(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の光学フィルタを有し、複数の前記入射端面に入射する前記計測光それぞれの光路上に複数の前記光学フィルタの中の何れかを挿入フィルタとして挿入可能なフィルタ部を更に備える、請求項1〜5の何れか一項に記載の光計測装置。
前記フィルタ部は、前記光学フィルタとして、NDフィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、及び光反射物質で構成されたフィルタの少なくとも1つを含んでいる、請求項6に記載の光計測装置。
前記光検出部は、複数の前記導光部材と同数の複数の光検出器を有し、複数の前記光検出器の分光感度特性は、互いに異なっている、請求項1〜8の何れか一項に記載の光計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光計測装置では、光検出器に対応した複数の出射開口が積分器に形成されていることから、積分器における開口面積が増えるため、積分器内での計測光の多重拡散反射特性が低下するおそれがある。更に、互いに異なる位置に形成された出射開口からの計測光を各光検出器が検出するため、各光検出器に入射する計測光の強度分布にばらつきが生じるおそれがある。よって、上述したような光計測装置では、計測光の検出精度の低下が懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、計測光を精度良く検出可能な光計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光計測装置は、試料に励起光を照射し、計測光を検出する光計測装置であって、励起光が入射される入射開口、及び計測光を出射する出射開口が形成され、試料が配置される積分器と、出射開口から出射された計測光を導光する導光部と、導光部によって導光された計測光を検出する光検出部と、を備え、導光部は、入射端面が出射開口を介して積分器内を向くように配置された複数の導光部材を有し、光検出部は、複数の導光部材の少なくとも1つによって導光された計測光を検出し、複数の導光部材の入射端面側における受光領域は、積分器内で互いに重なっている。
【0007】
この光計測装置では、入射端面が出射開口を介して積分器内を向くように複数の導光部材が配置されており、複数の導光部材の少なくとも1つによって導光された計測光を光検出部が検出する。これにより、複数の導光部材を介して共通の出射開口から計測光が取り出されることから、積分器における出射開口の形成数を低減することができ、積分器の多重拡散反射特性を確保することが可能となる。また、各導光部材によって取り出される計測光の強度分布を均一化することも可能となる。更に、この光計測装置では、複数の導光部材の入射端面側における受光領域が積分器内で互いに重なっている。これにより、積分器内における共通の領域からの計測光が複数の導光部材に入射するため、各導光部材によって取り出される計測光の強度分布を一層均一化することができる。よって、この光計測装置によれば、積分器の多重拡散反射特性を確保しつつ、均一な強度分布を有する計測光を取り出すことができ、計測光を精度良く検出することが可能となる。
【0008】
本発明の光計測装置では、複数の導光部材の入射端面における光軸は、積分器内で互いに交わっていてもよい。この場合、上記作用効果、すなわち、積分器内における共通の領域からの計測光が複数の導光部材に入射するため、各導光部材によって取り出される計測光の強度分布を一層均一化できるという作用効果が顕著に奏される。
【0009】
本発明の光計測装置は、積分器内における出射開口と対向する位置に配置されたバッフルを更に備えてもよい。この場合、試料からの光が出射開口に直接入射することをバッフルによって防止することができ、計測光を積分器内で確実に多重拡散反射させることが可能となる。
【0010】
本発明の光計測装置では、複数の導光部材の入射端面における光軸は、出射開口とバッフルとの間で互いに交わっていてもよい。この場合、試料からの光が出射開口に直接入射することをバッフルによって防止しつつ、積分器内における共通の領域からの計測光を複数の導光部材によって取り出すことが可能となる。
【0011】
本発明の光計測装置では、バッフルは、積分器内における前記出射開口の周辺に配置された一対の支持柱によって支持され、複数の導光部材が並ぶ方向と、一対の支持柱が並ぶ方向とは、交差していてもよい。この場合、導光部材に入射する計測光が支持柱によって遮られることを抑制することができ、各導光部材によって取り出される計測光の強度分布をより一層均一化することが可能となる。
【0012】
