化学的増幅を使用することができる。
【0423】
確率的制限および増幅を「バーコード化された」視覚的読み出しのために使用することができ、即時の測定、解釈および治療の示唆を提供する。視覚的読み出しは、たとえば、病院および研究室の高度なイメージング機器から離れているはるかに前方の軍の状況において重要である。多重化アッセイ容積の視覚的読み出しは、バーコードのような、点のデジタルパターンとして構造化することができ、その結果、パターンは目によって、または携帯電話カメラにより解釈することができる。イメージを捕獲することは、時間経過測定をするために、および意思決定を自動化し、または委任するために有用である。パターンは、オンボードソフトウェアまたは中心的設備を介して即時に解析し、かつ解釈して、最善の行動方針を指示することができる。TBI生物マーカーの「デジタル」カウントは、たとえば、はるかに前方の軍の状況における診断を可能にする。一連の増幅工程の後、視覚的シグナルが発生し、これはたとえば携帯電話カメラを使用して迅速に撮像され、かつ解析されて、即時の指示を提供することができる。
【0424】
たとえば数千の、たとえばナノリットル、ピコリットルまたはフェムトリットルの容積の多段階プロセシングを、SlipChipを使用して達成することができる。SlipChipでの精巧な液体操作を、単一の分子レベルでのTBI生物マーカーの検出のための好ましい多段階の不均一な免疫アッセイおよびその他の化学反応を実施するために使用することができる。SlipChipは、何千もの少ない容積の平行した操作のための複雑なプログラムをコードするために使用することができる微小溶液プラットフォームである。不均一な免疫アッセイは、SlipChipの一定の態様上の増幅により、定量的に実施することができる。TBIにおける低レベルのタンパク質生物マーカーを検出するために、不均一な免疫アッセイは、大過剰の捕獲抗体を使用して結合を駆動することができるので有用である。これらのアッセイのためには、多段階プロセシングが好ましく、洗浄工程およびシグナル増幅のための試薬の添加を含む。本発明者らは、SlipChip上のナノリットル容積を使用して、代謝性マーカーインスリンに対するpMレベル感度を有するビーズに基づいた免疫アッセイを証明した。SlipChip上の確率的制限は、デジタルPCRによって増幅後に単一のDNA分子を計数するために使用することができる。本発明者らは、DNAの単一の分子を検出することができること、およびこれらの濃度が、合計1,280個の領域、容積でそれぞれ2.6nLのうちのポジティブ領域の数を計数することによって定量化できることを証明した。
【0425】
一定の態様において、SlipChipを以下のために使用することができる:(1)非常に高程度の増幅の後に単一分子を計数することによって達成することができる高感度でのTBI生物マーカーの定量的検出。(2)視覚的読み出しにおいて関心対照のTBI生物マーカーの単一分子を検出して計数するために必要とされる感度を与えることができる多段階のカスケード的増幅。(3)分子認識についての標準的な不均一の免疫アッセイ化学反応のために使用することができる小さい(たとえば、フェムトリットルからピコリットル)容積のTBI生物マーカーの分子の確率的制限。
【0426】
ユビキチンC末端ヒドロラーゼL1(UCH−L1)は、ニューロン細胞体傷害のためのマーカーであり、SBDP150は、カルパインによるαII−スペクトリン切断生成物であり、かつ軸索傷害に連結されるマーカーである。これらは、それぞれ、TBIの間に血液中に4〜130pMおよび7〜70pMにて存在する。これらのアッセイにおいて使用することができる、これらに対する商業的なモノクローナル抗体がある。SlipChipの一定の態様は、〜0.02−200pM濃度の、または同時検出で0.001pMまでの範囲を定量化するために使用することができる。
【0427】
単一分子鏡検は、増幅および視覚的読み出しのために使用される領域において関心対照の単一分子の存在を検証するために使用することができる。試料は、Alba鏡検システム(ISS、Champaign、IL)上で撮像することができる。標的生物マーカー、抗体、DNAプローブおよび金のナノ粒子(AuNPs)さえ、量子ドット(QDs、点滅によって増強される)で標識することができる。寿命が長いランタニド色素は、強い蛍光のヒト血漿試料においてタイムゲート化された様式で使用することができる。
【0428】
一定の態様において、SlipChipは、少ない容積の試料を区分化しかつ操作するために使用することができる。SlipChipは、広範囲の容積、たとえば、何十ナノリットル(領域寸法が、たとえば、500×500×50μm3)から、何十ピコリットル(50×50×5μm
3)、何十フェムトリットル(5×5×0.5μm
3)までの形成および操作を可能にする。たとえばマイクロリットルスケールでの適切な対照反応を、その試薬を確認するために実施することができ、アッセイを期待される通りに実施する。確率的制限は、単一分子を単離するために使用することができる:たとえば、9pM濃度にて、容積0.2pLの領域は、平均して単一分子を含有する。極めて迅速な輸送、これに対するフェムトリットル領域のための製作の増大した複雑さなどの、各サイズの領域についての利点および制限を、所与の適用のために決定することができる。少ない容積が所与の適用のためにより好ましくない場合、短い平衡時間を使用してより大きな容積から単一の生物マーカー分子を捕獲することができる。単一分子鏡検による特徴付けは、実際の濃度の提示の改善を保証するために使用することができる。
【0429】
単一分子アッセイを解析するために、ポアソン統計を、観察されるポジティブおよびネガティブ領域の数から検体の初濃度を算出するために使用することができる。視覚的読み出しによる単一分子免疫アッセイの正確度および精度を確立するために、使用者は、ログスケール濃度工程において0.02pM〜200pMにて生物マーカーでスパイクされない、およびスパイクされた、緩衝液、人工の血漿およびアーカイブされた正常なヒト血漿において、生物マーカー濃度を解析することができる(濃度当たりのn≧5試料)。TBIの状況においてアッセイを行うために、12人の個々のTBI患者(Banyan)からのアーカイブされたヒト血漿を、アッセイの精度を評価してmTBI患者における生物マーカーのレベルを測定するために、3回以上解析することができる。
【0430】
一定の態様において、Sli pChipは、多重化形式における視覚的読み出しで単一分子の多段階の閾値増幅を達成するために使用することができる。目または携帯電話カメラによる単純な視覚化については、ポジティブ領域の光学的な特性(吸光度または反射率)は、200μm×200μm領域における吸光度0.5〜1と同等であり得る。
【0431】
銀(I)イオンの自触媒的還元は、金ナノ粒子(AuNP)表面上で開始され、視覚的に観察可能な銀沈着を生成する非常に高程度の増幅を提供する。免疫アッセイにおける使用のために、AuNPは、検出抗体に抱合させる。SlipChipにおいて、この化学反応は、5pM AuNP(領域当たり165,000AuNP)で容積55nLにおいてバックグラウンドから明らかに区別可能である可視シグナルを生成することができる。増幅条件は、より低い検出限界を達成するために変更することができ、5pM濃度が領域当たり平均0.6分子を生成し得るように、開始容積を200fLまで減少させることができる。1%より少ない偽陽性で95%より多い粒子から視覚的シグナルを発生させるための単一粒子からの強い増幅は、少なくとも200個の領域を含有する装置において達成することができる。
【0432】
暗視野鏡検を、単一分子レベルにて150nm AuNPsに抱合される抗−UCH−L1抗体を追跡するために使用することができる。あるいは、蛍光顕微鏡検査法システム(たとえば、Albaシステム)を蛍光標識されたAuNPsを追跡するために使用することができる。
【0433】
一定の適用について、二段階増幅は、サブピコリットル領域からのシグナルが視覚的に検出するのに十分強くなくてもよいように、シグナルを視覚化することが好ましい。AuNPで触媒された第一段階の増幅からの出力は、視覚的に観察されるほど十分に大きい第二の領域のセットにおける増幅を開始することができる。銀沈着は、自触媒的であるため、AuNPsの非存在(バックグラウンド)における可能性のあるシグナル生成が懸念される。第一段階の増幅の間、真のポジティブは強力なシグナルを生成させ、またバックグラウンドノイズは弱いシグナルを生成させる。重要なレベルよりも強力な入力シグナルがさらなる増幅を発生するように、閾値を導入することができる。高親和性チオールの添加によって金の表面を不活性化することは、1時間以上において、バックグラウンドおよびAuNPsの閾値下の濃度を抑制することができる。閾値の使用は、初めにAuNPを含有する領域のみから視覚的シグナルが第二段階の増幅後に現れることを保証することができる。
【0434】
PCRは、さらなる増幅工程として使用して、増幅化学反応からのシグナル対ノイズ比を増大させることができ、標準的なPCRによる核酸の単一分子増幅が周知である。確率的制限と組み合わせた単一分子イムノPCRを実施することができる。使用者は、たとえば、抗−UCH−L1検出抗体をDNA配列に対して抱合させることができる。DNAは、PCRのための鋳型として増幅に役立ち、配列の多くのコピーを生成する。PCR産物の各コピーは、2つのプローブとハイブリダイズするようにデザインすることができる:1つは領域またはビーズの表面上にそれを固定し、および1つはシグナリング分子にそれを連結する。NBT/BCIPを有するアルカリホスファターゼ(AP)およびAuNPで触媒された銀沈着の両方をPCR産物から視覚的シグナルを発生させるために使用した。
【0435】
一定の態様において、SlipChipは、定量的な単一分子PCRおよび等温DNA増幅のために使用することができる。標準的なPCRは、それが強くかつよく特徴づけられるため、SlipChipで実施することができるが、要求される熱サイクリングは、たとえば現場使用のため、必ずしも好ましくない。等温技術は、一定の現場適用のために好ましい。本発明者らは、SlipChipプラットフォーム上の等温リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を使用して単一分子検出を証明した。
【0436】
確率的制限と組み合わせた増幅のためのその他の化学反応をSlipChipで使用することができる。光で開始される系は、非常に感度のよいことが判明しており、また単一分子レベルにて機能することができる。重合により視覚的シグナルを産生することができ、抗体に複数のラジカル光開始剤を付着させると、視覚的読み出しを約束することが示されている。自触媒的酸発生剤に連結された光酸発生剤は、極度な感度を要求するフォトレジストにおいて、広範囲に使用する。
【0437】
単一のサンドイッチ複合体は、SlipChip上に明らかに観察可能なシグナルを提供することができ、たとえばTBI生物マーカー(たとえば、UCH−L1)についての免疫アッセイは、単一分子レベルまで検出するために使用することができる。
【0438】
確率的制限は、捕獲抗体を含有するSlipChip領域において検体の単一分子を単離する:たとえば容積0.5pLの、たとえば1000個の領域を有する装置は、0.2〜200pMの範囲における単一分子の検出を可能にすることができる。捕獲効率は、たとえば蛍光顕微鏡検査法システムを使用して、洗浄することの前後で生物マーカーを含有する領域を追跡することによって、たとえば蛍光量子ドット(QD)で標識された標的生物マーカーを使用することにより、および結果を算出された予測と比較することにより、評価することができる。たとえば、1つの生物マーカー分子および0.1μM捕獲抗体(Kd=1nM)を含有する1pL領域は、99%の効率で生物マーカーを捕獲することが予測される。使用者は、異なるQDで検出抗体を標識して、直接的に結合を視覚化することができる。使用者は、イムノサンドイッチ複合体の形成を定量化し、およびバックグラウンドの検出抗体におけるオフターゲット結合を定量化するために、2つの標識の共存を測定することができる。これは、アッセイ条件(濃度、緩衝液、界面化学など)を変えることによる改善の定量化によって、低バックグラウンドでの単一分子結合を最適化することを可能にする。
【0439】
単一分子測定は、たいてい高バックグラウンドおよび単一の検体分子からの弱いシグナルに苦しむ。確率的制限は、ポジティブ領域におけるシグナル強度を増大させることができるが、これは検出抗体の非特異的結合(バックグラウンド結合)のための偽陽性領域の数を必ずしも減少させるというわけではなく、また上述した従来の方法を使用して緩和され得ない。バックグラウンド結合を減少させる1つの解決法は、磁気ビーズに対して検出抗体を付着させることであり、その結果、結合していない抗体は領域からより容易に取り除くことができ、取り除くことは音響技術を使用してさらに増強させることができる。高バックグラウンドシグナルを伴う適用については、2つの検出抗体の共存を使用することによる同時検出は、バックグラウンドシグナルを直接測定して訂正するために使用することができる。
【0440】
検体の単一分子で領域を負荷し、および抗体の予測された結合を得た後に、増幅化学反応を実施することができ、次いで、使用者は緩衝液において、および人工の血漿において、全ての免疫アッセイを評価することができる。使用者は、確率的に試料を閉じ込めて単一分子を単離して、イムノサンドイッチ複合体を形成させて、選択された増幅化学反応を使用して増幅して、そしてポジティブ領域の数を計数するために撮像することができる。使用者は、感度、特異性、直線性(または一般的には用量反応相関)および濃度範囲に対して期待される結果からの偏差を評価することができる。
【0441】
使用者は、標識された生物マーカーを使用して増幅前視覚化を適用して、単一分子の存在および位置を確認することができる。何個の抗原含有領域が視覚的シグナルをもたらすか、また何個の空の領域が視覚的シグナルをもたらすかを追跡することは、システムの性能を定量化することができる。
【0442】
SlipChip単一分子アプローチを同時発生検出のために使用して、バックグラウンド結合のためのシグナルを低下させ、また的確な結合からバックグラウンド結合を直接的に区別し、バックグラウンド結合を定量化することができる。使用者は、標的生物マーカーの2つの異なるエピトープに対する異なる蛍光団で標識された2つの検出抗体を使用することができ(たとえば、3つの抗体は、UCH−L1(BanyanBiomarkers)の3つの異なるエピトープについて利用可能である)、また二色検出を使用することができる。使用者は、初めに適切な蛍光顕微鏡で直接的に同時発生を検出することができ、次いで増幅によって二色の視覚的読み出しまたは条件つきの読み出しを与える(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼの両方を捕獲してPCR後に色を発生させることを要求する)。バックグラウンド結合は、ボアソン分布によって予測すると低い同時発生でシグナルを与えふ。的確な結合は、容易に識別可能なランダム以上の同時発生(たとえば、25領域チップについてさえ98%より大きい信頼度)を与える。単一分子同時発生検出なしでは、これらのシグナルは、いずれかの検出抗体についての5ユニットの結合と区別不能のように見え得る。必要な場合には、バックグラウンドシグナルを、近く近接したタグのみがシグナルを生じることを要求することによって、さらに低下させることさえできる。たとえば、検体に結合されるときのように、2つのアプタマーが近く近接したときにのみ、ローリングサークル増幅(RCA)を開始する対での検出アプタマーで特徴付けるために、蛍光共鳴エネルギー移動または蛍光交差相関分光法を使用することができる。
【0443】
ヒト試料は、血漿におけるその他の多くの物質による非特異的結合および異なるヒト試料におけるバックグラウンド濃度の変化により、高いバックグラウンドシグナルを有し得る。使用者は、単一分子蛍光顕微鏡検査法測定を使用して結合が特異的に生じることを最初に検証し、次いで増幅化学反応を適用して視覚的読み出しを得ることによって、血漿試料における生物マーカーについて単一分子免疫アッセイを行うことができる。
【0444】
使用者は、たとえばサブナノリットル容積において、多段階増幅後に単一分子を計数することによって、ヒト試料における視覚的読み出しで、定量的に生物マーカーを検出することができる。使用者は、抗体の代わりにアプタマー、PCRの代わりに等温増幅を使用し、現場条件下でアッセイを行うためのエンジニア装置を操作し、アッセイの結果を解釈して対応を示唆するための連絡装置についてのソフトウェアをデザインすることができる。SlipChipは、また、たとえばTBIについての薬物発見、並びに生物マーカーの発見および試験を促進させることができる。その高い感度は、唾液、尿または涙液などのよりアクセス可能な流体における生物マーカーの開発に使用することができる。これは、また、mRNAまたはmiRNAなどの非タンパク生物マーカーの検出を可能にすることができる。
【0445】
SlipChipの一定の態様において、確率的制限は、同時発生の検出と組み合わせて、試料特異的なバックグラウンド補正を可能にして、高レベルの非特異的結合を有する試料を定量化することができる。ノイズの増幅を排除するために、使用者は、臨界レベルよりも強力な入力シグナルのみがさらなる増幅を生いるように、閾値を導入することができる。
【0446】
一定の態様において、SlipChipを、極限環境微生物を含むが、限定されない多くの異なる生物を使用するコンビナトリアルバ生物触媒法に使用することができる。多くの研究者は、一般的な好熱菌(約45℃〜約80℃を好む)をスクリーニングするためにプレートアッセイを使用するが、他方で超好熱菌(約80℃〜約122℃を好む)については、蒸発および寒天培地を溶解させるため、標準的なプレート実験を行うことは困難である。大部分の公知の超好熱菌は嫌気性であり、硫黄を要求し、またゆっくり増殖する生物である。SlipChipは、好熱菌および超好熱菌を含む多くの生物を培養するために使用することができる。超好熱菌によって行われる生体触媒反応の多くは、バイオマス分解である(たとえば、セルラーゼ生産および反応が可能である)。SlipChipは、新規の酵素スクリーニングまたは地域に密着した培養物を培養するために使用することができる。
【0447】
以下の特許および出願は、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる:米国第12/257495号の「Automated analyzer forclinical laboratory」、US12/411,020の「Integrated microfluidic assay devices andmethods」、米国第S3,996,345号の「Fluorescence quenching withimmunological pairs inimmunoassays」、米国第5,686,315号の「Assay device for one step detection of analyte」およびPCT/US2007/20810の「Integratedmicrofluidicassay devices and methods」。
【0448】
一定の態様において、SlipChipは、細胞間連絡装置として使用してもよく、この場合、表面は、潤滑液の代わりに反応流体によって湿らされる。表面に沿って、ナノパターン化してもよい非常に細いダクトによって接続する領域を使用して、接触させずに細胞間相互作用をモニターすること、またはたとえば試料調製およびビーズに基づいた化学反応のための溶液を濾過すること(流れが1つの領域から別の領域まで誘導される場合)ができる。いくつかの例において、両方の表面は、親水性であり得るが、その他において、1つの表面のみが親水性であることができる。親水性ナノパターンを使用することができる。
【0449】
SlipChipの一定の態様は、たとえばケミストロードを含む、システムまたは装置を作製する任意のプラグに由来することができるプラグを解析するために使用することができる。SlipChipの一定の態様における試薬は、潤滑剤または担体流体に浸すことができる。SlipChipの一定の態様でのタンパク質吸着は、たとえば粉状の可溶性表面活性物質を使用して界面化学を調節することによって、界面にて調節することができる。SlipChipの一定の態様を、汚染の危険なしに試薬を貯蔵するために使用することができる。
【0450】
いくつかの態様において、SlipChipは、開いた装置および閉じた装置であることができる。これは、大きな容積から、関心対照のまれな細胞、粒子、および/またはビーズを保有する細胞もしくは分子を単離して解析するために使用することができる。これは、循環腫瘍細胞を含むが、限定されない多数の異なる種類の細胞、体液における微生物細胞、その他の細胞の精製に関連する。これは、標準的な負荷および捕獲を含むが、限定されない多くの異なるアプローチを使用して、捕獲するために使用される開放SlipChipを使用して、次いでその後に組み立てることにより行うことができる。SlipChipの1つのプレートは、フィルターとして、または捕獲表面として作用し、関心対照のわずかな細胞だけで大容積を解析する問題を解決することができる。このような装置は、たとえば、別途負荷することが困難であり得る試料、たとえば咳の間に生じる細菌およびウイルスのエアロゾルまたは腫瘍および生検について行われているように、細胞間の空間的な関係がわからなくなることなく使用者が試料を解析したい組織スライドの解析のために使用することができる。加えて、使用者は、直接のアクセスから利益を得る方法によって、解析のためにチップを開くことができる(たとえばDESIおよびMALDI技術によるSlipChipの領域の解析を含む、質量分光測定)。SlipChipは、貫通することができる材料(PDMS、ポリウレタン、その他のエラストマーおよび3Mによって製造されたシールテープを含む)を使用して構築されたとき、たとえば針で材料に穴をあけることによって、領域の内容物に直接アクセスすることができる。
【0451】