本発明の光計測装置は、複数の光学フィルタを有し、複数の入射端面に入射する計測光それぞれの光路上に複数の光学フィルタの中の何れかを挿入フィルタとして挿入可能なフィルタ部を更に備えてもよい。この場合、複数の入射端面に入射する計測光それぞれの光路上に、光計測装置の測定条件に応じた光学フィルタを挿入することができる。その結果、高精度な測定が可能となる。
【0013】
本発明の光計測装置では、フィルタ部は、光学フィルタとして、NDフィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、及び光反射物質で構成されたフィルタの少なくとも1つを含んでいてもよい。この場合、光計測装置の測定条件に応じた測定を具体的に実現可能となる。
【0014】
本発明の光計測装置では、フィルタ部は、複数の光学フィルタが設けられたベース部と、挿入フィルタが複数の光学フィルタの中で切り替わるようにベース部を駆動する駆動部と、駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、制御部は、複数の光学フィルタの中の何れかを選択フィルタとして選択し、選択した当該選択フィルタが挿入フィルタとなるように駆動部を駆動させてもよい。この場合、制御部により、例えば光計測装置の測定条件に応じた光学フィルタを選択して光路上に挿入させることができる。その結果、測定条件に応じた測定作業を容易化することが可能となる。
【0015】
本発明の光計測装置では、光検出部は、複数の導光部材と同数の複数の光検出器を有し、複数の光検出器の分光感度特性は、互いに異なっていてもよい。この場合、分光感度特性が互いに異なる複数の光検出器を用いることで、広い波長領域での計測が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測光を精度良く検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示される光計測装置1は、測定対象となる試料について、例えば、フォトルミネッセンス法(PL法)により蛍光特性等の光特性を測定又は評価するための装置である。試料は、例えば、有機EL(Electroluminescence)材料や、白色LED(Light Emitting Diode)用やFPD(Flat Panel Display)用等の発光材料等の蛍光試料である。試料としては、例えば、粉末状、液体状(溶液状)、固体状又は薄膜状のもの等を用いることができる。
【0020】
光特性としては、吸収率、内部量子効率(発光量子収率)及び外部量子効率が挙げられる。吸収率は、吸収されるフォトン数に関するパラメータである。内部量子効率は、吸収する光のフォトン数に対する、発光により放出される光のフォトン数の割合に関するパラメータである。外部量子効率は、放出されるフォトン数に関するパラメータである。外部量子効率は、吸収率と内部量子効率との積である。吸収率は、反射されるフォトン数に関するパラメータである反射率と表裏の関係を有する。吸収率は、「1−反射率」と同義である。
【0021】
光計測装置1は、励起光供給部10と、積分器20と、導光部30と、光検出部40と、解析部51と、入力部52と、表示部53、を備えている。励起光供給部10は、所定波長の励起光を積分器20に供給する。励起光供給部10は、励起光源11と、入射用ライトガイド12と、を有している。光計測装置1では、励起光供給部10と積分器20とが互いに光学的に接続され、積分器20と導光部30とが互いに光学的に接続され、導光部30と光検出部40とが互いに光学的に接続されている。光検出部40と解析部51とが互いに電気的に接続され、解析部51と入力部52とが互いに電気的に接続され、解析部51と表示部53とが互いに電気的に接続されている。
【0022】
励起光源11は、励起光を発生させる光源である。励起光源11は、例えばキセノンランプや分光器等を含んで構成されている。励起光源11が発生させる励起光の波長は、可変であってもよい。励起光源11は、励起光の波長を、例えば250nm〜1600nmの波長範囲で可変に設定可能である。入射用ライトガイド12は、励起光源11で生じた励起光を積分器20へと導光する。入射用ライトガイド12としては、例えば光ファイバ等を用いることができる。
【0023】
積分器20は、積分球であって、中空の球状を呈している。積分器20は、その内面20aに硫酸バリウム等の高拡散反射物質の塗布が施されるか、若しくはPTFEやスペクトラロン(登録商標)等の反射率が1に近い高反射物質により形成されている。積分器20には、試料を導入するための試料導入窓である試料導入開口21、励起光が入射される入射窓である入射開口22、及び、計測光を出射する出射窓である出射開口23が、それぞれ1つずつ設けられている。試料導入開口21、入射開口22及び出射開口23のそれぞれは、複数設けられていてもよい。
【0024】
試料導入開口21には、試料容器ホルダ24が挿入されて装着されている。試料容器ホルダ24は、試料が収容された試料容器2(
図3参照)を保持し、積分器20内に試料を配置する。入射開口22には、入射用ライトガイド12によって導光された励起光が入射する。積分器20内では、入射開口22から入射した励起光が多重拡散反射される。更に、積分器20内では、試料に対する励起光の照射によって生じた発生光が多重拡散反射される。これら励起光及び発生光を含む計測光は、出射開口23から出射する。出射開口23から出射した計測光は、導光部30によって後段の光検出部40へと導光される。
【0025】
導光部30は、複数(この例では、2つ)の導光部材32,32を有しており、複数の導光部材32によって別々に計測光を導光する。光検出部40は、導光部30によって導光された計測光を検出する。光検出部40は、複数の導光部材32と同数(この例では、2つ)の複数の分光検出器41,41を有している。各分光検出器41は、計測光を波長成分に分解する分光器42と、分光器42で分解された計測光を検出する光検出器43と、を含んでいる。
【0026】
光検出部40に含まれる複数の光検出器43,43の分光感度特性は、互いに異なっている。光検出器43としては、例えば、BT(Back-Thinned)−CCDリニアイメージセンサやCMOSリニアイメージセンサ、InGaAsリニアイメージセンサ等を用いることができる。各光検出器43は、検出した計測光の波長スペクトルデータを後段の解析部51に出力する。なお、複数の分光検出器41,41による計測光の検出は、並行して行われてもよいし、互いにタイミングをずらして行われてもよい。或いは、一部の分光検出器41による検出のみが行われ、他の分光検出器41による検出は行われなくてもよい。並行して検出を行うことは、同時に、同時期に、同じタイミングで、又は、同時並列的に検出を行うことを含む。
【0027】
解析部51は、例えばコンピュータである。解析部51は、例えば、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、記録媒体であるRAM(RandomAccess Memory)又はROM(Read Only Memory)などを含んで構成される。解析部51は、CPU及びRAM等のハードウェア上にプログラム等を読み込ませることにより動作する。解析部51は、CPUにより、光検出部40で生成された波長スペクトルデータに対して必要なデータ解析を行い、試料についての情報を取得する。解析部51は、CPUにより、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行う。解析部51には、データ解析等についての指示の入力、及び解析条件や測定条件等の入力等に用いられる入力部52と、得られたデータ解析結果の表示等に用いられる表示部53と、が電気的に接続されている。入力部52は、例えばマウスやキーボード、タッチパネル等の入力機器である。表示部53は、例えばディスプレイ等である。
【0028】
続いて、
図2及び
図3を参照しつつ、積分器20及び導光部30について更に説明する。積分器20は、例えば取付ネジ(不図示)等によって架台3に取り付けられている。試料導入開口21、入射開口22及び出射開口23それぞれの中心線は、積分器20の中央を通り、互いに直交している。
【0029】
試料導入開口21には、上述したように、試料容器ホルダ24が挿入されて装着されている。試料容器ホルダ24は、試料が収容された試料容器2を位置決めして保持している。この例では、積分器20の中央部に試料が配置されている。
【0030】
入射開口22には、入射用ライトガイド12(
図1参照)を積分器20に接続する入射用ライトガイドホルダ220が挿入されて装着されている。入射用ライトガイドホルダ220は、入射用ライトガイド12を位置決めして保持するライトガイド保持部221を有している。入射用ライトガイド12から出射した励起光Lは、積分器20内において試料に照射される。
【0031】
出射開口23には、装着部31が挿入されて装着されている。装着部31は、積分器20内から導光部材32の入射端面32aに向かう計測光を通過させる開口31aを有している。開口31aの断面は、例えば、所定方向Dを長手方向とする長円形状又は楕円形状を呈している。この所定方向Dは、入射開口22の中心線と平行な方向であり、後述するように複数の導光部材32が並ぶ方向と一致する。開口31aは、出射開口23において計測光が通過する光通過領域を形成する。
【0032】
積分器20内には、出射開口23と対向する位置にバッフル25が配置されている。バッフル25は、円錐状を呈しており、頂部25aが出射開口23側を向くように配置されている。バッフル25の頂部25aは、例えば、出射開口23の中心線上に位置している。バッフル25は、試料容器2と出射開口23との間に位置し、試料からの光(一次反射光)が出射開口23に直接入射することを防止する。これにより、計測光を積分器20内で確実に多重拡散反射させることが可能となっている。