本発明の一定の態様において、表面張力を、漏出を防止するために使用することができる(「表面張力シール」)。装置の二等分を、たとえばプラスチックによって作製し、これを次いで、たとえばプラズマ処理を使用して非常に疎水性にすることができる。チップのまわりの閉じた経路を親水性にすることができる。疎水性領域を疎水性の液体で濡らす。蒸発を防止するために、適切な領域と接触して液体貯蔵器が存在することができる。SlipChipの二等分を共に固定することができ、チップに添加される水性溶液は、毛細管圧のためにプレートの間に漏れることはないであろう。同様に、疎水性溶液は、親水性層によって止められる。装置が耐えることができる最高の圧力は、毛細管圧によって支配される。
【0452】
共にSlipChipの2つの側を固定するときに、層が非常に薄い場合、表面上に一様に圧力を適用することが好ましい。予め引っ張られる保持装置によって、SlipChipを非常に薄く作製して、工場にて共に予め固定して、かつばらばらに剥がすことができる。あるいは、2つの強固なガラススライドを保持具として使用することができ、必要な場合、イメージングはこれらを介して実施することができる。X線回折が実施される場合、ガラススライドを取り除くことができる。しかし、一定の態様において、固定することは必要でない。たとえば、2つのガラススライドは、濡れた場合、共に非常に密接に固着する;同様のアイデアを、SlipChipの層を共に保つために使用することができる。対向する表面が強固かつ平らである場合、非常に高い毛細管圧が生じ、強固さは、スライドを分離するときに同時に大きな領域において接触が壊れなければならないことを要求し、高い力を要求する。適用には、タンパク質結晶化、たとえば膜タンパク質結晶化を含むが、限定されない。
【0453】
試料を正確にメーターで測ることが好ましい一定のSlipChipの適用において、ウェルをいっぱいにすることができ、次いで過剰分を隣接層によって押しのけることができる。あるいは、装置は、余分な経路のセットを有することができ、精製および/または解析のためのそれぞれの経路は、たとえば5μLを取り、使用者が装置に試料を負荷するにつれて最初の5μLが満たされて、次いで第二などとなる。このような装置は、たとえば10μLおよび50μLの血漿において定量的解析を行うことができる強力なシステムを有する。
【0454】
本発明の一定の態様において、SlipChipは、遠心管内にあってもよい。この種の装置は、遠心管の底部にてSlipChipを固着することによって、細胞/粒子の再濃縮のために使用することができる。
【0455】
ケミストロードは、二相層流に頼る微小溶液装置であり、繰り返うぃ試料を取得して、解析のためにこれらを維持することができる。ケミストロードは、電極のように実施する微小プローブである(シグナルを送達しかつ記録する)が、電気的であるというよりはむしろ化学的なシグナルを使用する。単離された領域における組織からの分泌物をサンプリングするためのケミストロード、およびサンプリング懸濁液のための針様ケミストロードが示されている。
【0456】
ケミストロードは、平行なチップに基づいたナノリットルアッセイから単一分子方法までに適合性であり、多くの少ない容積を単一の動物からサンプリングして解析することを確実にする。代謝性マーカーインスリンの単一分子の検出を、競争的免疫アッセイおよび蛍光相関分光法(FCS)を使用して達成した。ケミストロードによって得られた液滴は、また、SlipChipで解析することができる。ケミストロードを解析のためにFCSまたはSlipChipと組み合わせて、定量的分析のために生きている動物から生物流体を連続的にサンプリングすることができる。
【0457】
SlipChipの一定の態様は、ケミストロードからの多くのナノリットル容積を処理して、たとえば、生物マーカー(たとえば、TBI生物マーカー)の検出に要求されるピコモルのレベルにて多段階の不均一な免疫アッセイを実施することができる。
【0458】
SlipChipの一定の態様は、ポイントオブケア(POC)にてHIVウイルス負荷の安価でかつ単純な測定のために使用することができる。このような試験は、資源が限られた状況における抗レトロウイルス療法の患者に対して適当なケアを提供するために、並びに世界的なHIVの薬剤耐性株の出現および伝播を調節するために緊急に必要である。多数の定性的なイエス/ノー診断ツールが開発されている一方で、資源が限られた状況における定量的ウイルス負荷測定についてはまだ満たされない需要がある。リアルタイム読み出しによるPCRに基づいたアッセイは定量的であるが、これらのアッセイは資源が限られた状況においてPOCのためにあまりに複雑な設備および環境を要求する。また、血漿からのウイルスRNAの単離および濃縮は、大部分のPOCアプローチについて課題になっている。SlipChipの一定の態様は、平行する多くの流体容積の操作のための複雑なプログラム(アルゴリズム)をコードすることができる。互いに相対的に移動する、または「すべる」2枚のプレートからなるSlipChipの一定の態様は、試料液と不混和性であり、また界面化学の調節を提供し、かつ相互汚染を防止する、不活性な流体によって潤滑した。プログラムは、試薬を含有する領域のパターンとしてプレートにコードし、すべらせることによって実施する。すべりにより、2枚のプレートの領域(またはウェル)を接触させたり離したりさせて、診断的アッセイを実施する。複数のスケール、たとえば100pL〜100μLの操作を同じチップ上で実施することができる。このようなSlipChipsは、上流の試料調製の組み込みを促進してウイルスRNAを単離して濃縮し、また下流のシグナル増幅での「デジタル」(単一分子)検出を使用することにより核酸増幅を介したウイルス粒子の定量化を可能にし、たとえば携帯電話カメラで取得されるイメージと同程度単純な読み出しを可能にする。
【0459】
インドおよびナイジェリアにおいて主に見いだされるA、CおよびGサブタイプを含む異なるHIV−1サブタイプをターゲットすることができる。
【0460】
現在利用可能な定性的なPOC診断試験は、必要とされる定量的モニタリングに適していない。HIV抗体試験は、資源が限られた状況において容易に使用することができる尿試験紙形式で組み込まれてきた。しかし、これは、患者の血清状態の情報を提供するのみであるので、この試験は、HIV抗レトロウイルス療法(ART)の効果を反映しない。p24抗原試験は、低い感度を有し、非常に高レベルのHIVウイルス血症(10
5粒子/mlより多い)においてのみ機能し、したがって、ARTをモニターするために使用することができない。CD4細胞の計数のための方法は、現在では広く利用可能ではなく、またこの計数は、多数の疾患において低くなり得るし、HIV感染症を反映しないであろう。加えて、CD4の計数は、より迅速な時間尺度において起こっているウイルス負荷の変化を反映するのに時間がかかるので、HIVウイルスの動態および療法に対する耐性は、推定のみとなり得る。CavidiABからのExaVirLoadは、資源が限られた状況における使用のための可能性を有するが、試験には、約3日を要求し、高価であり、またそれを確立された臨床実務につなげるためにはに余分の挙証責任を有する。
【0461】
核酸試験によるHIVウイルス負荷の定量的測定は、資源が限られた状況のために緊急に必要である。ARTの主な目標は、可能な限り多く、可能な限り長く、血漿におけるHIVRNAレベルを減少させるように製剤化することである。これは定量化を要求し、これは、現在、集中化した研究室における自動化した機械におけるリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、核酸配列に基づいた増幅(NucleicAcidSequence Based Amplification:NASBA)および転写を媒介した増幅(TMA)による直接的核酸試験(NAT)に基づいている。HIVウイルス負荷の定量化は、HIV抗レトロウイルス薬物治療を始めるための時をガイドし、達成される初期の抗レトロウイルス効果の程度についての情報を提供し、疾患進行のリスクを評価し、および異なるART処方計画にスイッチするときに行われる意思決定をするときの意思決定をガイドするために使用される。
【0462】
現在、この出願の他の場所に記述されるような、資源が限られた状況において使用することができる利用可能なHIVウイルス負荷定量化プラットフォームはない。好ましい装置は、多数の好ましい特徴を有する:ウイルス負荷を測定するための広い動態範囲、たとえば血漿における500〜1,000,000粒子/mL;たとえば100〜200μLの全血または血漿を使用する;たとえば90〜95%の確率でウイルス負荷における3〜5倍の変化を区別するのに十分に定量的である;コストが低い;使いやすい;たとえば、2〜4時間(1回の訪問以内)下で結果を提供する;単純で強固な設備のみを要求する;並びに単純な読み出しを有する。
【0463】
デジタル直接的核酸試験(NAT)は、より高い感度でDNAまたはRNAレベルの定量化を可能にする技術的進歩であり、リアルタイムの読み出しを要求しない。一定の適用については、リアルタイムRT−PCRは、正確なウイルス負荷を提供し、かつ使用することができるが、その他については、専門知識および設備が要求される点であまりにも複雑である。リアルタイム測定の必要なく定量的結果を得るために、単一分子検出が好ましいものとして出現した。デジタルNATは、一連の少ない容積に核酸の単一コピーを閉じ込めて視覚化するという概念に基づいている。核酸産物を産生させる少ない容積の数は、最初の試料に存在する分子数に直接的に対応し、高度に定量的結果を作製する。高バックグラウンドを伴う試料の検出感度は、検出されるそれぞれの分子が、混入物を阻害することなく、個々の少ない容積に分配される(または確率的に閉じ込められる)ため、デジタルプラットフォームにおいて増大される。
【0464】
SlipChipの一定の態様は、外部の機器なしで平行して多数の小さな(たとえば、ピコリットルからナノリットル)流体容積を区分する単純な方法を提供する。SlipChipは、資源が限られた状況におけるHIV治療および診断についてデジタルNATを実施するために使用することができる。SlipChipの一定の態様は、何千ものナノリットル反応器チャンバーを容易に形成し、一方では費用のかかるポンプに基づいた満たすシステムを要求しない−一連の接続されたウェルをピペットで移す単一の工程によって単純に満たすことができ、ウェルは、その後1つのプレートを隣のその他のものに対してすべらせることによって個々のナノリットル反応器に分離される。SlipChipは、弁を必要とせずに高度に多重化することができる。
【0465】
SlipChipの一定の態様は、感度のよいアッセイおよび熱サイクリングの間に要求されるストリンジェントな条件下でさえ、全ての反応の区画化を維持する。ウェルの形状を変えることによって、潤滑液によって囲まれた、水性液滴をウェルにおいて懸濁することができる。一定の態様において、熱サイクリングと関連する温度変化の間、流体は膨張するが、PCR反応を含有する水性液滴は、ウェルから漏れない。
【0466】
SlipChipの一定の態様は、デジタル等温NATおよびその後のNAT読み出しの増幅の両方のために好ましい、外部の機器または隣接した反応容積の間の相互汚染なしで平行して全ての区分化された反応容積に対し別々の工程での複数の試薬の添加を促進する。等温NATは、熱サイクリングを必要としないので、資源が限られた状況について有利であり、主要な設備の一組の必要を排除する。しかし、PCR混合物を鋳型RNAと混合すると直ちに反応が開始するので、増幅反応の開始の調節の技術的困難性のため、これは、現在ではPOCとして商業的に使用されない。増幅は、デジタルプラットフォームに試料を負荷する前に始まるため、デジタル読み出しが必ずしも最初のRNAの標的濃度の正確な反映であるというわけではない。鋳型の核酸が確率的制限の前に増幅されるとき、偽陽性が生じ得る。SlipChipの一定の態様は、この問題を解決する。まず第一に、試薬を、任意の使用者に特定された開始時間にて、試薬を含有するウェルと接触するように試料を含有するウェルをすべらせることによってRNA鋳型を負荷した後に即座に添加することができる。第二に、デジタルPCRは、エンドポイント読み出しを利用することができるので、反応時間は重要でない。加えて、隣接した反応容積の間の相互汚染がない。SlipChipは、RNA単離に好ましいように、反応容積を変化させる操作を促進する。SlipChipは、ウェル直径を変化させ、また深さを、たとえば数ミクロンからミリメートルにわたる深さで変化させることで任意の形状に製造することができる。単一の核酸を含む各反応容積を真にデジタル的に解釈することができる。蛍光読み出しを使用することに代わるものとして、比色酵素的増幅反応を、NAT産物を検出するために使用することができる。SlipChipは、また、全ての反応容積への複数の試薬の同時添加を達成することができる。
【0467】
SlipChipの一定の態様において、分子またはウイルス粒子は、磁気ビーズによって捕獲することができ、磁石の使用によって大容積から少ない容積に引っぱって、オンチップ濃縮を可能にする。同様に、少ない容積を、大容積に添加することができ、オンチップ希釈を可能にする。
【0468】
SlipChipの一定の態様における界面化学は、潤滑液と反応流体との界面にて調節することができ、製造を単純化する。2つの相互不溶性流体間の界面化学は、たとえば表面活性物質を添加することによって調節することができる。一定のSlipChipsにおいて使用される潤滑液は、以前の液滴に基づいた研究(たとえば米国第7,129,091号およびPCT/US2009/046255を参照され、両方とも本明細書にこれらの全体が援用される)において使用される担体流体と同じであることができるため、界面化学は、類似の様式で調節することができる。非フッ化潤滑液(鉱油など)については、表面活性物質を水性反応液に添加することができる;フッ化潤滑液については、フッ化油溶性表面活性物質を潤滑液に添加することができる。SlipChipにおいて使用される異なる潤滑液の例は、単一分子PCRSlipChipのための鉱油およびpM検出限界を達成する免疫アッセイのためのSlipChipのためのフッ化油を含む。
【0469】
SlipChipのための可能な表面処理は、ジクロロジメチルシラン(ガラス装置に適する)および気相シラン処理を含むが限定されない。
【0470】
均一のウェル容積を有するガラスSlipChipは、たとえば5,000〜100,000HIV粒子/mLの検出の動態範囲を有することができる。このようなデザインの利点は、比表面積が一定に保たれるため、同じ溶液を負荷した場合に、あらゆるウェルが同一の複製であるということである。1つの実験において、均一のウェル容積を有するSlipChipに負荷された色素の濃度は、3.2%の変化係数を有した。均一のウェル装置は、たとえば、空間を保存するためにSlipChipの上部部分における640個の細長いウェルおよび底部部分における640個の細長いウェルで1280個の反応容積を有することができる。細長いウェルは、最初に負荷するために重ねることができる。負荷した後、細長いウェルは、たとえば鉱油を含有する環状ウェルの上にすべらせることができる。このデザインは、すべらせることにより鉱油の容積によって囲まれた水性液滴の形成を促進する。水性液滴は、加熱することにより膨張し得るし、SlipChipの2枚のプレートの間の鉱油と置き換わって、熱膨張のために水相がウェルから漏れて相互汚染を生じるのを防止する。それぞれの環状ウェルは、たとえば直径および深さが50μmであることができる。
【0471】
この装置は、標準的な写真平板およびウェット化学エッチング技術を使用してガラスから作製することができる。界面化学は、たとえばジクロロジメチルシロキサンでシラン処理することによって、SlipChipの表面に疎水性を付与することにより調節することができ、これはPCRに受け入れられる。鉱油は、SlipChipの2枚のプレート間の潤滑液として、および反応混合物を含有する水相を囲んでいる湿潤層として使用することができる。
【0472】
Promegaからの市販のAccess RT−PCRキット、公知の濃度である標準的な市販のHIV(HIV−1の8E5 LAV欠失変異株)および生成物を検出するためのEvaGreen色素を使用することができる。HIV−1の長末端反復(LTR)領域の増幅のためのプライマーを使用することができ、これは全てのHIV−1サブタイプM、NおよびOグループの間で保存される配列を含有する。これらのプライマーは、インドおよびナイジェリアで見いだされるHIV−1の全てのサブタイプ(A、CおよびG)、並びに米国において優勢なサブタイプ(B)を増幅するために適している。プライマーは、:A1352センス、LosAlamosHIVSequence Databaseにおける公開された配列アラインメントにおける位置607、GRAACCCACTGCTTAASSCTCAA
(配列番号47);A1355アンチセンス、位置708、GAGGGATCTCTAGNYACCAGAGT
(配列番号48)である。
【0473】
実験において、1280個のウェルの信頼可能な負荷は、6.5μLの最初の試料を使用して達成し、再現可能なデジタル読み出しは、PCRおよびRT−PCRの両方について成し遂げた。1280ウェルSlipChipを、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)ゲノムDNAを使用するデジタルPCRについて特徴づけた。結果は、再現可能であり、かつ定量的であった。加えて、実験は、HIV−1の8E5 LAV欠失突然変異株、並びにA1352およびA1355のセンスおよびアンチセンスプライマーを使用して、RT−PCRの生化学がデジタルSlipChipプラットフォームに適合性であることを証明した。
【0474】
内部対照を、現場で得られる結果を検証するためにSlipChipに組み込むことができる。たとえば、100個のウェルに、試料に添加することができる対照RNAを検出するためのプライマーを予め負荷することができる。プライマーは、SlipChipの2枚のプレートの組み立てより前に、手動でまたは単純なロボット工学によって分配することができる。
【0475】
1つのチップ上に複数の反応容積を作製する環状SlipChipの態様を証明した。このデザインの利点は、その動態範囲が、たとえば500〜1,000,000HIV粒子/mLの検出範囲をカバーすることができるということである。一定の態様において、ウェルはを最初にダクトと重ねて、負荷することを可能にし、次いで装置を回転させることによって、別々の反応容積へとすべらせる。この変化するウェル容積のSlipChipのための例示的な寸法は、128個の200nL容積のウェル(39〜1667個のRNA分子/mL)、128個の20nL容積のウェル(391〜16667個のRNA分子/mL)、256個の2nL容積のウェル(1953〜166,667の分子/mL)および512個の0.5nL容積のウェル(7813〜1,333,333の分子/mL)である。これらのウェルサイズは、より大きな、およびより少ない容積の動態範囲における重複により、SlipChipの内部整合性を調べることができる。装置には、内部対照を組み込むことができる。
【0476】
あるいは、このような装置は、水性試料溶液において表面活性物質を使用すること、または鉱油の代わりにフッ素化油を使用することができる。
【0477】
一定の態様において、オンチップ段階希釈によって同等に大きな動態範囲を達成することがむしろ好ましくすることができ、これは、一定の態様において、より大きなウェルを含有する。このデザインのための例示的な寸法は、各列に100個のウェルを含有する5本の列であり、また20nLの試料を含有する浅いウェルを、180nL希釈緩衝液を含む予め負荷されたウェルの上にすべらせて、各すべりにより10倍の希釈を達成する。
【0478】
SlipChipsは、たとえば、ガラス、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびその他のプラスチックを含む多くの材料で作製することができる。ポリプロピレンおよびポリカーボネートの両方がPCRに適合性であることは公知である。プラスチック装置は、異なる表面コーティング、表面活性物質および油で被覆することができる。
【0479】
SlipChipの一定の態様を、逆転写酵素(RT)によるcDNAへのHIV RNA転写の開始およびその後の増幅反応を調節するために使用することができる。cDNA合成の開始および増幅は、SlipChipの底部部分における予め負荷された乾燥プライマーの上に、SlipChipの上部部分における反応混合物および鋳型RNAを含有するウェルをすべらせることによって調節する。たとえば、プライマーは、たとえば50μmのI.D.を有するテフロン(登録商標)管を使用して、または単純なロボット工学を使用して、最初の試験のために手動で負荷することができる。
【0480】
異なる細菌種の検出のためのプライマーを予め負荷した384ウェルSlipChipは、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MSSA)からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)(MRSA)を首尾よく区別した。SlipChipのどちらかの末端における2つのカラムには、pBadプライマーを予め負荷して、pBad鋳型DNAをポジティブ対照として全てのウェルに負荷した。
【0481】
使用することができる等温増幅技術は、NASBAおよびRT−RPAを含む。これらの増幅技術は、40℃にて操作することができる(より低い温度が、一定のPOC装置について好ましい):NASBA(生成物:RNA)、RT−RPA(生成物:DNA)、LAMPHIV RNA 6プライマーセットの1つを使用するRT−LAMP、転写によって媒介される増幅(TMA、41℃)、ヘリカーゼ依存的な増幅(HAD、65℃)および鎖置換増幅(SDA、37℃)。
【0482】
POCのために好ましい増殖方法は、周囲からの大きな温度差を要求せず、また1つの混合工程で開始することができるものであるが、NASBAおよびRPPAは、熱に不安定な酵素を含む。したがって、変性工程を標準的なプロトコルから除外して、プライマーアニーリング温度を40℃に調整することができる。一定の態様について、40℃にてアニーリングすることがより低い感度を示す場合、弱い二次構造を有する、異なるHIV−1サブタイプにおいて保存的なゲノムRNAの100−120ヌクレオチド長い増幅標的を選択することができ、これにより、40℃にて効率的なプライマーアニーリングが可能になる。