【0033】
バッフル25は、積分器20内における出射開口23の周辺に配置された一対の支持柱26によって支持されている。この例では、一対の支持柱26は、装着部31における開口31aの周縁部に立設され、開口31a(出射開口23の光通過領域)を挟んで互いに対向している。より具体的には、一対の支持柱26は、所定方向Dと直交する方向に並んで配置され、出射開口23の中心線を挟んで互いに対向している。
【0034】
バッフル25及び支持柱26は、積分器20内での計測光の多重拡散反射特性を確保するために、積分器20の内面20aと同様に、その外面に高拡散反射物質の塗布が施されるか、若しくは高反射物質により形成されている。
【0035】
複数の導光部材32のそれぞれは、入射端面32aが出射開口23を介して積分器20内を向くように配置されている。複数の導光部材32は、所定方向Dに並んで配置されている。すなわち、複数の導光部材32が並ぶ方向と、一対の支持柱26が並ぶ方向とは、直交している。各導光部材32は、装着部31の開口31aを通過して入射端面32aに入射した計測光を、後段の光検出部40へと導光する。導光部材32としては、例えばバンドルファイバ又はシングルファイバを用いることができる。
【0036】
導光部材32の入射端面32a側の端部は、固定部材33を介して架台3に対して固定されている。固定部材33は、凹部34aが設けられた本体部34と、凹部34a内に配置されるスリーブ35と、を有している。本体部34は、架台3に固定されている。凹部34aは、例えば断面円形状を呈している。凹部34aは、本体部34において、出射開口23とは反対側に開口し、出射開口23側の表面に近接する位置まで延在する。凹部34aは、複数の導光部材32と同数設けられている。この例では、凹部34aは、出射開口23の中心線を挟んで互いに対向する位置に2つ設けられている。2つの凹部34aは、その各軸が出射開口23側に近づくほど互いに近づくように出射開口23の中心線に対して傾斜した状態で、所定方向Dに沿って並置されている。凹部34aの底面には、本体部34の出射開口23側の表面に貫通する開口34bが形成されている。
【0037】
スリーブ35は、例えば円筒状を呈している。スリーブ35は、凹部34aに同軸で挿入され、凹部34aの底面に当接することによって本体部34に対して位置決めされている。スリーブ35は、ネジ34cによって本体部34に固定されている。これにより、スリーブ35は、凹部34aに倣って次のように本体部34に設けられている。すなわち、スリーブ35は、複数の導光部材32と同数設けられている。この例では、スリーブ35は、出射開口23の中心線を挟んで互いに対向する位置に2つ設けられている。2つのスリーブ35は、その各軸が出射開口23側に近づくほど互いに近づくように出射開口23の中心線に対して傾斜した状態で、所定方向Dに沿って並置されている。
【0038】
導光部材32の入射端面32a側の端部は、スリーブ35内に同軸で配置され、スリーブ35に沿って真っ直ぐに延びている。導光部材32の当該端部は、入射端面32aとスリーブ35の出射開口23側の端面とが面一となるように、スリーブ35内に設けられている。導光部材32の入射端面32aは、開口34bを介して露出する。導光部材32の当該端部は、例えば接着剤によってスリーブ35内に固定されている。
【0039】
導光部材32は、入射端面32a側の受光領域の光を入射させて導光可能である。ここで、導光部材32の入射端面32aに入射可能な光は、入射端面32a側の視野角(つまり、入射端面32aに入射可能な光の最大入射角)内の領域の光である。すなわち、導光部材32の受光領域とは、導光部材32の入射端面32a側の視野角内の領域(検出視野)を意味する。導光部材32の受光領域の大きさは、入射端面32aにおける開口数(NA)により規定される。例えば導光部材32の受光領域は、入射端面32aを頂点側とする円錐状の領域である。
図2,3では、導光部材32の受光領域の範囲が二点鎖線で示されている。
【0040】
図2に示されるように、複数の導光部材32の受光領域は、積分器20内で互いに重なっている。具体的には、複数の導光部材32の入射端面32a側における各光軸Xが、バッフル25の頂部25aにおいて互いに交わっている。複数の導光部材32の受光領域のそれぞれは、光軸Xを中心軸として入射端面32aから放射状に拡がっている。そして、複数の導光部材32の受光領域は、頂部25aの周辺の所定領域において互いに重なっている。これにより、積分器20内における共通の領域からの計測光が複数の導光部材32に入射することとなる。
【0041】
図2、
図3及び