【0483】
実験において、Mg
2+溶液をSlipChipの全てのウェルに予め負荷して、溶液におけるRPAのための全てのその他の試薬を使用して、残りのウェルを満たした。キットで提供される対照鋳型の本来の濃度は、2分子/μLであった。およそ500nLを解析した。
【0484】
いくつかの診断的NAT試験は、関心対照のRNAと同じチューブまたはウェルの中に内部対照を組み込んでおり、増幅された標的RNAを認識するプローブのものとは異なる蛍光団に抱合される特異的プローブを使用することによって、内部対照を定量化する。SlipChipの中に、たとえばHIVRNAおよび全ての増幅試薬と混合された対照鋳型RNA(たとえば、長さ3,569ntのバクテリオファージMS2ゲノムRNA)を使用して、内部対照を組み込むことができる。HIVプライマーを含有する乾燥した反応混合物を、チップ上のウェルの4分の3および内部対照でその他の4分の1に予め負荷することによって、たとえば、HIVの負荷および内部対照を定量化するためのSYBRGreen検出を使用して、HIV RNAおよび内部対照鋳型を独立してかつ同時に解析することができる。
【0485】
視覚的読み出しは、一定の資源が限られたPOC状況のために好ましい。SlipChipを改変して、視覚的読み出しのために有用なさらなる工程およびすべりを組み込むことができる。視覚的読み出しを得ることには、酵素に対する核酸産物のハイブリダイゼーション、過剰酵素を取り除くために洗浄すること、酵素が視覚的シグナルに変換するであろう基質の添加および視覚的シグナルを増幅するためのインキュベーションを含むことができる。視覚化をより簡単にするために、ウェルサイズを増大させて、より多くの視覚的シグナルを産生することを可能にすることができる。携帯電話カメラは、たとえば、結果を記録して、解析して、そして実証するのに役立つことができる。
【0486】
一本鎖RNA(NASBAによって発生する)のハイブリダイゼーションは、表面固定、磁気ビーズおよび浅いウェルを使用して1工程で達成することができる。
【0487】
アルカリホスファターゼを酵素に基づいた検出のために使用することができる。アルカリホスファターゼは、視覚化のために十分に確立されたBCIP/NBT((5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェート、ジナトリウム塩)/(ニトロブルーテトラゾリウムクロライド))基質を有する。この基質は、酵素活性部位にて非常に強力な青色の沈降物を形成する。一定の適用については、期待される100nMの生成物R/DNAは、容易にかつ迅速にBCIP基質を消費するのに十分なほど酵素を結合して、暗い、容易に同定可能なシグナルを生成するために好ましいおよそ1mMの生成物を産生する。
【0488】
大きなウェルから小さなスポットに濃縮することができる、または銀増幅を使用して増幅することができる(金ナノ粒子について)金ナノ粒子または着色した磁気ビーズを、また、強力な視覚的シグナルを産生するために使用することができる。
【0489】
携帯電話カメラは、データを容易に記録して、単純なソフトウェアを使用することにより迅速な解析を提供して、所望の情報を計数して算出することができる。カメラは、好ましくはスポットを分解して同定することができる。たとえば、1280個のウェルのレイアウトにおいて1メガピクセルのカメラの集点を合わせることによって、各ウェルイメージは、およそ80ピクセルを含有する。2メガピクセルのカメラを使用することによって、各ウェルイメージは、およそ200ピクセルを含有する。このピクセルの数は、信頼可能な計数のために十分である。両方の分解能は、多くのカメラにおいて共通のレベルであり、資源が限られた状況においてさえ容易に利用可能である。試料を視覚的シグナル現像の間により大きなウェルへ移して、検出を促進することができる。
【0490】
一定の適用については、精製したRNAの終濃度が、患者の血液に存在する最初のHIVウイルス負荷の少なくとも40%に対応すること、または200〜400,000分子/mLが単離されることを成し遂げることが好ましい。ポアソン統計に基づいた計算では、500〜1,000,000分子/mLにて患者から確実に最初のウイルス負荷を定量化するために、40%の回収が適切であることが示される。
【0491】
例示的な単離プロトコルは、以下を含む:
プロトコル1:カオトロピック塩によるウイルス粒子の溶解を介した血漿からの、改変Boom's RNA単離法は、シリカ磁気ビーズ(MagPrep(登録商標)ビーズ、MerckKGaA)上にRNAをトラップすることによって行った。
【0492】
プロトコル2:カオトロピック塩によるウイルス粒子の溶解を介した血漿からの、改変Boom's RNA単離法は、酸化鉄ビーズ上にRNAをトラップすることによって行った。
【0493】
プロトコル3:抗体で被覆した磁気ビーズ(Viro−Adembeads、Ademtech、France)上のウイルス粒子の捕獲を介した全血からのRNAの単離は、ソフトな溶解手順(95℃にて加熱
する、または弱アルカリで処理する)によって行った。
【0494】
各プロトコルについて、SlipChip上において、洗浄工程の数を2回まで減少させること
ができる。
【0495】
実施例:1280ウェルデジタルSlipChipにおいて使用されるHIV RNAを得るために、HIV−1を、完全な溶解、担体RNAおよびシリカミニカラムを含むQiagenQiaAmpViral精製キットを使用して、Acrometrix OptiQual HIV−1 High PositiveControlにより精製した(1.7×10
6の変異体HIV−1粒子/mL;18pgのHIVRNA/mL、1OD260=37μg/mL)。
【0496】
環状SlipChipプラットフォームの態様は、磁気捕獲ビーズを使用してRNA単離プロセスの全ての工程を順応させることができる。
【0497】
SlipChipの一定の態様により、全血または血漿をサンプリングして、HIVウイルス負荷を示す測定可能な読み出しを得ることができる。
【0498】
ナノリットル溶液は、プラスチックSlipChipにおいてフルオロカーボン中で6ヶ月より長く貯蔵することができる。ブリスター包装にSlipChipsを貯蔵することができる。たとえば、ドライエライト−タイプコバルトに基づいた固体の防湿剤を使用して、水分流動を見積もって、および/またはSlipChipの領域の間に乾燥境界を作り出すことができる。
【0499】
試料は、SlipChipの一定の態様上の大きなウェルに予め貯蔵することができる。一定の態様において、試料は、フルオロカーボン(FC)またはパラフィン油などの潤滑油によって囲まれるため、蒸発が防止される。圧力を、入口を介して適用したときは、それが行き止まりに達するまで試料が流体経路を介してウェルに流れ込む。一旦試料が自動的に止まったら、試料ウェルを試薬ウェルへとすべらせて反応を開始する。異なる容積を有する何百ものウェルを負荷するときは、全てのウェルが満たされたであろうことを確認することが好ましい。行き止まり充填により、そうするのが容易になる。行き止まりの上流の全てのウェルが完全に満たされて、試料が行き止まりに達したときに、負荷が自動的に止まるので、使用者が止めるべきときを決定する必要がない。
【0500】
段積み可能な、回転SlipChip態様は、モジュール方式を介して付加的な可能性を提供する。湿った試薬および乾燥した試薬などの異なる試薬タイプを回転装置の異なる層上に貯蔵することができる。さらに、標準的な配置を使用する場合、異なる検出システムを、単純に異なる回転層をシステムに導入することによって容易に混合し、かつマッチさせることができる。後述するRNA精製サイクルを、また、その他のアッセイタイプのために使用することができる。
【0501】
充填方法は、限定されないが、圧力駆動してウェルを満たすこと、遠心力および行き止まり充填を含む。
【0502】
一定の態様において、試料は、第一により大きなウェルに収集し、好ましくはプロセシングのために第二の工程に移す。行き止まり充填は、試料を移すために、推進力および止める機構を提供する。すなわち、このような試料を調節された圧力源に接続してそれを第一の層から第二の層までの所望のチャネルまたはウェルへと駆動すること、次いでそれが末端に達したときに漏れることなく自動的に止まることである。これは、第三の層における開口部に接続するときに再開する。圧力源は、空気を負荷したシリンジと同程度に単純であることができる。この方法は、回転システムの1つの層の中に満たすことに限定されない。これにより、圧力を調節することによって、穴を介して異なる層を満たすことができる。
【0503】
SlipChipの一定の態様は、POC診断に使用するための溶液および乾燥試薬を貯蔵するためのプラットフォームを提供する。
【0504】
実験は、ナノリットル溶液が、プラスチックSlipChipにおいてフルオロカーボン中で6ヶ月より長く貯蔵することができることを示す。
【0505】
水吸着は、外部の乾燥剤を添加すること、または湿った領域と乾燥した領域との間にチップにおいて乾燥剤トラップを添加することによって、減少させて、フルオロカーボンを通したクロストークを最小限にすることができる。あるいは、試薬が乾燥して負荷されるようにデザインを変更することができ、装置は、溶媒のあとからの添加が可能なように構成される。
【0506】
増幅アッセイにおいて使用される試薬および酵素は、任意に安定化剤の存在下で(たとえば、タンパク質:トレハロース:マンニトール比が1:20:100において)、公知の凍結乾燥法を使用して、凍結乾燥することができる。試薬は、たとえば、鉱油またはフルオロカーボン油下で、乾燥させて、貯蔵することができ、大気中で貯蔵することができ、または真空下で封止することができる。
【0507】
SlipChipの可能なデザイン:4つの積み重ねられた層(上部から始まって、1〜4と番号をつけた)、層1および2は、共にSlipChipを形成し、層3および4もそのようにする。層2は、層3に試料を移すために、底部に穴を有する。穴を通す入口/出口の標準的な位置を使用することができるので、任意の2つのSlipChipsを互いに組み込むことができる。
【0508】
一定の態様において、試料は、オンチップの大きいウェルに予め貯蔵することができる。潤滑油(FCまたはパラフィン油など)でウェルを囲むことにより、蒸発を防止することができる。圧力を、入口を介して適用したときは、それが行き止まりに達するまで試料が流体経路を介してウェルに流れ込む。一旦試料が自動的に止まったら、試料ウェルを試薬ウェルへとすべらせて反応を開始することができる。たとえば、異なる容積の何百ものウェルを負荷するとき、全てのウェルが満たされるであろうことを確認することが好ましい。行き止まり充填デザインは、そうするために使用することができる。このデザインにおいて、全てのウェルが完全に満たされて、試料が行き止まりに達したときに、負荷が自動的に止まるので、使用者が止めるべきときを決定する必要がない。
【0509】
SlipChipにおけるウェルに液滴を配列することができ、これは手動でしてもよいし、ロボット工学によってもよい。ケミストロードから、またはプラグのその他の供与源から(たとえば、米国第7,129,091号に記述される技術を使用して形成されたもの、その全体が本明細書に参照によって援用される)の液滴がチップに流れ込み、公知の液滴をトラップする機構によって自発的にトラップされる、代わりの自己配列するデザインを使用することができる。Wu,L.; Li, G. P.; Xu, W.; Bachman, M., Appl. Phys. Lett. 2006, 89,Boukellal, H.;Selimovic, S.; Jia, Y. W.; Cristobal, G.; Fraden, S., Simple,robust storage ofdrops and fluids in a microfluidic device. Lab on a Chip,2009. 9(2): p. 331−338and Hong Shen, Qun Fang and Zhao−Lun Fang, A microfluidic chipbased sequentialinjection system withtrapped droplet liquid-liquid extractionandchemiluminescence detection, LabChip, 2006, 6, 1387-1389は、液滴をトラップする方法を記述し、全てはこれらの全体が本明細書に参照により援用される。WO2008097559A2として公開されたPCT/US2008/001544および米国第7,556,776号は、また、これらの全体が本明細書に参照によって援用される。Slipchipの一定の態様は、たとえばこれらの技術を使用して別々の容積を作製して、次いでこれらの上部に試薬をすべらせることによって、これらの技術と組み合わせて使用することができる。
【0510】
SlipChipの可能な適用は、以下を含むが、限定されない:ウイルス性肺炎を検出すること;心臓マーカーを検出するためにELISAを使用することであり、GPBB、ミオグロビン、CK−MBおよびトロポニンTを含むが、限定されない;食品を試験すること、たとえば乳、ワイン、乳児用ミルク、オオムギ、マメ、ドライフルーツ、フルーツジュース、穀物、トウモロコシ、乳、乳食品、ナッツ、米、穀物、コムギ、牛肉、肉、シーフード、ニワトリ、ドッグフード;抗生物質(たとえば、クロラムフェニコール)、殺虫剤(たとえば、有機リン系殺虫剤(コリンエステラーゼ阻害によってアッセイされる)、エンドリン、ペルタン、カルバリル、テトラジホン、ジフェニルアミン、アルドリン、ジエルドリン、ベンゼンヘキサクロリド、クロルデン、クロルデコン、DDT、DDE、TDE、ジコホール、二臭化エチレン、ヘプタクロル、リンダンおよび/またはマイレックスを含む)、天然毒素(たとえば、アフラトキシン、オクラトクシンおよび/またはマイコトキシンを含む)、残留物、およびアレルゲン(たとえば、アーモンド、卵、グリアジン、ヘイゼルナッツ、乳、マスタード、シーフード、ピーナッツまたは大豆残渣を含む)の存在について食品を試験すること;エビにおけるスルフィットを試験すること;サルモネラ菌、リステリア菌および/または大腸菌(E.coli)を試験すること;デオキシニバレノール(DON)、フモニシン、T−2/HT−2毒素、ゼラレノン、ヒスタミン、パツリンを試験すること;血液型検査;インフルエンザAサブタイピング(H1N1を含む)HAIスクリーン(MRSAおよび/またはVREを含む)のためのPCRを使用すること、嚢胞性線維形成について試験すること、新生児スクリーニング、癌予後、遺伝子発現クラスタリング、ADME/Tox医薬品R&Dスクリーニング、敗血症検出、HBV/HCV/HIV供血者スクリーニング、HCV定量化、HIVサブタイピング、HIV定量化、HIV薬物耐性、HPVサブタイピング、アシュケナージパネルを走らせること、染色体、たとえば、染色体13、18、21、XおよびYの胎児期スクリーニング、トリインフルエンザ株サブタイピング、癌診断、癌再発検出、臓器移植タイピング、臓器移植モニタリング、ハイスループットスクリーニング;感染性のための血液の分子試験;遺伝子型/ウイルス負荷試験;感染した患者(HIV,HCV)におけるウイルス負荷の定量的測定;クラミジア/りん疾/HPVを含む性感染症および薬物耐性を試験すること;予後(たとえば、薬物有効性);薬理ゲノミクスおよびセラノスティクス(薬学/診断の組み合わせ);たとえば、クラミジアおよび/またはりん疾、結核菌、HCV定量化、HIV薬物耐性試験、献血におけるHBV、献血におけるHCV/HIV、酵素を代謝する薬物、ファクターII(プロトロンビン)、ファクターVライデン、HPV遺伝子タイピング、ガルドネレルラ、トリコノモナス(trichonomonas)、膣およびカンジダ菌種、レジオネラニューモフィラ(legionellapneumophilia)、MRSA、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)、B群レンサ球菌(GroupBStreptococci)を試験するためのPCRを使用すること;A群レンサ球菌(Group A Streptococci)、B群レンサ球菌(Group BStreptococci)、西ナイル(WNV)、サイトメガロウイルス、嚢胞性線維形成スクリーニングを試験するための免疫アッセイを使用すること;B細胞慢性リンパ球性白血病染色体8計数(たとえばCML、AML、MPD、MDS)、HER−2ステータス、膀胱癌の初期診断および再発モニタリング、異性間骨髄移植試験、薬物耐性と関連するHIV−1ウイルスにおける変異を検出すること;感染症のためのリアルタイム試験および一定のタイプの癌のためのFISH検査であり、頸部、食道およびメラノーマを含む;MRSAによりコロニー形成された患者を同定するためのアクティブスクリーニング;遺伝性疾患のための遺伝子検査であり、乳房および卵巣癌、遺伝メラノーマを含む;腺腫様ポリポーシス症候群を試験すること;遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)を試験すること;化学的Q&A試験であり、活性成分の存在および/または量および/または混入物についてを試験することを含む;殺虫剤試験;肥料試験;石油試験;産業的な発酵プロセスコントロール;水、フルーツ、野菜、食品、石鹸油、乳、乳食品、飲料、卵を試験すること;異常なタンパク質またはアミノ酸、遊離脂肪酸、乳酸、過酸化物、アンモニア、クロライド、グルコース、石炭酸、尿素をスクリーニングおよび/または解析すること;カンピロバクターのための試験;海藻を解析すること;屠殺場および農場において試験すること;結腸直腸癌モニタリングのための血液検査;プロのドライバーのための皮膚パッチコカイン試験;マイコプラズマ肺炎、クラミジア、肺炎およびレジオネラ肺炎のための肺炎パネル試験(たとえばRT−PCRを使用して);たとえば、共通のフェニールケトン尿症、鎌状赤血球症および甲状腺機能低下症について新生児をスクリーニングすること;並びにBNP/Pro、hs−CRPまたはホモシステインを試験すること。加えて、SlipChipでのC−Reactiveタンパク質についてのポイントオブケア試験は、治療の間、および臨床試験の間、疼痛をモニターするために使用してもよい。
【0511】
たとえば、当業者に公知のPCRおよび/または免疫アッセイ法を使用して、SlipChipの一定の態様において検出することができる生物は、以下を含むが、限定されない:肺炎連鎖球菌(Streptococcuspneumoniae)、インフルエンザ桿菌(Haemophilusinfluenzae)タイプb、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)、大腸菌(Escherichiacoli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クラミドフィラニューモニエ(Chlamydophilapneumoniae)、マイコプラズマニューモニエ(Mycoplasmapneumoniae)、レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ストレプトコッカスアガラクティ(Streptococcusagalactiae)、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、モラクセラカタラーリス(Moraxellacatarrhalis)、クラミドフィラシッタシ(Chlamydophilapsittacci)、緑色連鎖球菌(Streptococcus viridans)、コクシエラバーネッティ、クリプトコックスネオフォルマンス(Cryptococcusneoformans)、エンテロバクター属(Enterobacter)、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(AおよびB)、ヒトパラインフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトライノウイルス(HRV)、コロナウイルス(たとえば、SARS)、アデノウイルス、メタニューモウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトボカウイルス、ランブル鞭毛虫(Giardialamblia)、クリプトスポリジウムパルバム(Cryptosporidium parvum)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、志賀赤痢菌(Shigelladysenteriae)タイプ1(Sd1)、腸毒素原性大腸菌(ETEC)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、カンピロバクター属(Campylobacter)、サルモネラ(Salmonella)、クロストリジウムディフィシール(Clostridiumdifficile)、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスおよびアストロウイルス。
【0512】
たとえば体液などの試料から、たとえばまれな細胞または関心対照の細胞を運ぶビーズなどの標的を単離する、または捕獲するためのSlipChipの一定の態様を使用する装置および方法が記述されている。このような装置および方法は、捕獲された標的およびこれらを運ぶ試料の下流の解析のために好ましい。たとえば、まれな細胞、ビーズもしくは凝集体などの粒子または分子は、たとえば血液、唾液、呼吸蒸気、涙、CSFもしくは尿を含む体液から、または土壌懸濁液、環境の水試料、組織ホモジェネート、気体、液体、固体もしくはゲルを含むその他の試料から、捕獲することができる。そのアプローチは、低濃度の検体により試料を解析するときに有益であり、たとえば生物、細胞小器官、分子、巨大分子、DNA、タンパク質および炭水化物、まれな核酸またはタンパク質、遺伝的疾患または感染性のマーカーおよび生物マーカー、環境汚染物質、細胞または小嚢であり、上皮細胞、循環腫瘍細胞、免疫系細胞、赤血球、血小板、エキソソーム、微細小胞などの宿主細胞、胎児の細胞および精液を含む非宿主細胞を含む。(たとえば、参照により本明細書に援用されるUSSN10/823,503を参照されたい)。別の例は、胎児期診断法のための母体血における循環癌細胞または胎児の細胞などの、まれな細胞の解析を含む。このアプローチは、血液、痰、骨髄穿刺液、並びに尿および脳脊髄液などのその他の体液における微生物細胞を捕獲してさらに解析することによって、感染症の迅速な初期診断のために有益であってもよい。ビーズおよび細胞の解析は、確率的制限から利益を得てもよい(たとえば、参照により本明細書に援用されるPCT/US08/71374を参照されたい)。
【0513】
標的の単離または捕獲は、広く多様な系の特徴付けまたは解析にとって重要である。1つの例は、体液におけるまれな細胞を解析する−限定されないが、癌(循環腫瘍細胞(CTC)、排出リンパ節における浸潤性の腫瘍細胞)、免疫(CD4カウント、抗原特異的細胞など)、感染(微生物細胞)、胎児期診断(母体血における胎児の細胞または有核赤血球)および脳卒中(転写的に変化した末梢の血液単核細胞(PBMCs))を含む適用に重要な例である。「まれな細胞」は、その他のタイプの細胞(たとえば、間質細胞、リンパ球)が豊富な混合物における1つのタイプの細胞(例えば、CTC)であることができ、または同じタイプの正常な細胞(例えば、PBMCs)の混合物における異常な表現型もしくは遺伝子型を有する細胞(たとえば、転写がアップレギュレートされる)であることができる。
【0514】
CTCの単離または捕獲は、癌診断およびモニタリングにとって重要であり得る。転移は、これらがたいてい従来の療法に対して抵抗性であるため、癌による主要な死因である(転移における癌細胞には多くの異種性がある)。CTCは、主な腫瘍から剥離して、血流において循環する細胞である。その他の組織に接着するときに、これらは侵入した組織においてそれら自身の周辺に微小環境を作り出すことによって、付加的な腫瘍の成長のための種として作用することができる。CTCは、血液において非常に低濃度(10
6〜10
9において1つの細胞)にて観察する。CTCの量は、大部分のケースにおいてCTCを有しないいくつかの癌(卵巣癌)から、ほとんど全てのケースにおいてCTCを有するその他(乳癌)まで、異なる癌タイプにおいてかなり変化する。ごく最近の研究は、このような細胞の検出を改善するための方法に焦点に集まっており、多くの進歩がなされている(下の現在の方法セクションを参照されたい)。しかし、これらの大部分の方法はCTCの計数のみを提供し、その一方で少しがPCRまたは染色による解析を提供することができる。本発明において、広く多様な下流の解析および操作のためのCTCを捕獲するために使用することができる方法
および装置が記述される。
【0515】
CTCは、血流からの情報を提供することができる一方で、固形腫瘍試料またはリンパ節生検の解析は、原発性腫瘍に関する情報を提供することができる。しかし、固形腫瘍生検試料は、患者に対するリスクまたは主要な不都合なく内部に位置した腫瘍にアクセスすることの困難性のため、たいてい微細針吸引生検または微細針生検からのものに限定される。これらの試料は、腫瘍細胞および間質細胞またはリンパ様(非腫瘍)細胞の混合物を含むわずか200個の細胞を提供し得る。標的細胞の数が少ないにもかかわらず、これらの試料から腫瘍細胞を捕獲し、または単離して、多重化解析を提供する必要がある。同様に、手術時の時間枠(<40分)において迅速に捕獲し解析して、センチネルリンパ節生検などの試料が転移性であるかどうかを決定する必要があり、これによりポジティブなケースでは第二の外科手術の必要を緩和する。本発明は、多数の間質細胞またはリンパ様細胞の存在にもかかわらずこれらの試料から腫瘍細胞を捕獲しかつ単離するための方法および装置を提供し、たとえばkRAS2(固形腫瘍について共通の)などの変異のためのPCR、または乳癌についてのMUC1を含む特異的mRNAのためのRT−PCRなどの、迅速な解析および操作を可能にする。
【0516】
捕獲および単離の別の重要な適用は、免疫系の解析である。ヒト血流は、mL当たり数百万個の細胞を含み、mL当たり10
8個より多い血小板に加えて、Tリンパ球およびBリンパ球、単球、樹枝状細胞、好中球および赤血球を含む。癌並びに自己免疫、アレルギーおよび感染などの状態については、特定の抗原(それぞれ、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲンまたは病原体からの抗原)に特異的なT細胞の頻度は、たいてい疾患進行において予測的である。しかし、これらの細胞は実にまれであり、0.002%〜0.2%または1,000〜100,000個の細胞に2個の頻度にて生じる。解析についての現在の方法は、列挙(フローサイトメトリー、ELISPOT)に焦点が集まり、ほとんどさらなる解析を提供しない。本発明は、このような細胞を捕獲して単離するための装置および方法を提供し(たとえば、MHC−抗原複合体による親和性捕獲によって、抗原刺激されたサイトカイン分泌などのスクリーニングによって)、そして限定されないがPCR、さらなる刺激応答アッセイおよび培養することを含む下流の解析を提供する。このような方法は、腫瘍、自己免疫およびその他の状態における分子機構に対する洞察を提供することができる。たとえば、これは、自己抗原に特異的なT細胞がまた、サイトカインによる刺激に対しより感受性であって、そのために自己免疫応答を悪化させるかどうかを決定するために使用することができる。SlipChipは、ELISPOT技術を使用することができる適用の全てについてアッセイを実施するために使用してもよい。SlipChipにおける確率的制限は、より迅速かつ感受性のアッセイを提供するであろう。
【0517】
いくつかの現在の方法は、標的の捕獲を提供するが、ほとんどまたは全く下流の解析またはプロセシングを提供していない。現在の捕獲のための方法は、サイズまたは形態による濾過、親和性捕獲、抗体被覆磁気ビーズまたはロッドによるなど(たとえば、CellSearch、MagSweeperまたはRoboSCell technologies)、微小溶液ポスト(たとえば、CTC−チップまたはエキソソーム捕獲)、または微小溶液チャネル壁、機能的捕獲、コラーゲン接着マトリックスの転移性浸潤を含む独特の挙動による、その他全ての標的を取り除くことによるネガティブ選択、磁気的、光学的、その他の特性による(たとえば、誘電泳動フィールドフローフラクショネーションまたは光音響効果による)捕獲、並びに全ての標的を視覚的にスクリーニングして、関心対照のそれらを収集することを含み、フローサイトメトリー、光ファイバーアレイまたはレーザー走査によるものを含む(レーザー対応解析およびプロセシング、LEAP(商標)、Cytellectによる)。
【0518】
上に列挙した方法と対照的に、SlipChipの一定の態様は、多数の上流または下流の適用を可能にして、上流の試料調製と捕獲および下流の多細胞または単一細胞の解析および操作を組み合わせることを含む。行うことができる解析のタイプの例は、限定されないが、PCRおよびその他の核酸に基づいた試験、免疫アッセイ、染色、これは免疫染色、組織学的染色を含み、並びに質量分光測定を含む。単離後に行うことができる手順は、限定されないが、培養、これは単一細胞の培養、純粋培養(1つの細胞タイプ)、混合共培養または空間的に組織化された共培養を含み、刺激応答アッセイ、これは限定されないが抗原、病原体またはサイトカイン誘発を含み、受容体結合並びに化学走性アッセイを含む。
【0519】
標的は、サイズまたは形態によって、たとえば濾過によって選択することができる。たとえば、試料は、吸引または流れなどのプロセスによって濾過装置を通過することができる。篩または多孔性膜などの濾過装置は、捕獲領域における濾過より大きな標的を保持する。これらは、より大きな標的を単離するために、または関心対照のより小さな標的から材料を取り除くために使用することができる。捕獲された標的は、次いでさらなる操作のために解析領域へとすべらせることができる。関心対照の標的の検出のための試薬を濾過の前に試料と混合すること、または以下に示すように、装置上に予め負荷されていることを含む、種々の段階にて含まれることができる。フィルター(たとえば、サブミクロンの大きさの孔を有するもの)をチャネル内に置くことができ、チャネルにおいて、試料はフィルターを通って流れることができ、次いで、好ましくは本来の試料より容積がより小さい洗浄液は、逆方向に流れて、フィルターが収集したものを再懸濁することができる。
【0520】
流体力学による捕獲は、たとえば、試料のその他の構成要素とは異なる流体力学的特性を有する標的を含有する試料のために使用することができる。たとえば、ナノピラーのアレイがこれらの流体力学的特性および拡散特性に従って目的物を分離するために使用されてきた。境界の隣に移動する目的物の流体力学における相違もまた十分に確立されている。小さな細胞は、狭い側のチャネルに入り込むことができるが、大きな細胞は、できないスキミング方法(血漿を細胞から分離するためにもまた有用である)が記述されている。液滴への細胞のカプセル化、続く空の液滴を除外して所望のサイズの細胞を収集するために流体力学的にソートすることが、記述されている。標的を、密度変化を利用することによってソートすることができる。たとえば、液滴における標的が液滴の密度を低くさせる分子を生成して、液滴がSlipChipの上部部分に浮かぶようにさせるように、検出試薬を有する液滴において種をカプセル化することができる。これらの方法のいずれも、SlipChipで利用することができ、次いで捕獲された標的を解析および操作のために別の領域にすべらせることができる。
【0521】
電気的、光学的、磁気的およびその他の特性による捕獲は、たとえば標的それ自体が本質的に明確な電気的、光学的、磁気的な特性を有するときに、またはこれらの特性を誘導することができるときに使用することができる。たとえば、微生物に対する磁気的粒子の選択的結合を、生物の磁気的特性を変化させ、また磁場を使用して試料の残りからこれらの生物を分離するために使用してもよい。
【0522】
関心対照の標的を捕獲薬剤に対するこれらの親和性によって捕獲することができ、これは関心対照の標的に対し特異的または非特異的のいずれかであることができる。一定の態様において、試料の大半は装置によって捕獲されないが、その一方で、所望の標的であるこのような微生物、細胞または分子は、優先して結合させて、濃縮することができる。
【0523】
捕獲薬剤(または捕獲エレメント)は、親和性試薬を含むことができ、これは抗体、アプタマー、非特異的捕獲薬剤を含み、これはたとえば液滴または細胞が固着することができる親水性パッチおよび本明細書に記述されるその他を含む。いくつかの捕獲エレメントは、同じプレート上にパターン化することができる。たとえば、1つの列を細菌に対する
捕獲薬剤で、別の列を真菌に対する捕獲薬剤でパターン化することができる。プレートの組み立ての後、細菌および真菌に対する検出試薬を対応する領域に添加して、同じ試料から細菌および真菌を検出することができる。
【0524】
関心対照の標的は、独特の挙動によって捕獲することができる。たとえば、細胞は、コラーゲン接着マトリックスなどの物質で被覆されているSlipChipウェルに負荷することができる。転移性細胞はゲルに遊走し、その一方でその他の細胞はそうしないであろう。その他の細胞は、洗い流すことができ、ゲルを溶解させて、解析のために別の領域に対してすべらせることができるウェルに単離された転移性細胞を残す。
【0525】
SlipChipはまた、チップの異なる領域全体に種(細胞、ビーズなど)を配列して、次いで所望の標的の位置を同定するためにそれら全てに対して検出薬剤を適用することが可能である。これらは、次いで、さらなる解析および操作のために別の領域に対してすべらせることによって単離することができる。たとえば、試料における全ての細胞をウェルに負荷して、次いで標識された親和性試薬で同定することができる(CD4またはEpCAMなどの関心対照のマーカーに対する蛍光性標識抗体など)。標識された細胞を含有するこれらのウェルを、次いで、たとえばPCR、細胞培養および/または免疫アッセイによる、さらなる解析または操作のために解析領域へとすべらせることができる。
【0526】
SlipChipを離れて担体に対する結合を行って、その後SlipChipで担体の捕獲を行うことができる。担体は、たとえば、磁気的粒子、DNAで被覆されている粒子、抗体および/ま
たはその他のターゲティング分子であることができる。一定の態様において、関心対照の標的を担体に結合して、担体を捕獲領域によってSlipChipで捕獲する。結合は、限定されないが、親和性、電気的、光学的、磁気的またはその他の特性を使用する方法を含む方法によって遂行する。担体の捕獲は、標的の捕獲について上述したものなどの方法によって遂行することができる。たとえば、試料溶液におけるまれな細胞は、抗体で被覆されている磁気ビーズに結合させることができ、次いで磁気ビーズは磁石に隣接したSlipChipウェルにおいて捕獲する。
【0527】
捕獲は、閉じられた装置(2つ以上のプレートと共に)または開放性の装置(試料に別々に曝露される1つまたは複数のプレート)において行うことができる。閉じられた装置については、試料はいくつかの手段によって負荷することができる、たとえば、開放性の穴を介して、誘導された流れを介して、またはチャネルへの吸引を介してを含む。開放性の装置については、SlipChipの1つのプレートは、フィルターとして、または捕獲表面として作用し得る。開放性の装置の利点は、大きな容積の試料を迅速にプロセスして、まれな標的を急速に捕獲することができることである。これは、CTCなどの標的のために有用であり、これは血液mL当たり0.5〜50個の細胞の低さの割合にて存在してもよい。加えて、開放性の装置は、別途負荷することが困難であり得る試料、たとえば咳の間に発生する細菌またはウイルスのエアロゾルの解析のために、またはたとえば腫瘍生検についてされるように、細胞の中の空間的な関係のトラックを保持することが好ましい組織スライド上の試料の解析のために、有用であることができる。加えて、直接のアクセスにより利益を得る方法(たとえば、質量分光測定)による解析のためにチップを開くことは、有利である。開放性のSlipChipで材料を収集するための例示的な方法は、SlipChipの少なくとも1つのプレートを試料に対して曝露すること、少なくとも1つの標的をプレートに移すことを可能にすること(たとえば、親和性捕獲または濾過捕獲によって)、任意に環境からSlipChipを取り除くこと、SlipChipの第二のプレートを第一のプレートに接触させること、および解析または操作のために、プレートをすべらせて、各プレート上の少なくとも1つの領域を互いに接触させて、標的との反応/相互作用を誘導することを含む。
【0528】
捕獲方法は、確率的制限、検出シグナルの多段階増幅および視覚的読み出しを含むその他の技術と組み合わせることができる。たとえば、試料からの細胞などの標的を、別々の少ない容積の中に確率的に閉じ込めることができ、これは検出を促進し、および/またはそれをより感度よくさせる。適用は、たとえばナノリットル容積の中に、血液試料からの免疫細胞の確率的な閉じ込めを含み、装置をすべらせて、CD4+細胞を同定するためにCD4について免疫アッセイを実施することによって続かれる。これは、CD4カウントを提供する。同定されたCD4ポジティブな細胞は、次いで単離して、PCRなどのさらなる解析のために、別の領域に対しすべらせることができる。
【0529】
捕獲方法は、たとえば、刺激応答アッセイおよび方向付けられたクローリングアッセイを含む下流の解析および操作と組み合わせることができる。刺激応答アッセイは、静止条件下で表現型が明らかでない細胞の検出および特性付けのために、たとえば液体腫瘍の発見のために有用である。捕獲された細胞は、サイトカインなどによって刺激することができ、またこれらの応答は、平行な解析および操作のセットによってアッセイされ、これは、サイトカインおよびプロテアーゼを含む分泌されたシグナルについてのELISA、シグナリング経路を決定するためのリン酸化状態についての染色、PCR、RT−PCR並びに培養することを含む。方向性のクローリングアッセイは、表現型を変化させることで細胞を区別するために使用してもよい。たとえば、転移性細胞は、機械的に閉じ込められるときに迅速にかつ方向的にクロールする;捕獲されたCTCは、この挙動を評価するために、長い直鎖状のダクトなどのチャネルの中にすべらせることができる。
【0530】
同様に、走化性勾配は、たとえば、SlipChipの一定の態様における1つのウェルを走化性薬剤で負荷すること、およびそれが別のウェルまたはダクトと接続するようにすべらせて、拡散によって勾配を確立することによって確立することができる(FID装置および架橋装置のように)。流れはまた、勾配を確立するために使用することができる。これらの勾配は、捕獲された細胞の化学走性を解析するために使用することができ、これは炎症、腫瘍後退および転移、自己免疫並びに感染症に関連する。
【0531】
個々に単離される捕獲された標的は、治療または刺激の有無にかかわらず、長時間モニターすることができ、バルク培養において得ることができない時間分解された単一の標的情報を提供する。たとえば、単一細胞は、増殖、レポーターの発現(たとえば、蛍光によってモニターされる)および/またはシグナルの分泌についてモニターすることができる。
【0532】
捕獲された細胞を含有するウェルは、細胞の挙動を解析するために操作することができる。たとえば、ウェルは、細胞外マトリックスの沈着のために解析することができる。チップの表面は、マイクロまたはナノスケールトポロジーによって、または化学的表面処理などの修飾により修飾して、細胞外マトリックス形成の動態および生成物を変えることができる。別の例において、刺激薬は、限定されないが、化学的または細胞性の刺激を含み、増殖または分化などの挙動を誘導するために適用することができる;これは、リンパ球、単球および幹細胞を含む多くの細胞タイプの研究に有用である。異なるタイプの捕獲された細胞は、細胞間相互作用を解析するために、混合され、または空間的に定義されて、共に共培養させることができる。1つの例において、抗原提示細胞は、抗原認識に対するT細胞応答の動態を解析するために、T細胞と培養することができる。別の例において、抗
原活性メモリT細胞は、細胞が通過するにはあまりに小さなダクトを介して別のウェルに流体工学的に接続するウェルにおいて培養することができる。その他の細胞、たとえば、ナイーブT細胞もしくはB細胞、または上皮細胞はをサイトカインなどの可溶性シグナルの効果を解析するためにその他のウェルにおいて培養することができる。
【0533】
親水性ブリッジは、接続ウェルによって細胞間相互作用を可能にするSlipChipの一定の態様において使用することができる。抗生物質耐性をスクリーニングする実験を記述する。ここに記述される装置および方法は、たとえば、抗生物質耐性をスクリーニングするために、細胞を物理的に接触させることなく細胞間連絡を研究するために、空間的に閉じ込められた微生物群を構築するために、マイクロ生態学的なシステムの多様性および進化を理解するために、並びにウイルス、細菌および/または細胞を、これらのサイズ、運動性および/または化学走性に基づいて抽出または分離するために、使用することができる。
【0534】
実験項
化学薬品および材料 市販の供与源から購入した全ての溶媒および塩は、特に明記しない限り、受けたとおりに使用した。FC−40(ペルフルオロ−トリ−n−ブチルメチルアミンおよびペルフルオロ−ジ−n−ブチルメチルアミンの混合物)は、3M(St.Paul、MN)から得た。食品色素は、Ateco(Glen Cove、NY)から購入した。トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシランは、UnitedChemical Technologies, Inc.(Bristol、PA)から購入した。AlexaFluor(登録商標)488色素(Alexa−488)は、Invitrogen(Eugene、OR)から購入した。クロムおよびフォトレジストコーティングを有するソーダ−石灰ガラスプレートは、TelicCompany(Valencia、CA)から購入した。非晶質ダイヤモンドで被覆したドリルビットは、Harvey Tool(0.035インチのカッター直径、Rowley、MA)から得た。蛍光参照スライドは、Microscopy/MicroscopyEducation(McKinney、TX)から購入した。Binderclips(5/32'インチ容量、1/2'インチサイズ)は、Officemax(Itasca、IL)から購入した。ピペッターは、EppendorfInc.(Westbury, NY)から得た。Fisherbrandピペッターチップは、F isher Scientific(Hanover Park、IL)からのものであった。
【0535】
チップデザインおよび製造。Slipchipは、以下の変更を除いて、この出願に他に記述されたとおりのSlipChpiのガラスエッチング製造を使用して製造した。約25分のエッチングにより、約30μmの深さを得た。エッチングの後、テープをプレートから取り外した。次いで、プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。親水性ブリッジ表面は、底面プレートだけに親水性ブリッジ部分の黒いパターンを含むフォトマスクを整列させ、次いで他に記述したガラスエッチング製作手順を行うことによって作製した。アクセス穴は、ダイヤモンドドリルビット0.035インチの直径で穿孔した。エッチングされたガラス板の表面をMillipore水、続いてエタノールで洗浄して、シラン化の前に酸素プラズマ処理に供した。親水性ブリッジパターンのガラス表面は、シラン化されなかったので、これは、親水性ブリッジパターン上のクロム層を取り除いた後にも親水性のままであった。次いで、プレートをMillipore水およびエタノールでリンスして、徹底的に窒素ガスで乾燥した。
【0536】
SlipChipの組立て。SlipChipは、FC−40および0.4mg/mlのRfOEGの混合物下で組み立てた。FC−40および0.4mg/mlのRfOEGの50μlの混合物を、パターンを上に向けて、ペトリ皿の底面プレート上に広げた。次いで、上部プレートを、パターンを下に向けて、底面プレートの上部に置いた。2枚のプレートを、互いに対してこれらを移動することによって位置に整列させ、次いで、2つのマイクロバインダークリップを使用することによって固定した。SlipChipは、表面上の余分のFC−40を取り除いた後で、使用準備ができていた。
【0537】