図4に示されるように、光計測装置1は、フィルタユニット(フィルタ部)60を更に備えている。フィルタユニット60は、複数の光学フィルタ61と、複数の光学フィルタ61が設けられたベース部62と、ベース部62を駆動する駆動部63と、駆動部63の駆動を制御する制御部64と、を有している。駆動部63と制御部64とは、互いに電気的に接続されている。
【0042】
ベース部62は、円形板状を呈している。ベース部62の周縁部には、周方向に沿って等間隔で並ぶように複数の配置孔62aが設けられている。配置孔62aは、例えば断面円形状を呈し、ベース部62を厚さ方向に貫通している。複数の配置孔62aの中の一部には、光学フィルタ61が配置され、複数の配置孔62aの中の他部は、光学フィルタ61が配置されずに開口部66となっている。すなわち、ベース部62には、計測光をフィルタリングする光学フィルタ61に加えて、計測光をそのまま通過させる開口部66が設けられている。
【0043】
配置孔62aに配置される光学フィルタ61は、仕様に応じた任意のフィルタとすることができる。光学フィルタ61としては、例えば、ND(Neutral Density)フィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、及び、光反射物質で構成されたフィルタ等を用いることができる。光反射物質としては、積分器20の内面20aに設けられる反射率が高く且つ拡散性が優れた材料であるスペクトラロン(登録商標)を用いることができる。つまり、可視域から近赤外域までの広い波長域に亘って略一定の反射率を有するスペクトラロンをシート状にしたスペクトラロンフィルタを、光学フィルタ61として用いることができる。
【0044】
光学フィルタ61及び開口部66の配置は、仕様に応じた任意の配置とすることができる。例えば、
図4に示される配置例では、ベース部62は、複数の第1セットA1、複数の第2セットA2、及び、1つの第3セットA3を含んで構成されている。第1セットA1は、周方向に隣り合う2つの光学フィルタ61により構成されている。第2セットA2は、周方向に隣り合う光学フィルタ61と開口部66とにより構成されている。第3セットA3は、周方向に隣り合う2つの開口部66により構成されている。複数の第1セットA1間では、含まれる光学フィルタ61の種類の組み合わせが互いに異なっている。複数の第2セットA2間では、含まれる光学フィルタ61の種類が互いに異なっている。一の第1セットA1に含まれる2つの光学フィルタ61の各種類については、複数の第1セットA1間で当該各種類の組み合わせが異なっていれば、互いに違っていてもよいし、同一であってもよい。なお、一の配置孔62aに複数種類のフィルタが重ねて配置されていてもよい。
【0045】
ベース部62は、軸部62bを介して支持部67に接続されており、軸部62bを回転軸として支持部67に対して回転自在となっている。支持部67は、例えば長方形板状を呈している。支持部67の長手方向の一端は、ベース部62の外周縁から突出する突出部67aを構成する。突出部67aは、先細り形状を呈している。ベース部62を突出部67a側から架台3内のフィルタ部配置空間Sに挿入する際には、突出部67aを架台3に当接させつつ、ベース部62により当該挿入をガイドすることができる。これにより、ベース部62及び支持部67の挿入作業を容易化することができる。また、突出部67aがベース部62の外周縁から突出していることで、挿入時におけるベース部62の干渉ひいては損傷等を抑制することができる。
【0046】
支持部67の長手方向の他端には、当接部67bが設けられている。当接部67bは、ベース部62及び支持部67がフィルタ部配置空間Sに配置された状態で、架台3の支持面3aに当接する。支持部67は、当接部67bが支持面3aに当接すると共に、背面(当接部67b側の面)が架台3に接触することによって、架台3に対して位置決めされる。支持部67には、開口67cが設けられている。開口67cは、複数の導光部材32の入射端面32aに入射する計測光それぞれが通過する各位置に設けられている。開口67cは、複数の導光部材32と同数の複数設けられている。開口67cの断面形状は、配置孔62aの断面形状と同一である。例えば開口67cの断面形状は、断面円形状とされている。
【0047】
支持部67が架台3に対して位置決めされた状態において、ベース部62を支持部67に対して回転させることで、複数の導光部材32の入射端面32aに入射する計測光それぞれの光路上に複数の光学フィルタ61の中の何れかを挿入フィルタFとして挿入することができる。また、本実施形態のようにベース部62に開口部66が設けられている場合、当該各光路の少なくとも一方上に開口部66を配置することもできる。
【0048】
駆動部63は、例えばモータであり、駆動軸に接続されたギヤ63aとベース部62の外周面に形成されたギヤ部(不図示)との噛合によって回転駆動力をベース部62に伝達可能となっている。駆動部63は、制御部64からの信号に従って、挿入フィルタFが複数の光学フィルタ61の中で切り替わるようにベース部62を駆動する。