食品色素実験。食品色素実験のために使用される全ての溶液は、使用の前に0.45μmPVDF(登録商標)注射器フィルターで濾過した。2つの食品色素(青および黄色、Ateco,Glen Cove、NY)を、20の試薬チャネルにピペット負荷した。それぞれのチャネルを負荷するために、10μLの色素を、色素溶液が空気の供給チャネルから出てくるまで、ピペットを使用して入口を介して押した。試薬を負荷した後に、Chipをすべらせて、親水性部分上に2つの試薬ウェルを整列させた。親水性ブリッジは、ウェルを左右にわずかにすべらせることによって、完全に濡れた。次いで、2つのウェルが親水性表面上に置かれた試薬によって生じた湿潤層によって接続された。
【0538】
蛍光染料を使用する拡散試験。負荷手順は、食品色素実験のためものと同様であった。Alexa488(44μM)およびMPTS(400μM)を10mM TRIS緩衝液に溶解した。Alexa488溶液およびMPTS溶液を装置に負荷した。装置の一方の半分にある10個の入口にはAlexa488を負荷し、それぞれの経路は、10個のウェルを含んだ。装置の他方の半分にある10個の入口には、MPTSを負荷した。蛍光色素を含むウェルを親水性ブリッジで接続した後で、拡散過程を10×0.4NAライカ対物レンズおよびHamamatsuORCAERカメラを備えたライカDMI6000顕微鏡を使用して暗所において3時間撮像した。GFPおよびDAPIフィルターを使用してAlexa−488およびMPTS蛍光を収集した。Alexa488およびMPTSについて30msの露光時間を使用した。
【0539】
蛍光の測定。イメージは、Metamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(Universal Imaging)を使用して取得して、解析した。蛍光シグナルの強度を抽出するために、100ピクセル×100ピクセルの領域を、関心対象の全てのウェルの中央において選択した。顕微鏡を較正するために、GFPおよびDAPIのための蛍光参照スライドの蛍光強度を記録して、バックグラウンド補正のために使用した。
【0540】
データ分析。強度測定を較正するために、バックグラウンド強度は、全ての蛍光イメージから最初に減算した。次いで、それぞれのウェルの強度は、それぞれのウェルの中心に位置する100ピクセル×100ピクセルの領域の積分強度から抽出した。
【0541】
大腸菌(Escherichia coli)での抗生物質のスクリーニング実験。プラスミドpDsRedをもつ大腸菌(Escherichia coli)は、BenjaminS. Glick教授(シカゴ大学)によって提供された。細胞のストックは、−80℃に保存した。それぞれの実験の前に、ストックを、100μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレート(2%(wt/vol)のAlfaAesar寒天粉末を含むディフコLBBroth、Miller)上に画線した。プレートを30℃にて一晩インキュベートした。コロニーをアンピシリン(100μg/ml)と共に3mLのLBを含む培養チューブに接種し、30℃(160rpm)にて一晩二次培養した。装置に負荷した細菌培養物を、一晩培養から再接種して、対数期まで培養した。2.5×10
7細胞/mlの細菌細胞密度を、親水性ブリッジ装置の入口の半分を経て負荷した。異なるクロラムフェニコールおよびカナマイシンの濃度(それぞれの抗生物質について0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlおよび100μg/ml)を、装置の他方の半分に負荷した。空気の供給チャネルを吸引乾燥し、大腸菌(E.coli)増殖のために空気を輸送させた。細菌および抗生物質を含むウェルを親水性ブリッジと接続させた後、大腸菌(E.coli)の増殖を10×0.4NAライカ対物レンズおよびHamamatsu ORCAERカメラを備えたLeica DMI6000蛍光顕微鏡を使用して暗所において16時間撮像した。Texas赤色フィルターを使用して、DsRed蛍光を収集した。40msの露光時間を使用した。イメージは、Metamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(UniversalImaging)を使用することによって取得して、解析した。細菌増殖を比較し、および定量化するために、閾値領域の割合を、一対のウェル毎に測定した。これは、「赤い」ピクセル数を閾値化し、および測定することによってイメージにおける特徴を選択することによって行った。閾値領域の割合は、測定領域における全部のピクセル数に対する赤いピクセル数の割合を表す。ここで、全てのイメージについての全ての測定領域は、同じであった。
【0542】
結果
同時に10の独立した相互作用実験を行うためのSlipChipを調製した。それぞれの実験は、9の二組の試験を含んだ。1つの試験において、2つのウェル(それぞれ1.5nL)を300μm×40μmのサイズである、サブミクロンの厚さの親水性ブリッジによって分離する。対形成ウェルを含む上部プレートを、マイクロチャネルおよび親水性の四角のパターンを含む底面プレートと共に整列させた。対形成ウェルを含む2本の列には、細胞Aを含む青い溶液および細胞Bを含む黄色溶液を別々に負荷した。負荷の後、上部プレートウェルを底面プレートに対してすべらせて、コンパートメントへの連続流を中断し、親水性ブリッジを介して接続された対形成ウェルを生じて拡散を開始する。小分子は、サブミクロンの厚さの親水性ブリッジを介して拡散する。平衡時に、両方のウェルは、緑であった。細胞AおよびBは、親水性ブリッジを横断しないが、これらが分泌する化学物質は、親水性ブリッジを介して交換することができる。
【0543】
親水性ブリッジ装置を食品色素で試験した。青色および黄色の色素を別々に20の負荷チャネルに負荷した。すべらせた後に、2つのウェルを親水性ブリッジによって接続した。連絡親水性ブリッジを介した2つのウェル間の2つの食品色素の双方向の拡散は、ウェルの両方の行における均一な緑色によって明示された。
【0544】
もう一つの実験において、1セットのウェルには、まず最初にMPTSを負荷して、これらをAlexa488(Green)で満たしたウェルと対にした。2つの色素は、接続されたブリッジの親水性表面を介して互いの方へ拡散した。重ね合わせた明視野および蛍光イメージは、1セットのウェルから他方への蛍光色素の拡散を示す。完全な混合には、Alexa488について〜55分およびMPTSについて〜45分後に達した。
【0545】
抗生物質のスクリーニングを親水性ブリッジ装置において実行した。明視野イメージおよび蛍光イメージは、親水性ブリッジの1方の側のウェルにおける大腸菌(E.coli)増殖を示した。クロラムフェニコール(C LR)およびカナマイシン(Kana)を他方の側のウェルに負荷した。それぞれの抗生物質についての濃度は、0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlおよび100μg/mlであった。大腸菌(E.coli)細胞(2.5×10
7細胞/mlの密度)を一対の行のウェルの最初のセットに負荷した。データは、大腸菌(E. coli)を抗生物質の異なる濃度に最初に曝露した時から16時間後に解析した。増殖した大腸菌(E.coli)DsRedについての閾値領域を選択して、閾値領域の割合をウェルのそれぞれの対について測定した。閾値領域の割合は、異なる抗生物質濃度下での増殖の相違を間接的に表す。
【0546】
一定の態様において、SlipChipの製作および操作は、潤滑液を必要としない。SlipChipは、潤滑液がプレートの間に分配されることなく作動することができる。このような「乾燥」操作のためには、反応流体が装置の表面に対して高い接触角(たとえば、130度を上回る角度)を有することが好ましい。この高い接触角は、ナノ多孔性重合体および微小孔構造重合体の使用、ブロック共重合体の相分離、表面被覆、表面粗さおよび多数のその他のアプローチを含む複数のアプローチおよびこれらの組み合わせを介して達成することができ、水性溶液について、これらは、疎水性表面および超疎水性表面を作製するためのアプローチとして公知である。多孔性重合体を、例えばLevkinPA、Svec F、FrechetJMJ、Advanced Functional Materials、2009 19(12):1993−1998に記載されているように、超疎水性表面を作製するために使用してもよい。潤滑液を伴わずに作動するSlipChipの例を記述する。
【0547】
SlipChipsは、ガラス型を使用して熱エンボス加工によってプラスチックから作製した。ガラス型の製造−ガラス型は、ガラスエッチングによって製造した。クロムおよびフォトレジストコーティングをもつガラスプレート(厚さ3mm)(TelicCompany、Valencia、CA)をSlipChipデザイン(パターンは、透明なバックグラウンド上の影であった)を含むフォトマスクによって被覆して、1分間UV光に曝露した。曝露直後、ガラスプレートを、これを0.1mol/LNaOH溶液に2分間浸漬することによって現像した。UV光に曝露されたフォトレジストの領域のみが溶液に溶解した。露出された下にあるクロム層を、クロム腐食液(0.6:0.365mol/LHClO
4/(NH
4)
2Ce(NO
3)
6の溶液)を使用して取り除いた。結果として、デザインにおけるパターンは、なおもクロムおよびフォトレジストコーティングによって被覆された。プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥して、ガラスプレートの裏をPVCシールテープ(McMaster−Carr)を貼ってガラスの裏側を保護した。次いで、テープを巻いたガラスプレートをガラスエッチング溶液(1:0.5:0.75mol/LHF/NH
4F/HNO
3)を含むプラスチック容器に慎重に浸漬してプレートのむき出しのガラス表面(フォトレジストおよびクロムコーティングの両方が除去されたプレート上の領域)をエッチングした。40℃の一定の温度の水浴シェーカーを使用してエッチング速度を制御した。エッチング時間(〜55分)を制御することによって、エッチングの深さは、60μmであった。次いで、パターンを被覆したフォトレジストおよびクロムコーティングを、エタノールおよびクロム腐食液によって連続して除去した。結果的に、エッチングされなかったパターンが60μmの高さの柱として立っていた。次いで、ポジティブなパターンをもつガラスプレートを、もう一つのクロム層で被覆した。穴のアレイ(5μm×5μm)は、193nmにて作動するResoneticsRapidX250エキシマレーザを使用してクロム層を切除することによって形成した。フルエンスは、ガラスに影響を及ぼさずに、単一のパルスでCrの150nm層を切除するように調整した。ガラスを、その後にエッチマスクとしてCrを使用してHFでエッチングした。生じる穴は、熱エンボス加工されたプラスチック小片におけるポストとなり、これが有意に接触角を上昇させる。プラスチックSlipChipsの製造−ガラス
型を使用してチップパターンを1/16”フッ化エチレンプロピレン(FEP、McMaster−Carr)にエンボス加工した。チップをCarver 3889ホットプレスにおいて260℃、400lb/in2にて20分間エンボス加工した。圧力を除去する前に、チップを室温に迅速に冷却した。
【0548】
一定の態様において、プラスチックSlipChipsの操作は、潤滑液なしで行うことができ
る。行き止まりの充填法を、乾燥FEP SlipChipに水性溶液を負荷するために採用した。いかなる潤滑液も存在することなくFEP SlipChipを組立てた後、SlipChipを2つのガラススライドの間に挟んだ。上部ガラススライドは、SlipChipの入口に整列されたアクセス穴を有した。「サンドイッチ」は、紙用クリップで固定した。溶液は、すべて、入口へ1μL容積を直接ピペットで取ることによって負荷した。ピペット先端を、上部ガラススライドのアクセス穴を介して入口に押しつけた。負荷プロセスは、溶液が行き止まりに到達したときに、自発的に止めた。0.1MFe(NO3)3を試薬として使用して、0.3MのKSCNを試料として使用した。負荷の後、SlipChipの上部プレートを底面プレートに対してすべらせて、溶液を合わせると共に、Chipは、プロセスの全体にわたって2枚のガラスプレートの間に挟まれているままにした。Fe(NO3)3溶液とKSCN溶液との間の反応は、Fe(SCN)3を含む種々の錯体の赤い溶液を生じた。すべらせた後に残される相互汚染または液体残留物についての証拠は何ら見いだされず、赤い錯体は、ダクトにおいて形成しなかった。
【0549】
乾燥FEP装置における単純な化学的反応の1つの例において、SlipChipの2枚のプレートを潤滑液の非存在下において整列させ、試薬および試料のための流体経路を形成した。試薬および試料溶液を、ピペットで取ることにより、SlipChipに負荷した。SlipChipをすべらせて、試料と試薬を合わせた。反応の進行は、透明から赤への変色を観察することによってモニターした。
【0550】
一定の態様において、PCRおよびその他の技術によるデジタル検出のために、マルチボリューム確率論的制限をSlipChipで行うことができる。本発明者らは、デジタル検出を使用して大きな動的範囲にわたって標的種または分子を定量化するための、SlipChipののマルチボリューム確率論的制限方法を開発した。検出は、PCR、細胞培養、酵素および等温増幅法を含む種々の方法を介して達成することができる。確率論的制限の原理は、特許出願PCT/US/2008/071374、StochasticConfinement toDetect, Manipulate, and Utilize Molecules and Organismsにおいて説明されている。マルチボリューム確率論的制限の潜在的適用は、診断すること、疾患生物マーカーをモニターすること、または検出すること、環境たは食品試料を試験すること、並びに培養またはその他の生物学的試料を単離すること、特徴づけること、および解析することを含むが、限定されない。
【0551】
デジタルPCRは、一般に同じ容積のマイクロウェルまたは乳濁液を使用して、高精度および大きな動的範囲を達成するために、非常に多くのコンパートメント(1000〜数100万に)を必要とする。SlipChipは、複数容積のウェル内でデジタル測定を行うようにデザインすることができる。単一の容積の方法上回るこの方法のいくつかの利点は、より少ないウェルでの大きな動的範囲および異なる大きさのウェルのための重複した範囲によって達成される精度の増加を含む。複数反応容積をもつウェルのアレイを、完全な所望の検出の範囲を達成するために、単一のチップ上にデザインすることができる。本アプローチは、段階希釈法に類似し、統計分析を同じ数学的計算で行うことができる。マルチボリュームアプローチの代わりに、SlipChipを使用して、段階希釈法、続く解析を行うことができる。マルチボリュームアプローチは、微生物の検出および数え上げのために、IDEXX Quanti−Tray(登録商標)/2000など、細菌学において使用されてきた。これらのおよびその他の適用は、またSlipChipで実施することができる。マルチボリュームアプローチは、SlipChipでのデジタルPCRに適用することができる。3つの可能な操作のモードは:(1)PCR試薬と使用前に混合した試料のチップへの注入、次いでデジタルPCRを行うためのすべりによる区画化。(2)任意に多重化形式において、プライマーなどの別々に事前に負荷する、または使用者が負荷する試薬および次いで反応を開始するためにすべりを経て試料と混合すること。(3)上記のものの組み合わせ。
【0552】
標準的なPCR技術に加えて、SlipChipは、ループを媒介した増幅(LAMP)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、核酸配列に基づいた増幅(NASBA)、転写を媒介した増幅(TMA)、ヘリカーゼ依存的増幅(HAD)、ローリングサークル増幅(RCA)および鎖置換増幅(SDA)などの等温増幅技術に適合性である。マルチボリュームSlipChipは、このようなプラットフォームをデジタル化するために使用することができる。マルチボリュームSlipChipは、細胞の解析または検出を含む、確率論的制限(特許出願PCT/US/2008/071374、StochasticConfinement to Detect,Manipulate, and Utilize Molecules and Organisms)に適合性である、その他の系に適用することができる。
【0553】
マルチボリュームSlipChipのための適用の1つの例は、HIVウイルスの負荷の測定である。ポイントオブケアにおけるHIVウイルスの負荷測定については、1つの所望の目標は、全ての範囲にわたって少なくとも3倍の濃度変化を区別する能力と共に、500〜1,000,000HIV粒子/血漿のmLの動的範囲である。これを満たす系の例が本発明者によって証明された。本実施例は、50nL容積の128ウェル、10nL容積の128ウェル、2nL容積の256ウェルおよび0.4nL容積の512ウェルで構成される。より多数のより少ない容積のウェルを、分解能を増加させるために使用することができ、またはあるいは、系を較正するために、内標準と共に使用することができる。HIVウイルス粒子当たり2コピーのRNAに相当すると、このデザインは、200HIV粒子/mLのより低い検出限界および600−3,500,000HIV粒子/mLの3倍の分解能を達成することができる動的範囲を有し、および範囲の多くにわたってその分解能を大いに超えるだろう。この算出は、試料調製の間に試料喪失および濃度の効果について調整することを必要とし、これは、例えば、異なる色のプローブを使用して、または特定のウェルに事前に負荷された異なるプライマーを使用して、同じ装置で検出される内標準を使用して行うことができる。
【0554】
このデザインは、看護試験の場所で適用することができる。あるいは、40−10,000,000粒子/m Lの範囲の測定が必要とされるかもしれない。装置を、この範囲を達成するようにデザインすることができる。このような装置の1つの例は、より低い検出限界のための75μLの総試料容積およびほぼ0.25nLである最も小さなウェル容積を使用する。試料を事前に濃縮することができると、より少ない容積を使用さできるだろう。
【0555】
デジタル測定のためのマルチボリュームSlipChip法は、また感染負荷についての正確な情報がB型肝炎ウイルス負荷などのために有用であるその他の疾患に適用することができる。
【0556】
上記されたものに類似のレイアウトを、肺炎の原因を診断することなどの、その他の適用のために使用することができる。肺炎は、多くの異なる種によって生じ得るので、正確な診断には、潜在的病原体の大多数を検出するために、非常に多重化された試験を必要とする。これは、また、高レベル(下気道の細菌感染に対応する)から低レベル(上部気道の通常の細菌コロニー形成に対応する)を区別するために、定量化を必要とする。デザインを16の同等のセクションに分解能することによって、細菌およびウイルスの16の異なる種を、およそ1000倍の濃度範囲にわたって検出することができる。肺炎検出のための代わりのデザインは、潜在的ウイルス種に対する低い検出限界、並びに潜在的細菌原因の検出およびコロニー形成対感染の区別について十分に大きな動的範囲が可能だろう。デザインは、ウイルス検出のために12×200nLウェルおよび12×50nLウェルの8セットを含むだろう。これらのセットは、約1000粒子/mLから約30,000粒子/mLの検出範囲を有するだろう。これは、また、細菌検出およびより正確な定量化のために24×25nLウェルおよび24×2.5nLウェルの8セットを含むだろう。これらのセットは、その範囲の多くにわたって3倍の分解能で、約4000細菌/mLから約800,000細菌/mLの検出範囲を有する。検出範囲およびデザインは、必要に応じて、ウェルサイズまたは数を変更すること、または試験される試料を事前に濃縮することを含む、試験の要求を満たすように調整することができる。既存のデジタルPCR文献において証明されているように、このアプローチを、リアルタイムPCRが適用された任意の適用に使用することができる。このアプローチでは、デジタル解析を、例えば複数の試料(例えば血液、尿または痰)を添加すること、もしくは同じ試料で複数の試験を実施すること、または組み合わせによって、単一の装置での多重化と組み合わせることができる。
【0557】
装置をデザインし、および結果を解析するために、いくつかの方法またはこれらの組み合わせを使用することができる。装置デザインは、所望の検出範囲および範囲にわたって達成可能な分解能の両方に依存する。1つの方法は、以下方程式に示したように「最も確度の高い数(MPN)」の形態で濃度を算出するために、ポアソンまたは二項分布に基づいた統計的なアプローチを使用する:
【数4】
式中、n
i第は、i番の希釈/ウェルサイズにおけるウェルの合計番号であり、s
iは、そのレベルにおける無菌の/空の/不活性のウェルの数であり、v
iは、そのレベルにて含まれる本来の試料溶液の画分であり(それで、10の因子によるウェル容積における10倍の希釈または減少は、0.1のv
iについての値を与えるだろう)、およびdは、本来の濃度であるので、方程式は、dについて解くことを必要とする。
【0558】
より低い検出限界は、ウェルの全てに含まれる総試料容積に依存的である。検出の上限は、試料容積および最も少ない容積におけるウェルの数によって設定される。いくつかの方法またはこれらの組み合わせを、与えられた結果のために信頼区間(CI)を確立し、および系の分解能を決定するために使用することができる。CI値は、迅速に得ることができるので、方程式に基づいた近似値は、有用であるが、これらは、平均近似値だけであるので、与えられた結果に対して正確ではないだろう。これらは、システム/装置デザインを、所望の性能が確実に合理的に予想されるように方向付けるために有用である。一般に使用される方法のもう一つのセットは、全ての潜在的結果について実際の確率を利用するので、これらは「正確な」方法として公知である。これらの方法は、一般に、これらの作者に対して命名されたClopper−Pearson(CP)およびSterne法と呼ばれる単一の希釈/容積系に適用された既存の研究主に基づいている。CIは、与えられた系の分解能を決定する使用することができ、これは、ウェルの数および希釈因子に依存的であるので、所望の分解能は、またウェルサイズおよび数を支配するだろう。以下の不等式は、分解能の因子/倍数を決定するために使用される:
【数5】
式中、2つの辺が等しい場合、d1/d2=X、これは、分解能の因子/倍数であり、および典型的には、全体に記述された実施例においてほとんど3倍であるようにセットされる。
【0559】
いくつかのSlipChipデザインは、回転SlipChip装置、積み重ねられた多層SlipChip装置および1つのもしくは2つの方向にすべりを必要とする装置を含むマルチボリューム確率論的制限を実施するために使用することができる。異なる容積のウェルを、同じ層において、または複数の層においてウェルおよび貫通孔を組み合わせることによって作製することができる。加えて、異なる容積のウェルは、同じ深さだが、異なる横方向寸法のウェルを作製することによって、またはウェルの深さを変化させることによって作製することができる。一定の容積を保持するが、ウェルの深さを増加させることにより、これらの横方向寸法が減少し、ウェルの密度を上昇させるために有用である。熱膨張を必要とする適用については、最近の論文に記載されているように、装置は、ウェルが潤滑液または別の液体を含む貯蔵器と接触させられるように、任意に計画することができる。
【0560】
1つの例において、装置は、50nL容積の128ウェル、10nL容積の128ウェル、2nL容積の256ウェルおよび0.4nL容積の512ウェルを含む。より多数のより少ない容積のウェルを、分解能を増加させるために使用することができ、またはあるいは、系を較正するために、内標準と共に使用することができる。HIVウイルス粒子当たり2コピーのRNAに相当すると、このデザインは、200HIV粒子/mLのより低い検出限界および600−3,500,000HIV粒子/mLの3倍の分解能を達成することができる動的範囲を有し、および範囲の多くにわたってその分解能を大いに超えるだろう。この算出は、試料調製の間に試料喪失および濃度の効果について調整することを必要とし、これは、例えば、異なる色のプローブを使用して、または特定のウェルに事前に負荷された異なるプライマーを使用して、同じ装置で検出される内標準を使用して行うことができる。PCR適用のためには、このデザインは、任意に、油を含むより小さなウェルを含み、水性溶液を含むより大きなウェルと接触させられる。より小さなウェルをより大きなウェルと接触させたときに、水性溶液は、コンパートメントにおける油によって囲まれた液滴を自発的に形成して、熱サイクリングの間に部屋を熱膨張することができる。ウェルおよびダクトは、上部および底面プレートに別々にパターン化することができる。ウェルは、この出願において他で記述した技術によって製造することができる。いくつかのデザインにおいて、ウェルは、充填を可能にするために連続流体経路を生じるように、初めにダクトと重なる。充填は、ピペットで取ること、またはその他の機械的もしくは化学的被駆動圧力を使用することによって達成することができる。行き止まり充填または出口としての貫通孔を、全てのチップを均一に満たすために使用することができる。SlipChipは、たとえば装置の回転動作によって、分離した反応容積の中にすべらせることができ、異なる容積のコンパートメントが同時に生成する。
【0561】
ガラスにおいて作製されたマルチボリューム装置の1つの例において、装置は合計で135ウェルで、、それぞれの容積の15ウェルを含み;容積は:0.25nL、0.72nL、1.95nL、5.24nL、14.1nL、38.1nL、103nL、278nLおよび511nLである。これは、少なくとも3倍の分解能にて、約800−2,400,000粒子/mLの動的範囲で、約200の粒子/mLの検出限界を提供する。
このSlipChipを製造するための手順は、以前の研究において記述した手順に基づいた。一般に、構造は、フォトリソグラフィーを使用することによってパターン化して、次いでガラスエッチング溶液(1:0.5:0.75mol/LHF/NH
4F/HNO
3)を使用することによってエッチングした。装置は、疎水性表面を提供するために、ジクロロジメチルシランによってシラン処理した。オレンジ食品色素の溶液を装置に注入して、異なる容積のウェルをすべらせた後に生生した。
【0562】
もう一つのデザインにおいて、装置は、88の大きなウェル、272の培地ウェルおよび216の小さなウェルを有する。本デザインは、HIVウイルス負荷の定量化に適用することができる。HIV粒子当たりRNAの2つのコピーおよびそれぞれ50、5および0.5nLのウェル容積を考慮すると、このデザインは、約250HIV粒子/mLの検出限界および少なくとも3倍の分解能にて約800−3,300,000HIV粒子/mLの動的範囲を与え、範囲の多くにわたってより優れた分解能である。個々のウェルサイズについての全体の範囲は、検出範囲の重複のため、より高い精度を有する。
【0563】
デジタル測定を行うための環状SlipChipsの2つの例を記述する。第1の例において、SlipChipは、少なくとも3倍の分解能にて、800−3,300,000粒子/mLの総動的範囲(4倍の濃縮後)を与えるために、それぞれ50nLの88ウェル(動的範囲950−2.5×10
4粒子/mL)、それぞれ5nLの272ウェル(動的範囲3.0×10
3−3.5×10
5/mL)およびそれぞれ0.5nLの216ウェル(動的範囲3.8×10
4−3.3×10
6/mL)を含むHIVウイルス負荷を測定するようにデザインした。第2の例において、SlipChipは、16の領域:ウイルスおよび非コロニー形成細菌検出のための約800−4×10
5粒子/mL検出範囲についての6×400nLウェルおよび26×50nLウェルを含む8領域、並びに細菌検出のための約10
3−4*10
6粒子/mLの検出範囲での5×400nLウェルおよび8×50nLウェルおよび27×5nLウェルを含む8領域を含む、肺炎病原体を同定し、および定量化し、および細菌コロニー形成と感染との間を区別するようにデザインした。これは、少なくとも範囲の中間の部分にわたって3倍の分解能を達成して、感染をコロニー形成から区別することができる。
【0564】
多重化検出のためには、装置を複数の領域に分離することができる。異なる試料のために異なる入口を、それぞれの領域を満たすために使用することができる。加えて、異なるプライマーおよび化学を異なる領域に事前に負荷することができる。領域は、同じ感度および動的範囲または異なる感度および動的範囲を有してもよい。異なる感度は、たとえば、肺炎における病原体の多重化発見のために必要であし、この場合、800−10
5/mL範囲が低レベル検出および適度な定量化のために必要であり、またコロニー形成を感染から区別するための定量化の改善のために、10
2−10
6/mLの範囲における検出がS.肺炎およびインフルエンザ菌(H.influenzae)タイプbなどの病原体のために必要である。たとえば、1つのデザインにおいて、16の領域:ウイルスを検出するための数百から約40,000粒子/mLにの検出範囲のための6×400nLウェルおよび26×50nLウェルを含む8領域、並びに細菌を検出し、および感染をコロニー形成と区別するための約1000〜400,000粒子/mLの検出範囲のための5×400nLウェルおよび8×50nLウェルおよび27×5nLウェルを含む8領域がある。本デザインは、病原体を肺炎を引き起こす病原体の検出および定量化に適用することができる。
【0565】
SlipChipは、比色または蛍光読み出しを含む種々の読み出し技術と適合性である。これらの読み出し方法は、リアルタイムにおいて、または一定のエンドポイントにて、いずれかで適用することができる。一定の態様において、使用者は、PCR、等温増幅および免疫アッセイなどのさらなる解析のための試料のミリリットルスケールから試料を濃縮し、および試料調製を行うSlipChipプラットフォームを使用することができる。この方法は、診断すること、疾患生物マーカーをモニターすること、または検出すること、環境たは食品試料を試験するための手段をに提供するように、その他のSlipChip適用と共に適用することができる。特定の態様において、SlipChipは、高−スループットまたはコンビナトリアル様式で複合体粒子を合成するために使用することができる。SlipChipは、表層装飾および保護、食品添加物、徐放性カプセル、クロマトグラフィー、フローサイトメトリー、薬物送達および移植のための細胞のカプセル化を含む多くの適用で異なる重合体およびヒドロゲルから作製した固体またはヒドロゲル粒子を含む、粒子を製造するために使用してもよい。正確なサイズ、形状および組成物をもつ粒子は、MEMS(微小電子機械システム)、フォトニクス、診断法および組織工学における適用を見いだされてきた。しかし、シード重合のような既存の技術を使用するこのような粒子の合成は、時間がかかり、および高価である。マイクロフルイディクスは、球状粒子もしくは非球状粒子またはさらにヤヌス(janus)粒子を作製するための強力なツールであることが判明した。しかし、これらの方法で任意の形状を形成する、または複合体の粒子を形成することは困難である。一般に、SlipChipは、型としてSlipChipを使用することによって、むしろ任意の粒子を作製するために使用することができる。方法は、型を満たすためにSlipChipを使用すること、型の領域を満たすために使用したダクトをすべらせてどけること、および粒子を形成することを含む。粒子の形成を誘導する方法は、熱エネルギー、光学的、紫外線、化学的バインダーおよびその他を使用する硬化を含み得る。粒子を形成する方法およびSlipChip型を製作する、またはコーティングするための材料は、LiquidiaTechnologiesによって使用されたものから適応され得る。粒子形成の間のSlipChipにおける潤滑液、たとえばフッ化潤滑液の使用は、形成後に粒子の放出を実質的に促進し得る。接触の際に粒子材料の前駆体で満たされたslipchipのいくつかの領域をすべらせること、および次いで粒子形成を誘導することを、複合体形状および組成の複合体粒子を作製するために使用することができる。粒子は、すべりによって、または単にSlipChipを分解することによって放出してもよい。勾配特性をもつ粒子を、共に異なる特性をもつ前駆体と一緒にすることによって作製してもよい。
【0566】
一定の態様において、SlipChipプラットフォームを使用して、マトリックスslipchipを呼ばれ、n+mの負荷工程でn×m反応を行うことができる。2、3および4成分を混合するようにデザインされたSlipChipを記述する。細菌細胞での2つの実験を記述する:マトリックスSlipChipで細菌細胞を培養すること、およびマトリックスSlipChipで細菌−細菌相互作用をスクリーニングすること。強調する特徴は、高スループット:<4cm×4cmスペースにおける1024の平行した実験;貴重な試薬および試料を節約する;正確な時間および容積制御での複数回の混合を含み;装置は、再使用可能および再構成可能であり:それぞれの使用の後、装置は、第2の使用のために開くこと、および洗浄することができる。8つの入口の上部プレートは、中心的デザインは同じであるので、必要に基づいて、8つの入口、16の入口および32の入口などの異なる数の入口を含む異なる底面プレートと共に使用することができ;スケールアップ培養、検出、その他のためにナノリットル液滴の含量を抽出するために装置を開き、または実験の結果にアクセスするためにテープで封をした層などの透水層を使用し;十分な空気の供給で、および蒸発のないナノリットル好気的細胞培養または嫌気培養;空気の供給チャネル;酸素運搬のナノポストパターン;再生し、およびデータ品質を改善するために複製を容易に作製し、多くの複製ウェルにより、さらなる使用法および解析のためにより多くの生成物を装置から抽出することを可能にし;重力または磁力による1つのプレート上のウェルからもう一つのプレート上のウェルへのビーズ、細胞の転送;ここで記述された装置および方法は、多数の適用のために使用することができる。特に、SlipChipは、特にタンパク質結晶化、多重ゲノムシーケンシング、細胞間相互作用、タンパク質−タンパク質相互作用および薬物スクリーニング、その他の高スループットスクリーニングを行うためのプラットフォームとして使用することができるるだろう。
【0567】
マトリックスSlipChipは、多数のさらなる適用を有する。ThermoFluorAssaysおよびタンパク質安定性を反映するその他のアッセイ(例えば、1‐アニリノナフタレン‐8‐スルホン酸(ANS)に類似する疎水性色素の蛍光をモニターすることによる)を、温度または化学的条件の変化の関数として、タンパク質分子の安定性をモニターするために使用することができる。これらのアッセイは、薬物発見におけるリガンド結合をモニターする、および結晶学のためのリガンドおよび緩衝液条件の最適化のために有用である。SlipChipおよびマトリックスSlipChipが、CopyNumber Variation、Gene Expression、Protein 結晶lization、NextGen SequencingのためのSampleQuantification、Single Cell Gene Expression、SNP Genotypingの測定を含むFluidigmによって市販されたものを含むが、限定されない、多数のさらなる適用を可能にするだろうことは、当業者にとって明らかだろう。
【0568】
マトリックスSlipChipを上部プレートおよび相補的パターンをもつ底面プレートで構成した。これは、クロミウムおよびフォトレジスト層(TelicCompany、Valencia、CA)をもつソーダ石灰ガラスプレートを使用することによって製造した。ガラスプレート上のマイクロチャネルおよびウェルは、標準的な写真平板、およびウェット化学エッチング技術を使用することによって作製した。簡潔には、フォトレジスト層をもつガラスプレートを、マイクロチャネルおよびウェルのデザインを含むフォトマスクと共に整列させて、1分間UV光に曝露した。フォトマスクを取り除いて、ガラスプレートを2分間0.1mol/L NaOH溶液にそれを浸漬することによって現像した。露出された下にあるクロミウム層を、クロミウム腐食液(0.6:0.365MのHCIO
4/(NH
4)
2Ce(NO
3)
6の溶液)を使用して取り除いた。プレートをMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥して、ガラスプレートの裏をPVCシールテープ(McMaster−Carr)でテープしてガラスの背側を保護した。次いで、テープを巻いたガラスプレートをガラスエッチング溶液(1:0.5:0.75mol/LHF/NH
4F/HNO
3)を含むプラスチック容器に慎重に浸漬して、クロミウム層が除去された後に曝露されたガラス表面にエッチングした。40℃の一定の温度の水浴シェーカーを、エッチング速度を制御するために使用した。〜25分のエッチングにより、〜30μmの深さを生じた。エッチングの後、テープをプレートから取り外した。次いで、プレートを徹底的にMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。アクセス穴を、ダイヤモンドビット0.030インチの直径で穿孔した。エッチングされたガラス板の表面をMillipore水、続いてエタノールで洗浄して、シラン化の前に酸素プラズマ処理に供した。
【0569】
SlipChipにおいて好気的細胞を培養するために、ナノポストパターンを、酸素供給を改善するために上部プレート上に製造した。ナノポストパターンを作製するために、30μmパターンにエッチングした後に、上部プレートを水で洗浄して、窒素ガスで乾燥した。我々は、本来のフォトレジストを利用して、クロミウム層は、エッチングされなかったこれらの領域をなおも被覆する。プレートをナノポストフォトマスクと共に整列させて、曝露された下にあるクロミウムを除去する工程を介して、同じ手順を上記の通りに行った。クロミウム層を除去した後に、上部プレートを1:0.5:0.75MのHF/NH
4F/HNO
3mol/L HF/NH
4F/HNO
3エッチング溶液に浸漬して、室温(〜23℃)にて30〜 90sの間エッチングして、表面上に所望のナノポスト高さを生じた。最後に、上部プレートおよび底面プレート(これは、ナノポストを有さない)をエタノールでリンスして、未現像のフォトレジストをはがし、クロミウムに腐食液を浸漬してクロミウム層をはがした。次いで、ガラスをエタノールおよびMillipore水でリンスして、窒素ガスで乾燥した。
【0570】
ガラスプレートを洗浄して、酸素プラズマ処理に供して、次いで、表面を前述したようにトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシランで3時間真空乾燥器におけるシラン化によって疎水性を与えた。シラン化の後、ガラスプレートを30分間120℃オーブンにおいて焼かれて、FC−3283のタンクに浸漬することによってリンスして、60℃オーブンにおいて一晩乾燥した。
【0571】
使用前に、マトリックスSlipChipの底面プレートおよび上部プレートを、石鹸、Millipore水およびその後に100%のエタノールで洗浄して、窒素で乾燥して、きれいなペトリ皿に、エッチングされたパターンを上に向けて置いた。50μの、0.4mg/mLRfOEG3でのL FC−40(3M)フッ化油を底面プレートの表面上に広げて、次いで、上部プレートを底面プレート上に置いた(サイドダウンのパターン化)。FC−40は、シラン化された表面を全面的に濡らして、2枚のプレートの間に広がる。2枚のプレートを互いに関してこれらをすべらせることによって整列させ、次いで、2つのマイクロバインダークリップを使用することによって固定した。SlipChipは、表面上の余分のFC−40を取り除いた後、用途の準備ができていた。マトリックスSlipChipの両方のプレートは、楕円のウェルを含んだ。ウェルは、およそ2nLの容積で、深さ30μmであるようにエッチングされた、200μmの幅および400μmの長さだった。接続マイクロチャネルは、長さ860μmおよび30μmの深さで、幅80μmであった。溶液を負荷する前に、チャネルおよびウェルの油を、装置の入口にて、真空を適用することによって吸い上げた。4つの食品色素(赤色、オレンジ色、緑色よび青色、Ateco、GlenCove、NY)をこれらの保存液から〜20倍希釈して、使用の前に0.45μmPVDF(登録商標)注入器フィルターで濾過した。溶液は、8つの入口から32の縦列のウェルに、ピペットを負荷した。それぞれのチャネルに負荷するために、8μLの色素を、色素溶液が出口から出てくるまで、ピペットを使用して入口を介して最初に押した。試薬を負荷した後に、最初に上部プレートをすべらせて、次いで左側にすべらせて、列において連続流体経路を形成した。同じ4つの食品色素溶液を左側から8つの入口を介して負荷して32列のウェルを満たした。列における全てのチャネルが完全には満たされるまで、ピペットを使用することによって、8μLの色素をChipに負荷した。一旦列が負荷されたら、上部プレートを再びすべらせ、上部プレート上の縦列の1024ウェルおよび底面プレート上の列の1024ウェルを混合した。
【0572】
本発明者らは、1つのコンパートメントにおいて2つを超える成分を混合することを組み込むために、以下の3−成分および4−成分マトリックスSlipChipをデザインした。食品色素実験は、同じ連絡チャネルを使用して隣接するウェルの2つのセットを負荷するためにさらなる洗浄工程が必要であったことを除いて、2−成分マトリックスSlipChipについて記述した類似の手順で行った。
【0573】
マトリックスSlipChipを混合する3成分の工程操作による工程において、底面プレートのウェルの第1のセットが満たされる。任意に、チップをすべらせて、同じダクトを底面プレートのウェルの第2のセットを満たすために使用する。SlipChipを、横列が整列されるようにすべらせて(たとえば、XおよびY方向に)、上部プレートのウェルを満たして、SlipChipを、ウェルが重なるようにすべらせて、2つの隣接する底面ウェルにおいて溶液を上部の溶液と十分に合わせる。
【0574】
マトリックスSlipChipを混合する4成分の工程操作による工程において、底面プレートのウェルの第1のセットを満たす。任意に、チップをすべらせて、ウェルの第2のセットを満たす。SlipChipを、横列が整列させられるようにすべらせて、上部プレートのウェルの第1のセットを満たす。SlipChipを、上部プレートの水平ウェルの第2のセットが満たされるようにすべらせる。連結チャネルを最初に緩衝液で洗浄したSlipChipを、。ウェルが重なるようにすべらせて、2つの隣接する底面ウェルの溶液を、2つの隣接する上部ウェルの溶液と合わせる。
【0575】
食用染料を使用する4成分マトリックスSlipChipの工程操作による工程において、第1の工程は、垂直ウェルの第1のセットを負荷した。第2の工程は、垂直ウェルの第2のセットを満たすためにすべらせて、続いて水平ウェルおよびダクトを整列させるためにすべらせる。次いで、水平ウェルの第1のセットを満たして、続いて水平ウェルの第2のセットのすべらせるて負荷し、最後に4ウェルの溶液を合わせるためにすべらせた。
【0576】
SlipChip上において異なる細菌細胞(好気性または嫌気性株を含む)の培養の成功は、薬物に対する細胞スクリーニング、細菌抗生物質の耐性、検知細菌定数および複数種群生相互作用、その他のさらなる研究のための基本的である。従来法と比較して、マトリックスSlipChipでは、単一細胞または細胞の小さな基を観察する、スループットを増加させる、並びに時間および試薬を節約するために、ナノリットル容積を使用することができる。
【0577】
マトリックスSlipChipのナノリットルウェルにおいて好気的細菌を培養し、栽培することができるには、使用者は、これらのウェルに酸素を連続的に供給することを必要とする。これは、以下の特徴によってSlipChipで達成された:単離されたウェルの培養細胞に、本発明者らは、水平ウェルおよびチャネルを接続して、生じる流体経路に空気を負荷して、呼吸チャネルを形成した。それぞれの単離されたウェルは、2つの近くの呼吸チャネルからその酸素供給を得ることができる。ウェルと呼吸チャネルとの間の距離は、240μmであった。マトリックスSlipChipには、非常に高い酸素の溶解性および優れた酸素透過性を有する注油油としてFC−40を使用した。ナノメートルからマイクロメートルの厚みのFC−40フィルムにより、酸素の輸送をサポートすることができる。呼吸チャネルの酸素供給効率は、2枚のプレート間のFC−40フィルムの厚みによって制限されるので、本発明者らは、上部プレート上にナノポストパターンを作った。これにより、約500nmから1.5μmにFC−40フィルムの厚みを増やした。この増大は、効率的にSlipChipにおける大腸菌DS赤血球の成長を増加させた。
【0578】
SlipChipにおける培養の均一性を以下に記述したように試験した:
【0579】
プラスミドpDsredをもつ大腸菌(Escherichiacoli)を得た。細胞のストックは、−80℃にて貯蔵した。それぞれの実験の前に、ストックを、100マイクログラム/ミリリットルのアンピシリンを含むLB寒天平板(2%(wt/vol)の寒天粉末を含むDifcoLB Broth、Miller、Al fa Aesar)に画線した。プレートを30℃にて一晩インキュベートした。コロニーを30℃(160rpm)にてアンピシリン(100マイクログラム/ミリリットル)を含む3mLのLB培地を含む培養チューブに接種し、一晩二次培養した。装置に負荷した細菌培養を一晩の培養から再接種して、対数期まで培養した。装置に細胞を負荷するときに、細菌細胞密度は、1.1×107細胞/mLに調製してウェル当たり〜22細胞を得た。
【0580】
32×32マトリックスSlipChipは、以前に記述したように調製した。細胞懸濁液を、上部プレートの8つの入口からのピペット負荷の前に振盪した。8μLの細胞懸濁液をそれぞれの入口に負荷した。負荷の後、装置をすべらせてチャネルから縦列のウェルを分離し、空気の供給チャネルとして役に立つようにチャネルおよび列のウェルを接続した。空気の供給チャネルの油を真空で除去し、大腸菌(E.coli)増殖のために空気を運び込んだ。
【0581】
マイクロバインダークリップを取り外して、32×32マトリックスSlipChipをペトリ皿に慎重に置いた。50μL FC−40を含む2つの小さなキャップおよ100μLH2Oを含むび1つの小さなキャップをSlipChipのそばのペトリ皿に保持し、ディッシュにおいて水分を供給した。ペトリ皿をパラフィルムで包んで、水分が逃げるのを避けた。大腸菌(E.coli)の成長は、10×0.4NAライカ対物レンズおよびHamamatsuORCAERカメラを備えたLeica DMI6000蛍光顕微鏡を使用して、暗闇において16時間、2時間毎に撮像した。テキサスレッドフィルターを、Dsred蛍光を収集するために使用した。40msの露光時間を使用した。顕微鏡を較正するために、テキサスレッドフィルターについての蛍光参照スライドの蛍光強度を記録して、バックグラウンド補正のために使用した。イメージを多次元取得機能を備えたMetamorphイメージングシステムバージョン6.3r1(UniversalImaging)を使用することによって取得して、解析した。細菌増殖を比較し、および定量化するために、測定サークルを、ウェルをカバーするように引いて、バックグラウンド基体での積分蛍光強度をあらゆるウェルについて測定した。32×32マトリックスのウェルを、それぞれ2×2ウェルで、16×16単位として分類して、それぞれの単位についての平均強度を3台の異なる装置(それぞれナノポストなし、426nmナノポストおよび940nmナノポスト)について集めた。結果から、ナノポストパターンがマトリックスSlipChipでの大腸菌(E.coli)の増殖を改善することができることを認められた。
【0582】
呼吸チャネルを備えた装置上の細胞培養については、細菌培養が負荷された垂直の単離されたウェル、並びに細菌ウェルに酸素を供給するために接続され、かつ空気が負荷される水平ウェルおよびチャネルがあった。上部プレート上のナノポストは、酸素交換を促進した。ナノポストは、20μm×20μmのサイズおよび高さ900nmであり、ナノポスト間の間隔は、80μmである。ナノポストは、装置内にFC−40油が満たされ、1μmを超える間隙を維持するだろう。この油は、通気性であり、呼吸チャネルおよび細菌ウェルからの酸素の交換を促進する。異なるナノパターンの高さを、大腸菌(E.coli)DSレッドを培養するために使用した:ナノポストなし;426nmナノポスト;940nmナノポスト。ナノポストの高さを増大すると、装置におけるより優れた、およびより均一な増殖がある。
【0583】
16の入口をもつ(それぞれの入口は、溶液を2つの縦列に分けた)32×32マトリックスSlipChipを前述したように製造した。装置を、流体経路が縦列において形成されるように、整列させた。3つの抗生物質、クロラムフェニコール、カナマイシンおよびストレプトマイシンを異なる濃度(それぞれの抗生物質について、0.01μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mL、10μg/mLおよび100μg/mL)でLBブロス培地に溶解して、縦列のウェルに負荷した。
【0584】
次いで、装置をすべらせて列におけるウェルを接続し、pDsredプラスミドをもつ大腸菌(Escherichia coli)を負荷した。大腸菌(E. coli)を以前の部分に記載されているように培養した。細菌細胞密度を計数して、〜2.4×10
7細胞/mLに調製してそれぞれのウェルにおいて約48の大腸菌(E.Coli)細胞を得た。次いで、装置をすべらせて、大腸菌(E. coli)を含む底面プレート上のウェルを抗生物質の溶液を含む上部プレート上のウェルと接触させた。装置を、上部プレートを下に向けて30分間さらに保持し、その結果、大腸菌(E.coli)細胞の大多数が重力によって上部プレートのウェルに落ちついた。次いで、装置を非常にゆっくりすべらせ、その結果連続流体経路が再び列において形成されて、空気の供給チャネルとしての役割を果たした。空気の供給チャネルにおける溶液を真空で除去し、大腸菌(E.coli)増殖のために空気を運び込んだ。
【0585】
マトリックスSlipChipをペトリ皿に入れて、大腸菌(E.coli)の増殖を前述したように16時間撮像した。同じデータ分析を16時間の時点にてあらゆるウェルについて実施して、大腸菌(E.coli)細胞からの積分蛍光強度をグレイスケールマップとしてプロットした。それぞれの抗生物質の濃度および抗生物質のない対照のために、2つの平行した縦列に64ウェルがある。これらの64のウェルの平均強度をプロットした。
【0586】
96ウェルプレートでの対照実験を同じ細胞試料および抗生物質の濃度について実施した。基本的に、100μLの一定分量の細胞懸濁液を、次いで100μLの抗生物質を異なる濃度でウェルに添加した。OD単位を0時間にて、および16時間後にマイクロプレートリーダーで測定した。マトリックスSlipChipで得られるものと類似の大腸菌(E.coli)増殖阻害限界点が、全ての3つの抗生物質ついてみられた。
【0587】
16時間後、32×32マトリックスSlipChipにおいて、積分強度は、スクリーニングする抗生物質については、対照(LBブロス培地)および異なる濃度で3つの抗生物質(クロラムフェニコール、カナマイシンおよびストレプトマイシン)との1:1の混合後の32×32 SlipChip上の大腸菌(E.coli)の増殖を示す。それぞれの抗生物質についての濃度は、0.01マイクログラム/ミリリットル、0.1マイクログラム/ミリリットル、1マイクログラム/ミリリットル、10マイクログラム/ミリリットル、100マイクログラム/ミリリットルであった。最初の大腸菌(E.coli)細胞密度は、2.4×10
7細胞/mLであった。データは、16時間のインキュベーションの後に解析した。異なる抗生物質濃度で培養された16時間後の大腸菌(E.coli)からの平均蛍光強度。限界点は、異なる抗生物質濃度下での増殖の相違を表す。
【0588】
一定の態様において、視覚的または携帯電話読み出しでの濃度のアナログ‐デジタル変換は、slipchipで行うことができる。閾値をもつ化学を使用することによって、アナログ読み出しをデジタル読み出しに変換することができる。閾値の定義は、特許出願StochasticConfinement to Detect, Manipulate, And Utilize Moleculesand Organisms(公開番号WO/2009/048673、国際出願番号PCT/US2008/071374)において見いだすことができる。アナログ読み出しは、アッセイの場合において、一定の物質の量に対応するシグナルであり、連続的なスケールで表され、およびしたがって、読むために設備を必要とする。デジタル読み出しは、デジタルとして表され、この場合、イエス/ノーの値(イエスは、閾値の値を上回る、およびノーのは、閾値の値を下回る)である。このようなアナログ‐デジタル変換は、視覚的読み出しを与えるアッセイと組み合わせたときに、特別な設備をもたないSlipChipにおいて行うことができる。閾値に基づいたアナログ‐デジタル変換により、さらなる解析または貯蔵のために画像を発送することができる細胞電話カメラなどの、結果を理解し、および肉眼によって半定量化すること、または単純なカメラによって取り込むことができる。このアプローチは、種々のアッセイおよび種々の閾値の化学で機能する。特に、本発明者らは、酵素で、および金のナノ粒子(AuNPs)で、2つのタイプの閾値の化学を証明した。酵素:阻害剤が酵素にしっかりと結合し、酵素が触媒機能を行うのを阻害するときに、閾値が存在する。小量の酵素があるときは、全ての酵素分子が触媒機能を行うのを阻害するのに十分な阻害剤があるだろう。より大量の酵素があるときは、酵素反応を抑制するのに十分な阻害剤がないだろう。その結果、一定の量の阻害剤については、酵素濃度がその閾値を超える場合にだけ、閾値があるだろうし、本発明者らがシグナルを観察することができることを意味する。したがって、閾値の位置は、阻害剤の量に依存する。ここで、本発明者らは、1対1の比でアセチルコリンエステラーゼ(AChE)にしっかりと結合する阻害剤syn−(S)−TZ2PIQ−A5を使用した。AChEの閾値量は、阻害剤の量によって設定される。AChEは、アセチルチオコリンを加水分解して、チオコリンを与える。チオコリンは、デンプン(stach)/I
2複合体と反応する。反応は、濃青色から透明への変色を生じさせる。金のナノ粒子(AuNP):Au NPsは、無色である銀(I)イオン(ヒドロキノンの存在下において)の黒い沈殿である銀(0)粒子への還元を触媒することができる。しっかりとしたAu−S結合を介して、チオールは、AuNPsの表面上に層を形成する。層は、溶液におけるAuNPs表面と反応物との間の相互作用を遮断するだろう。小量のAuNPsがあるときは、全てのAu NPsの表面をコーティングするのに十分なチオールがあるだろうし、Auと銀との間の接触を阻害し、および銀増強反応を抑制する。より大量のAuがあるとき、Auの全表面をコーティングするのに十分なチオールがないだろうし、銀増強が急速に起こるだろう。AuNPsがチオールの量と比較して過剰である場合にだけ、銀に曝露される表面があるだろうし、したがって、閾値の位置は、チオールの量に依存した。
【0589】
閾値化学は、アッセイと結合することができる。たとえば、閾値は、免疫アッセイのリポーター分子に結合することができる。本明細書において、本発明者らは、SlipChipにおけるシスタチンCのためについての免疫アッセイが、リポーター分子であるAChEの閾値を利用することによって視覚的デジタル読み出しを与えたという実験結果を報告した。本発明者らは、また、AuNPのための閾値がSlipChipにおいて機能して視覚的デジタル読み出しを与えることを示し、したがって、この閾値を免疫アッセイなどのアッセイに適用する可能性を示した。
【0590】
インスリンのためのサンドイッチ免疫アッセイは、SlipChipにおいて良好に証明された。しかし、アッセイのための読み出しには、なおも蛍光顕微鏡を必要とした。ここで、本発明者らは、リポーター酵素としてのAChEで、シスタチンCについてのアッセイを修飾した。アッセイは、阻害剤syn−(S)−TZ2PIQ−A5の異なる量による閾値セットにより、デジタル読み出しを与え、濃青色のデンプン/I
2複合体とチオコリン(酵素反応の産物)の、無色の混合物を生じる変色反応によって、視覚的読み出しを与えた。シスタチンCの量は、AChEの量と線形に相関する。異なる量の阻害剤を使用することによって、本発明者らは、AChEについて異なる閾値をセットすることができる。AChEの濃度は、一定の閾値の値にて、反応を進行させるだろうし、その他の閾値の値では阻害する。このような結果は、AChEの濃度の範囲、およびしたがって、シスタチンCの濃度の範囲を示すだろう。
【0591】
このSlipChipは、より大きな寸法、それぞれの列におけるウェルの数の変化、上部プレートにおける試薬のためのさらなる列および複数の閾値濃度を単一のSlipChipで評価することができるその列における様々な深さの修飾をもつ、ビーズに基づいた免疫アッセイを行うために使用されるものに類似した。
【0592】
閾値をもつ免疫アッセイのためのSlipChipについては、ダイヤモンドウェル寸法は、780μm×780μmであった。ダクトは、380μmの幅および90μmの深さであった。行または列間の間隔は、それぞれ、2.5および1.5mmであった。SlipChipの底面プレートは、試料を保つためのウェルおよび試薬を負荷するためのダクトを含んだ。上部プレートにおいて、ダクトを、試料を負荷するために使用した。上部プレート上の列1におけるウェルは、捕獲混合物を負荷した。列2−5は、洗浄緩衝液で満たして、列6は、阻害剤を負荷して、列7は、基体を負荷した。列6のウェルは、[16、21、28、51、90]μmのそれぞれの深さで[5、6、6、6、6]ウェルの5セットに分けた。上部プレートの上のその他のウェルは、90μmの深さであった。底面プレートの上のウェルは、7μmの深さであった。免疫アッセイについては、プレートを、捕獲混合物を負荷するために整列させた。プレートをすべらせて、試薬を負荷するために複数回整列させ、および次いですべらせて、検体を負荷するために整列させた。プレートを、底面プレートのウェルの列が連続して上部プレートのウェルのそれぞれの列と接触するように、すべらせて、次いで、最終結果を示すためにすべらせた。
【0593】
SlipChipにおける全酵素免疫測定法を行う前に、本発明者らは、SlipChipにおけるただAChEおよび阻害剤syn−(S)−TZ2PIQ−A5AChEの単純な閾値を示すことにより、閾値の使用を確認した。実際に、5nMの最終阻害剤濃度にて、予想通り、AChEは、5nM(終濃度)にて、閾値を示した。AChE>5nMの濃度での反応は、ほぼ透明な溶液を示し、一方で、AChE= 5nMの濃度での反応は、濃青色のままであった。
【0594】
SlipChipにおける酵素閾値化学については、上部プレートは、同じ入口に接続された4列のウェルを有した。底面プレートは、別々の入口および出口をもつ4列のウェルを有した。上部プレート上のウェルの深さは、80μmであったし、底面プレート上のウェルの深は、60μmであった。阻害剤の溶液を上部プレート上のウェルに負荷した。異なる濃度であるAChEの4つの異なる溶液を底面プレート上のウェルに負荷した。底面プレートを上部プレートに対してすべらせて、両方プレートのウェルを重ねさせた。30分のインキュベーションの後、2枚のプレートをもとの位置にそっと戻した。基体混合物を上部プレート上のウェルに負荷した。SlipChipを再びすべらせて、上部および底面プレートのウェルを接触させ、反応を立体鏡でモニターした。
【0595】
本発明者らは、また、閾値を生成する反応のその他のタイプ、Au NPsを使用する銀還元についての予備結果を得た。本発明者らは、ウェルプレート上のAu NPsにおける閾値を示した。ここで、本発明者らは、この閾値がSlipChipにおいて行うことができることを証明した。この実験において、本発明者らは、チオール阻害剤の量を変化させると共に、AuNPsの一定の濃度を使用した。2−メルカプトエタノールの濃度が110μM以下であった時、チオールは、AuNPsの表面を完全に被覆しなかったので、暗色によって示されるようにAg(I)の還元が進行した。しかし、2−メルカプトエタノールの濃度が330μMを超えたときは、反応が抑制されて、シグナルは観察されなかった。AuNPsは、生物学的適用において一般に使用されるタグであり、広範囲の検出反応にこの方法を組み合わせることができる。
【0596】
SlipChip生物抱合におけるAChEおよび免疫アッセイの閾値について:ビーズ−Ab:シスタチンC抗体クローン24(Genway、cat#20−511−242278)を製造業者の説明書を使用してトシル化した常磁性ビーズ(Invitrogen、cat#65501)に抱合した。Ab−ビオチン:シスタチンC抗体クローン10(Genway、cat#20−511−242277)を、製造業者の説明書を使用して、LightningLinkキット(Innova Biosciences、cat# 704−0010)を使用してビオチンに抱合した。
【0597】
溶液は、以下の通りに調製した:リン酸緩衝液:リン酸ナトリウム0.1M、プルロニックF127(BASF)1mg/mLでpH 7。BAB:1×DPBS(Gibco)pH7中のプルロニックF127 1mg/mL。WB:さらに0.2MのNaCl(0.337mM NaCl総量)を含むBAB デンプン溶液:リン酸緩衝液中のオートミールの懸濁液を10分間沸騰して室温まで冷却した。次いで、上清を5μm膜をもつ注入器フィルターを通して濾過してデンプン溶液を得た。基体混合物1:45μLデンプン溶液、5μLアセチルチオコリン溶液(リン酸緩衝液中の0.4M)および1μLの620μLの水中のNaI(18.64mg)およびI2(1.55mg)の溶液を600μLのマイクロ遠心機チューブにおいてボルテックスすることによって混合した。基体混合物2:98μLデンプン溶液、1μLアセチルチオコリン溶液(リン酸緩衝液中の0.4M)および1μLの4.016mLのリン酸緩衝液中のNaI(798.07mg)およびI2(101.93M)の溶液を600μLのマイクロ遠心機チューブにおいてボルテックスすることによって混合した。混合物捕獲:BAB中の2.5mg/mLビーズ−Ab、0.025mg/mLAb−ビオチンおよび25mg/mLAChE−アビジン(CaymanChemicals、cat#400045)。
【0598】
SlipChip上の特徴の製作は、以下の通りに行った:単純な閾値のためのSlipChipは、前述したように製造した。ウェルの寸法は、上部プレート上に1960μm×400μm×80μmおよび底面プレート上に1920μm×360μm×60μmであった。閾値をもつ免疫アッセイのためのSlipChipにおいて、上部プレートの列6におけるウェルおよび底面プレートのウェル以外の全ての特徴は、前述したように製造した。上部プレートの列6におけるウェルおよび底面プレートのウェルは、レーザー穿孔(7の縮小、130mJの一定のエネルギー様式、75mmのレンズ、2.5J/cm2のフルエンスで、ResoneticsRapidX250システム)を使用して形成した。
【0599】
SlipChipのコーティングは、以下の通りに行った:単純な閾値のためのSlipChipの表面処理は、前述したように行った。閾値をもつ免疫アッセイのためのSlipChipは、水性溶液によって任意の特徴(ウェルまたはダクト)を含んでいない領域の湿潤を予防するために強いコーティングを有するようにFEPで被覆した。ベアガラスチップは、98%、H
2SO
4:H
2O
230%(3:1v/v)中で1時間洗浄した。次いで、これらは、それぞれ、10.8および1.8cm/分の溶液の出入りの速度でMillipore水で3倍希釈したFEP乳濁液(FuelCellEarth LLC, cat#TE9568−250)中でディップ被覆した。被覆されたチップを室温(21−23℃)から250℃まで、および250℃にて5分間ホットプレート上で焼いて室温にて空気中で冷却した。上部プレートの列6におけるウェルにおける、および底面プレートにおけるFEP層を層穿孔(50%の減衰器で70mJ、ウェル穿孔のときと同じその他のパラメーターで)およびその後、顕微鏡下で針の手動適用(BecktonDickinson、cat#305109)によって取り除いた。
【0600】
SlipChipの操作は、以下の通りに行った:SlipChipを底面プレート上に0.5mLのFC−40(3M)を滴下すること、底面プレートの上部の上に上部プレートを置くこと、および洗濯挟みで2枚のプレートを固定することによって構築した。SlipChipのそれぞれの列は、入口孔に10μLの溶液を含む10μLのピペットを突くこと、およびピペットから溶液を押すことによって負荷した。
【0601】
試薬および試料をSlipChipに負荷するには、以下の通りに行った:単純な閾値のためのSlipChip:最初に、阻害剤溶液を、4つの列に接続された入口を経て、平行して4つの列に負荷した;リン酸緩衝液中のAChE(SigmaAldrich、cat#C2888)溶液は、4つの別々の入口から1つずつ4つの列に負荷した。チップを、AChE溶液のそれぞれの列が阻害剤溶液の列と重なるようにすべらせた。次いで、チップを、もとの位置にそっと戻す前に30分間インキュベートした。基体混合物1の過剰量(〜100μL)を4つの平行した列のウェルに負荷した。次いでチップを、基体混合物がAChEの混合物と接触して、阻害剤が以前の工程において形成したように、再びすべらせた。AChEの終濃度は、〜4、5、6、および7nMであったし、阻害剤の終濃度は、〜5nMであった。反応は、PlanAPO 0.63×対物レンズを備えたライカMZ 16立体鏡(Leica Microsystems)でモニターした。閾値をもつ免疫アッセイのためのSlipChip:2つのプレートの組立後、これらそ、上部プレートの列1のウェルが底面プレートのダクトに接続されるように、整列させた。次いで、捕獲混合物をウェルの第1の列に負荷した。次いで、プレートを、上部プレートの第2の列のウェルが底面プレートのダクトによ接続されるように、互いに対してすべらせて、WBを第2の列に負荷した。同様に、それぞれ、列3〜7のウェルには、WB、リン酸緩衝液、リン酸緩衝液、阻害剤溶液および基体混合物2を負荷した。次いで、プレートを、底面プレートのウェルが上部プレートのダクトに接続されるように整列させ、シスタチンC試料(BAB中)を底面プレートのウェルに負荷した。