【0049】
制御部64は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)等を含むコンピュータにより構成されている。制御部64は、解析部51、入力部52及び表示部53とは別個に設けられていてもよいし、解析部51、入力部52及び表示部53の少なくとも何れかと一体に構成されていてもよい。
【0050】
制御部64は、光計測装置1の測定条件に応じて、複数の光学フィルタ61の中の何れかを選択フィルタとして選択する。制御部64は、選択した当該選択フィルタが挿入フィルタFとなるように駆動部63を駆動させる。以下、制御部64のより具体的な動作について説明する。
【0051】
制御部64は、例えば、入力部52と通信可能に接続されており、入力部52に入力された測定条件を受け付ける。測定条件は、例えば、試料の種類、測定する光特性、励起光の種類や波長、強度、光検出器43の分光感度特性等である。例えば、一方の光検出器43がBT−CCDリニアイメージセンサであり、他方の光検出器43がInGaAsリニアイメージセンサであり、励起光がレーザ光である場合、一方の光検出器43により検出される計測光の光路上には、光学フィルタ61としてショートパスフィルタが配置され、他方の光検出器43により検出される計測光の光路上には開口部66が配置される。
【0052】
制御部64には、ベース部62上における光学フィルタ61及び開口部66の配置関係、すなわち第1〜第3セットA1〜A3の配置関係が予め記憶されている。制御部64は、当該配置関係を参照しつつ、測定条件に基づき駆動部63を駆動させることで、第1〜第3セットA1〜A3の中の何れかに含まれる光学フィルタ61又は開口部66を各光路上に配置する。
【0053】
より具体的には、制御部64は、まず、測定条件に応じて、第1〜第3セットA1〜A3の中の何れかを選択する。例えば、制御部64は、一の第1セットA1を選択する。一の第1セットA1を選択することは、一方の光検出器43により検出される計測光の光路上に挿入する光学フィルタ61を選択すると共に、他方の光検出器43により検出される計測光の光路上に挿入する光学フィルタ61を選択することに相当する。次いで、制御部64は、選択した第1セットA1に含まれる2つの光学フィルタ61が挿入フィルタFとなる回転位置まで駆動部63を駆動させる。
【0054】
或いは、制御部64は、測定条件に応じて一の第2セットA2を選択する。一の第2セットA2を選択することは、一方の光検出器43により検出される計測光の光路上に挿入する光学フィルタ61を選択すると共に、他方の光検出器43により検出される計測光の光路上に開口部66を配置することを選択することに相当する。次いで、制御部64は、選択した第2セットA2に含まれる光学フィルタ61が挿入フィルタFとなり且つ当該光路上に開口部66が位置する回転位置まで駆動部63を駆動させる。
【0055】
或いは、制御部64は、測定条件に応じて第3セットA3を選択する。第3セットA3を選択することは、2つの光検出器43により検出される計測光それぞれの光路上に開口部66を配置することを選択することに相当する。次いで、制御部64は、当該各光路上に2つの開口部66が位置する回転位置まで駆動部63を駆動させる。
【0056】
以上に説明した光計測装置1では、入射開口22から入射した励起光が試料に照射され、試料で生じた発生光を含む計測光が積分器20内で多重拡散反射される。このとき、試料からの光が出射開口23に直接入射することがバッフル25によって防止されることで、計測光が積分器20内で確実に多重拡散反射される。そして、多重拡散反射され均一化された計測光が、積分器20内における共通の受光領域から1つの出射開口23を介して複数の導光部材32の入射端面32aに入射する。各入射端面32aに入射した計測光は、複数の光検出器43を有する光検出部40によって並行して又は互いにタイミングをずらして検出され、解析部51で解析される。解析部51による解析結果は、表示部53に表示される。
【0057】
以上、光計測装置1では、入射端面32aが出射開口23を介して積分器20内を向くように複数の導光部材32が配置されており、複数の導光部材32によって導光された計測光を光検出部40が検出する。これにより、複数の導光部材32を介して共通の出射開口23から計測光が取り出されることから、積分器20における出射開口23の形成数を低減することができ、積分器20の多重拡散反射特性を確保することが可能となる。また、各導光部材32によって取り出される計測光の強度分布を均一化することも可能となる。更に、光計測装置1では、複数の導光部材32の入射端面32a側における受光領域が積分器20内で互いに重なっている。これにより、積分器20内における共通の領域からの計測光が複数の導光部材32に入射するため、各導光部材32によって取り出される計測光の強度分布を一層均一化することができる。よって、光計測装置1によれば、積分器20の多重拡散反射特性を確保しつつ、均一な強度分布を有する計測光を取り出すことができ、計測光を精度良く検出することが可能となる。