【0602】
SlipChipを、底面プレートのウェルが上部プレートのウェルの第1の列と重なるようにすべらせた。試料および捕獲混合物の混合物を、室温(21−23℃)にて30分間インキュベートした。磁石を、底面プレートのウェルの底面にビーズを引くために使用した。チップを、底面プレートのウェルが上部プレートのウェルの第2の列と重なるようにすべらせて、2分間インキュベートした。底面プレートのウェルを、2、2、2、30および120分のインキュベーション時間で、上部プレートの列3−7のウェルと連続して接触させた。最後に、ビーズを底面プレートのウェルの底面に引いて、ウェルを上部プレートの列7のウェルから分離した。結果を上部プレートの列7のウェルにおいて読み込んで、反応がウェルにおいて進行した場合、ビーズを含んだ底面プレートのウェルを上部プレートの列7におけるウェルの位置のマーカーとして使用した。結果の画像は、安価な携帯電話カメラ(Nokia3555b)で取得した。
【0603】
SlipChipの製作は、以下の通りに行った:本発明者らは、以下を改変して以前に記述した製作手順に従った。フォトレジストコーティングをもつガラスプレートをフォトマスクと共に整列させて1分間UV光に曝露した。ウェルのサイズは、これにより決定すると1920μm(長さ)×360μm(幅)であった。AuNPs閾値のために使用したチップは、それぞれの列において5ウェルおよび合計で20ウェルを有した。曝露の直後に、フォトマスクをガラスプレートから取り除いて、ガラスプレートを0.1mol/LNaOH溶液およびクロミウム腐食液(0.6:0.365mol/L HClO
4/(NH
4)
2Ce(NO
3)
6の溶液)中で別々に現像した。次いで、テープを巻いたガラスプレートを、ガラスエッチング溶液(1:0.5:0.75mol/LHF/NH
4F/HNO
3)を含むプラスチック容器に慎重に浸漬し、クロミウム層が除去された後、曝露されたガラス表面にエッチングした。深さ80μmのウェルおよびダクトをガラスプレートにエッチングした。最後に、ガラスプレートをエタノールでリンスして、未現像のフォトレジストをはいで、クロミウム腐食液に浸漬し、クロミウム層を除去した。エッチングされたパターンは、VeecoDektak 150側面計を使用して検証した。酸素プラズマ処理に供した後で、表面をトリデカフルオロ−1−1−2−2−テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシランで3時間,真空乾燥器におけるシラン化によって疎水性を与えた。
【0604】
SlipChipwas上で混合前の銀増強溶液の調製は、以下の通りに行った:溶液A:3μL 200mMシトラート緩衝液を15μL 100mM AgNO3溶液および82μLMillipore水と共に混合した。溶液B(B1−B4):4μL 0.15mM Au NPsを30μL 100mMハイドロキノン溶液および1mMメルカプトエタノール溶液(0、10、30、50μL)の異なる容積と混合した、総容積は、Millipore水を補うことにより、90μLに固定した。
【0605】
SlipChipwas上のAu NPsに基づいた閾値の実験は、以下の通りに行った:以前に記述したように、SlipChipを構築して、負荷して、すべらせた。最初に、溶液Aは、4つの列に接続された入口を経て、平行して4つの列の中へピペットで移した;溶液B1−B2を4つの別々の入口から1つずつ4つの列にピペットで移した。次いで、一方のガラスのプレートを、異なるプレートのウェルについて他方に対してすべらせて、互いに重ねた。混合後にチップ全体を暗所に入れ、結果をPlanAPO 0.63×対物レンズを備えたライカMZ 16 Stereoscope(Leica Microsystems)で微小写真を取ることによって5分毎に調べた。
【0606】
濃度のアナログ‐デジタル変換を得るために閾値を使用するというアイデアは、また、その他のアッセイ(本明細書において記述される免疫アッセイの他に)に適用して、多くの診断需要をこれに関連させることができる。たとえば、核酸における閾値は、核酸に結合するように固定化された相補的な断片の量を使用してセットして、物理的に結合した分子を除去することができる。このような閾値は、HIV、HBV、HCVおよびその他の感染症に関連した核酸定量化におけるデジタル読み出しを与えるために適用することができる。SlipChipは、アナログ‐デジタル変換と組み合わせたときに、商業化することができ、広く利用することができる設備なしの、ポイントオブケアでの装置のための魅力的なプラットフォームを提示する。
【0607】
一定の態様において、潤滑および乾燥SlipChipsのためのプレートの間の界面化学および間隙サイズの制御を含むSlipChipの行き止まり充填を行うことができる。
【0608】
これは、行き止まり充填を介してSlipChipsを負荷するための現在の研究の一部を記述する。我々が「行き止まり充填」と言うプロセスにおいて、組立後にSlipChipを満たす液体(潤滑液または空気のいずれか)がSlipChipの2枚のプレートの間の間隙を介して散逸される。このSlipChipデザインは、行き止まり充填によって満たされた流体経路において出口(従来の意味で)を有さない。
【0609】
この方法を使用して、標準的なSBS形式、たとえば96または384または1536のウェルプレートと適合性の入口をもつslipchipを作製することができる;標準的な設備を、プレートに溶液を分配するために使用することができ、加圧後、所望の容積をslipchip内部に形成されるであろうし、すべりを使用して本プロセスを駆動してもよい。適切な開口部をもつ、標準的なSBSプレートを、slipchipの層の1つのとして使用することができる;ウェルの1つのを介して溶液を注入するようにデザインしてもよく、およびもう一つのウェル、その他を介して観察してもよい。
【0610】
装置製作は、以下の通りに行った:クロミウムおよびフォトレジスト層(Telic Company、Valencia、CA)をもつソーダ石灰ガラスプレートを、装置を組み立てるために使用した。ガラスSlipChipを作製するための標準的な方法を使用した。簡潔には、ウェルおよびダクトのデザインをもつフォトマスクによって被覆したフォトレジストで被覆したガラスプレートを紫外線に曝露した。0.1MのNaOH溶液を使用するフォトレジストの除去に続いて、露出したクロミウム層をクロミウム−エッチング溶液によって除去した。次いで、パターンを40℃シェーカーにおけるガラスエッチング溶液中でエッチングした。ガラスエッチングの後、残りのフォトレジストおよびクロミウム層を、それぞれエタノールおよびクロミウム−エッチング溶液によって除去した。エッチングされたガラスプレートの表面を洗浄して、酸素プラズマ処理に供して、次いで、表面には、前述したように真空乾燥器におけるシラン化によって疎水性を与えた。入口孔は、ダイヤモンドビット0.035インチ直径
で穿孔した。
【0611】
表面張力は、以下の通りに測定した:いくつかを改変して以前に報告された様に、フルオロカーボン中で水性溶液の表面張力を測定した。簡潔には、関心対象の水性溶液の液滴を、使い捨て液滴押出チップの末端に形成した。チップは、ポリイミド被覆ガラス管を1つの10μL使い捨てピペットチップに接着するために迅速固定エポキシを使用することによって構築した。次いで、チップを、1mLポリスチレンキュベットのドリル孔を介して反対に嵌入して、エポキシ接着剤を使用することによって固定した。ポリイミドチューブを、30−ゲージテフロン(登録商標)管を使用することにより、50μLHamilton Gastight注入器に接続した。次いで、注入器を水性溶液で満たして、1mLキュベットをフルオロカーボンで満たした。形成された液滴をModel250 Standard Digital Goniometer & DROPimage Advancedソフトウェア(Rame−Hart InstrumentCo)を使用して撮像した。
【0612】
粘性は、Cannon Instrument Company(StateCollege、PA)によって製造されたCannon−Fenske較正粘度計を使用することによって測定した。測定を取得するために製品に付随する説明書に従った。
【0613】
接触角は、以前に報告した同じプロトコルにしたがって測定した
3,4。簡潔には、4μLの測定する溶液を関心対象の基体上にピペットで取った。次いで、基体上の液滴の接触角を、光学的な接触角メーターを使用することによって測定した(Rame-HartInstrument Co., Model 500)。
【0614】
SlipChipの2枚のプレートの間に間隙の測定および制御は、以下の通りに行った:間隙測定は、Hamamatsuデジタル冷却CCDカメラ(Japan)を備えたライカ(Germany)によって製造されるDMI6000エピ蛍光顕微鏡で行った。この冷却カメラは、光強度に対して線形反応を有し、正確な強度測定ができる。スライド間の間隙は、緑の蛍光量子ドット(QDs)(OceanNanotech、AR)で染色した鉱油(Fisher Scientific、NJ)を使用することで測定した。トルエン中のもとの1%のQDs溶液を、0.22ミクロンマイクロ遠心Amiconフィルター(Millipore,MA)を通して濾過して、超音波浴(Fisher Scientific、NJ)において10分間超音波処理した。鉱油中のQDの10%の溶液を徹底的にボルテックスして、装置を充填する前に真空下で少なくとも10分間保持した。
【0615】
染色された鉱油は、SlipChipの2枚のプレートの間に沈着した;構築された装置を連続してクロロホルム、アセトンおよびエタノールでリンスすることによって過剰な油を除去した。2枚のプレートを8つの紙用クリップで固定して、測定の前に圧力下に少なくとも1時間保持した。イメージ取得、イメージプロセシングおよび測定は、Metamorphソフトウェア(UniversalImaging Corporation)を使用することによって行った。イメージは、参照として使用される非常により明るい特徴から比較的暗い周囲の領域への蛍光光のリーチングを回避するために、照明の視野を減少させて取得した。蛍光イメージは、照明の視野の均一性のためのバックグラウンドカメラノイズおよび補正の減算を含む標準的な手順に従って処理した。SlipChipは、公知の深さの特徴を有し、単にこれらの特徴からの蛍光強度を比較することによって、スライドの間に間隙を含む未知の特徴の深さの推定が可能である。スライドの間の正確な距離を決定するために、我々は、式:
【数6】
に従って自動再帰的手順を適用した。
ここで、wは、公知の特徴(ウェル)の深さであり、d0 = 0;d
i−間隙サイズ、I
sおよびI
wは、周囲の表面から、およびウェルから取得される強度である。本発明者らは、通常、信頼できる距離を得るために、i=1−2の繰り返しを行った。
【0616】
この手順を確認し、および直線性について調べるために、我々は、一連の公知の深さのウェルからの蛍光測定を行った。これらの参照ウェルは、LaserAblation System(Resonetics、NH)で作製した。全ての特徴の深さは、側面計(Dektak 150、Veeco、CA)を使用することで測定した。ウェルから取得された蛍光強度は、ウェル深さに比例することが見いだされた。両方の技術で得られた距離の相違は、〜5%以内であった。したがって、、SlipChipプレートの間の間隙を測定するために蛍光強度を使用することができる。
【0617】
スライド間の間隙を制御するために、本発明者らは、2つの異なるサイズの蛍光シリカビーズを使用する。特に、本発明者らは、Corpuscular Inc.(NY)から得られる、それぞれ1.5μmおよび3.86μmの直径をもつビーズを使用した。これらのビーズは、これらを炭化水素油で適合性にするために、使用の前にシラン化した。シラン化は、以下の通りに行った:ビーズを3回アセトンでリンスして、超音波処理した;5%のジクロロジメチルシランをアセトン中のビーズに添加して、室温にて30分間曝露した。ビーズはをセトンで1回およびクロロホルムで2回リンスした。比較的均一なビーズ分布を得るために、ビーズの適切な量を蛍光染色された炭化水素油に添加した。SlipChipプレート間の間隙は、それぞれの場合について上記の通りに測定した。
【0618】
それぞれの装置は、2枚のプレートからなる。およそ300μLの潤滑剤FCを底面プレート上にピペットで取って、チャネルの気泡をトラップするのを回避するために、上部プレートを底面プレート上部にゆっくり置いた。次いで、プレートを、近くに接触して、顕微鏡下で整列させ、紙用クリップによって固定した。
【0619】
物理的モデルの試験(圧力(家庭供与源およびバロメーター)を変え、および溶液漏れを観察する)は、以下の通りに行った:圧力制御。圧力は、調節可能なN2供与源によって提供した。N2供与源は、2つの末端に二またに分け、一方はシステムにおける出力圧を示すバロメーターに接続し、他方は、SlipChipに接続した。溶液の負荷。4μLの緑色色素を構築された装置の入口の上部にピペットで取った。次いで、PDMSから作製し、かつ高さ〜5mmのOリングを、構築された装置とガラスプレートにはさんで、紙用クリップによって固定した。ガラスプレートは、ナノポート組立体(UpchurchScientific)を有した。次いで、組立体を圧力源に接続して、溶液をSlipChipのチャネルに負荷した。任意の溶液漏出を、FCを受け取りチャネルにおいて観察した。荷重速度の特性付け。2つのサークル間のチャネル部分を使用して荷重速度を特徴づけた。速度は、平均体積流量であり、Qave=V/tV(m
3)として定義され、溶液で満たされるチャネル部分の容積であり、およびt(s)は、チャネル部分を満たすことが記録された時間である。
【0620】
5つの溶液を、FC潤滑された装置に負荷するために使用した:緑色色素溶液を試料のための流体経路に負荷するために使用した;赤、青、オレンジおよび黄色染料を試薬のための16本の流体経路を負荷するために使用した。プレートの表面は、〜8μm間隔でウェルをパターン化した(およそ12μmの長さ、12μmの幅および2μmの深さ)。このようなウェルは、潤滑FCの散逸を促進する。全ての溶液を流体経路の前に大きい貯蔵器ウェルに最初に負荷したことを除き、物理的モデルを試験するために使用したのと同じ試料を負荷する手順を、同時に試料および複数の試薬液を負荷するために使用した。負荷の後、上部プレートを底面のものに対してすべらせて、試薬ウェルを試料ウェルと接触にさせて、溶液を内部で混合した。
【0621】
より詳細に負荷プロセスを記述するために、本発明者らは、圧力バランスのための方程式を使用する。入口にて適用される圧力は、相1と相2との間の界面にてキャピラリー圧に打ちかたなければならない。
【数7】
【0622】
ΔPflowは、液体流の抵抗によって生じる水性相1で満たされたチャネルの反対の末端どうしの間の圧力相違であり、P0は、流体経路へ相1を駆動するために入口にて適用される圧力であり;およびΔPcapは、充填チャネル内部で相1と相2との界面にて生じるキャピラリー圧である。一般に、特にこの界面が、部分的に固体の表面によって、本例のように部分的に液体の界面によって、形成される場合、長方形チャネル5,6において平らな界面の正確な形状を決定することは困難である。Young−Laplace方程式に従って、長方形チャネルにおける相1と相2との間の界面にて近似の圧力相違は、
【数8】
【0623】
P
0がP
capより大きなとき、P
flowは、ポジティブであり、およびチャネルは、相1で満たされる。これらの圧力間の相違が大きいほど、より迅速に満たす。粘稠性ドラグ力は、チャネルが即座に満たされる妨げるだろう。固体の長方形チャネルを介した流れの間の粘稠性ドラグの詳細な分析は、以前に考察されている。チャネルは、水性相を囲んでいるフルオロカーボン油によって形成される(少なくとも部分的に)。封止圧力(P
seal)(Pa)
(方程式2)は、相1がチャネルから漏れるのを妨げる。
【数9】
ここで:γ(N/m)は、水性溶液(相1)とFC(相2)との間の表面張力であり;θは、相2におけるSlipChipの相1と表面との間の接触角であり、および相1の毛管現象を妨げるために90度より大きいことが必要とされ;d(m)は、SlipChipの2枚のプレートの間の間隙距離である。最大圧力、P
seal,max(Pa)は、推定で=
【数10】
存在する。入口圧は、間隙内への漏出を回避するために封止圧力(方程式3)より小さくなければならなし、圧力がより高い場合、水性溶液は、プレートの間に流れて漏れを生じさせるだろう。
【0624】
方程式3: P
0 < P
seal,max
FCの散逸は、充填速度を制限する。本発明者らは、予測を行うために方程式を使用して、関連したパラメーターを変えると負荷速度に影響を及ぼし、一方無関係なパラメーターを変えてもそうならないことを見いだした。試験SlipChipにおいて、ΔP
flowは、3つの項(方程式 5)を含み:ΔP
1,、負荷チャネルにおける水性の流動抵抗による圧力相違;ΔP
2,、負荷チャネルにおける相2の流動抵抗による圧力相違;およびΔP
3,、SlipChipの2枚のプレート間のFCの流動抵抗による圧力相違。方程式1および方程式5を組み合わせることによって得られた方程式6は、システムに沿った圧力相違を表す。流動抵抗による圧力相違は、方程式7で表すことができる
7。μ
i は、対応する液体の粘性であり、そしてここでは、μ
1(Pa.S)は、水性相の粘性であり、μ
2 およびμ
3は、同じで、潤滑相の粘性と同等であり;L
i(m) は、液体経路の平均長である。本発明者らは、L1およびL2は、同じで、負荷チャネルの全体の半分の長さと同等であるとを仮定する。L3は、負荷チャネルと大きな受け取りチャネルとの間の距離と同等であり;Q
i (m
3/s)は、流出流速である。質量保存のため、Q
1、Q
2およびQ
3は、同じであり;h
iは、液体経路の高さであり、したがって、h1およびh2は、同じで、チャネルの高さと同等である。h3は、SlipChipの間隙と同等であり;w
iは、液体経路の幅である。w
1およびw
2は、同じで、負荷チャネルの幅と同等である。本発明者らは、2枚のプレートの間の負荷チャネルに沿った潤滑フルオロカーボンの流動プロフィールを決定することが困難であるので、w
3は、負荷チャネルの半分の長さであると仮定する。
【数11】
双曲正接は、チャネル縦横比が増加するだろう(高さは、減少するだろうし、および/またはチャネルの幅は、増加するだろう)ときに漸近的に1へ行くだろう。同時に、チャネルにおける圧力損失ΔPは、縦横比が漸近的に∞へ行くときに、1/h
3wに比例して変化するだろう。h
3<<h
1および2<w
i(方程式8)のため、ΔP
3は、ΔP
1 またはΔP
2 より大きい。本発明者らは、ΔP
inletがΔP
capよりも大きかったことを確認するために、試験チップをデザインした。したがって、ΔP
inletは、ほぼΔP
3.と同じである。方程式7および10をh
3<<w
3における近似値と組み合わせることによって、本発明者らは、水性溶液の負荷速度が、固定された入口圧にて、その粘性、その散逸寸法を含む潤滑フルオロカーボンの散逸によって決定されたことを示す方程式10を得た。
【数12】
本発明者らは、h
3およびμ3を変化させ、一方でw
3、L
3およびΔP
inlet定数をそれぞれ1×10
4μm、2×10
3μmおよび5.3×10
3Paに維持するることによって、実験的に予測を試験した。ほぼ負荷速度は、独立してh3
3およびμ3とともに増加した。さらにまた、本発明者らは、ΔP
1,ΔP
2 およびΔP
cap に関したその他のパラメーターの変化が負荷速度に対して大きな効果を有さなかったことをを確認した。
【0625】
SlipChipは、行き止まりに充填によって負荷することができる。本発明者らは、物理的なモデルを使用して、システムを時同に複数の溶液をSlipChipsに負荷する行き止まりの充填を使用するようにデザインした。本発明者らは、それぞれの沈殿剤について16の異なる沈殿剤および11の混合比でのタンパク質結晶化のための使用者が負荷するSlipChipスクリーニング条件に関して、以前に報告されたデザインを使用した。本発明者らは、デザインを単純化するために、以下の改変を行った:ダクトを負荷のために最適なターンなしにまっすぐに作製した;圧力のバランスをとるために狭いチャネルを使用しなかった。加えて、本発明者らは、それぞれの負荷溶液のために入口貯蔵器を付加した。これは、試験SlipChipに記載されているように流れを緩衝するためだけでなく、貯蔵および蒸発を予防するためにデザインした。本発明者らは、また、望ましくない逆流を予防するために、より小さな放出口貯蔵器をデザインした。プレート間の潤滑液の散逸によって生じる流動圧力を最小限にし、一方で同じ封止圧を維持するために、受け取りチャネルを、LFの流れる距離が最小限になるように、流体経路の近くにデザインした。本発明者らは、プレートの間のさらに流動圧力を低下させるために、lipChipの接触面上に小さなパターン(〜2μmの深さ)を作製した。
【0626】
充填は、溶液が流体経路の末端に到達した時にその他の溶液がまだ負荷されていた場合であっても、自発的に止まった。結果として、全ての溶液を、単一の圧力源を使用して負荷することができる。
【0627】
溶液をSlipChipの中へピペットで移すことを単純化し、および溶液の安定な貯蔵が可能なように、入口の隣の貯蔵器が複数のアクセス穴を有するように、デザインを修飾することができる。このデザインにおいて、潤滑液は、アクセス穴の1つを介して貯蔵器を出て
、耐圧力を減少させ、簡単な負荷を可能にする。溶液は、潤滑液によって囲まれたままであり、安定な貯蔵のために蒸発を減少させることができる。溶液を分配するために、圧力を全てのアクセス穴にて適用して、溶液を負荷させるチャネルに押し込む。貯蔵器の形状は、水性液滴がアクセス穴から離れて、負荷チャネルで付近に自発的に移動するようにデザインすることができる。
【0628】
上記のことから、多数の変更および改変を本発明の精神と範囲から逸脱することなく遂行してもよいことが観察されるだろう。本明細書において図示した具体的態様に関する限定は、意図されず、または推定されるべきでないことを理解すべきである。請求項の範囲に入るような全てのかかる変型品は、添付の特許請求の範囲によりカバーされることが意図されていることは、当然である。