【0058】
仮に、光計測装置1とは異なり、1つの導光部材32を介して取り出した計測光を切替器等によって複数の光検出器43へと切り替えて導光可能とした場合と比較して、光計測装置1では、複数の導光部材32を介して同じタイミングで取り出された計測光を検出できることから、計測光を精度良く検出することが可能となる。更に、切替器等を不要として装置構成を簡易化することも可能となる。また、光計測装置1では、共通の出射開口23から複数の導光部材32を介して計測光が取り出されることから、例えば積分器20における開口の形成数が予め決まっている場合でも、開口が不足して複数の計測光を取り出せないことが生じ難い。
【0059】
光計測装置1では、複数の導光部材32の入射端面32aにおける光軸Xが積分器20内で互いに交わっている。これにより、上記作用効果、すなわち、積分器20内における共通の領域からの計測光が複数の導光部材32に入射するため、各導光部材32によって取り出される計測光の強度分布を一層均一化することができるという上記作用効果が顕著に奏される。
【0060】
光計測装置1は、積分器20内における出射開口23と対向する位置に配置されたバッフル25を更に備えている。これにより、試料からの光が出射開口23に直接入射することをバッフル25によって防止することができ、計測光を積分器20内で確実に多重拡散反射させることが可能となる。
【0061】
光計測装置1では、複数の導光部材32の入射端面32aにおける光軸Xが出射開口23とバッフル25との間で互いに交わっている。これにより、試料からの光が出射開口23に直接入射することをバッフル25によって防止しつつ、積分器20内における共通の領域からの計測光を複数の導光部材32によって取り出すことが可能となる。
【0062】
光計測装置1では、積分器20内における出射開口23の周辺に配置された一対の支持柱26によってバッフル25が支持されており、複数の導光部材32が並ぶ方向と一対の支持柱26が並ぶ方向とが直交している。これにより、導光部材32に入射する計測光が支持柱26によって遮られることを抑制することができ、各導光部材32によって取り出される計測光の強度分布をより一層均一化することが可能となる。
【0063】
光計測装置1は、複数の光学フィルタ61を有し、複数の入射端面32aに入射する計測光それぞれの光路上に複数の光学フィルタ61の中の何れかを挿入フィルタFとして挿入可能なフィルタユニット60を備えている。これにより、複数の入射端面32aに入射する計測光それぞれの光路上に、光計測装置1の測定条件に応じた光学フィルタ61を挿入することができる。その結果、高精度な測定が可能となる。
【0064】
光計測装置1では、フィルタユニット60が、光学フィルタ61として、NDフィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、及び光反射物質で構成されたフィルタの少なくとも1つを含んでいる。これにより、光計測装置1の測定条件に応じた測定を具体的に実現可能となる。
【0065】
光計測装置1では、フィルタユニット60が、複数の光学フィルタ61が設けられたベース部62と、挿入フィルタFが複数の光学フィルタ61の中で切り替わるようにベース部62を駆動する駆動部63と、駆動部63の駆動を制御する制御部64と、を有している。そして、制御部64が、複数の光学フィルタ61の中の何れかを選択フィルタとして選択し、選択した当該選択フィルタが挿入フィルタFとなるように駆動部63を駆動させる。これにより、制御部64により、例えば光計測装置1の測定条件に応じた光学フィルタ61を選択して光路上に挿入させることができる。その結果、例えば手動で挿入フィルタFを切り替える場合と比較して、測定条件に応じた測定作業を容易化することが可能となる。
【0066】
光計測装置1では、光検出部40が複数の導光部材32と同数の複数の光検出器43を有しており、複数の光検出器43の分光感度特性が互いに異なっている。この場合、分光感度特性が互いに異なる複数の光検出器43を用いることで、広い波長領域での計測が可能となる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、積分器20として積分球が用いられたが、その内部の光を空間的に積分する手段(光学コンポーネント)であればよく、例えば特開2009−103654号公報に開示されているような積分半球が用いられてもよい。
【0068】
上記実施形態において、光検出部40は、複数の導光部材32の配置数よりも少ない数の光検出器43(分光検出器41)を有していてもよい。この場合、例えば、光検出部40は、一部の導光部材32によって導光された計測光のみを検出し、他の導光部材32によって導光された計測光を検出しなくてもよい。計測光の検出が行われない導光部材32については、例えば、積分器20内に光が入り込まないように棒状部材等によって塞がれていてもよい。すなわち、光検出部40は、複数の導光部材32の少なくとも1つによって導光された計測光を検出するものであればよい。
【0069】
上記実施形態において、光計測装置1は、3つ以上の導光部材32を備えていてもよい。この場合、複数の導光部材32は、一列に並んで配置されてもよいし、複数列に並んで配置されていてもよいし、円形状に並ぶように配置されていてもよいし、矩形状に並ぶように配置されていてもよい。上記実施形態では、複数の導光部材32が並ぶ方向と一対の支持柱26が並ぶ方向とが直交していたが、垂直以外の角度で交差していてもよい。或いは、複数の導光部材32が並ぶ方向と一対の支持柱26が並ぶ方向とが交差していなくてもよい。
【0070】
上記実施形態では、複数の導光部材32の入射端面32a側における光軸Xがバッフル25の頂部25aにおいて互いに交わっていたが、積分器20内で互いに交わっていればよく、例えば出射開口23とバッフル25との間の他の位置で互いに交わっていてもよい。上記実施形態では、複数の導光部材32の受光領域が積分器20内で互いに重なっていればよく、複数の導光部材32の光軸Xが積分器20内で互いに交わっていなくてもよい。
【0071】
上記実施形態では、ベース部62に開口部66が設けられていなくてもよい。この場合、すべての配置孔62aに光学フィルタ61が配置される。上記実施形態では、ベース部62は、第1セットA1、第2セットA2及び第3セットA3を含んで構成されているが、第1セットA1及び第2セットA2のみを含んで構成されていてもよいし、第1セットA1及び第3セットA3のみを含んで構成されていてもよい。ベース部62は、任意の形状であってもよく、例えば矩形板状であってもよい。ベース部62は、支持部67に対するスライド移動によって挿入フィルタFを切り替え可能となっていてもよい。フィルタユニット60は、駆動部63を有していなくてもよいし、ベース部62は、例えば手動で回転可能に構成されていてもよい。
【0072】
上記実施形態において、フィルタユニット60は、互いに対向して配置された2つのベース部62を有していてもよい。この場合、一のベース部62の光学フィルタ61と他のベース部62の光学フィルタ61とを計測光の光路上で重ねて使用することができ、選択可能な光学フィルタ61の組み合わせを増加させることができる。光計測装置1は、フィルタユニット60を備えていなくてもよい。
【0073】
上記実施形態において、装着部31の開口31aは、断面円形状であってもよい。ただし、上記実施形態のように複数の導光部材32が所定方向Dに並んで配置される場合、開口31aの横断面が所定方向Dを長手方向とする長円形状又は楕円形状を呈している方が好ましい。この場合、開口31aを通過する計測光についての複数の導光部材32の入射端面32aに入射しない光の割合を、低減することができるためである。
【0074】
上記実施形態において、試料は、積分器20の中央部以外の位置に配置されてもよく、例えば積分器20内において試料導入開口21とは反対側に載置されるように配置されてもよい。この場合、バッフルは、積分器20の内面において、載置された試料と出射開口23との間に立設され、出射開口23の中心線上から外れた位置に位置していてもよい。このようなバッフルが設けられている場合、複数の導光部材32の入射端面32aに入射する計測光がバッフルによって遮られることを抑制するために、複数の導光部材32が並ぶ方向は、出射開口23とバッフルとが並ぶ方向と交差していることが好ましい。
【0075】
上記実施形態では、支持柱26が装着部31に設けられていたが、積分器20の内面20aに設けられていてもよい。或いは、支持柱26が設けられず、バッフル25が積分器20の内面20aに直接に設けられていてもよい。バッフル25の形状は、試料からの光が出射開口23に直接入射することを防止可能な形状であればよく、例えば平板状等であってもよい。
【解決手段】光計測装置1は、試料に励起光を照射し、計測光を検出する光計測装置である。光計測装置1は、励起光が入射される入射開口22、及び計測光を出射する出射開口23が形成され、試料が配置される積分器20と、出射開口23から出射された計測光を導光する導光部30と、導光部30によって導光された計測光を検出する光検出部40と、を備える。導光部30は、入射端面32aが出射開口23を介して積分器20内を向くように配置された複数の導光部材32を有する。光検出部40は、複数の導光部材32の少なくとも1つによって導光された計測光を検出する。複数の導光部材32の入射端面32a側における受光領域は、積分器20内で互いに重なっている。